JP2976545B2 - 充填鋳造法における造型方法 - Google Patents

充填鋳造法における造型方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、消失性の模型を使用
した充填鋳造法においてその鋳型の造型方法に関する。
【0002】
【従来の技術】発泡ポリスチレン等の素材よりなる消失
性の模型を鋳型砂中に埋設し、この模型を鋳型砂の中か
ら抜き取ることなく、そのまま溶湯を鋳込む充填鋳造法
は公知である。この充填鋳造法は、鋳型を上型と下型と
に分割して模型を抜き取る方法と比較して種々の特色を
有し、特に量産品の鋳造に広く採用されている。そして
この充填鋳造法においては、模型さえ制作できれば原則
としていかなる形状の製品でも鋳造できるわけである。
ただ模型が鋳型砂に適性に保持されていなければ精度の
よい鋳物を鋳造することは困難である。つまり充填鋳造
法においては、その造型方法が重要となる。
【0003】そこで、これまでも種々の造型方法が提案
されており、その一例として実公昭64−3587号公
報に開示されている技術を挙げることができる。この公
報の造型方法は、鋳枠の内部に予め鋳型砂を満たしてお
き、そこに圧縮空気を送り込んで鋳型砂を流動させなが
ら消失性の模型を鋳枠内に入れ、この鋳型砂中に模型を
埋設させる。そして砂の流動を止めた後、鋳枠に振動を
加えながらこの鋳枠内を間欠的に減圧して鋳型砂の充填
密度を高めている。図4に、前記鋳枠に振動を加えなが
らこの鋳枠内を間欠的に減圧する工程の概略が示されて
いる。この図4において鋳枠10は振動テーブル34の
上に載せられて振動が加えられ、かつ鋳枠10内の鋳型
砂50は減圧装置32により吸引されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記公報の造型方法に
おいては、図4から明らかなように消失性模型20の全
体を埋設させるのに充分な量の鋳型砂50を振動させ、
同時に間欠的な減圧によって鋳型砂50に吸引力を与え
ているため、模型20にかなり大きな荷重が加わること
がある。したがって模型20の形状によっては、その一
部が図4で示されているように歪んだり、あるいは損傷
したりするおそれがある。このような事態が生じた場合
は、当然のことながら高品質の鋳物の製造は期待できな
いこととなる。この発明の技術的課題は、消失性の模型
の強度を上げることなく、造型時における模型の歪みや
損傷を防止し、かつこの模型を適性に位置決めできる充
填鋳造法における造型方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の充填鋳造法にお
ける造型方法は、造型時に消失性の模型に加わる荷重
を、すでに鋳枠内に入れられている鋳型砂で支えること
を特徴とする。詳しくは鋳枠の内部で消失性の模型を鋳
型砂中に埋設させ、この模型の占有部にそのまま溶湯を
鋳込む充填鋳造法における造型方法であって、前記鋳枠
内に前記模型を入れる際にその位置決めに必要な量の鋳
型砂を前もって鋳枠内に入れておき、この鋳枠内に圧縮
空気を送り込んで前記鋳型砂を流動させながら模型の一
部を鋳型砂中に埋設させる。この圧縮空気の送り込みを
止めた後に鋳枠に振動を加えて鋳型砂を固化させること
で模型を位置決めする。引き続き鋳枠に振動を加えなが
ら鋳枠内に新たな鋳型砂を徐々に投入して模型全体を鋳
型砂中に埋設させる。
【0006】
【作用】本発明によれば、予め鋳枠の内部に入れた鋳型
砂により消失性の模型を支えて位置決めした後、新たな
鋳型砂を徐々に投入するものであるから、この投入され
る鋳型砂によって模型に加わる荷重は、すでに充填密度
が高くなっている前記位置決め用の鋳型砂で受けられ
る。したがって模型の歪みや損傷が防止される。また特
殊な治具を使用することなく模型を適性に位置決めで
き、また鋳型砂の充填性もよくなる。
【0007】
