JP2967238B2 - 半導体レーザ及び該半導体レーザを用いた光ディスク装置 - Google Patents

半導体レーザ及び該半導体レーザを用いた光ディスク装置

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JP2967238B2
JP2967238B2 JP8532365A JP53236596A JP2967238B2 JP 2967238 B2 JP2967238 B2 JP 2967238B2 JP 8532365 A JP8532365 A JP 8532365A JP 53236596 A JP53236596 A JP 53236596A JP 2967238 B2 JP2967238 B2 JP 2967238B2
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勲 木戸口
秀人 足立
智 上山
雄 上野山
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Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明は、光ディスクシステムの光源などに用いられ
る低雑音自励発振型半導体レーザ、及び半導体レーザを
用いた光ディスク装置に関する。
背景技術 近年、光通信、レーザプリンタ、光ディスクなどの分
野で、半導体レーザ(レーザダイオード)の需要が高ま
り、GaAs系およびInP系半導体レーザ素子を中心とし
て、種々の半導体レーザ素子の研究開発が活発に進めら
れてきた。光情報処理分野においては、特に発振波長
(lasing wavelength)が780nmのAlGaAs系半導体レーザ
(780nm−Band AlGaAs Laser Diodes)を光源に用いて
情報の記録・再生を行うシステムが実用化されており、
コンパクトディスクの記録・再生システムとして広く普
及するに至っている。
しかし、最近、これらの光ディスクの記憶容量の増加
が強く求められるようになり、それに伴い、より短波長
のレーザ光を放射できる半導体レーザ素子が必要になっ
てきた。
AlGaInP系半導体レーザ素子によれば、630〜690nm
(赤色領域)でのレーザ発振が可能である。なお、本願
明細書において、「AlGaInP」は、(AlxGa1-x)0.5In0.5P
(0≦x≦1)を簡略的に表現したものである。この半
導体レーザ素子は、現在、実用レベルにある種々の半導
体レーザ素子の中で最も短い波長のレーザ光を放射する
ことができるので、従来から広く使用されていたAlGaAs
系半導体レーザに代わって、次世代の大容量光情報記録
用光源として有望である。
半導体レーザ素子の評価にとっては、レーザ光の波長
だけではなく、強度雑音(Intensity Noise)や、温度
特性が重要な要素である。特に、半導体レーザ素子が光
ディスクの再生用光源として使用される場合、強度雑音
の少ないことが極めて重要である。強度雑音は、光ディ
スクに記録されている信号の読取エラーを誘発するから
である。半導体レーザ素子の強度雑音は、素子の温度変
化によって引き起こされるだけではなく、光ディスクの
表面から反射された光の一部が半導体レーザ素子に帰還
してしまうことによっても生じる。したがって、このよ
うな反射光の帰還が生じても、強度雑音の少ない半導体
レーザ素子が光ディスクの再生用光源には不可欠とな
る。
従来、光ディスクの再生専用低出力光源としてAlGaAs
系半導体レーザ素子を用いる場合、雑音を低減するため
に素子内のリッジストライプの両側に意図的に可飽和吸
収体(saturable absorber)が形成されていた。このよ
うな構造を採用することによって、レーザ発振の縦モー
ド(Longitudinal mode)をマルチ化することができ
る。レーザが単一縦モードで発振しているときには、レ
ーザ光の素子への帰還や温度変化等の外乱が入ると、利
得ピークの微少な変化によって、それまで発振していた
縦モードに近接する他の縦モードでのレーザ発振が開始
し、元の発振モードとの間で競合(Mode competition)
を起こす。これが雑音の原因となっており、縦モードを
マルチ化すると各モードの強度変化が平均化され、しか
も外乱によって変化しないので安定な低雑音特性を得る
ことができる。
また、安定な自励発振特性を得ることのできる先行技
術が特開昭63−202083号公報に示されている。この先行
技術では、活性層で生成された光を吸収することのでき
る層を設けることによって、自励発振型半導体レーザ
(Self−Sustained Pulsating type laser diode)を実
現している。
また、特開平6−260716号公報は、活性層のバンドギ
ャップと吸収層のバンドギャップをほぼ等しくすること
によって赤色半導体レーザ素子の特性を改善したと記載
している。図14は、特開平6−260716号公報に開示され
ている従来の自励発振型の半導体レーザ素子を示す模式
断面図である。以下、図14を参照しながら、この半導体
レーザ素子を説明する。
図14において、n型のGaAsからなる基板1401上にn型
のGaInPからなるバッファ層1402、n型のAlGaInPからな
るクラッド層1403、GaInPからなる歪量子井戸活性層(s
trained quantum well active layer)1404が順次形成
される。ここでクラッド層1403中には歪量子井戸可飽和
吸収層(strained quantum well saturable absorbing
layer)1405が形成され、その上部にはリッジ状のクラ
ッド層1406とp型のGaInPからなるコンタクト層1407が
形成されている。このリッジ状のクラッド層1406および
コンタクト層1407の両側はn型のGaAs層からなる電流の
ブロック層1408によって埋め込まれている。さらにコン
タクト層1407とブロック層1408上にはp型のGaAsからな
るキャップ層1409が形成されており、キャップ層1409上
にはp型電極1410、基板1401側にはn電極1411がそれぞ
れ形成されている。
また、図15は歪量子井戸可飽和吸収層1405のエネルギ
バンド図を示しており(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pからなる
バリア層1501とGaxIn1-xP(膜厚100Å、歪+0.5〜1.0
%)からなる井戸層1502とを交互に積層してあり、本従
来例では井戸層1502が3層形成されている。ここで、歪
量子井戸活性層1404のバンドギャップと歪量子井戸可飽
和吸収層1405のそれがほぼ等しくなっている。この構成
によって良好な自励発振特性を得ようとしている。
AlGaInP系半導体の利得特性は、AlGaAs系半導体の利
得特性から大きく異なり、その結果、自励発振しにくい
ことが明らかとなった。図13は、GaInPとGaAsについ
て、利得のキャリア密度依存性を示している。GaAsおよ
びGaInPは、それぞれ、AlGaAs系半導体レーザおよびAlG
aInP系半導体レーザの活性層に主に用いられる材料であ
る。
自励発振を達成するためには、キャリア密度の増加に
対する利得の増加の割合(利得曲線の傾き)が大きいこ
とが要求される。ところが、GaInPの利得曲線の傾きはG
aAsの利得曲線の傾きよりも小さいため、相対的に自励
発振が達成されにくいことが判明した。
また、本願発明者らの実験結果によると、赤色半導体
レーザ(AlGaInP系半導体レーザ)の場合、上記の利得
特性の違いにより、従来例のように活性層と可飽和吸収
層とのバンドギャップを等しくしただけでは安定した自
励発振を得ることが困難であることがわかった。
本願発明者らの実験結果によると、赤色半導体レーザ
(AlGaInP系半導体レーザ)の場合、利得特性の違いに
より、従来例のように活性層と可飽和吸収層とのバンド
ギャップを等しくしただけでは安定した自励発振を得る
ことが困難であることがわかった。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、特に
半導体レーザを構成する可飽和吸収層やスペーサ層のド
ーピングの程度や厚さなどを最適に設定することによっ
て、安定な自励発振特性を有し、かつ、信頼性の高い半
導体レーザを提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、このような半導体レーザを用い
た光ディスク装置を提供することにある。
発明の開示 本発明の半導体レーザ装置は、活性層と、該活性層を
