JP2979442B2 - マンニット及びマンノースの製造方法 - Google Patents

マンニット及びマンノースの製造方法

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JP2979442B2 JP3171856A JP17185691A JP2979442B2 JP 2979442 B2 JP2979442 B2 JP 2979442B2 JP 3171856 A JP3171856 A JP 3171856A JP 17185691 A JP17185691 A JP 17185691A JP 2979442 B2 JP2979442 B2 JP 2979442B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
【0002】本発明はマンニット及びマンノースの製造
方法に関し、詳細には、グルコースを異性化した後に異
性化糖混合液からマンノースを分離し、分離したマンノ
ースを高圧接触還元するマンニット及びマンノースの製
造方法に関する。
【0003】
【従来の技術】
【0004】近年、マンノースを還元して得られるマン
ニットは、医薬品、食料品その他化粧品の原料として需
要が拡大されてきた。マンニットは、植物、特に海藻中
に含まれ、また、化学的にフラクトースを還元すること
によって合成される。マンノースからのマンニットの理
論的生成率は100%、フラクトースからのそれは等モ
ルのソルビットが副成するため50%である。
【0005】 マンニットは、工業的には、主として
ショ糖を転化(即ち加水分解)して生成するグルコース
とフラクトースとの混合物を、水素添加して製造されて
いる。 また、近年、グルコースを酵素で異性化して
グルコースとフラクトースとの混合糖を作り、これを還
元してソルビットとマンニットとの混合物とし、これよ
りマンニットを結晶化して分離する方法が開発検討され
ている。しかし、上記、の方法では、フラクトース
の原料ショ糖またはグルコースに対する生成率が最高5
0%であり、そのためマンニットのこれら原料に対する
生成率は更にその半分の25%以下となり、結局、マン
ニット結晶としての収率は約17%前後にすぎず、工業
的実施に適しているとはいえなかった。
【0006】 アルドースを異性化する方法として
は、チェコスロバキア特許第149051号に開示され
るごとく、アルドースの水溶液をモリブデン酸イオンの
存在下で加熱反応させる方法が知られており、これによ
れば、グルコースの約25%がマンノースに異性化す
る。しかし、この方法では、一般にアルドース水溶液に
添加したモリブデン酸イオンを、異性化反応後に反応液
から除去しなければならず、また、回収したモリブデン
酸イオンを排水として流すと公害問題を生ずるので循環
使用しなければならないことになり、製造工程が繁雑で
実用的でなく、工業的実施に適しているとはいえなかっ
た。
【0007】 上記の方法における欠点を改良した
方法として、特公昭56−40700号公報及び米国特
許第4029878号明細書に記載されているように、
「アンバーリストA-26」強塩基性陰イオン交換樹脂MR
形(米国ローム・アンド・ハース社製)に担持させたモ
リブデン酸を、アルドースの異性化触媒として使用する
方法が知られている。この方法によると、異性化反応後
の反応液には、ほとんどモリブデン酸イオンが混入せ
ず、従ってモリブデン酸イオンの除去工程が省略でき
る。しかし、かかるモリブデン酸を担持させた陰イオン
交換樹脂は、特公昭63−12071号公報に記載され
た通り、使用とともに急速に活性が低下するので、工業
的実施に適しているとはいえなかった。即ち、アルドー
ス水溶液にモリブデン酸を担持させた陰イオン交換樹脂
を加えて加熱反応させた後、その反応液からモリブデン
酸を担持させた陰イオン交換樹脂を回収し、これを新し
いアルドース水溶液に加えて加熱反応させる操作を繰り
返した場合には、イオン交換樹脂の触媒としての活性が
