JP2963665B2 - 水熱反応処理用容器 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は水熱反応処理において高
温高圧の雰囲気を得るために使用される反応容器のうち
で，開口をシールパッキンングを介して封止する型式の
水熱反応処理用容器（以下，単に容器と記す）に関する
ものである．

【０００２】

【従来の技術】水熱反応を利用して物質を合成，あるい
は分解するには，材料となる特定の物質を適当な溶媒中
に置き，所定の時間高温高圧の雰囲気に保持する必要が
ある．このため，高温高圧に耐えられ，しかも内容物で
ある物質や溶媒に対して化学的に安定な容器が求められ
てきた．

【０００３】実際の容器の取り扱いにおいては，常温常
圧のもとで，材料となる特定の物質を適当な溶媒中に置
き，開口に蓋をするなどして容器を封止し，容器全体を
加熱することで，容器内部を高温高圧の雰囲気にして水
熱反応を促し，所定の時間保持した後に容器が冷めるの
を待って開封するという方法がとられている．

【０００４】通常容器は，複数の種類の材質のものから
成っており，また，容器の各部は各々異なる形状をもつ
ので，容器が加熱，あるいは冷却される過程において，
容器各部の膨張量，あるいは収縮量はそれぞれに異な
り，容器の加熱，保持，冷却の全過程において，内部が
非常に高圧となる容器の開口を確実に封止するのが難し
いのが現状である．

【０００５】また，水熱反応を利用する研究や応用は未
知のものが多くあると認識されており，容器内部をより
高温高圧の雰囲気にしたり，容器内に各種の光線や電流
を導入することで新たな成果が期待されているのである
が，容器内部を更に高温高圧の雰囲気にするためには，
激しい温度と圧力の変化に耐えられる開口の封止が可能
な容器の開発が求められ，容器内に光線を導入するため
には容器の少なくとも一部を光線を通過させることが可
能な材料で形成することが求められ，また，容器内に電
流を導入するためには容器の少なくとも一部を絶縁性の
材料で形成し，電極を取り付けることが求めらる．

【０００６】従来の容器は高温高圧に耐え，しかも内容
物に対して化学的に安定であることが必要なため，一般
的には，容器の身の部分と蓋の部分に耐蝕性合金が使用
され，封止部分には身や蓋の部分に使用される材料に比
較して柔軟で，化学的に安定な白金などの金属がシール
パッキング材として用いられる容器や，身の部分と蓋の
部分の封止部をシールパッキングを介在させずに直に接
する方式の容器，また，身の部分と蓋の部分の封止部を
特定の物質や溶媒を入れた後に溶接して封止する方式の
容器が知られている．

【０００７】これらのうちで，身の部分と蓋の部分の封
止部をシールパッキングを介在させずに直に接する方式
の容器は，使用にあたり常温常圧のもとで材料となる特
定の物質を適当な溶媒とともに容器の身の内部に入れ，
容器の身の部分と蓋の部分の封止面を合わせ，温度の上
昇にともなって発生する極めて高い圧力や，容器各部の
変形に耐えられるように非常に強い力で締め付ける必要
がある．この際に容器の身と蓋の接する部分にたとえ些
細な傷や変形があった場合にも封止が不完全なものとな
り，高圧の内容物が噴出する恐れがあるので，封止の際
に細心の注意や多大な腕力と経験が要求される．

【０００８】また，身の部分と蓋の部分を溶接すること
によって封止する方式の容器は，温度の上昇にともなっ
て発生する極めて高い圧力や，容器各部の変形に耐えら
れる溶接が不可欠なので，細心の注意や豊富な経験，高
い溶接技術が要求され，開封の際にも容器の封止部分を
切り取るなどの作業が必要であり，開封によって容器自
体も損傷を受けるので，容器を繰り返し使用することが
できないというものである．

【０００９】このため従来一般には，容器の身の部分と
蓋の部分に耐蝕性合金が使用され，封止部分には身や蓋
の部分に使用される材料に比較して柔軟で，化学的に安
定な白金などの貴金属がシールパッキング材として用い
られる型式の容器が多く使用されてきたが，これも加熱
による内部の圧力の上昇や容器の変形によるシールパッ
キングの緩みを見込んで容器の蓋を強く締め付ける必要
があり，多大な腕力と共に細心の注意と経験や技術が要
求され，また，蓋を強く締め付けていたことにより，開
封の際には蓋を取り外すのが難しく，シールパッキング
も損傷を受けるので，高価な貴金属製のシールパッキン
グを繰り返し使用できなくなる場合が多く，不経済でも
あった．

【００１０】また，従来の容器は，蓋にネジ部を持つた
めに蓋のネジ部が容器内部で発生する圧力を受け止めな
ければならなかったり，蓋を多大な力で締めつけなけれ
ばならないという理由で，高温下の耐圧縮性や耐蝕性，
絶縁性には優れていても脆弱な，例えば，石英ガラスや
セラミックスのような材料で蓋を形成することができな
かった．