挟むクラッド構造とを備えた自励発振型半導体レーザ装
置であって、該クラッド構造は、1×1018cm-3以上のn
型不純物がドープされた可飽和吸収層を含んでいる。
前記可飽和吸収層と前記活性層との間隔は、200Å以
上であることが好ましい。
前記クラッド構造は、更に、前記活性層および前記可
飽和吸収層のバンドギャップよりも大きいバンドギャッ
プを持つスペーサ層を、該活性層および該可飽和吸収層
の間に有していることが好ましい。
前記スペーサ層の厚さが、200Å以上であることが好
ましい。
前記スペーサ層のうち、前記活性層に隣接する少なく
とも厚さ200Åの領域の不純物濃度は、3×1018cm-3
下であることが好ましい。
ある実施形態では、前記スペーサ層には、不純物がほ
ぼ一様にドープされており、その不純物濃度は3×1018
cm-3以下である。
ある実施形態では、前記可飽和吸収層は、前記クラッ
ド構造の該可飽和吸収層に隣接する部分における不純物
濃度よりも局所的に高い不純物濃度を有している。
前記クラッド構造は、更に、前記スペーサ層のバンド
ギャップよりも小さいバンドギャップを持つ光ガイド層
を、該活性層と該可飽和吸収層との間に有していること
が好ましい。
ある実施形態では、前記クラッド構造は、更に、光ガ
イド層を含んでおり、前記可飽和吸収層は、該光ガイド
に隣接して配置されている。
ある実施形態では、前記クラッド構造は、更に、光ガ
イド層を含んでおり、前記可飽和吸収層は、該光ガイド
内に配置されている。
ある実施形態では、前記クラッド構造は、更に、光ガ
イド層を含んでおり、前記可飽和吸収層は、該光ガイド
の近傍に配置されている。
前記活性層は量子井戸構造を有しており、前記可飽和
吸収層は量子井戸から形成されていることが好ましい。
本発明の他の自励発振型半導体レーザ装置活性層と、
該活性層を挟むクラッド構造とを備えた自励発振型半導
体レーザ装置であって、該クラッド構造は、1×1018cm
-3以上の不純物がドープされた可飽和吸収層と、該可飽
和吸収層の近傍に配置された光ガイド層とを含んでお
り、該可飽和吸収層には、量子準位が形成され、量子準
位間の遷移エネルギーが、該活性層の弱励起下での遷移
エネルギーよりも小さい。
前記量子準位間の遷移エネルギーとレーザ発振波長が
ほぼ等しいことが好ましい。
前記不純物はn型であることが好ましい。
前記クラッド構造は、更に、前記活性層および前記可
飽和吸収層のバンドギャップよりも大きいバンドギャッ
プを持つスペーサ層を、該活性層および該可飽和吸収層
の間に有していることが好ましい。
前記スペーサ層の厚さは、200Å以上であることが好
ましい。
前記スペーサ層の不純物濃度は、3×1018cm-3以下で
あることが好ましい。
ある実施形態では、前記可飽和吸収層と前記活性層が
同一材料から形成されており、該活性層のパリア層のバ
ンドギャップが前記光ガイド層のバンドギャップよりも
大きい。
ある実施形態では、前記活性層及び前記クラッド構造
は、AlxGayIn1-x-yP(0≦x≦1、0≦y≦1、ただ
し、x及びyは同時にゼロにはならない)材料から形成
されており、前記可飽和吸収層と前記活性層が同一材料
から形成されており、該活性層のパリア層のAl組成が前
記光ガイド層のAl組成よりも大きい。
ある実施形態では、前記活性層及び前記クラッド構造
は、AlzGa1-zAs(0≦z≦1)材料から形成されてお
り、前記可飽和吸収層と前記活性層が同一材料から形成
されており、該活性層のパリア層のAl組成が前記光ガイ
ド層のAl組成よりも大きい。
ある実施形態では、前記可飽和吸収層と前記活性層が
同一材料から形成されており、該活性層のウェル層の長
さが前記可飽和吸収層の厚さよりも小さい。
本発明の更に他の自励発振型半導体レーザ装置は、活
性層と、該活性層を挟むクラッド構造とを備えた自励発
振型半導体レーザ装置であって、該クラッド構造は、p
型不純物及びn型不純物の両方がドープされた可飽和吸
収層を含んでいる。
前記可飽和吸収層は、前記クラッド構造のn型部分に
挿入されている。
前記可飽和吸収層におけるキャリア濃度は、半導体レ
ーザ素子を駆動しない状態で、1×1018cm-3以上である
ことが好ましい。
本発明の更に他の自励発振型半導体レーザ装置は、活
性層と、n型可飽和吸収層とを備えた自励発振型半導体
レーザ装置であって、前記n型可飽和吸収層でのキャリ
アの寿命が、6ナノ秒以下である。
本発明の光ディスク装置は、半導体レーザ素子と、該
半導体レーザ素子から放射されたレーザ光を記録媒体に
集光する集光光学系と、該記録媒体によって反射された
レーザ光を検出する光検出器とを備えた光ディスク装置
であって、該半導体レーザ素子は、活性層と、該活性層
を挟むクラッド構造とを備え、該クラッド構造は、1×
1018cm-3以上のp型不純物がドープされている可飽和吸
収層を含んでいる自励発振型半導体レーザである。
ある実施形態では、前記半導体レーザ素子は、情報を
前記記録媒体に記録するときには単一モードで発振し、
該記録媒体に記録されている情報を再生するときには、
自励発振モードで動作する。
ある実施形態では、前記半導体レーザ素子の近傍に前
記光検出器が配置されている。
ある実施形態では、前記光検出器は、シリコン基板に
形成された複数のフォトダイオードを有しており、前記
半導体レーザ素子は該シリコン基板上に配置されてい
る。
ある実施形態では、前記シリコン基板は、その主面に
形成された凹部と、該シリコン基板の凹部の一側面に形
成されたマイクロミラーとを有しており、前記半導体レ
ーザ素子は、該シリコン基板の該凹部内に配置され、該
半導体レーザ素子から放射されたレーザ光が該マイクロ
ミラーによって反射された後、該シリコン基板の主面に
ほぼ垂直な方向に進むように該マイクロミラーと該主面
との角度が設定されている。
前記マイクロミラーの表面には、金属膜が形成されて
いることが好ましい。
図面の簡単な説明 図1は、本発明によるAlGaInP系半導体レーザの第1
の実施例の断面図である。
図2は、本発明の高ドープ可飽和吸収層の効果を説明
するための図で、ドーピング濃度を変えた時のキャリア
の寿命時間を示す図。
図3は、本発明の第1の実施例に於ける活性層近傍の
Al組成を示す構造図である。
図4は、本発明の第1の実施例に於ける電流光出力特
性を示す図である。
図5は、本発明の第1の実施例に於ける光出力及びキ
ャリア密度の時間変化を示すグラフである。
図6は、本発明の第1の実施例に於ける光出力とキャ
リア密度の実測時間を示す波形の図である。
図7A及び図7Bは、本発明の第1の実施例と従来例の雑
音特性の比較図である。
図8は、本発明によるAlGaInP系半導体レーザの第2
の実施例の断面図である。
図9は、本発明の第2の実施例に於ける活性層近傍の
Al組成を示す図である。
図10は、本発明の第2の実施例における光出力とキャ
リア密度の実測時間波形の図である。
図11A、図11B及び図11Cは、本発明の効果を説明する
ための図で、活性層近傍のAl組成を示す構造図である。
図12は、本発明の第3の実施例に於けるAlGaInP系半
導体レーザの素子断面図である。
図13は、GaAsとGaInPについて、利得のキャリア密度
依存性(利得特性)示す図である。
図14は、従来の実施例に於ける素子断面図である。
図15は、従来の実施例に於ける可飽和吸収層の組成構
造図である。
図16は、本発明による光ディスク装置の実施例の構成
を模式的に示す図である。
図17は、本発明による光ディスク装置に使用されるレ
ーザユニットの斜視図である。
図18は、本発明による光ディスク装置に他の実施例の
構成を模式的に示す図である。
図19は、本発明による光ディスク装置の実施例に用い
られるホログラム素子の働きを示す図である。
図20は、本発明による光ディスク装置の実施例に用い
られる光検出器を示す平面図である。
発明を実施するための最良の形態 本発明の半導体レーザでは、可飽和吸収層のドーピン
グレベルを調節することによって可飽和吸収層における
キャリアの寿命時間を7ナノ秒以下に低減している。そ
の結果、キャリア密度の時間変化率に対する自然放出の
寄与が増大し、自励発振を容易に生じることができ、相
対雑音を下げることができる。
従来の半導体レーザ素子では、活性層近傍の通常のド
ーピングレベルが、例えば、1×1017〜1×1018cm-3
あるため、可飽和吸収層のキャリア寿命が長く、自励発
振が生じにくかった。発明者らの研究によると、キャリ
ア寿命が大きい場合には、キャリア密度の時間変化率に
与える自然放出光の寄与が小さくなり、キャリア密度の
振動が生じにくくなるためである。以下、この点を詳細
