JP2973159B2 - 鋳造装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は例えば歯科用等に用い
られる精密鋳造装置において融解金属を鋳型に注入する
際に用いられる鋳造装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来この種の鋳造装置にはるつぼが用い
られ、そのるつぼとしては図４に示すようなものが知ら
れている。図４のるつぼ５１ではその内部で融解した金
属を鋳型に注入する際にるつぼを傾斜させてるつぼの上
部開口縁に形成された流出ガイド溝５２から注ぐ。一般
にこの種の精密鋳造に用いられる合金は、その量が数グ
ラムから数十グラム程度の小量であることが多い。従っ
てこのような小量の金属を上記したようなるつぼを用い
て融解して鋳型に注入すると、比較的温度が低い流出ガ
イド溝５２の位置を通る際に融解金属が冷却されて凝固
が始まり、単に鋳込み操作上の問題だけでなく、適切な
鋳込温度を維持できないことや、貴金属である場合は付
着による損失等がある。早期の凝固を防止するために融
解金属を適性温度以上に加熱しておくことが考えられる
が、その場合は鋳肌あれ、鋳巣の発生、金属組織の劣化
等の問題が別に生じる。

【０００３】そこで本出願人は特公昭５９−７５４０号
において、図５に示すような鋳造装置又、特公昭５８−
１１３０２号において鋳造方法を提案した。すなわち、
るつぼ６０は上方が開口された容器状の形状で全体が縦
に分割される。分割された各部分６０ａ，６０ｂの開口
の縁部外側位置に被支持部６８ａ，６８ｂが設けられて
いる。同図（ａ）に示すようにこのるつぼ６０は支持体
７０によって支持され、るつぼ６０の下部６４が拘束体
７１の内壁７２によって拘束されて各部分６０ａ、６０
ｂがあわせ面６６で接している。そしてるつぼ６０とる
つぼの下方に配置された鋳型を納めた金属融解炉を一旦
減圧（７００ｍｍＨｇ）にした後、アルゴンガス等の不
活性ガスを注入充満させさらに大気排気をさせるととも
に、高周波コイル６９に高周波電力を供給し、るつぼ内
の金属を融解する。融解後、金属融解炉内を減圧（７０
０ｍｍＨｇ）にし、同図（ｂ）に示すように拘束体７１
を下方又は支持体７０を上方に移動させて拘束を解く。
この拘束が解かれたとき、分割された各部分６０ａ，６
０ｂがその下方を自重によって外側に開き、これにより
るつぼ内で融解された金属７５は下方から鋳型の湯口に
落ち、この落下したと同時に又はそれよりも遅く金属融
解炉内に不活性ガスを圧注入（１平方ｃｍあたり２乃至
４ｋｇ）して鋳込まれる。なお６７はるつぼ上部の切欠
部である。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところが融解金属はる
つぼが外側に開いたとき、全て湯口に一塊に落下するの
ではなく、最後の融解金属がるつぼに付着して糸を引い
たような状態となることがある。また、るつぼを拘束す
るためにるつぼの下部６４が下方に伸ばされており、る
つぼの底壁６５と湯口までの距離が長く、融解金属が湯
口近傍に当たり飛び跳ねることがある。一方、加圧する
不活性ガスは、金属融解炉の上部から注入され、るつぼ
の側面から湯口に通る経路で進み、湯口の融解金属を加
圧する。このためるつぼに付着した金属及びるつぼの底
壁の近傍にある融解金属は、加圧する不活性ガスにより
るつぼの下から上に吹き上げられる。また、湯口近くで
飛び跳ねた融解金属が加圧ガスによって飛散する。そし
て、るつぼの側壁、高周波コイル、その他の金属融解炉
内に付着し、この付着した金属の除去に時間がかかり、
さらにるつぼの損傷を大きくしていた。また、被融解金
属が数ｇ乃至１０数ｇのときは融解金属の飛散によって
融解金属が不足することもあった。

【０００５】

【課題を解決するための手段】底壁が解放可能に形成さ
れ内部に被融解金属を収納するるつぼと、このるつぼを
収納する炉体と、このるつぼの下方に設けた鋳型とを備
えた金属融解炉と、上記被融解金属を加熱融解させ融解
金属を得る加熱手段と、上記被融解金属を加熱する前及
び上記融解金属を上記鋳型に鋳込む前に上記金属融解炉
を排気減圧にする排気手段と、上記るつぼ内の上記底壁
を解放して上記融解金属鋳込みを開始指令する鋳込み指
令手段と、上記融解金属を上記鋳型に鋳込み時に不活性
なガスを圧注入する加圧手段を有し、さらに上記底壁の
上部のガス圧が底壁の下方のガス圧と同じかあるいは高
い圧力にする整流手段を設けている。

