JP2968840B2 - グリア由来神経栄養因子 - Google Patents

グリア由来神経栄養因子

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JP2968840B2 JP5506234A JP50623493A JP2968840B2 JP 2968840 B2 JP2968840 B2 JP 2968840B2 JP 5506234 A JP5506234 A JP 5506234A JP 50623493 A JP50623493 A JP 50623493A JP 2968840 B2 JP2968840 B2 JP 2968840B2
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Description

【発明の詳細な説明】 発明の分野 本発明は、神経栄養因子およびとくにグリア由来神経
栄養因子(GDNF)に関する。本発明にはまた、天然ソー
スからのGDNFの精製方法、GDNFをコードするラットおよ
びヒト遺伝子のクローニング方法、ならびにGDNFをコー
ドするラットおよびヒト遺伝子の核酸配列を包含する。
GDNF遺伝子は発現ベクターにサブクローニングされ、こ
のベクターは生物学的に活性なGDNFの発現に使用され
た。さらに、本発明は、神経障害および神経関連疾患た
とえばパーキンソン病の防止および処置のためのGDNFの
使用を包含する。
GDNFに対する抗体ならびに神経栄養因子のGDNFファミ
リーのメンバーの同定方法が開示される。そして最後
に、患者にGDNFを分泌する細胞を移植することによる神
経障害の防止および処置方法が記載される。
発明の背景 神経栄養因子は神経系または神経系によって刺激され
る非神経組織に見出される天然の蛋白質であり、その機
能は神経および/またはグリア細胞の生残を促進し、表
現型分化を維持することである(Varon & Bunge 1979
Ann.Rev.Neurosci.1:327;Thoenen & Edgar 1985 Scien
ce 229:238)。この生理学的役割により、神経栄養因子
は、様々な神経変性疾患の原因となる神経細胞の変性お
よび分化機能の喪失の処置に有用性が考えられる。
特定の神経栄養因子が神経障害の処置に有用である可
能性があるためには、その障害神経細胞のクラスがその
因子に応答するものでなければならない。異なる神経栄
養因子は通常、明らかに異なるクラスの神経細胞に対し
て作用する。したがって、異なる形態の疾患または損傷
を起こすそれぞれのクラスの障害ニューロンを処置する
ためには、様々の異なる神経栄養因子を手元にもってい
ることが賢明である。
神経栄養因子は、対応するニューロンを、様々な無関
係の障害に対して保護することができる。たとえば、神
経栄養因子神経成長因子(NFG)は、感覚ニューロンの
重要な部分を、軸索突起の切断によって生じる死から
(Richら,1987 J.Neurocytol.16:261;Ottoら,1987 J.Ne
urosci.83:156)、胚の発育時における個体発生死から
(Hamburgerら,1984 J.Neurosci.4:767)ならびにタキ
ソールまたはシスプラチンの投与によって起こる障害か
ら(Apfelら,1991 Ann Neurol.29:87)救出する。この
明らかに普遍的な保護から、ある神経栄養因子が実験的
障害に対して対応するニューロンを保護するのであれ
ば、病因は不明であったとしても、それらのニューロン
の障害が関与する疾患の患者の処置に有用であろうと考
えられるようになった。
与えられた神経栄養因子は、適切な神経細胞特異性を
もつと同時に、医療処置への使用に十分な量が利用でき
なければならない。神経栄養因子は通常、組織にはほと
んど検出できない程の量しか存在しないので(たとえ
ば、Hofer & Brade 1988 Nature 331:261;Linら,1989
Science 246:1023)、医薬として使用する量の神経栄養
因子を直接動物組織から調製することは不便である。別
法として、神経栄養因子の遺伝子の位置を決定し、この
蛋白質を事実上無限に生産できる組換え発現系を確立す
るための基盤としてこの遺伝子を使用することが望まし
い。
本出願の発明者らは、生物学的サンプルについて、パ
ーキンソン病で変性する黒質ドーパミン作動性ニューロ
ンの胚前駆体に対する神経栄養活性をスクリーニングす
る方法を記述する。パーキンソン病の処置に有用と考え
られる神経栄養因子を同定するためのこのバイオアッセ
イは、以前報告されたアッセイ(Friedmanら,1987 Neur
o.Sci.Lett.79:65−72、参考としてとくに本明細書に導
入する)に基づき、本発明において改良が加えられたも
のである。このアッセイは、ドーパミン作動性ニューロ
ンに向けられた神経栄養活性の可能性について様々なソ
ースをスクリーニングするために使用された。本発明は
このようなソースの一つ、膠芽腫細胞系、B49(Schuber
tら,1974 Nature 249:224−27、参考としてとくに本明
細書に導入する)からの調整培養培地より精製された新
規な神経栄養活性の特性を記載する。この細胞系からの
調整培地がドーパミン作動性神経栄養因子を含有するこ
とは以前に報告されている(Bohnら,1989 Soc.Neurosc
i.Abs.15:277)。この以前の報告においては、神経栄養
活性のソースは精製されておらず、化学的に特徴づけら
れてもいないし、また調整培地中の単一物質によること
も示されていない。神経障害は、1種または2種以上の
神経細胞の生残および/または正常な機能を害する条件
によって引き起こされる。このような神経障害は、以下
にその一部を示すような広範囲の多様な原因によって生
じる。
神経障害は生理的な損傷によって起こることがあり、
これは参照部位の近傍における軸索突起および/または
神経細胞体の変性を生じる。神経障害はまた、卒中の場
合のような、神経系の一部への一時的または永久的な血
流の停止によって起こる。神経障害はまた、癌およびエ
イズ化学療法剤たとえばそれぞれシスプラチナムおよび
ジデオキシシチジン(ddc)への意図的または偶発的な
暴露によって生じる。神経障害はさらに、慢性的代謝性
疾患、たとえば糖尿病または腎機能異常によって起こ
る。神経障害はまた、特定のニューロン集団の変性を生
じる神経変性疾患、たとえば、パーキンソン病、アルツ
ハイマー病および筋萎縮性側索硬化症(ALS)によって
も起こる。
本出願は新規な神経栄養因子を記述する。神経栄養因
子とは、特定の神経細胞の正常機能の促進および/また
はそれらの細胞の様々な異なる形態の障害からの保護に
関与する天然の蛋白質である。これらの性質から、GDNF
には、上にとくに示したような多様な形態の神経障害の
処置に有用である可能性が示唆される。
パーキンソン病は、一連の独特な症状、すなわち、筋
強剛、運動緩徐、脂漏、加速歩行、固定姿勢、流涎およ
び「丸薬調製様」振戦によって確診される。この疾患は
世界中のすべての種族に認められ、平均発症年齢は60歳
である。
何年にも亘る理論的対立と論争ののち、パーキンソン
病の生化学的基盤がその主原因として明らかにされてき
た(たとえば、Bergman,1990 Drug Store News,12:IP19
参照)。パーキンソン病の理解には、黒質、基底核およ
び、とくに線状体として知られる脳の領域が極めて重要
である。黒質、すなわち中脳に両側性に認められる一対
の灰白質の着色層はドーパミン伝達が関与し、一方、正
常な基底核機能には、黒質に関連し、一部はドーパミ
ン、アセチルコリンおよびその他の物質によって仲介さ
れる一連の相互作用およびフィードバック系が包含され
る。
パーキンソン病においては、ニューロンの変性によっ
て起こる黒質のドーパミン作動活性に機能異常がある。
これがドーパミンの欠乏状態を招き、活動バランスがコ
リン作動性優位に移行する。したがって、アセチルコリ
ン濃度の上昇はないにもかかわらず、このコリン作動性
メディエーターによる中枢神経系への興奮作用(すなわ
ち振戦)が枯渇したドーパミンの抑制作用を凌駕するこ
とになる。
現在、パーキンソン病の最も有効な処置は、レボドー
パの経口投与である。レボドーパは中枢神経系に浸透
し、基底核で酵素的にドーパミンに変換される。したが
って、レボドーパの有益な作用は、脳のドーパミン濃度
を上昇させることにあると考えられる。残念ながら、レ
ボドーパも、またそれほど一般的には使用されていない
他の薬剤も、ドーパミン作動性ニューロンの変性によっ
て生じるこの疾患の進行を実際にくい止めることはな
い。
他の研究者達も、様々な生物学的ソース中にドーパミ
ン作動活性の存在を報告してきた。SpringerらのPCT公
告WO91/01739号では、末梢神経系の細胞に由来する抽出
物中に、ドーパミン作動性神経栄養活性が同定された。
同定された活性は精製されなかったが、分子量10,000ダ
ルトン未満の因子によるものとされた。この因子はラッ
トの坐骨神経から単離されたが、同じくこの神経から見
出されているCNTF(Linら,1989 Science 246:1023)と
は明らかに相違する。
Appelらの米国特許第5,017,735号では、ドーパミン作
動活性が尾状核−被殻組織からの抽出物中に同定され
た。この場合も、活性を生じる因子は精製されていない
が、活性含有分画の見掛けの分子量は比較的小さい。ま
たNiijimaら,1990 Brain Res.528:151−154(成熟ラッ
ト脳の求心路を化学的に遮断した線状体)およびLoら,1
990 Soc.Neurosci.Abstr.16:809(線状体由来因子)も
参照されたい。さらに、他の既知の神経栄養因子、たと
えば脳由来神経栄養因子(BDNF)、ならびに酸性および
塩基性線維芽細胞成長因子が同様にドーパミン作動活性
を有することも明らかにされている。
本発明のGNDFは、ラット胚中脳から単離されたドーパ
ミン作動性神経細胞の細胞培養体の機能的活性および生
残を促進するその能力に基づいて単離された。これらの
ドーパミン作動性神経細胞は、パーキンソン病で変性す
る成人黒質におけるドーパミン作動性神経細胞の胚前駆
体である。したがって、GDNFには、パーキンソン病の症
状の原因となる神経変性の減弱に有用性が考えられる。
さらに、GDNFは、ヒト患者のドーパミン作動性神経細
胞に対する他の型の障害およびその不適切な機能の処置
に有用である可能性が考えられる。このような障害およ
び機能異常が、精神分裂症や他の種類の精神病に起こっ
ていることも考えられる。このような状態の最近の処置
には、ドーパミン受容体に活性な薬剤がしばしば要求さ
れ、これはこれらの受容体をもつニューロン集団を支配
するドーパミン作動性神経の不適切な機能がこの疾患過
程に関与していることを示唆している。
他の神経栄養因子についての以前の経験によれば、GD
NFで処置できる新たな形態の神経障害は、この神経栄養
因子に応答する様々な種類の神経細胞についてさらに知
識が増えるのに応じて、明らかにされるものと思われ
る。たとえば、神経成長因子(NGF)は、アルツハイマ
ー病で変性している前脳基底核コリン作動性ニューロン
で神経栄養因子として作用することが最近発見された時
点では、アルツハイマー病の処置に有用である可能性の
みが取り沙汰された(Williamsら,1986 Proc.Natl.Aca
d.Sci.USA 83:9231)。本発明においては、GNDFで有効
に処置できる他の形態の神経障害を決定するための方法
が提供される。
Patrick Aebischerと共同研究者らは、ある種の環境
で薬剤または医薬を送達する手段として有用な、半透過
性の移植可能な膜デバイスの使用を報告している。たと
えば彼らは、神経伝達因子を分泌する細胞のカプセル封
入、およびパーキンソン病罹患患者の脳へのこのような
デバイスの移植を提案している。Aebischerらの米国特
許第4,892,538号;Aebischerらの米国特許第5,011,472
号;Aebischerらの米国特許第5,106,627号;PCT出願WO91/
10425号;PCT出願WO91/10470号;Winnら,1991 Exper.Neur
ol.113−322−329;Aebischerら,1991 Exper.Neurol.11
1:269−275;およびTrescoら,1992 ASAIO 38:17−23参
照。
発明の要約 本発明は、実質的に精製されたグリア由来神経栄養因
子(GDNF)に関し、それを請求するものである。本発明
の一実施態様においては、B49調整培地の比活性より少
なくとも約24,000倍高い比活性を有する実質的に精製さ
れたGDNFが得られる。実質的に精製されたGDNFは少なく
とも約12,000TU/μgの比活性を有する。
本発明の実質的に精製されたGDNFは、非還元SDS−PAG
E上で約31〜24kD、還元SDS−PAGE上で約20〜23kDの見掛
けの分子量を有する。実質的に精製されたGDNFは、アミ
ノ酸配列(配列番号1): から実質的になるアミノ末端配列を有する。ラットGDNF
の成熟および「プレ−プロ」型のアミノ酸配列は図13お
よび14(配列番号3および4)に掲げる。成熟ヒトGDNF
のアミノ酸配列は図19(配列番号5)に掲げる。ヒトGD
NFのプレ−プロ型のアミノ酸配列は図19(配列番号5)
および図22(配列番号8)に掲げる。
本発明の一態様は、1)B49膠芽腫細胞の無血清成育
調整培地の調製;2)調整培地の濃縮;3)濃縮調整培地に
ついてヘパリンセファロースクロマトグラフィーの実
施;4)ヘパリンセファロースクロマトグラフィーから得
られた分画についての迅速蛋白液体クロマトグラフィー
の実施;ならびに5)上記迅速蛋白クロマトグラフィー
から得られた分画についての逆相高速液体クロマトグラ
フィーの実施からなる精製GDNFの取得方法である。一実
施態様においては、精製GDNFの取得方法はさらに、以下
の工程:6)逆相高速液体クロマトグラフィーで得られた
分画についてのプレパラティブSDS−PAGEの実施;なら
びにプレパラティブSDS−PAGEによって得られた分画に
ついての逆相高速液体クロマトグラフィーの実施からな
る。
また、B49細胞系より調製されたcDNAライブラリーか
らのラットGDNF遺伝子のクローニングが記載されてい
る。成熟およびプレ−プロラットGDNFをコードする核酸
配列は図13に示す(配列番号3)。GDNFをコードするヒ
ト遺伝子を得る方法も開示される。成熟ヒトGDNFをコー
ドする核酸配列は図19(配列番号5)に示す。ヒトGDNF
のプレ−プロセグメントの最初の50のアミノ酸をコード
する核酸配列は図22(配列番号8)に示す通りである。
本発明はまた、精製GDNFの有効量を医薬用に適した担
体中に含有してなる医薬組成物を包含する。またさら
に、GDNFの治療有効量をそれを必要とする患者に投与す
ることからなる神経障害の防止または処置方法も記載さ
れる。好ましい実施態様においては、神経障害はパーキ
ンソン病またはドーパミン作動性神経細胞の障害もしく
は不適切な機能である。
本発明の好ましい実施態様においては、GDNFは本明細
書に記載のGDNFをコードする遺伝子を利用する組換えDN
A法によって製造される。本発明は、成熟もしくはプレ
−プロGDNFをコードする核酸配列に発現調節要素が機能
的に連結されてなる、生物学的に活性なGDNFの製造に使
用するベクター、ならびにこのようなベクターでトラン
スフォームされた宿主細胞を包含する。また、GDNFをコ
ードするDNA配列をそのDNA配列の発現に必要な調節要素
からなる発現ベクター中にサブクローニングし;宿主細
胞をその発現ベクターでトランスフォームし;その宿主
細胞をベクターが増幅しGDNFが発現する条件下に培養
し;ついでGDNFを収穫することからなるGDNFの製造のた
めの組換えDNA法を包含する。
本発明の宿主細胞をベクターが増幅しGDNFが発現する
条件下に培養し;ついでGDNFを収穫することからなるGD
NFの製造のための組換えDNA法が記載される。
本発明は、GDNFを認識する、実質的に精製された抗体
を包含する。グリア由来神経栄養因子を分泌する細胞
を、それを必要とする患者の体内に移植することからな
る神経障害の防止または処置方法も包含される。最後
に、本発明は、半透過性の膜とその膜内に封入されたGD
NFを分泌する細胞からなり、その膜はGDNFに対しては透
過性であるが患者からの細胞に有害な因子に対しては不
透過性であり、患者に移植して神経障害を防止または処
置するためのデバイスを包含する。
図面の説明 図1は、B49膠芽腫細胞の無血清成育調整培地中濃縮
溶液についてのヘパリンセファロースクロマトグラフィ
ーの結果を表す。結果は溶出液O.D.290(−)、伝導度
(−△−)およびTUでのGDNF活性(−○−)を示す。バ
ーでマークした分画はプールしてさらに精製した。
図2は、図1のプールされた分画についてのFPLCスー
パーロースクロマトグラフィーの結果を表す。結果はO.
D.280(−)、およびTUでのGDNF活性(−○−)を示
す。
図3は、図2からの分画14についてのRP−HPLCの結果
を表す。結果は、O.D.214と、下部にTUでのGDNF活性を
示す。
図4は、上記図3から得られた分画3〜10の銀染色SD
S−PAGEによる分析の結果である。レーンSは分子量標
準を含有する。
図5は図4からの分画5および6についてのプレパラ
ティブSDS−PAGEの結果を表す。ゲルスライスについてY
UでのGDNF活性を試験した。ゲルスライスはまた、分子
量マーカー(Amersham)を用いて分子量を補正した。
図6は図5からの分画16〜23についてのRP−HPLCの結
果を表す。クロマトグラムAはサンプルを含有し、クロ
マトグラムBは対照である(ブランクレーンの相当する
スライスからのプールされたゲル抽出物)。
図7は、図6Aからのピーク3の銀染色SDS−PAGEによ
る分析の結果(レーン1)および分子量対照(レーン
S)である。
図8は、精製されたGDNFから得られたアミノ末端アミ
ノ酸配列を示す。空白の括弧は用いた配列決定法ではア
ミノ酸を決定できなかった位置を指示する。括弧内に示
した残基は、その残基の同定に確信がなかったことを示
す。完全な正しいアミノ酸配列は以下の図19に示す。
図9は、トリプシン消化された精製GDNFについてのRP
−HPLCの結果を表す。クロマトグラムAはサンプルを含
有し、クロマトグラムBは対照である(トリプシンのみ
を含有)。
図10は、図9からのピーク37について、シアノーゲン
ブロミド処理後のRP−HPLCの結果を表す。
図11は、図10からのピーク1の還元生成物のRP−HPLC
の結果を表す。
図12は、精製GDNFから得られた中間アミノ酸配列を記
載する。
図13は、B49細胞ライブラリーcDNAクローンλZap II7
6.1から誘導されたラットGDNFについて得られた核酸配
列を示す。また、GDNFの推定されたアミノ酸配列を示
す。成熟GDNFをコードする核酸配列には下線を付す。最
も好ましいGDNFのプレ−プロ型のアミノ末端配列には
印を付す。
図14は、成熟GDNFの推定アミノ酸配列を示す。
図15は、精製B49細胞GDNFおよびヒト組換えCNTFによ
るトリ胚毛様体神経節からの副交感神経ニューロンの生
残の促進の結果を表す。Y−軸の光学密度の上昇はニュ
ーロンの生残の上昇を示す。X−軸は核神経栄養因子の
濃度の低下を示す。対照と表示した曲線は、GDNFと表示
した曲線を発生させるのに使用したGDNF含有分画に隣接
する、等容量の不活性HPLC分画による。
図16は、精製B49細胞GDNFおよびヒト組換えCNTFによ
るトリ胚交感神経鎖神経筋からの交感神経ニューロンの
生残の促進結果を表す。Y−軸の光学密度の上昇はニュ
ーロンの生残の上昇を示す。X−軸は各神経栄養因子の
濃度の低下を示す。対照と表示した曲線は、GDNFと表示
した曲線を発生させるのに使用したGDNF含有分画に隣接
する、等容量の不活性HPLC分画による。
図17は、COS細胞調整培地について、培養中脳ドーパ
ミン作動性ニューロンによるドーパミン取り込みの上昇
能のバイオアッセイの結果を表す。Y−軸は、X−軸の
濃縮COS細胞培養培地の量の上昇に対する放射標識ドー
パミンの取り込み量を示す。B−1と表示した曲線はGD
NFの発現に適当な方向でGDNF遺伝子をトランスフェクト
したCOS細胞からの無血清調整培地を表す。C−1と表
示した曲線はGDNFの発現を阻害する逆方向でGDNF遺伝子
をトランスフェクトしたCOS細胞からの無血清調整培地
を表す。
図18は、COS細胞調整培地について、トリ胚の交感神
経鎖からの培養交感神経ニューロンの生残上昇能のバイ
オアッセイの結果を表す。Y−軸は、培養体によって低
下するMMT染料の量を示し、これはニューロンの生残に
比例する。X−軸は濃縮COS細胞培養培地の希釈度の上
昇を示す。GDNFと表示した曲線はGTNFの発現に適当な方
向でGDNF遺伝子をトランスフェクトしたCOS細胞からの
無血清調整培地を表す。対照と表示した曲線はGDNFの発
現を阻害する逆方向でGDNF遺伝子をトランスフェクトし
たCOS細胞からの無血清調整培地を表す。
図19は、以下の例2Cに記載に従い、ヒトGDNFについて
得られた核酸配列の部分を示し、成熟ヒトGDNFをコード
する遺伝子の全部分を包含する。また、成熟ヒトGDNFの
推定アミノ酸配列を示す。成熟ヒトGDNFのアミノ酸配列
には下線を付してある。
図20は、GDNFのドーパミン取り込みを刺激する能力、
およびドーパミン作動性ニューロンにおけるチロシンヒ
ドロキシラーゼ(TH)免疫染色を示す。培養は例1Bに記
載のように確立された。GDNFはプレーティングの日に添
加し、in vitro 9日後に補充した。A.3H−DAの取り込み
をin vitro 15日後に測定した。B.培養体をin vitro 16
日後に4%パラホルムアルデヒドで固定し、徹底的に洗
浄し、0.2%Triton X−100で透過性にして、THに対する
ポリクローナル抗体(Eugine Tech International,Alle
ndale,NJ)で染色した。一次抗体の結合は、Vectastain
ABCキット(Vector Labs,Burlingame,CA)を使用して
可視化した。
図21は、GDNFのドーパミン作動性ニューロンに対する
特異性を表す。培養は例1Bの記載に従って確立された。
GDNFはプレーティングの日に添加した。A.3H−DAの取り
込みをin vitro 7日後に測定した。B.14C−GABAの取り
込みはin vitro 8日後に測定した。細胞は、取り込み緩
衝液の構成を5.6mMグルコース、1.3mMFDTA、10μMアミ
ノオキシ酢酸(GABAの分解を防止する)、2mMβ−アラ
ニン(GABAのグリアへの取り込みを阻害する)および0.
