JP2968175B2 - 合成樹脂製歯車の金型製造方法および製造装置ならびに合成樹脂製歯車金型の歯形設計方法および設計装置 - Google Patents

合成樹脂製歯車の金型製造方法および製造装置ならびに合成樹脂製歯車金型の歯形設計方法および設計装置

Info

Publication number
JP2968175B2
JP2968175B2 JP16146794A JP16146794A JP2968175B2 JP 2968175 B2 JP2968175 B2 JP 2968175B2 JP 16146794 A JP16146794 A JP 16146794A JP 16146794 A JP16146794 A JP 16146794A JP 2968175 B2 JP2968175 B2 JP 2968175B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gear
data
tooth
base circle
mold
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP16146794A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH0825500A (ja
Inventor
昭夫 上田
庸一 藤岡
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
AMUTETSUKU JUGENGAISHA
FUJIOKA SEISAKUSHO KK
Original Assignee
AMUTETSUKU JUGENGAISHA
FUJIOKA SEISAKUSHO KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by AMUTETSUKU JUGENGAISHA, FUJIOKA SEISAKUSHO KK filed Critical AMUTETSUKU JUGENGAISHA
Priority to JP16146794A priority Critical patent/JP2968175B2/ja
Publication of JPH0825500A publication Critical patent/JPH0825500A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2968175B2 publication Critical patent/JP2968175B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Electrical Discharge Machining, Electrochemical Machining, And Combined Machining (AREA)
  • Moulds For Moulding Plastics Or The Like (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ワイヤ放電加工装置を
用いた合成樹脂製歯車の金型製造方法および製造装置な
らびに同金型製造のための歯形設計方法および設計装置
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、エンジニアリングプラスチックと
通称される強靱性に富みかつ金属に代替可能な合成樹脂
材料が開発されるに及び、従来の金属製の歯車に代えて
合成樹脂製の歯車が各種の機械装置に多用されるように
なってきた。
【0003】上記のような優れた合成樹脂を歯車の材料
として用いると、金属に代替し得る強靱性に加えて、材
料自体が保有している潤滑性によって注油が不要になる
ことが多く、機械装置のメンテナンス上好都合であるほ
か、面倒な切削加工を行わずに金型を用いた成形操作で
極めて容易に多量の歯車を製造することができるため、
歯車の製造コストを低減させることが可能になるという
利点も備えている。さらに、金属に比べて非常に軽量で
あるため、機械装置の総重量の軽量化に寄与することも
できる。
【0004】合成樹脂製の歯車を製造するに際しては、
まず金型の設計が行われ、その後設計結果に基づいて金
型が製造される。一旦金型ができあがるとこれを用いて
通常の成形処理により歯車は大量生産されることにな
る。成形処理においては射出成形法の適用が一般的であ
る。
【0005】歯車の金型は、通常ワイヤ放電加工法また
は型彫放電加工法によって製作されるが、型彫放電加工
法はマスターとなる歯車電極の製作が必要なことから、
放電加工法が主流になっている。ワイヤ放電加工法は、
一般に直径0.05〜0.3mmのワイヤ電極に糸鋸の
ようにテンションをかけて金属からなる被加工物に対向
させ、ワイヤ電極と被加工物との間に高電圧を印加する
ことによって両者間に放電を発生させつつ所定の形状に
沿ってワイヤ電極を移動させる加工法である。ワイヤ電
極を移動させることによって、あたかも糸鋸で木材を所
定の二次元形状に切断するように金属を切断することが
可能であり、近年のNC制御の発達とも相俟ってこのよ
うな方法で容易に歯車の金型を製造することができるよ
うになった。
【0006】ところで、歯車の歯形は、通常インボリュ
ート曲線に沿う形状が採用される。インボリュート曲線
は、基準となる円(基礎円)の外周面に直定規を押し当
て、滑らさない状態で直定規を円周に沿って回動させた
ときに得られる、基礎円と直定規との間の最初の接点の
軌跡である。通常インボリュート歯車の歯形はこのよう
な軌跡に沿うように設定されている。
【0007】従って、インボリュート曲線は基礎円より
も内側には存在しないが、歯数が少なくなる等特定の条
件下では相手歯車との関係上基礎円よりも内側に歯底を
設定しないと、噛合時に相手歯車の歯先が歯の歯底に干
渉することがあるが、JISB1701−1973(イ
ンボリュート歯車の歯形及び寸法)によって全歯たけが
規定されており、相手歯車の歯底に干渉することを防止
している。そこで、基礎円より内側およびアンダーカッ
ト(切下げ)が発生したときのインボリュート曲線始点
より内側の歯形を歯元のスミ肉歯形と定義する。歯車製
造用の工作機械であるホブ盤による歯車加工において
は、基礎円のインボリュート曲線発生点およびアンダー
カット発生点より内側に向かってトロコイド曲線の包絡
線からなるいわゆる準トロコイド曲線に沿った輪郭線が
形成される。
【0008】一方、合成樹脂製の歯車においては、スミ
肉歯形部分が直線状に形成されていた。その理由として
以下の事項が上げられる。第1に、合成樹脂製の歯車
は、汎用的な用途に使用されるものが多く、しかも大量
生産されるものであるため、個々の歯車の使用状況に対
応させることが困難であること、第2に、合成樹脂製の
歯車は金属製のものに比べて非常に柔軟性に富んでお
り、たとえ相手歯車の歯先との間に多少の干渉があった
としても、自身の干渉部分が柔軟に変形して上記干渉を
吸収することができることにより不都合が表面化しなか
ったこと、第3に、ワイヤ放電加工法によって歯車の金
型を製作するためのNC制御において、適切なスミ肉歯
形を施すソフトウエア(制御プログラム)が開発されて
いないこと、のような理由から、従来ワイヤ放電加工法
によって歯車の金型を製作するためのNC制御におい
て、スミ肉歯形部分を形成させる必要があるときは、基
礎円から直線的に歯車の中心に向かって歯底まで切り込
むように設定されたプログラムが適用されていた。
【0009】しかしながら、今後合成樹脂製の歯車が現
在よりも広く各所で多用されるようになることが予想さ
れ、従って、適切なスミ肉歯形曲線が付与された合成樹
脂製の歯車の需要は今後ますます増大すると考えられ
る。
【0010】なお、従来においても、特に曲線状のスミ
肉歯形を施した合成樹脂製の歯車を製造するためにそれ
用の金型が製作されることがあり、そのときは形彫放電
加工が適用される。形彫放電加工は、まず製造しようと
する歯車と同じ形状の金属製のマスター電極を製作し、
このマスター電極を水や灯油等の加工液の中に浸漬され
た平板状金属塊に液中で対向させ、アーク放電を起こさ
せて平板状金属塊の表面にマスター電極と同じ形状のキ
ャビティを形成させるようにしたものである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記形
彫放電加工においては、まず、予め金属製のマスター電
極をつくらなければならず、そのためには工作機械であ
るホブ盤による機械工作的な作業が必須であるが、この
ような工作機械の操作は極めて高度な熟練を要し、か
つ、非常に多くの時間がかかるという問題点を有してい
た。
【0012】そのため、上記形彫加工による金型の製作
には多くの費用がかかり、経済的に不利であるという問
題点も存在した。また、形彫放電加工の加工精度はワイ
ヤカット放電加工機ほど優れたものではないという不都
合も存在した。
【0013】また、ワイヤ放電加工法によって金型をつ
くろうとすれば、ワイヤを歯車の輪郭線に沿って移動さ
せなければならない。そのためにワイヤがインボリュー
ト曲線を形成するように移動する設計ソフトは存在する
が、ワイヤが歯車のスミ肉歯形部分を上記準トロコイド
曲線に沿うように移動するプログラムが付与された設計
ソフトは従来存在しなかった。
【0014】本発明は、上記のような問題点を解決する
ためになされたものであり、製作に熟練を要せず、経済