急速に低下するため、実際に触媒として循環使用するこ
とができなかった。
【0008】 グルコースとマンノースの混合糖液か
ら、糖のイオン交換樹脂への親和力の差を利用して、マ
ンノースを分離する方法としては、英国特許第1540
556号により、陽イオン交換樹脂アルバライトXE200
(米国ローム・アンド・ハース社製)のCa形を使用す
ることが開示されている。この方法は、先ず供給物(マ
ンノース29.0%とグルコース67.1%)を樹脂カラムに通
してマンノースを87%まで増加させ、次いでこの87%の
マンノース画分を第2の同じカラムに通して最高98%の
マンノースを含有する画分を得ている。しかし、このよ
うな2段階の操作による方法は、実際には面倒かつ高価
なものとなるので、工業的実施に適しているとはいえな
かった。
【0009】 更に特公昭62−1762号公報にお
いては、グルコースとマンノースの混合物をそれぞれの
成分に分離するのに、吸着剤としてCa形の強酸性陽イ
オン交換樹脂が適していることが記載されている。しか
し、本発明者等がこの方法を検討したところ、尚、下記
のような欠点が認められ、工業的実施に適しているとは
いえなかった。即ち、Ca形の強酸性陽イオン交換樹脂
SK−1B[三菱化成工業(株)製]を充填したカラムに
グルコース及びマンノースの水溶液を流し、各成分が流
出するまでの流出液の量の比(分離度)を測定したとこ
ろ、グルコースとマンノースの樹脂への吸着の差は必ず
しも顕著ではなかった(比較例2参照)。
【0010】 グルコースとマンノースの混合糖溶液
からマンノースを分離する他の方法としては、米国特許
第3677818号が知られている。この方法は、マン
ノースを重亜硫酸ナトリウム塩として結晶化分離した
後、水に再溶解し、重炭酸試薬の添加によってマンノー
スの重亜硫酸ナトリウム塩を分解しマンノースを再生さ
せる方法であり、ここでは、分解反応が完結した後にエ
タノールを加えて亜硫酸ナトリウムを沈澱させ、更に数
工程の後、純粋なマンノースを85%収率で回収してい
る。しかし、この方法は、高価であるだけでなく、極め
て多量の化学廃棄物を発生して重大な処理問題をも引き
起こすので、工業的実施に適しているとはいえなかっ
た。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】以上説明したように、従来のマンニット及
びマンノースの製造方法は、いずれも工業的実施に適し
た方法であるとはいえなかった。従って、イオン交換樹
脂にモリブテン酸を担持させた触媒を用いてグルコース
を異性化する場合でも触媒活性が急速に低下することな
く、また、グルコースとマンノースとの混合糖溶液から
マンノースを分離する場合でも効率よく分離することが
でき、全体の工程を安価かつ容易に行なうことができ
る、工業的実施に適したマンニット及びマンノースの製
造方法が望まれていた。
【0013】
【課題を解決するための手段】
【0014】本発明者等は、グルコース水溶液を重合体
母体構造がポーラス形である強塩基性陰イオン交換樹脂
に強固に担持させたモリブデン酸を触媒として加熱する
ことで異性化し、この異性化糖混合液をPb形またはC
u形の強酸性陽イオン交換樹脂を充填した固定床中を通
過させることでグルコース画分とマンノース画分とに分
離し、分離したグルコース画分は再度マンノースに異性
化し、マンノース画分は高圧接触還元によりマンニット
とすることで、従来法の欠点をすべて解決することを可
能とした。
【0015】すなわち、本発明は、第1に、グルコース
溶液からマンニットを製造するに当たり、(a) グルコー
ス溶液を、グルコースの異性化により、グルコースとマ
ンノースとの異性化糖混合液とし、(b) この異性化糖混
合液を、Pb形またはCu形の強酸性陽イオン交換樹脂
を充填した固定床中を通過させることで、グルコース画
分とマンノース画分とに分離し、(c) 上記(b)工程で分離
したマンノース画分を、高圧接触還元により、マンニッ