1μM14C−GABA(150mCi/mmole,New England Nuclear,Bo
ston,MA)を含有するクレブス−リンゲルのリン酸緩衝
液、pH7.4とした以外は3H−DAの取り込みの場合と同様
にインキュベートし、処理した。14C−GABAのGABAニュ
ーロンへの取り込みの強力な阻害剤である1mMジアミノ
酪酸(DABA)の存在下には、14Cの取り込みは10%に低
下した。DABAの存在下における対照値を実験値から差し
引いた。
図22は、以下の例2Dの記載に従い、ヒトGDNFについて
得られた核酸配列の部分を示し、ヒトプレ−プロGDNFの
アミノ酸1〜50のコード配列を包含する。また、ヒトプ
レ−プロGDNFの最初の50個のアミノ酸についての推定ア
ミノ酸配列を示す。この情報は、図19に示したコード配
列情報と組合わせて、ヒトプレ−プロGDNFの全コード配
列、およびヒトプレ−プロGDNF蛋白質についての推定ア
ミノ酸配列を提供する。
図23は、以下の例2Dに記載の、プラスミドpBSSK−λ3
Alu I内のSac IIおよびPst I部位の地図を表す。
図24は、GDNFのドーパミン作動性ニューロンに対する
特異性を表す。培養体は例1Bの記載に従って調製した。
GDNFはプレーティングの日に添加し、取り込みはin vit
ro 6日後に測定した。Aはドーパミンの取り込みを、B
はセロトニンの取り込みを示す。
図25は、リフォールディングされていないGDNFを含有
する細菌抽出物のリフォールディング前S−セファロー
スカラム上クロマトグラフィーからの分画の、還元条件
下に行ったクーマッシーブルー染色SDS−PAGEを示す
(例6C参照)。レーン2〜8はカラム溶出液からの連続
分画である。GDNFに富む分画3〜5をリフォールディン
グのためにプールした。レーン1は分子量標準である
(SDS−70L、Sigma)。
図26は、リフォールディング前(レーン6および1
3)、リフォールディング後(レーン2)およびリフォ
ールディングについで150mM2−メルカプトエタノールに
よってバック還元後(レーン5)のGDNF溶液のクーマッ
シーブルー染色SDS−PAGEを示す。リフォールディング
前およびバック還元後の物質はモノマーとして約16kDa
で泳動する。適切なリフォールディング後のGDNFはダイ
マーとして約30kDaで(非還元)泳動する(例6C参
照)。レーン15は分子量標準である(SDS−70L、Sigm
a)。
図27は、リフォールディングGDNFを用い、培養トリ胚
交感神経ニューロンの生残の促進能を測定したバイオア
ッセイの結果を表す。バイオアッセイ操作は例4Aの記載
の通りである。Y−軸に光学密度(生残ニューロンの数
に比例)が、X−軸上のGDNA濃度(クーマッシーブルー
染色SDS−PAGEゲルのレーザーデンシトメトリー走査に
よって測定)に対してプロットされている。トリ胚交感
神経ニューロンの生残に対するリフォールディングGDNF
のED50計算値は約3ng/mlである。
図28は、リフォールディングGDNFを用い、培養ラット
胚中脳における黒質ニューロンによるドーパミン取り込
み能の上昇を測定したバイオアッセイの結果を表す。バ
イオアッセイ操作は例1Bの記載の通りである。Y−軸に
ドーパミンの取り込みがX−軸上のGDNF濃度に対してプ
ロットされている。これらの培養体におけるドーパミン
取り込みの増加に対するリフォールディングGDNFのED50
計算値は約3pg/mlである。
好ましい実施態様の詳細な説明 現時点で好ましい本発明の実施態様の詳細を以下に示
すが、これは以下の実施例とともに、本発明の原理を説
明するのに役立つものである。
本発明以前には、GDNFは明確な生物学的に活性な物質
として同定されていなかったし、実質的に純粋な型とし
て存在しなかった。本明細書に記載するように、GDNFの
詳細な解説が、その物理的、化学的および生物学的特
性、その利用性、その作り方、それを含有する有用な組
成物、それをコードする核酸配列、このような核酸配列
を含有するベクター、このようなベクターでトランスフ
ォームされた宿主細胞、その製造のための組換え技術、
ならびに本発明の他の態様とともに提供される。
GDNFは、グリア細胞中に同定され、グリア細胞から得
られ、神経栄養活性を示す蛋白質である。さらに特定す
れば、GDNFは、一部は、黒質ドーパミン作動性ニューロ
ンの胚前駆体へのドーパミン取り込みを増大させる能力
によって、また副交感神経および交感神経細胞の生残を
促進する能力によって特徴づけられる、ドーパミン作動
性神経栄養蛋白質である。実質的に精製されたGDNFはさ
らに以下のいくつかの方法で特徴づけられる。
1. 少なくとも約12,000TU/μgの比活性を有する。
2. 還元SDS−PAGE上、約20〜23kDの分子量を有する。
3. 非還元SDS−PAGE上、約31〜42kDの分子量を有す
る。
4. B49−調整培地の比活性より少なくとも約24,000倍
大きい比活性を有する。
5. 培養中脳のチロシンヒドロキシラーゼ免疫反応性を
上方調節する。
6. 図8に示すアミノ末端アミノ酸配列(配列番号1)
を有する。
7. 図12に示す内部アミノ酸配列(配列番号2)を有す
る。
本発明のGDNFについて以下にさらに詳細に説明する。
本発明のこの態様は、図8に示す配列(配列番号1)と
同一または実質的に相同のアミノ末端アミノ酸配列を有
する任意のドーパミン作動性神経栄養蛋白質をカバーす
るものであることを理解すべきである。本発明はまた、
図12に示す配列(配列番号2)と同一または実質的に相
同の中間アミノ酸配列を有する任意のドーパミン作動性
神経栄養蛋白質を包含する。
本発明は、本明細書においてグリア由来神経栄養因子
(GDNF)と定義される新規なドーパミン作動性神経栄養
蛋白質を包含する。GDNFは、B49膠芽腫細胞の無血清成
育調整培地中に同定され、それから実質的に精製された
型で単離された。
GDNFは精製され特徴づけられ、精製物質の部分アミノ
酸配列が得られた。得られた部分アミノ酸配列に基づ
き、GDFNの組換え製造に使用できるラットcDNAクローン
を得るために、DNAプローブが設計された。このクロー
ンの核酸配列およびラットGDNFの推定アミノ酸配列を図
13(配列番号3)および図14(配列番号4)に示す。
GDNFのアミノ末端アミノ酸配列が決定れた。これを図
8(配列番号1)に示す。GDNFの中間アミノ酸配列の部
分も決定された。これを図12(配列番号2)に示す。精
製されたGDNFは、非還元条件下SDS−PAGE上で約31〜42k
D、還元条件下SDS−PAGE上で約20〜23kDの見掛けの分子
量を有する。このような理論によって限定されるもので
はないが、この情報は、GDNFが天然に存在する状態では
グリコシル化され、ジスルフィド結合したダイマーであ
ることと一致するものと考えられる。
以下の例6Cにさらに詳細に述べるように、細菌発現系
におけるヒトGDNF遺伝子の発現により組換えヒトGDNFも
しくはrhGDNFが製造される。発現後に単離される物質は
生物学的にほとんど不活性で、モノマーとして存在す
る。リフォールディング後は、GDNFは生物学的に活性な
ジスルフィド−結合ダイマーとして存在する。したがっ
て、GDNFはその天然の生物学的に活性な型では、ジスル
フィド−結合ダイマーである。しかしながら、本発明は
GDNFのモノマーおよびダイマーの両者、ならびに生物学
的に不活性型および活性型の両者を包含する。
プローブは、ヒトGDNFをコードするゲノムDNA遺伝子
をクローニングするために、ラットGDNFの核酸配列に基
づいて調製された。成熟GDNFをコードするヒト遺伝子、
およびヒト成熟GDNFのアミノ酸配列を図19(配列番号
5)に示す。
GDNFはまた、以下の例1に記載するように、黒質ドー
パミン作動性ニューロンの胚前駆体へのドーパミン取り
込みを増大させる能力によって特徴づけられる。GDNFは
さらに、以下の例4に記載するように、副交感神経およ
び交感神経細胞の生残を促進する能力によって特徴づけ
られる、 GDNFはまたさらに、培養中脳でチロシンヒドロキシラ
ーゼの免疫反応性を上方調節する能力によって特徴づけ
られる。この特徴の実例は例1Eに記載され、図20に示さ
れる。さらに、GDNFは、一般的なニューロンに比較して
ドーパミン作動性ニューロンにある種の特異性を有す
る。たとえば、これは、γ−アミノ酪酸(GABA)を含有
するニューロンにおけるGABA取り込みに対する限られた
作用によって示された。これはまた、例1Eに記載され、
図21に示される。GDNFはさらにセロトニン作動性ニュー
ロンにおけるセロトニン取り込みに対して、あったとし
ても限られた作用しか示さなかった。これは例1Eに記載
され、図24に示される。
本明細書を通じて、グリア由来神経栄養因子といえ
ば、本明細書において特徴づけられ記載されたGDNFと実
質的に相同で生物学的に同等な、任意の起源の神経栄養
因子を指すものと解釈すべきである。ラットとヒト蛋白
質の間のホモロジーの程度は約93%であり、すべての哺
乳動物のGDNFは同様に高度のホモロジーを有するものと
考えられる。このようなGDNFはその生物学的活性型では
ダイマーとして存在するものと思われる。
本発明は、本明細書に記載の天然に存在するGDNFおよ
び組換えGDNFのグリコシル化および非グリコシル化型、
ならびにそれらの先端切断型を包含する。さらに他の実
施態様においては、GDNFは1もしくは2個以上のポリエ
チレングリコール(PEG)または他の反復ポリマー残基
の結合によって修飾される。本発明はまた、細菌発現系
で組換え法で製造され、アミノ末端メチオニン残基を含
有するGDNFも包含する。
明細書および請求の範囲を通じて使用される「生物学
的に同等」の語は、B49調整培地から単離されたGDNFと
類似の様式で同一の神経栄養活性の一部またはすべてを
発揮できるが、その程度は必ずしも同一ではなくてもよ
い本発明の組成物を意味する。以下に明細書および請求
の範囲を通じて使用される「実質的に相同」の語は、B4
9調整培地から単離されたGDNFに対する、以前に報告さ
れたGDNFによって示されたそれよりも高度のホモロジー
を意味する。好ましくは、ホモロジーの程度は70%以
上、とくに好ましくは80%以上、さらに好ましくは90
%、95%もしくは99%以上である。本明細書に記載のホ
モロジーの%は、2つの配列をDayhoff(Atlas of Prot
ein Sequence and Structure Vol.5,p.124,1972,Nation
al Biochemical Research Foundation,Washington,D.
C.,参考としてとくに本明細書に導入する)の記載に従
いアライメントの補助に100アミノ酸長につき4個のギ
ャップを導入できるとして比較した場合、同一のアミノ
酸残基が線列するアミノ酸残基の、小さい方の配列に見
出される百分率として計算される。本明細書に記載され
たGDNFに対する抗体との交叉反応性によって、またはそ
の遺伝子が本明細書に記載のGDNFの遺伝子もしくはその
遺伝子のセグメントとのハイブリダイゼーションによっ
て単離できる任意のGDNFも、実質的に相同なものとして
包含される。
本発明の好ましいGDNFは、B49調整培地から単離さ
れ、実質的に精製された型に単離された。別の好ましい
GDNFはGDNFを実質的に精製された型で産生する組換えDN
A法によって製造される。本出願の目的で、本明細書に
開示されるGDNFについて用いられる「純粋型」または
「実質的に精製された型」の語は、GDNFではない他の蛋
白質を実質的に含まないプレパレーションを意味するも
のである。本発明のGDNFは少なくとも50%純度であるこ
とが好ましく、好ましくは75%純度、さらに好ましくは
80%、95%もしくは99%純度である。本発明の一実施態
様においては、GDNF蛋白プレパレーションは、本技術分
野の通常の熟練者が最初にさらに精製工程を実施するこ
となく、そのアミノ酸配列の少なくとも一部を決定でき
るような実質的に精製された型である。
本発明の好ましい実施態様においては、GDNFは以下の
例1の記載のように、B49調整培地から精製される。も
ちろん、本明細書に記載された情報を与えられれば、本
技術分野の熟練者には、GDNFの他のソースを同定しこの
ようなソースからのGDNFの精製を、本明細書に提供され
た精製方法に一般的に従って達成できることは明白であ
ろう。
GDNFのドーパミン作動活性は、精製過程を容易にする
ために使用される。ドーパミン作動性神経栄養活性につ
いてのバイオアッセイは以下の例1Bに記載する。略述す
れば、解離させた中脳細胞の培養体を血清強化または無
血清の環境下に調製する。ドーパミン作動活性について
試験するサンプルを脱塩し、培養細胞に希釈系列として
添加し、培養皿を6.5%CO2含有加湿環境下、37℃で6日
間インキュベートする。次に培養体を試験物質の存在
下、トリチウム化ドーパミン(3H−DA)とともに37℃で
インキュベートする。ドーパミンの取り込みを停止さ
せ、細胞を洗浄し、培養液中に残存するトリチウムをシ
ンチレーションカウンティングによって分析する。
GDNFの精製は以下の例1Cに詳述する。精製過程の詳細
は表Iに示す。調整培地出発原料はB49膠芽腫細胞か
ら、細胞を無血清培地中に2日間置いたのち、調整培地
を収集し、再補充することによって調製される。このサ
イクルを、B49細胞の各バッチから3回調整培地が収穫
されるまで反復する。調整培地を遠心分離し、さらに精
製する前に約10倍に濃縮する。
本明細書においてB49膠芽腫の無血清成育調整培地と
して定義される、この粗製混合物の調整の第一工程は、
調整培地を、0.15N NaCl含有50mM NaPi緩衝液、pH8.0で
平衡化したヘパリンセファロースカラム上に導入する工
程である。溶出が安定したのちに、1.5N NaCl含有50mM
NaPi緩衝液、pH8.0で作成した勾配緩衝溶液をカラムに
導入する。このクロマトグラフィーからの分画について
GDNF活性を測定し、GDNF活性を含む分画をプールしてさ
らに精製する。
プールした分画を0.5N NaCl含有50mM NaPi緩衝液、pH
7.4の溶媒緩衝液を用い、スーパーロースカラム上迅速
蛋白液体クロマトグラフィー(FPLC)に付す。再び、得
られた分画のGDNF活性を測定する。この操作からの単一
分画をついで酸性にし、C−8逆相高速液体クロマトグ
ラフィー(HPLC)カラム上に負荷する。GDNF活性を含有
することが確認された分画を合して、さらに精製および
蛋白の配列決定を行う。以下の表1に示すように、この
時点で得られたGDNFは、調整培地の約24,000倍の比活性
を有する。この時点で得られた蛋白質のアミノ末端配列
決定では、図8に示すアミノ末端配列(配列番号1)を
与える。
HPLCで得られたGDNFの更なる精製は、GDNF活性含有分
画についてプレパラティブSDS−PAGEを実施することに
よって達成できる。蛋白含有分画にグリセロールおよび
SDSを含有する緩衝液を加え、この溶液を、非還元15%S
DS−PAGE上、10℃、40mA/ゲルの電気泳動によって、2
時間泳動させる。分子量約30〜42kDに相当するゲル部分
にGDNF活性を含むことがバイオアッセイによって見出さ
れた。SDS−PAGEから単離された物質の第2のHPLCで
は、図6に示すように、GDNFの単一のピークが得られ
る。
GDNFのアミノ末端配列はプレパラティブSDS−PAGE前
後のHPLCからの物質について決定された。精製されたGD
NFのアミノ酸配列を得るために利用された操作は例1Dに
示す。アミノ末端配列は気相蛋白シーケンサーによって
得られた。内部配列は、HPLCから得られ、まだプレパラ
ティブSDS−PAGEによってさらに精製されていない物質
から得られた。内部アミノ酸配列は精製されたGDNFをト
リプシンとインキュベートすることによって得られた。
得られたトリプシンフラグメントをHPLCによって分離し
た。1つのフラグメントは非処理蛋白のアミノ末端配列
の最初の13のアミノ酸残基を含むことが見出された。第
2のフラグメントはCNBrで処理し、HPLCで精製し、還元
し、再びHPLCで精製した。得られたアミノ酸配列は図12
に示す(配列番号2)。括弧内に示した配列はその決定
の信頼度が低かったものである。
本発明は、GDNFの遺伝子をクローニングする方法、お
よびGDNFをコードすることが確認された遺伝子を包含す
る。GDNFのラットおよびヒト遺伝子のクローニングのた
めの詳細な操作は以下の例2に示す。この場合も、本明
細書の開示を参照すれば、本技術分野の熟練者にはこの
ような遺伝子をクローニングする他の方法は自明である
ことが理解されよう。とくに、GDNFをコードする他の種
からの遺伝子のクローニングは、本明細書に記載の開示
および操作を考慮すれば自明であると考える。
本明細書に記載のラットGDNF遺伝子は、B49細胞から
単離されたポリA+RNAより構築されたcDNAライブラリー
から得て、精製GDNFから得られたアミノ酸配列に基づく
縮重オリゴヌクレオチドプローブでスクリーニングし
た。cDNAは標準操作によって得られ、EcoR I−消化リン
カーを含有するように処理し、λZap IIクローニングベ
クター中に挿入した。用いられたハイブリダイゼーショ
ンプローブは32P−標識され、以下の縮重オリゴヌクレ
オチド(配列番号7): から構築された。数個の陽性クローンが得られ、1つの
クローン(λZap II76.1)が、DNA配列決定により、縮
重プローブの設計に用いられなかったGDNFの部分をコー
ドする陽性クローンとして確認された。
λZap II76.1中に含まれるcDNAクローンのヌクレオチ
ド配列を得るための操作は以下の例2Bに示す。cDNAクロ
ーンの5′末端の最初の877塩基対のヌクレオチド配列
が決定され、図13に示されている(配列番号2)。図13
に示されたクローンは、精製されたGDNFのアミノ末端を
包含し、精製されたGDNFの切断によって得られた内部ペ
プチドの配列と一致する227アミノ酸のオープンリーデ
ィングフレーム(ORF)を含有する。
図14に掲げた推定アミノ酸配列(配列番号4)は「成
熟GDNF」のアミノ酸配列を示す。「成熟GDNF」とはB49
調整培地から得られ精製されたGDNFの配列を意味する。
もちろん、精製されたGDNFは、ダイマーもしくは他のマ
ルチマーとして存在してもよく、またグリコシル化もし
くは他の方式で化学的に修飾されていてもよい。成熟GD
NFは、カルボキシル末端において、とくにカルボキシル
末端から6および5残基のlys−arg残基の蛋白分解プロ
セッシングによって切断されていてもよい。図13に示す
λZap II76.1ラットクローンの核酸配列(配列番号2)
を調べると、GDNFは最初プレ−プロGDNFポリペプチドと
して翻訳され、この分子のシグナル配列および「プロ」
部分の蛋白分解的プロセッシングによってB49調整培地
から得られた配列と同じ成熟配列を有する精製されたGD
NFを生じることが示唆される。プレ−プロGDNFポリペプ
チドはこのクローンの5′末端で最初の、メチオニンを
コードするATGコドン(図13における位置50)で始まる
ものと考えられる。したがって、本発明は図13に示す遺
伝子から翻訳される任意のそしてすべてのプレ−プロGD
NFポリペプチド、ならびに本技術分野の熟練者によれば
本明細書に記載の標準実験室操作およびクローンを用い
て容易に得られるより完全なクローンから翻訳される任
意のそしてすべてのプレ−プロGDNFポリペプチドを包含
する。
図13に示すラット核酸配列(配列番号2)を見ると、
位置518と538の間に配置される予測アミノ酸配列はAsp
−Lys−Ile−Leu−Lys−Asn−Leuで、以下の例1の中間
配列に関する部分に記載の方法によって精製された成熟
GDNFに由来するペプチドについて決定されたアミノ酸配
列と一致することを示している。位置706におけるTGAス
トップコドンでORFは終結する。したがって、精製GDNF
の予測される長さは134アミノ酸残基であり、このポリ
ペプチドの推定される分子量は14,931である。2つの可
能性あるN−結合グリコシル化部位が位置425と533に存
在する。これらの部位のいずれかまたは両者でのグリコ
シル化がこの分子の分子量を増大させる。
精製された成熟GDNFの配列の開始点に相当する位置28
1におけるセリン残基の前には、GDNFの推定前駆型のプ
ロセッシングによりB49細胞から精製される分子型を産
生する蛋白分解的切断部位と考えられる部位を提供する
配列Lys−Argがある。可能性のある翻訳開始コドン(AT
G)は配列中の位置50に存在し、これは分泌シグナルと
考えられる配列に直接続いている。このATGに隣接する
配列は、コザックのコンセンサス配列(Kozak 1987 Nuc
l.Acids Res.15:125−48)と極めて類似して、このATG
が翻訳開始部位として利用される可能性を指示するもの
と考えられる。さらに、このATGはcDNAクローンの配列
中最も5′側のATGである。これらの事実はそれがGDNF
の前駆型の翻訳開始部位である可能性を示唆するもので
ある。
ラットcDNAクローンのヌクレオチド配列のこれらの上
述の特徴はGDNFが最初プレ−プロGDNFポリペプチドとし
て翻訳され、この分子のシグナル配列および「プロ」部
分の蛋白分解的プロセッシングによりB49細胞調整培地
から精製される型のGDNFが産生する可能性が示唆され
る。しかしながら、他の型のGTNFの存在も上記配列デー
タと矛盾するものではない。たとえば、681bpのORF内に
は他に可能性のある2つのATG翻訳開始部位が存在す
る。一つは位置206、もう一つは位置242である。これら
のATGは精製されたGDNFのアミノ末端配列の開始部位の
上流に位置する。真核生物においては、翻訳の開始は一
般にmRNAの最も5′側のATGで起こる(Kozak,前出)
が、一部の翻訳開始が下流のATGで起こる場合もある。