に説明する。
可飽和吸収層を備えた半導体レーザ装置におけるレー
ト方程式は、以下のように表現される。
ここで、Sは光子密度(total photon number)、n
は電子密度(electron density)、Γは光閉じ込め係数
(optical confinement factor)、pは正孔密度(hole
density)、βspは自然放出光係数(spontaneous emis
sion coefficient)、Vは体積(volume)、τはキャリ
アの寿命(caiier life time)、gは利得(gain)、I
は注入電流密度(injected current density)を表して
いる。また、添字(suffix)1及び2は、それぞれ、活
性層及び可飽和吸収層に対応している。
活性層に電流を注入する前、各式(1)から(3)の
各項はゼロである。活性層に対して電流を注入し始める
と、電流に関する項がゼロよりも大きくなるため、dn1/
dtは正となる。これは、活性層における電子密度n1が増
加することを意味している。
電子密度n1の増加は、自然放出による光子数の増加と
利得による光子数の増加を招くため、dS/dtを増加さ
せ、その結果、総光子密度Sを増加させる。総光子密度
Sの増加は、式(2)の第1項の絶対値を大きくするた
め、dn1/dtは減少し、電子密度n1は低下する。
式(3)の第1項における利得g2は、最初、負の値を
持っている。そのため、式(3)の右辺は正となり、可
飽和吸収層における電子密度n2は増加する。やがて、可
飽和吸収層がある程度の量の光を吸収すると、利得g2
正になる。利得g2が正になると、dn2/dtが減少し始め、
やがて負になる。
自励発振を実現するには、光子密度S、電子密度n1
びn2を大きく振動させる必要がある。このような振動を
引き起こすためには、光閉じ込め係数Γを大きくする
か、各層の体積V1及びV2を小さくすれば良いと考えられ
る。しかしながら、発明者らの実験によれば、光閉じ込
め係数Γを大きくするか、各層の体積V1及びV2を小さく
しても、自励発振は達成されなかった。
そこで、発明者は、通常、定数として扱われる可飽和
吸収層における電子の寿命τ2に着目した。発明者は、
種々の解析や実験によって、可飽和吸収層における電子
の寿命τ2が適切な値(7ナノ秒以下)を持てば自励発
振が達成されることを見いだした。また、発明者は、可
飽和吸収層のドーピングレベルを適切な値(1×1018cm
-3以上)に設定すれば、可飽和吸収層における電子の寿
命τ2を上記適切な値にすることができることも見いだ
した。
前述したように、活性層の近傍における不純物ドーピ
ングレベルは、1×1018cm-3未満になるように低めに設
定されている。これは、活性層への不純物拡散によって
レーザの信頼性が低下するという問題を避けるためであ
る。しかしながら、1×1018cm-3未満の低い値では寿命
τ2が長すぎるため、自励発振は達成されていなかっ
た。
前述のように、発明者らの実験によれば、その寿命τ
2は約6ナノ秒以下が望ましいことがわかった。寿命τ2
はドーピングレベルが低いと長くなり、ドーピングレベ
ルが1×1018cm-3未満では寿命τ2は6ナノ秒を越え
る。これに対して、ドーピングレベルを1×1018cm-3
上、例えば、2×1018cm-3程度に高くすることによっ
て、寿命τ2を3ナノ秒程度にまで減少させることが可
能となる。
前述の特開平6−260716号公報には、ドーピングに関
する記述はない。特開平6−260716号公報は、活性層の
両側に設けられたクラッド層中に、単に活性層と同等の
バンドギャップを有する可飽和吸収層を導入するだけで
自励発振が生じると記載しているが、それだけでは、自
励発振型レーザの実現は困難であることを発明者らは見
いだした。
先に述べたように、発明者らの実験から、例えば1×
1017cm-3から1×1018cm-3未満の範囲内の通常のドーピ
ングレベルでは、自励発振現象(self−sustained puls
ation of light out put)が非常に生じにくいことがわ
かった。
なお、通常のドーピングレベルで自励発振を生ずるた
めには、別のパラメータとして可飽和吸収層の体積Vを
十分に小さくし、キャリアの密度を相対的に増加させる
方法が考えられる。しかし、可飽和吸収層の体積を小さ
くするには、その厚さを薄くする必要があり、それにと
もない可飽和吸収層への光の閉じ込めが減少してしま
う。そのために、光の吸収効率が低下し、結果として所
望の自励発振特性を有するような半導体レーザを得るこ
とが困難となる。
このように、可飽和吸収層のドーピングレベルを適切
な値に設定することによって可飽和吸収層における電子
の寿命τ2を適切な値(6ナノ秒以下)にすることは、
安定な自励発振を得るために極めて有効である。
なお、本発明の半導体レーザでは、可飽和吸収層を量
子井戸とした場合に、光閉じ込め係数が低下するのを補
うため、可飽和吸収層に隣接する位置に、または可飽和
吸収層の近傍に光ガイド層を設け、可飽和吸収層による
光吸収の効果を十分生じさせる。その結果として、安定
な自励発振特性を得ることが可能となる。
以下、図面を参照しながら、本発明による半導体レー
ザ素子の実施例を説明する。
(実施例1) 図1は、本発明による半導体レーザ装置の第1の実施
例の断面構造を示している。
この半導体レーザは、n型のGaAs基板101と、GaAs基
板101上に形成された半導体積層構造を備えている。こ
の半導体積層構造は、n型GaIPバッファ層102、n型AlG
aInPクラッド層103、n型のGaInP高ドープ可飽和吸収層
104、p型のAlGaInPスペーサ層105、AlGaInPおよびGaIn
Pからなる多重量子井戸活性層106、第1のp型AlGaInP
クラッド層107、p型のGaInPエッチング停止層108、第
2のp型AlGaInPクラッド層109を含んでいる。
第2のp型AlGaInPクラッド層109は、共振器長方向に
延びるストライプ形状(幅:約2.0〜7.0μm)を有して
いる。
第2のp型クラッド層109の上面には、GaInPからなる
コンタクト層110が形成されている。第2のp型クラッ
ド層109及びコンタクト層110の両側には、n型のGaAs電
流ブロック層111が形成されている。コンタクト層110と
電流ブロック層111の上にはp型のGaAsキャップ層112が
形成されている。キャップ層112の上面にはp電極113が
形成され、基板101の裏面にはn電極114が形成されてい
る。活性層104は3層の井戸層と障壁層からなる多重量
子井戸構造を有している。
本願明細書では、半導体積層構造から、バッファ層、
活性層、コンタクト層、キャップ層および電流ブロック
層を除いた残りの部分を、全体として、「クラッド構
造」と呼ぶことにする。本実施例の場合は、n型AlGaIn
Pクラッド層103、高ドープ可飽和吸収層106、p型のGaI
nPエッチング停止層108、第1のp型AlGaInPクラッド層
107、第2のp型AlGaInPクラッド層109が、クラッド構
造を構成している。
レーザ発振のために、p電極113とn電極114との間に
電圧を印加してp電極113からn電極114に電流(駆動電
流)を流すとき、電流は、コンタクト層110及び第2の
p型クラッド層109を流れるように電流ブロック層111に
よって狭窄される。このため、電流は、活性層104のう
ち、第2のp型クラッド層109の真下の領域(電流注入
領域)を流れ、電流ブロック層211の真下の領域は流れ
ない。活性層104の電流注入領域内で光が発生し、その
光は電流注入領域より外側にもある程度広がる。この光
の一部が可飽和吸収層106と相互作用することによっ
て、自励発振が引き起こされる。
本実施例の積層構造を構成する各半導体層のドーピン
グレベルおよび膜厚は以下の通りである。
図2に、可飽和吸収層へのn型不純物のドーピング濃
度を変えたときのキャリアの寿命とキャリア密度の関係
を示す。ドーピング濃度が2×1018cm-3の場合と5×10
17cm-3の場合の2種類を示してある。ここで言うキャリ
ア密度とは、活性層で電子とホールの再結合によって生
成した光が、可飽和吸収層へしみだすことによって生じ
るキャリアの密度のことである。図2の結果から可飽和
吸収層へのドーピングレベルによって寿命時間が大きく
影響されていることがわかる。
前述したように、一般に、活性層の近傍には高いドー
ピングを付加するまでもない。それは、n−AlGaInPク
ラッド層への少数キャリアであるホールのオーバーフロ
ーの心配が無いためで、典型的なn−AlGaInPクラッド