【０００６】上記整流手段が不活性ガスをるつぼの上下
に分流させる分流部と、上記分流部の下部に上記金属融
解炉の炉体及び鋳型との間に間隙を作る整流体とにより
構成されている。

【０００７】また、上記分流部直下の整流体の一部に
は、ガス圧を均一にする溝を設けている。

【０００８】

【作用】底壁が解放可能に形成され、内部に被融解金属
を収納するるつぼの下方に鋳型を設けた。るつぼと鋳型
とを収納した金属融解炉を排気手段により排気・減圧に
する。このるつぼ内の金属を加熱手段により加熱し融解
する。金属の融解後排気手段により排気・減圧にし、る
つぼの底壁を強制解放し、融解金属を鋳型の湯口に落と
して、不活性ガスを加圧手段により圧注入する。加圧さ
れたガスは整流手段によりるつぼの底壁の上部と下部の
圧力を同じか又は上部を高くして湯口の融解金属を鋳込
む。

【０００９】整流手段の分流部によって加圧ガスがるつ
ぼの上部と下部に分流する。下部に流れた加圧ガスは、
整流体と炉体及び整流体と鋳型との間隙を通って流れ、
るつぼ上部と下部のガス圧を同じにするか上部を高くす
る。

【００１０】整流手段の分流部直下の整流体の設けた溝
によって、加圧ガスが整流体全体に速やかにガス圧を均
一にする。

【００１１】

【実施例】以下この発明を、実施例を示す図１及び図２
に基づいて説明する。図において１０はこの装置に使用
するるつぼである。るつぼ１０はテーパ付の円筒容器状
に形成され、上部の開口部の外側にフランジ１１を有
し、円筒側壁１３と底壁１２の厚みがほぼ同じで、全体
が中央で縦に２分割されている。１５は２分割された部
分１０ａ，１０ｂの合わせ面であり、その上端位置に各
々上方から切欠部１４が形成されている。又、切欠部１
４のあるフランジの一部は切欠部に対して直角にカット
されカット面１１ａを形成している。なお、図１及び図
２はＡ側はるつぼ１０が閉じた断面図であり、Ｂ側はる
つぼ１０が開いた断面図である。

【００１２】１は、るつぼ１０内に収納された金属をる
つぼの周囲に巻回された高周波コイル１９に印加される
高周波電力によって融解する融解室である。２は融解室
の下部に設けられた鋳型２ｂを有する鋳造室で、この２
つの室は融解中及び鋳造中は鋳造室が下部から図示しな
いシリンダ等によって押し上げられ、Ｏリング２０によ
ってシールされている。５は融解室の炉体で、６はるつ
ぼ支持体であり炉体の上部から挿入及び取り出し可能な
構造になっている。るつぼ支持体６の中央は他の部分よ
り低くなった段差の低部６ａが設けられ、段差の低部６
ａの外側は中央部より高く，中央部を挟むように２つの
丘部６ｃが設けられている。るつぼ１０のカット面１１
ａが丘部６ｃと段差の低部６ａの境界の段差面に接し，
るつぼ１０のフランジがるつぼ支持体６に係合できる構
造をしている。さらに、るつぼ支持体６には，るつぼ合
わせ面１５と並行し，丘部６ｃと丘部６ｃとの中間位置
でるつぼのフランジ１１が搭載できる位置に支持部６ｂ
が設けられている。なお、１８はるつぼ１０と高周波コ
イル１９との間に設けられた対熱絶縁性の隔壁であり、
７はるつぼ支持体６の上部に設けられた支持体カバーで
ある。

【００１３】２１はるつぼ開閉体であり、その後端とる
つぼ支持体６との間にばね２８が設けられ、全体が前方
に押し出される構造となっている。このるつぼ開閉体２
１には先端がフランジ１１を上方から押さえるフランジ
固定支持部２２と、先端近くの下部には下方向に突起す
るフランジ固定解放部２３と、後端には下方に伸びた固
定位置設定部２４が設けられており、全体としてヒ字状
となっている。また、るつぼ開閉体２１の上部には突起
２５が設けられ、後方に移動させるつまみとなってい
る。