すなわち、GDNFの別の前駆型がこれらのATGコドンでの
翻訳開始によって生じることも多分あるとも考えられ
る。これらのポリペプチドの蛋白分解的プロセッシング
でも、B49細胞調整培地中に認められるのと同じ型の精
製GDNFが産生できる。しかも、オープンリーディングフ
レームはcDNAクローンの配列の5′末端を通過して延長
する。したがって、翻訳の開始はcDNAクローン中には存
在しない上流ATGで起こることは可能である。この結
果、GDNFは、本明細書に記載されたアミノ酸配列と付加
的な上流配列を含有するさらに大きい前駆体として翻訳
される可能性もある。この仮定される前駆型のプロセッ
シングでも、本明細書に記載されたGDNFの精製型の生成
を生じる。逆転写酵素を用いるプライマー延長(Maniat
isら,前出)によれば、GDNF遺伝子を含むmRNAの5′末
端を配列決定することによって、上流ATGによる開始の
可能性を検出することが可能であろう。さらには、他の
cDNAクローンがB49ライブラリーから得られ、これらの
クローンの5′末端の配列が決定される可能性も考えら
れる。最初のATGの上流に位置する5′mRNAのサイズな
らば、「S1マッピング」(Maniatisら、前出)および/
または逆転写酵素反応のプライマーエクステンション生
成物の単純なサイジングによってもっとラフに決定する
ことができよう。精製されたGDNFをコードする配列を含
む一次翻訳生成物には様々の推定型を考えることができ
るが、組換えファージλZap II76.1中に運ばれるcDNAク
ローンについて本明細書に示した部分DNA配列が、B49細
胞調整培地から単離された精製GDNFポリペプチドを構成
するコード配列を明瞭に定義するものである。
以下の例2Cには、GDNFをコードするヒト遺伝子のクロ
ーニングが記載される。ヒトゲノムライブラリーを例2B
に記載のラットcDNAクローンから誘導されたプローブで
スクリーニングした。ヒトGDNF遺伝子のゲノムDNAクロ
ーンが確認された。成熟ヒトGDNFをコードする遺伝子の
配列は図19に示す(配列番号5)。
ヒトGDNFの遺伝子について図19に示した配列は、GDNF
のプレ−プロ部分についての全コード配列を与えるもの
ではない。ヒトプレ−プロGDNFの最初の50個のアミノ酸
についてのコード配列を得る方法は以下の例2Dに記載さ
れる。得られた配列は図22に示す(配列番号8)。この
配列を得るために使用したプラスミドpB55K−λ3Alu1の
地図は図23に示す通りである。
本発明はGDNFをコードする核酸配列を包含する。ラッ
ト(図13)(配列番号3)およびヒト(図19)(配列番
号5)GDNFをコードする、比較的ホモロジーの高い配列
は本明細書に示す通りである。本発明の範囲内にはま
た、同一のまたは高い相同性のアミノ酸配列をコードす
る実質的に類似の核酸配列も包含される。たとえば、細
菌発現系たとえば大腸菌内で成熟GDNFを発現させるため
の構築体を調製する場合には、図19に示した核酸配列
(配列番号5)のある種のコドンは、よく知られた標準
操作により大腸菌内で発現しやすいコドンに置換され
る。このような修飾された核酸配列も本発明の範囲内に
包含されるものである。
特定の核酸配列は本技術分野の熟練者によれば修飾可
能である。したがって、本発明はまた、図14(配列番号
4)および19(配列番号5)に掲げる成熟ラットおよび
成熟ヒトGDNF、ならびに図13(配列番号3)に掲げるプ
レ−プロラットGDNFおよび図19(配列番号5)と図22
(配列番号8)に掲げるプレ−プロヒトGDNFのアミノ酸
配列をコードするすべての核酸配列を包含する。本発明
はまた、すべてのこのような核酸配列とハイブリダイズ
し−すなわちそれらの配列の適当な相補体であり−かつ
ドーパミン作動活性を有するポリペプチドをコードする
核酸配列を包含する。本発明はまた、ドーパミン作動活
性を有し、かつGDNFに結合する抗体によって認識される
ポリペプチドをコードする核酸配列を包含する。
本発明はまた、本発明の範囲内に包含される任意の核
酸配列に発現調節要素が機能的に連結してなるベクター
を包含する。本発明はまた、本発明の範囲内に包含され
る任意の核酸配列に発現調節要素が機能的に連結してな
るベクターでトランスフォームされた−任意の変種の−
宿主細胞を包含する COS細胞中でGDNFの発現が以下の例5に記載される。
図13に記載されたGDNFをコードする遺伝子を、クローン
化遺伝子をCOS細胞のような細胞中で一過性に発現させ
るために設計されたベクターであるプラスミドベクター
pSG5中にサブクローニングした。適切および不適切な方
向でGDNF遺伝子を含有するプラスミドを選択し、そのDN
AをCOS−7細胞にトランスフェクトした。培養後、トラ
ンスフォームされた細胞を収穫した。COS−7調製培地
を、ドーパミン作動性アッセイおよび交感神経節ニュー
ロンアッセイの両者での生物活性について試験した。適
切な方向にGDNFの遺伝子を含有する細胞からの調製培地
はこれらのアッセイの両者において生物活性を示すこと
が見出され、これは、組換えDNA法によって生物学的に
活性なGDNFが効果的に製造されたことを指示するもので
ある。
本発明の好ましい実施態様においては、ヒトGDNFが、
細菌発現系で組換えDNA法によって製造される。
ヒトGDNFの大腸菌における発現を以下の例6に記載す
る。図19に示す成熟ヒトGDNFをコードするヒトGDNF遺伝
子の部分を使用して、ヒトGDNF構築体を調製した。この
ような構築体をプラスミドベクター中にリゲートし、こ
れを大腸菌被JM107にトランスフォームした。トランス
フォームされた宿主細胞を培養後、生成したGDNFを収穫
した。成熟ヒトGDNFに期待される分子量(約15,000ダル
トン)の蛋白質が得られ、アミノ末端配列決定により得
られた蛋白質が成熟ヒトGDNFであることが確認された。
大腸菌で発現されたヒトGDNFのリフォールディングお
よび再生は以下の例6Cに記載する。記載された本発明の
実施態様においては、得られた発現蛋白質含有抽出物は
リフォールディングの前に、S−セファロースファース
トフロー樹脂上イオン交換クロマトグラフィーによって
部分精製した。リフォールディングは、GDNF含有抽出物
に、最初ジチオスレイトール、ついでグルタチオン二ナ
トリウム塩、ついでリフォールディング緩衝液を加えて
達成された。リフォールディングされたrhGDNFは実質的
に完全な生物学的活性を示し、生物学的に活性なジスル
フィド−結合ダイマーとして存在した。GDNFはリフォー
ルディングの前には−またリフォールディング物質の還
元後には−モノマー状態で存在し、実質液に生物学的に
不活性である。
GDNFはまた、他の発現系でも製造できる。たとえば、
図19に示す成熟ヒトGDNFをコードする核酸配列を用いれ
ば、本技術分野の熟練者には他の発現系でGDNFを製造す
ることが可能であろう。GDNFをコードする核酸配列が発
現調節要素に機能的に連結して含まれるベクターを、他
の微生物宿主細胞たとえばBacillus、Pseudomonasおよ
び酵母にトランスフォームすることができる。バキュロ
ウイルス発現系も同様に使用できる。
上述のように、本発明は神経障害に罹患した患者の神
経障害の処置方法に関する。これらの方法は、神経障害
に罹患している患者にヒト蛋白質、グリア由来神経栄養
因子(GDNF)の治療有効量を投与することからなる。
神経細胞および/またはそれらの軸索突起の生残また
は機能が害されている場合、疾患または医学的徴候は神
経障害であると考えられる。好ましい実施態様において
は、このような神経障害は、以下の状態のいずれかの結
果として起こるものである。すなわち。1)障害部位の
近傍の軸索突起および/または神経細胞体の変性を生じ
る物理的障害、2)卒中の場合のような虚血、3)癌や
エイズの化学療法剤たとえばそれぞれシスプラチナムお
よびジデオキシシチジン(ddc)のような神経毒への暴
露、4)慢性代謝性疾患、たとえば糖尿病または腎機能
不全、ならびに4)特定のニューロン集団の変性を生じ
るパーキンソン病、アルツハイマー病、および萎縮性側
索硬化症(ALS)である。神経障害が関与する状態の非
限定的なリストには、パーキンソン病、アルツハイマー
病、筋萎縮性側索硬化症、卒中、糖尿病性多発性ヒュー
ロパシー、癌化学療法剤、タキソールまたはシスプラチ
ンもしくはビンクリスチンによって生じる中毒性末梢性
ニューロパシー、エイズ化学療法剤、ddIまたはddCによ
って生じる中毒性末梢性ニューロパシー、ならびに脳お
よび脊髄の物理的障害または腕および手の圧潰または切
断創傷によって生じるような神経系に対する物理的障害
が包含される。
GDNFの製造方法も本明細書に開示される。開示される
一つの方法は、グリア細胞系調整培地のような様々なソ
ースからGDNFを単離する方法である。第2の方法は、GD
NFのコードに関与する遺伝子の単離、この遺伝子の適当
なベクターへおよび細胞種へのクローニング、ならびに
GDNFの製造のためのその遺伝子の発現を包含する。一般
的に組換えDNA法の例である後者の方法は、本発明の好
ましい方法である。組換えDNA法は、一部には比較的大
量の蛋白質の高純度での製造を達成できるので好まし
い。組換えヒトGDNFは治療用粗製物の製造および神経障
害の処置に最も好ましい蛋白質である。
本発明はまた、GDNFとのアミノ酸配列ホモロジーを有
する蛋白質をコードする遺伝子の同定およびクローニン
グのための手段、ならびにこのようにして同定された蛋
白質を包含する。
3種の神経栄養因子から構成される哺乳動物遺伝子フ
ァミリーが報告されている(Leibrockら,1989 Nature 3
41:149−152;Maisonpierreら,1990 Science 247:1446−
1451)。このファミリーを構成する3つの蛋白質の成熟
型[神経成長因子(NFG)、脳由来神経栄養因子(BDN
F)、およびニューロトロフィン−3(NT−3)は互い
に約50%のアミノ酸同一性を有する。これらの蛋白質の
それぞれに存在する6個のシステイン残基は正確に保存
されている。構造的には類似しているが、これらの3種
の蛋白質は異なる組織分布(Ernforsら,1990 Neuron 5:
511−526;Maisonpierreら,1990 Neuron 5:501−509;お
よびPhillipsら,1990 Science 250:290−294)および異
なるin vitro活性(Rosenthalら、1990 Neuron 4:767−
773;Whittemoreら,1987 Brain Res Rev 12:349)を示
す。
GDNFは以前報告された蛋白質と有意なホモロジーは示
さないが、GDNFに実質的なアミノ酸配列ホモロジーを有
し、異なる組織特異的分布パターンおよび/または異な
る活性スペクトルをもつ神経栄養因子としてin vivoで
機能できる蛋白質をコードする未確認の遺伝子が存在す
る可能性はある。このような蛋白質が神経栄養因子のGD
NFファミリーのメンバーを構成するのであろう。図13
(配列番号3)および19(配列番号5)ならびに22(配
列番号8)にそれぞれ示したラットおよびヒトGDNF遺伝
子のDNA配列はこのような推定「GDNF遺伝子ファミリ
ー」の新しいメンバーの同定に使用することができるも
のと考えられる。
上述の「NGF遺伝子ファミリー」または「GDNF遺伝子
ファミリー」のような遺伝子ファミリーのメンバーであ
る蛋白質生成物間のアミノ酸配列の保存性の結果とし
て、DNAレベルでもかなりの保存性が認められる。した
がって、適当なハイブリダイゼーション条件下にはファ
ミリー内の遺伝子間に核酸「交叉ハイブリダイゼーショ
ン」が起こりうる。すなわちファミリーのメンバーの一
つから誘導された核酸プローブがそのプローブとは同一
ではないが類似の配列を有するそのファミリーの異なる
メンバーからの核酸分子と安定なハイブリド二重鎖分子
を形成することがありうる(Beltzら,1983 Methods in
Enzymology 100:266−285)。したがって、GDNFに配列
ホモロジーによって類似する遺伝子を、ラット、ヒトま
たは任意の他の種からのGDNFの配列に基づく単独もしく
は縮重DNF(またはRNA)プローブを調製し、様々な標的
DNA(またはRNA)との不完全対の核酸二重鎖の安定な形
成を可能にする条件下にハイブリダイゼーション実験を
行うことによってスクリーニングできる。
このようなハイブリダイゼーション条件はしばしば
「低緊縮条件」と呼ばれ、文献に詳述されている(Belt
zら,前出、Sambrookら,1989 Molecular Cloning,
版、Cold Spring Harbor Press)。水溶液中で行われる
ときには多くの場合ハイブリダイゼーション反応の温度
低下および/または通常は50%ホルムアミド含有溶液を
用いるハイブリダイゼーション系におけるホルムアミド
の濃度の低下が包含される。ハイブリダイゼーション緊
縮度を低下させる他の手段も報告されていて、それらも
使用可能であった(Sambrookら,前出)。これらのハイ
ブリダイゼーション実験における核酸標的には、 1)バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、酵母
人工染色体を包含する 任意の有利なベクターまたは任意の他の種類のベクター
中にクローン化されたヒト、ラット、もしくは任意の哺
乳動物種または任意の他の種のDNAを含むゲノムDNAライ
ブラリー、 2)任意の上述の生物体から得られる、もしくは任意の
上述の生物体から得られる任意の種類の一次細胞の培養
体から得られる任意の種類の組織から、または現在存在
するもしくは一次細胞培養体から産生される任意の種類
の安定な細胞系からのRNAによって発生されるcDNAライ
ブラリー、 3)制限酵素で消化され、ゲル電気泳動によるサザンブ
ロット分析用に準備され固体支持体上に移送される上記
1)に記載のゲノムDNA、 4)電気泳動に付しノザンブロット分析用に固体支持体
に移送される上記2)に記載のRNA。このようなRNAであ
れば、総細胞性RNAまたは分画化ポリA+RNAを包含でき
る、 5)GDNF中に存在する配列に基づくオリゴヌクレオチド
プライマーを用い、鋳型として上記1)〜4)に記載の
任意の核酸ソースを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PC
R)の生成物 を包含することが考えられる。
GDNFベースのプローブに、ある経験的に決定された一
連のハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズす
ることが証明された任意の核酸配列について、本技術分
野の熟練者にはよく知られている様々な任意の方法でク
ローン化され、配列決定され、GDNF遺伝子ファミリーの
メンバーの確認のために直接、配列のホモロジーが決定
される。このようなハイブリダイゼーションアプローチ
は、NGF配列をベースにしたプローブを用いるスクリー
ニングによるNT−3のクローニングに使用された(Kais
hoら,1990 FEBS Letters 266:187−191)。
GDNFファミリーメンバーを同定するための別法には、
GDNFファミリーメンバーからの配列を増幅しついで増幅
配列をクローニングし分析する、ポリメラーゼ連鎖反応
(PCR)を使用する方法がある。PCR用の縮重(または非
縮重)オリゴヌクレオチドプライマーは、GDNFの配列に
基づいて合成できる。システイン配置の保存性、および
NGFファミリーに観察されるシステイン残基の直接近傍
におけるアミノ酸配列の保存性を考慮すれば、成熟GDNF
のシステインの周辺領域がプライマーの合成の明らかな
候補を提供するが、様々な他のプライマーも、成熟およ
びプレ−プロ部分蛋白質の両者かや選択できた。PCR反
応は、GDNF配列のみでなく任意のGDNFファミリーメンバ
ーの配列の増幅も可能にする低アニーリング温度で実施
できる(Innisら,1990 PCR Protocals:A Guide to Meth
ods and Applications,Academic Press参照)。このよ
うなPCR反応の生成物はゲル電気泳動によってサイズ選
択し、適当なベクター中にクローン化し、クローン化さ
れたDNAを配列決定してGDNFファミリーメンバーを同定
できる。別法として、クローンを最初にGDNFに特異的な
プローブへの高緊縮条件下におけるハイブリダイゼーシ
ョンでスクリーニングしてGDNFクローンを同定すること
もできる。高緊縮条件下にGDNFにハイブリダイズできな
いクローンをついで配列決定するか、またはこのような
クローンを低緊縮条件下にGDNFプローブにハイブリダイ
ズさせ、これらの条件下にGDNFプローブにハイブリダイ
ズしたクローンをついで配列決定することもできる。
GDNFファミリーメンバーのクローニングにPCRを用い
る第2のアプローチでは、上述のPCR反応の生成物を標
識し、それらの生成物を、高および/または低緊縮条件
下、上に列挙した核酸標的をスクリーニングするための
プローブとして使用するものである。ハイブリダイズし
たクローンまたは核酸セグメントは上に詳述したように
分析して、GDNFクローンおよびファミリーメンバーを確
認することができる。このようなアプローチは、NGFお
よびBDNFの配列をベースにしてNT−3をクローニングす
るために使用された(Maisonpierreら,1990 Science 24
7:1446−1451)。
本発明の好ましい実施態様においては、GDNFからなる
治療用もしくは医薬組成物が、神経障害に罹患している
患者に有効量投与される。本発明の好ましい実施態様に
おいては、GDNFはパーキンソン病に罹患している患者の
処置に治療的に使用される。本技術分野の熟練者であれ
ば、どのニューロンがGDNFによる治療に応答するかを指
示するために利用される各種アッセイについて精通して
いて、GDNFに感受性の他の受容ニューロンの決定はとく
に複雑な実験を行うことなく実施できる筈である。本技
術分野の熟練者であれば、GDNFのメッセージが生体内の
どこに発現しそれらの各領域においてGDNF蛋白質はどの
ようなレベル存在するかは容易に決定できることであ
る。本技術分野の熟練者であれば、また、神経系中のGD
NFの結合部位の配置を決定することもできよう。この情
報から、本技術分野の熟練者には、GDNFに応答すると思
われるニューロンの種類を決定することが可能になり、
これは一方、この蛋白質の適当な臨床的適用を示唆する
ことになろう。GDNFがこのような適用の処置に有用であ
る可能性を検討するためには、ついで適当な細胞培養お
よび動物実験を行うことができる。
B49調整培地から単離された精製GDNFはまた、培養液
中で副交感神経および交感神経細胞の生残を促進するこ
とが示されている。これらの結果は例4に詳述する。
GDNFの神経栄養機能が別個の分離可能な1または2以
上の部分に備っている可能性もあるので、本発明の方法
が、活性成分はGDNFの神経栄養機能を制御するGDNFのそ
の1または2以上の部分からなる治療用組成物を投与す
ることによって実施される場合も考えられる。
本発明の治療用もしくは医薬組成物は好ましくは、注
射により非経口的にまたは移植されたポンプからの連続
注入により脳脊髄液中に直接投与される。また、他の効
果的な投与状態、たとえば非経口徐放性処方、吸入用ミ
スト、経口的に活性な処方、または坐剤も意図される。
また、GDNFの血液脳関門の透過を促進できる1もしくは
2以上の薬剤と組合わせた投与も意図される。一つの好
ましい担体は生理食塩溶液であるが、他の医薬的に許容
される担体たとえば人工CSFの使用も考えられる。一つ
の好ましい実施態様においては、担体とGDNFで生理的に
適合性のある徐放性処方を構成させることが考えられ
る。このような担体における一次溶媒は本質的に水性で
も非水性でもよい。さらに担体には、処方のpH、浸透
圧、粘度、澄明度、色調、滅菌性、安定性、溶出速度ま
たは臭気を改変または維持するための医薬的に許容され
る他の賦形剤を含有させることができる。同様に、担体
はさらに、GDNFの安定性、溶出、放出もしくは吸着速
度、または血液脳関門の透過性を修飾または維持するた
めの他の医薬的に許容される賦形剤を含有させることが
できる。このような賦形剤は、単位用量もしくは多重用
量剤形での非経口投与用または移植ポンプからの連続的
もしくは周期的注入によるCSF中への直接注入用の剤形
の処方に通常および慣用的に使用される物質である。
治療用組成物が処方されたならば、それは溶液、懸濁
液、ゲル、乳化液、固体、または脱水もしくは凍結乾燥
粉末として、滅菌バイアル中に保存される。このような
処方は、そのまま使用できる型あるいは投与直前に再構
築を要する型のいずれかとして保存できる。このような
処方の好ましい保存条件は、少なくとも4℃以下、好ま
しくは−70℃である。
GDNFを含有する処方の非経口投与様式は、皮下、筋肉
内、鞘膜内または脳内の経路が好ましい。GDNFの所望用
量の投与を達成するためには、毎日またはもっと低頻度
で皮下もしくは筋肉内注射による投与を反復するか、ま
たは移植ポンプから連続的もしくは周期的にGDNFを注入
する。投与頻度は使用される処方および投与経路におけ
るGDNFを薬物動力学パラメーターに依存する。
細胞体は脳および脊髄内にあるドーパミン作動性およ
び他の障害神経細胞に対して所望用量のGDNFを到達させ
るためには、GDNFは脳もしくは脊髄のクモ膜下腔または
脳室内に投与することが考えられる。投与は連続的にま
たは周期的に行い、一定もしくはプログラム可能な流速
の移植ポンプによりまたは周期的注射により達成でき
る。投与または、GDNFの血液脳関門の透過を可能にする
薬剤と組合せて行うこともできる。
GDNFを含有するある種の処方では、経口的投与も意図
される。好ましくは、この様式で投与されるGDNFはカプ