トとした後、該マンニットを結晶化する、マンニットの
製造方法である。
【0016】第2に、グルコース溶液からマンニットを
製造するに当たり、(a) グルコース溶液を、グルコース
の異性化により、グルコースとマンノースとの異性化糖
混合液とし、(b) この異性化糖混合液を、Pb形または
Cu形の強酸性陽イオン交換樹脂を充填した固定床中を
通過させることで、グルコース画分とマンノース画分と
に分離し、(c) 上記(b)工程で分離したグルコース画分
を、(a)工程により、グルコースとマンノースとの混合
液とし、(d) 上記(b)工程で分離したマンノース画分を、
高圧接触還元により、マンニットとした後、該マンニッ
トを結晶化する、マンニットの製造方法である。
【0017】第3に、第1または第2のマンニットの製
造方法について、(a)工程の異性化糖混合液が、グルコー
ス溶液を、重合体母体構造がポーラス形である強塩基性
陰イオン交換樹脂に担持させたモリブデン酸を触媒とし
て、70℃以上の温度で加熱することで、グルコースを
マンノースに異性化したものである、マンニットの製造
方法である。
【0018】第4に、第3のマンニットの製造方法につ
いて、(a)工程の異性化を、80〜140℃の温度条件下
で行なう、マンニットの製造方法である。
【0019】第5に、第3または第4のマンニットの製
造方法について、(a)工程で、70℃以上の温度に加熱し
たグルコース溶液を、モリブデン酸を担持させた重合体
母体構造がポーラス形の強塩基性陰イオン交換樹脂を充
填した固定床中を通過させる、マンニットの製造方法で
ある。
【0020】第6に、第1〜第5のいずれか一つのマン
ニットの製造方法について、(b)工程を、20〜80℃
の温度条件下で行なう、マンニットの製造方法である。
【0021】第7に、グルコース溶液を、グルコースの
異性化により、グルコースとマンノースとの異性化糖混
合液とし、該異性化糖混合液を、Pb形またはCu形の
強酸性陽イオン交換樹脂を充填した固定床中を通過させ
ることで、グルコース画分とマンノース画分とに分離す
る、マンノースの製造方法である。
【0022】第8に、第7のマンノースの製造方法につ
いて、異性化糖混合液が、グルコース溶液を、重合体母
体構造がポーラス形である強塩基性陰イオン交換樹脂に
担持させたモリブデン酸を触媒として、70℃以上の温
度で加熱することで、グルコースをマンノースに異性化
したものである、マンノースの製造方法である。
【0023】以下、本発明のマンニット及びマンノース
の製造方法について、詳細に説明する。
【0024】本発明に用いる出発原料のグルコース溶液
は、結晶のグルコースの水溶液のほか、澱粉糖化液等も
使用することができる。澱粉糖化液等のような不純物を
含む原料の場合は、そのデキストローズ・エクイバレン
ト(以下DEと略す)が約90以上のものが好ましい。
DEが90より小さいものを原料とする場合には、異性
化の後に引き続き行われる分離工程により得られるマン
ノースの純度が低下するので好ましくない。
【0025】異性化反応の際の溶液の濃度は、40〜8
0%、好ましくは50〜70%が良い。
【0026】一般にイオン交換樹脂は、その高分子母体
構造を合成する方法から区別され、例えば、スチレンと
ジビニルベンゼンとを単純に重合して製造したゲル形、
特殊な重合方法で合成したポーラス形、及び巨大網目状
の共重合体に官能基を導入したMR形等に区別され、更
に、ポーラス形は、多孔性の高いハイポーラス形やマク
ロポーラス形等に区別される。
【0027】また、陰イオン交換樹脂には、弱塩基性陰
イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とがある。
弱塩基性陰イオン交換樹脂は、官能基が第1級アミン〜
第3級アミンである。これに対し、強塩基性陰イオン交
換樹脂は、第4級アミンを官能基として持つもので、更
に、その窒素に結合する基がアルキル基(例えばメチル
基)だけであるものがI型樹脂と、また、アルカーノ基
