JP2972914B1 - 不燃性作動流体組成物 - Google Patents

不燃性作動流体組成物

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洋吉 浦野
稔 秋山
重雄 近藤
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Abstract

【要約】 【課題】 オゾン層の破壊を引き起こすこれまでのCF
C、HCFCが有していた欠点を解消し、優れた熱力学
的特性を有する新規な不燃性作動流体組成物を提供す
る。 【解決手段】 CF3CHFOCF3を8重量%から50
重量%及びCF3CF2OCH3を92重量%から50重
量%含有してなる不燃性作動流体組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フロン代替物とし
て極めて有用な不燃性作動流体組成物に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来より、作動流体としては、クロロフ
ルオロカーボン(CFC)、ヒドロクロロフルオロカー
ボン(HCFC)及びこれらの共沸組成物等がよく知ら
れている。例えば冷凍機用作動流体としては、トリクロ
ロフルオロメタン(CFC−11)、ジクロロジフルオ
ロメタン(CFC−12)、クロロジフルオロメタン
(HCFC−22)等が主に使用されている。また圧縮
式ヒートポンプ用作動流体としては、1,2−ジクロロ
−1,1,2,2−テトラフルオロエタン(CFC−1
14)等がよく知られている。これらCFC、HCFC
は、不燃性で毒性が少なく、安定であり、かつ作動流体
としての優れた熱力学的特性を有することから、これま
で広範囲な分野で使用されてきた。しかしながら、分子
中に塩素原子を含むこのようなCFC、HCFCは、大
気中に放出されると成層圏にまで到達し、成層圏のオゾ
ン層を破壊する。その結果、人類を含む地球上の生態系
に重大な悪影響を及ぼすことが指摘されている。従っ
て、オゾン層のオゾンを分解するCFC、HCFCにつ
いては、その生産を禁止することが国際的に決められて
いる。そのような対象となるCFC、HCFCに上記の
CFC−11、CFC−12、CFC−114及びHC
FC−22が含まれている。冷凍・空調設備等の普及に
伴い、需要が毎年増大してきたこのようなCFC、HC
FCの生産禁止は、居住環境をはじめとして現在の社会
全体に与える影響が極めて大きい。従って、オゾン層を
破壊しない新たな冷媒等の開発が緊急の課題となってい
る。そこで、塩素を含まない代替品としてヒドロフルオ
ロカーボン、ヒドロフルオロエーテル、炭化水素及びア
ンモニアがある。しかし、炭化水素、アンモニアは、可
燃性であり安全性に問題がある。ヒドロフルオロカーボ
ンは、オゾン層を破壊しないが大気寿命の長いものがあ
り、地球温暖化の原因となりうる。そこでヒドロフルオ
ロエーテルが提案されている。例えば、特開平8−26
9444号公報にはペンタフルオロエチルメチルエーテ
ルを主成分とする作動流体が明示されている。この化合
物は冷媒として有用であるが、燃焼試験では可燃であ
る。また、WO94/17153号公報にはCF3CF2
OCH3と炭化水素或いはHFC等との混合物が記載さ
れている。具体的にはCF3OCHF2、CF3OCH3
イソブタン、ジメチルエーテルとの混合物が提案されて
いるが、可燃性となる危険性があるにもかかわらず、こ
れらの混合物の燃焼性について言及されていない。US
P3362180号明細書にはCF3CHFOCF3を用
いた冷凍方法の記載があるが、CF3CF2OCH3との
混合についての記載はない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、オゾン層の
破壊を引き起こすこれまでのCFC、HCFCが有して
いた欠点を解消し、優れた熱力学的特性を有する新規な
不燃性作動流体組成物を提供することをその課題とす
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、オゾン層
の破壊を引き起こすこれまでのフロンの欠点を解消し、
ヒドロフルオロカーボンや炭化水素にない特徴を持ち、
しかも優れた熱力学的特性を有する新規な作動流体の開
発について鋭意研究を重ねた結果、含フッ素エーテルで
あるCF3CF2OCH3とCF3CHFOCF3との混合
物がその目的に合致する要件を具備していることを見い
だし、本発明を完成するに至った。即ち、本発明によれ
ば、CF3CHFOCF3を8重量%から50重量%及び
CF3CF2OCH3を92重量%から50重量%含有し
てなる不燃性作動流体組成物が提供される。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明の組成物で用いる一方の成
分であるCF3CHFOCF3の主な物性を示すと、沸
点:−9.6℃、分子量:186、臨界温度:103
℃、臨界圧力:2.621MPaである。また、ガラス
製のシールドチューブ中で、150℃で10日間放置し
ても安定な化合物である。もちろん当該化合物は不燃性
で、更に吸入毒性も低い。このものは、例えばLur’
e et al.,J.Org.Chem.USSR(E
ngl. Transl.),7(1971),190
4.や特開平8−92145号公報に記載されている方
法で合成できる。本発明の組成物で用いる他方の成分で
あるCF3CF2OCH3の主な物性を示すと、沸点:6
℃、分子量150、臨界温度134℃、臨界圧力:2.
