JP2956432B2 - ピロリル基ペンダントポリシラン及びその製造方法 - Google Patents

ピロリル基ペンダントポリシラン及びその製造方法

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滋 森
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、置換基中にピロリル基
を有し、光導電性材料や導電性材料として有用なポリシ
ラン及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来よ
り、ポリシランはマイクロエレクトロニクスの分野にお
けるレジスト材、オプトエレクトロニクスにおける光導
電体として有用性が認められている。
【0003】かかるポリシランは、当初その置換基とし
てメチル基に代表されるアルキル基やフェニル基を有す
るものが主であった(R.West et al.,
J.Am.Chem.Soc.,103,7352(1
981))。
【0004】その後、置換基として水素、反応性の炭素
−炭素二重結合を含有する置換基を持つポリシランや、
ハロゲン化アルキル基を有するポリシランが合成される
ようになり、ポリシランを架橋することが可能になるな
ど、応用への期待が高くなった(R.West et
al.,J.Organomet.Chen.,30
0,327(1986)。
【0005】近年、その他の置換基として、シリル基を
導入したポリシラン(特開昭63−12636号公
報)、フェノール性の置換基を導入し、レジスト材料へ
の応用に関しても報告されている(特開昭63−113
021号公報)。
【0006】また、本出願人は、ポリシランの光導電性
及び導電性に着目し、カルバゾリル基を含有する置換基
をポリシランに導入することにより、光分解性を抑制し
たポリシランを提案した(特開平5−43702号公
報)。
【0007】しかしながら、より導電性等を高め、ポリ
シランの応用性を拡大したポリシランが要望されてい
る。
【0008】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明者は、上
記要望に応えるべく鋭意検討を重ねた結果、下記一般式
(3)で示されるジオルガノハロゲノシランと下記一般
式(4)で示されるピロリル基含有ジハロゲノシランと
を不活性溶媒中でアルカリ金属の存在下に反応させるこ
とによって、下記一般式(1)で示される新規なピロリ
ル基ペンダントポリシランが得られること、さらにこの
ピロリル基含有のポリシランは、電気伝導度が従来のポ
リシランより向上していると共に、ピロリル基自体がピ
ロール環の重合性を有するため、この重合性を利用して
ポリシラン含有架橋性組成物の原料とすることができる
ことを見い出し、本発明をなすに至ったものである。
【0009】
【化3】 [但し、式中R、R、R及びRはそれぞれ水素
原子、炭素数1〜12の一価炭化水素基又は下記式
(2) (但し、式中R、Rは水素原子、アルキル基又はア
リール基であり、pは0〜12の整数である。)で示さ
れるピロリル基含有一価炭化水素基であるが、R、R
の少なくとも一つは式(2)で示されるピロリル基含
有一価炭化水素基であり、k、mは0≦k<1、0<m
≦1、k+m=1、nは6以上の整数である。]
【0010】従って、本発明は、上記一般式(1)で示
されるピロリル基ペンダントポリシラン、及び上記一般
式(3)で示されるジオルガノハロゲノシランと上記一
般式(4)で示されるピロリル基含有ジハロゲノシラン
とを不活性溶媒中でアルカリ金属の存在下に反応させる
ことを特徴とする上記ピロリル基ペンダントポリシラン