層のキャリア濃度は5×1017cm-3程度である。
むしろ、高いドーピングをAl組成の高いn−AlGaInP
に行うとDXセンターを形成して非発光中心となり、半導
体レーザの特性を落とすという懸念もあるため、高ドー
プを行わないのが通常である。
自励発振特性を有する半導体レーザを得るためには、
少なくとも可飽和吸収層は高ドープにする構造とする必
要がある。その理由を以下に示す。
自励発振現象は、可飽和吸収層の寿命時間が短いほど
生じ易い。これは寿命時間が短いほど、自励発振現象を
生じさせるために必要な可飽和吸収層のキャリアの時間
変化が大きくなるからである。発明者らの実験によれ
ば、その寿命時間は、約7ナノ秒以下が望ましいことが
わかった。寿命時間とドーピングレベルとの関係は、ド
ーピングレベルが低い場合、寿命時間が長くなり、たと
えば1×1018(cm-3)以下で7ナノ秒を越える。それに
対して、ドーピングレベルを2×1018(cm-3)程度と高
くすることによって5ナノ秒程度まで減少させることが
可能となる。
信頼性の観点から活性層の近傍に高ドープの層が存在
することは望ましくないが、活性層と可飽和吸収層の間
に存在するスペーサ層(n−AlGaInPから成る)のキャ
リア濃度は3×1018(cm-3)以下であれば、信頼性への
影響がないことがわかっている。
本発明に対して、従来の技術に記載した自励発振型の
半導体レーザでは、ドーピングに関する記述はない。さ
らに従来の技術の赤色半導体レーザの場合、活性層の両
側に設けられたクラッド層中に、単に活性層と同等のバ
ンドギャップを有する可飽和吸収層を導入するだけで自
励発振が生じると記載しているが、それだけでは、自励
発振型レーザの実現は困難である。先に述べたように発
明者らの実験で、例えば、1×1017〜1×1018cm-3程度
の通常のドーピングレベルでは、自励発振現象が非常に
生じにくいことがわかっている。本発明はこの点に鑑み
実験による最適な構造を提案している。
図3は、本実施例の活性層付近の(AlxGa1-x)0.5In0.5
PのAl組成x(Al mole fraction)のプロファイルを示
す(0≦x≦1)。本実施例では、n型クラッド層10
3、スペーサ層105、第1のp型クラッド層107のAl組成
xは0.7であるが、これらの層のAl組成xは0.7に限定さ
れるものではない。また、n型クラッド層103、スペー
サ層105、第1のp型クラッド層107のAl組成xが相互に
異なっていても良い。また、各層の中で、Al組成xが階
段状若しくは連続的に変化していても良い。
図3に示されるように、本実施例の可飽和吸収層104
は、クラッド構造中のn型部分において、活性層106か
ら離れた位置に挿入されている。クラッド構造におい
て、活性層106と可飽和吸収層104との間に位置する部分
を、本願明細書では、スペーサ層105と呼んでいる。
本実施例のスペーサ層105の厚さは900Åである。スペ
ーサ層105の役割は、可飽和吸収層104の高濃度にドープ
された不純物が活性層106に拡散して素子の信頼性を劣
化させることを、抑制することにある。
本実施例の可飽和吸収層106の厚さは150Åである。こ
れ以上の厚さの可飽和吸収層は量子井戸構造を形成して
いないので、可飽和吸収層中に量子準位は形成されてい
ない。可飽和吸収層106が厚いと、言い換えると、可飽
和吸収層106の体積が大きいと、キャリア密度が小さく
なるため、キャリアの寿命が短くならず、自励発振が生
じにくくなる。このような観点から、可飽和吸収層の厚
さは、約150Å未満であることが好ましい。
可飽和吸収層106のAl組成xは、活性層104から放射さ
れた光を可飽和吸収層106が十分に吸収できるように選
択される。
一般に、(AlxGa1-x)0.5In0.5Pのバンドギャップは、A
l組成xが大きくなる程大きくなる。従って、図3は、
本実施例の活性層付近のバンドギャップのプロファイル
をも示しているといえる。図3からわかるように、スペ
ーサ層105のバンドギャップは、活性層106および可飽和
吸収層104のバンドギャップよりも大きく、このため、
活性層106からオーバフローした少数キャリアが可飽和
吸収層104に入らない。
スペーサ層105のバンドギャップは、第1のp型クラ
ッド層107などのバンドギャップと等しく設定されてい
る必要はない。活性層106からのキャリアのオーバフロ
ーに対するバリア効果を高めるために、スペーサ層105
のバンドギャップを第1のp型クラッド層107等のバン
ドギャップより大きくしてもよい(Al組成比を0.7より
大きくしてもよい)。また、活性層106及び/または可
飽和吸収層104の光閉じ込め係数を調整するために、ス
ペーサ層105のバンドギャップをクラッド構造の他の部
分のバンドギャップよりも小さくしてもよい(Al組成比
を0.7より小さくしてもよい)。
なお、本実施例では、可飽和吸収層104の光閉じ込め
係数は約4.5%である。可飽和吸収層104の光閉じ込め率
が3%以上の場合、安定した自励発振特性が得られるこ
とがわかった。
図4は、図1の半導体レーザの電流−光出力特性を示
す。閾値電流は、約60mAである。自励発振型半導体レー
ザ素子の特性においては、通常の半導体レーザの特性と
異なって、閾値電流近傍で光出力の急激な立ち上がりが
見られる。これは可飽和吸収層が存在するために、キャ
リア注入量がある閾値を越えるまでは光が外部へ放出さ
れないためである。キャリア注入量が閾値を越えると、
レーザ発振が生じ、注入電流に比例して光出力が増加し
はじめる。
図5は、図4のグラフにおける点P(出力:5mW)に対
応する電流を半導体レーザに流した場合における、光出
力の時間依存性を示している。図5に示されている振動
波形は、シミュレーションにより得られた。図5から、
光出力の振動(自励発振)現象が継続して生じているこ
とが分かる。図6は、実際に作製した自励発振型半導体
レーザを動作させることによって得られた光出力の振動
波形を示している。時間に対して光出力が大きく振動し
ており、自励発振の生じていることが確認できた。
図4を再び参照する。注入電流を、図4の点Pに相当
する電流値よりも更に大きくして行くと、やがて自励発
振が停止し、通常のレーザ発振が生じる。自励発振の停
止する時の光出力を最大自励発振出力(Pmax)と呼ぶこ
とにする。
図7A及び図7Bは、半導体レーザ素子の相対強度雑音
(RIN:Relative Intensity Noise)特性を示す。図7Aが
可飽和吸収層がない半導体レーザの特性、図7Bが本発明
の半導体レーザの特性を示している。本発明の半導体レ
ーザによれば、広い温度範囲で安定した低雑音特性を示
している。特に−140dBの値が得られているので実用的
にも適してしることがわかる。
スペーサ層や可飽和吸収層が一様にドープされている
場合でも、全体にある程度高いドーピングを行うことに
よって吸収層でのキャリア寿命を小さくすることが考え
られる。しかしながら先にも述べたように一般に活性層
近傍に高いドーピングは行わない。本発明のように、活
性層に近い場所に存在する可飽和吸収層に高いドーピン
グを行うという新規な構造は、安定した自励発振を有す
る優れた半導体レーザを作製するために必要不可欠であ
ることが明らかとなった。
なお、本実施例では半導体レーザを構成する材料にAl
GaInPを用いて説明したが、他の材料、例えばAlGaAsやI
I−VI族化合物の場合でも本発明の効果は大きい。
可飽和吸収層にクラッド構造のn型不純物がドープさ
れている部分に配置することは、クラッド構造のp型不
純物がドープされている部分に配置する場合に比較し
て、以下に述べる利点を有している。
(1)n型不純物は、p型不純物を可飽和吸収層にドー
プする場合よりも、高い濃度で可飽和吸収層にドープさ
れ得る。例えば、p型不純物であるZnの場合、可飽和吸
収層にドープ可能な最大の不純物濃度は、約5×1018cm
-3であるが、n型不純物であるSiの場合、可飽和吸収層
にドープ可能な最大の不純物濃度は、約1×1018cm-3
越える値である。可飽和吸収層にドープされている不純
物の濃度が高いほど、可飽和吸収層による光の吸収が少
なくとも、多くのキャリアが生成されることになる。ま
た、前述のように、可飽和吸収層の不純物濃度が高いほ
ど、キャリア寿命が短縮されるので、自励発振を起こし
やすい。これらの理由から、n型不純物を高い濃度で可
飽和吸収層にドープした場合、少ない光学的損失で自励
発振が達成され、半導体レーザの閾値電流(Ith)及び
動作電流(Iop)が低減される。
(2)p型不純物として最もよく使用されるZnは、拡散
係数が大きく、n型不純物(例えばSi)よりも拡散しや