セルに封入される。カプセル封入GDNFは、固体剤形の調
合に慣用的に使用される担体を用いてまたは用いないで
処方できる。好ましくは、カプセルは、生物学的利用性
が最大になり全身作用前の分解が最小になる時に胃腸管
内において、処方の活性部分が放出されるように設計さ
れる。GDNFの吸収を促進する他の賦形剤を包含させるこ
ともできる。希釈剤、フレーバー、低融ワックス、植物
油、滑沢剤、懸濁剤、錠剤崩壊剤、および結合剤も使用
できる。
投与様式とは無関係に、特定の用量は、患者およびそ
の体重または体表面積によって計算される。上述の各処
方が関与する処置に適当な投与量を決定するのに必要な
計算をさらに精密化することは、本技術分野の通常の熟
練者によってルーチンに行われ、とくに本明細書に開示
された投与量情報およびアッセイを参考に、面倒な実験
を行うことなく、ルーチンに実施される課題の範囲内に
ある。これらの投与量は、適当な用量−反応データとと
もに用いられる投与量決定のための確立されたアッセイ
の使用によって確認できる。
本発明の一実施態様においては、GDNFは、生物学的に
活性な型のGDNFを合成し分泌できる細胞を患者に移植す
ることによて治療的に投与することができる。このよう
なGDNF産生細胞は天然のGDNFの産生体(B49細胞の類縁
体)の細胞であってもよく、またGDNFの産生能が、GDNF
遺伝子をその発現および分泌が促進される適当な型でト
ランスフォームすることによって増強された細胞とする
こともできる。異種のGDNFを投与することにより患者に
免疫学的反応が起こる可能性を最小限にするため、天然
のGDNF産生体細胞はヒト起源であり、ヒトGDNFを産生す
ることが好ましい。同様に、以下の例5および6に使用
されたのと類似の方法でヒトGDNFをコードする発現構築
体を用い、細胞をヒトGDNFを発現するようにトランスフ
ォームすることが可能である。
自然にヒトGDNFを分泌できる細胞は以下のツールを用
いて同定できる。すなわち(1)ヒトGDNFのメッセンジ
ャーRNAの部分またはヒトGDNFのメッセンジャーRNAの部
分に相補正であるオリゴヌクレオチドを使用して、ノザ
ンブロット分析、RNアーゼプロテクション、in situハ
イブリダイゼーション、ポリメラーゼ連鎖反応もしくは
他の類似方法によりヒトGDNFメッセージを産生する細胞
系を発見するか、または(2)ヒトGDNFを認識するポリ
クローナルもしくはモノクローナル抗体を用い、抽出物
もしくは調整培地がGDNF蛋白質を含む細胞系を、ウエス
タンブロット分析、ELISAアッセイ、放射免疫アッセン
もしくは他の類似の方法で発見する。好ましい戦略で
は、GDNFをそれらの培養培地中に分泌する細胞を発見す
るための上記(2)の方法により、ヒト起源の一連の細
胞からの調整培地をヒトGDNFに対する抗体でスクリーニ
ングする。産生されたGDNFの確認は、B49細胞によって
産生され、それらの培養培地中に分泌されたGDNFについ
て実施したように、精製ついでアミノ酸分析によって行
われる。以下の例7には、ヒト組換えGDNFに対する抗体
の製造および単離について記載する。
天然にヒトGDNFを分泌する細胞またはヒトGDNFを分泌
するようにトランスフォームされた細胞を患者の処置に
使用できる。ヒトまたは非−ヒト動物細胞を、GDNFの放
出は可能であるが患者の免疫系による細胞の破壊を防止
する半透過性ポリマー封入体中に入れて患者に移植す
る。別法として、ex vivoにおいてGDNFを産生するよう
にトランスフォームした患者自身の細胞を直接、このよ
うな封入を行わないで移植することもできる。
生細胞の膜封入の方法は本技術分野の通常の熟練者に
はよく知られていて、封入された細胞の調製およびそれ
らの患者への移植は、とくに複雑な実験を行わないで達
成できる。米国特許第4,892,538号、第5,011,472号およ
び第5,106,627 1号を参照されたい。、各特許は参考と
して本明細書に特に導入される。生細胞を封入する系は
AebischerらのPCT出願WO91/10425号に記載されている
(参考として本明細書に特に導入する)。また、Aebisc
herらのPCT出願WO91/10470号;Winnら,1991 Exper Neuro
l.113:322−329;Aebischerら,1991 Exper Neurol.111:2
69−275;Trescoら,1992 ASAIO 38:17−23も参考にな
る。いずれも参考として本明細書に特に 導入する。
とくに、GDNFを分泌する細胞は、パーキンソン病患者
の、黒質ドーパミン作動性ニューロンの終末領域にGDNF
を提供するため線条体に、またドーパミン作動性細胞体
にGDNFを提供するために黒質に、移植できる。このよう
に局所的に適用されたGDNFはドーパンン作動性終末によ
る線条体の成長および再神経支配を促進し、ドーパミン
作動性神経細胞のそれ以上の変性を防止することにな
る。
したがって、本発明は、それを必要とする患者の生体
内に、GDNFを発生する天燃の能力によって選択されるか
またはGDNFを分泌するように操作された細胞を移植する
ことによって神経障害を防止または処置する方法を包含
する。患者がヒトの場合、分泌されるGDNFは好ましくは
ヒト成熟GDNFである。
本明細書に記載されたGDNF処方は、動物用にもヒト用
にも同様に使用できるものであり、「患者」の語は限定
的に解釈すべきではないことを理解すべきである。動物
に適用する場合、その投与量の範囲は上に特定した範囲
と同一である。
本発明の教示の特定の問題および環境への適用は、本
明細書に含まれた教示に基づいて本技術分野の通常の熟
練者の能力内にあるものである。本発明の代表的な使用
例を以下の実施例に示す。
実施例 例1:GDNFの精製および配列決定 この例にはGDNFのバイオアッセイおよび精製方法を記
載する。また精製の出発材料であるB49細胞系調整培地
の調整方法も記載する。精製されたGDNFのアミノ酸配列
を得る方法、および精製された蛋白質から得られた部分
アミノ酸配列も記載される。
A.材料:一定時期の妊娠ラットはZivie Miller Lab,All
ison Park,PAから入手した。とくに指示にない限りすべ
ての試薬はSigma Chemical Co.,St.Louis,MOから入手し
た。
B.ドーパミン作動性神経栄養活性のバイオアッセイ 培養条件:解離された中脳細胞培養体は以前の記載
(Friedman & Mytilineou1987 Neurosci.Lett.79:65−
72)をわずかに改変して調製された。略述すれば、妊娠
16日目にSprague−Dawleyラット胚の脳から吻側中脳被
蓋を、滅菌条件で顕微鏡下に摘出し、無Ca+2−および無
Ma+2−ダルベッコリン酸緩衝食塩溶液(Gibco,Gaithers
burg,MD)中に集め、穏やかに磨砕して機械的に解離さ
せた。細胞を400μlの培地 を含有する16−mm直径の組織培養ウエル(Falcon,Linco
ln Park,NJ,24−ウエルプレート)上にウエルあたり100
μlをプレーティングして、ウエルあたり2.5〜3.5×10
5細胞の密度とした。培養ウエルは予め、10mMホウ酸ナ
トリウム、pH8.4中0.1mg/mlのポリL−オルニチン溶液
に37℃で3時間暴露し、milli−Q H2O中で3回、アール
の平衡塩溶液(Gibco)で1回洗浄した。栄養培地(10/
10)は、グルコール(33mM)、炭酸水素ナトリウム(2
4.5mM)、グルタミン(2mM)、HEPES(15mM)、ペニシ
リンG(5U/ml)、ストレプトマイシン(5μg/ml)、1
0%熱不活性化胎仔ウシ血清(Gibco)、および10%の熱
不活性化ウマ血清(Gibco)を補給した最小必須培地(M
EM、Gibco)とした。培養液を、6.5%CO2含有水蒸気飽
和大気中、37℃に保持した。3時間後、大部分の細胞が
ウエルの底部に付着した時点で、培地を500μlの新鮮
培地に置換した。この時、各ウエルにGDNF活性をアッセ
イするサンプルの希釈系列を二重試験法で添加し、プレ
ートを37℃のインキュベーター中でインキュベートし
た。1週後、培養液をフルオロデオキシウリジン(13μ
g/ml)およびウリジン(33μg/ml)で24時間処理して過
剰のグリアの増殖を防止し、ついで胎仔ウシ血清を含ま
ない上記培地を供給した。栄養培地は1週毎に交換し
た。別法として、血清を短白質、ホルモンおよび塩の混
合物で置換した化学的に特定された無血清培地を用い
た。特定培地(DM)は、MEMおよび、グルコース(33m
M)、グルタミン(2mM)、NaHCO3(24.5mM)、HEPES(1
5mM)を含むF12栄養混合物(いずれもGibco,1:1;vol/vo
l)の混合物に、トランスフェリン(100μg/ml)、イン
スリン(25μg/ml)、プトレッシン(60μM)、プロゲ
ステロン(20nM)、亜セレン酸ナトリウム(30nM)、ペ
ニシリンG(5U/ml)およびストレプトマイシン(5μg
/ml)を補充して構成された。DMの浸透圧はmilli−Q H2
O(110〜125ml H2O/l)の添加により325に調整した。DM
を用いると、形態学的にまたは星状細胞特異的細胞体質
蛋白質であるグリア原線維酸性蛋白質(GFAP)に対する
染色によって、非神経細胞はほとんど明らかでなかっ
た。GDNFは血清含有および特定培地の両者でドーパミン
の取り込み刺激活性を有する。以下の実施例において到
達したアッセイはすべて血清含有培地中で行われた。
ドーパミン作動性ニューロンの機能状態はこれらの培
養体中、ドーパミン作動性ニューロンにおける特異的
「スカベンジャー」トランスポーターを介するドーパミ
ンの取り込みを測定することにより、また免疫組織化学
的にドーパミン合成酵素、チロシンヒドロキシラーゼに
対する陽性ニューロンの数をカウントすることにより検
定できる。培養体に、同様にドーパミンを輸送し、また
チロシンヒドロキシラーゼを含有することができるノル
アドレナリン作動性ニューロンが有意に夾雑している可
能性は、注意深い摘出と、ドーパミントランスポーター
がノルアドレナリン作動性ニューロンよりもむしろドー
パミン作動性ニューロンの特徴的な薬理像を有すること
から除外された。これらの培養体におけるドーパミンの
取り込みは、ドーパミン作動性ニューロンのモノアミン
トランスポーターのインヒビターであるGBR12909によっ
て、20nMのED50で阻害される。これに反し、ノルアドレ
ナリン作動性ニューロンにおけるモノアミントランスポ
ーターのインヒビターであるデシプラミンでは少なくと
も300倍以上がそれらの培養体におけるドーパミンの取
り込み阻害は必要である。これらの値はドーパミン作動
性ニューロンにおけるモノアミントランスポーターにつ
いて報告されていた値である。
サンプルの調製:中脳細胞培養体中のドーパミン作動
性神経栄養活性のアッセイに先立って、精製の工程1〜
工程3(以下のC項参照)から得られたすべてのサンプ
ルを以下のように脱塩した。培地10/10(担体として)1
00μlをCentricon−10(Amicon)に加えて、10分間静
置させた。検定すべきサンプルのアリコートをCenticon
に加え、ついで重炭酸塩は含まないが10mMHEPESを含有
するダルベッコ高グルコース改良イーグル培地、pH7.2
(溶液A)1mlを加え、5,000×gで70分間遠心分離し
た。沈殿物(約0.1ml)を新鮮な溶液Aにより1.1mlに戻
して、2回再濃縮した。サンプルを、0.11μmUltrafree
−MC無菌Duraporeユニット(Millipore,Bedford)を通
して濾過し、培養ウエルに加えた。
3H−ドーパミン取り込み:培養液中トリチウム化ドー
パミン(3H−DA)の取り込みを、従前の記載(Friedman
& Mytilineou,1987 Neurosci.Lett.79:65−72)をわ
ずかに改変して日6または7に実施し、すべての溶液は
37℃に維持した。略述すれば、培養培地を除去し、5.6m
Mグルコース、1.3mM EDTA、0.1mMアルコルビン酸およ
び0.5mMパルギリン、モノアミンオキシダーゼのインヒ
ビターを含有するクレブス−リンゲルのリン酸緩衝液、
pH7.4からなる取り込み緩衝液0.25mlで2回洗浄した。
培養体を50nM3H−DA(New England Nuclear,Boston,M
A、比活性36〜37Ci/mmol)0.25mlとともに37℃で15分間
インキュベートした。インキュベーション混合物を除去
して3H−DAの取り込みを停止させ、ついで細胞を0.5ml
の取り込み緩衝液で2回洗浄した。細胞から3H−DAを放
出させるために培養液を95%エタノール0.5mlと37℃で3
0分間インキュベートし、次に10mlのEcoLite(ICN,Irvi
ne,CA)に加え、シンチレーションカウンターでカウン
トした。ブランク値は、取り込み緩衝液に0.5MGBR−129
09(RBI)、ドーパミンニューロンの高親和性取り込み
ポンプの特異的インヒビター(Heikkilaら,1984 Euro
J.Pharmacol.103:241−48)を加えて得られ、通常非処
理対照培養液中3H−DA取り込みの5%未満であった。GD
NF活性の栄養神経(TU)数は培養液の3H−DA取り込みの
50%最大刺激を与えた希釈の逆数と定義された。比活性
はTU数をサンプル中に存在する蛋白質量で徐して求め
た。
C.GDNFの精製 出発原料:D.Schubert,Salk Institute,La Jolla,CAか
ら入手したB49膠芽種細胞(Schubertら,1974 Naturek 2
49:224−27参照)は、培養フラスコ中(225cm2、Costa
r,Cambridge,MA)、10%胎仔ウシ血清、4mMグルタミ
ン、50U/mlペニシリンGおよび50μg/mlストレプトマイ
シン含有DMEM培地でコンフルーエンスになるまで増殖さ
せた。無血清成育調整培地(CM)は、培養体を1回10ml
の無血清培地で洗浄し、ついで細胞をフラスコあたり50
mlの無血清培地中に2日間置いて調製した。CMを収集
し、細胞には以後日6まで2日毎に新鮮な無血清培地を
補給した。細胞の各バッチからの3回のCMを収穫を合せ
て、4℃、5,000×gで20分間遠心分離して細胞および
細胞屑を除去した。上清をAmiconコンセントレーター
(YM10膜)で約10倍に濃縮し、4℃、40,000×gで20分
間遠心分離した。上清を0.2μ Micro Culture Capsule
(Gelman Sciences)を通して濾過した。4℃で1カ月
まで保存可能であった。
工程1.ヘパリンセファロースクロマトグラフィー:上
述のプレパレーション(200mgの蛋白質)を、0.15NNaCl
含有50MNaPi緩衝液、pH8.0(緩衝液A)で平衡化したヘ
パリンセファロースCL−6B(Pharmacia,Piscataway,N
J)のカラム(1×25cm)上に負荷した。カラムをつい
で同じ緩衝液により、溶出液の280mmの光学密度(O.D
280)がベースラインに復するまで洗浄し、緩衝液Aか
ら、1.5NNaCl含有50mMNaPi、pH8.0(緩衝液B)へ至る1
00mlの直線勾配で溶出した。2mlの分画を集めた。分画
を伝導度およびGDNF活性について分析した。図1はこの
クロマトグラフィーを示す。溶出蛋白質をO.D280として
プロットした。各分画で測定した伝導度とGDNF活性のプ
ロットを重ねてある。ピークGDNF活性を示し、バーで指
示した分画(ほぼ0.6〜0.8NNaCl)をプールしてさらに
分析した。
工程2.FPLCスーパーロースクロマトグラフィー:上記
プールをAmrconコンセントレーター(Amicon,Beverly,M
A,YM10膜)で0.4mlに濃縮して、迅速蛋白液体クロマト
グラフィー(FPLC)スーパーロース12カラム(Pharmaci
a)上、 0.5NNaCl含有50mMNaPi緩衝液pH7.4中、流速0.5ml/分で
クロマトグラフィーに付した。14分間溶出したのち、0.
5mlの分画を5μlの0.4%Tween 20を含むシリコン処理
微量遠沈管に集めた。各分画からのアリコートにつきGD
NF活性を分析した。図2には、O.D280でトレースした蛋
白像にGDNF活性のパターンを重ねて、このクロマトグラ
フィーを示す。カラムに負荷したGDNF活性の85%が分画
番号12〜15に回収された。
工程3.RP−HPLC:上記からの分画番号14を10μlの25
%トリフルオロ酢酸(TFA)で酸性にした。酸性にした
材料の半分を径の細いAquapore RP−300 C−8逆相HPC
カラム(Brownlee column,Applied Biosystems,San Jos
e,CA)2.1×220mmに負荷し、H2O/0.1%TFA:80%アセト
ニトリル/0.85%TFA勾配で溶出した。蛋白含有分画を21
4nmのUV吸収に基づき、手動で、シリコン処理微量遠沈
管に集めた。各分画のアリコートをGDNF活性について分
析した。図3には、このクロマトグラフィーを、O.D214
でトレースした蛋白像により、下方パネルのその活性パ
ターンとともに示す。分画5および6がRP−HPLCで回収
された活性の約90%を含有し、分画7が残りの10%の活
性を含んでいた。図4は図3に示すGDNF活性ピーク附付
の分画をSDS−PAGEゲルに泳動し、銀染色した結果を示
す。
工程4.プレパラティブSDS−PAGE:ピークGDNF活性を含
有する分画5および6をプールし、10μlの0.4%Tween
20の存在下高速真空で20μlに濃縮した。サンプル1
μlの1M Tris塩基、および40%グリセロールおよび5
%SDS含有0.2M Tris−HCl,pH6.8,5μを加え、非還元15
%SDS−PAGE上に流した(Laemmli 1970 Nature 277;680
−684)(0.075×14×11.5cmのスラブ、20ウエル−コ
ム、0.075×0.4×2.8cm/サンプルウエル)。電気泳動は
10℃、40mA/ゲルで2時間実施した。ゲルストリップを
1.14mmのスライスに薄切した。各スライスをさらに小さ
な2つの細片に切断し、0.01%Tween 20含有5mMNaPi,pH
6.7の25μlを3回順次交換して、20時間にわたり4℃
で絶えず振盪しながら溶出した。溶出した物質の3つの
アリコートを合せてGDNF活性を検定し(図5)、最高の
活性を示す溶出液(図5の30〜42kDに相当するゲルスラ
イス番号16〜23)をプールした。ブランクゲルストリッ
プ(電気泳動前にSDS−PAGEサンプル緩衝液のみが負荷
された最頂部)も対照として同様に操作した。
工程5.RP−HPLC:プールしたゲル溶出液を高速真空で
約150μlに濃縮し、20μの25%TFAで酸性にし、工程3
の記載と同様にしてRH−HPLCを行った。蛋白含有分画を
O.D214に基づいて手動で、シリコン処理微量遠沈管に集
め、GDNF活性について検定した。図6にはこのクロマト
グラフィーの結果を示す。対照として、同様のサイズと
したブランクゲルスライスからの溶出液についてもRH−
HPLCを行った。上記サンプル中対照像を超える唯一の有
意なO.D214ピークはピーク3で(図6、パネルA対
B)、それがHPLCカラムに負荷されたGDNF活性の約70%
を含有する。図7には銀染色SDS−PAGEゲル上に通した
ピーク3を示す。可視化された唯一の染色は30〜42kDの
間の極めて広いバンドで、プレパラティブSDS−PAGEで
認められたGDNF活性像(図5)と一致する。典型的な精
製の要約を表Iに示す。
D.精製GDNFのアミノ酸配列決定 アミノ末端配列:図6のピーク3の配列を、気相蛋白
シーケンサー(Applied Biosystems)を用いて決定し
た。得られた配列を図8に示す。工程3の精製後のピー
クGDNF活性を有する分画(図3の分画5および6)の配
列決定でも、精製サンプルで得られた図8の配列と同一
の単一の配列が明らかにされた。これらの異なる分画に
共通する唯一の物質は30〜42kDaの間をスミアとして移
動する物質である。したがって、図4の銀染色ゲル分画
5および6に見られる30〜42kD領域の外側に夾雑するバ
ンドは、a)現在の技術では配列決定できない量(<1
ピコモル)、b)配列が30〜42kDスミアに類似する、ま
たはc)ブロックされたアミノ酸末端を有するのいずれ
かであろう。
中間配列:上述の工程3の精製後のGDNFプレパレーシ
ョンを出発原料として使用して中間配列を得た。図3の
分画5および6を9μlの0.4%Tween 20を含有するシ
リコン処理微量遠沈管にプールし、高速真空で約40μl
に濃縮した。サンプルに、2.5Mグアニジン塩酸塩および
1μgのトリプシンを含有する160μlの1%NH4HCO3
加えて、37℃で一夜インキュベートした。混合物を20μ
lの25%TFAで酸性にして、高速真空で約150μlに濃縮
し、ペプチドを径の細いAquapore RP−300 C−8逆相HP
LCカラム(Brownlee column)、2.1×220mm上で分離
し、H2O/0.1%TFA:80%アセトニトリル/0.85%TFA勾配
で溶出した、ペプチド含有分画を214nmの吸収に基づい
て手動で、シリコン処理微量遠沈管に集めた。図9には
このクロマトグラフィーの結果を示す。図9のピーク10
の配列は、図8に示す非処理蛋白質のアミノ−末端の配
列(配列番号1)の最初の13個のアミノ酸残基と同じで
あると決定された。図9のピーク37はさらにCNBrで処理
した。サンプルを高速真空で20μlに濃縮した。サンプ
ルに、70μlの90%ギ酸および5mgのCNBrを加え、サン
プルを暗所、室温で一夜インキュベートした。この混合
物を高速真空で20μlに濃縮し、0.1%TFA100μlで希
釈し、上述のように逆相HPLCで分離した。図10にはこの
クロマトグラフィーの結果を示す。図10をピーク1の5
μlの0.4%Tween 20の存在下に高速真空で20μlに濃