的に有利であり、かつ、精度が優れた合成樹脂製の歯車
を製造するための金型製造方法および製造装置、並びに
金型の歯形設計方法および設計装置を提供することを目
的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1記載の
合成樹脂製歯車の金型製造方法は、歯車の諸元データを
受けて、高電圧が印加された緊張状態のワイヤ電極を被
加工物に対し上記輪郭線に沿うように相対移動すること
によりこの被加工物に歯車のキャビティーを形成する合
成樹脂製歯車の金型製造方法において、上記歯車の基礎
円の外側ではインボリュート曲線を輪郭線のデータとし
て用い、この歯車と基準ラック工具との相対噛合転動に
よって上記基準ラック工具の歯先隅部に設定された複数
点が歯車の歯底付近に軌跡として描く複数のトロコイド
曲線の包絡線からなる歯元曲線を上記歯車の基礎円の内
側での輪郭線のデータとして用いるようにし、基礎円の
外側で上記インボリュート曲線と、上記包絡線とが互い
に干渉するか否かを判別し、干渉するときは、輪郭線の
データとして包絡線を優先させるようにしたことを特徴
とするものである。
【0016】本発明の請求項2記載の合成樹脂製歯車の
金型製造装置は、歯車の諸元データを受けて、高電圧が
印加された緊張状態のワイヤ電極を被加工物に対し輪郭
線に沿うように相対移動することによりこの被加工物に
歯車のキャビティーを形成するワイヤ放電加工手段とを
有する合成樹脂製歯車の金型製造装置において、入力さ
れた歯車の諸言データに基づいて輪郭線のデータを演算
するものであって、上記輪郭線のデータとして、歯車の
基礎円の外側に対してはインボリュート曲線を、その他
の部分ではこの歯車と基準ラック工具との相対噛合転動
によって上記基準ラック工具の歯先隅部に設定された複
数点が歯車の歯底付近に軌跡として描く複数のトロコイ
ド曲線の包絡線からなる歯元曲線を算出する演算手段
と、基礎円の外側で上記インボリュート曲線と上記包絡
線とが互いに干渉するか否かを判別する判別手段と、こ
の判別手段が干渉すると判別したときは、輪郭線のデー
タとして包絡線を優先させる優先手段とを有しているこ
とを特徴とするものである。
【0017】本発明の請求項3記載の合成樹脂製歯車金
型の歯形設計方法は、入力された歯車の諸言データから
上記歯車の基礎円の内側で基準ラック工具の歯先が歯車
のインボリュート曲線と干渉するか否かを判別し、上記
干渉が生じないときは、輪郭線のデータを、上記歯車の
基礎円の外側に対してはインボリュート曲線より求め、
上記歯車の基礎円の内側に対しては基礎円から歯車中心
に向けた直線と歯底円とから求め、上記干渉が生じると
きは、輪郭線のデータを、上記歯車の基礎円の外側に対
してはインボリュート曲線により求め、上記歯車の基礎
円の内側に対してはこの歯車と基準ラック工具との相対
噛合転動によって上記基準ラック工具の歯先隅部に設定
された複数点が歯車の歯底付近に軌跡として描く複数の
トロコイド曲線の包絡線として求めるようにし、上記基
礎円の外側で上記インボリュート曲線と、上記包絡線と
が互いに干渉するか否かを判別し、干渉するときは、包
絡線を優先させるようにしたことを特徴とするものであ
る。
【0018】本発明の請求項4記載の合成樹脂製歯車金
型の歯形設計装置は、歯車の輪郭線のデータを演算に必
要な諸言データを入力するデータ入力手段と、歯車の輪
郭線のデータを、上記歯車の基礎円の外側に対してはイ
ンボリュート曲線より求めるとともに、上記歯車の基礎
円の内側に対しては基礎円から歯車中心に向けた直線と
歯底円とから求める第1の演算手段と、歯車の輪郭線の
データを、上記歯車の基礎円の外側に対してはインボリ
ュート曲線により求めるとともに、上記歯車の基礎円の
内側に対してはこの歯車と基準ラック工具との相対噛合
転動によって上記基準ラック工具の歯先隅部に設定され
た複数点が歯車の歯底付近に軌跡として描く複数のトロ
コイド曲線の包絡線として求める第2の演算手段と、上
記第1の演算手段と上記第2の演算手段のいずれを実行
させるかを決定する決定手段とを備えてなり、上記決定
手段は、データ入力手段により入力された諸言データか
ら上記歯車の基礎円の内側で上記基準ラック工具の歯先
が上記歯車のインボリュート曲線と干渉するか否かを判
別する判別手段と、上記判別手段による判別結果によ
り、干渉を生じないときは上記第1の演算手段を採用
し、干渉を生じるときは上記第2の演算手段を採用する
切換手段とを有してなることを特徴とするものである。
【0019】
【作用】上記請求項1および2に記載の合成樹脂製歯車
の金型製造方法および製造装置によれば、製造された金
型には、そのキャビティに歯車の基礎円の外側にインボ
リュート曲線に沿う歯形が形成されるとともに、同内側
に基準ラック工具の歯先隅部によるトロコイド曲線の包
絡線からなる歯元曲線が形成され、特に基礎円の外側で
上記インボリュート曲線と、上記包絡線とが互いに干渉
するときは、包絡線が優先されるようになっているた
め、このような金型を用いて合成樹脂製の歯車を製造す
れば、得られた歯車は、一般に基準ラック工具よりも歯
先の干渉が緩やかな相手歯車に噛合っても相手歯車の歯
先が干渉することはない。
【0020】上記請求項3および4記載の合成樹脂製歯
車金型の歯形設計方法および設計装置によれば、入力さ
れた歯車の諸言データから上記歯車の基礎円の内側で基
準ラック工具の歯先が上記歯車のインボリュート曲線と
干渉するか否かが判別され、上記干渉が生じないとき
は、基礎円から歯車中心に向けた直線状の歯元線が設計
され、上記干渉が生じるときは、基準ラック工具との相
対噛合転動によって干渉しないように基準ラック工具の
歯先隅部の複数点が描く複数のトロコイド曲線の包絡線
に沿うように設計され、得られた金型によって製造され
た歯車は、一般に基準ラック工具よりも歯先の干渉が緩
やかな相手歯車に噛合っても相手歯車の歯先が干渉する
ことはない。特に請求項4および6に記載の合成樹脂製
歯車金型の歯形設計方法および設計装置によれば、基礎
円の外側で上記インボリュート曲線と、上記包絡線とが
互いに干渉するときは、包絡線が優先されるため、得ら
れた金型によって製造された歯車にはいわゆるアンダー
カットが施された状態になっており、相手歯車の歯先の
干渉は確実に阻止される。
【0021】そして、判別手段による判別結果により、
干渉を生じないときは上記第1の演算手段を採用し、干
渉を生じるときは上記第2の演算手段を採用する切換手
段とを有しているため、判別手段の判別結果に基づいた
上記切換手段による演算手段の選択によって、的確に歯
元曲線の設計が行われる。
【0022】
【実施例】図1は、本発明に係る金型製造装置の一例を
示す説明図である。この図に示すように、金型製造装置
1は、放電によって金属を所定の2次元形状に切断する
ワイヤ放電加工装置2と、このワイヤ放電加工装置2に
高周波パルスを供給する電源装置3と、この電源装置3
およびワイヤ放電加工装置2内の駆動系に所定の指令信
号を与える制御装置4とから構成されている。
【0023】上記ワイヤ放電加工装置2内には、所定厚
みの平板状金属塊からなる金型原料(被加工物)6を同
一水平面上で自在に移動させることが可能な駆動手段2
1が設けられている。この駆動手段21は、一対の電動
モータが内設され一方の電動モータの回転駆動によって
水平面うえを一方向に移動するベース部21aと、この
ベース部21aから上記水平移動方向に直交するように
水平方向に突出されかつ他方の電動モータの回転駆動に
よって正逆回転駆動するネジ軸21bとから構成されて
いる。
【0024】上記ネジ軸21bには、架台22が水平姿
勢を維持した状態でネジ軸21bの正逆回転によって軸
心方向に正逆移動するように螺着されている。従って、
この架台22は上記ベース部21a内の一対の電動モー
タの回転駆動に応じてネジ軸21bを介しワイヤ放電加
工装置2内を自在に水平移動することができるようにな
っている。かかる架台22の一側部には金型原料6を載
置固定するテーブル23が立設されている。
【0025】架台22の上部には、架台22の水平移動
とは独立した電極部24が設けられている。この電極部
24は、高周波パルスの電力を得て放電により金型原料
6を切断する電極ワイヤ25と、この電極ワイヤ25の
新品を収納した供給ボビン24aと、この供給ボビン2
4aから引き出された電極ワイヤ25を金型原料6を介
して上方に案内するピンチローラ24bと、引き出され
放電電極として使用された電極ワイヤ25を巻き取る巻
上ローラ24cとから構成されている。この電極ワイヤ
25および金型原料6には電源装置3から高周波パルス
電力が供給されるようになっている。
【0026】ワイヤ放電加工装置2には加工液供給手段
26が設けられている。この加工液供給手段26は、イ
オン交換樹脂で処理された所定の電導度を有する水から
なる加工液を貯留する清浄液槽26aと、使用済みの加
工液を貯留する使用済液槽26bと、清浄液槽26a内
の加工液を金型原料6の放電部に導出する第一ポンプ2
6cを備えた加工液導出管27と、金型原料6の放電部
に供給され後架台22の表面に落下して滞留した使用済
みの加工液を使用済液槽26bに回収する加工液回収管
29とから構成されている。
【0027】上記加工液導出管27の先端部は金型原料
6を上下から挟むように二股状に分岐され、それぞれの
先端部にノズル27aが設けられている。そして各ノズ
ル27aは上下から金型原料6の放電部に対向させら
れ、電極ワイヤ25によって放電切削が行われている部
分が常に冷却されるようなっている。