すい。可飽和吸収層にドープした不純物が拡散しにくい
場合は、可飽和吸収層を活性層に近い位置に配置して
も、半導体レーザの信頼性は低下しにくい。可飽和吸収
層にSiをドープした場合、動作電流は製造直後から変動
せず、安定な値をとる。
動作電流が製造直後から経時的に変動する場合は、製
造の最終段階でエージング工程などの動作電流を安定化
させる工程が必要となるが、本発明によれば、そのよう
な工程が不要なるので、製造コストが低減される。
(実施例2) 本発明による半導体レーザ装置の第2の実施例を説明
する。この半導体レーザは、量子井戸構造を有する活性
層を用いているため、第1の実施例よりも高い光出力を
得ることができる。
まず、図8を参照する。図8に示されるように、この
半導体レーザは、n型のGaAs基板801と、GaAs基板801上
に形成された半導体積層構造を備えている。この半導体
積層構造は、n型GaAsバッファ層802、n型AlGaInPクラ
ッド層803、光ガイド層804、n型のGaInP高ドープ量子
井戸可飽和吸収層805、n型のAlGaInPスペーサ層806、A
lGaInPおよびGaInPからなる多重量子井戸活性層807、第
1のp型AlGaInPクラッド層808、p型のGaInPエッチン
グ停止層809、第2のp型AlGaInPクラッド層810を含ん
でいる。
第2のp型AlGaInPクラッド層810は、共振器長方向に
延びるストライプ状の形状(幅:約2.0〜7.0μm)を有
している。
第2のp型クラッド層810の上面には、コンタクト層8
11が形成されている。第2のp型クラッド層810及びコ
ンタクト層811の両側には、n型のGaAs電流ブロック層8
12が形成されている。コンタクト層811と電流ブロック
層812の上にはp型のGaAsキャップ層813が形成されてい
る。キャップ層813の上面にはp電極814が形成され、基
板801の裏面にはn電極815が形成されている。活性層80
7は3層の井戸層と障壁層からなる多重量子井戸構造を
有している。
この半導体レーザ素子を構成する各半導体層の種類、
厚さ、不純物濃度などは、第1の実施例のそれらと同様
である。本実施例の半導体レーザ素子の特徴は以下の通
りである。
1)可飽和吸収層として量子井戸可飽和吸収層(厚さ:3
0Å〜150Å)805が用いられている。
2)活性層として多重量子井戸活性層807が用いられて
いる。
3)可飽和吸収層805が高いレベル(1.0〜1018cm-3
上)にドープされている。
4)可飽和吸収層805に隣接する位置に(Al0.5Ga0.5)0.5
In0.5Pからなる光ガイド層(厚さ:300Å〜1500Å)804
が設けられている。
以下、図9を参照しながら、本実施例の半導体レーザ
素子をより詳細に説明する。
図9から明らかなように、本実施例では、屈折率が可
飽和吸収層805の屈折率より小さく、スペーサ層806や第
1のn型クラッド層803の屈折率よりも大きなガイド層8
04が可飽和吸収層805の近傍に設けられている。
可飽和吸収層805を量子井戸構造を持つように薄くし
た場合、光の閉じ込め係数が極端に減少する。また、高
濃度にドープされている可飽和吸収層をあまり活性層80
7に近づけることもできない。その結果、このままでは
自励発振を生じることはできない。
本実施例では、クラッド構造の他の部分よりも屈折率
の大きな(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pからなる光ガイド層804
を可飽和吸収層805の近傍に配置することによって、可
飽和吸収層805の閉じ込め係数を増加させている。光ガ
イド層804の挿入によって可飽和吸収層805への閉じ込め
係数を少なくとも1.5%程度以上にすると、安定な自励
発振を生じることが可能となる。
可飽和吸収層805を量子井戸にした場合、その膜厚が
薄いため、光ガイド層804なしで閉じ込め係数を自励発
振に必要な大きさに設定することはできない。また、閉
じ込め係数を増加させるために、可飽和吸収層805の層
数を増加すると、逆に可飽和吸収層805の体積が増加し
てキャリア密度が小さくなり、自励発振は生じなくな
る。したがって可飽和吸収層805の近傍に光ガイド層804
を設けることによって新たに自励発振を実現することが
できた。
光ガイド層804のバンドギャップは、可飽和吸収層805
のバンドギャップよりも大きくスペーサ層806のバンド
ギャップよりも小さいことが好ましい。ただし、光ガイ
ド層804のバンドギャップが可飽和吸収層805のバンドギ
ャップに近すぎると、可飽和吸収層805への光の閉じ込
めが大きくなりすぎ、光吸収の飽和特性を示さなくなる
からである。
多重量子井戸活性層807は3つの量子井戸層を含み、
各量子井戸層の厚さは50Åである。量子井戸可飽和吸収
層805のための光ガイド層804は、組成x=0.5で膜厚150
0Åの層から形成されている。この厚さは200Å以上で有
効となることが分かっている。
量子井戸可飽和吸収層805は、少数キャリアの注入が
生じない距離までならば多重量子井戸活性層807に近づ
けてもかまわない。可飽和吸収層805を活性層807に近づ
けすぎると、活性層807からオーバフローした少数キャ
リアが可飽和吸収層805に注入されてしまうので適当で
ない。したがって、可飽和吸収層805は、活性層807の近
傍で、かつできるだけ少数キャリアが注入されない位置
に設けるのが適当である。なお、活性層807から可飽和
吸収層805への少数キャリア注入を抑制するためには、
スペーサ層806のバンドギャップをクラッド構造の他の
部分のバンドギャップよりも大きくすることが好まし
い。
本実施例の半導体レーザ素子の最高光出力(Pmax
は、多重量子井戸活性層807に量子井戸構造を導入する
ことによって、バルク活性層を用いた半導体レーザ素子
の最高光出力よりも2割程度増加できた。また、しきい
値電流が低減され、高温でも動作が可能となる。
本実施例の半導体レーザによれば、図10に示されるよ
うな自励発振現象が確認されており、−135dB/Hz以下の
相対雑音強度(RIN)が得られている。
半導体レーザでは、発振波長は活性層材料のバンドギ
ャップから算出される値(実験的には弱励起下のフォト
ルミネッセンスによって観測される値)よりも10から20
nm程度長波長化する。これは、活性層内に多数のキャリ
アが存在し、多体効果によるバンドギャップシュリンケ
ージによって実質的なバンドギャップが狭まるためであ
る。量子井戸可飽和吸収層903と量子井戸活性層905の量
子準位を合わせ込むだけでは量子井戸可飽和吸収層903
での光の吸収が十分でなく、自励発振が得にくい場合が
ある。
この問題を解決する方法を以下に示す。
活性層材料の弱励起下(レーザ発振前の状態)での遷
移エネルギーよりも、可飽和吸収層の量子準位の遷移エ
ネルギーを小さくする。具体的には、(1)量子井戸活
性層を構成するバリア層の禁制帯幅を可飽和吸収層に近
接する光ガイド層の禁制帯幅よりも大きくする方法、
(2)可飽和吸収層と活性層の材料の組成が同じくし、
活性層を構成するウエル層の厚さを可飽和吸収層の厚さ
よりも小さくする方法、(3)可飽和吸収層のGa組成を
活性層のウエルの組成よりも小さくする方法などが考え
られる。
上記(1)、(2)および(3)の具体的な例を、図
11A、図11B及び図11Cを用いて説明する。図11Aは(1)
の例、図11Bは(2)の例、図11Cは(3)の例を示して
いる。
図11Aの例の特徴は、可飽和吸収層1103に隣接する光
ガイド層1102のAl組成が0.45であり、活性層を構成する
バリア層の組成が0.5という点である。このことによ
り、可飽和吸収層1103の量子準位は活性層1105の量子準
位よりも低エネルギーとなる。図11Aの例では、可飽和
吸収層1103と活性層1105のウエル層の厚さは同じにして
ある。また光ガイド層1102のAl組成を小さくすることに
よりこのガイド層1102の屈折率が大きくなり、可飽和吸
収層1108への光閉じ込めを上昇させることができるとい
う利点もあわせつもっている。
図11Bの例の特徴は、可飽和吸収層1108と活性層を構
成するウエル層の組成が同じで、また、光ガイド層1107
と活性層を構成するバリア層の組成が0.5であり、可飽
和吸収層1108の厚さが活性層を構成するウエル層の厚さ
よりも厚い点である。この場合でも、可飽和吸収層1107
の量子準位は活性層1108の量子準位よりも低エネルギー
となる。
(c)の特徴は、可飽和吸収層1110のGa組成(0.41)
を活性層を構成するウェルのGa組成(0.44)よりも小さ