を含んだものがII型樹脂と区別される。
【0028】本発明の異性化では、高分子母体構造がポ
ーラス形の強塩基性陰イオン交換樹脂を使用することが
でき、特に、多孔性の高いハイポーラス形やマクロポー
ラス形のイオン交換樹脂を使用することが好ましい。ま
た、官能基はI型、II型のどちらも使用できる。
【0029】本発明において、陰イオン交換樹脂にモリ
ブデン酸を担持させるには、例えば陰イオン交換樹脂を
カラムに充填し、これにアルカリ水溶液を通して遊離の
アミン形またはOH形とした後、モリブデン酸の例えば
アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の水溶液
を通液すれば良い。
【0030】異性化反応温度は、70℃以上、好ましく
は80〜140℃が良く、70℃未満では反応が遅く、
また、140℃を越える温度ではイオン交換樹脂が分解
する恐れがあるので好ましくない。
【0031】異性化反応は、バッチ式でも良いが、効率
上からはモリブデン酸を担持した陰イオン交換樹脂をカ
ラムに充填してグルコース溶液を連続的に通液せしめ
る、連続式が実用的である。
【0032】異性化混合液をグルコース画分とマンノー
ス画分とに分離するのに使用できる陽イオン交換樹脂
は、強酸性の陽イオン交換樹脂であれば良いが、分離を
より良くする為には樹脂の粒径を均一としたものが好ま
しい。
【0033】強酸性陽イオン交換樹脂へのPbまたはC
uの担持は、例えば陽イオン交換樹脂をカラムに充填
し、これに塩酸や硫酸等の酸水溶液を通して遊離のH形
とした後、Pb塩(例えば酢酸鉛等)またはCu塩(例
えば酢酸銅等)の水溶液を通液すれば良い。
【0034】異性化混合液のグルコース画分とマンノー
ス画分とは、Pb形またはCu形の強酸性陽イオン交換
樹脂を充填した固定床中を通過させることで分離される
が、20〜80℃、好ましくは40〜70℃の温度条件
下で操作するのが良い。高温での分離は、樹脂の分解が
起こり、他方、低温での分離は、糖の溶解度が減少して
物質移動速度も低下し、かつ、溶液粘度が高くなりすぎ
るので、グルコースとマンノースとの分離状態が悪くな
る。
【0035】分離したグルコース画分は、再度マンノー
スに異性化することを繰り返すことにより、原料中のグ
ルコースをほぼ定量的にマンノースに異性化できる。
【0036】分離したマンノース画分は、水素添加触
媒、例えばラネー・ニッケル等のニッケル系触媒や白金
属水添触媒の存在下で常法により水素添加され、マンニ
ットとすることができる。この水素添加反応液は、必要
に応じてろ過し精製した後、減圧濃縮し冷却することに
よりマンニットの結晶が得られる。
【0037】
【実施例】
【0038】以下に本発明を更に実施例をもって説明す
るが、これら実施例は本発明の範囲を限定するものでは
ない。
【0039】
【実施例1】ガラスカラム(長さ37cm、内径1.4c
m)に50mlの強塩基性陰イオン交換樹脂MSA−1
(ダウケミカル社製、マクロポーラスI型陰イオン交換
樹脂)を充填し、5%水酸化ナトリウム水溶液60g
を、カラム上部より通液した後、良く水洗した。次い
で、10%モリブデン酸アンモニウム水溶液300g
を、毎時50mlの速さで通液した後、良く水洗した。こ
のカラムを95℃に保温した水槽に入れ、カラム下部よ
り50重量%の結晶グルコース(純度99.8%)水溶
液を、毎時150mlの速さで通液し、上部より流出した
液を分析した。通液の初期においてはグルコースからマ
ンノースへの異性化率が高いが、次第に異性化率は低下
する。本実施例においては、異性化率が30%以下にな
った時点で流速を毎時125ml、100ml、75ml、5
0mlと段階的に遅くすることで、異性化率が30%以上
となるようにした。分析は液体クロマトグラフィー[カ
ラム:SCR−101N、島津製作所(株)製]で行っ
た。表1にその結果を示す。尚、異性化液の分析値は各
流速における異性化液の平均値を示す。また、合計通液
量は26.4リットル(グルコース固形分として16.