【0028】上記清浄液槽26aと使用済液槽26bと
の間には、連絡管28が配設されており、この連絡管2
8には第二ポンプ26dおよび加工液の電導度を基の値
に再生するイオン交換装置28aが設けられている。従
って、ノズル27aから金型原料6の放電切削部分に供
給された加工液は、一旦使用済液槽26bに集められた
後、イオン交換装置28aによって再生され、循環使用
されるようになっている。
【0029】以上詳述した放電加工機2は、所定の制御
回路が内蔵された上記制御装置4からの各種の制御信号
に基づいて駆動されるようになっている。制御装置4に
は、所定の歯車の金型をつくるための制御プログラムお
よび各種の初期設定データを入力する入力部41と、上
記制御プログラムおよび初期設定データに基づいて放電
加工機2にベース部21aに駆動制御信号を送出する駆
動制御出力部42と、電源装置3に高周波パルスの出力
を指令するパルス指令部43とが設けられている。
【0030】そして、本実施例においては、上記プログ
ラムは、フロッピディスクFからなるデータ媒体に予め
記憶させておき、このフロッピディスクFを入力装置4
1に付与することにより制御装置4ないに読み込まれる
ようになっている。上記フロッピディスクFに所定のプ
ログラムを記憶させるために、歯車諸元設計、歯車歯形
計算および歯車の輪郭座標値計算の機能を有したマイク
ロコンピュータ5が設けられている。
【0031】このマイクロコンピュータ5には、入出力
装置51と、歯車演算部52と、スミ肉歯形歯元曲線演
算部52aとが備えられている。上記入出力装置51
は、上記制御プログラムを作成するために必要な初期デ
ータ(歯車の諸元等)を入力するとともに、歯車演算部
52およびスミ肉歯形歯元曲線演算部52aの演算結果
を出力するためのものであり、演算結果はプリントアウ
トやディスプレイ表示されるようになっている。この出
力された演算結果を見て初期データの再入力等を行うこ
とにより、最適の制御プログラムをトライアンドエラー
で見つけ出すことができる。
【0032】そして、最終的に制御プログラムが確定す
れば(具体的には歯車諸元設計、歯車歯形計算および歯
車の輪郭座標値計算が確定すれば)、それは入出力装置
51を介してフロッピィディスクからなるソースファイ
ルF1に出力される。このソースファイルF1の内容
は、変換機50を介して制御装置4が処理可能な言語に
変換され、変換結果がフロッピィディスクからなる変換
ファイルF2に出力される。この変換ファイルF2の内
容が入力装置41を介して制御装置4に入力され、この
中の制御プログラムの実行に応じて放電加工機2が制御
される。
【0033】なお、以上のように、本実施例において
は、マイクロコンピュータ5と制御装置4とを結ぶデー
タ媒体として、ソースファイルF1および変換ファイル
F2からなるフロッピディスクFが適用されているが、
本発明はデータ媒体としてフロッピディスクFを用いる
ことに限定されるものではなく、通常の磁気ディスクや
磁気テープ等であってもよい。また、このようなデータ
媒体を用いることなく直接入力装置41にプログラムを
キーインするようにしてもよい。
【0034】そして、以下説明の都合上、上記マイクロ
コンピュータ5、変換機50および制御装置4は一体的
に設けられているものとし、それらをつなぐデータ媒体
としてのフロッピディスクFについては特に言及せずに
説明する。従って、図1においてはマイクロコンピュー
タ5からの各種のデータはフロッピディスクFを介さず
にオンタイムで演算部42伝達されるものとする。
【0035】まず、上記入出力装置51に上記プログラ
ムおよび所定の初期データが入力されると、歯車演算部
52に記憶されている演算プログラムにより歯形の輪郭
が座標値として算出される。そして、その算出データに
基づいて駆動制御出力部42は、架台22が上記座標値
に応じた平面運動を行うように駆動手段21に制御信号
を出力するとともに、パルス指令部43は電源装置3が
高周波の電力を電極ワイヤ25に供給する制御信号を出
力する。
【0036】従って、ワイヤ放電加工装置2は、制御装
置4の制御の基に、駆動手段21のベース部21aおよ
びネジ軸21bに所定の動きを与え、架台22を平面上
で二次元運動させるので、巻上ローラ24cによって巻
き取られつつある電極ワイヤ25と金型原料6の加工部
分との間の放電により、金型原料6は予め設定された所
定の形状に切削されることになる。
【0037】上記歯車演算部52の中には、歯車の基礎
円71(図4参照)近傍における歯70の壁面とスミ肉
歯形部74の壁面とが滑らかに接続され、この部分で基
準ラック工具8の歯先が干渉しないように歯元曲線を演
算するスミ肉歯形歯元曲線演算部52aが設けられてい
る。
【0038】上記入出力装置51に放電加工に要する所
定のデータが入力されると、スミ肉歯形歯元曲線演算部
52aに記憶されている演算プログラムにより歯形の輪
郭が座標値として算出される。そして、その算出データ
に基づいて駆動制御出力部42は、架台22が上記座標
値に応じた平面運動を行うように駆動手段21に制御信
号を出力するとともに、パルス指令部43は電源装置3
が高周波の電力を電極ワイヤ25に供給する制御信号を
出力する。
【0039】従って、ワイヤ放電加工装置2は、制御装
置4の制御の基に、駆動手段21のベース部21aおよ
びネジ軸21bに所定の動きを与え、架台22を平面上
で二次元運動させるので、巻上ローラ24cによって巻
き取られつつある電極ワイヤ25と金型原料6の加工部
分との間の放電により、金型原料6は予め設定された所
定の形状に切削されることになる。
【0040】なお、マイクロコンピュータ5は、当然の
ことながら、入出力装置51に所定の制御モードを入力
することにより、歯車演算部52での演算結果を駆動制
御出力部42およびパルス指令部43に出力することな
く、演算結果を入出力装置51にフィードバックする機
能を有しており、このフィードバック機能を利用してそ
れをプリントアウトしたりディスプレー表示することに
よって、ワイヤ放電加工装置2が稼働した場合の放電加
工によって得られる加工物の形状を予め知ることができ
るようになっている。
【0041】従って、歯車の金型を製造するに要する諸
元(入力データ)を入出力装置51から入力することに
よって、上記入力データがマイクロコンピュータ5内に
導入され、歯車演算部52において所定の演算処理が施
され、演算結果(座標値xy)に基づいて、図2に示す
ように、金型原料6が二次元移動をするx方向およびy
方向の移動量が算出され、この移動量が駆動制御出力部
42を介して駆動手段21に向けて制御信号として出力
される。従って、この制御信号を受けた駆動手段21
は、この制御信号に基づいてベース部21aを正逆水平
移動させるとともに、ネジ軸21bを正逆回転させ、そ
れによって架台22がx方向およびy方向に所定速度で
所定距離だけ移動し、金型原料6を歯車の形に切削加工
する。
【0042】図2に示す例においては、金型原料6上の
点Oが原点として設定され、この部分が放電加工のスタ
ート地点とされる。上記原点Oには予め小孔が穿孔され
ており、この小孔に二点鎖線で示す電極ワイヤ25が挿
通される。この状態で巻上ローラ24cが駆動され、供
給ボビン24aに収納されていた電極ワイヤ25がピン
チローラ24bを介して順次巻上ローラ24cに巻き取
られる。このような状態の電極ワイヤ25に電源装置3
から高周波パルスが供給される。
【0043】そして、高周波パルスが電極ワイヤ25に
供給されると同時に図1に示す制御装置4の駆動制御出
力部42から駆動手段21に所定の駆動制御信号が出力
される。この駆動制御信号は、金型原料6の表面に二点
鎖線で示す歯車形状の閉曲線に沿うように、原点Oにあ
る電極ワイヤ25に対して金型原料6を二次元移動させ
る信号であり、具体的にはx方向およびy方向の金型原
料6の移動速度が駆動制御信号として与えられる。x方
向の移動はベース部21aの移動によって行われ、y方
向の移動はネジ軸21bの回転によって行われるように
なっている。
【0044】図2に示す例では、原点Oにおいてx方向
に(x0)の移動速度が与えられ、y方向に(y0)の移
動速度が与えられるため、結局金型原料6はx0とy0
の合力の方向にSの移動速度で移動することになり、こ
の移動によって電極ワイヤ25が金型原料6を放電処理
により切断する。
【0045】金型原料6に対して電極ワイヤ25が実線
で示す位置に相対移動した場合には、x方向には
(x1)、y方向には(y1)の移動速度が駆動制御信号
として駆動制御出力部42から駆動手段21に出力さ
れ、その結果金型原料6は移動速度がS1で移動するこ
とになる。
【0046】そして、図2に二点鎖線で示す歯車の形状
に沿って電極ワイヤ25が原点Oから一周すれば、金型
原料6は電極ワイヤ25によって切り抜かれた状態にな
り、切り抜かれた中子を取り外すことによって図3に示
すような歯車の金型60が得られる。この金型60の中
央部に二次元輪郭形状に切り抜かれた歯車7のキャビテ
ィ60aが形成している。
【0047】なお、上記の説明では、説明の都合上xy
座標の原点Oとして電極ワイヤ25の始点が採用されて
いるが、xy座標の原点Oは電極ワイヤ25の始点に限
定されるものではなく、例えば金型原料6から製造され
るキャビティ60aの中心点をxy座標の原点にしても
よい。
【0048】以下、本発明方法による歯車製造用の金型
の設計について具体的に説明する。図4は、歯車の一例
を示す部分輪郭図である。この図に示すように、歯車7
