JP2959635B2 - 液晶表示素子用補償板およびその製造方法 - Google Patents

液晶表示素子用補償板およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は液晶性高分子を利用した液晶表示素子用補償
板とその製造方法に関する。
〔従来の技術及び発明が解決しようとする課題〕
液晶は、電場や磁場、せん断力などの外場によって配
向状態が変化し、これに伴う光学的性質の変化を利用す
ることにより各種光エレクトロニクスの分野で利用され
ている。このうち液晶性高分子は低分子液晶に較べて液
晶状態で高粘性であるため、液晶状態で配向させたの
ち、ガラス転移点以下に冷却することによって液晶の配
向状態を固定化することができるという低分子液晶に見
られない特徴を有している。これを利用して、熱書き込
みの光メモリーや光学フィルターなどの光エレクトロニ
クス分野での応用が試みられている。これらを実現する
ためには所望の分子配向を高度に制御するとともに正確
な膜厚制御を行う必要がある。一種の光学フィルターで
あるスーパーツイステッドネマティック(STN)型液晶
表示素子用の色補償板は、STN型液晶表示素子の液晶セ
ルと偏光板の間に挿入され、液晶セルによって楕円偏光
となった光を直線偏光に戻すように機能する必要がある
が、この様な機能は液晶性高分子を水平に、かつ、一定
の方向に高い秩序度を均一性を持って配向させるととも
に、補償板の光学異方性Δnと膜厚dの積であるレター
デーションΔn・dを厳密に制御する必要がある。ま
た、この様な表示デバイスに用いるためには大面積にわ
たるレターデーションの均一性も要求される。
低分子液晶の場合、配向制御方法はほぼ確立されてい
るが、液晶性高分子の場合、十分には確立されていな
い。液晶性高分子の配向制御の例としては、ずり応力の
ような外力を加える方法、磁場や電場のような外場を与
える方法等が知られているが、これらは大面積の配向制
御が不可能であったり、均一性の点で十分とは言えな
い。配向処理を施した基板間の空隙に低分子液晶を注入
する方法をそのまま液晶性高分子に適用した場合には、
液晶性高分子の高粘性のため、注入時の流れに沿って液
晶性高分子が配向してしまい、所望の配向が得られなか
ったり、大きな面積になると注入すら困難となる。ま
た、低分子液晶の場合、ギャップ制御用の微粒子を片側
の基板上に分散させ、対向基板を重ね合わせることによ
って基板間のギャップを制御し、それによって液晶層の
厚さを均一に制御する方法が広く用いられているのが、
この方法を液晶性高分子に適用した場合にも、注入の困
難さに加え、微粒子によって注入中の液晶性高分子の配
向が乱されてしまい、配向欠陥を生じるという問題もあ
る。
本発明は以上のような従来技術の問題点に鑑みてなさ
れたものであり、その目的は、大面積にわたって膜厚が
均一で、高度に配向制御された液晶性高分子を利用した
液晶表示素子用補償板およびその製造方法を提供するこ
とにある。
〔課題を解決するための手段及び作用〕
上記目的を達成するため、本発明によれば、液晶性高
分子を一方向に配向させるような配向処理の施された一
対の基板と、該基板間に挾持されたギャップ制御用の微
粒子が分散された液晶性高分子膜とから構成される液晶
表示素子用補償板が提供される。
また、本発明によれば、液晶性高分子を一方向に配向
させるような配向処理の施された第一の基板上にギャッ
プ制御用の微粒子を含む液晶性高分子膜を形成し、液晶
性高分子を配向させた後、同様に配向処理された第二の
基板をその配向処理面が液晶性高分子に密接するように
重ね合わせることを特徴とする液晶表示素子補償板の製
造方法が提供される。
次に本発明を図面を用いて詳細に説明する。
第1図は本発明に係る補償板の構成を示す断面図であ
り、ガラス、プラスチック等の透光性基板1,11の間に配
向した液晶性高分子層3が形成されている。液晶性高分
子層3中には該層3の厚さを制御するための微粒子6が
分散されている。
第2図は本発明に係る補償板の製造工程を模式的に示
したものである。
まず、ガラス、プラスチック等の基板1に配向処理層
2を形成する。配向処理の方法としては、ポリイミド、
ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル
イミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコ
ール、ポリアクリロニトリル等の高分子被膜を形成後、
ラビング処理をする方法、アルコキシシラン、有機チタ
ネートなどの有機金属化合物などの塗膜またはその熱処
理膜をラビング処理する方法、酸化珪素などの斜め蒸着
法などを例示することができる。またプラスチック基板
を直接ラビング処理することによって配向処理すること
も可能で、この場合、配向処理層2は不要となる。
ついで、配向処理面に液晶高分子を塗布し液晶性高分
子層3を形成する。液晶性高分子にはギャップ制御用の
微粒子6が分散されている。微粒子6としては、ポリス
チレン、ポリジビニルベンゼン、および両者の共重合
体、ベンゾグアナミン等の高分子化合物の球状微粒子、
シリカ、酸化ジルコニウムなどの球状微粒子、切断した
ガラスファイバー等が例示できる。微粒子6の粒径は所