【００１４】３０は全体がコの字形をし、るつぼ支持体
６上を水平に移動できるるつぼ開閉アームである。この
アーム３０の中央部には切欠３０ｃが設けられ、この切
欠３０ｃにばね３１が収納され、固定された丘部６ｃと
によってアーム３０全体が外側に押し出すようになって
いる。るつぼ開閉アーム３０は中央から先端にかけて段
差の低部６ａを囲むように並行に伸び、先端は他の部分
より幅広な拘束部３０ａを構成し、他の部分は幅狭な解
放部３０ｂを構成する。

【００１５】３２はるつぼ開閉アーム３０の中央部に当
接するるつぼ固定解放シリンダであり、その先端３２ａ
がアーム３０を内側に押す構造をしている。

【００１６】次にるつぼ１０の設置から融解金属の注入
までの動作について説明する。まず、るつぼ１０を，カ
ット面１１ａが丘部６ｃと段差の低部６ａとの境界の段
差面に係合できるように挿入する。るつぼ開閉体２１を
外側に開き、ばね２８の力によってフランジ固定支持部
２２がフランジ１１に乗るようにセットする。このとき
るつぼ開閉アーム３０の拘束部３０ａにるつぼ開閉体２
１の固定位置設定部２４が当接して固定され、るつぼ開
閉体２１はこれより内側に移動しない。これによりるつ
ぼ１０は破線の矢印方向に力が働き、分割された部分１
０ａ、１０ｂがるつぼ合わせ面１５で当接し、１つのる
つぼを形成する。

【００１７】このるつぼ１０に被融解金属を挿入し、融
解室１と鋳造室２を一体にし、全体を図示しないＯリン
グ、シリンダ等によってシールして金属融解炉を形成す
る。図示されていない真空ポンプによって排気口３５か
ら金属融解炉内を排気しさらに７００ｍｍＨｇに減圧す
る。減圧後高周波コイル１９に高周波電力を印加し、さ
らに図示しないタンクからアルゴン等の不活性なガスを
融解ガス導入口３６を介して金属溶解炉に注入し、排気
口３５から大気排気を行いながら被融解金属を融解す
る。なお、融解された金属はるつぼ合わせ面１５に微小
間隙があっても表面張力によって流出することはない。

【００１８】被融解金属を所定温度で融解すると、図示
しない真空ポンプにより金属融解炉内のガスを排気し、
さらに７００ｍｍＨｇに減圧する。

【００１９】金属融解炉内を減圧すると、シリンダ３２
を動作させ、先端３２ａによりるつぼ開閉アーム３０を
内側に押し込む。アーム３０が内側に押し込まれると、
拘束部３０ａとるつぼ開閉体２１との当接が解かれる。
このため、ばね２８によってるつぼ開閉体２１が内側に
押され、フランジ固定解放部２３がるつぼ１０のフラン
ジ１１を内側に押し、切欠部１４の底部１４ａを支点に
してるつぼ１０の底壁がすばやく開く。

【００２０】るつぼ１０の底壁が開かれると、融解され
た金属は１つの塊となって鋳型の湯口２ａに落下する。
この落下は、解放の指令から２０〜５０ｍｓｅｃ程度
で、湯口２ａに融解金属が落下すると、直ちに３７の加
圧ガス導入口に接続された図示しないタンクからアルゴ
ン等の不活性なガスを加圧注入する。加圧するガスは加
圧ガス導入口３７を介して炉体５の内部に導かれる。加
圧ガスは最奥の位置の分流部３７ｂで上下に分離され、
一方のガス流はるつぼ１０の上部に導かれる。他方のガ
ス流は中央が開口し周縁が他の部分より低い整流板３８
に導かれ、この整流板３８の外側と炉体５との間の間隙
３９ａ，３９ｂ及び整流体３８の下部と鋳型２ｂとの間
隙３９ｃを通り、湯口２ａに導かれる。この２つのガス
流が湯口２ａの融解金属を加圧し、鋳型の奥との圧力差
によって融解金属が鋳込まれる。

【００２１】この時分流部３７ｂの上部に導かれ、るつ
ぼの上部から流れる加圧のガス流は、分流部３７ｂから
の抵抗は小さく流れは大きい。これに対し整流板３８と
炉体５との間隙を流れる下側のガス流は間隙３９ａ，３
９ｂ，３９ｃによって抵抗が大きくなっている。るつぼ
１０の底壁１２の近傍では上方からのガス流が下方から
のガス流よりも早く到達でき、かつ大きくすることがで
きる。また、整流板３８の大きさによって同じ圧力にす
ることもできる。これによりるつぼに付着した融解金属
及びるつぼの低壁の近傍にある融解金属は上から下に加
えられるか又は上下のガス流が同じであれば自然落下と
同様になる。