1Kg)であった。
【0040】
【表1】
【0041】ここで得られた異性化液の一部を常法によ
りイオン交換精製を行った後、50%まで濃縮し、次工
程の原料とした。また、この液の組成は次の通りであっ
た。 グルコース 69.3% マンノース 30.4% その他 0.3%
【0042】
【実施例2】実施例1の強塩基性陰イオン交換樹脂MS
A−1が強塩基性陰イオン交換樹脂MSA−2(ダウケ
ミカル社製、マクロポーラスII型陰イオン交換樹脂)で
ある以外は実施例1と同じ方法で結晶グルコースを異性
化した。その結果を表2に示す。合計通液量は21.5
リットル(グルコース固形分として13.1Kg)であっ
た。
【0043】
【表2】
【0044】
【実施例3】実施例1と同様の方法で調製したモリブデ
ン酸担持強塩基性陰イオン交換樹脂MSA−1充填カラ
ムを水槽に入れ、温度80℃としグルコースからマンノ
ースへの異性化率が30%になった時点で温度を3℃ず
つ上げて異性化率を30%以上に維持した。この時のグ
ルコース水溶液の濃度は50重量%であり、流速は毎時
50mlと一定にした。その結果を表3に示す。合計通液
量は、40.2リットル(グルコース固形分として2
4.5Kg)であった。
【0045】
【表3】
【0046】
【実施例4】実施例1の糖液がグルコース純度93.6
%の糖液を使用した以外は実施例1と同じ方法で行っ
た。その結果を表4に示す。合計通液量は25.8リッ
トル(糖固形分として15.7Kg)であった。
【0047】
【表4】
【0048】
【実施例5】強酸性陽イオン交換樹脂SK−1B[三菱
化成工業(株)製、粒度:50〜100メッシュ]のNа
形400mlをカラムに充填し、10%酢酸鉛・三水和物
の水溶液1.5リットルを流し、樹脂をPb形とした。
このPb形SK−1B樹脂300mlをジャケット付きカ
ラム(内径2.4cm×長さ80cm)に充填し、カラムを
60℃に保温しながら実施例1で調製した異性化液1
8.3gを流速90ml/時で塔上部より供給し、次いで
水で連続的に溶出した。また、塔下部より流出する液
は、フラクションコレクターを用い、各フラクションを
10.0mlとなるように集めた。各フラクションを液体
クロマトグラフィーで分析した結果を表5に、また、P
b形のSK−1B樹脂を用いた際の異性化液の分離パタ
ーンを図1に、それぞれ示す。
【0049】
【表5】
【0050】
【実施例6】強酸性陽イオン交換樹脂SK−1B[三菱
化成工業(株)製、粒度:100〜200メッシュ]のH
形400mlをカラムに充填し、5%酢酸銅・一水和物
の1.92リットルを流し、樹脂をCu形とした。以
下、実施例5と同じ方法で行った。その結果を表6に、
また、Cu形のSK−1B樹脂を用いた異性化液の分離
パターンを図2に、それぞれ示す。
【0051】
【表6】
【0052】
【実施例7】実施例5と同じ方法で調製したSK−1B
のPb形樹脂3リットルを、ジャケット付きカラム(内
径6.4cm×長さ110cm)に充填し、カラムを60℃
に保温しながら実施例1で調製した異性化液183gを
塔上部より供給し、次いで、水で連続的に溶出し、塔下
部より流出する液をフラクションコレクターで分取し
た。溶出液の流速は900ml/時で、各フラクションの
容量は100mlであった。フラクションNо.26〜3
0を混合し、分析したところ、マンノース純度99.2
%であった。次に、このフラクションNо.26〜30
の混合液を、250ml(この時の濃度は6%)まで濃縮
した後、ラネー・ニッケル触媒2gとともに、550ml
電磁攪拌オートクレーブに入れ、水素圧150Kg/cm2
温度120℃で60分攪拌した。冷却後、反応液を取り
出し、触媒をろ過し、常法によりイオン交換精製した。
この精製液を45%まで濃縮し、室温まで冷却し、結晶
を析出させ、その結晶は、ろ過により分離し、乾燥した
ところ6.7gのマンニットが得られた。また、これを
ガスクロマトグラフィー(カラム:QF−1、温度:2