望の膜厚により異なるが2〜10μmの範囲が一般的であ
る。
用いることのできる液晶性高分子はサーモトロピック
な液晶性高分子であり構造は特に限定されないが、例え
ばポリエステル、ポリエステルアミド、ポリカーボネー
ト、ポリエーテル等で主鎖に液晶性残基を有する下記構
造の主鎖型液晶性高分子: (但し、Phはフェニレン基、 又は であり、*は不斎炭素原子、nは0〜18の整数を表わ
す。) あるいはビニル系高分子、ポリシロキサンなどで側鎖に
液晶性残基を有する下記構造の側鎖型液晶性高分子: (但し、R3はアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原
子、ニトロ基又はシアノ基であり、nは0〜18の整数を
表わす。) などを例示することができる。液晶性高分子は単独でま
たは混合して用いられる。液晶性高分子中に光学活性基
を導入したり、光学活性な化合物を添加することもでき
る。
塗布法としては微粒子を混練した液晶性高分子を、ガ
ラス転移点以上の温度で直接塗布する方法、または溶媒
中に液晶性高分子を溶解させるとともに、微粒子を分散
させた塗布液を塗布または印刷する方法を用いることが
できる。膜厚の均一性と制御のしやすさおよび分散の均
一性の点で後者を特に好ましく用いる。液晶性高分子の
溶媒としては、用いる液晶性高分子の種類、重合度等に
よって異なるが、通常下記の物より選ばれる。
クロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエタ
ン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、オル
ソジクロロベンゼンなどのハロゲン系炭化水素、フェノ
ール、o−クロロフェノール、クレゾールなどのフェノ
ール系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトア
ミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶
媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶
媒およびこれらの混合溶媒。
溶液濃度は塗布法、高分子の粘性、目的とする膜厚等
により異なるが、通常は2〜50wt%の範囲で使用され、
好ましくは5〜30wt%の範囲で使用される。微粒子の添
加量は塗布法及び分散量に依存する。好ましい分散量は
1平方mm当り数個〜200個程度であり、塗布法にスピン
コート法を用いた場合の好ましい添加量は1mlあたり20
〜300個程度である。塗布法としてはスピンコート法、
ロールコート法、グラビアコート法、ディッピング法、
スクリーン印刷法などを採用できる。液晶性高分子を塗
布後、溶媒を乾燥して除去し、液晶性高分子が液晶性を
示す温度で熱処理して液晶性高分子を配向させる。
この様に本発明では液晶性高分子の片面のみを配向層
と接触させ、他方は外気に接触させている。かりに、両
側を配向層と接触させると十分な配列は行われない。こ
れは、液晶性高分子が低分子液晶に較べて高粘性である
ため、配向層と接触することによって配向膜界面の流動
性が大きく低下してしまう結果、分子の再配列が行われ
にくいものと考えられる。本発明では配向膜界面が1つ
であるため、容易に再配列がおこり、均一配向が起こり
易い。また、液晶性高分子の配向は、微粒子が分散され
た状態で行われ、このとき液晶性高分子はほとんど流動
しない。そのため、微粒子が原因となる配向欠陥はほと
んど生じない。
液晶性高分子を配向させるときの温度は、液晶性高分
子のガラス転移点以上で、かつ液晶性高分子の等方性液
体への転移温度より低いことが必要である。配向膜の界
面効果による配向を助ける意味でポリマーの粘性は低い
方がよく、したがって温度は高い方がよいが、あまり高
いとコストの増大と作業性の悪化を招き好ましくない。
一般的には50℃〜300℃の範囲が好ましい。
以上のようにして得られた液晶性高分子膜はモノドメ
イン配向した優れた配向性を有しているが、塗布法であ
るため厚さ分布は避けられず、所望の厚みに対して0.5
%以下の面精度を得ることは困難である。本発明におい
ては一旦、液晶性高分子を基板上で配向させた後、第1
図のように他の配向処理の施された第二の基板11を重ね
合わせることにより、ギャップ剤の粒径にほぼ等しい高
精度のギャップ制御を可能にするものである。なお、こ
の際、微粒子6の粒径と塗膜の厚さはほぼ等しいことが
必要である。粒径が大きい場合には気泡の混入を生じ、
また小さい場合には微粒子を混入させた効果が失われ
る。
第二の基板11はガラス、プラスチック等の透光性のも
のであり、その液晶性高分子と接触する面には液晶性高
分子をほぼ水平にかつ一方向に配列させるための配向処
理が施されている。配向処理の方法は第一の基板1につ
いて述べた方法を用いることができる。配向処理の方向
は、所望のねじれ角ωによって決まる第二の基板面に接
する液晶性高分子の所望の配列方向にほぼ等しく設定す
る。
第二の基板11を重ね合わせたのち、液晶性高分子が液
晶相をとる温度に再度加熱し、一定時間保持するととに
よって、第二の基板11に接する液晶性高分子の分子を第
二の基板11の配向処理方向に揃えることができる。すな