縮した。サンプルに100μlの1%NH4HCO3および5μl
の50mMジチオスレイトールを加え、サンプルを室温で1
時間インキュベートした。混合物を10μlの25%TFAで
酸性にして、高速真空で100μlに濃縮し、上述のよう
に逆相HPLCで分離した。図11には、このクロマトグラフ
ィーの結果を示す。図11のピーク33および34の両者が同
一の配列を与えた(図12)(配列番号2) E.GDNFの特性 SDS−PAGE上の移動性:サンプルの熱処理を行わない
で、非還元条件下において、GDNFはSDS−PAGE上、31〜4
2kDの間のスミアバンドとして移動する。サンプルを還
元剤(4%β−メルカプトエタノール)の存在下に10℃
に3時間加熱すると、GDNFは20〜23kDの間の個別の多重
バンドとして移動した。ゲルに負荷した生物活性の約50
%が前者(非還元)の条件では回収できるが、後者の条
件(還元)では回収できなかったことから、GDNFはジス
ルフィド結合したダイマーであり、ダイマーとしてのみ
活性であると考えられる。単一のアミノ末端はこのGDNF
プレパレーションはコア一次構造に関しては均一である
が、スミアまたは多重バンドのパターンは不均一なグリ
コシル化蛋白質であることが示唆される。
比活性:精製されたGDNFは約17栄養単位/ngの比活性
をもつと評価され、これはドーパミン取り込みの半最大
刺激が約60pg/mlという比較的低濃度で起こることを示
している。精製されたGDNFについて測定された比活性
は、RP−HPLCに使用された酸性有機溶媒およびSDS−PAG
Eにおける変性条件への暴露による精製時のGDNFの部分
不活性化によって、幾分低く評価されている可能性があ
る。
GDNFの特異性:GDNFは、ドーパミンニューロンにおけ
るドーパミンの取り込みを増強するその能力によって精
製された(図20A)。GDMFがドーパミンニューロンの生
残および/または成熟の他の係数も上方調節しているか
を測定するために、中脳培養体中でのチロシンヒドロキ
シラーゼ(TH)免疫反応性も測定した。THは培養体中の
ドーパミンニューロンに特異的なマーカーである。GDNF
による免疫反応性の上方調節は、ドーパミンニューロン
の生残の上昇および/またはドーパミンニューロンあた
りのTHの産生の増加によって起こりうる。プレーティン
グの日に精製GDNFを加えて、8日後に培養体を調べる
と、GDNFを加えない対照より10倍多い数のTH+ニューロ
ンを生じた。第2回目のGDNFを日9に加え、7日(in v
itroで16日)後に培養体を調べたところ、対照に比べて
同様の用量依存性の増大が依然として観察された(図20
B)。すなわち、GDNFによれば、ドーパミンニューロン
の生残の維持および/または中脳ドーパミンニューロン
におけるTH遺伝子の発現の増大が可能であった。
GDNFがドーパミンニューロンの成熟および/または生
残に特異的な刺激効果を発揮し、すべてのニューロンに
対する一般的な作用を示すものではないことを確認する
ため、中脳培養物体に同様に存在するγ−アミノ酪酸
(GABA)を含むニューロンのGDNFに対する応答性を分析
した。様々なGDNF濃度でそれぞれ15および16日増殖させ
た中脳細胞の姉妹培養体で、H3−ドーパミン(3H−DA)
および14C−GABAの取り込みを測定した。上述のよう
に、GDNFは中脳ドーパミンニューロンの3H−DA取り込み
能をGDNFを加えない対照以上に約150%増大させた(図2
1A)。しかしながら、GDNFの存在下においても14C−GAB
Aの取り込みは対照の取り込みよりもわずかに約20%高
いだけで、GDNFはGABAニューロンの14C−GABA取り込み
能には有意な影響を与えなかった(図21B)。これは3H
−DA/14C−GABA取り込みの比の計算値の上昇によっても
例示できる(図21C)。これらのデータは、中脳のドー
パミンおよびGABAニューロンはGDNFの存在に対して異な
る応答を示し、中脳培養体の3H−DAの取り込みに対する
GDNFの作用はGABAニューロンとの対比から明らかなよう
にドーパミンに対して特異的であることを指示するもの
である。
これらの観察は、GDNFがパーキンソン病またはドーパ
ミン作動性ニューロンの関与する他の疾患の処置に使用
される理由をさらに明確にするものである。これらの結
果は、GDNFがドーパミン作動性ニューロンの少なくとも
2つの重要な性質、ドーパミンの取り込みとTH酵素レベ
ルを上方調節することを証明する。これらの結果はま
た、GABAニューロンは同じ影響を受けないことから、GD
NFの作用は少なくとも部分的に、ドーパミン作動性ニュ
ーロンに特異的であることを示している。
ドーパミン作動性およびGABA作動性ニューロンに加え
て、ラット胚中脳培養体には他のニューロン集団、セロ
トニン作動性ニューロンがある。一部の因子、たとえば
中脳培養体中のドーパミン作動性ニューロンによるドー
パミンの取り込みを増大させる上皮増殖因子(EGF)は
同様に、セロトニン作動性ニューロンによるセロトニン
の取り込みおよびGABA作動性ニューロンによるGABAの取
り込みも増大させる(Casperら,1991 J.Neurosci.30:37
2参照)。これは、これらの因子がドーパミン作動性ニ
ューロンに特異的ではないことを指示する。これに反
し、GDNFはセロトニン作動性ニューロンによるセロトニ
ンの取り込みを増大させない。3H−セロトニンの取り込
みは、取り込み緩衝液が3H−DAの代わりに50nMの3H−セ
ロトニン(11Ci/mole,Amersham,Arlington Heights,I
L)を含有するほかは、例1Bに記載した3H−DAの取り込
みの場合と同様の方法で測定した、セロトニンニューロ
ンにおけるセロトニンの取り込みの強力な既知のインヒ
ビターであるシタルプラム(Mount Sinai School of Me
dicineのC.Mytilineou博士から恵与された)10μMの存
在下には、3H−セロトニンの取り込みは15%に低下し
た。シタルプラムの存在下における対照値が、図24に示
す実験値から差し引かれた。
EGFのような非特異的因子とは異なり、GDNFは、ドー
パミンの取り込みが有意に増大する条件下に、GABAの取
り込み(図21)およびセロトニンの取り込み(図24)を
増大させない。これらのおよび上述の結果は、GDNFが、
同じ中脳培養体中に存在するGABA作動性およびセロトニ
ン作動性ニューロンに比較した場合、中脳培養体中のド
ーパミン作動性ニューロンに特異的であることを示して
いる。このような特異性は中脳(黒質)のドーパミン作
動性ニューロンに特異的な疾患であると考えられるパー
キンソン病の処置に対するGDNFの有用性を高めるもので
ある。
例2.GDNFの遺伝子のクローニング A.GDNFをコードするラット遺伝子のcDNAコピーのクロー
ニング GDNFをコードする遺伝子のクローニングのためには、
B49細胞から単離されたポリA+RNAからcDNAライブラリー
を構築し、このライブラリーを、精製されたGDNFから得
られたアミノ酸配列に基づく縮重オリゴヌクレオチドプ
ローブでスクリーニングした。このプローブにハイブリ
ダイズしたcDNAクローンは、DNA配列決定によって、縮
重オリゴヌクレオチドプローブに用いられた配列の3′
に位置し、GDNF中に存在してスクリーニングオリゴプロ
ーブのベースとしてアミノ酸配列に対してカルボキシ末
端に位置するDNA配列を含有することが決定された。
B49細胞系の培養条件は上記例1に詳述されている。R
NAプレパレーションのためには、細胞を血清含有培地中
でほぼコンフルーエンスまで増殖させ、1回無血清培地
(DMEM)で洗浄し、DMEM中で4日間、2日後に1回培地
を変えて増殖させた。細胞をついで収穫し、総RNAをCho
mczynski & Sacchi 1987 Anal.Biochem.162:156−159
の方法で抽出した。ポリアデニル化RNAは、この総RNAか
ら、Maniatisら,1989 Molecular Cloning 2版,CSH Pres
sに記載のオリゴdTセルロースアフィニティーカラムを
通過させて調製された。
cDNAの合成はM−MLV RNアーゼH+逆転写酵素(Bethe
sda Research Lab,Gaithersburg,MD)を用い、その販売
業者により記載されたプロトコールに従って行われた。
最初のストランド反応はオリゴdT15プライマー(Pharma
cia)で開始し、5μgのポリA+RNAあたり8単位のRNas
in(Promega,Madison,WI)も含有させた。第2のストラ
ンド合成は、大腸菌DNAポリメラーゼI、大腸菌RNアー
ゼH、および大腸菌DNAリガーゼ(すべてBRLより)によ
り販売業者のプロトコールに従って行われた。クローニ
ングを容易にするため、cDNAはフラッシュ末端を生成さ
せるためにT4DNAポリメラーゼ(BRL)で処理し、大腸菌
メチラーゼ(BRL)でメチル化した。これらの工程は酵
素の販売業者によって供給されているプロトコールに従
って実施した。cDNAはついでフェノールとクロロホルム
の1:1混合物1容量によって2回抽出し、水性分画を7.5
MのNH4 Ac 1/2容およびエタノール3容により室温で沈
殿させた。沈殿を、室温、16,000×gにおいて15分間遠
心分離して回収し、70%エタノールで洗浄し、真空で乾
燥させ、500ピコモルのリン酸化リンカー(CCCGAATTCGG
G,Pharmacia)(配列番号9)および3単位のT4DNAリガ
ーゼ(BRL)を含有する50μlの50μM Tris−HCl(7.
6)、10mM MgCl2、1mM ATP、1nM DTT、5%のPEG800
0中に再懸濁した。リンカーリゲーションは16℃で一夜
(約16時間)実施した。反応混合物をフェノール/クロ
ロホルムで抽出し、上述のように沈殿させた。洗浄した
ペレットを乾燥し、50μlのEcoR I消化緩衝液[100mM
Tris−HCl(7.5)、5mM MgCl2、50mM NaClおよび0.02
5%Triton X−100]に再懸濁し、これに400単位のEcoR
I(New England Biolabs,Beverly,MA)を加えた。沈殿
後(上述のようにして)、ペレットをEcoR I消化緩衝液
に再懸濁して、第2ラウンドのEcoR I消化を上述のよう
に実施した。この反応生成物を沈殿させて、40μlの10
mM Tris−HCl(8.0)、1mM EDTA、100mM NaCl中に再
懸濁した。このEcoR I消化リンカーを含むcDNAをセファ
クリルS−300(Pharmacia)スピンカラムを通して約11
00gで5分間遠心分離してサイズ分画した。このカラム
からの流出液を集め、上述のようにエタノールで沈殿さ
せ、10mM Tris−HCl(8.0)、1mM EDTA中に約0.1μg/
μlの濃度で再懸濁した。
cDNAライブラリーはλZap II(Stratagene,La Jolla,
CA)クローニングベクター中に構築した。通常、1μg
のEcoR I消化、ホスファターゼ処理ベクターアーム(St
ratageneより購入)を、50mM Tris−HCl(7.6)7mM MgC
l2、1mMDTT、5%のPEG8000および1mMATP中に約3Weiss
単位のT4DNAリガーゼ(NEB)を用いた5μlのリゲーシ
ョン液中、0.1μgのEcoR I連結cDNAにリゲートした。
リゲーションは16℃で一夜実施した。リゲ−ションはGi
gapack II Goldパッケージングエキストラクト(Strata
geneより購入)に販売業者によって供給されたプロトコ
ールに従ってパッケージした。ライブラリーはStratage
neにより提供されたXL1−Blueホスト上に滴定およびス
クリーニングのためにプレーティングした。
このようなリゲーションおよびパッケージングの一つ
から、約270,000のプラーク形成単位が計12の150mm直径
のペトリペレート上にプレートアウトされた。これらの
プレートから、Maniatisらによって記載された操作のの
ちに、ニトロセルロースフィルターリフトが二重に調製
された。フィルターを以下の32P−標識縮重オリゴヌク
レオチド(配列番号7)(I=イノシン): にハイブリダイズさせた。この配列は先の例1に記載し
た精製GDNFのアミノ末端(配列番号10)附近から得られ
たアミノ酸配列(図8)(配列番号1): をベースとしている。オリゴヌクレオチドは32P−ATP
(Amersham,Arlington Heights,IL)に由来する32Pで、
T4ポリヌクレオチドキナーゼ(PharmaciaまたはUnited
States Biochemical,Cleve−land,OH)を用いて標識し
た。ハイブリダイゼーション反応は6×SSPE、0.1%SD
S、0.1mg/ml tRNA(Sigma,St.Louis,MO)、および2×
デンハルト試薬(フィコール、ポリビニルピロリドン、
BSA分画V、各0.4mg/ml)中、50℃で一夜(約16時間)
行った。ハイブリダイゼーション溶液は、溶液1mlあた
り2〜3×106cpmの標識オリゴを含有した。ハイブリダ
イゼーション後、フィルターを2×SSPE、0.1%SDS中室
温で2回、ついで50℃に予め加熱した同じ溶液で2回洗
浄した。フィルターを風乾させ、増感スクリーンを用い
て−70℃で7日間、フィルムに露出した。
現像したフィルムを調べて、スクリーニングオリゴヌ
クレオチドにハイブリダイズしたプラークを固定した。
この一次スクリーニングにおいて、24個が二重陽性と推
定された。陽性シグナルに相当するライブラリープレー
トの領域を切り取り、再懸濁し、上に詳述したハイブリ
ダイゼーション操作によって第2回のスクリーニングを
行うために再プレーティングした。この第2のスクリー
ニングでは、最初の24のうち8つが陽性として再テスト
され、16は陰性の結果を与えた。これらの8つの陽性は
さらに1または2回のハイブリダイゼーションによって
プラーク精製し、これらのうちの6つについて、GDNFを
コードできるDNA配列を含むかを決定するために、つい
でDNA配列決定法によって分析した。
クローン化された挿入体を含有するλZap IIファージ
のファージミド部分は以下、pBluescript SK−と呼ぶ。
pBluescript SK−ファージミドを、オリゴヌクレオチド
プローブにハイブリダイズした各λZap IIリコンビナン
トから切り取った。λZap IIベクターからのリコンビナ
ントpBluescript SK−プラスミドのin vivo切除の操作
は、販売業者のプロトコールに詳述されている。略述す
れば、λZap IIとM13「ヘルパー」ファージのコインフ
ェクションにより、感染性M13ビリオン内にリコンビナ
ントpBluescript SK−の一本鎖DNAコピーのパッケージ
ングが生じる。このようなビリオンが感受性細胞に感染
すると、一本鎖のDNAが二重鎖DNAに変換されて、プラス
ミドとして垂直に増殖する。この現象に対する選択はpB
luescript SK−上にコードされたアンピシリン抵抗性遺
伝子によって与えられる。したがって、8つの陽性λZa
p IIクローンそれぞれからの「レスキュー」リコンビナ
ントpBluescript SK−プラスミドを含有する大腸菌XL1
−Blue誘導体は、Stratageneによって記載されたプロト
コールに従い、λZap IIベクターとともに供給される
「ヘルパー」ファージの使用により容易に得られた。
DNA配列決定には、二重鎖プラスミドDNAが6つのこれ
らのリコンビナントプラスミドから、Birnboim & Doil
y 1979 NAR 7:1513−1523に基づく「ミニ製造」操作に
よって調製された。ジデオキシ−連鎖ターミネーティン
グ法を用いるDNA配列決定反応は、これらの鋳型とスク
リーニングオリゴをプライマーとして用いて実施された
配列決定のための試薬はキット(Sequenase Version 2.
0)としてUnited States Biochemicalから入手し、配列
決定操作は販売業者によって提供されたプロトコールに
従って行われた。クローンλZap II76.1から誘導された
一つのクローン、pBluescript SK−76.1は以下の配列
(配列番号11): を与えた。この配列は翻訳されて以下のアミノ酸配列
(配列番号12): を与え、スクリーニングオリゴ/配列決定プライマー発
生させるために用いたアミノ酸配列の末端に5アミノ酸
残基カルボキシ末端に始まるGDNFのアミノ末端のある領
域を決定するアミノ酸配列に合致する。この結果はλZa
p II76.1中に含まれたcDNAクローンがB49細胞調整培地
から精製されたGDNF蛋白質の部分またはすべてをコード
しなければならないことを示している。
B.GDNFのコード配列を包含するcDNAクローンλZap II7
6.1の領域のヌクレオチド配列 cDNAクローンの5′末端の最初の877塩基対のヌクレ
オチド配列が決定された。この領域は、精製されたGDNF
のアミノ末端について得られたアミノ酸配列および精製
されたGDNFの切断によって誘導された中間ペプチドに一
致する配列を包含する、227アミノ酸オープンリーディ
ングフレーム(ORF)を含むことが見出された。このORF
について予測されたカルボキシ末端134アミノ酸は精製
された成熟GDNF蛋白質の予測されたアミノ酸配列からな
る。先行する93アミノ酸は、可能性のある開始ATGコド
ンとそれに続く推定分泌シグナル配列を包含し、その蛋
白質の前駆体もしくは「プレ−プロ」型の切断により例
1に上述したGDNFの成熟、精製型を発生させる蛋白分解
的プロセッシング部位の可能性がある部位を含有する。
配列決定反応のための鋳型DNAはプラスミドpBluescri
pt SK−76.1 DNAの一本鎖と二重鎖バージョンを包含す
る。二重鎖DNAはXL1−Blue(pBluescript SK−76.1)の
培養体から「煮沸製造」操作(Anal.Biochem.114:193−
97)によって製造し、CsCl密度勾配中に層積した。一本
鎖鋳型は、XL1−Blue(pBluescript SK−76.1)の、販
売業者(Stratagene)によって供給された「ヘルパー」
M13ファージによる、ファージとともに供給された関連
プロトコールを用いた感染によって製造された。長さ15
〜23ヌクレオチドの一本鎖オリゴヌクレオチドプライマ
ーはApplied Biosystems(Foster City,CA)DNAシンセ
サイザー、380A型シンセサイザーを用いて合成し、一般
的には精製しないで使用した。配列決定はジデオキシ−
連鎖ターミネーション法を用いて実施した。使用した試
薬はSequenase Version2.0キット(United States Bioc
hemical)に包含され、販売業者によっ て供給されたプロトコールに従って使用した。
精製された成熟GDNF蛋白質をコードする配列を含有す
るcDNAクローンλZap II76.1の5′末端の最初の877ヌ
クレオチドのヌクレオチド配列は、図13に(配列番号
3)、この配列内に見出される681塩基対オープンリー
ディングフレーム(ORF)の推定アミノ酸配列とともに
示す。精製された成熟GDNFに相当する配列は位置281で
セリン残基によって始まり、図14に示す(配列番号
4)。この領域について得られたDNA配列は精製されたG
DNFのアミノ末端に観察されたアミノ酸配列(例1参
照)の最初の23残基と完全に一致するアミノ酸配列を予
測させる。
図13に示した遺伝子の分析に基づくと、GDNFは最初プ
レ−プロGDNFポリペプチドとして翻訳され、シグナル配
列およびこの分子の「プロ」部分の蛋白分解的プロセッ
シングによりB49細胞調整培地から精製されるGDNFの型
が製造されるものと考えられる。このようなプレ−プロ
型の最も考えやすい翻訳開始部位は図13の配列(配列番
号3)中の位置50に存在するATGコドンである。
C.GDNFをコードするヒト遺伝子のクローニング 多くの神経栄養因子のアミノ酸配列は様々な哺乳動物
種を通じて高度に保存されている(Hallbookら,1991 Ne
uron 6:845−858;McDonaldら,1991 BBA印刷中)。アミ
ノ酸配列の保存の結果として、これらの蛋白質をコード
する遺伝子のヌクレオチド配列にもかなりの保存性があ
る。したがって、ある哺乳動物種における神経栄養因子
をコードする遺伝子が、他の哺乳動物種における因子を
コードする遺伝子と、適当なアニーリング条件下に交叉
−ハイブリダイズ(すなわち安定な二重鎖DNAハイブリ
ドを形成)できることは、一般的に事実である。この性
質が、GDNFの遺伝子を含むクローン化ヒトDNAセグメン
トの同定に使用された。
ベクターλFIX II中に構築されたヒトゲノムライブラ
リーはStratagene(カタログ番号946203)から購入し
て、例2Bに上述したGDNFのラットcDNAクローン(pBlues
cript SK−76.1)由来の32P−標識プローブを用いてス
クリーニングした。プローブはポリメラーゼ連鎖反応
(Saikiら,1985 Science 230:1350)を用いた特異的増
幅による成熟GDNFからの約250bpのコード配列によって
構成され、以下のように製造された。50μlまたは100
μlPCR反応を鋳型として<1ngλZap II76.1DNAおよびラ
ットGDNFからの配列に基づく2つの各オリゴヌクレオチ
ド10〜20pmolを用いて実施した。一つのオリゴは上記例
2Aに記載の「スクリーニングオリゴ」(DHD−21ともい
う)であり、一方、第2のオリゴ(DHD−26)(配列番
号13)は配列: を有し、これはGDNFの切断の内部ペプチド生成物(例1
参照)から得られたアミノ酸配列(Asp−Lys−Ile−Leu
−Lys−Asn−Leu)(配列番号14)に基づいている。反
応は、10mM Tris−HCl(25℃でpH8.3)、50mM KCl、1.
