JP2974580B2 - 磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はコンピュータの外部記録
装置、特には磁気ハードディスクに有用な磁気記録媒体
及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】情報化社会の進展にともない、大容量の
記録媒体が必要とされ、特にコンピュータの外部メモリ
として中心的な役割をはたしている磁気ディスクは年々
記録容量、記録密度ともに増加しているが、さらに高密
度な記録を行なうために開発が進められている。特に、
ノート型パソコンやパームトップパソコンの開発により
小型のディスクが必要なため、より高密度記録が望まれ
ている。
【0003】このような磁気ディスクにおいて記録媒体
の強度、表面の平滑度、そり、重量等の特性のほとんど
は基板によるものである。従来から、基板にはNiPを
メッキしたアルミ合金基板が用いられているが、Al合
金は柔らかいために、基板の厚みを薄くできなかった
り、ハンドリングの最中に傷がつきやすかったり、衝撃
によって凹んだりするという問題があった。
【0004】そこで、基板に単結晶シリコンを用いるこ
とが提案(特公平 1-42048、特公平2-41089、特公平 2-
59523、特公平 1-45140、特開平 6-68463、特開平 6-28
655、特開平4-259908、IUMRS-ICAM-93 VBb1.3)されて
いる。特公平 2-41089ではシリコン基板を用いる時には
半導体で用いるような基板を用い、下地層を形成してか
ら、鉄合金、コバルト合金などの磁性体からなる記録膜
を形成することが開示されている。
【0005】特公平 2-59523では塗布型記録媒体におい
て、シリコン基板に凹凸をつける手法が記載されている
が、記録密度が高くなるに従って、記録膜が薄くなり、
かつ情報を記録、再生している時の磁気ヘッドと記録媒
体との距離(フライングハイト)が 0.1μm以下と低く
なっているが、この文献にあるような大きな突起を形成
してしまうとフライングハイトが低くできないため、シ
リコンの優れた表面性を十分に利用することができない
上に工程が煩雑となる。しかし、基板表面を平滑にしす
ぎるとCSS特性が悪くなるため、同心円状のテクスチ
ャリングを施すことが特開平4-259908に開示されてい
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、記録膜が薄
くなるにしたがって、記録膜等の成膜はメッキや塗布に
変わって、スパッタ法で行なうことが一般的に行なわれ
ている。一般に記録膜である磁性体の保磁力が大きいほ
ど、高記録密度化が可能である。このため、保磁力を上
げるため研究が行なわれており、記録膜と基板の間の下
地層と呼ばれるCrやCr合金などの層を設けたり、成
膜時に基板を 250℃から 300℃程度に加熱することが一
般的に行なわれている。
【0007】しかし、シリコンを基板として用いた時の
保磁力は、例えば一般に用いられている磁気記録媒体の
記録膜であるCoCrTa合金を用い、DCまたはRFスパッ
タで成膜を行なった時は、磁化容易軸が基板面内にある
ときは、Crを下地層として用いても、保磁力は 1,000
Oe〜 1,300Oeと低い。
【0008】保磁力を大きくするためにはアルミ基板で
は成膜時に基板にマイナスの電圧をかけてスパッタ成膜
を行なう、バイアススパッタが効果的であることが知ら
れている(特公平 5-72015)。バイアススパッタ時に基
板に流れる電流(バイアス電流)はわずかのため、若干
の電気伝導性があればバイアススパッタによって保磁力
の増大の効果が期待できる。シリコンの場合、ボロンや
リンなどを添加することで導電性をだすことができるこ
とが知られており(倍風館「アドバンストエレクトロニ
クスシリーズI−5シリコン」、IUMRS-ICAM-93 VBb1.
3)、基板製造上10Ωcm程度のものが便利である。
【0009】しかし、シリコン基板の場合、一般に量産
に用いられている、枚葉型や通過型などのスパッタ装置
で、バイアススパッタを行なっても、保磁力を大きくす
ることはできないという問題がある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は上記の点を解決
したもので、これはシリコンを基板として用い、成膜プ
ロセスをバイアススパッタ法を用いて行う磁気記録媒体
の製造方法において、該基板と基板保持材との接触抵抗
を10kΩ以下としたことを特徴とする磁気記録媒体の製
造方法を要旨とするものである。
【0011】本発明のシリコン基板とスパッタ時の基板
支持材との接触抵抗を10kΩ以下とすることで、スパッ
タ成膜する時に、基板にバイアス電圧をかけることによ
って記録層が例えばCoCrTa合金の場合、従来法では成膜
時の基板温度をあげることによって保磁力をあげる方法
がとられているが、温度を上げ過ぎるとCo合金が相変
化して、保磁力が低下してしまうため、シリコン基板を
用いた時には 1,300Oe程度までしか保磁力をあげるこ
とができないのに対して、本発明によると保磁力は 1,4
00Oeから 1,600Oe以上にまで大きくすることができ
る。このため、基板材として剛性、熱伝導度、硬度に優
れたシリコンを用いて、表面が平滑で、保磁力の大き
な、高記録密度に適した記録媒体を作製することができ
る。
【0012】
【作用】本発明の特徴は基板であるシリコンと基板支持
材との接触抵抗を10kΩ以下、好ましくは1kΩ以下、
さらに好ましくは 200Ω以下とすることで、スパッタ成
膜する時に、基板にバイアス電圧をかけることによって
記録膜の保磁力を大きくするものであり、この接触抵抗