わち、第一の基板1上においてねじれ角が面内分布を有
していたとしても、第二の基板11の配向規制によって全
面的に均一なねじれ角が得られる。ωと、両基板1,11の
配向処理方向の成す角とはおおむね等しいか、または両
者の差が概ね180゜の整数倍であることが特に好まし
い。この条件からのずれが大きくなると、液晶分子の再
配列が困難となりドメイン分割を生じ易くなる。許容さ
れるずれ角は概ね45゜以下で、好ましくは30゜以下、特
に好ましくは20゜以下である。
本発明では液晶性高分子は一旦、片面のみが配向膜に
配列し易い状態で第一の配向処理がなされ、その後、液
晶性高分子の再配列に必要な動きが小さい条件で両面か
らの界面規制が働くため、容易にねじれ角が高精度で制
御されたモノドメイン配向が得られるという特徴があ
る。得られた配向状態は、ガラス転移点以下に急冷する
ことにより保持されるので、きわめて安定である。
本発明において液晶性高分子にねじれ構造を導入する
には、液晶性高分子としてコレステリック液晶相を呈す
るものを用いればよい。コレステリック液晶相を呈する
液晶性高分子は前述のようにネマティック相を呈する液
晶性高分子中に光学活性基を導入するか、光学活性な物
質を添加すればよい。この場合、液晶性高分子は配向膜
面では配向処理の方向に配列し、厚み方向に自然ピッチ
に相当するねじれ角、すなわち自然ピッチをPo、膜厚を
d、ねじれ角をωとしたときにω=360×d/Po(゜)な
るねじれ角を形成する。
〔実施例〕
次に本発明の実施例を説明するが、本発明はここに例
示の実施例に限定されるものではない。
(実施例) ガラス基板上に日立化成製のポリイミドワニスPIQを
スピンコート法で約1000Åの厚さに塗布し、ついで270
℃で焼成してポリイミド膜を形成した。ついでポリイミ
ド膜上をテトロン植毛布で一方向にこすり、ラビング処
理を行った。
下記式aの繰返し単位を持つネマティック液晶性ポリ
シロキサン系液晶性高分子と下記式bの繰返し単位を持
つ光学活性基を有するポリシロキサン系液晶性高分子を
フェノール/テトラクロロエタン混合溶媒(重量比50:5
0)に25重量%となるように溶解させた。高分子aと高
分子bの割合は3:1(重量比)とした。この溶液にさら
に粒径4.5μmのジビニルベンゼンの球体を溶液1ml当り
0.2mgの割合で添加し、超音波分散を行った。
この溶液を先の配向膜上にスピンコート法により塗布
し、ついで70℃で真空乾燥した後、高分子aがネマティ
ック相を呈する170℃で30分熱処理を行った。この状態
で室温に急冷し、膜厚約4.6μmで約220゜ねじれた配向
固定化された液晶性高分子膜が得られた。ジビニルベン
ゼン球体の分散密度は1平方mm当り約10個であった。
ついで、同様の配向処理を施した第二のガラス基板
を、ラビング方向が220゜の角度をなすように真空中で
配向膜面が液晶性高分子に接するように重ね、再度170
℃で30分間熱処理を行った。そして室温に急冷すること
により本発明の補償板とした。この補償板の配向組織を
観察したところ、モノドメインな均一配向であり、ねじ
れ角は220゜で、らせん軸は基板に対して垂直方向であ
った。レターデーションΔn・dは0.82μmであった。
150mm×150mmの補償板においてねじれ角の分布は全く
なく、膜厚の分布は0.2μm以下できわめて優れた均一
性を示した。
〔発明の効果〕
本発明の液晶表示素子用補償板は、レターデーション
が均一でねじれ角も高度に制御されているため、液晶表
示素子の表示をきわめて均一にすることができる。ま
た、液晶性高分子膜が基板の間に挾まれているために信
頼性が高い。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係る液晶表示素子用補償板の構成を示
す断面図、第2図は第1図の補償板の製造工程を示す図
である。 1……第一の基板 3……液晶性高分子層 6……微粒子 11……第二の基板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−282519(JP,A) 特開 平2−84616(JP,A) 特開 平2−123324(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G02F 1/1335 G02B 5/30 G02F 1/1339

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】液晶性高分子を一方向に配向させるような
    配向処理の施された一対の基板と、該基板間に挾持され
    ギャップ制御用の微粒子が分散された液晶性高分子膜と
    から構成される液晶表示素子用補償板。
  2. 【請求項2】液晶性高分子を一方向に配向させるような
    配向処理の施された第一の基板上にギャップ制御用の微
    粒子を含む液晶高分子膜を形成し、液晶性高分子を配向
    させた後、同様に配向処理された第二の基板をその配向
    処理面が液晶性高分子に密接するように重ね合わせるこ
    とを特徴とする液晶表示素子用補償板の製造方法。
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