JP2968882B2 - SiC質焼結体およびその焼成方法 - Google Patents

SiC質焼結体およびその焼成方法

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JP2968882B2 JP4064608A JP6460892A JP2968882B2 JP 2968882 B2 JP2968882 B2 JP 2968882B2 JP 4064608 A JP4064608 A JP 4064608A JP 6460892 A JP6460892 A JP 6460892A JP 2968882 B2 JP2968882 B2 JP 2968882B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、SiC質焼結体および
その焼成方法に係り、さらに詳しくは、タイル焼成など
の迅速焼成炉用棚板などとして好ましく使用されるSi
C質焼結体とその焼成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】炭化珪素(SiC)質焼結体は、その優
れた耐熱性、耐火性から工業上重要な地位を占めてお
り、例えば陶磁器焼成用の棚板、その他半導体焼成用炉
芯管などに多用されている。このようなSiC質焼結体
の中で、SiCとSiを構成成分として含むSi−Si
C焼結体が知られている。このSi−SiC焼結体はS
iC粒子にカーボン(C)微粉末および有機バインダー
を添加し、これを流し込み成形、押出成形またはプレス
成形等により成形後、Si雰囲気中で焼成することによ
り製造されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、流し込
み成形による方法で得られる焼結体では、表層と中心部
で密度および気孔率に大きな差ができ、極端な場合には
中心部に巣ができるという問題があった。押出成形で
は、例えば板状に押出しする場合反りが発生するほか、
口金が高価であるという問題があった。プレス成形の場
合には、成形時にラミネーション(層状の剥離)が生じ
易く、また保形性が低いため取扱い時に破損が生じるこ
とがあった。Si−SiC焼結体の製造に際してプレス
成形を用いることができれば量産化、工業化に好適と考
えられるが、前記したような問題があった。
【0004】また、本発明者が検討したところ、成形体
をSi雰囲気中で焼成するに際しても、焼成条件、すな
わち雰囲気、焼成温度、昇温速度等をいかに制御するか
によって得られる焼結体の特性が大きく左右されること
がわかってきた。従って、本発明は例えばプレス成形な
どによって得られた成形体の焼成方法とそれによって得
られる特性の優れたSiC質焼結体を提供することを目
的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明によれ
ば、SiCとSiを少なくとも構成成分として含むSi
C質焼結体であって、曲げ強度が15kg/mm2以上、気孔
率が1.0%以下で、かつ中心部と表層部の気孔率の差
が20%以内であり、中心部と表層部の曲げ強度差が2
0%以内であり、耐酸化性および耐スポーリング性に優
れたことを特徴とするSiC質焼結体、が提供される。
【0006】また、本発明によれば、SiC粉体、凝集
粒子の90重量%以上が解砕されるまで解砕した黒鉛
粉、有機質バインダーおよび水分または有機溶剤を含有
してなる成形用原料を用い、これを成形した後、得られ
る成形体を立設して焼成するにあたり、金属シリコン雰
囲気でかつ減圧の不活性ガス雰囲気又は真空中におい
て、1350〜2500℃で焼成することを特徴とする
SiC質焼結体の焼成方法、が提供される。本発明にお
いては、1350〜1500℃の間に、50℃/hr以下
の昇温速度で昇温する昇温過程を少なくとも一度以上有
し、かつこの昇温過程を2時間以上維持することが、S
iとCの反応を促進してSiCの生成を充分に行なうた
めに好ましい。
【0007】
【作用】本発明は、雰囲気、焼成温度、昇温速度等の焼
成条件を特定とし、特性の優れたSiC質焼結体を得る
ための焼成方法とそれによって得られた特定物性を有す
るSiC質焼結体である。このような特定物性を有する
SiC質焼結体は、耐酸化性および耐スポーリング性に
優れており、タイル焼成などの迅速焼成炉用棚板などと
して好ましく使用される。まず、本発明で用いる成形用
原料について説明する。成形用原料としては、SiC微
粉とSiC粗粉を含むことが好ましい。SiC微粉は、
好ましくは平均粒径が1〜10μmで、しかも0.1〜
15μmの粒径範囲に90重量%以上の粒子が分布する
ものであり、SiC粗粉は、好ましくは平均粒径が25