887MPaである。また、ガラス製のシールドチュー
ブ中で、175℃で30日間放置しても安定な化合物で
ある。更に吸入毒性も低い。この化合物は、例えば、特
開平8−269444号公報に記載されている方法で合
成できる。本発明組成物において、そのCF3CHFO
CF3の割合は、CF3CHFOCF3とCF3CF2OC
3の合計量に対して、8〜50重量%、好ましくは8
〜40重量%であり、そのCF3CF2OCH3の割合
は、前記合計量に対して92〜50重量%、好ましくは
92〜60重量%である。本発明の組成物の沸点は、−
4〜5℃、好ましくは−3〜5℃である。
【0006】本発明の組成物には、必要に応じて、各種
の安定剤を併用することができる。即ち、過酷な使用条
件下により高度の安定性が要求される場合には、例え
ば、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、
グリシドール等のエポキシド類、ジメチルホスファイ
ト、ジイソプロピルホスファイト、ジフェニルホスファ
イト等のホスファイト類、トリラウリルトリチオホスフ
ァイト等のチオホスファイト類、トリメチルホスフィン
サルファイド、トリフェニルホスフィンサルファイド等
のホスフィンサルファイド類、ホウ酸、トリエチルボレ
ート、トリフェニルボレート、フェニルボロン酸、ジフ
ェニルボロン酸等のホウ素化合物、2,6−ジ−ter
t−ブチルパラクレゾール等のフェノール類、ニトロメ
タン、ニトロエタン等の脂肪族ニトロ化合物、アクリル
酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル
類、ジメトキシメタン、1,4−ジオキサン等のエーテ
ル類、tert−ブタノール、ペンタエリスリトール、
パライソプロペニルトルエン等を併用することができ
る。これらの安定剤は、CF3CHFOCF3とCF3
2OCH3の合計量にに対して0.01〜5重量%、好
ましくは、0.1〜2重量%の範囲で添加することがで
きる。また、本発明の作動流体組成物の特性を阻害しな
い程度であれば、HFC−134a(CF3CH2F)な
どのヒドロフルオロカーボンや、ビス(ジフルオロメチ
ル)エーテルなどヒドロフルオロエーテル等を添加する
ことができる。
【0007】本発明組成物の主成分であるCF3CF3
CH3は、水素原子を含む為、大気中の水酸基ラジカル
との反応性が高く、対流圏で分解され易い。また塩素原
子を含まない為、オゾン層のオゾンも分解しないので、
オゾン層の破壊や温室効果の小さい化合物である。
【0008】本発明の作動流体組成物は、冷凍機器等の
作動流体としてだけでなく、ヒートポンプ等の作動流体
としても有用である。本発明の作動流体は、従来のフロ
ンと同様、発泡剤やエアゾール等の各種用途に使用でき
るが、特に作動流体として、従来のCFC−11、CF
C−12及びCFC−114の代替物として極めて有用
なものである。本発明の作動流体は、熱安定性に優れ、
その安定性は従来のフロンと同等水準にあり、かつ高分
子化合物に対する溶解性が低いので、既存の冷凍機器等
における材料変更等を最小限にとどめて使用できる。
【0009】
【実施例】以下、本発明についてその実施例を用いて説
明するが、本発明はその実施例に限定されるものではな
い。
【0010】実施例1 CF3CHFOCF3とCF3CF2OCH3との混合ガス
と、空気および水蒸気を含む試験ガスを調製し、その混
合ガスの燃焼性を以下に示す燃焼試験により調べた。ま
た、二成分の気液平衡を常法により調べ、不燃性となる
ガス組成の時の液組成を算出した。
【0011】〔燃焼試験〕図1に測定容器の概略を示
す。容器は内径10cmで、長さが40cmの硬質硝子
肉厚円筒の上下にステンレス製フランジを取付けたもの
である。放電電極は、下部フランジの底面から35mm
の高さの中心軸に水平に向かい合う、先端を鋭角にした