くした点である。これにより、可飽和吸収層で0.75パー
セント、活性層のウェルで0.5パーセントの圧縮歪が加
わっている。これにより、可飽和吸収層の方が、約50me
V遷移エネルギーが減少することになる。
ここでは、具体的な例を用いて説明したが、活性層材
料の弱励起下での遷移エネルギーよりも可飽和吸収層の
量子準位の遷移エネルギーを小さくすることができれ
ば、どのような方法によっても良いのである。
本実施例では、活性層に量子井戸構造を導入すること
によって最高光出力が2割程度増加できた。また、低し
きい値電流化、高温動作、高出力化が可能となった。よ
り特性を向上させる方法として活性層や可飽和吸収層に
歪量子井戸を用いても本発明を用いれば自励発振特性を
有する半導体レーザを得ることができるのは言うまでも
ない。もちろん、図11A、図11B及び図11Cのいずれの例
を併用してもかまわない。
以上説明したように、本実施例の半導体レーザの特性
は、量子井戸活性層、高ドープ可飽和吸収層、および光
ガイド層という新規な構造を採用することで初めて実現
できるものである。
なお、本実施例では半導体レーザを構成する材料にAl
GaInPを用いて説明したが、他の材料、例えばAlGaAsやI
I−VI族化合物の場合でも本発明の効果は大きい。
(実施例3) 本発明による半導体レーザの第3の実施例を説明す
る。断面構造図を図12に示す。
1201はn型の基板であり、この基板1201上にバッファ
層1202、n−クラッド層1203、n型の光ガイド層1204、
共添加可飽和吸収層1205、n型のスペーサ層1206、多重
量子井戸活性層1207、第1のp−クラッド層1208、p型
のエッチング停止層1209が順次形成される。その上部に
はリッジ状の第2のp−クラッド層1210とp型のキャッ
プ層1211が形成される。このリッジ状の第2のp−クラ
ッド層1210およびキャップ層1211の両側はn型の電流ブ
ロック層1212によって埋め込まれている。さらにキャッ
プ層1211と電流ブロック層1212上にはp型のコンタクト
層1213が形成されており、コンタクト層1213上にはp側
電極1214、基板1201側にはn側電極1215がそれぞれ形成
されている。
この半導体レーザは可飽和吸収層へn型不純物を高ド
ープすることによって拡散が生じ、信頼性へ影響を及ぼ
すことを抑制する構造としている。すなわち、可飽和吸
収層1205にn型不純物およびp型不純物を同時に添加し
て、不純物の拡散を防止している。この可飽和吸収層の
伝導型は多数キャリアである電子の輸送を妨げないため
にn型であり、熱平衡状態で1×1018cm-3以上としてあ
る。この様な構成とすることにより、拡散しやすいSe等
の不純物も拡散を抑制でき、安定な自励発振を有する半
導体レーザを得ることができる。
実施例2で述べた構造でももちろん3×1018cm-3以下
のキャリア濃度とすれば、摂氏50度、5mWでの信頼性試
験において、駆動電流の変化率が20%以下に抑えること
ができており、使用上、問題はない。より拡散の生じや
すい材料、例えば、II−VI族化合物等では本実施例の構
造により信頼性を向上させることができる。
また、本発明では、共添加することによって、キャリ
アの寿命の低減を行え、結果として、キャリアの時間変
化率に対する自然放出の寄与が増大し、自励発振を容易
にしている。
最後に半導体レーザのミラー損失とキャビティー長に
ついて説明する。半導体レーザのミラー損失は、1/(2
L)×1n(1/(Rf+Rr))の式で表される。ここで、L:
キャビティー長、Rf:前端面での反射率、Rr:後端面での
反射率である。ミラー損失を小さくすれば、低キャリア
注入でレーザ発振するようになり、そのためにはこの式
から、キャビティー長Lを大きくするか、または反射率
Rを大きくすればよいことがわかる。
実施例1〜3での半導体レーザの端面には、SiO2とSi
3N4の多層膜による端面コーティングがなされ、キャビ
ティー長は500μmとし、ミラー損失は10cm-1である。
実験によりミラー損失を15cm-1以下にすれば高温でのノ
イズ特性が良好であることがわかっている。
上記の式から、キャビティー長Lが大きければ、ミラ
ー損失を小さくはできることが明らかだが、余りにLを
大きくしてしまうとキャリアの注入が多くなるので好ま
しくない。実験によれば、Lは700μm以下、好ましく
は300〜600μmの範囲が好適であることがわかってい
る。
このように本実施例の半導体レーザの高温でのノイズ
特性をよくするには、キャビティー長Lをパラメータと
したミラー損失を考慮することも重要であることがわか
った。
上記何れの実施例においても、AlGaInP系の半導体レ
ーザ素子について説明してきたが、本願発明はこれに限
定されるものではない。例えば、AlxGa1-xAs(0≦x≦
1)系、AlxGayIn1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1)
系、またはMgxZn1-xSySe1-y(0≦x≦1、0≦y≦
1)系にも適用可能である。何れの材料であっても、可
飽和吸収層に1×1018cm-3以上の不純物がドープされる
ことによって、安定した自励発振が達成される。
AlxGa1-xAs(0≦x≦1)系半導体レーザ素子の場
合、例えば、活性層はAl0.1Ga0.9Asから形成され、可飽
和吸収層はGaAsから形成され、クラッド層はAlGaAsから
形成される。
AlxGayIn1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1)系半導体
レーザ素子の場合、例えば、活性層はIn0.05Ga0.95Nか
ら形成され、可飽和吸収層はIn0.2Ga0.8Nから形成さ
れ、クラッド層はAl0.1Ga0.9N。
MgxZn1-xSySe1-y(0≦x≦1、0≦y≦1)系半導
体レーザ素子の場合、例えば、活性層はCd0.2Zn0.8Seか
ら形成され、可飽和吸収層はCd0.3Zn0.7Seから形成さ
れ、クラッド層はMg0.1Zn0.9S0.1Se0.9から形成され
る。
(実施例4) 次に、図16を参照しながら、本発明による光ディスク
装置を説明する。
この光ディスク装置は、前述の本発明による半導体レ
ーザ素子901と、半導体レーザ素子901から放射されたレ
ーザ光(波長650nm)902を平行光にするコリメータレン
ズ903と、その平行光を3本のレーザ光(図では1本の
レーザ光のみ示されている)に分離する回折格子907
と、レーザ光の特定成分を透過/反射するハーフプリズ
ム905と、ハーフプリズム905から出たレーザ光を光ディ
スク907上に集光する集光レンズ906とを備えている。光
ディスク907上では、例えば、直径1μm程度のレーザ
ビームスポットが形成される。光ディスク907は、読み
出し専用のものに限定されず、書き換え可能なものでも
よい。
光ディスク907からの反射レーザ光は、ハーフプリズ
ム905で反射された後、受光レンズ908及びシリンドリカ
ルレンズ909を透過し、受光素子910に入射する。受光素
子910は、複数に分割されたフォトダイオードを有して
おり、光ディスク907から反射されたレーザ光に基づい
て、情報再生信号、トラッキング信号及びフォーカスエ
ラー信号を生成する。トラッキング信号及びフォーカス
エラー信号に基づいて駆動系911が光学系を駆動するこ
とによって、光ディスク907上のレーザ光スポットの位
置を調整する。
この光ディスク装置において、半導体レーザ素子901
以外の構成要素は、公知の素子を用いてよい。前述のよ
うに、本実施例の半導体レーザ素子901は、高濃度にド
ープされた可飽和吸収層を有している。このため、光デ
ィスク907から反射されたレーザ光の一部がハーフプリ
ズム905と回折格子907を透過して半導体レーザ素子901
に戻ってきても、低ノイズの相対強度雑音は低いレベル
に維持される。
図8に示す半導体レーザ素子によれば、光出力が約10
mWのレベルまでは自励発振が生じるが、そのレベルを越
えて光出力を大きくして行くと、発振状態は徐々に自励
発振から単一モード発振に変化して行く。例えば、光出
力が約15mW場合、自励発振は生じない。光ディスクに記
録された情報を再生するときには、半導体レーザ素子は
自励発振によって戻り光雑音の生じない状態にあるべき
だが、光ディスク上に情報を記録するときには自励発振
をしている必要はない。例えば、約15mWの光出力で情報
の記録を行い、約5mWの出力で情報の再生を行うように
すれば、情報の低歪み再生だけではなく記録も可能にな
る。
このように、本発明の光ディスク装置によれば、高周