【００１１】

【発明が解決をしようとする課題】解決しようとする問
題点は，従来の水熱反応用容器のうちで開口をシールパ
ッキンングを介して封止する型式の容器が，容器開口の
封止の際に加熱による内部の圧力の上昇や容器の変形に
よるシールパッキングの緩みを見込んで容器の蓋を強く
締め付ける必要があり，多大な腕力や経験が要求される
点，蓋を強く締め付けていたことにより開封の際には蓋
を取り外すのが難しい点，またその際，シールパッキン
グが損傷を受けるので高価な貴金属製のシールパッキン
グを繰り返し使用できないことが多く不経済であるとい
う点，および容器の中に各種の光線や電流を導入したい
という点である．

【００１２】

【課題を解決するための手段】本発明は，身の上部内面
に設けたシールパッキング当たり面と，蓋外周側面に設
けたシールパッキング当たり面，蓋カバーに設けたシー
ルパッキング押圧環状クサビで構成された間隙にシール
パッキングを装着し，身のシールパッキング当たり面下
部に蓋支持突起と，蓋カバーを上下に貫通する蓋取り外
し孔を持つことで，従来の容器のうちで開口をシールパ
ッキンングを介して封止する型式の容器が，容器開口の
封止の際に加熱による内部の圧力の上昇や容器の変形に
よるシールパッキングの緩みを見込んで容器の蓋を強く
締め付ける必要があり，多大な腕力や経験が要求される
点，蓋を強く締め付けていたことにより開封の際には蓋
を取り外すのが難しい点，またその際，シールパッキン
グも損傷を受けるので高価な貴金属製のシールパッキン
グを繰り返し使用できない場合が多くあり不経済である
という点を解決し，容器内に各種の光線を導入したいと
いう希望を，蓋カバーを上下に貫通する蓋取り外し孔を
光線の導入孔として使用し，蓋を耐熱性を持ち光線を通
過させることのできる材料で形成することで実現し，容
器内に電流を導入したいという希望を容器の蓋を絶縁性
の材料で形成し，これに電極を取り付けることで実現し
た．

【００１３】

【作用】図１は，本発明の１実施例の断面図であって，
１は容器の身の部分，２は身のシールパッキング当たり
面，３は蓋，４は蓋のシールパッキング当たり面，５は
蓋カバー，６はシールパッキング押圧環状クサビ，７は
間隙，８はシールパッキング，９は蓋支持突起，１０は
蓋取り外し孔，１１は蓋カバー締めつけネジ，１２は蓋
下面である．１３は耐熱性を持ち光線を通過することの
できる材料で形成した蓋，１４は絶縁性の材料で形成し
た電極付の蓋である．

【００１４】常温常圧のもとで，容器の身の部分１に特
定の物質や溶媒を入れ，蓋支持突起９の上に蓋３を置
き，身のシールパッキング当たり面２と蓋に設けられた
シールパッキング当たり面４とで構成された間隙７にシ
ールパッキング８を装着した後に，蓋カバー５を置き，
蓋カバーに設けられた蓋カバー締めつけ雌ネジと身の部
分上部に設けられた蓋カバー締めつけ雄ネジを組み合わ
せ締め付ける．

【００１５】蓋外周側面に設けたシールパッキング当た
り面直上の蓋カバーには，シールパッキング押圧環状ク
サビ６があり，その先端は下方のシールパッキング８に
向かって突出しているので，蓋カバーを締め付けること
によってシールパッキングを強い力で身のシールパッキ
ング当たり面と蓋のシールパッキング当たり面に押し付
けることとなり，多大な力を加えなくとも容易に容器の
封止が可能である．

【００１６】本発明の容器を加熱すると，内部の圧力が
上昇し，蓋下面は圧力を受け蓋全体が上方に押し上げら
れようとするが，蓋が上方に押し上げられれば押し上げ
られる程，シールパッキング押圧環状クサビがシールパ
ッキングを強い力で身のシールパッキング当たり面と蓋
のシールパッキング当たり面に押し付けることとなり，
容器の加熱にともなう内部圧力の上昇や膨張に耐え封止
を維持することができる．

【００１７】容器が冷却される過程においては，容器内
部の圧力の減少にともなって蓋下面に働く圧力は低下す
るが，蓋下面の受圧面積を身や蓋のシールパッキング当
たり面の面積に対して大きく取ることができるので，常
にシールパッキングを強い力で身のシールパッキング当
たり面と蓋のシールパッキング当たり面に押し付けるこ
とになり容器の封止は保たれる．