【実施例】次に本発明の一実施例を主として図1〜図3
にしたがって説明する。図1及び図2に充填鋳造法にお
ける造型方法の工程がそれぞれ構成図で示されている。
まず図1において鋳枠10は、その移送が可能な移送装
置18の上に載せられている。また鋳枠10の内部は、
その下方寄りに配置された多孔質エレメント12により
上下二室に区分され、下室は加圧・減圧室14になって
いる。この加圧・減圧室14のパイプ接続口16には、
図1においては加圧装置31からのパイプ38が接続さ
れている。なお加圧装置31は加圧・減圧室14に圧縮
空気を供給できる構成となっている。
【0008】一方、消失性の模型20は発泡ポリスチレ
ン、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタン等の材料で形
成され、製品部20aと湯口部20bとからなってい
る。図1において模型20はセットロボット24のクラ
ンパー30で把持されている。このクランパー30はア
ーム28を通じて昇降コラム26に支持されている。し
たがって模型20をクランパー30で把持したまま、図
1の仮想線で示されているように前記鋳枠10の内部に
挿入できる。
【0009】図2において前記鋳枠10は振動テーブル
34の上に載せられている。この振動テーブル34は、
振動モータ36の駆動により鋳枠10に振動を加えれる
ようになっている。この振動テーブル34の上方に配置
されているホッパー44は、ホッパー昇降装置40によ
って昇降動作可能に支持されているとともに、砂供給ダ
クト42から鋳型砂が供給されるようになっている。ま
たホッパー44はその下部において複数本のノズル46
を備え、これらのノズル46から鋳枠10の内部へ鋳型
砂を投入できるようになっている。なお図2において前
記加圧・減圧室14のパイプ接続口16には、減圧装置
32からのパイプ39が接続されている。この減圧装置
32は負圧によって前記加圧・減圧室14を吸引できる
構成となっている。
【0010】さて造型にあたっては、図1の工程におい
て前記鋳枠10内に模型20の位置決めに必要な量の鋳
型砂50を予め入れておく。そして前述したようにセッ
トロボット24のクランパー30で把持されている消失
性の模型20を鋳枠10の内部に入れるのであるが、こ
のとき前記加圧装置31から加圧・減圧室14内へ圧縮
空気を連続的に送り込む。この圧縮空気は前記多孔質エ
レメント12で分散されて鋳枠10内に流入し、前記鋳
型砂50を均等に流動させる。したがって鋳枠10内に
入れられた前記模型20の一部は、流動を続けている鋳
型砂50の中に埋設される。
【0011】前記圧縮空気の送り込みを止め、かつ加圧
・減圧室14のパイプ接続口16から加圧装置31のパ
イプ38を外した後、図1に示されている移送装置18
により鋳枠10を図2に示されている前記振動テーブル
34の上に移す。ここで前記パイプ接続口16に減圧装
置32のパイプ39を接続し、かつ振動テーブル34を
前記振動モータ36の駆動によって振動させる。この振
動テーブル34の振動によって鋳枠10に振動が加えら
れ、この振動は図3に示されている振動パターンに基づ
いて実行される。そして図3の時間T1までの振動によ
り前記鋳型砂50の充填密度が高められて固化し、前記
模型20が位置決めされる。
【0012】図3における時間T1の経過後も鋳枠10
の振動は継続したままで、図2に示されている前記ホッ
パー44をホッパー昇降装置40によって例えば図面の
位置まで下降させ、そのノズル46から前記鋳枠10の
内部へ新たな鋳型砂50を投入する。この鋳型砂50の
投入が進むに連れてホッパー44をノズル46と共に上
昇させる。このようにして前記模型20の周りに鋳型砂
50が徐々に投入され、図3の時間T2で模型20の全
体が鋳型砂50の中に埋設される。この時点で図2に示
されているシャッター48を閉ざして鋳型砂50の投入
を止める。
【0013】この新たな鋳型砂50の投入によって模型