は、基礎となる円(基礎円71)の外周に等間隔で複数
の歯70が突設されて形成されている。そして、歯70
の基礎円71上に置ける突設点73から上方の部分は、
いわゆるインボリュート曲線Iに沿うように設定されて
いる。
【0049】インボリュート曲線Iは、突設点73に直
定規を当接させ、その後滑らさないようにしながら直定
規を基礎円71上で起こしていくときに得られる突設点
73の直定規上の軌跡である。このようなインボリュー
ト曲線Iを利用した歯車7においては、基礎円71の径
よりも若干大きい径を有するピッチ円72が形成され、
ピッチ円72とインボリュート曲線Iとの一方の交点
(噛合ピッチ点72a)と他方の交点(噛合ピッチ点7
2b)との間のピッチ円72に沿った距離がその歯車7
のピッチとして定義される。当歯車と相手歯車とは、そ
れぞれこのピッチ点において噛合している。インボリュ
ート曲線Iを利用したワイヤ放電加工における歯70の
輪郭の形成については周知であるためここでは説明を省
略する。
【0050】通常、歯車7には基礎円71の径方向の中
心寄りの部分にも歯形が切り込まれている。このよう
に、JISB−1701−1993では、基礎円に関係
なく歯車各部の寸法が規定されており、インボリュート
発生点より内側の歯元部をスミ肉歯形ということにす
る。
【0051】歯車7にスミ肉歯形部74を形成させるの
は、相手歯車との噛合時に当歯車7の歯底部と相手歯車
の先端部との干渉を回避するためである。合成樹脂製の
歯車においては、従来このスミ肉歯形部74は、突設点
73から径方向に中心に向かう直線に沿って形成されて
いたが、本発明においては、この部分に準トロコイド曲
線に沿った曲線が採用される。
【0052】以下、ワイヤ放電加工を適用した金型製作
におけるスミ肉歯形部74の形成について説明する。図
5は、歯車7に噛合される基準ラック工具8を示す輪郭
図である。本発明においては、歯車7のスミ肉歯形部7
4の歯元曲線を決定するために、図5に示すような基準
ラック工具8が適用される。
【0053】基準ラック工具8が適用される理由は、基
準ラック工具8は半径が無限大の歯車と見做すことがで
き、このような半径が無限大で、かつ、基準ラックの歯
先よりも0.25m(モジュール)以上長く設定(図
5、Y)された基準ラック工具8の歯元隅部に設定され
た複数点が歯車の歯底付近に軌跡として描く複数のトロ
コイド曲線の包絡線からなるスミ肉歯形に設定されてお
れば、当歯車7に対し相手歯車が如何なる半径を有する
ものであってもその歯車の歯先とスミ肉歯形部74との
相互干渉は起こらないからである。
【0054】そして、本発明においては、歯車7に対し
て噛合基準となる相手の基準ラック工具8についても都
度設定される。この設定値としては、歯末のたけ係数h
ac(mm)、歯元のたけ係数hfc(mm)、歯元のR係
数hRc(mm)が入出力装置51に入力される。そうす
ると、これらの入力値を基にマイクロコンピュータ5の
歯車演算部52が予め入力されているプログラムに基づ
いて図5に示すような基準ラック工具8を演算する。な
お、図5には基準ラック工具8の噛合ピッチ線83を一
点鎖線で示している。この噛合ピッチ線83とラック歯
81の輪郭線との交点が基準ラック工具8の噛合点82
であり、この噛合点82が歯車7の歯の噛合ピッチ点7
2aに当接した状態で基準ラック工具8はピッチ円72
と噛合している。
【0055】一方、上記基準ラック工具8に噛合する歯
車7の詳細設計が行われる。このために、歯車歯数z、
圧力角αn(度)、転位係数Xn、歯先円直径da(m
m)、歯底円直径df(mm)、歯先円弧の半径Ra(m
m)等が入出力装置51を介してマイクロコンピュータ
5内に入力される。そうすると、マイクロコンピュータ
5の歯車演算部52は、予め記憶されている所定の演算
プログラムに基づいて図4に示すような歯車7の輪郭線
を形成させる各点のxy座標を演算する。なお、初期設
定の入力値については、上記の他に歯車材料である合成
樹脂の収縮率や、各種の計算結果の公差の値等をも入力
するようにしてもよい。本実施例においては、歯車7の
スミ肉歯形部74には、ラック歯81の歯先の隅部一点
を対象として当初からトロコイド曲線に基づく歯元曲線
が設定されるようになっている。
【0056】以下初期設定のための入力項目について詳
細に記す。 I.初期設定 (1)基準ラック工具の設定 (1.1)歯末のたけ係数 hac(mm) (1.2)歯元のたけ係数 Hfc(mm) (1.3)歯元のR係数 hRc(mm) 上記のすべてについて設定し入力する。なお、入力しな
かったときはJIS規格に基づいた値が用いられる。
【0057】(2)円弧補完精度の入力 E(μm)を入力する。なお、入力しなかったときは1
μmが用いられる。
【0058】(3)歯底形状の選択 (3.1)理論歯形 (3.2)任意歯形 上記の(3.1)および(3.2)のいずれかを選択し
て入力する。理論歯形を入力すると、基準ラック工具の
軌跡に基づいたスミ肉歯形が得られ、任意歯形を入力す
ると、インボリュート曲線、歯底円、歯底R、インボリ
ュート始点より歯車中心に向かう直線によって構成され
るスミ肉歯形が得られる。
【0059】(4)歯車精度等級の入力(歯車減少量の
基準値となる) JIS−B1703(平歯車のバックラッシ)の0級〜
8級から選択して入力する。なお、入力しなかったとき
は、4級が選択される。
【0060】II.歯車諸元の設定 (1)製品図面(図面に基づいた諸元および公差の入
力)、製品諸元および金型諸元の3種類のいずれかにつ
いて設定入力する。
【0061】製品図面を設定すれば、製品歯車に必要な
諸元、公差等が出力される。製品諸元を設定すれば、目
標とする製品歯車諸元が決定され、製品図面の公差等を
考慮した公差中心値および歯厚減少量等が出力される。
金型諸元を設定すれば、製品諸元を基に収縮率を見込ん
だ金型諸元が出力される。
【0062】(2)歯車諸元の設定 (2.1)収縮率の入力 千分率(S/1000)のSの値を入力する。
【0063】(2.2)歯直角モジュールmn(mm)
の入力 製品図面の歯直角モジュールの設定値を入力すると、製
品諸元のモジュールは製品図面と等しいものが表示さ
れ、金型諸元のモジュールは収縮率を考慮した下記計算
式に基づくモジュール(mn′)として表示される。 mn′=mn×(1000/(1000−S) なお、上記mn′は任意に変更することができる。
【0064】(2.3)歯車歯数zの入力 (2.4)圧力角αn(度)の入力 20度を標準圧力角とするが、任意に変更することがで
きる。
【0065】(2.5)ねじれ角β(度)の入力 平歯車の場合は「0」を入力する。
【0066】(2.6)転移係数Xnの入力 (2.7)基準ピッチ円直径の計算結果の表示下記計算
式によって基礎ピッチ円の直径dが計算されその結果が
表示される。
【0067】d=mn×z/cosβ(mm) なお、金型用の基準ピッチ円直径d′は、収縮率を含む
モジュールmn′を使用して以下の計算結果が表示され
る。
【0068】d′=mn′×z/cosβ(mm)。
【0069】(2.8)歯先円直径daの入力 理論値は、 da=d/cosβ+2(hac+Xn)mn(mm) であり、この式によって自動的に演算されるが、任意に
設定して入力することもできる。製品諸元の歯先円直径
da″は(2.9)の公差を考慮して下記の計算式によ
り計算され、その結果が表示される。 da″=d/cosβ−2(hac+Xn)mn-{(δa1-δa2)/2}(mm) また、金型諸元の歯先円直径da′は製品諸元の歯先円
直径da″に収縮率を考慮して、下記の計算式によって
計算され、その結果が出力される。 da′=da″×1000/(1000−S)(mm) なお、製品諸元の歯先円直径da″および金型諸元の歯
先円直径da′は任意に変更可能である。
【0070】(2.9)歯先円直径の公差の入力 公差の上限δa1(mm)、公差の下限δa2(mm)を入
力する。なお、金型用の歯先円直径da′にも上記公差
が適用される。
【0071】(2.10)歯底円直径のdfの入力 理論値は、 df=d/cosβ−2(hfc−Xn)mn(mm) であり、この式によって自動的に演算されるが、任意に
設定して入力することもできる。製品諸元の歯先円直径
df″は、(2.11)の公差を考慮して下記の計算式
により計算され、その結果が表示される。 df″=d/cosβ−2(hfc+Xn)mn-{(δf1-δf2)/2}(mm) また、金型諸元の歯先円直径df′は製品諸元の歯先円
直径df″に収縮率を考慮して、下記の計算式によって
計算され、その結果が出力される。 df′=df″×1000/(1000−S)(mm) なお、製品諸元の歯先円直径df′および金型諸元の歯
先円直径df′は任意に変更可能である。
【0072】(2.11)歯底円直径の公差の入力 公差の上限δf1(mm)、公差の下限δf2(mm)を入
力する。なお、この公差は製品諸元の歯底円直径に反映
される。
【0073】(2.12)基礎円直径の計算 理論値は、 db=d×cosαn/cosβ(mm) であり、この式によって自動的に演算される。なお金型
諸元の基礎円直径db′は、収縮率を含むモジュールm
n′を使用して以下の計算式による計算結果が出力され
る。 db′=mn′×cosαn/cosβ(mm)。
【0074】(2.13)歯先R(Ra)の入力 標準値である、Ra=0.2(mm)が設定される。な
お、歯先Rは任意に変更することができる。また、金型