【００１８】容器が冷却されて開封するには，蓋カバー
の外周に設けられた蓋カバー締めつけ雌ネジと身の部分
上部内側に設けられた蓋カバー締めつけ雄ネジを緩めて
組み合わせを解く．この際にもし，蓋カバーと蓋が内部
の圧力によって結合されていた場合には，蓋取り外し穴
から金属棒のような工具を差し入れ蓋に衝撃を与えた
り，蓋取り外し穴の内面に雌ネジを形成してこれに押し
ネジをねじ込むことによって蓋の封止面を傷めることな
く容易に蓋と蓋カバーを分離することができ，シールパ
ッキンングも同時に取り外すことができる．シールパッ
キングは損傷を受けないので繰り返し使用することが可
能である．

【００１９】

【実施例】図２は本発明の実施例のシールパッキンング
周辺の拡大図である．シールパッキング押圧環状クサビ
の先端は，下方のシールパッキングに向かって突出して
いるが，クサビの先端を，シールパッキングに向かって
山形に成形してあり，斜面の傾斜を変えることによっ
て，シールパッキングが身のシールパッキング当たり面
と蓋のシールパッキング当たり面に対して押圧する力を
加減できる．また，蓋のシールパッキング当たり面の直
径を蓋の上部に行くにしたがってしだいに小さくするこ
とで，容器の開封の際に，シールパッキングや蓋を容易
に取り外すことができる．

【００２０】また，本発明の容器の蓋は蓋下面で受けた
圧力をシールパッキングを介して身と蓋のシールパッキ
ング当たり面と蓋カバーのシールパッキング押圧環状ク
サビに分散して伝達するだけなので，蓋が受ける力は専
ら圧縮である．加えて形状も単純なので，従来は脆弱で
あるとの理由で容器の蓋として使用することが困難であ
った，例えば石英ガラスのような耐熱性に優れた光線を
通過することのできる材料や，セラミックスのような絶
縁性に優れた材料で蓋を形成することができるようにな
り，蓋取り外し孔を光線導入孔として使用することで，
容器内に各種の光線を導入することが可能となり，絶縁
性のセラミックスで電極付の蓋を形成し，蓋取り外し孔
を電流導入孔として使用することで，容器内に電流を導
入することが可能となった．

【００２１】

【発明の効果】本発明による水熱反応処理用容器は，開
口の封止にあたって，従来の容器に比較して小さな力で
封止することができ，容器内で発生する圧力をシールパ
ッキングの押圧に利用するため，容器の加熱，保持，冷
却の各過程においても開口を確実に封止できるものであ
る．また，開封の際にシールパッキングが損傷を受けな
いので反復使用でき経済性においても優れているという
利点がある．

【００２２】蓋を光線が通過できる材料で形成し，蓋カ
バーに設けられた光線導入孔から特定の光線を照射する
ことによって，従来の容器ではできなかった高温高圧の
雰囲気に各種の光線を加えた水熱反応処理が可能とな
り，蓋を絶縁性に優れた材料で形成し，これに電極を取
り付けることによって，従来の容器ではできなかった高
温高圧の雰囲気に電流を加えた水熱反応処理が可能とな
った．

【００２３】更に本発明による容器は，使用にあたり，
多大な腕力や経験による習熟，また高度な技術を必要と
しないので，作業に従事する者は，本来の課業に集中で
きるという効果もある．

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による容器の構造を示した説明図であ
る．

【図２】本発明による容器の封止部を拡大した説明図で
ある．

【図３】従来の容器の構造を示した説明図である．

【符号の説明】

１ 容器の身の部分 ２ 身のシールパッキンング当たり面 ３ 蓋 ４ 蓋のシールパッキング当たり面 ５ 蓋カバー ６ シールパッキング押圧環状クサビ ７ 間隙 ８ シールパッキンング ９ 蓋支持突起 １０ 蓋取り外し孔 １１ 蓋カバー締めつけネジ １２ 蓋下面 １３ 耐熱性を持ち光線を通過することのできる材料で
形成した蓋 １４ 絶縁性の材料で形成した電極付の蓋

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】容器の開口をシールパッキングを介して封
   止する型式の水熱反応処理用容器において、容器の開口
   を上として置く場合、容器の身の部分上部内面に設けた
   シールパッキング当たり面と、容器蓋外周側面に設けた
   シールパッキング当たり面、容器の身の部分上部内面と
   容器蓋外周側面との間の間隙に容器の開口側から装着さ
   れると共にシールパッキングを後記の蓋支持突起側に押
   圧するシールパッキング押圧環状クサビを備えた蓋カバ
   ーと、容器の身の部分上部内面に設けたシールパッキン
   グ当たり面下部に設けた蓋支持突起と、蓋カバーを上下
   に貫通する蓋取外し孔を持つことを特徴とする水熱反応
   処理用容器.