5mMMgCl2、10μg/mlBSA(Promega R3961)、各0.2mMのd
NTP(Pharmacia)中、2.5〜5μポリメラーゼ(USB)を
使用して実施した。反応は30サイクルの:95℃で1分、4
4℃で1.5分および72℃で1.5分から構成された。この反
応の生成物はアガロースゲル電気泳動によって、図13に
示されたcDNA配列中の2つのプライマーの位置に一致す
る約250bpであることが観察された。この非標識フラグ
メントはUltrafree−MCフィルターユニット(Millipor
e,Bedford,MA)を用いる遠心分離により、販売業者のプ
ロトコールに従ってゲルから溶出し、同じ2つのオリゴ
プライマーを用いる以後のPCR標識反応に鋳型として使
用した。これらの反応はコールドdCTPの濃度を12.5μM
に低下させて、反応に2.5μM3000〜5000Ci/mmol α−32
PdCTP(Amersham)を加えたほかは同じ条件下に行っ
た。標識反応の生成物はBioSpin6スピンカラム(BioRa
d,Richmond,CA)を通過させた。このカラムからの流出
液をヒトゲノムライブラリーをスクリーニングするため
のプローブとして使用した。
ライブラリーは、Stratageneによって提供された大腸
菌株PLK17を用いてプレートアウトした。それぞれ約50,
000のプラークを含有する150mmペトリプレート24個を調
製した。各プレートからManiatisら(前出)によって記
載された操作に従い、ニトロセルロースフィルターリフ
トを二重に調製した。これらの48個のフィルターを上述
の250×106cpmのPCRプローブにより、250mlの6×SSP
E、0.1%SDS、2×デンハルト試薬、0.1mg/ml tRNAおよ
び30%ホルムアミド(USB)中、42℃において一夜(約1
6時間)プローブした。ついで、フィルターを250mlの2
×SSPE、0.1%SDS中室温で2回、1.61の予め50℃に加熱
した0.1×SSPE、0.1%SDSで2回洗浄した。フィルター
を室温で乾燥させ、増感スクリーンを用い−70℃で6日
間フィルムの下に置いた。フィルムを現像して評価し
た。6個に強い二重陽性が認められた。陽性シグナルに
相当するライブラリープレートの領域を切り取り、再懸
濁し、上に詳述したハイブリダイゼーション操作によっ
て第2回のスクリーニングを行うために再プレーティン
グした。6つのすべてが陽性として再テストされ、さら
に1ラウンドのプレーティングおよびハイブリダイゼー
ションによってプラーク精製された。
プローブにハイブリダイズする領域の周囲のDNAセグ
メントをサブクローンし配列決定すること、およびこの
ようにしてGDNFのヒト遺伝子の配列のすべてまたは部分
を決定することは、本技術分野の熟練者には定常的に行
われる操作の問題である。これらのクローン中に全ヒト
GDNF遺伝子が表示されなかった場合には、ゲノムに沿っ
て「歩いて」この領域の周囲のDNAの重複セグメントを
クローニングして、この遺伝子の残りの部分の配列を得
て、配列決定することもルーチンの問題である。
上述の操作および本技術分野の熟練者には自明の様々
の他の操作が、他のヒト遺伝子ライブラリーのスクリー
ニングに適用できた。たとえば、上述のプローブおよび
ハイブリダイゼーションプロトコールを用いて、ヒト被
殻から抽出されたA+RNAから構築されたヒトcDNAライブ
ラリーをスクリーニングした。クローニングベクターλ
gt10に含まれるこのライブラリーはClontech(Palo Alt
o,CA)から購入した(カタログ番号HL1092a、ロット番
号1561)。このライブラリーを大腸菌LE392(Maniatis
ら、前出)上にプレートあたり約20,000プラークの密度
でプレーティングし(計約250,000プラーク)、上述の
条件下のハイブリダイゼーションによってスクリーニン
グした。ハイブリダイゼーション後、フィルターを0.2
×SSPE、0.1%SDS中室温で2回、ついで50℃に予め加熱
した0.1×SSPE、0.1%SDS中で2回洗浄した。フィルタ
ーを室温で風乾し、フィルム下に置いた。3日間増感ス
クリーンを用いて70度で露出したのち、フィルムを現像
し、8つの二重陽性が同定された。
ヒトゲノムライブラリーからの6つのλFIX IIクロー
ンをラットGDNFプローブとのハイブリダイゼーションに
よって同定して、均一にまでプラーク−精製した(上記
参照)。各ファージのライゼートをSambrookらの方法
(Molecular Cloning:A Laboratory Manual;1989)によ
って調製した。DNAはこれらのクローンから以下の操作
によって調製した。すなわち、DNAアーゼ(Pharmacia)
およびRNAアーゼA(Sigma)を各培養液5mlに加え、最
終濃度1μg/mlとした。この溶液を37℃で1時間インキ
ュベートした。ついで5mlの20%ポリエチレングリコー
ル(Sigma)、2MNaClを加え、この溶液を0℃で1時間
インキュベートした。λファージを12,000×gで10分間
遠心分離して、ペレット化した。ファージペレットを25
0μlのTE(10mM Tris,pH7.4、1mM EDTA)に再懸濁
し、ついで等容量の:a.クロロホルム、b.フェノール、
c.クロロホルムとフェノールの1:1混合物、およびd.ク
ロロホルムで抽出した。酢酸アンモニウムを最終濃度が
0.25Mになるように加え、DNAは2容のエタノールの添加
および10,000×gでの遠心分離によって沈殿させた。DN
AペレットはTE中に再懸濁した。
6つの各λアイソレートからのDNAを各種の制限エン
ドヌクレアーゼで消化し、フラグメントをアガロースゲ
ル上電気泳動によって分離した(Sambrookら)。DNAフ
ラグメントを2つの同一のナイロン膜に移し(Schleich
er & Schuell)、ラットGDNFからの放射標識プローブ
とハイブリダイズした。ラットGDNFには、ヌクレオチド
356と357(図13の番号による)の間にEcoR I部位があ
る。これは成熟GDNFのコード配列内を切断する。ヒトゲ
ノムGDNFクローンが相同の位置に部位をもつかどうかを
調べるため、ヒトクローンを消化するための制限エンド
アクレアーゼの一つとしてEcoR Iを使用した。ラットGD
NFにおけるEcoR I部位の上流(プローブ1)または下流
(プローブ2)の遺伝子領域について特異的な放射標識
プローブを作成した。プローブ1は268bp長でラットGDN
Fの5′非翻訳領域の14bpとコード配列の254bp(アミノ
酸1〜85)から構成された。これはポリメラーゼ連鎖反
応とオリゴヌクレオチドプライマーPDl(GACGGGACTCTAA
GATG)(配列番号15)およびDHD23[GCIGCIGC(C/T)TG
(T/C)TT(A/G)TCIGG](配列番号16)を用い、λZap
II76.1DNAの増幅によって調製された。プローブ調製の
反応条件は、反応が30サイクルの、95℃1分、50℃1.5
分および72℃1.5分からなるほかは上述の場合と同様で
ある。プローブ2は195bp長で、ラットGDNFの3′非翻
訳領域の17ヌクレオチドとコード配列の178bp(アミノ
酸153〜211)から構成された。これはポリメラーゼ連鎖
反応とオリゴヌクレオチドプライマーLF2(CGAGACAATGT
ACGACA)(配列番号17)およびPD2(CTCTGGAGCCAGGGTC
A)(配列番号18)、鋳型としてλZap II76.1DNAを用い
て調製した。反応条件はプローブ1の場合と同様とし
た。
6つのλクローン中5つは同一のハイブリダイゼーシ
ョンパターンを与えた。プローブ1は約700bpのEcoR I
フラグメントにハイブリダイズし、プローブ2は約2.8k
b EcoR Iフラグメントにハイブリダイズした。2つのプ
ローブが2つの異なるEcoR I DNAフラグメントにハイブ
リダイズしたという事実は、ヒトGDNF遺伝子が相同なEc
oR I部位を含有することを強く示唆した。700bpならび
に1.8kb EcoR Iフラグメントは、別個にBluescript SK
−(Stratagene)にサブクローニングされた。これらの
2つのフラグメントのヌクレオチド配列は例2Bに記載し
たようにして決定された。これらのDNAフラグメントの
配列は図19に示す(配列番号5)。この配列から、プレ
−プロGDNFのアミノ酸52に先行するイントロンがあるこ
とが明らかである。成熟ヒトGDNFをコードする遺伝子の
部分にはイントロンはない。成熟ヒトGDNFの推測される
アミノ酸配列は成熟ラット成熟GDNFと93%のホモロジー
を有する。これは、他の神経栄養因子についてラットお
よびヒト蛋白質の間に見出されるアミノ酸配列のホモロ
ジーとほぼ同程度のものである[ラットおよびヒトCNTF
の間のアミノ酸配列ホモロジーは83%(McDonaldら,BBA
1991,印刷中);ラットおよびヒトNGFの間のアミノ酸
配列ホモロジーは95%、BDNFでは100%、NT−3では100
%である(Hallbookら,1991 Neuron 6:845−855)]。
完全なヒトプレ−プロGDNF配列を得るためには、放射
標識ハイブリダイゼーションプローブを、既に得られた
ヒトGDNFの配列に基づいて作成し、これを用いてヒトcD
NAライブラリーをスクリーニングできる。cDNAはプロセ
ッシングされたmRNAのコピーであるから、イントロンは
存在せず、完全なコード配列を得ることができる。別法
として、コード配列に対するイントロンの位置は既知で
あるから、イントロンの上流配列に特異的なハイブリダ
イゼーションプローブはラットcDNAクローンから作成可
能で、このプローブを5′エキソンを含むクローンのた
めのゲノムライブラリーのスクリーニングに使用でき
る。
D.ヒトプレ−プロGDNFの最初の50アミノ酸をコードする
ヌクレオチド配列 例2Cに詳述したように、ヒトプレ−プロGDNFのアミノ
酸51に相当するヌクレオチド配列をスプリットするイン
トロンが存在する。分子のこの部分の配列を得るために
は、ヒトゲノムライブラリーをラットプレ−プロGDNFの
アミノ末端コード配列から誘導されるプローブでスクリ
ーニングし、一つのハイブリダイズしたクローンを配列
決定し、図22に示すように、ヒトプレ−プロGDNFのアミ
ノ酸1〜50のコード配列を含有することを示した(配列
番号8)。
このライブラリースクリーニングのために、例2Cに記
載したように、PCRプローブを合成した。使用したオリ
ゴヌクレオチドプライマーは: であった。PCR(「コールド」および32P標識体の両者)
反応の条件は、反応が25〜30サイクルの95℃1分、50度
1.5分および72℃1分からなるほかは例2Bの記載と同様
である。この反応の生成物はラットプレ−プロGDNFの最
初の122bpと5′から推定イニシエーターATGまでの14塩
基対を含有する(図13および配列番号3参照)。ヒトゲ
ノムライブラリーのこのプローブによるスクリーニング
条件は例2Cに記載の通りとした。成熟ヒトGDNFの配列を
もつクローンの同定のために使用した同一のフィルター
リフトは脱イオン−蒸留水で2回洗浄し、一夜プローブ
し、例2Cに記載のプロトコールに従って洗浄した。フィ
ルターを3日間増感スクリーンを用いて−70℃でフィル
ムに露出した。現像すると、多くの様々な強度の二重陽
性が観察された。比較的強い陽性の12個を取り、これら
の10個をスクリーニング条件でハイブリダイゼーション
を繰り返し、プラーク精製した。
これらのリコンビナントファージのクローン化DNAを
サザンブロットハイブリダイゼーションによって分析し
た。約1000bpAlu Iフラグメントがスクリーニングプロ
ーブにハイブリダイズすることが見出され、Sma I−消
化pBluescriptSK−にサブクローニングしてpBSSK−λ3A
lu Iを製造した。このクローン化Alu Iフラグメント
を、関連DNAセグメントの配列決定を容易にするために
さらにサブクローニングした。精製pBSSK−λ3Alu I DN
Aを、ベクターを1回(ポリリンカー領域内で)だけ切
断する一連の制限酵素で消化し、消化生成物をアガロー
スゲル電気泳動で分析した。その結果2つの制限酵素
(Pst IおよびSac II)がクローン化DNA内を1回切断す
ることが確認された。図22にはSac IIおよびPst I部位
の地図を示す。サザンブロットにより、スクリーニング
プローブにハイブリダイズしたクローン化セグメントの
領域はクローン化Alu IセグメントのSac IIとPst I部位
の間に位置することが明らかにされた。したがって、配
列決定には、pBSSK−λ3Alu Iの2つの欠失誘導体が構
築された。一方の例は、小さい約300bpのPst Iフラグメ
ントを次のように欠失させた。すなわち、プラスミドを
Pst Iで消化し、消化物をリゲートし、大腸菌にトラン
スフォームした。トランスフォーマントについて小Pst
Iフラグメントを欠くものをスクリーニングした。平行
して300bp Sac IIフラグメントをpBSSK−λ3Alu Iから
同様に欠失させて第2の欠失誘導体が製造された。これ
らの2つの欠失プラスミドを配列決定反応のための鋳型
として使用した。配列決定は例2Bの記載と同様にして実
施した。
図22(配列番号8)にはこのようにして得られた233
塩基対の配列を表示する。この配列はラットプレ−プロ
GDNFをコードする最初の151bpの配列と極めて高度のホ
モロジーを示す151bp領域を含有する。アミノ酸レベル
において88%の同一性、DNAレベルで95%の同一性を示
す。したがって、この領域は、ヒトプレ−プロGDNFのア
ミノ末端50残基のコード配列および残基51のコドンの最
初のヌクレオチドをもつエキソンの部分であると結論さ
れる。この151bp配列の直ちに3′側の配列は哺乳動物
のイントロンの5′末端のコンセンサス配列と相同であ
る(Shapiro & Senapathy 1987 Nucl.Acids Res.15:71
55−7174)。推定イニシエーターATGのすぐに5′側の
配列は28bpまでラット配列と高いホモロジーを示し、28
残基中27が同一である。この点で上流配列は急速に分岐
する。分岐の点の周辺の配列は哺乳動物のイントロンの
3′未満のコンセンサス配列とかなりのホモロジーを示
す(Shapiro & Senapathy,前出)。したがって、直接
的な証拠はないものの、これはスプライス部位である可
能性が高いものと思われる。ヒトプレ−プロGDNFを含有
するオープンリーディングフレームは、イニシエーター
ATGの上流少なくとも27塩基対延長される。上記の好ま
しい実施態様の詳細の説明に述べたように、付加的な上
流アミノ酸を含有する他の型のプレ−プロGDNFが産生す
る可能性もある。これらの型もプロセッシングを受け
て、精製され配列決定されている成熟GDNF(例1参照)
を産生するものと思われる。
ここでまた例2Cに示したヌクレオチド配列はヒトプレ
−プロGDNFの全コード配列を含有し、これは、哺乳動物
細胞中で効果的に発現され(例5参照)活性ラットGDNF
を生じたラットプレ−プロGDNFと広範なホモロジーを示
す。
例3:実験的パーキンソニズムの防止のためのGDNFの使用 この例はサルにニューロトキシン、MPTP(1−メチル
−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロ−ピリジン)
を適当に投与することによる実験的パーキンソニズムの
作成方法を記述する。また、MPTPに暴露された動物にパ
ーキンソニズムの発症を緩和するためにGDNFを投与する
方法を記載する。
A.実験的パーキンソリズムの作成のためにMPTPで処置さ
れたサルに対するGDNFの投与:ステンレス鋼のカニュー
レを右側脳室に移植し、皮下に移植した浸透圧ミニポン
プ(Alzet 2002)に接続する。ミニポンプは様々な濃度
でのGDNFまたは陰性対照としてその希釈剤を含有する。
ポンプは14日間0.5μl/hを送達する。カニューレ−ポン
プ移植2日後、サル(Cebus apella)の右頚動脈内に0.
6mg/kgのMPTPを注射する。最初の移植から6週後に動物
を食塩水で潅流し、脳をす早く摘出する。脳を氷上で離
断し、尾状核および被殻から組織のパンチを採取する。
黒質は固定液中に置く。尾状核−被殻組織はHPLC−ECに
よってドーパミンを分析し、黒質はチロシンヒドロキシ
ラーゼ(TH)免疫反応性の分析のために処理する。
B.GDNFの効果:このサルのモデルで、黒質ドーパミン作
動性神経細胞およびそれらの尾状核/被殻への軸索投射
の変性は、実験的パーキンソニズムを生じる。GDNFがこ
のニューロンの変性を防止し、またその重篤度を減弱さ
せることを示すいくつかの実験的事実がある。たとえ
ば、GDNFは黒質におけるTH陽性神経細胞体の喪失を防止
する。これは、MPTPの毒性作用からのGDNFによる黒質ド
ーパミン作動性神経細胞の救命を指示している。GDNFは
また、尾状核/被殻におけるTH陽性線維の喪失を防止す
る。これは、MPTPの毒性作用からのGDNFによる黒質ドー
パミン作動性ニューロンの軸索投射の救済を指示してい
る。GDNFはまた、尾状核/被殻におけるドーパミン含量
の低下を防止する。これは、MPTPの毒性作用からのGDNF
による、黒質ドーパミン作動性ニューロンから尾状核/
被殻に至る軸索およびそれらのドーパミン含量の救済を
指示するものである。
例4:GDNFの生物学的活性および考えられる臨床的適用 精製されたGDNFは、例1に示されたように、強化培地
および特定培地の両者において、培養胚中脳神経細胞中
に存在するドーパミン作動性ニューロンによるドーパミ
ンの取り込みを増大させる。これは、GDNFがこれらのド
ーパミン作動性神経細胞に対して神経栄養因子であるこ
とを指示する。この点でGDNFはパーキンソン病で起こる
これらのニューロンの変性の処置に有用であることが明
らかである。さらに、GDNFは脳の他のドーパミン作動性
ニューロンの不適切な機能の処置に有用であることが明
らかである。このような不適切な機能は精神分裂病や神
経遮断剤による処置を必要とする他の疾患で起こる。
A.精製GDNFは培養副交感神経および交感神経細胞の生残
を促進する 1.ニューロンの生残のアッセイ 材料 3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−
ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)はSigma Che
mical Co.,St.Louis,Missouriから入手した。胎仔ウシ
血清はHyclone Laboratories,Logan,Utahから購入し
た。培養培地および塩溶液はIrvine Scientific,Santa
ana,Californiaから入手した。培養皿はCostar,Cambrid
ge,Massachusettsから入手した。生産用病原体フリーの
受精トリ胚卵はSpafas,Roanoke,Illinoisから入手し
た。
アッセイ 初代ヒナ胚毛様体神経節および交感神経鎖神経節の培
養体は、既報(Collins 1978 Develop.Biol.65:65;Mant
hropeら,1986 Develop.Brain.Res.25:191)のようにし
て調製した。略述すれば、毛様体または交感神経神経節
は、加湿雰囲気中38度でそれぞれ8および10日間インキ
ュベートした受精、病原体フリーの鶏卵から摘出した。
神経節は、最初、2価陽イオンを含まない、10mM HEPES
緩衝液pH7.2含有ハンクスの平衡塩溶液に37℃で10分間
暴露し、ついで上述のように改変したハンクスの平衡塩
溶液中0.125%バクトトリプシン(Difco,Detroit,Michi
gan)1:250の溶液に37℃で12分間暴露して化学的に解離
させた。トリプシン処理は、胎仔ウシ血清を最終濃度10
%になるように添加して低下させた。
この処理後に、神経節を、重炭酸塩を含まず、10%胎
仔ウシ血清および10mM HEPES緩衝液pH7.2を含有するダ
ルベッコの高グルコース改良イーグル培地からなる溶液
に移し、ガラスパスツールピペットの開口部を炎で処理
して狭くしてピペットを満たすのに2秒かかるようにし
たピペットに約10回通して粉砕させて機械的に解離させ
た。
解離した神経節をついで、直径100mmの組織培養皿
(皿あたり40個の解離神経節)を用い、培養培地(10%
胎仔ウシ血清、4mMグルタミン、60mg/LペニシリンG、2
5mM HEPES緩衝液pH7.2を補充したダルベッコの改良イー
グル培地)中で3時間平板培養した。このプレプレーテ
ィングは、皿に付着する非神経細胞を、皿に付着しない
神経細胞から分離するために行った。3時間後に、非付
着神経細胞を遠心分離によって集め、培養培地に再懸濁
し、96ウエルマイクロタイター組織培養プレートの半分
の領域に、各ウエルに1500の神経細胞の密度で、各ウエ
ルあたり50μlをプレーティングした。マイクロタイタ
ーウエルは予め、10mMホウ酸ナトリウム、pH8.4中ポリ
L−オルニチンの1mg/ml溶液に4℃で一夜暴露し、蒸留
水で洗浄し、風乾した。
神経栄養活性を検定すべきサンプルの希釈系列10μl
を各ウエルに添加し、培養皿を7.5%CO2含有加湿雰囲気
中37℃で20時間インキュベートした。毛様体では1844時
間、交感神経節では40時間後に、重炭酸塩を含まず、10
mM HEPES、pH7.2を含有するダルベッコの高グルコース
改良イーグル培地中テトラゾリウム染料MTTの1.5mg/ml
溶液ウエルあたり15μlを加え、培養液を37℃のインキ
ュベーター中に4時間置いた。ついで、イソプロパノー
ル1Lあたり12M HClを6.7mlの溶液75μlを加えて、各
ウエルの内容物を30回磨砕して細胞を破壊し、染料を懸
濁させた。各ウエルについて、570nmの吸収を690nmの標
準値に対して自動マイクロタイタープレートリーダー
(Dynatech,Chantilly,Virginia)を用いて測定した。
神経栄養剤を添加しなかったウエル(陰性対照)の吸収
をサンプル含有ウエルの吸収から差し引いた。得られた
吸収は各ウエル中の、染料を還元できる神経細胞として
定義される、生存細胞数に比例する。神経栄養活性の栄
養単位数は、神経細胞の最大生残の50%を与える希釈度
の逆数と定義された。非活性は栄養単位数をサンプル中
の存在する蛋白質で徐して求められた。
結果 図15に例示されるように、精製されたGDNFは、トリ胚
毛様体神経節からの培養副交感神経細胞の生残を促進す
る。図16に例示されるように、精製GDNFは、トリ胚交感
神経鎖神経節からの培養交感神経細胞の生残を促進す
る。
これらの結果は、GDNFが副交感神経および交感神経ニ
ューロンの生残因子として作用することを示している。
この点で、それは様々な形態での自律(すなわち、副交
感神経および交感神経)神経系に対する神経障害の処置
に有用性が考えられる。このような障害は、代謝状態、
たとえば糖尿病または腎機能不全から起こる。このよう
な障害はまた、患者を様々な化学療法剤、たとえば癌化
学療法剤、シスプラチンおよびビンクリスチン、または
エイズ化学療法剤、ddIおよびddCで処置する場合に起こ
る。このような障害はまた、遺伝的条件たとえば自律神
経症によって起こりうる。このような障害はまた、外傷
によっても起こる。
例5:組換えGDNFの動物細胞における発現 A.COS細胞発現のための組換えプラスミドの構築 全GDNFコード配列が含まれるpBluescript SK−76.1の
約1.5kb Sma Iフラグメントを、SV40T抗原を発現する細
胞たとえばCOS細胞中のクローン化遺伝子の一過性発現
のために設計されたプラスミドベクターpSG5(Greenら,
1988 Nucl.Acids Res.16:369)中にサブクローン化し
た。
GDNFcDNAのDNA配列(図13)(配列番号3)および制
限エンドヌクレアーゼマッピングによって、ベクターの
ポリリンカー中に位置するSma I部位(cDNAクローンの
5′末端の18bp5′)と成熟GDNFのコード配列末端に約8
00bp3′のcDNAクローン内に位置するSma I部位で描出さ
れるSma Iフラグメントが同定された。このSma Iフラグ
メントは、以下のようにして、pSG5中にクローン化され
た。すなわち、精製pSG5プラスミドDNA(Stratagene)
をEcoR Iで消化し、ウシ腸アルカリホスファターゼ(CI
AP,Promega)で販売業者のプロトコールに従って処理し
た。ついでベクターを電気泳動に付しアガロースゲルか
ら溶出した。精製pBluescript SK−76.1プラスミドDNA
をEcoR Iメチラーゼでメチル化し、Sma Iで消化し、例2
Aに記載のEcoR Iリンカー分子とリゲートした。EcoR I
消化してアガロース電気泳動に付したのち、問題の約1.