〜1500μm、しかも20〜2000μmの粒径範囲
に90重量%以上の粒子が分布するものである。また、
SiC微粉とSiC粗粉の含有割合は10/90〜90
/10の範囲が好ましい。
【0008】また成形用原料には黒鉛粉を含むが、その
粒度としては、好ましくは平均粒径が0.1〜20μm
で、0.05〜30μmの粒径範囲に90重量%以上分
布するものを用いる。黒鉛粉は、SiC微粉とSiC粗
粉の合計量に対して0.5〜25重量%含有する。そし
て、このSiCの微粉と粗粉、および黒鉛粉に、さらに
有機質バインダーと水分または有機溶剤を含有して成形
用原料が構成される。なお、有機質バインダーとしては
メチルセルロース、イソバン等が好ましく用いられ、そ
の含有量はSiC微粉とSiC粗粉の合計量に対して
0.1〜5.0重量%である。また、水分または有機溶
剤の含有量はSiC微粉とSiC粗粉の合計量に対して
0.5〜5.0重量%である。
【0009】このような所定粒度のSiC微粉、SiC
粗粉および黒鉛粉を所定量含有し、さらに有機質バイン
ダーと水分又は有機溶剤を含有した成形用原料を混合
し、この混合物を好ましくはボールミル又はフレットミ
ル等の粉砕機を用いて原料を調整する。この調整の際、
本発明では、黒鉛の凝集粒子の90重量%以上が解砕さ
れるまで解砕する尚、ここで解砕度は20mm×20
mmの成形型に適量、解砕前の原料を入れプレス成形し
た時にプレス面にある黒鉛凝集粉の数と解砕後の原料の
それを拡大鏡で測定することによりその比を求めて計算
される。
【0010】次に、得られた成形用原料を成形するが、
成形方法としてはプレス成形が好ましい。又プレス成形
としては油圧プレスが好ましい。また油圧プレス圧とし
ては通常50〜2000kgf/cm2 を用いる。なお、油圧
プレス後の成形体に対しラバープレスを施すことは、成
形体ひいては焼結体の均質性を増すため有効である。
又、成形体が肉薄の場合には、上記プレスを施すに際
し、成形圧の1/2以下の圧力で原料を予備成形して原
料中に含まれる空気を除去し、次いで所定の成形圧で成
形することが、ラミネーションの発生防止の観点から好
ましい。
【0011】上記したように成形して得られる成形体
を、金属シリコン雰囲気下(焼成時に金属シリコンが溶
融し、成形体は金属シリコンの液相下に置かれる)にお
いて所定の条件で焼成することにより、耐酸化性および
耐スポーリング性の優れた焼結体を得ることができる。
上記焼成に際しては、成形体を立設して焼成することが
反り発生防止のために重要である。ここで立設とは、成
形体が例えば棚板などの板状成形体の場合、垂直方向に
立てて焼成することを云う。また、成形体を立設するに
際しては、各成形体の間隔を2mm以上、好ましくは5
mm以上とし、さらに板状成形体の場合には肉厚の1/
2以上の間隔を設けることが、Siのしみ出しによる各
成形体同士の接着防止の観点から好ましい。
【0012】次に、焼成条件としては、基本的に、金属
シリコン雰囲気でかつ減圧の不活性ガス雰囲気又は真空
中において、1350〜2500℃で焼成することが必
要である。そして、SiとCの反応を促進してSiCの
生成を充分に行なうため、1350〜1500℃の温度
範囲を、50℃/hr以下の昇温速度で昇温する昇温過程
を少なくとも一度以上有し、かつこの昇温過程を2時間
以上維持するようにすることが好ましい。また、不活性
ガス雰囲気としては、SiCとの反応性を考慮すると、
2ガス雰囲気は不適当であり、その他のアルゴン(A
r)ガス、ヘリウム(He)ガスなどの雰囲気下が好ま
しい。
【0013】以下具体的な焼成スケジュールを説明す
る。まず、室温から約600℃までは10Torr以下、好
ましくは0.01〜0.1の真空下で焼成する。約60
0℃〜約1000℃の間は、50Torr以下、好ましくは
0.1〜10Torrの真空下あるいはアルゴンガス等の雰
囲気下で焼成する。次に、約1000℃から最高温度
(約1600〜約2500℃の間)まではアルゴンガス
雰囲気で減圧下とすることがSiCへのSiの濡れ性が
改善されるため好ましい。
【0014】なお上記焼成工程のうち、1350〜15
00℃の間を、50℃/hr以下の昇温速度で昇温する昇
温過程を少なくとも一度以上有し、かつこの昇温過程を
2時間以上維持するように制御することが重要である。
これは、約1420℃が金属Siの溶解温度であり、溶
解されたSiとCとの反応を促進し、Si+C→SiC
の反応を充分に行なうことができる。以上のような条件
で焼成されたSiC質焼結体は、反り、切れが発生せ
ず、しかも中心部に巣がなく、また特性的には強度が大
きくて気孔率が小さいものである。そして、このSiC
質焼結体はさらに中心部と表層部の気孔率および強度の