20に加わる荷重のほとんどは、図1の工程で鋳枠10
内に投入され、かつすでに固化されている前記の鋳型砂
50で受けられ、模型20の極端な歪みは防止される。
また模型20の位置決めも適性な状態に保たれている。
【0014】図3の時間T2の経過後は、時間T3まで
鋳枠10の振動を継続しながら前記減圧装置32によ
り、前記加圧・減圧室14内を間欠的に吸引する。この
吸引力は前記多孔質エレメント12を介して鋳枠10内
の鋳型砂50に作用する。このように鋳型砂50に振動
を加えながら間欠的な吸引を繰り返すことで鋳型砂50
の充填密度が一層高められる。つまり鋳型砂50は吸引
によって固化され、吸引の停止によって開放されるとい
った状態が繰り返され、砂に流動性が与えられて前記模
型20の隅々まで鋳型砂50が充填されるのである。
【0015】なお図2に示されている前記ホッパー44
のノズル46の本数、形状、位置及び鋳型砂50の投入
速度などは、消失性の模型20の形状、鋳枠10のサイ
ズ、造形時間などに基づいて選定されるべきものであ
る。ちなみに図1及び図2で示されている形状の模型2
0の場合、前記ノズル46は円筒形状のものを模型20
の周りに四本配置すれば充分であった。そしてこのとき
の鋳型砂50の毎秒当たりの投入量は10〜20Kgが
最適であった。さらに前記減圧装置32による吸引力、
時間及び繰り返し回数についても模型20の形状などに
応じて決定すべきである。本実施例の場合、吸引力(負
圧力)は67〜80KPs(500〜600mmH
g)、時間は3〜4秒が最適であった。また図2の工程
において前記振動テーブル34の振動を開始してから位
置決め用の鋳型砂50を固化させる時間(図3の時間T
1)、新たな鋳型砂50の投入開始時間、その投入時
間、投入完了時間(図3の時間T2)、間欠的な吸引開
始時間、吸引時間、吸引停止時間、間欠的な吸引完了時
間(図3の時間T3)などは、前記の造型条件に基づき
全てマイクロコンピュータで制御可能である。
【0016】
【発明の効果】本発明は造型時に消失性の模型に加わる
荷重を、すでに鋳枠内に入れられている鋳型砂で支える
ことで、消失性の模型の強度を上げることなく、造型時
における模型の歪みや損傷を防止するとともに、この模
型を適性に位置決めでき、高品質の鋳物を製造できる。
【0017】
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例の造型方法において消失性の模型を位
置決めしている工程の構成図である。
【図2】本実施例の造型方法において鋳枠に振動を加え
ながら鋳型砂を徐々に投入している工程の構成図であ
る。
【図3】鋳枠に振動を加える振動テーブルの振動パター
ンを表したグラフである。
【図4】従来の造型方法の概略を表した構成図である。
【符号の説明】
10 鋳枠 20 消失性の模型 31 加圧装置 32 減圧装置 34 振動テーブル 44 ホッパー 50 鋳型砂

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋳枠の内部で消失性の模型を鋳型砂中に
    埋設させ、この模型の占有部にそのまま溶湯を鋳込む充
    填鋳造法における造型方法であって、前記鋳枠内に前記
    模型を入れる際にその位置決めに必要な量の鋳型砂を前
    もって鋳枠内に入れておき、この鋳枠内に圧縮空気を送
    り込んで前記鋳型砂を流動させながら模型の一部を鋳型
    砂中に埋設させ、圧縮空気の送り込みを止めた後に鋳枠
    に振動を加えて鋳型砂を固化させることで模型を位置決
    めし、引き続き鋳枠に振動を加えながら鋳枠内に新たな
    鋳型砂を徐々に投入して模型全体を鋳型砂中に埋設させ
    ることを特徴とした充填鋳造法における造型方法。
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