の製造方法を提供する。
【0011】以下、本発明について更に詳しく説明する
と、本発明のポリシランは、上述したように下記一般式
(1)で示されるものである。
【0012】
【化4】
【0013】上記式中R、R、R及びRはそれ
ぞれ水素原子又はアルキル基、アリール基、アラルキル
基等の炭素数1〜12の一価炭化水素基、下記式(2)
で示されるピロリル基含有一価炭化水素基などが挙げら
れるが、R、Rのうち少なくとも1つは、下記式
(2)で示されるピロリル基を含有する一価炭化水素基
である。
【0014】
【化5】 (但し、式中R5、R6は水素原子、アルキル基又はアリ
ール基であり、pは0〜12の整数である。)
【0015】なお、アルキル基としては炭素数1〜12
のものが挙げられるが、特に低級アルキル基が好まし
く、またアリール基は炭素数6〜12のものが挙げら
れ、フェニル基等が例示される。
【0016】また、k、mは0≦k<1、0<m≦1、
k+m=1であり、重合度を示すnは6以上の整数であ
り、本発明のピロリル基ペンダントポリシラン類の特性
を十分に発揮させるためには重合度は高いものの方が好
ましい。
【0017】本発明の式(1)のポリシラン類は、上述
したように下記一般式(3)で示されるジオルガノハロ
ゲノシランと下記一般式(4)で示されるピロリル基含
有ジハロゲノシランとを不活性溶媒中でアルカリ金属の
存在下に反応させることによって製造することができ
る。
【0018】 R12SiX2 …(3) R34SiX2 …(4) (但し、式中R1〜R4は上記と同様の意味を示し、Xは
ハロゲン原子である。)
【0019】ここで、出発原料の一般式(4)で示され
るピロリル基含有ジハロゲノシランは、例えばN−アル
ケニルピロールと(オルガノ)ジハロゲノヒドロシラン
とをモル比1〜1.5の割合で混合し、付加反応させる
ことにより合成することができる。この場合、付加反応
は塩化白金酸等の付加反応触媒の存在下で行うことが好
ましい。その反応条件は特に制限されないが、0〜10
0℃で1〜5時間とすることが望ましい。なお、このピ
ロリル基含有ジハロゲノシランは、モノペンダントタイ
プあるいはジペンダントタイプのいずれでも良い。
【0020】上記式(3)、(4)のハロゲノシラン類
の反応に用いられるアルカリ金属としては、例えばリチ
ウム、カリウム、カリウムナトリウム合金、ナトリウム
等を用いることができるが、中でもナトリウムが好まし
く用いられる。このアルカリ金属の添加量は、式(3)
及び式(4)のジハロゲノシラン類の合計使用量1モル
に対して2〜3モル、特に2〜2.1モルの範囲とする
ことが好ましい。添加量が2モルに満たないと反応が十
分に進まない場合がある。
【0021】また、不活性溶媒として具体的には、トル
エン、キシレン等の芳香族炭化水素や、デカン、ドデカ
ン、テトラリン等の脂肪族炭化水素が好適に使用され、
その使用量は式(3)と式(4)のジハロゲノシラン類
の合計使用量に対して1〜10倍量、特に2〜5倍量と
することが望ましい。
【0022】上記式(3)及び式(4)のジハロゲノシ
ラン類とアルカリ金属との反応条件は適宜調整できる
が、100℃以上の温度条件下で1〜6時間行うことが
望ましい。
【0023】而して、本発明の製造方法では、不活性溶
媒にアルカリ金属を添加し、加熱、撹拌を行った後、式
(3)及び式(4)のジハロゲノシラン類の混合物を滴
下して行うことができ、この反応は発熱的に進行し、ア
ルカリ金属が消費されたところで反応が終了する。
【0024】この場合、式(3)及び(4)のジハロゲ
ノシラン類を用いることにより、一次元のポリマー又は
環状体が生成するが、J.W.WeidmanらがJ.