10℃、前処理:アセチル化)で分析したところ、不純
物は検出されなかった。更に、このものの融点は16
6.3℃であった。
【0053】
【実施例8】実施例7で流出したフラクションNо.1
9〜25を集め、濃度50%まで濃縮し、グルコース8
2.9%、マンノース16.8%、その他0.3%の組
成の糖液150gを得た。この液を実施例1と同じ方法
で調製したカラムに、80℃で毎時50mlの流速で流
し、1時間後及び2時間後に流出した液を液体クロマト
グラフィーで分析した結果を表7に示す。
【0054】
【表7】
【0055】
【比較例1】実施例1の強塩基性陰イオン交換樹脂MS
A−1の代わりに、強塩基性陰イオン交換樹脂A−2
6(ローム・アンド・ハース社製、MR形)、強塩基
性陰イオン交換樹脂EA−137[住友化学(株)製、ゲ
ル形]、弱塩基性陰イオン交換樹脂SBR[ダウケミ
カル(株)製、ポーラス形]及び弱塩基性陰イオン交換
樹脂WA−30[三菱化成(株)製、ハイポーラス形]
を、各々モリブデン酸担持用樹脂として用いた以外は、
実施例1と同様の方法でグルコースをマンノースに異性
化した。但し、異性化開始時のグルコース水溶液の流速
は、各々の樹脂に適した通液速度に従って開始した。以
下、強塩基性陰イオン交換樹脂A−26を用いた結果
を表8に、強塩基性陰イオン交換樹脂EA−137を
用いた結果を表9に、弱塩基性陰イオン交換樹脂SB
Rを用いた結果を表10に、弱塩基性陰イオン交換樹
脂WA−30を用いた結果を表11に、それぞれ示す。
表8について、合計通液量6.3リットル中のグルコー
ス固形分は、3.8Kgであった。表9について、合計通
液量1.2リットル中のグルコース固形分は、0.7Kg
であった。表10について、合計通液量4.3リットル
中のグルコース固形分は、2.6Kgであった表11につ
いて、合計通液量5.3リットル中のグルコース固形分
は、3.2Kgであった。
【0056】
【表8】
【0057】
【表9】
【0058】
【表10】
【0059】
【表11】
【0060】上記結果より、ポーラス形の強塩基性陰イ
オン交換樹脂を用いた実施例と比べ、上記4種のタイプ
の異なる樹脂を用いた場合は、いずれも活性の低下は著
しく、少量のグルコースしかマンノースに異性化するこ
とができないことが確認できた。
【0061】
【比較例2】強酸性陽イオン交換樹脂SK−1B[三菱
化成工業(株)製、粒度:50〜100メッシュ]300
mlをカラムに充填し、10%の塩化カルシウム水溶液を
流しCa形の樹脂とした。同様に、塩化カルシウムの代
わりに酢酸銅及び酢酸鉛を用いCu形及びPb形の樹脂
とした。上記3種の異なる金属形樹脂200mlを、各々
内径1.6cm×長さ110cmのガラスカラムに充填し
た。カラムの上部より5%グルコース水溶液100mlを
流し、次いで水を流した。下部より流出した液の濃度を
測定し、グルコース水溶液の通液開始からグルコースの
濃度が1%に達した時までの流出液の容量をグルコース
のリテンションボリュームとした。同様に5%マンノー
ス水溶液100mlを流し、マンノースのリテンションボ
リュームを測定し、次式により各々の金属形樹脂におけ
る分離度を求めた。 分離度=(マンノースのリテンションホ゛リューム)/(ク゛ルコースのリテンションホ
゛リューム) 結果を表12に示す。
【0062】
【表12】
【0063】表12から、グルコースとマンノースの樹
脂への吸着の差は、Ca形のものに比べPb形及びCu
形のものの方が大きいことが確認できた。
【0064】
【発明の効果】
【0065】本発明によれば、Pb形またはCu形の強
酸性陽イオン交換樹脂により、グルコースとマンノース
とを分離するので、マンノースを効率よく分離すること
ができ、全体の工程を安価かつ容易にマンニット及びマ
ンノースを製造することができるため、工業的実施に適
している。また、モリブデン酸を担持させた重合体母体
構造がポーラス形である強塩基性陰イオン交換樹脂を異
性化触媒として用いることにより、触媒活性が急速に低