【００２２】また、整流板は図３に示すように分流部３
７ｂの直下の整流板３８の位置３８ｂからるつぼ開閉体
２１に並行あるいは、るつぼ合わせ面１５に並行する溝
３８ｃを設けている。これにより分流部３７ｂで分流し
た加圧ガスがこの溝３８ｃを介して整流板３８の周囲に
速くながれ、ガス圧を均一にしている。

【００２３】上記実施例ではるつぼが縦方向に分割され
ているが、るつぼの底壁に弁を設け、鋳込み時に弁を解
放するるつぼにも適用することができる。

【００２４】

【発明の効果】以上のように、この発明によれば、るつ
ぼの底壁が開いたとき、るつぼに付着した融解金属及び
底壁近くに融解金属が存在しても、この融解金属に加わ
るガス圧は上部と下部が同じであるか、上部がやや高い
ため、この融解金属が飛散することはない。さらにるつ
ぼの底部と鋳型の湯口との距離が短いため、融解金属が
湯口で飛散することが少ない。そして、るつぼの損傷が
防止でき、従来のようにるつぼ、高周波コイル、その他
金属融解炉に付着した金属を除去する必要がなく、さら
にるつぼ、高周波コイル、その他金属融解炉等の寿命を
長くすることができる。また、被融解金属が小容量であ
っても、融解金属の飛散もなく、融解金属が不足し、鋳
造失敗を起こすことがない。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の融解金属注入装置の一実施例の縦断面
図である。

【図２】図１のカバー７の除いた平面図である。

【図３】図１の整流体３８の平面図を示す。

【図４】従来の融解金属注入装置に使用されるるつぼの
平面図と正面図である。

【図５】従来の融解金属注入装置に使用されるるつぼと
融解金属との関係を示す縦断面図である。

【符号の説明】

１ 融解室 ２ 鋳造室 ２ａ 湯口 ２ｂ 鋳型 ５ 炉体 ６ るつぼ支持体６ａ 段差の低部 ６ｂ 支持部６ｃ 丘部 ７ 支持体カバー １０ るつぼ １０ａ，１０ｂ るつぼ部分 １１ フランジ １２ 底壁 １３ 側壁 １４ 切欠部 １５ るつぼ合わせ面 １８ 隔壁 １９ 高周波コイル ２０ Ｏリング ２１ るつぼ開閉体 ２２ フランジ固定支持部 ２３ フランジ固定解放部 ２４ 固定位置設定部 ２５ 突起 ２８ ばね ３０ るつぼ開閉アーム ３０ａ 拘束部 ３０ｂ 解放部 ３０ｃ 切欠 ３１ ばね ３２ （るつぼ固定解放）シリンダ ３５ 排気口 ３６ 融解ガス導入口 ３７ 加圧ガス導入口 ３７ｂ 分流部 ３８ 整流板 ３８ｃ 溝 ３９ａ，３９ｂ，３９ｃ 間隙

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 ＦＩ Ｆ２７Ｂ 14/06 Ｆ２７Ｂ 14/06 14/10 14/10 (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) B22D 23/00 B22D 45/00

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 底壁が解放可能に形成され内部に被融解
   金属を収納するるつぼと、るつぼを収納する炉体と、こ
   のるつぼの下方に設けた鋳型とを備えた金属融解炉と、
   上記被融解金属を加熱融解させ融解金属を得る加熱手段
   と、上記被融解金属を加熱する前及び上記融解金属を上
   記鋳型に鋳込む前に上記金属融解炉を排気減圧にする排
   気手段と、上記るつぼ内の上記底壁を解放して上記融解
   金属の鋳込みを開始指令する鋳込み指令手段と、上記融
   解金属を上記鋳型に鋳込み時に不活性ガスを圧注入する
   加圧手段と、上記底壁の上部のガス圧が底壁の下部のガ
   スと同じか又は高い圧力にする整流手段を設けた鋳造装
   置。
2. 【請求項２】 上記整流手段が不活性ガスをるつぼの上
   下に分流させる分流部と、上記分流部の下部に上記炉体
   及び鋳型との間に間隙を作る整流体とにより構成された
   請求項１記載の鋳造装置。
3. 【請求項３】 上記分流部直下の整流体の一部にガス圧
   を均一にする溝を設けた請求項２記載の鋳造装置。