差が所定以下に小さいもので、耐酸化性および耐スポー
リング性に優れたものである。
【0015】即ち、得られるSiC質焼結体は、SiC
とSiを少なくとも構成成分として含むSiC質焼結体
であって、曲げ強度が15kg/mm2以上、気孔率が1.0
%以下で、かつ中心部と表層部の気孔率の差が20%以
内であり、中心部と表層部の曲げ強度差が20%以内で
あり、耐酸化性および耐スポーリング性に優れたもので
ある。SiC質焼結体の気孔率が1.0%を超える場
合、あるいは中心部と表層部の気孔率の差が20%を超
える場合には、強度、および耐酸化性、耐スポーリング
性が低くなる。
【0016】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に
説明するが、本発明はこれらの実施例に限られるもので
はない。 (耐スポーリング性(△T)の評価方法)焼結体の70
%面積で肉厚10mmのアルミナレンガを積載し、一定
温度T2の炉から大気中(温度T1 )に引き出してクラ
ックが発生する△T(=T2 −T1 )を測定した。 (耐酸化性の評価方法)焼結体を、1150℃で100
hr、H2 O+O2 のガス中に置き、その増量分(△
W)を測定した。
【0017】(実施例1〜6、比較例1〜2)平均粒
径、粒径分布および含有率を表1のように変えたSiC
微粉、SiC粗粉および黒鉛粉に、有機質バインダー
(メチルセルロース)および水分または有機溶剤を外配
で表1に示す割合で配合し、成形用原料を得た。次に、
これらの成形用原料をボールミルを用いて表1のような
黒鉛凝集粒子の解砕度となるように解砕した。ボールミ
ルとしては、1100rpm で、ボールは表面にプラスチ
ックスがコートされたモノボールを使用した。次に、解
砕された成形用原料を金型内に導入し、油圧プレスを用
い表1の圧力で成形し、表1に示す各種肉厚の板状成形
体を得た。
【0018】
【表1】
【0019】次いで、この板状成形体のうち、200×
30×10(厚さ)(mm)のものを表2に示す条件で焼
成し、SiC質焼結体を得た。得られたSiC質焼結体
の気孔率、曲げ強度を表2に示す。なお、表層部は表面
から3mmまでの部分、中心部は表面から3mm〜7mmの部
分として測定した。また、SiC質焼結体の耐スポーリ
ング性(△T)および耐酸化性(△W)を評価した。結
果を表2に示す。表2に示すように、実施例1〜6の焼
結体は比較例1〜2の焼結体に比し、気孔率が小さく、
しかもその差が小さく、曲げ強度が大きいことがわか
る。また、△Tは大きいが、△Wは小さく、耐スポーリ
ング性および耐酸化性に優れていることも判明した。
【0020】
【表2】
【0021】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明によれば、雰
囲気、焼成温度、昇温速度等の焼成条件を特定としたの
で、反り、切れがなく、中心部に巣がない、耐酸化性お
よび耐スポーリング性に優れたSiC質焼結体を得るこ
とができる。得られるSiC質焼結体は、耐酸化性、耐
スポーリング性を重視する迅速焼成炉用棚板、匣鉢、サ
ヤなどの窯道具、特にローラーハースキルンを用いたタ
イル焼成用棚板に好ましく用いることができる。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 SiCとSiを少なくとも構成成分とし
    て含むSiC質焼結体であって、曲げ強度が15kg/mm2
    以上、気孔率が1.0%以下で、かつ中心部と表層部の
    気孔率の差が20%以内であり、中心部と表層部の曲げ
    強度差が20%以内であり、耐酸化性および耐スポーリ
    ング性に優れたことを特徴とするSiC質焼結体。
  2. 【請求項2】 SiC粉体、凝集粒子の90重量%以上
    が解砕されるまで解砕した黒鉛粉、有機質バインダーお
    よび水分または有機溶剤を含有してなる成形用原料を用
    い、これを成形した後、得られる成形体を立設して焼成
    するにあたり、金属シリコン雰囲気でかつ減圧の不活性
    ガス雰囲気又は真空中において、1350〜2500℃
    で焼成することを特徴とするSiC質焼結体の焼成方
    法。
  3. 【請求項3】 1350〜1500℃の間に、50℃/
    hr以下の昇温速度で昇温する昇温過程を少なくとも一度
    以上有し、かつこの昇温過程を2時間以上維持する請求
    項2記載の焼成方法。
  4. 【請求項4】 成形をプレス成形により行う請求項2記
    載の焼成方法。
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