諸元の歯先R(Ra′)は、製品図面(製品諸元も同
じ)の歯先Rに収縮率を考慮して、下記の計算式によっ
て計算され、その結果が出力される。 Ra′=Ra×1000/(1000−S)(mm) (2.14)歯元R(Rf)の入力 上記(3)の任意歯形を選択したときのみ設定すること
ができ、標準値であるRf=0.3mn(mm)が設定
される。なお歯元Rは、任意に変更可能である。また、
金型諸元の歯元R(Rf′)は、製品図面(製品諸元も
同じ)の歯先Rに収縮率を考慮して下記の計算式によっ
て計算され、その結果が出力される。 Rf′=Rf×1000/(1000−S) 上記(3)で理論歯形を選択したときは、歯元部は創成
歯形となり、歯元Rを設定する必要がないので設定する
ことができないようにしてある。
【0075】(2.15)円弧歯厚減少量fsの入力 円弧歯厚減少量fs(mm)を自動的に決定するために
下記の操作を行う。
【0076】(2.15.1)製品図面の入力で、歯厚
減少量の基準となる項目を下記〜から選択し、
(2.16)の公差が〜の内のどの公差を表示させ
るかを決定させる。また、〜の各項目の理論値が下
記計算式によって計算され、計算結果が出力される。 弦歯厚・・・・・・・Sj(mm) またぎ歯厚・・・・・Sm(mm) オーバーピン寸法・・dm(mm) 円弧歯厚減少量fs(mm)を任意に設定して入力する
こともできる。そのときは、〜の各項目の理論値の
表示はfsを含んだ表示となる。
【0077】(2.15.2)製品諸元では、上記〜
で選択された項目が、(2.16)に示す公差の中心
値となるように計算され、その計算結果により、円弧歯
厚減少量fs″(mm)が決定される。上記〜の
内、決定されなかった項目については、決定された円弧
歯厚減少量fs″(mm)に基づいて計算され、計算結
果が出力される。
【0078】(2.15.3)金型諸元では、(2.1
5.2)の製品諸元で決定された値に収縮率を考慮した
計算式によって、上記円弧歯厚減少量fs″(mm)、
および〜の各項目について計算され出力される。
【0079】(2.16)歯厚公差の入力 公差の上限δs1(mm)、公差の下限δs2(mm)を、
(4)の歯車精度等級の入力で設定された等級に照らし
合わせ、歯車等級のバックラッシ公差の1/2を円弧歯
車減少量とし、(2.15)の〜で設定された項目
の公差となるように計算され、計算結果が出力される。
なお、公差の上限δs1(mm)、同下限δs2(m
m)は任意に設定することもできる。
【0080】そして、本発明において、上記Iの初期設
定の(3)歯底形状の(3.1)理論歯形を選択下場合
は、所定の諸元を有する歯車7と、基準ラック工具8と
の噛合シミュレーションが歯車演算部52内で実行され
る。このシミュレーションの結果、歯車7の基準ラック
工具8の歯元隅部に設定された複数点が、歯車の歯底付
近に軌跡として描く複数のトロコイド曲線の包絡線から
なるスミ肉歯形部74の歯元曲線と、基礎円より外側の
インボリュート曲線とが干渉し合う場合に、相手歯車と
正しく噛合することができるように、準トロコイド曲線
H(図4)によるスミ肉歯形を有するようにする。この
ようにインボリュート曲線までスミ肉歯形部74が影響
を及ぼすことをアンダーカットという。
【0081】つぎに、図4および図5を基に、歯車7の
歯形の計算について説明する。歯車7と基準ラック工具
8とが噛合し、基準ラック工具8が転がった状態では
(実際は基準ラック工具8が水平移動で歯車7が基準ラ
ック工具8に噛合しながら転がるが、計算の都合上逆に
している)、基準ラック工具8のラック歯81歯先の隅
部の一点は、歯車7の基礎円71より内側のスミ肉歯形
部74においてトロコイド曲線Tを描く。
【0082】図4において、線分EE′を基準ラック工
具8のデータム線とすれば、初期状態で基準ラック工具
8のデータム線EE′と、歯車7のピッチ円72との接
点である点C(上記ピッチ点71aと同じ点)において
歯車7と基準ラック工具8とが互いに当接した状態にな
っている。以後上記点Cをxy座標の原点として、ラッ
ク歯81の歯先隅部の一点Aのxy座標の変化を説明す
る。なお、点Cに対する点Aのx方向の変位を変位Pで
表し、y方向の変位を変位Qで表すことにする。
【0083】上記基準ラック工具8が、歯車7の周りに
角度φだけピッチ円72上を転がり、点Aが点Bに移動
したとする。このとき、点Cと歯車7の中心Oとを結ぶ
線COと、点Bと中心Oとを結ぶ線BOとによって形成
される角を角度δ、ピッチ円72の直径をd、線BOの
長さの2倍をdxとする。
【0084】III.歯形の計算 ここでいう歯形の計算とは、歯車の輪郭線上に所定の微
小間隔で設定される複数の点の平面座標値(xy座標
値)を求めることである。
【0085】(1)基本数値の設定 上記入力されまたは演算された歯車緒元の内、歯車の計
算を行うための基本的な項目は以下の通りである。
【0086】 (1.1)歯直角モジュール mn(mm) (1.2)歯数 z (1.3)歯直角圧力角 αn(度) (1.4)ねじれ角 β (度) (1.5)歯直角転位係数 Xn (1.6)歯底円直径 df(mm) (1.7)基準ラック歯厚 Sh(mm) (1.8)基準ラック歯元たけ hfc(mm) (1.9)基準ラック歯元R hrc(mm)。
【0087】(2)トロコイド曲線の計算 δ=φ−γ ………………………………………(1) φ=(1/d)×(√(dx2(d-2Q)2)+2P)……………(2) γ=arccos((d-2Q)/dx) …………………………(3)。
【0088】上記(1)〜(3)式が、基準ラック工具8の転
がりによって歯車7の歯底部74に形成されるトロコイ
ド曲線Tの基本式である。すなわち、上記(1)〜(3)式を
解くことによって、歯車の輪郭線上の1点のx座標Pお
よびy座標Qは、従属変数であるδ、γ、d、dxの関
数として表現することができ、逐一微小区分ごとに独立
変数の値を代入することによって基準ラック工具8の転
動による軌跡が歯車7の点Cを基準としてx座標および
y座標上にプロット可能になる。
【0089】以下、制御装置4の歯車演算部52内で演
算される歯車7および基準ラック工具8の歯元曲線の緒
元の計算式を記載する。
【0090】(2.1)歯車7の歯のインボリュート曲
線Iの正面圧力角(αt(度)) αt=arctan(tanαn/cosβ)…………………(4)。
【0091】 (2.2)ピッチ円72の直径(d(mm)) d=mn×z/cosβ………………………………(5)。
【0092】 (2.3)基礎円71の直径(db(mm)) db=d×cosαt…………………………………(6)。
【0093】(2.4)歯車7の基礎円71上の円弧歯
厚(Sb(mm)) Sb=(db/2)×{(1/z)×(π+4Xn×tanαn)+2invαn}………(7) ただし、invαn=tanαn−αn(rad)………(8)。
【0094】(2.5)歯車7のピッチ円72上の歯直
角歯厚(Sn(mm)) Sn={Sb/cosαt−d×invαt}×cosβ………(9)。
【0095】(2.6)歯車7のピッチ円72直径上の
歯溝の歯厚(Sl(mm)) Sl=mn×π−Sn……………………………(10)。
【0096】(2.7)基準ラック工具8の歯元のたけ
と噛合ピッチ線との位相差(io(mm)) io=(Sh−Sl)/(2tanαn) ………(11) ただし、Sh:基準ラック工具8の歯厚(mm)。
【0097】(2.8)基準ラック工具8の噛合ピッチ
線83を基準にした歯元の図5に示す各所のたけ(m
m) ho=hfc−io………………………………(12) bo=r×tan{(90−αn)/2 …………(13) ro=bo×cosαn ……………………………(14) al=ho×tanαn+bo ……………………(15)。
【0098】 (2.9)座標計算の繰り返し数(Q0(回)) Q0={(d−df)/f}+1 ……………(16)。
【0099】(2.10)座標計算点を通る円の直径
(dx(mm)) dx=d−(Q−1)×f………………………(17) ただし、Q=1,2,3・・・・・・Q0を順次代入し
てそれぞれのdxを計算する。
【0100】 (2.11)計算直径dxのねじれ角(βt(度)) βt=arctan((dx×tanβ)/d)………(18)。
【0101】 (2.12)計算直径dxの圧力角(αi(度)) αi=arccos(db/dx) ………………(19)。
【0102】(2.13)基準ラック工具8創成後のイ
ンボリュート座標点(図4における点B)と歯車7の中
心Oとを結ぶ直線と、トロコイド曲線T計算のためのx
y座標の原点(図4における点C)と歯車7の中心Oと
を結ぶ直線とによって形成される角(δi(度)) δi=invαt+invαi…………………………(20)。
【0103】上記(17)式を用いてQの値を1mmから順
次Q0mmまで変化させ、それぞれのQの値に対応した
dxの値を計算すれば、このようにして得られたdxの
値とQの値の複数の組(dxi,Qi)は、図4に示す
ように点Oを原点としたxy座標平面上の位置を表現し
ており、基準ラック工具8が歯車7に噛合して転動した
ときの点Aの軌跡上、すなわちにトロコイド曲線T上に
存在するのである。従って、上記複数の組(dxi,Q
i)によって設定された複数の点を結んで得られる曲線
に沿うように歯底部74を形成させれば、歯車7と基準
ラック工具8とが噛合しながら歯車7が中心O周りに回
動しても、基準ラック工具8の歯先の隅部の一点(点