下することなくグルコースのマンノースへの異性化が実
用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Pb形のSK−1Bを用いた異性化液の分離パ
ターンを示す図である。
【図2】Cu形のSK−1Bを用いた異性化液の分離パ
ターンを示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C07H 3/02 C07H 3/02 (56)参考文献 特開 昭51−141807(JP,A) 特開 昭51−95006(JP,A) 特開 昭59−56162(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07C 31/26 C07C 29/14 - 29/141 C07H 3/02

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 グルコース溶液からマンニットを製造す
    るに当たり、 (a) グルコース溶液を、重合体母体構造がポーラス形
    である強塩基性陰イオン交換樹脂に担持させたモリブデ
    ン酸を触媒として、70℃以上の温度で加熱すること
    で、グルコースをマンノースに異性化した、グルコース
    とマンノースとの異性化糖混合液とし、 (b) この異性化糖混合液を、Pb形またはCu形の強
    酸性陽イオン交換樹脂を充填した固定床中を通過させる
    ことで、グルコース画分とマンノース画分とに分離し、 (c) 上記(b)工程で分離したマンノース画分を、高圧接
    触還元により、マンニットとした後、該マンニットを結
    晶化する、 マンニットの製造方法。
  2. 【請求項2】 グルコース溶液からマンニットを製造す
    るに当たり、 (a) グルコース溶液を、重合体母体構造がポーラス形
    である強塩基性陰イオン交換樹脂に担持させたモリブデ
    ン酸を触媒として、70℃以上の温度で加熱すること
    で、グルコースをマンノースに異性化した、グルコース
    とマンノースとの異性化糖混合液とし、 (b) この異性化糖混合液を、Pb形またはCu形の強
    酸性陽イオン交換樹脂を充填した固定床中を通過させる
    ことで、グルコース画分とマンノース画分とに分離し、 (c) 上記(b)工程で分離したグルコース画分を、(a)工
    程により、グルコースとマンノースとの混合液とし、 (d) 上記(b)工程で分離したマンノース画分を、高圧接
    触還元により、マンニットとした後、該マンニットを結
    晶化する、 マンニットの製造方法。
  3. 【請求項3】 (a)工程の異性化を、80〜140℃の
    温度条件下で行なう、請求項1または2記載のマンニッ
    トの製造方法。
  4. 【請求項4】 (a)工程で、70℃以上の温度に加熱し
    たグルコース溶液を、モリブデン酸を担持させた重合体
    母体構造がポーラス形の強塩基性陰イオン交換樹脂を充
    填した固定床中を通過させる、請求項3記載のマンニッ
    トの製造方法。
  5. 【請求項5】 (b)工程を、20〜80℃の温度条件下
    で行なう、請求項1〜4のいずれか一つに記載のマンニ
    ットの製造方法。
  6. 【請求項6】 グルコース溶液を、重合体母体構造がポ
    ーラス形である強塩基性陰イオン交換樹脂に担持させた
    モリブデン酸を触媒として、70℃以上の温度で加熱す
    ることで、グルコースをマンノースに異性化した、グル
    コースとマンノースとの異性化糖混合液とし、該異性化
    糖混合液を、Pb形またはCu形の強酸性陽イオン交換
    樹脂を充填した固定床中を通過させることで、グルコー
    ス画分とマンノース画分とに分離する、マンノースの製
    造方法。
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