が10kΩを超えるとバイアスをかけても保磁力を大きく
することは出来ない。この接触抵抗は支持材の材質、電
気抵抗値、シリコン基板中の不純物の種類、濃度さらに
は接触部の表面形状、接触面積、接触させる力によって
決まる。なお、基板支持材としては金属などの電気伝導
性のあるものが使われ、例えばステンレス鋼、アルミ合
金などが例示される。なお、接触抵抗はバイアス電圧に
よって異なることがある。
【0013】ここでいう接触抵抗とは、用いるバイアス
電圧と同じ電圧をかけた時の基板と基板支持材との間の
電気抵抗値をいう。また基板支持材とはスパッタ時に基
板と接触しているもの全てをいう。
【0014】本発明では単結晶、多結晶、アモルファス
等が用いられるが、特に単結晶シリコンが平滑な基板を
得られ易いため、好ましい。シリコンの製造方法は半導
体や太陽電池用に用いられるシリコンの製造方法でよい
が、特に単結晶の場合、CZ法が大きな結晶が得やすい
ため、好ましい。
【0015】基板が単結晶シリコンの場合、スリップや
転位、積層欠陥、酸素析出物などの欠陥やピンホールは
強度の低下や、基板表面の小さな凹凸の原因となるので
少ない方が好ましく、基板1枚10個以下、さらにはゼロ
のものが好ましい。
【0016】単結晶シリコンを用いる場合、結晶方位に
ついては特に制限はない。本実施例では結晶方位 (100)
について記載したが、(111) 、(110) や基板面がこれら
結晶方位に対して何度か傾いたもの等でも同様な結果が
得られた。
【0017】本発明は膜の構造にはよらない。例えば基
板の上に下地層、記録層、保護層の順に成膜したものと
すればよい。膜の材料は一般に用いられているものでよ
く、下地層の材質はCrやCr合金、記録膜はCoCrTaや
CoCrNi又はCoPtCrなどのCo合金やFe合金、保護膜は
CやCSi 、SiO2などとすればよい。
【0018】成膜方法は容易に薄い膜が制御よくつくれ
るスパッタ法がよく、特に基板にマイナス電圧(バイア
ス電圧)をかけて成膜すると保磁力が大きくなる。バイ
アス電圧の大きさは-200Vから-500Vが好ましい。又、
基板の温度は例えばCoCrTaでは 450℃以上で相変化する
ので 400℃以下が適当である。
【0019】基板の表面荒さはなるべく小さい方が情報
を記録、再生している時の磁気ヘッドと記録媒体の距離
(フライングハイト)が低くでき、より高記録密度が可
能となるため、最大荒さRmaxで20nm以下、さらには10nm
以下が好ましい。
【0020】
【実施例】以下実施例、比較例について述べる。 実施例1 CZ法で製造した結晶方位 (100)の単結晶シリコンをス
ライス、ラップした後、コアドリルでカッティングし、
外径65mm、内径20mm、厚み 0.635mmの円盤にした後、こ
れをさらに表面をコロイダルシリカを用いてメカノケミ
カルにポリッシュを行ない、Rmax=6nmの基板を作製し
た。基板支持材にはステンレスを用い、接触抵抗は 7.8
kΩであった。この基板に下地層としてCr層 100nm、
記録層として Co86Cr12Ta2層60nm、保護膜としてカーボ
ン層30nmをこの順に基板温度 300℃、アルゴンガス雰囲
気中、ガス圧 20mtorr、バイアス電圧-250V、カソード
(ターゲット)電圧 500VでDCスパッタ成膜を行なっ
た。この試料を一辺1cmの正方形に割り、VSMで最高
10kOeまで印加し、保磁力を測定したところ 1,350O
eであった。
【0021】実施例2 単結晶シリコンを用い、基板と基板支持材との接触抵抗
を 830Ωとして実施例1と同様に基板作製、成膜したの
ち、保磁力を測定したところ、保磁力は 1,420Oeであ
った。
【0022】実施例3 単結晶シリコンを用い、基板と基板支持材との接触抵抗
を 130Ωとして実施例1と同様に基板作製、成膜したの
ち、保磁力を測定したところ、保磁力は 1,560Oeであ
った。
【0023】比較例1 単結晶シリコンを用い、基板と基板支持材との接触抵抗
を23kΩとして実施例1と同様に基板作製、成膜したの
ち、保磁力を測定したところ、保磁力は 1,280Oeであ
った。
【0024】
【発明の効果】シリコン基板を用いたバイアススパッタ
法により成膜された磁気記録媒体において従来法よりも
保磁力が大巾に増加させることが出来るため高記録密度
に適した記録媒体を作成することが出来る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 俵 好夫 神奈川県川崎市高津区坂戸3丁目2番1 号KSPビル 信越化学工業株式会社 コーポレートリサーチセンター内 (56)参考文献 特開 平6−28655(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G11B 5/85 G11B 5/66

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シリコンを基板として用い、成膜プロセ
    スをバイアススパッタ法を用いて行う磁気記録媒体の製
    造方法において、該基板と基板保持材との接触抵抗を10
    kΩ以下としたことを特徴とする磁気記録媒体の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 該基板と基板保持材との接触抵抗を1k
    Ω以下としたことを特徴とする請求項1に記載の磁気記
    録媒体の製造方法。
  3. 【請求項3】 該基板と基板保持材との接触抵抗を 200
    Ω以下としたことを特徴とする請求項1に記載の磁気記
    録媒体の製造方法。
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