A)と歯車7の歯底部74の壁面とが相互に干渉し合う
ことはない。
【0104】(2.14)ところで、実際の基準ラック
工具8においては、図6に示すように、ラック歯81の
隅部84は、開始点Reから終了点Rsの範囲内で所定
半径rの円弧状に形成されているため、上記図4に示す
点Aをどこに設定するかで点Aの軌跡として得られるト
ロコイド曲線Tの曲線形状が変わってくる。このこと
は、上記(17)式によって隅部84内の一点である点Aの
軌跡としてのトロコイド曲線Tによって歯底部74の歯
元曲線を設定したとしても、隅部84内の他の部分が歯
底部74の壁面に干渉することがあることを示してい
る。
【0105】従って、ラック歯81と歯車7の歯底部7
4とが全く干渉し合わないようにするためには、ラック
歯81の隅部84のすべての部分が歯底部74の内壁面
に干渉しないようにしなければならない。
【0106】そこで本発明においては、図6に示すよう
に、ラック歯81の隅部84の開始点Reと終了点Rs
との間を微小な等間隔で複数に分割する点Riを設定
し、各点Riについてトロコイド曲線を計算し、図7に
示すように、すべてのトロコイド曲線に接する曲線であ
るいわゆる包絡線によって歯車7の歯底部74の歯元曲
線を形成させている。
【0107】以下、上記包絡線を適用するということを
含めて上記(20)式以降の計算式を記述する。 (2.15)図4の中心Oを原点としたxy座標におけ
る歯元点(ラック歯81の点Riと歯車7の歯底部74
とが接している点)のx方向の距離(P(mm)) P={al−√(r2-(r-y)2)}/cosβ…………(21) ただし、yはラック歯81の隅部84の点Riから隅部
の円弧の中心までの垂直方向の距離(mm)であり、r
はラック歯81の隅部84の円弧の半径(mm)であ
る。
【0108】(2.16)トロコイド座標点の中心に含
む角度(δt(度)) δt={√(dz2−dq2+2P)}/d−ax…(22)
【0109】(2.17)図4の中心Oを原点としたx
y座標における座標位置(Xt,Yt(mm)) Xt=dx×sinδt×cos(βt)……………(25) Yt=((d−dx)×cosδt)/2 ……………(26)。
【0110】(2.18)図4の中心Oを原点としたx
y座標における座標位置(Xi(mm),Yi(m
m)) Xt=(dx×sinδi×cosβi)/2………(27) Yt=((d−dx)×cosδi)/2 ……………(28)。
【0111】上記(25)式および(26)式が、歯車7の中心
Oを原点としたxy座標において歯車7の歯底部74に
形成されたトロコイド曲線Tを表現する計算式であり、
これらの式に微小間隔毎の複数のdx、d、δtおよび
βtの値を代入することによって、それらに対応した複
数の点の位置(Xt,Yt)が計算される。これらの複
数の点を曲線で結ぶことによって歯車7の歯底部74に
トロコイド曲線Tが具体的に得られる。
【0112】また、上記(27)式および(28)式が、歯車7
の中心Oを原点としたxy座標において、歯車7の基礎
円71よりも外方に形成された歯70の輪郭に適用され
るインボリュート曲線Iを表現する計算式であり、これ
らの式に微小間隔毎の複数のdx、δiおよびβiの値
を代入することによって、それらに対応した複数の点の
位置(Xt,Yt)が計算される。これらの複数の点を
線で結ぶことによって歯車7の基礎円71より外方に形
成されるインボリュート曲線Iが具体的に得られる。
【0113】図8は、上記(25)式〜(28)式によって計算
されたトロコイド曲線Tおよびインボリュート曲線Iの
相対位置関係の一例を示す説明図である。通常、基礎円
71上におけるトロコイド座標点(Xt,Yt)とイン
ボリュート座標点(Xi,Yi)とは一致しない。
【0114】特に、 Xt<Xi………………………………(29) のときには、歯70の基礎円71部分が歯底部74に対
してオーバーハング状に対向しており、この部分が、歯
車7と基準ラック工具8との噛合転動時に基準ラック工
具8のラック歯81と干渉するため、このような状態を
回避しなければならない。
【0115】このような不都合を回避するために二つの
方法が適用可能である。まず第一の方法は、歯車7の緒
元の初期設定値の変更を行うものである。この方法にお
いては、上記図9に示すステップS7においてYESを
選択し、再度ステップS2において歯車緒元の初期値の
設定変更を行い、このような操作を繰り返すトライアン
ドエラーによって最適の初期設定値を見つけ出すように
するのである。
【0116】また、第二の方法は、上記のようなトライ
アンドエラーを行わずに、歯車7の基礎円71の外側の
部分にもトロコイド曲線Tを形成させるようにするもの
である。こうすることによってラック歯81の歯先と歯
車7の歯70との干渉を回避することができる。このよ
うに歯車7の基礎円71の外側の部分にもトロコイド曲
線Tを形成させることをアンダーカットという。
【0117】なお、上記(25)式および(26)式は、図6の
ラック歯81の隅部84の1点Riが描く軌跡の計算式
であるが、実際には点Re〜点Rsまでの間の微小ピッ
チで設定された複数点についてそれぞれ(25)式および(2
6)式に基づいた座標計算が実行され、各トロコイド曲線
Tの包絡線である準トロコイド曲線に基づいた座標が計
算され、この計算結果に基づいて上記(29)式の条件が判
断される。
【0118】図9は、マイクロコンピュータ5の歯車演
算部52内で実行される上記シミュレーションのフロー
を示すフローチャートであり、図10は、このフローチ
ャートのサブルーチンのフローチャートである。以下こ
れらのフローチャートに基づいてマイクロコンピュータ
5内で実行される演算処理のフローを説明する。まず図
9に示すフローのステップS1においては、基準ラック
に関する上記初期値が設定され、入出力装置51を介し
て歯車演算部52内に入力される。つぎに、ステップS
2において歯車7に関する緒元、すなわち上記初期値が
設定され、上記入出力装置51を介して歯車演算部52
内に入力される。
【0119】そしてステップS3において歯車演算部5
2内で所定の歯形演算が実行される。この歯形演算は、
図10に示すサブルーチンにブランチして行われる。以
下このサブルーチン内でのフローについて説明する。ま
ず、ステップS10においては、上記(1)式〜(28)式を
用いて歯車7のスミ肉歯形部74を対象としたインボリ
ュート曲線に沿う座標計算が行われる。そして得られた
歯車7と基準ラック工具8との噛合シミュレーションが
実行され、歯車7のスミ肉歯形部74にトロコイド曲線
を適用しない状態でラック歯81の歯先が歯車7に干渉
するか否かがステップS11において判別される。
【0120】そして、ステップS11でNOの場合、す
なわち上記干渉が起こらないと判別された場合には、ス
テップS12が実行され、従来の手法によって、基礎円
71から径方向に中心に向かって直線的にスミ肉歯形部
が形成される、いわゆるリニアカットの座標計算が行わ
れる。
【0121】ステップS11において「干渉有り」がY
ESの場合には、ステップS13が実行され、上記リニ
アカットは行われず、その代りに歯車7のスミ肉歯形部
74にトロコイド曲線が適用され、それに沿った座標計
算が実行され、メインフローのステップS4に戻され
る。
【0122】なお、本実施例においては、このステップ
S11における判別の結果行われるステップS12のリ
ニアカットの座標計算は引き続き自動的に実行され、そ
の後演算処理が終了するように設定されているが、この
ような自動演算処理に限定されるものではなく、ステッ
プS11における判別が行われた後に、判別結果に拘ら
ず人的な判断でステップS12を実行するか、ステップ
S13を実行するかを選択可能に構成してもよい。
【0123】ステップS4においては、ステップS3の
演算結果の出力選択が問われる。具体的には入出力装置
51の図略のモニターディスプレィに歯形の作図をアウ
トプット(ステップS5)するのか、あるいは歯形の座
標値(ステップS6)をアウトプットするのかの選択枝
が示されるようになっており、所望の選択枝を選択(入
力)することによってステップS5およびステップS6
のいずれかが実行されるようになっている。
【0124】そして、ステップS5を選択すると、歯車
7および基準ラック工具8の歯形がディスプレーに映し
出されるとともに、図略のプロッターによって自動的に
作図されるようになっている。また、ステップS6を選
択すると、歯車7および基準ラック工具8の基準点に対
する二次元平面上の歯形座標値が図略のプリンターから
プリントアウトされるようになっている。この歯形座標
値のデータは、後に所定のゲインが乗ぜられた状態で、
とりもなおさず駆動制御出力部42からワイヤ放電加工
装置2の駆動手段21に向けて出力される駆動制御信号
となるものである。
【0125】次のステップS7においては、上記サブル
ーチンの演算結果を基に、「リニアカット」を行うのか
否かが判別される。YESの場合はそのまま演算は終了
になる。NOの場合は、つぎのステップS8が実行さ
れ、Xt<Xiであるか否かが判別される。
【0126】この判別について以下補足説明を行う。す
なわち先のステップS10において、上記(1)式〜(28)
式を用いて歯車7の基礎円71外方のインボリュート曲
線Iの座標計算が行われ、引き続きステップS11を介
して歯車7のスミ肉歯形部74を対象としたトロコイド
曲線の座標計算が行われる。なお、上記ステップS13
においては、図6に示すラック歯81の隅部84の複数