径2mmのタングステン棒であり、このタングステン棒
は、絶縁体を介してフランジを貫通する2本のステンレ
ス棒(径10mm、中心間隔40mm)で支持する構造
である。また、放電電源は、定格二次電圧が15kV、
放電時の実効電圧約800V、実効電流約0.03Aと
なるネオントランスを用いた。さらに、下部フランジに
は試料ガスの導入、排出口が設けられている。上部フラ
ンジには、径が60mmのステンレス薄板製の攪拌翼
が、径8mmのシャフトの先に取付けられ、上部フラン
ジの下面から50mm下の中心軸に下がっている。ま
た、上部フランジには、容量10kgf/cm2のスト
レンゲージ式圧力変換器、及び作動圧100psiの逃
がし弁、ならびに熱電対が取付けられている。試験は、
以下のように行った。まず、容器内を真空ポンプで排気
し、水蒸気を10.5mmHg導入し、試料ガス及び乾
燥空気を所望の分圧だけ導入した。10分間撹拌後着火
し、容器内の圧力変動を測定した。放電の持続時間は、
ネオントランスに印加する一次電圧(AC100V)の
印加時間をタイマー(立石電機製、H5CR型)で制御
した。電極間の距離は7mm、放電時間は0.15秒と
した。燃焼の判定は圧力の上昇をもって燃焼とした。
【0012】前記燃焼試験による測定の結果得られた、
加湿空気中でのCF3CHFOCF3とCF3CF2OCH
3との混合ガスの燃焼範囲を、図2に示した。図2から
判るように、気相中のCF3CHFOCF3/CF3CF2
OCH3の比率が1.90/12.5(即ち13/8
7)vol以上になれば不燃性となる。図3にCF3
HFOCF3とCF3CF2OCH3との気液平衡図を示し
た。図3より判るように、気相の組成においてCF3
HFOCF3/CF3CF2OCH3が13/87molと
なる液相組成は、CF3CHFOCF3/CF3CF2OC
3が7/93molであり、これは重量に換算すれば
8/92となることがわかった。なお、図3において、
1およびy1は、それぞれ、CF3CF2OCH3成分の
液相及び気相におけるモル分率を示す。
【0013】
【発明の効果】本発明によれば、オゾン層の破壊を引き
起こすことがなく、優れた熱力学的特性を有し、CFC
−114の代替物として極めて有用な作動流体組成物が
提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】燃焼試験装置の概念図を示す。
【図2】加湿空気中でのCF3CHFOCF3とCF3
2OCH3との混合ガスの燃焼範囲を示すグラフであ
る。
【図3】CF3CF2OCH3とCF3CHFOCF3の気
液平衡図を示す。
フロントページの続き (72)発明者 浦野 洋吉 東京都文京区本郷2−40−17本郷若井ビ ル6階 財団法人地球環境産業技術研究 機構 新規冷媒等プロジェクト室内 (72)発明者 秋山 稔 東京都文京区本郷2−40−17本郷若井ビ ル6階 財団法人地球環境産業技術研究 機構 新規冷媒等プロジェクト室内 (72)発明者 近藤 重雄 茨城県つくば市東1丁目1番 工業技術 院物質工学工業技術研究所内 (72)発明者 関屋 章 茨城県つくば市東1丁目1番 工業技術 院物質工学工業技術研究所内 審査官 鈴木 恵理子 (56)参考文献 特開 平8−269444(JP,A) 特表 平8−505657(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C09K 5/04 CA(STN)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 CF3CHFOCF3を8重量%から50
    重量%及びCF3CF2OCH3を92重量%から50重
    量%含有してなる不燃性作動流体組成物。
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