Am.Chem.Soc.,(1988).110,2
342で報告しているように三官能性のトリハロシラン
類を添加しても良く、これによってネットワーク状のポ
リシラン類を得ることもできる。更に、予め主鎖骨格に
炭素−炭素不飽和結合を含有するハロシラン類を用いる
ことも可能であり、これによってポリシラン骨格中に炭
素−炭素不飽和結合を導入することもできる。
【0025】反応終了後は、過剰のアルカリ金属をアル
コールで失活させた後、有機層を取り出してアセトン等
から沈殿させ、本発明の式(1)のポリシランを得るこ
とができる。
【0026】このようにして得られる本発明のピロリル
基ペンダントポリシラン類は、通常のメチルフェニルポ
リシランに比べて電気伝導度が高く、例えば[(Me2
Si)0.75(Py−(CH23−SiMe)0.25
n(但し、式中Pyはピロリル基、Meはメチル基を示
す。以下同様。)のヨウ素をドーピングしたときの電気
伝導度は4.5×10-3S/cmであり、ドーピングし
た(MePhSi)n(但し、式中、Phはフェニル基
を示す。以下同様。)の電気伝導度が10-6S/cmで
あるのに対して非常に電気伝導度が高い。また、ピロー
ル環の重合性を利用して、ポリシラン含有架橋性組成物
の原料とすることもできる。そのため、光導電性材料及
び導電性材料等に好適に応用することがてきる。
【0027】
【発明の効果】本発明のピロリル基ペンダントポリシラ
ン類は、電気伝導度が高く、ポリシラン類の導電性材料
等への応用範囲を広げるものである。
【0028】また、本発明の製造方法によれば、かかる
ピロリル基ペンダントポリシラン類を工業的に有利に製
造することができる。
【0029】
【実施例】以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体
的に示すが、本発明は下記の実施例に制限されるもので
はない。
【0030】[実施例1]まず、3−(N−ピロリル)
プロピルメチルジクロロシランを次のように合成した。
窒素雰囲気下、N−アリルピロール15.6g(146
ミリモル)、トルエン30g、塩化白金酸/ブタノール
溶液0.1g(白金含有量2.0重量%)をフラスコに
納め、75℃に加熱し、撹拌を開始した。メチルジクロ
ロシラン20.7g(180ミリモル)を40分で滴下
した。加熱撹拌を2時間行った後、蒸留により下記式で
示される3−(N−ピロリル)プロピルメチルジクロロ
シラン27.8g(収率86%)を得た。質量分析を行
ったところ、分子イオン質量の221が確認され、目的
物が得られたことが確認された。
【0031】
【化6】
【0032】次に、下記のように[(MePhSi)
0.83(Py−(CH23−SiMe)0.17nを合成し
た。
【0033】窒素雰囲気下、金属ナトリウム3.0g
(130ミリモル)にトルエン30gを加え、110℃
に昇温し、激しく撹拌してナトリウムディスパージョン
を調製した。
【0034】このディスパージョンに3−(N−ピロリ
ル)プロピルメチルジクロロシラン2.2g(10ミリ
モル)とメチルフェニルジクロロシラン9.55g(5
0ミリモル)を15分間で加え、110℃で4時間撹拌
した。反応終了後、室温まで冷却し、残存するナトリウ
ムを失活させるため、メタノールを約5ml滴下し、更
に水洗を行った。次に、有機層を取り出し、塩化カルシ
ウム上で乾燥後、反応混合物を濃縮した。得られた粘稠
物をアセトン100mlに加え、ポリマーを沈殿させ
た。沈殿物をろ別し、真空乾燥することにより、上記式
で示されるピロリルペンダントポリシラン0.5gを白
色沈殿として得た。
【0035】GPC分析により、このポリマーの重量平
均分子量はポリスチレン換算で8800であった。ま
た、ポリシランに由来する紫外線吸収極大(λmax=3
36nm)が確認された。
【0036】[実施例2]下記のように[(MePhS
i)0.91(Py−(CH23−SiMe)0.09nを合
成した。
【0037】窒素雰囲気下、金属ナトリウム3.0g
(130ミリモル)にトルエン30gを加え、110℃
に昇温し、激しく撹拌してナトリウムディスパージョン
を調製した。
【0038】このディスパージョンに3−(N−ピロリ
ル)プロピルメチルジクロロシラン1.1g(5ミリモ
ル)とメチルフェニルジクロロシラン9.55g(50
ミリモル)を10分間で加え、110℃で4時間撹拌し