5kb Sma Iフラグメント(この時はEcoR Iメチル化さ
れ、リンカーに結合している)が溶出し、EcoR I消化、
ホスファターゼ処理pSG5ベクターにリゲートした。リゲ
ーション生成物を用い、CaCl2法(Maniatisら,前出)
によってコンピーテントな大腸菌XL1−Blueをトランス
フォームした。アンピシリン抵抗性トランスフォーマン
トを選択し、組換えプラスミドを制限エンドヌクレアー
ゼ消化およびアガロースゲル電気泳動によって分析し
た。EcoR Iによる消化により、大部分のトランスフォー
マントが所望の挿入体をもつプラスミドを含有すること
が指示された。BamH Iによる消化で、ベクター中に存在
するSV40プロモーターに対するクローン化GDNFの方向性
が確認された(BamH I部位は図13の配列における位置15
に存在する)。両方の方向性が得られた。
さらに分析のため2つのトランスフォーマントを選択
した。一つは、GDNF遺伝子をその発現に適切な方向で持
ち、SV40プロモーターでRNA転写が開始されるpSG5::rGD
NF−7と命名されたプラスミドを含有し、一方、第2の
ものはGDNF遺伝子を逆の方向に持ち、SV40プロモーター
における開始によってGDNFは発現しないpSG5::rGDNF−
4と命名されたプラスミドを含有する。これらの両プラ
スミドの精製されたプレパレーションをCsCl密度勾配遠
心分離によって調製し、COS細胞での発現実験に使用し
た。
B.GDNFのCOS−7細胞中での発現 これらの構築体からのプラスミドDNAは、アルカリ溶
解法ついでCsCl密度遠心分離により調製した(Maniatis
ら,前出)。このDNAをSompayrac & Dannaの方法(198
1 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:7575−7578)によってCO
S−7細胞にトランスフェクトした。対照として、均等
な培養COS細胞を、GDNF挿入体を逆方向に含有し、GDNF
蛋白質は発現されないプラスミドベクターDNAでトラン
スフェクトした。100mmの培養皿あたり30μgのリポフ
ェクチンおよび0.3〜1μgのプラスミドDNAを使用し
た。
24時間トランスフェクトしたのち、培地を吸引して除
去し、OptiMEM±3%FCSで置換した。培養液は48時間イ
ンキュベートして、以下のように収穫した。
a)培地(調整培地もしくはCM)を吸引して−80℃に保
存した。
b)細胞ローンに5mlのPBS+2.5mM EDTAを加え、25℃に
30分保持し、ついで細胞を皿からピペットで取り出し、
1000×gで5分間遠心分離した。上清を除去し、細胞ペ
レットを−80℃に保存した。
CMをCentricon10コンセントレーターで30倍に濃縮
し、生物活性を検定下。細胞ペレットを500μlの10mM
EDTA、pH7.0+1mMベンザミジン、100μM PMSF、1mMε−
アミノ−N−カプロン酸中で超音波処理した。細胞ライ
ゼートを14,000×gで5分間遠心分離し、上清について
生物活性を検定した。
C.発現GDNFのバイオアッセイ GDNF−発現プラスミドおよび対照プラスミド(GDNFコ
ード配列を正しくない方向で有する)でトランスフェク
トされたCOS細胞からの細胞ライゼートおよび培養培地
について、培養中脳ニューロン中へのドーパミンの取り
込みの増大能(例1参照)ならびに交感神経節ニューロ
ンの生残の増大能(例4参照)の両者を検定した。GDNF
に期待されるように、COS細胞培養培地(図17)および
細胞ライゼート(データは示していない)はドーパミン
の取り込みを上昇させた。図18に示すように、COS細胞
培養培地および細胞ライゼートは、交感神経鎖ニューロ
ンの生残を、GDNFに期待されるように、上昇させた。
これらの結果は、動物細胞におけるGDNF遺伝子の発現
により、精製されたGDNFに証明された生物学的活性をも
つ蛋白質の産生を生じることが明らかに指示される。
例6:ヒトGDNFの大腸菌における発現 A.ヒトGDNFをコードするプラスミドの構築 ヒトGDNF遺伝子の配列情報(例2C)を用いて、合成オ
リゴヌクレオチドPD3およびPD4を、ヒトGDNF遺伝子の増
幅および大腸菌内でのプラスミド発現ベクターからのそ
の発現のためのプライマーとして作成した。オリゴヌク
レオチドPD3(配列番号21)およびPD4(配列番号22)の
配列は: である。
オリゴヌクレオチドPD3は46ヌクレオチド長である。
3′未満の17ヌクレオチドは成熟蛋白質のN−末端をコ
ードする領域のヒトGDNF遺伝子に完全に一致している。
これらの17ヌクレオチドの前には翻訳開始コドン、ATG
があり、したがって成熟ヒトGDNFの合成は大腸菌内で正
しいアミノ酸で開始されることになる。他のヌクレオチ
ドは大腸菌内での良好な発現に必要とみなされる他のシ
グナルならびにGDNF発現プラスミドの構築に必要なBamH
Iエンドヌクレアーゼ制限部位を与えるように設計され
た。
オリゴヌクレオチドPD4は26ヌクレオチド長である。
3′末端における17ヌクレオチドはヒトGDNF遺伝子の停
止コドンの3′の17ヌクレオチドに完全に一致してい
る。このオリゴヌクレオチドもGDNF発現プラスミドの構
築のために、Kpn I制限エンドヌクレアーゼ部位の再構
築に必要な配列を提供する。
ヒトGDNFの増幅のための反応条件は次の通りである。
すなわち、総反応容量は100μlとし、1ngのヒトGDNF遺
伝子含有λDNAクローン、PD3およびPD4をそれぞれ20ピ
コモル、20mM Tris−HCl pH8.8、10mM KCl、6mM(N
H42SO4、1.5mM MgCl2、および0.1%Triton X−100を
含有させた。反応混合物を95℃に5分間加熱し、44℃に
冷却し、2単位のPfuDNAポリメラーゼ(Stratagene)を
添加した。反応は、72℃1.5分、95℃1分、44℃1.5分の
30サイクルによって構成した。反応終了後、MgCl2を最
終濃度が10mMになるように加えた。5単位のDNAポリメ
ラーゼI大(クレノー)フラグメント(Promega)を加
え、反応混合物を37℃で10分間インキュベートした。つ
いで、10μlの3MNaAcおよび220μlのEtOHを加えて、
溶液を12,000×gで15分間遠心分離してDNAを沈殿させ
た。沈殿したDNAを100μlの50mM Tris−HCl(pH8),50
mM NaCl、10mM MgCl2、20単位のBamH Iおよび20単位のK
pn Iに再懸濁した。正しいサイズのDNAフラグメント
は、アガロースゲルを通した電気泳動によって同定し、
Ultrafree−MCフィルターユニット(Millipore)を用い
て精製した。このフラグメントを大腸菌発現ベクターpT
3 XI−2(以下に説明)中にリゲートした。リゲーショ
ン条件は次の通りである。すなわち、総反応容量は5μ
lとし、Kpn IおよびBamH Iにより線状化した10ngのpT3
XI−2DNA、上述のヒトGDNFDNAフラグメント5ng、50mM
Tris−HCl pH7.6、10mM MgCl2、1mM ATP、1mM DTT、5
%ポリエチレングリコール−8000、および1単位のT4DN
Aリガーゼ(Bethesda Research Laboratories)を含有
させた。反応混合物は14℃で2時間インキュベートし
た。
ベクターpT3 XI−2は以下の方法で構築した。この構
築のための出発プラスミドは、プラスミドpKK223−3
(Brosius & Holy,1984)で、Pharmaciaから購入し
た。プラスミドpKK223−3はテトラサイクリン抵抗性の
部分遺伝子を有する。この非機能遺伝子をプラスミドpB
R322がもつ完全なテトラサイクリン抵抗性遺伝子で置換
した。プラスミドpKK223−3をSph Iで完全に、BamH I
で部分的に消化させた。4.4キロベース対フラグメント
をゲル精製し、合成アダプター(配列番号23): およびpBR322(PL Biochemicals,27−4891−01)のテ
トラサイクリン抵抗性遺伝子のCla I、Sph I消化からの
DNAの539塩基対フラグメントと混合する。得られたプラ
スミドはpCJ1と命名された。
次に、New England Biolabsから購入したXho Iをプラ
スミドpC J1のPvu II部位に挿入してプラスミドpCJ X−
1を形成させた。この挿入により、プラスミドのコピー
数を制御するrop遺伝子が破壊される。次に、lac I遺伝
子を含有するEcoR IフラグメントをプラスミドpMC9(Ca
losら,1983)から精製し、Xho I−EcoR Iアダプターと
ともにXho I部位に挿入した。プラスミドpKK223−3中
のポリリンカー領域を次にEcoR IおよびPst Iで切断し
て付加的な部位を含有するポリリンカー(配列番号2
4): で置換した。こうして得られたプラスミドベクターはCJ
XIと命名される。
最後に、テトラサイクリン抵抗性遺伝子を、制限酵素
Hind III、BamH I、およびSal Iの認識部位を有する類
似の遺伝子で置換し、重亜硫酸塩突然変異誘発によって
破壊した。以下の操作を用いてpBR322のテトラサイクリ
ン抵抗性遺伝子を変異させた。すなわち、プラスミドpB
R322をHind IIIで切断し、ついで重亜硫酸ナトリウムで
突然変異を誘発した(Shortle & Botstein,1985)。突
然変異誘発DNAをリゲートして環状DNAを形成させ、つい
でHind IIIで切断して突然変異誘発を逃れたプラスミド
を線状化した。大腸菌JM109(Yanisch−Perronら,198
5)。テトラサイクリン抵抗性プラスミドを単離し、テ
トラサイクリン抵抗性遺伝子中のHind III部位の喪失を
チェックした。突然変異が成功したプラスミドはpT1と
命名した。類似の操作によってpT1中のBamH I部位の突
然変異誘発を行い、プラスミドpT2が得られた。続い
て、プラスミドpT2に突然変異を誘発してSal I部位を除
去してプラスミドpT3を形成させた。変異したテトラサ
イクリン抵抗性遺伝子を持つpT3のCla I−Sty Iフラグ
メントを単離し、これを用いてpCJ XI−1の相同のフラ
グメントを置換し、pT3 XI−2を形成させた。変異した
テトラサイクリン抵抗性遺伝子はなお機能性蛋白質をコ
ードしている。tacプロモーター領域の下流に、大腸菌
での発現のための遺伝子のクローニングに有用な、とく
にBamH IおよびKpn I制限部位を含有するポリリンカー
を導入した。
ベクターをヒト成熟GDNF構築体と2時間リゲーション
させたのち、反応混合物2μlを用いて、Epicurian Co
li SURERスーパーコンピーテント大腸菌細胞(Stratage
ne)を製造業者の説明書に従ってトランスフォームし
た。組換えプラスミドの一つのDNA配列が例2Bに記載の
ようにして決定された。配列から、このプラスミドは成
熟ヒトGDNFをコードするヒトGDNF遺伝子の完全なコード
配列を含有することが確認された。
B.大腸菌におけるヒトGDNFの発現 ヒトGDNFをコードするDNA配列を含有する組換えプラ
スミドをJM107のT1抵抗性変異体である、大腸菌株JM107
φrMCB0005(Yanisch−Perronら,1985)に、Sambrookら
(1989)に記載のCaCl2法を用いてトランスフォームし
た。リコンビナントの一つを50mlのLB培地(Sambrook
ら)中、100μg/mlのアンピシリン(Sigma)と、37℃で
一夜振盪しながら増殖させた。翌日、100μg/mlのアン
ピシリンを含むLB培地中に1:70に希釈し、37℃で振盪し
ながら5時間増殖させた。20mlの細胞を8,000×gで10
分間遠心分離して収穫した。ペレットを4mlの10mM EDT
A pH7.4に再懸濁した。細胞をフレンチプレスセル(SLM
Instruments)を用いて18,000psigで破壊した。ライゼ
ートを12,000×g、4℃で15分間遠心分離した。ペレッ
トを10mM EDTAに再懸濁した。発酵は37℃または30℃よ
りも42℃で行わせる方が比較的に多くのGDNFが蓄積する
ことが見出されている。
例6Aに記載の組換えプラスミドを用いて(ヒト成熟GD
NFのコード配列を発現ベクターpT3 XI−2にクローン
化)大腸菌内で高レベルのGDNF発現を達成する現時点で
好ましい方法は、次の通りである。10Lの発酵につき500
mlの接種材料を15μg/mlテトラサイクリン含有LB培地
(pH7)中、2Lの邪魔板振盪フラスコを用い、37℃で、
光学密度(A660)が2〜3になるまで増殖させる。この
培養液は、12g/のトリプトン、24g/の酵母エキス、
25g/のグリセロール、1.3g/のK2HPO4、0.4g/のKH
2PO4、0.4g/のKH2PO4、0.1ml/のMaco119:GE60の4:1
混合物、および15mg/のテトラサイクリン塩酸塩を含
有する増殖培地10Lの接種に使用した。この培養体は42
℃で約12〜18時間、光学密度約12〜20(A660)まで増殖
させた。発酵液のpHは7.0に維持し、溶解酸素は30%飽
和に保持した。発酵後、培養液を4℃に冷却し、遠心分
離で細胞を収穫した。
上述のプラスミドからのヒトGDNFの製造はこの大腸菌
株に特異的ではなく、任意の適当な株で製造できる。こ
のプラスミドは2つの他の大腸菌株、JM108(Yanisch P
erronら,1985)およびSURER(Stratagene)にトランス
フォームされた。これらの株のいずれにも、正しい分子
量の新しい蛋白バンドが、ポリアクリルアミドゲルを通
した電気泳動後のクーマッシーブルー染色によって可視
化された。
再懸濁物質のアリコートをポリアクリルアミドゲルを
通した電気泳動に付した。ゲルをクーマッシーブルーで
染色した。GDNFに期待される分子量(15,000ダルトン)
の部分は、組換えヒトGDNFプラスミドを含有する培養体
の場合にのみ存在し、ベクターpT3 XI−2のみを含む培
養体では認められなかった。回収された蛋白質は標準ア
ミノ末端配列決定操作に付し、この蛋白質の最初の22の
アミノ酸は図19に示したヒトGDNFのアミノ酸配列と同一
であり、ヒトGDNFが大腸菌内で正しく発現されることが
確認された。
C.細菌中で産生した組換えヒトGDNFのリフォールディン
グならびに生物活性 リフォールディング用の物質の製造:大腸菌JM107(p
T3 X12::huGDNF)を、酵母エキス(#0127−01 Difco L
aboratories,Detroit,MI)およびトリプトン(#0123−
05 Difco Laboratories,Detroit,MI)ベースの複合培地
[24g/L酵母エキス、12g/Lトリプトン、5g/Lグリセロー
ル、1.3g/LのK2HPO4、0.4g/LのKH2PO4、0.2ml/LのMacol
19:GE60(4:1)、15mg/Lのテトラサイクリン]中、IPT
G誘導を行わないで、37℃で定常状態まで増殖させた。
細胞をJA10ローター中16,000×g、4℃で20分間遠心分
離し、細胞ペーストを−20℃で保存した。
細胞は以下のように処理した。5mgの細胞ペースト
を、氷上、OCI Instrumentsホモジナイザーを用いて、4
0mlの10mM EDTA、pH7.0によりホモジナイズした。スラ
リーを20,000psiで3回フレンチプレスによって処理
し、ついでJA20ローターにより30,000×g、4℃で10分
間遠心分離した。上清を捨て、ペレットを上述のように
して、ホモジナイズおよび遠心分離した。一態様におい
ては、再抽出からのペレットを40mlの25mM Tris,pH7.4
でホモジナイズし、上述のように遠心分離して、上清を
捨てた。ペレットを8Mの尿素を含有する20mlの50mM Tri
s、pH8.0で、30mMの2−メルカプトエタノールを加えて
または加えないでホモジナイズし、上述のように遠心分
離し、上清は残しておいた。上清はTUエキスと呼ぶ。好
ましい実施態様においては、ペレットを1mM EDTA、1%
NP−40を含む40mlの10mM Tris,pH8.0でホモジナイズ
し、上述のように遠心分離して、上清を捨てた。ペレッ
トを以下のようにスルホニル化して可溶化した。すまわ
ち、ペレットを8M尿素、100mM亜硫酸ナトリウムおよび1
0mMテトラチオン酸ナトリウムを含有する25mlの20mMリ
ン酸ナトリウム、pH7.4にホモジナイズした。スルホニ
ル化は4℃で撹拌しながら一夜進行させ、ついで16,000
×g、4℃で10分間遠心分離して溶液を澄明化した。
リフォールディング前のTUエキスの部分精製:TUエキ
スをS−セファロースファストフロー樹脂(Pharmaci
a)上イオン交換クロマトグラフィーにより精製した。
カラムは、8Mの尿素および30mMの2−メルカプトエタノ
ールを含有する25mM Tris、pH7.4(緩衝液A)で平衡化
し、室温で流した。サンプルを負荷したのち緩衝液Aで
光学密度がベースラインになるまで洗浄し、カラムを1
分間に10%カラム容量の速度で、緩衝液A、ならびに8M
尿素、500mM NaClおよび30mMの2−メルカプトエタノー
ルを含有する100mM Tris、pH9.0(緩衝液B)それぞれ
5カラム容量によって溶出した。カラム分画は280nmで
モニタリングし、SDS−PAGEによって分析した。GDNFは
主要蛋白ピークとして60〜70%勾配で溶出した。GDNFに
富む分画をリフォールディングのためにプールした。
リフォールディング前のスルホニル化エキスの部分精
製:スルホニル化抽出物はQ−セファロースファストフ
ロー樹脂(Pharmacia)上イオン交換クロマトグラフィ
ーによって部分精製した。カラムは4Mの尿素含有10mM T
ris、pH8.0(緩衝液A)で平衡化し、この液を4℃で流
した。サンプルを負荷したのち緩衝液Aで光学密度がベ
ースラインになるまで洗浄し、カラムを1分間に5%カ
ラム容量の速度で、緩衝液A、ならびに4M尿素および50
0mM NaClを含む10mM Tris、pH8.0(緩衝液B)それぞれ
5カラム容量で溶出した。カラム分画は280nmでモニタ
リングして、SDS−PAGEによって分析した。GDNFは主要
蛋白ピークとして50%の勾配で溶出した。GDNFに富む分
画をリフォールディングのためにプールした。
部分精製TU抽出物のリフォールディング:上述の部分
精製GDNFを次のようにしてリフォールディングした。す
なわち、GDNF約1mg/mlを含有するプールしたカラム溶出
液4mlに、ジチオスレイトールを5mMになるように加え
た。試験管に栓をして空気を追い出し、25℃に15分間保
持した。次に、酸化されたグルタチオン二ナトリウム塩
を15mMになるように加え、空気を排除できるように再び
栓をして、25℃に15分間保持した。この溶液をついで14
容量のリフォールディング緩衝液(4M尿素、5%ポリエ
チレングリコール300、および2mMシステインを含む100m
M Na2HPO4、10mMエタノールアミン、pH8.3)で希釈し、
アルゴン下5℃に3日間保持した。
部分精製スルホニル化抽出物のリフォールディング:
上述のようにして部分精製したGDNFを次のようにしてリ
フォールディングした。すなわち、GDNF約3mg/mlを含有
するプールしたカムラ溶出液を19容のリフォールディン
グ緩衝液(4M尿素、5%ポリエチレングリコール300、
および3mMシステインを含む100mM Na2HPO4、pH8.3)で
希釈し、アルゴン下5℃に3日間保持した。
リフォールディングGDNFのSDS−PAGEによる分析:前
もって還元剤に暴露することなく細菌から抽出したGDNF
はSDS−PAGE上をモノマーとして、分子量標準蛋白質の
移動と比較して約16kDの見掛けの分子量で移動する。ダ
イマーの一にはGDNFは検出されない。抽出時またはSDS
−PAGEの直前ただしリフォールディングの前に還元剤
(30〜150mM2−メルカプトエタノール)に暴露されたGD
NFは、非還元細菌性蛋白質と識別できない位置に、見掛
けの分子量約16kDで移動する(図26、レーン6および1
3)。これは、細菌細胞から製造されたGDNFはリフォー
ルディングの前には二量化しないことを示している。
上述のリフォールディング後には、細菌で産生された
組換えGDNFの大部分は、SDS−PAGE上を明らかなダイマ
ーとして、約16kDで移動する(図26、レーン2)。リフ
ォールディングしたGDNFをSDS−PAGEの前に150mM2−メ
ルカプトエタノールで還元すると、再びモノマーの位
置、約16kDで移動する(図23、レーン5)。これらの結
果は、GDNFのリフォールディングでは蛋白質がジスルフ
ィド結合ダイマーになることを示している。リフォール
ディングしたGDNFのSDS−PAGEは還元が起こることなく
進行した。ゲルを長さ方向にスライスし、そのスライス
について交感神経神経節ニューロン生残アッセイ(下記
参照)での生物活性を検定した。
リフォールディングGDNFの逆相HPLC(RP−HPLC)での分
析 S−セファロースまたはQ−セファロースクロマトグ
ラフィーで部分精製されたGDNFは、リフォールディング
前には、以下に示すようにして実施したRP−HPLCにおい
て、保持時間約21分で移動した。GDNFのリフォールディ
ング後には、同じ条件下で、保持時間は約15分で移動し
た。GDNFのリフォールディングが成功した場合には、保
持時間のシフトが期待される。蛋白質のリフォールディ
ング後にRP−HPLCの保持時間にシフトが観察されること
は多い。
これらのサンプルのRP−HPLCを以下のように実施し
た。流速:1ml/分、0.46×25cmC−4カラムを次のように
展開した。溶媒A=水中0.1%トリフルオロ酢酸(TF
A)、溶媒B=アセトニトリル中0.1%TFA;0.5〜1.5分、
Bを5%から25%に増加させる、1.5〜31.5分、Bを25
%から55%に増加させる。
リフォールディングしたGDNFのバイオアッセイによる
分析:リフォールディングしたGDNFを、トリ胚(E10)
交感神経神経節ニューロン生残バイオアッセイ(例4A)
およびラット胚(E16)中脳培養体ドーパミン取り込み
バイオアッセイ(例1B)の両者でバイオアッセイした。
リフォールディングの前に、30mM2−メルカプトエタノ
ールに暴露し、上述のようにS−セファロースまたはQ
−セファロースクロマトグラフィーで精製したGDNFは、
中脳培養体ドーパミン取り込みアッセイにおいて検知可
能な生物活性を示さず、交感神経ニューロン生残バイオ
アッセイにおいて著しく低い生物活性を示した。S−セ
ファロースクロマトグラフィーに付した物質の交感神経
ニューロン生残バイオアッセイでの見掛けのED50は約1
μg/mlであり、これはリフォールディングrhGDNFの場合
(下記参照)より約333倍低かった。Q−セファロース
クロマトグラフィーに付した物質では、交感神経ニュー
ロン生残バイオアッセイでの見掛けのED50は約3μg/ml
であり、これはリフォールディングrhGDNFの場合(下記
参照)より約100倍低かった。リフォールディング後に
は、GDNFは、2−メルカプトエタノールに暴露してもし
ないでも、両アッセイで、明らかに完全な活性を示した
(図27〜28)。この結果は、GDNFがリフォールディング
によって生物活性を獲得し、またリフォールディング前
の低い生物活性またはその喪失は2−メルカプトエタノ
ールへの暴露によるものではないことを示している。
これらのバイオアッセイにおけるリフォールディング
した組換えヒトGDNF(rhGDNF)のED50は、B49細胞調整
培地から精製されたラットGDNFについて前に観察された
値と類似している。交感神経ニューロン生残バイオアッ
セイにおけるrhGDNFのED50は約3ng/mlで(図27)、ラッ
トGDNFのED50は約5ng/mlであった。中脳培養体ドーパミ
ン取り込みアッセイにおいては、rhGDNFのED50は、約30
pg/mlで(図28)、ラットGDNFでは約50pg/mlであった。
これらの結果は、rhGDNFの実質的な部分が効果的にリフ
ォールディングされて、完全に生物学的に活性であるこ
とを指示している。
例7.GDNFに対する抗体の製造および単離 rhGDNFに対する抗体は以下の操作によって発生させ
た。この操作には、特定のアジュバント、免疫処置プロ
トコールおよび動物種が使用されているが、これらは限
定的なものではない。また、GDNFに対する抗体は、以下
の操作に示すようにリフォールディング、ネイティブ蛋
白もしくは変性、不活性蛋白、またはヒトもしくは他の
動物種からのGDNF配列の連続したペプチドを用いて産生
させることができる。
モノクローナル抗体は多くの標準操作の一つによって
発生させることができる(Antibodies,a laboratory ma
nual;Cold Spring Harbor Laboratory 1988 ISBN 08796
9−314−2 Ed Harlow & David Lane編参照)。略述す
れば、通常モノクローナル抗体を発生させる操作には、
それらに限定されるものではないが、適当な動物の免疫
処置および免疫処置プロトコールに対するこれらの動物
の抗体応答のモニタリング、1もしくは2以上の動物の
たとえばリンパ系臓器からの抗体産生細胞の単離、これ
らの細胞の適当な細胞たとえば骨髄腫細胞との融合によ
る抗体分泌不死化細胞であるハイブリドーマの製造、所
望のモノクローナル抗体を産生する単一細胞クローンが
得られるまで連続的にハイブリドーマを単離するための
スクリーニングが包含される。
ウサギでのポリクローナル抗体の産生は次のように行
われる。0.005〜0.25mgのrhGDNFを含有する2mlの滅菌食
塩水をRIBIアジュバントMPL−TDM−CWSエマルジョン(R
IBI ImmunoChem Research,Inc.)のバイアルに注射し、
旋回振盪して製造業者の説明書により乳化液を形成させ
る。雌性ニュージーランド白色ウサギに麻酔下、RIBIに
よって示唆された免疫処置プロトコールに従って注射し
た。
1mlのアジュバント抗原乳化液を次のように投与し
た。
0.30ml皮内(6部位のそれぞれに0.05ml) 0.40ml筋肉内(各後肢に0.20ml) 0.10ml皮下(頚部) 0.20ml腹腔内 動物には同じプロトコールで4〜6週毎に再び注射を
した(ブースター投与)。最初の注射前および各ブース
ター投与の10〜14日後に動物から採血し、中和アッセイ
または標準ELISAによって抗体の産生を試験した。
中和アッセイはラットE16中脳培養体アッセイを用い
て以下のように実施した。ウサギ試験血清を、25mM HEP
ESでpH7.4に緩衝化し、5mg/mlのウシ血清アルブミン(B
SA5という)を加えたダルベッコの最小必須培地に希釈
した。ついでこれをアッセイウエル(500μlの組織培
養液に希釈した試験血清25μl)に加え、37℃で30分間
インキュベートした。次にrhGDNFを、6.32ngm/mlのrhGD
NFを含有するBSA5中保存希釈溶液25μlとして添加し、
アッセイ中の最終rhGDNF濃度は0.316ngm/mlとした。8
日後に培養体中のドーパミン取り込みを前に記載の操作
で測定した。第2のブースターからの抗血清での結果を
中和アッセイにより以下に示す(以下の表2参照)。
抗血清もまた、標準ELISAにおいて、以下の操作でGDN
F抗体としての力価を滴定した。マイクロタイタープレ
ート(96ウエル、Nunc Maxisorp)を50mM炭酸水素ナト
リウム、pH9.6コーティング緩衝液中1.0μg/ml rhGDNF
をウエルあたり100μl用い、4℃で一夜コーティング
した。プレートをプレート洗浄緩衝液(PWB;0.5%Tween
20含有リン酸緩衝生理食塩水、pH7.2)で4回洗浄し、
ついでウエルあたり200μlのリン酸緩衝生理食塩水、p
H7.2中2%ウシ血清アルブミンにより25℃で2時間ブロ
ックした。プレートを再度PWBで洗浄して、滴定すべき
血清サンプルを(20%正常ヤギ血清およびPWB中希釈100
μl)をウエルに加えた。プレートを35℃で1.5時間イ
ンキュベートし、ついで再び、PWBで洗浄した。アルカ
リホスファターゼ接合ヤギ抗−ウサギIgG(Jackson Imm
unochemicals)をPWB中1:2500に希釈して各ウエル(100
μl)に加え、35℃で1.5時間インキュベートした。プ
レートを前回と同様にPWBで洗浄した。次に、p−NPP基
質(p−ニトロフェニルリン酸二ナトリウム;Sigmaカタ
ログ番号MP389)を各ウエルに加え(10%ジエタノール
アミン、pH9.8中1.0mg/mlのp−NPP、100μl)を加
え、プレートを25℃でインキュベートした。プレートリ
ーダー(Molecular Devices Enax)によって405〜490nm
でプレートを読んで発色を追跡した。
抗血清はまた、以下のように、ウエスタンブロッティ
ングによるGDNFの検出および定量に使用した。ドデシル
硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS
−PAGE)をU.K.Laemmli(Nature227:680−685,1970)に
よって最初に記載された基本操作により、12.5%アクリ
ルアミド溶解ゲルおよび4.5%アクリルアミド粘着ゲル
を用いて実施した。ゲル(16×14×0.15cm)を40m amp
の一定電流で3時間電気泳動した。還元/変性のために
は1%SDSおよび150mM2−メルカプトエタノールを含む
サンプル緩衝液中でサンプルを100℃に10分間加熱し
た。
ウエスタンブロティングでは、ゲルをついでImmobilo
n−P膜(Milliporeカタログ番号IPVH151 50)上に、25
mM Trisbase、192mMグリシン、0.1%SDS、および20%エ
タノール中80m mampの一定電流でトランスブロットし、
以下のように処理した。
1)膜をブロック緩衝液(150mM NaCl、0.05%Tween2
0、4%スキンミルクおよび0.02%ナトリウムアジド含
有10mM Tris,pH7.4)中25℃で1時間穏やかに振盪しな
がらブロックした。
2)次に、膜を、GDNFに対する希釈一時抗血清を含有す
るブロック緩衝液中25℃で2時間穏やかに振盪しながら
インキュベートした。
3)膜をブロック緩衝液中で洗浄した(4〜5分洗
浄)。
4)次に、膜を、希釈二次抗体(アルカリホスファター
ゼ接合アフィニティー精製ヤギ抗−ウサギIgG:Cappelカ
タログ番号59299)を含有するブロック緩衝液中で、穏
やかに振盪しながら25℃で2時間インキュベートした。
5)膜をスキンミルクを除いたブロック緩衝液中で洗浄
した(4〜5分洗浄)。
6)膜を50mlの現象緩衝液(100mM NaClおよび5mM Mg
Cl2含有100mM Tris,pH9.5)中25℃で、165μlのNBTお
よび83μlのBCIP(Promegaキットカタログ番号P3771)
とともに穏やかに振盪しながら所望の染色が達成される
まで現象した。
例8:GDNFを分泌する膜封入細胞の調製と患者への移植 GDNFを分泌する細胞は、神経障害に罹患している患者
に移植するために、半透過性膜の内部に封入することが
できる。好ましい実施態様においては、患者はパーキン
ソン病に罹患していて、GDNFを分泌する封入細胞はドー
パミン作動性細胞体へGDNFを提供できるように患者の線
状体に移植される。
本発明の一実施態様においては、たとえば上記例5お
よび6において調製され、説明された、GDNFを分泌する
ように操作された細胞が、生物適合性の、移植可能な、
回収可能なポリマー挿入体の内部に導入される。挿入体
は移植細胞の周囲の組織内に入ってGDNFを分泌させるこ
とができるが、一方、細胞に有害と考えられる周囲組織
からの因子が細胞に接触することを防止するように設計
される。
GDNFを分泌するように操作された細胞は、公開PCT出
願WO91/10425、発明の名称“Cell Capsule Extrusion S
ystem"に記載された方法に従って、このような半透過性
の膜に封入される。膜に封入された細胞は標準的な外科
操作によって線状体に移植することができる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C07K 14/47 C12N 1/21 C12N 1/21 C12P 21/02 C 5/10 C12N 5/00 B C12P 21/02 A61K 37/02 //(C12N 1/21 C12R 1:19) (C12P 21/02 C12R 1:91) (C12P 21/02 C12R 1:19) (31)優先権主張番号 788,423 (32)優先日 1991年11月6日 (33)優先権主張国 米国(US) (31)優先権主張番号 855,413 (32)優先日 1992年3月19日 (33)優先権主張国 米国(US) (72)発明者 ドハティー,ダニエル,エィチ. アメリカ合衆国 80203 コロラド州, ボウルダー,イサカ ドライブ 719 (72)発明者 ライル,ジャック アメリカ合衆国 80308 コロラド州, ボウルダー,ピー.オー.ボックス 17033 (72)発明者 ベクテッシュ,スーザン アメリカ合衆国 80301 コロラド州, ボウルダー,サーティーフォーセス ス トリート 3344 (56)参考文献 特開 昭62−223194(JP,A) 国際公開91/1739(WO,A1) 国際公開91/10425(WO,A1) EMBO J.4[8](1985)p. 1963−1966 Soc.Neurosci.Abs. 15(1989)p.277 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C12N 15/09 C07K 14/47 CA/REGISTRY(STN) WPI/BIOSIS(DIALOG)

Claims (45)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(イ)配列番号4又は配列番号6のアミノ
    酸配列、又は (ロ)上記(イ)のアミノ酸配列において1個若しくは
    数個のアミノ酸残基の付加、挿入、欠失若しくは置換を
    有する対応するアミノ酸配列 を含むグリア由来神経栄養因子であって、ドーパミン作
    動性ニューロンの生存又は機能を促進する能力を有する
    上記グリア由来神経栄養因子。
  2. 【請求項2】配列番号6のアミノ酸配列を含む請求項1
    記載のグリア由来神経栄養因子。
  3. 【請求項3】配列番号4又は配列番号6に対応するアミ
    ノ酸配列を含むグリア由来神経栄養因子であって、アミ
    ノ酸100個の長さにつき4個までのギャップがその配列
    をアシストするために導入されるとき、該対応するアミ
    ノ酸配列が配列番号4又は配列番号6のアミノ酸配列と
    70%を超える同一性を示し、かつ該神経栄養因子はドー
    パミン作動性ニューロンの生存又は機能を促進する能力
    を有するものである上記グリア由来神経栄養因子。
  4. 【請求項4】さらにアミノ末端メチオニン残基を含む請
    求項1から3のいずれか一項に記載のグリア由来神経栄
    養因子。
  5. 【請求項5】請求項1から4のいずれか一項に記載の二
    つのアミノ酸配列のダイマーを含むグリア由来神経栄養
    因子。
  6. 【請求項6】配列番号6のアミノ酸配列のダイマーを含
    む請求項1記載のグリア由来神経栄養因子。
  7. 【請求項7】前記神経栄養因子が一つ若しくは二つ以上
    のポリエチレングリコール分子又は他の繰り返し重合体
    部分の付加により修飾されている請求項1から6のいず
    れか一項に記載のグリア由来神経栄養因子。
  8. 【請求項8】グリア由来神経栄養因子を得るための方法
    であって、 (1)(イ)配列番号4又は配列番号6のアミノ酸配
    列、又は (ロ)上記(イ)のアミノ酸配列において1個若しくは
    数個のアミノ酸残基の付加、挿入、欠失若しくは置換を
    有する対応するアミノ酸配列 を含む神経栄養因子を発現すべく組換えにより修飾され
    た細胞を培養し、 (2)発現された神経栄養因子を単離することからな
    り、 該神経栄養因子はドーパミン作動性ニューロンの生存又
    は機能を促進する能力を有するものである上記方法。
  9. 【請求項9】前記神経栄養因子が配列番号6のアミノ酸
    配列を含む請求項8記載の方法。
  10. 【請求項10】前記対応するアミノ酸配列が、アミノ酸
    100個の長さにつき4個までのギャップがその配列をア
    シストするために導入されるとき、配列番号4又は配列
    番号6のアミノ酸配列と70%を超える同一性を示す請求
    項8記載の方法。
  11. 【請求項11】グリア由来神経栄養因子をコードするヌ
    クレオチド配列であって、該配列は、 (イ)配列番号3のヌクレオチド304から705、又は配列
    番号5のヌクレオチド105から506を含むか、 (ロ)配列番号4若しくは配列番号6のアミノ酸配列を
    コードするか、又は配列番号4若しくは配列番号6のア
    ミノ酸配列において1個若しくは数個のアミノ酸残基の
    付加、挿入、欠失若しくは置換を有する対応するアミノ
    酸配列をコードするか、 (ハ)アミノ酸100個の長さにつき4個までのギャップ
    がその配列をアシストするために導入されるとき、配列
    番号4又は配列番号6のアミノ酸配列と70%を超える同
    一性を示す対応するアミノ酸配列をコードするか、 (ニ)上記(イ)、(ロ)若しくは(ハ)で定義したヌ
    クレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列に、低下し
    た緊縮性の条件下でヒブリド化するか(但し、該条件は
    6X SSPE及び0.1%SDS中42〜50℃で配列をヒブリド化
    し、次いで2X SSPE及び0.1%SDS中室温〜50℃で洗浄す
    ることを含んでいる)、又は (ホ)上記(イ)、(ロ)、(ハ)若しくは(ニ)で定
    義したヌクレオチド配列によりコードされたポリペプチ
    ドをコードする(但し、遺伝子暗号の縮退によるコドン
    配列において相違する)ものであり、 該コードされたグリア由来神経栄養因子はドーパミン作
    動性ニューロンの生存又は機能を促進する能力を有する
    ものである、上記ヌクレオチド配列。
  12. 【請求項12】配列番号6のアミノ酸配列を含むグリア
    由来神経栄養因子をコードするヌクレオチド配列であっ
    て、該因子はドーパミン作動性ニューロンの生存又は機
    能を促進する能力を有するものである、上記ヌクレオチ
    ド配列。
  13. 【請求項13】(イ)配列番号4又は配列番号6のアミ
    ノ酸配列、又は (ロ)配列番号4若しくは配列番号6のアミノ酸配列に
    おいて1個若しくは数個のアミノ酸残基の付加、挿入、
    欠失若しくは置換を有する対応するアミノ酸配列であっ
    て、アミノ酸100個の長さにつき4個までのギャップが
    その配列をアシストするために導入されるとき配列番号
    4又は配列番号6のアミノ酸配列と70%を超える同一性
    を示し、かつドーパミン作動性ニューロンの生存又は機
    能を促進する能力を有する上記対応するアミノ酸配列 を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列。
  14. 【請求項14】アミノ末端メチオニン残基をコードする
    コドンをさらに含む請求項11から13のいずれか一項に記
    載のヌクレオチド配列。
  15. 【請求項15】請求項11から14のいずれか一項に記載の
    ヌクレオチド配列に相補的な配列を含むヌクレオチド配
    列。
  16. 【請求項16】請求項11から15のいずれか一項に記載の
    ヌクレオチド配列を含むベクター。
  17. 【請求項17】請求項11から15のいずれか一項に記載の
    ヌクレオチド配列で形質転換又はトランスフェクトされ
    た宿主細胞。
  18. 【請求項18】動物細胞又は微生物である請求項17記載
    の宿主細胞。
  19. 【請求項19】哺乳動物の細胞である請求項17記載の宿
    主細胞。
  20. 【請求項20】大腸菌(E.coli)である請求項17記載の
    宿主細胞。
  21. 【請求項21】請求項11から15のいずれか一項に記載の
    ヌクレオチド配列を発現すべく組換えにより修飾された
    宿主細胞。
  22. 【請求項22】ヒトの移植に適しており、グリア由来神
    経栄養因子を発現し分泌する請求項17に記載の宿主細
    胞。
  23. 【請求項23】請求項1から7のいずれか一項に記載の
    グリア由来神経栄養因子と薬学的に許容される担体とを
    含む神経障害の防止若しくは治療用の薬剤組成物。
  24. 【請求項24】前記神経障害が、物理的障害、血流の一
    時的又は恒久的な停止、中毒性ニューロパシー、慢性代
    謝疾患、遺伝子疾患、神経変性疾患、又は脳のドーパミ
    ン作動性ニューロンの機能不全によりひきおこされる精
    神病に由来するものである、請求項23に記載の薬剤組成
    物。
  25. 【請求項25】前記神経障害が、物理的障害、卒中、神
    経毒又は化学療法剤への暴露、糖尿病性多発性ニューロ
    パシー、腎機能不全、パーキンソン病、アルツハイマー
    病、萎縮性側索硬化症又は精神分裂症によりひきおこさ
    れるものである、請求項22に記載の薬剤組成物。
  26. 【請求項26】前記障害がドーパミン作動性ニューロン
    又は自律神経系ニューロンにおけるものである請求項23
    に記載の薬剤組成物。
  27. 【請求項27】前記因子が配列番号6のアミノ酸配列を
    含む請求項23から26のいずれか一項に記載の薬剤組成
    物。
  28. 【請求項28】請求項1から7のいずれか一項に記載の
    グリア由来神経栄養因子と薬学的に許容される担体とを
    含むドーパミン作動性神経細胞の障害又は機能不全の防
    止若しくは治療用の薬剤組成物。
  29. 【請求項29】グリア由来神経栄養因子を製造するため
    の方法であって、 (イ)請求項11から14のいずれか一項に記載のヌクレオ
    チド配列をその発現に適した条件下で発現すべく形質転
    換又はトランスフェクトされた宿主細胞を培養し、 (ロ)必要に応じて、発現されたグリア由来神経栄養因
    子を単離することからなる上記方法。
  30. 【請求項30】前記宿主細胞が原核細胞又は真核細胞で
    ある請求項29に記載の方法。
  31. 【請求項31】前記宿主細胞が大腸菌(E.coli)であ
    り、グリア由来神経栄養因子をリフォールディングして
    ホモダイマーを形成する工程をさらに含む請求項29に記
    載の方法。
  32. 【請求項32】配列番号4又は配列番号6のアミノ酸配
    列を有するグリア由来神経栄養因子に結合する抗体。
  33. 【請求項33】モノクローナル抗体である請求項32に記
    載の抗体。
  34. 【請求項34】ポリクローナル抗体である請求項32に記
    載の抗体。
  35. 【請求項35】配列番号4又は配列番号6のアミノ酸配
    列を有するグリア由来神経栄養因子に結合するモノクロ
    ーナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞系。
  36. 【請求項36】グリア由来神経栄養因子を請求項32から
    34のいずれか一項に記載の抗体と接触させて抗体−因子
    複合体を形成し、該複合体を検出し、必要に応じて存在
    する該複合体の量を測定することからなる、グリア由来
    神経栄養因子の検出又は定量の方法。
  37. 【請求項37】請求項1から6のいずれか一項に記載さ
    れ、ドーパミン作動性ニューロンの生存又は機能を促進
    する能力を有するグリア由来神経栄養因子のダイマーを
    発現し分泌すべく組換えにより修飾された、移植に適し
    た細胞を含む神経障害の防止又は治療用の組成物。
  38. 【請求項38】前記神経障害が、物理的障害、血流の一
    時的又は恒久的な停止、中毒性ニューロパシー、慢性代
    謝疾患、遺伝子疾患、神経変性疾患、又は脳のドーパミ
    ン作動性ニューロンの機能不全によりひきおこされる精
    神病に由来するものである、請求項37に記載の組成物。
  39. 【請求項39】前記グリア由来神経栄養因子が配列番号
    6のアミノ酸配列を含む請求項37に記載の組成物。
  40. 【請求項40】請求項1から6のいずれか一項に記載の
    グリア由来神経栄養因子を発現し分泌する一つ又は二つ
    以上の細胞と、該一つ又は二つ以上の細胞を含む生体適
    合性材料とを含み、該生体適合性材料は該グリア由来神
    経栄養因子に対して透過性である、患者への移植のため
    のデバイス。
  41. 【請求項41】グリア由来神経栄養因子が配列番号6の
    アミノ酸配列を含む請求項40に記載のデバイス。
  42. 【請求項42】前記細胞がグリア由来神経栄養因子を分
    泌すべく組換えにより修飾されている請求項40に記載の
    デバイス。
  43. 【請求項43】前記生体適合性材料が前記一つ又は二つ
    以上の細胞に有害な、患者由来の免疫系材料に対しては
    実質的に不透過性である請求項40に記載のデバイス。
  44. 【請求項44】前記一つ又は二つ以上の細胞がグリア由
    来神経栄養因子を発現し分泌すべく修飾されており、該
    細胞が患者自身の細胞である請求項40に記載のデバイ
    ス。
  45. 【請求項45】前記生体適合性材料が患者の中枢神経系
    への移植に適した膜である請求項40に記載のデバイス。
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