波重畳用の回路部品を用いることなく、波長が630〜680
nm帯で低歪みの再生が達成される。
これに対して、従来の波長が630〜680nm帯AlGaInP系
半導体レーザ素子は、安定な自励発振を起こせなかった
ため、従来のAlGaInP系半導体レーザ素子を光ディスク
装置に用いる場合、高周波を駆動電流に重畳することに
よって、戻り光雑音を抑制する必要があった。そのため
には、大型の高周波重畳回路が必要となり、光ディスク
装置の小型化に不適当であった。
(実施例5) 次に、本発明による光ディスク装置の他の実施例を説
明する。
この光ディスク装置は、前述の本発明による半導体レ
ーザ素子を含むレーザユニットを用いた装置である。こ
のレーザユニットは、フォトダイオードの形成されたシ
リコン基板と、その上にマウントされた半導体レーザ素
子とを含んでいる。更に、シリコン基板には半導体レー
ザ素子から放射されたレーザ光を反射させるミイクロミ
ラーが形成されている。
まず、図17を参照しながら、このレーザユニットを説
明する。図17に示されるように、シリコン基板(7ミリ
×3.5ミリ)1の主面1aの中央に凹部2が形成されてお
り、その凹部2の底面に半導体レーザ素子3が配置され
ている。凹部2の一側面は傾斜しており、マイクロミラ
ー4として機能する。シリコン基板1の主面1aが面方位
(100)の場合、異方性エッチングによって、(111)面
を露出させ、マイクロミラー4として利用することがで
きる。(111)面は、(100)から54°傾斜しているの
で、主面1aが(100)面から〈110〉方向に9°だけ傾斜
したオフ基板を用いれば、主面1aに対して45°傾斜した
(111)面が得られる。なお、この(111)面に対向する
位置に設けられた(111)面は基板主面1aに対して63°
傾斜することになる。この面には、マイクロミラー4が
形成されず、後述する光出力モニター用フォトダイオー
ド5が形成される。異方性エッチングによって形成した
(111)面は平滑なミラー面であるので、優れたマイク
ロミラー4として機能するが、マイクロミラー4の反射
効率を高めるために、レーザ光を吸収しにくい金属膜を
少なくともシリコン基板1の傾斜面上に蒸着することが
好ましい。
シリコン基板1には、半導体レーザ素子3の光出力モ
ニター用フォトダイオード5以外にも、光信号検出用の
5分割フォトダイオード6a及び6bが形成されている。
図18を参照しながら、本実施例の光ディスク装置を説
明する。前述したような構造を持つレーザユニット10の
半導体レーザ素子(図18において不図示)から放射され
たレーザ光は、マイクロミラー(図18において不図示)
によって反射された後、ホログラム素子11の下面に形成
されたグレーティングによって3本のビームに分離され
る(図中では簡単化のため1本のビームのみ示されてい
る)。その後、レーザ光は四分の一波長板(1/4λ板)1
2と対物レンズ13を透過し、光ディスク14上に集光され
る。光ディスク14から反射されたレーザ光は、対物レン
ズ13及び1/4λ板12を透過した後、ホログラム素子11の
上面に形成されたグレーティングによって回折される。
この回折によって、図19に示されるように、−1次光と
+1次光とが形成される。例えば、−1次光は図中左に
位置する受光面15aに照射され、+1次光は図中右に位
置する受光面15bに照射される。−1次光と+1次光と
で焦点距離が異なるように、ホログラム素子11の上面に
形成されたグレーティングのパターンが調整される。
図20に示されるように、レーザ光が光ディスク上で焦
点を結んでいるときには、レーザユニット10の受光面15
aに形成される反射レーザ光のスポットの形状は、受光
面15bに形成される反射レーザ光のスポットの形状と等
しくなる。レーザ光が光ディスク上で焦点を結んでいな
いときは、レーザユニットの受光面に形成される反射レ
ーザ光のスポットの形状が2つの受光面15a及び15bで異
なる。
このように左右の受光面上に形成される光スポットの
大きさは、次のようにしてフォーカスエラー信号FESし
て検出される。
FES=(S1+S3+S5)−(S2+S4+S6) ここで、S1〜S3は、図32に示すように、受光面15aを
構成している5つのフォトダイオードの内の中央の3つ
のフォトダイオードから出力された信号強度を意味し、
S4〜S6は、受光面15bを構成している5つのフォトダイ
オードの内の中央の3つのフォトダイオードから出力さ
れた信号強度を意味している。フォーカスエラー信号FE
Sがゼロのとき、レーザ光は光ディスク上に焦点を結ん
でいる(on focus)。図18のアクチュエータ15によっ
て、フォーカスエラー信号FESがゼロになるように対物
レンズ13が駆動される。
トラッキングエラー信号TESは、次のようにして求め
られる。
TES=(T1−T2)+(T3−T4) ここで、T1及びT2は、受光面15aを構成している5つ
のフォトダイオードの内の両端の2つのフォトダイオー
ドから出力された信号強度を意味し、T3及びT4は、受光
面15bを構成している5つのフォトダイオードの内の両
端の2つのフォトダイオードから出力された信号強度を
意味している。
情報信号RESは、次のようにして求められる。
RES=(S1+S3+S5)+(S2+S4+S6) なお、本実施例では、半導体レーザ素子とフォトダイ
オードとが一体化されたレーザユニットを用いたが、こ
れらが分離されていてもよい。
このように、半導体レーザ素子とフォトダイオードと
が一体的に構成されたレーザユニットを用いることによ
って、光ディスク装置の小型化が可能となる。また、フ
ォトダイオード及びマイクロミラーがシリコン基板に予
め形成されているので、光学的なアライメントは、シリ
コン基板に対する半導体レーザ素子の位置あわせだけを
行えば良い。このように光学的なアライメントが容易で
あるので、組立精度が高く、製造工程が簡単になる。
産業上の利用可能性 以上のように、本発明の半導体レーザは、可飽和吸収
層のドーピングレベルを増加することにより、キャリア
の寿命時間を制御し、安定した自励発振特性を実現す
る。
また、本発明の半導体レーザは、活性層に量子井戸を
適用し、さらに光ガイド層を備た量子井戸可飽和吸収層
を用いることによって、より高出力の自励発振特性を実
現することができる。
また、本発明の半導体レーザは、高ドープされた可飽
和吸収体を活性層の電流注入領域に隣接する位置に配置
することにより、容易に自励発振を生じるものである。
また本発明では、スペーサ層内に多重量子障壁層を設
けることにより、可飽和吸収層への電子流入の抑制、可
飽和吸収層の光閉じ込め係数の増加に寄与し、これによ
り自励発振の発生をより容易にすることができる。
また本発明では、可飽和吸収層や電流狭窄層へ、n型
ドーパントとp型ドーパントを同時添加することによ
り、ドーパントの拡散が抑制され、キャリア濃度プロフ
ァイルを変化させることはないので、半導体レーザの諸
特性の向上と歩留まりを高める上で非常に有効である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−196810(JP,A) 特開 平2−78290(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01S 3/18

Claims (24)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】活性層と、該活性層を挟むクラッド構造と
    を備えた自励発振型半導体レーザ装置であって、 該クラッド構造は、1×1018cm-3以上のn型不純物がド
    ープされた可飽和吸収層を含んでいる、自励発振型半導
    体レーザ装置。
  2. 【請求項2】前記クラッド構造は、更に、前記活性層お
    よび前記可飽和吸収層のバンドギャップよりも大きいバ
    ンドギャップを持つスペーサ層を、該活性層および該可
    飽和吸収層の間に有している、請求項1に記載の自励発
    振型半導体レーザ装置。
  3. 【請求項3】前記スペーサ層には、不純物がほぼ一様に
    ドープされており、その不純物濃度は3×1018cm-3以下
    である請求項2に記載の自励発振型半導体レーザ装置。
  4. 【請求項4】前記クラッド構造は、更に、前記スペーサ
    層のバンドギャップよりも小さいバンドギャップを持つ
    光ガイド層を、前記活性層と前記可飽和吸収層との間に
    有している、請求項2に記載の自励発振型半導体レーザ
    装置。
  5. 【請求項5】前記クラッド構造は、更に、光ガイド層を