た。反応終了後、室温まで冷却し、残存するナトリウム
を失活させるため、メタノールを約5ml滴下し、更に
水洗を行った。次に、有機層を取り出し、塩化カルシウ
ム上で乾燥後、反応混合物を濃縮した。得られた粘稠物
をアセトン100mlに加え、ポリマーを沈殿させた。
沈殿物をろ別し、真空乾燥することにより、上記式で示
されるピロリルペンダントポリシラン0.84gを白色
沈殿として得た。
【0039】GPC分析により、このポリマーの重量平
均分子量はポリスチレン換算で6400であった。ま
た、ポリシランに由来する紫外線吸収極大(λmax=3
37nm)が確認された。
【0040】[実施例3]下記のように[(Me2Ph
Si)0.75(Py−(CH23−SiMe)0.25n
合成した。
【0041】窒素雰囲気下、金属ナトリウム2.34g
(100ミリモル)にトルエン20gを加え、110℃
に昇温し、激しく撹拌してナトリウムディスパージョン
を調製した。
【0042】このディスパージョンに3−(N−ピロリ
ル)プロピルメチルジクロロシラン2.1g(10ミリ
モル)とジメチルジクロロシラン3.87g(30ミリ
モル)を15分間で加え、110℃で5時間撹拌した。
反応終了後、室温まで冷却し、残存するナトリウムを失
活させるため、メタノールを約5ml滴下し、更に水洗
を行った。次に、有機層を取り出し、塩化カルシウム上
で乾燥後、反応混合物を濃縮した。得られた粘稠物をア
セトン100mlに加え、ポリマーを沈殿させた。沈殿
物をろ別し、真空乾燥することにより、上記式で示され
るピロリルペンダントポリシラン0.4gを白色沈殿と
して得た。
【0043】GPC分析により、このポリマーの重量平
均分子量はポリスチレン換算で19000であった。ま
た、ポリシランに由来する紫外線吸収極大(λmax=3
16nm)が確認された。
【0044】[参考例]実施例1と3で得られたピロリ
ル基ペンダントポリシランにヨウ素をドーピングし、そ
の電気伝導度を測定した。結果を表1に示す。なお、比
較としてメチルフェニルポリシランの結果を併記した。
【0045】
【表1】
フロントページの続き (72)発明者 福島 基夫 神奈川県川崎市高津区坂戸3丁目2番1 号 信越化学工業株式会社 コーポレー トリサーチセンター内 (56)参考文献 特開 平6−93253(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08G 77/60

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(1)で示されるピロリル基
    ペンダントポリシラン。 【化1】 [但し、式中R、R、R及びRはそれぞれ水素
    原子、炭素数1〜12の一価炭化水素基又は下記式
    (2) (但し、式中R、Rは水素原子、アルキル基又はア
    リール基であり、pは0〜12の整数である。)で示さ
    れるピロリル基含有一価炭化水素基であるが、R、R
    の少なくとも一つは式(2)で示されるピロリル基含
    有一価炭化水素基であり、k、mは0≦k<1、0<m
    ≦1、k+m=1、nは6以上の整数である。]
  2. 【請求項2】 下記一般式(3) RSiX …(3) (但し、式中R、Rはそれぞれ水素原子又は炭素数
    1〜12の一価炭化水素基であり、Xはハロゲン原子で
    ある。)で示されるジオルガノハロゲノシランと、下記
    一般式(4) RSiX …(4) 【化2】[但し、式中R、Rは水素原子、炭素数1
    〜12の一価炭化水素基又は下記式(2) (但し、式中R、Rは水素原子、アルキル基又はア
    リール基であり、pは0〜12の整数である。)で示さ
    れるピロリル基含有一価炭化水素基であるが、R、R
    の少なくとも一つは式(2)で示されるピロリル基含
    有一価炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。]
    で示されるピロリル基含有ジハロゲノシランとを不活性
    溶媒中でアルカリ金属の存在下に反応させることを特徴
    とする請求項1記載のピロリル基ペンダントポリシラン
    の製造方法。
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