の点Riのすべてについてトロコイド曲線Tを計算し、
その包絡線からなる準トロコイド曲線の座標計算を行う
ようにしてもよい。そして、ステップS13において、
基礎円71とトロコイド曲線Tとの交点のx座標の値
(Xt)と、基礎円71とインボリュート曲線Iとの交
点のx座標の値(Xi)とが計算されているのである。
【0127】そして、メインフローのステップS8にお
いて、Xt<Xiであるか否かが判別され、この判別結
果がYESのとき、すなわち基礎円71上において歯7
0の根本部分がスミ肉歯形部74に覆いかぶさっている
ときは、ステップS2に戻されて緒元の初期数値の設定
変更が行われる。
【0128】NOのときはステップS9が実行され、上
記x座標の値(Xt)と(Xi)とが等しいか否かが判
別される。そして両者が等しいYESのときには演算は
終了され、NOのときにはステップS8に戻されて緒元
の再設定が行われる。
【0129】本発明の歯車の金型製造方法および製造装
置は、以上詳述したように、従来公知のワイヤ放電加工
装置2を適用し、このワイヤ放電加工装置2のワイヤの
運動を制御装置4の制御の基に適切に制御することによ
って、歯車の歯形の形成に関し、歯車のスミ肉歯形部分
について、相手歯車として選択した歯車径が無限大の基
準ラック工具との噛合において、スミ肉歯形部分が基準
ラック工具の歯先と相互に干渉しないトロコイド曲線に
沿うように歯元曲線が形成されているため、上記基準ラ
ック工具より全歯たけおよび歯厚が小さければどのよう
な歯車にもスミ肉歯形部分が相手歯車の歯先に干渉され
ることなく噛合することが可能になる。
【0130】そして、このような金型を用いて大量生産
された歯車は、上記のように相手歯車との間でスミ肉歯
形部分における相互の干渉が全く発生せず、従来の合成
樹脂製の歯車の常識を超越して、噛合状態が極めて良好
になり、合成樹脂製の歯車が、金属製の歯車の一時的な
代替品であるという一般常識を覆し、充分に金属製の歯
車に代替し得るとともに、金属製の歯車には欠如してい
た製造の容易性や注油が不要であり、かつ注油を要さな
い等のメンテナンスの容易性により、今後の各種機械装
置の動力伝達手段としての用途が拡大されるものであ
る。
【0131】また、スミ肉歯形部分は、単に基準ラック
工具の歯先の一点を対象にしたトロコイド曲線に沿って
形成されているのではなく、複数点を対象にしたトロコ
イド曲線によって形成される包絡線からなるいわゆる準
トロコイド曲線に沿うように形成されているため、必要
以上にスミ肉歯形部を削り取ることなく肉厚を厚くする
ことができ、強度的に有利であり、かつ、相手歯車の歯
先と干渉することがない。
【0132】
【発明の効果】本発明の請求項1および2に記載の合成
樹脂製歯車の金型製造方法および製造装置によれば、製
造された金型には、そのキャビティに歯車の基礎円の外
側にインボリュート曲線に沿う歯形が形成されるととも
に、同内側に基準ラック工具の歯先隅部によるトロコイ
ド曲線の包絡線からなる歯元曲線が形成され、特に基礎
円の外側で上記インボリュート曲線と、上記包絡線とが
互いに干渉するときは、包絡線が優先されるようになっ
ているため、このような金型を用いて合成樹脂製の歯車
を製造すれば、得られた歯車は、一般に基準ラック工具
よりも歯先の干渉が緩やかな相手歯車に噛合った状態で
の相手歯車の歯先の干渉を回避することができる。
【0133】本発明の請求項3および4に記載の合成樹
脂製歯車金型の歯形設計方法および設計装置によれば、
入力された歯車の諸言データから上記歯車の基礎円の内
側で基準ラック工具の歯先が上記歯車の壁面と干渉する
かどうかが判別され、上記干渉が生じないときは、基礎
円から歯車中心に向けた直線状の歯元線が設計され、上
記干渉が生じるときは、基準ラック工具との相対噛合転
動によって干渉しないように基準ラック工具の歯先隅部
の複数点が描く複数のトロコイド曲線の包絡線に沿うよ
うに設計され、得られた金型によって製造された歯車
は、一般に基準ラック工具よりも歯先の干渉が緩やかな
相手歯車に噛合っても相手歯車の歯先の干渉を回避する
ことができる。そして、基礎円の外側で上記インボリュ
ート曲線と、上記包絡線とが互いに干渉するときは、包
絡線が優先されるため、得られた金型によって製造され
た歯車にはいわゆるアンダーカットが施された状態にな
っており、相手歯車の歯先の干渉を確実に阻止すること
ができる。
【0134】また、判別手段による判別結果により、干
渉を生じないときは上記第1の演算手段を採用し、干渉
を生じるときは上記第2の演算手段を採用する切換手段
とを有しているため、判別手段の判別結果に基づいた上
記切換手段による演算手段の選択によって、的確に歯元
曲線を設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る金型製造装置の一例を示す説明図
である。
【図2】電極ワイヤによって被加工物を加工している状
態を例示する斜視図である。
【図3】図2に示す被加工物が加工されて得られた金型
を例示する斜視図である。
【図4】歯車に適用されたインボリュート曲線およびト
ロコイド曲線を説明するための歯車の部分輪郭図であ
る。
【図5】歯車に噛合される基準ラック工具を示す輪郭図
である。チャートである。
【図6】基準ラック工具の歯先隅部を示す輪郭図であ
る。
【図7】多数のトロコイド曲線の包絡線を説明するため
の輪郭図である。
【図8】基礎円とトロコイド曲線との交点と、基礎円と
インボリュート曲線との交点とが一致していない状態を
示す説明図である。
【図9】制御装置の演算部内におけるシミュレーション
演算のフローを示すフローチャートである。
【図10】制御装置の演算部内におけるスミ肉歯形部分
の歯元曲線演算のフローを示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 金型製造装置 2 ワイヤ放電加工装置 21 駆動手段 21a ベース部 21b ネジ軸 22 架台 23 テーブル 24 電極部 24a 供給ボビン 24b ピンチローラ 24c 巻上ローラ 25 電極ワイヤ 26 加工液供給手段 26a 清浄液槽 26b 使用済液槽 26c 第一ポンプ 26d 第二ポンプ 27 加工液導出管 27a ノズル 28 連絡管 29 加工液回収管 3 電源装置 4 制御装置 41 入力部 42 駆動制御出力部 43 パルス指令部 5 マイクロコンピュータ 51 入出力装置 52 歯車演算部 52a スミ肉歯形歯元曲線演算部52a 6 金型原料(被加工物) 60 金型 7 歯車 71 基礎円 72 ピッチ円 73 突設 74 スミ肉歯形部 8 基準ラック工具 81 ラック歯 82 噛合点 83 噛合ピッチ線 84 隅部 I インボリュート曲線 T トロコイド曲線
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−245576(JP,A) 特開 平5−307409(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B23H 9/00 B29C 33/38 B29D 15/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 歯車の諸元データを受けて、高電圧が印
    加された緊張状態のワイヤ電極を被加工物に対し上記輪
    郭線に沿うように相対移動することによりこの被加工物
    に歯車のキャビティーを形成する合成樹脂製歯車の金型
    製造方法において、上記歯車の基礎円の外側ではインボ
    リュート曲線を輪郭線のデータとして用い、この歯車と
    基準ラック工具との相対噛合転動によって上記基準ラッ
    ク工具の歯先隅部に設定された複数点が歯車の歯底付近
    に軌跡として描く複数のトロコイド曲線の包絡線からな
    る歯元曲線を上記歯車の基礎円の内側での輪郭線のデー
    タとして用いるようにし、基礎円の外側で上記インボリ
    ュート曲線と、上記包絡線とが互いに干渉するか否かを
    判別し、干渉するときは、輪郭線のデータとして包絡線
    を優先させるようにしたことを特徴とする合成樹脂製歯
    車の金型製造方法。
  2. 【請求項2】 歯車諸元データを受けて、高電圧が印
    加された緊張状態のワイヤ電極を被加工物に対し輪郭線
    に沿うように相対移動することによりこの被加工物に歯
    車のキャビティーを形成するワイヤ放電加工手段とを有
    する合成樹脂製歯車の金型製造装置において、入力され
    た歯車の諸言データに基づいて輪郭線のデータを演算す
    るものであって、上記輪郭線のデータとして、歯車の基
    礎円の外側に対してはインボリュート曲線を、その他の
    部分ではこの歯車と基準ラック工具との相対噛合転動に
    よって上記基準ラック工具の歯先隅部に設定された複数
    点が歯車の歯底付近に軌跡として描く複数のトロコイド
    曲線の包絡線からなる歯元曲線を算出する演算手段と
    基礎円の外側で上記インボリュート曲線と上記包絡線と
    が互いに干渉するか否かを判別する判別手段と、この判
    別手段が干渉すると判別したときは、輪郭線のデータと
    して包絡線優先さ優先手段とを有していることを
    特徴とする合成樹脂製歯車の金型製造装置。
  3. 【請求項3】 入力された歯車の諸言データから上記歯
    車の基礎円の内側で基準ラック工具の歯先が歯車のイン