    含んでおり、 前記可飽和吸収層は、該光ガイド層に隣接して配置され
    ている、請求項1に記載の自励発振型半導体レーザ装
    置。
  6. 【請求項6】前記クラッド構造は、更に、光ガイド層を
    含んでおり、 前記可飽和吸収層は、該光ガイド層内に配置されてい
    る、請求項1に記載の自励発振型半導体レーザ装置。
  7. 【請求項7】前記活性層は量子井戸構造を有しており、
    前記可飽和吸収層は量子井戸から形成されている、請求
    項1に記載の自励発振型半導体レーザ装置。
  8. 【請求項8】活性層と、該活性層を挟むクラッド構造と
    を備えた自励発振型半導体レーザ装置であって、 該クラッド構造は、1×1018cm-3以上のn型不純物がド
    ープされた可飽和吸収層と、該可飽和吸収層の近傍に配
    置された光ガイド層とを含んでおり、 該可飽和吸収層には、量子準位が形成され、 量子準位間の遷移エネルギーが、該活性層の弱励起下で
    の遷移エネルギーよりも小さい自励発振型半導体レーザ
    装置。
  9. 【請求項9】前記クラッド構造は、更に、前記活性層お
    よび前記可飽和吸収層のバンドギャップよりも大きいバ
    ンドギャップを持つスペーサ層を、該活性層および該可
    飽和吸収層の間に有している、請求項8に記載の自励発
    振型半導体レーザ装置。
  10. 【請求項10】活性層と、該活性層を挟むクラッド構造
    とを備えた自励発振型半導体レーザ装置であって、 該クラッド構造は、1×1018cm-3以上の不純物がドープ
    された可飽和吸収層と、該可飽和吸収層の近傍に配置さ
    れた光ガイド層とを含んでおり、 該可飽和吸収層には、量子準位が形成され、 量子準位間の遷移エネルギーが、該活性層の弱励起下で
    の遷移エネルギーよりも小さい自励発振型半導体レーザ
    装置であって、前記クラッド構造は、更に、前記活性層
    および前記可飽和吸収層のバンドギャップよりも大きい
    バンドギャップを持つスペーサ層を、該活性層および該
    可飽和吸収層の間に有しており、前記スペーサ層の不純
    物濃度は、3×1018cm-3以下である自励発振型半導体レ
    ーザ装置。
  11. 【請求項11】活性層と、該活性層を挟むクラッド構造
    とを備えた自励発振型半導体レーザ装置であって、 該クラッド構造は、1×1018cm-3以上の不純物がドープ
    された可飽和吸収層と、該可飽和吸収層の近傍に配置さ
    れた光ガイド層とを含んでおり、 該可飽和吸収層には、量子準位が形成され、 量子準位間の遷移エネルギーが、該活性層の弱励起下で
    の遷移エネルギーよりも小さい自励発振型半導体レーザ
    装置であって、前記活性層はバリア層とウェル層とを有
    しており、前記可飽和吸収層と該ウェル層とが同一材料
    から形成されており、該バリア層のバンドギャップが前
    記光ガイド層のバンドギャップ以上である自励発振型半
    導体レーザ装置。
  12. 【請求項12】活性層と、該活性層を挟むクラッド構造
    とを備えた自励発振型半導体レーザ装置であって、 該クラッド構造は、1×1018cm-3以上の不純物がドープ
    された可飽和吸収層と、該可飽和吸収層の近傍に配置さ
    れた光ガイド層とを含んでおり、 該可飽和吸収層には、量子準位が形成され、 量子準位間の遷移エネルギーが、該活性層の弱励起下で
    の遷移エネルギーよりも小さい自励発振型半導体レーザ
    装置であって、前記活性層及び前記クラッド構造は、Al
    xGayIn1-x-yP(0≦x≦1、0≦y≦1、ただし、x及
    びyは同時にゼロにはならない)材料から形成されてお
    り、 該活性層はバリア層とウェル層とを有しており、前記可
    飽和吸収層と該ウェル層とが同一材料から形成されてお
    り、該バリア層のAl組成が前記光ガイド層のAl組成以上
    である自励発振型半導体レーザ装置。
  13. 【請求項13】活性層と、該活性層を挟むクラッド構造
    とを備えた自励発振型半導体レーザ装置であって、 該クラッド構造は、1×1018cm-3以上の不純物がドープ
    された可飽和吸収層と、該可飽和吸収層の近傍に配置さ
    れた光ガイド層とを含んでおり、 該可飽和吸収層には、量子準位が形成され、 量子準位間の遷移エネルギーが、該活性層の弱励起下で
    の遷移エネルギーよりも小さい自励発振型半導体レーザ
    装置であって、前記活性層及び前記クラッド構造は、Al
    zGa1-zAs(0≦z≦1)材料から形成されており、 該活性層はバリア層とウェル層とを有しており、前記可
    飽和吸収層と該ウェル層とが同一材料から形成されてお
    り、該バリア層のAl組成が前記光ガイド層のAl組成以上
    である自励発振型半導体レーザ装置。
  14. 【請求項14】活性層と、該活性層を挟むクラッド構造
    とを備えた自励発振型半導体レーザ装置であって、 該クラッド構造は、1×1018cm-3以上の不純物がドープ
    された可飽和吸収層と、該可飽和吸収層の近傍に配置さ
    れた光ガイド層とを含んでおり、 該可飽和吸収層には、量子準位が形成され、 量子準位間の遷移エネルギーが、該活性層の弱励起下で
    の遷移エネルギーよりも小さい自励発振型半導体レーザ
    装置であって、前記可飽和吸収層と前記活性層が同一材
    料から形成されており、該活性層のウェル層の厚さが前
    記可飽和吸収層の厚さよりも小さい自励発振型半導体レ
    ーザ装置。
  15. 【請求項15】活性層と、該活性層を挟むクラッド構造
    とを備えた自励発振型半導体レーザ装置であって、 該クラッド構造は、p型不純物及びn型不純物の両方が
    ドープされた可飽和吸収層を含んでいる自励発振型半導
    体レーザ装置。
  16. 【請求項16】前記可飽和吸収層は、前記クラッド構造
    のn型部分に挿入されている請求項15に記載の自励発振
    型半導体レーザ装置。
  17. 【請求項17】前記可飽和吸収層におけるキャリア濃度
    は、半導体レーザ素子を駆動しない状態で、1×1018cm
    -3以上である、請求項15に記載の自励発振型半導体レー
    ザ装置。
  18. 【請求項18】活性層と、n型可飽和吸収層とを備えた
    自励発振型半導体レーザ装置であって、 前記n型可飽和吸収層でのキャリアの寿命が、6ナノ秒
    以下である自励発振型半導体レーザ装置。
  19. 【請求項19】半導体レーザ素子と、該半導体レーザ素
    子から放射されたレーザ光を記録媒体に集光する集光光
    学系と、該記録媒体によって反射されたレーザ光を検出
    する光検出器とを備えた光ディスク装置であって、 該半導体レーザ素子は、活性層と、該活性層を挟むクラ
    ッド構造とを備え、該クラッド構造は、1×1018cm-3
    上のn型不純物がドープされている可飽和吸収層を含ん
    でいる自励発振型半導体レーザである、光ディスク装
    置。
  20. 【請求項20】前記半導体レーザ素子は、情報を前記記
    録媒体に記録するときには単一モードで発振し、該記録
    媒体に記録されている情報を再生するときには、自励発
    振モードで動作する請求項19に記載の光ディスク装置。
  21. 【請求項21】前記半導体レーザ素子の近傍に前記光検
    出器が配置されている請求項19に記載の光ディスク装
    置。
  22. 【請求項22】前記光検出器は、シリコン基板に形成さ
    れた複数のフォトダイオードを有しており、前記半導体
    レーザ素子は該シリコン基板上に配置されている請求項
    21に記載の光ディスク装置。
  23. 【請求項23】前記シリコン基板は、その主面に形成さ
    れた凹部と、該シリコン基板の凹部の一側面に形成され
    たマイクロミラーとを有しており、 前記半導体レーザ素子は、該シリコン基板の該凹部内に
    配置され、該半導体レーザ素子から放射されたレーザ光
    が該マイクロミラーによって反射された後、該シリコン
    基板の主面にほぼ垂直な方向に進むように該マイクロミ
    ラーと該主面との角度が設定されている、請求項22に記
    載の光ディスク装置。
  24. 【請求項24】前記マイクロミラーの表面には、金属膜
    が形成されている請求項23に記載の光ディスク装置。
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