    ボリュート曲線と干渉するか否かを判別し、上記干渉が
    生じないときは、輪郭線のデータを、上記歯車の基礎円
    の外側に対してはインボリュート曲線より求め、上記歯
    車の基礎円の内側に対しては基礎円から歯車中心に向け
    た直線と歯底円とから求め、上記干渉が生じるときは、
    輪郭線のデータを、上記歯車の基礎円の外側に対しては
    インボリュート曲線により求め、上記歯車の基礎円の内
    側に対してはこの歯車と基準ラック工具との相対噛合転
    動によって上記基準ラック工具の歯先隅部に設定された
    複数点が歯車の歯底付近に軌跡として描く複数のトロコ
    イド曲線の包絡線として求めるようにし、上記基礎円の
    外側で上記インボリュート曲線と、上記包絡線とが互い
    に干渉するか否かを判別し、干渉するときは、包絡線を
    優先させるようにしたことを特徴とする合成樹脂製歯車
    金型の歯形設計方法。
  4. 【請求項4】 歯車の輪郭線のデータを演算に必要な諸
    言データを入力するデータ入力手段と、歯車の輪郭線の
    データを、上記歯車の基礎円の外側に対してはインボリ
    ュート曲線より求めるとともに、上記歯車の基礎円の内
    側に対しては基礎円から歯車中心に向けた直線と歯底円
    とから求める第1の演算手段と、歯車の輪郭線のデータ
    を、上記歯車の基礎円の外側に対してはインボリュート
    曲線により求めるとともに、上記歯車の基礎円の内側に
    対してはこの歯車と基準ラック工具との相対噛合転動に
    よって上記基準ラック工具の歯先隅部に設定された複数
    点が歯車の歯底付近に軌跡として描く複数のトロコイド
    曲線の包絡線として求める第2の演算手段と、上記第1
    の演算手段と上記第2の演算手段のいずれを実行させる
    かを決定する決定手段とを備えてなり、上記決定手段
    は、データ入力手段により入力された諸言データから上
    記歯車の基礎円の内側で上記基準ラック工具の歯先が上
    記歯車のインボリュート曲線と干渉するか否かを判別す
    る判別手段と、上記判別手段による判別結果により、干
    渉を生じないときは上記第1の演算手段を採用し、干渉
    を生じるときは上記第2の演算手段を採用する切換手段
    とを有してなることを特徴とする合成樹脂製歯車金型の
    歯形設計装置。
JP16146794A 1994-07-13 1994-07-13 合成樹脂製歯車の金型製造方法および製造装置ならびに合成樹脂製歯車金型の歯形設計方法および設計装置 Expired - Fee Related JP2968175B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP16146794A JP2968175B2 (ja) 1994-07-13 1994-07-13 合成樹脂製歯車の金型製造方法および製造装置ならびに合成樹脂製歯車金型の歯形設計方法および設計装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP16146794A JP2968175B2 (ja) 1994-07-13 1994-07-13 合成樹脂製歯車の金型製造方法および製造装置ならびに合成樹脂製歯車金型の歯形設計方法および設計装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH0825500A JPH0825500A (ja) 1996-01-30
JP2968175B2 true JP2968175B2 (ja) 1999-10-25

Family

ID=15735658

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP16146794A Expired - Fee Related JP2968175B2 (ja) 1994-07-13 1994-07-13 合成樹脂製歯車の金型製造方法および製造装置ならびに合成樹脂製歯車金型の歯形設計方法および設計装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2968175B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5282931B2 (ja) * 2007-12-04 2013-09-04 アイシン精機株式会社 ウォームホイールギヤ成形用の金型製造方法及びウォームホイールギヤ成形用の金型
JP2009160960A (ja) * 2007-12-28 2009-07-23 Nsk Ltd ラック・アンド・ピニオン式ステアリング装置
KR101117953B1 (ko) * 2010-05-14 2012-02-15 인성 엔프라 주식회사 정밀기어 제조용 금형제작방법
CN102059418B (zh) * 2010-11-22 2012-05-02 重庆理工大学 一种圆柱齿轮全闭环数控加工系统及加工方法
JP6746940B2 (ja) * 2016-02-16 2020-08-26 株式会社ジェイテクト 歯車の歯形のシミュレーション装置及び方法並びに加工用工具の刃面のシミュレーション装置及び方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH0825500A (ja) 1996-01-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CA1284868C (en) Method and apparatus for producing parts by selective sintering
KR930703112A (ko) 베벨기어 및 하이포이드기어의 창성방법
EP1163064B8 (en) Method for roll forming gears
JP2968175B2 (ja) 合成樹脂製歯車の金型製造方法および製造装置ならびに合成樹脂製歯車金型の歯形設計方法および設計装置
CN108607917B (zh) 等径螺旋轨迹驱动的板料非连续接触渐进成形方法及制品
JP5917046B2 (ja) 工作機械において加工品をフライス加工することにより、平歯車の歯集合体のうちの歯を形成するための制御データを発生する方法および装置
KR930002407B1 (ko) 나사 표면을 양호하게 마무리하기 위한 수치 제어에 의한 나사 절삭 방법
JPH02199509A (ja) インボリュート補間速度制御方式
EP1219372B1 (en) Abrasive generation of non-metallic gear
US4644124A (en) Wire electrode type electrical discharge machining method
EP0184036B1 (de) Numerische Steuerung für Werkzeugmaschinen
CN106735601B (zh) 一种非圆齿轮连续展成滚齿的加工方法
CN106624190B (zh) 一种非圆齿轮连续展成插齿的加工方法
US4367391A (en) Method for pattern controlled electrode movement for E.D.M.
CN105904036B (zh) 一种提高电子螺旋导轨插削斜齿轮精度的方法
US4697059A (en) Apparatus for pattern controlled electrode movement for E.D.M.
JPH0122092B2 (ja)
JPH0866828A (ja) ロジックスギヤ創成用ホブカッタ
US3904944A (en) Machine tool control
JPH0710480B2 (ja) 面加工方法
Mamidi Manufacturing an involute spline cutting tool on wire EDM using SolidWorks and ESPRIT
CN111915975A (zh) 基于ug nx的新型齿轮范成加工虚拟样机的设计方法
US4527036A (en) Method for pattern controlled electrode movement for E.D.M.
JPS6154528B2 (ja)
KR920009881B1 (ko) Nc를 이용한 코일스프링 포밍머신

Legal Events

Date Code Title Description
R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Year of fee payment: 9

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080820

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080820

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Year of fee payment: 10

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090820

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees