JP2955848B2 - 熱溶融部材の熱溶着方法及び熱溶着用加熱コイル - Google Patents

熱溶融部材の熱溶着方法及び熱溶着用加熱コイル

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JP2955848B2
JP2955848B2 JP10025015A JP2501598A JP2955848B2 JP 2955848 B2 JP2955848 B2 JP 2955848B2 JP 10025015 A JP10025015 A JP 10025015A JP 2501598 A JP2501598 A JP 2501598A JP 2955848 B2 JP2955848 B2 JP 2955848B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば電線の端末部に
樹脂製のキャップを電線の外皮と熱溶着させて固着し、
電線内部への水の進入等を防止する際に使用される熱溶
融部材の熱溶着方法及び熱溶着用加熱コイルに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば多数本の銅線(導線)で形
成され比較的外径の大きい電線(ケーブル)は、電線メ
ーカから木製のドラムに巻回された状態で出荷される。
そして、このドラムに巻回された電線の端末部は、内部
の銅線の端面が外部に露出した状態となるため、電線内
部への水の進入による銅線の腐食等を防止するために、
一般的に図8に示すように、電線51の端末部51aに
キャップ52が被冠されている。
【0003】このキャップ52は、一般的にビニールチ
ューブ等で形成されて、切断された電線51の端末部5
1aに被せられるが、ドラムの運搬中等におけるキャッ
プ52の端末部51aからの脱落や電線51内部への水
等の進入を防止するために、キャップ52をビニールテ
ープ53の巻回によって電線51の端末部51aに固着
して、端末部51aを封止状態としている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このビ
ニールチューブ53とキャップ52による電線51の端
末部51aの封止構造にあっては、キャップ52を電線
51の端末部51aに長期間強固に固着することができ
ず、端末部51a内への水等の進入を長期に亘り確実に
防止することが困難であるという問題点があった。
【0005】すなわち、ビニールテープ53やビニール
製のキャップ52は経時劣化し易く、特にビニールテー
プ53にあっては耐候性に弱いため、温度差や屋外に保
管された場合等に、経時劣化によって破れたり矧がれた
りすることが多々あり、電線51の端末部51aの封止
状態が不完全な状態となる等、キャップ52を電線51
の端末部51aに長期に亘り確実に固着し、水等の進入
を確実に防止することが困難になるわけである。
【0006】その結果、封止状態が不完全な電線51の
端末部51aの、キャップ52の内面と電線51の外皮
54の表面間に形成される隙間から水等が電線51内部
に進入して、この水が毛細管現象によって銅線55に沿
って内部にまで進入し、銅線55を腐食させる。そのた
め、電線51の使用にあたっては、この腐食した所定長
さの部分を切断して廃棄しているのが実状であり、電線
51の使用に無駄が生じ易く、特に外径の大きな高価な
電線51にあっては、コスト的に大きな損失となってい
る。
【0007】本発明は、このような事情に鑑みてなされ
たもので、請求項1ないし5記載の発明の目的は、熱溶
融部材を発熱部材を介して誘導加熱させると共に、誘導
加熱時に熱溶融部材に所定の押圧力を付与させることに
より、熱溶融部材を確実に熱溶着させて長期に亘り安定
した固着状態が得られる熱溶融部材の熱溶着方法を提供
することにある。また、請求項6ないし11記載の発明
の目的は、熱溶融部材に所定の押圧力を付与しつつ誘導
加熱させることにより、熱溶融部材を確実に熱溶着させ
て長期に亘り安定した固着状態が得られると共に、熱溶
着作業の作業効率の向上を図り得る熱溶着用加熱コイル
を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成すべ
く、請求項1記載の発明は、所定形状及び所定材質の熱
溶融部材を加熱溶融させて熱溶着させる熱溶融部材の熱
溶着方法において、前記熱溶融部材の熱溶着部位に誘導
加熱によって発熱し得る発熱部材を設けると共に、該発
熱部材の周囲に、所定形状を保持するコイルと該コイル
の周囲を密閉状態で覆うカバーとを有する加熱コイルを
配置し、該加熱コイルのコイルへの通電により前記発熱
部材を誘導加熱して熱溶融部材を溶融させると共に、前
記カバーの外形を拡げ該カバーで熱溶融部材に所定の押
圧力を付与して熱溶着部材を熱溶着させることを特徴と
する。
【0009】このように構成することにより、熱溶着さ
せる熱溶融部材の熱溶着部位に発熱部材を混入させる等
して設け、この発熱部材を加熱コイルのコイルへの通電
によって発熱させ、熱溶融部材を溶融させて熱溶着させ
る。この熱溶融部材の誘導加熱による加熱溶融時に、例
えば加熱コイルのコイルへの通電でカバーの外形が外側
に拡がり、このカバーの外面によって熱溶着部材に所定
の押圧力を付与させる。これにより、例えば一対の熱溶
融部材が互いに押し付けられた状態で熱溶着されるた
め、熱溶融部材が確実に熱溶着されて長期に亘り安定し
た固着状態が得られる。
【0010】また、請求項2記載の発明は、前記熱溶融
部材が、内部に導線が収容された電線の熱溶融し得る外
皮と、該電線の端末部に被冠されて熱溶融し得るキャッ
プとで構成され、熱溶着によって電線の端末部にキャッ
プが固着されることを特徴とする。このように構成する
ことにより、電線の端末部に例えば発熱部材が混入され
たキャップを被せ、その外側に加熱コイルを配置して誘
導加熱すると、キャップ内の発熱部材が誘導加熱されて
発熱しキャップが溶融すると共に、キャップに略接触状
態で配置されている電線の外皮も溶融し、キャップと外
皮が熱溶着される。これにより、電線の端末部にキャッ
プが熱溶着という強固な構造で固着され、電線の端末部
に長期間に亘り安定した封止状態が得られる。
【0011】また、請求項3記載の発明は、前記熱溶融
部材が熱溶融し得る一対の樹脂製のパイプで構成され、
該パイプが熱溶着によって接合されることを特徴とす
る。このように構成することにより、例えば配水管等に
使用される一対の塩ビパイプの接合部に、例えば発熱部
材を塗布する等して設け、この発熱部材の外側に加熱コ
イルを配置して発熱部材を誘導加熱すると共に、外側に
拡がった加熱コイルの外面で外側に位置するパイプの外
周面を内側のパイプ方向に押圧する。これにより、一対
のパイプに所定の圧力を付与した状態で両パイプが溶融
して熱溶着し、長期に亘り強固な接合状態が得られる。
【0012】また、請求項4記載の発明は、前記発熱部
材が熱溶融部材の熱溶着部位に予め混入されていること
を特徴とする。このように構成することにより、熱溶融
部材を熱溶着すべき所定位置に配置するだけで発熱部材
がセットされ、熱溶融部材の熱溶着作業がより容易とな
る。
【0013】また、請求項5記載の発明は、前記発熱部
材が熱溶融部材の熱溶着部位の表面に塗布されているこ
とを特徴とする。このように構成することにより、例え
ば電線の端末部の外面にペースト状の発熱部材を塗布す
るだけで、発熱部材を熱溶着部材の所定部位に設けるこ
とができ、従来のキャップをそのまま使用できる等、熱
溶融部材の熱溶着作業がより容易となる。
【0014】また、請求項6記載の発明は、所定形状及
び所定材質の熱溶融部材を加熱溶融させて熱溶着させる
熱溶着用加熱コイルにおいて、所定の形状を保持し通電
により前記熱溶融部材の熱溶着部位に設けられた発熱部
材を誘導加熱し得るコイルと、該コイルの外側に所定の
間隙を有して設けられてコイルを覆うと共に、前記間隙
内の圧力によって伸縮し得るカバーとを具備し、コイル
への通電によって発熱部材を発熱させて熱溶融部材を溶
融させると共に、前記カバーを膨張させ該カバーにより
熱溶融部材に所定方向の押圧力を付与して熱溶融部材を
熱溶着させ得ることを特徴とする。
【0015】このように構成することにより、コイルを
熱溶着部材の所定位置に配置して例えば高周波通電する
と、コイルから誘起される磁束によって発熱部材が誘導
加熱され熱溶融部材が溶融する。また、コイルへの通電
時に、コイルを覆っているカバー内の圧力を上昇させる
ことにより伸縮可能なカバーが外側に拡がり、このカバ
ーによって熱溶融部材に所定の押圧力が付与される。す
なわち、熱溶着すべき熱溶融部材が溶融されつつ所定の
押圧力が付与された状態で熱溶着され、強固な固着状態
が得られると共に、熱溶融部材の溶融と押圧力の付与を
加熱コイルによって略同時に行うことができて、熱溶着
作業の作業効率の向上が図れる。
【0016】また、請求項7記載の発明は、前記カバー
が複数回巻回されたコイルの各コイルを覆う如く設けら
れていることを特徴とする。このように構成することに
より、例えばコイルとしての銅パイプの外側に所定の間
隔を有してカバーを嵌装し、これを所定回数巻回するこ
とにより、加熱コイルを形成することができるため、加
熱コイル自体の形状を適宜に設定することが容易とな
り、使い勝手の優れた加熱コイルが得られる。
【0017】また、請求項8記載の発明は、前記カバー
が複数回巻回されたコイルの全体を覆う如く設けられて
いることを特徴とする。このように構成することによ
り、所定回数巻回されたコイルの外側にカバーが設けら
れるため、例えば隣設する各コイル間に大きな間隙を設
ける必要がなくなり、各コイルを略密着状態で巻回し得
る等、加熱コイルによる加熱効率が向上すると共に、カ
バーのコイルへの取り付けが容易となる。
【0018】また、請求項9記載の発明は、前記カバー
の熱溶融部材が配置される側と反対側に、カバーの外側
への拡がりを規制し得る規制部材が設けられていること
を特徴とする。このように構成することにより、加熱コ
イルのカバー内の圧力により、カバーがコイルの外側に
向けて拡がろうとするが、規制部材により熱溶着部材の
押圧に作用しない方向の拡がりが抑制され、熱溶着部材
方向への拡がりが大きくなる。これにより、カバーによ
る熱溶融部材の押圧効率が向上し、より強固な熱溶着状
態が得られる。
【0019】また、請求項10記載の発明は、前記カバ
ーの内部に気体もしくは液体からなる膨脹部材が収容さ
れ、該膨脹部材のコイルの発熱による膨脹によってカバ
ーが外側に拡がることを特徴とする。このように構成す
ることにより、予め加熱コイルのカバー内に空気等の気
体や水等の液体からなる膨脹部材を所定量収容させ、こ
の膨脹部材を通電によるコイルの発熱で膨脹させてカバ
ーを外側に拡げる。これにより、カバーで熱溶融部材に
所定の押圧力が付与されると共に、コイルへの通電時に
カバー内に膨脹部材を一々供給する必要がなくなり、よ
り溶着作業性に優れた加熱コイルが得られる。
【0020】また、請求項11記載の発明は、前記カバ
ーの内部に気体圧もしくは液体圧が供給されることによ
り、カバーが外側に拡がることを特徴する。このように
構成することにより、加熱コイルのコイルへの通電に連
動して、カバー内に空気等の気体圧もしくは水等からな
る液体圧が供給されることによってカバーが外側に拡げ
られる。これにより、熱溶融部材に所定の押圧力が付与
されると共に、カバー内に供給される気体もしくは液体
により、通電によるコイル自体の温度上昇が抑えられ、
加熱コイルによる熱溶融部材の加熱効率が向上する。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて詳細に説明する。図1〜図3は、本発明に係
わる熱溶融部材の熱溶着方法を実施し得る熱溶着装置の
一実施例を示し、図1がその概略構成図、図2がその要
部断面図、図3が熱溶着後の一部破断した要部側面図で
ある。
【0022】図1において、熱溶着装置1は、電線2の
端末部2aに被冠されているキャップ3の外側に配置さ
れた加熱コイル4と、この加熱コイル4に高周波電流を
供給するトランジスタインバータ5と、加熱コイル4内
に冷却水w1と膨脹部材としての圧力水w2を循環供給
する水循環供給装置6と、トランジスタインバータ5及
び水循環供給装置6を制御する制御装置7等を有してい
る。
【0023】電線2は、その外周面にビニールチューブ
等の外皮8を有し、この外皮8内には、所定本数の銅線
9が収容されており、その外形形状は所定の外径R1を
有する円形に形成されている。そして、この電線2は所
定の長さを有し、図示しない木製のドラムに巻回されて
いる。
【0024】この電線2の端末部2aに被冠されている
キャップ3は、ビニールキャップ等の熱溶融材によって
底部側が閉塞する如く形成され、その内径R2は電線2
の外径R1より若干大きいか等しく設定されている。ま
た、キャップ3の熱溶着部位となる開口部3aには、発
熱部材を形成する磁性材料からなる粉体10が所定の範
囲に混入されている。この粉体10はキャップ3の板厚
方向のできる限り内面側に多く遍在させて設けることが
好ましい。
【0025】加熱コイル4は、図2に示すように、絶縁
性のチューブ12が嵌装されたコイルとしての円形の銅
パイプ11と、この銅パイプ11の外周面を覆う如く設
けられたカバー13を有し、電線2の端末部2aとキャ
ップ3の開口部3aの外周面側に所定回数巻回(図1で
は略3回)された状態で配置されている。カバー13
は、例えば耐熱性の材質で形成されると共に直径方向に
所定寸法伸縮可能に形成され、このカバー13と銅パイ
プ11の外周面となるチューブ12間には所定の間隙1
4が形成されている。
【0026】そして、加熱コイル4は、図1に示すよう
に、接続ケーブル15を介してトランジスタインバータ
5に接続されている。すなわち、接続ケーブル15は、
加熱コイル4の銅パイプ11内に冷却水w1を供給する
チューブ16と、加熱コイル4のカバー13内に所定圧
の圧力水w2を供給するチューブ17と、チューブ16
内に挿通された網導線18を有している。
【0027】また、トランジスタインバータ5は、IG
BT、パワーMOSFET等の半導体スイッチング素子
をオン、オフさせることによって、高周波の大電流を発
生させる図示しないインバータ回路を有し、その出力部
には、高周波電流を出力する一対の電極端子が設けら
れ、この電極端子部には冷却水供給口及び圧力水供給口
(いずれも図示せず)がそれぞれ設けられている。
【0028】そして、このトランジスタインバータ5の
出力部の冷却水供給口及び圧力水供給口には水循環供給
装置6が接続され、これにより、接続ケーブル15の網
導線18を介してトランジスタインバータ15の高周波
電流が加熱コイル4の銅パイプ11に供給される共に、
水循環供給装置6の冷却水w1及び圧力水w2が、トラ
ンジスタインバータ5、チューブ16、17を経由し
て、加熱コイル4の銅パイプ11内及びカバー13の間
隙14内に循環供給される。
【0029】なお、図1では、トランジスタインバータ
5と水循環供給装置6及び制御装置7を別々に示した
が、これらは別体で設けることもできるし、一つの筐体
内に一体的に設けることもできる。また、チューブ16
とチューブ17をトランジスタインバータ5を介して水
循環供給装置6に接続したが、これらのチューブ16、
17は、直接水循環供給装置6に接続しても良いし、ま
た、チューブ16とチューブ17を兼用(冷却水w1及
び圧力水w2として同一水を使用)して、加熱コイル4
側の端部で分岐させるように構成することもできる。
【0030】さらに、銅パイプ11及びカバー13に供
給される冷却水w1及び圧力水w2の圧力は、制御装置
7によって可変し得るように設定されており、また、加
熱コイル4は図1の右側面視で円形に形成され、初期状
態において、キャップ3の開口部3aの外周面に対し
て、所定の間隙を有する如く設定されている。
【0031】次に、上記熱溶着装置1の動作について説
明する。先ず、熱溶着しようとする電線2の端末部2a
の所定寸法内側(反端面側)を、例えば図示しない治具
上にセットして、電線2の端末部2aを略水平状態とす
る。そして、この電線2の端末部2aの外周にキャップ
3の開口部3aを、キャップ3の弾性力等を利用して嵌
挿させて押し込み、キャップ3を端末部2aに略嵌合状
態で被せる。
【0032】電線2の端末部2aの外周にキャップ3が
被せられたら、このキャップ3の外側に接続ケーブル1
5を介してトランジスタインバータ5に接続されている
加熱コイル4を配置してセットし、この加熱コイル4を
所定位置に保持する。そして、この状態で制御装置7を
作動させ、その制御信号によりトランジスタインバータ
5を作動させると共に水循環供給装置6を作動させる。
【0033】トランジスタインバータ5が作動すると、
所定の高周波電流がケーブル15の網導線18を介して
加熱コイル4の銅パイプ11に流れ、銅パイプ11から
発生する磁束により、キャップ3の開口部3aに混入さ
れている粉体10に渦電流が誘起されて粉体10が発熱
する。また、トランジスタインバータ5と連動して作動
する水循環供給装置6により、チューブ16を介して銅
パイプ11内に一定圧力の冷却水w1が循環供給され
て、高周波電流の通電による銅パイプ11の発熱が抑え
られる。
【0034】また、チューブ17を介して加熱コイル4
のカバー13の間隙14内に所定圧の圧力水w2が循環
供給され、この間隙14内に循環供給される圧力水w2
は、高周波電流の通電開始直後の圧力が低く(例えば銅
パイプ11内の圧力と同一に)設定され、所定時間通電
した後の圧力が、制御装置7の制御信号により高められ
る。なお、圧力水w2は、その圧力を変化させることな
く一定とすることも勿論可能である。この間隙14内に
循環供給される圧力水w2の圧力によって、伸縮可能な
カバー13が、図2の矢印イの如く360度全周におい
て外側に拡がり、カバー13が二点鎖線で示す位置まで
拡がってカバー13の外径R3が大きくなる。この外径
R3が大きくなったカバー13の外周面によって、キャ
ップ3の開口部3a部分の外周面が電線2の外皮8方向
に押圧される。
【0035】そして、カバー13でキャップの開口部3
aが外側から押し付けられた状態で、所定時間粉体10
が発熱すると、キャップ3の内面及び電線2の外皮8外
面が溶融状態となって、互いの樹脂が一体化、すなわち
キャップ3が電線2の外皮8に熱溶着される。
【0036】これにより、図3に示すように、電線2の
端末部2aがキャップ3で覆われ、熱溶着部19により
電線2の端末部2a端面が外部と完全に遮断された封止
状態となり、水等の進入による銅線9の腐食が防止され
る。この電線2は、図3のa線に沿って切断して、腐食
していない銅線8を外部に露出することによって、電線
2が使用される。
【0037】このように、上記実施例の熱溶着装置1に
おいては、キャップ3の熱溶着部分である開口部3aに
発熱部材としての粉体10を混入させて設け、このキャ
ップ3を電線2の端末部2aに被せると共に、このキャ
ップ3の外側に高周波電流が供給される加熱コイル4を
配置し、この加熱コイル4で粉体10を誘導加熱により
発熱させてキャップ3及び電線2の外皮8を溶融させる
ことができるため、キャップ3を電線2の端末部2aに
熱溶着によって固着することができる。
【0038】また、キャップ3と電線2の外皮8の加熱
コイル4による加熱溶融時に、加熱コイル4のカバー1
3を外側に拡げて、このカバー13によってキャップ3
を電線2の外皮8に押し付けるため、溶融したキャップ
材や外皮材を良好な状態で混合(溶着)させることがで
きて、熱溶着の強度を高めることができる。また、加熱
コイル4のカバー13の拡がりが360度全周で半径方
向に略均等に拡がるため、キャップ3の内面の円周方向
全域と電線2の外皮8の外面の円周方向全域を均一な状
態で熱溶着することができる。
【0039】これらのことから、例えばドラムに巻回さ
れた電線2を屋外等に長期間保管した場合であっても、
キャップ3と電線2の外皮8の熱溶着部分19の経時変
化がほとんどなく、電線2の端末部2aの完全な封止状
態を長期に亘り維持することができて、端末部2a内へ
の水等の進入による銅線9の腐食を確実に防止すること
ができる。その結果、従来のように、銅線9の腐食によ
る電線2の使用できない廃棄部分を極力短くすることが
でき、特に、外径R1が大きく高価な電線2の無駄を省
くことができる。
【0040】また、加熱コイル4は、接続ケーブル15
をトランジスタインバータ5に接続して、制御装置7で
トランジスタインバータ5と水循環供給装置6を作動さ
せるだけで、粉体10の加熱とキャップ3の押圧を略同
時に行うことができるため、熱溶着作業の作業効率を向
上させることができる。
【0041】さらに、加熱コイル4の銅パイプ11の外
側に水循環供給装置6によって圧力水w2が循環される
ため、銅パイプ11内を循環する冷却水w1と合わせ、
銅パイプ11の内面及び外面を冷却することができて、
銅パイプ11に大電流が流れた場合でも、銅パイプ11
自体の発熱を抑えることができる。その結果、銅パイプ
11の発熱による加熱効率の低下が防止され、比較的小
容量の電流で粉体10を誘導加熱することが可能にな
る。
【0042】また、加熱コイル4が可撓性を有する接続
ケーブル15で接続されているため、加熱コイル4を電
線2が巻回されたドラムの位置まで容易に運搬してセッ
トすることができる等、加熱コイル4の使い勝手を向上
させることができる。またさらに、粉体10が予め混入
されているキャップ3を電線2の端末部2aへ嵌合し、
キャップ3の外側に円環状の加熱コイル4を電線2の軸
方向から嵌装するだけでセット状態とすることができる
ため、キャップ3の電線2への嵌合作業が容易になると
共に、例えばキャップ3や加熱コイル4のセット作業を
ロボット等によって自動的に行うこともできる等、電線
2の端末部2aの封止作業を容易かつ効率的に行うこと
ができる。
【0043】図4及び図5は、上記熱溶着装置1に使用
される加熱コイルのそれぞれ他の実施例を示す断面図で
ある。なお、上記実施例と同一部位には同一符号を付
し、その詳細な説明は省略する。以下の各実施例におい
ても同様である。図4に示す加熱コイル24は、コイル
としての銅パイプ11を巻回し、この巻回した銅パイプ
11全体の外周部に、所定の間隔14を有して銅パイプ
11全体を覆うようにカバー13を嵌装させると共に、
間隙14内を膨脹部材としての所定圧力の空気等からな
る気体25を供給もしくは収容させるように構成したも
のである。
【0044】この加熱コイル24においても、図示しな
いエアー供給装置から、間隙14内に気体25を供給す
ることにより、カバー13が外側に拡がりキャップ3を
電線2の外皮8方向に押圧することができて、上記実施
例の加熱コイル4と同様の作用効果を得ることができ
る。
【0045】また、図5に示す加熱コイル34は、図4
に示す加熱コイル24のカバー13の外側に、例えば内
面がカバー13に略接触する状態で、樹脂板もしくは金
属板等からなる筒円筒形状の規制部材としての筒体35
を配置するようにしたものである。
【0046】この加熱コイル34においても、上記加熱
コイル24と同様の作用効果が得られる他に、カバー1
3の外側に筒体35が配置されているため、この筒体3
5によってカバー13の反キャップ3側への拡がりを規
制することができる。その結果、カバー13をキャップ
3の押圧方向にのみ拡がらせることができて、カバー1
3の伸縮範囲の拡大(押圧力の範囲の拡大)が図れ、効
果的にカバー13を電線2の外皮8に押圧することがで
きて、熱溶着強度をより向上させることが可能になる。
なお、この規制部材としての筒体35は、図2の二点鎖
線で示すように、加熱コイル4の各カバー13の外側に
設けることも勿論可能である。
【0047】図6は、キャップ3と電線2の熱溶着時に
使用される発熱部材の他の実施例を示す一部破断した側
面図である。この実施例の発熱部材は、電線2の端末部
2aの外皮8表面とキャップ3の開口部3a内面間に介
在される状態で設けられている。この発熱部材として
は、例えばポリウレタン系の溶液内にフェライト粉体等
の誘導電流が誘起され易い粉体を、重量比率で10%〜
70%混入して形成されたペースト状発熱部材40が使
用される。
【0048】そして、このペースト状発熱部材40を刷
毛等により電線2の端末部2aの外皮8表面もしくはキ
ャップ3の開口部3a内面に略均一に塗布することによ
って、外皮8表面とキャップ3内面間に配置される。こ
のペースト状発熱部材40は、加熱コイル4への通電に
より、その内部の粉体が誘導加熱されて発熱し、キャッ
プ3と電線2の外皮8が溶融し、上記実施例の粉体10
と同様の作用効果が得られる。
【0049】この実施例のように電線2の外皮8表面と
キャップ3内面間に配置される発熱部材としては、前記
ペースト状発熱部材40に限らず、例えば上記した割合
で混合されたペースト状部材を金型の略円筒形状のキャ
ビティ内に注入して成形することによって、図7(a)
に示すように、所定の弾性を有する筒状発熱部材41に
形成し、この筒体発熱部材41を電線2の端末部2aの
外皮8表面もしくはキャップ3の開口部3a内面に嵌合
させても良い。
【0050】また、他の発熱部材としては、図7(b)
に示すように、薄い磁性材の金属板からなる筒状発熱部
材42を使用し、この筒状発熱部材42を電線2の端末
部2aの外皮8表面もしくはキャップ3の開口部3a内
面に嵌合させてもよい。この金属製の筒状発熱部材42
の場合は、軸方向にスリット42aを形成して弾力性を
持たせることにより、この弾力性を利用して電線2等に
嵌合させることが好ましい。
【0051】なお、上記実施例においては、熱溶着させ
る熱溶融部材が電線2の外皮8とキャップ3である場合
について説明したが、本発明はこれに限定されるもので
もなく、例えば配管に使用する塩ビパイプの熱溶着によ
る接合に使用することもできるし、溶融によって熱溶着
する他のあらゆる熱溶融部材にも適用することができ
る。
【0052】また、上記実施例における加熱コイルの巻
回数、銅パイプの直径、カバーの大きさ及び材質、加熱
コイル自体の形状、電線の外径、銅線数、キャップの形
状、カバー内に介在される膨脹部材の種類等も一例であ
って、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変
更可能であることは言うまでもない。
【0053】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1記載の発
明によれば、熱溶着すべき熱溶融部材に発熱部材を混入
させる等して設け、この発熱部材を加熱コイルのコイル
への通電によって発熱させて熱溶融部材を溶融させると
共に、例えばコイルへの通電による発熱作用で外側に拡
がった加熱コイルのカバー外面によって熱溶着部材を所
定の押圧力で押圧させるため、熱溶融部材を確実に加熱
溶着することができて、長期に亘り安定した熱溶着状態
を得ることができると共に、誘導加熱による溶融と同時
に熱溶融部材に押圧力が付与されるため、熱溶着作業の
作業効率を向上させることができる。
【0054】また、請求項2記載の発明によれば、請求
項1記載の発明の効果に加え、電線の端末に例えば発熱
部材が混入されたキャップを被せ、その外側に加熱コイ
ルを配置して誘導加熱することにより、加熱コイルで所
定の押圧力が付与された状態でキャップと電線の外皮が
溶融して熱溶着されるため、電線の端末部にキャップを
強固に固着することができて、端末部内への水等の進入
が確実に防止される等、電線の端末部の長期に亘る安定
した封止状態を得ることができる。
【0055】また、請求項3記載の発明によれば、請求
項1記載の発明の効果に加え、例えば配水管等に使用さ
れる一対の塩ビパイプの接合部に、例えば発熱部材を塗
布等して設け、この発熱部材の外側に加熱コイルを配置
して発熱部材を誘導加熱することにより、外側が拡がっ
た加熱コイルの外面で外側のパイプを内側のパイプに押
圧しつつ、一対のパイプを溶融して熱溶着させることが
でき、樹脂製のパイプの長期に亘る強固な接合状態を得
ることができる。
【0056】また、請求項4記載の発明によれば、請求
項1ないし3記載の発明の効果に加え、熱溶融部材を熱
溶着すべき所定位置に配置して設けるだけで、熱溶融部
材内に混入された発熱部材で熱溶融部材を溶着させるこ
とができ、熱溶融部材の熱溶着作業をより容易に行うこ
とができる。
【0057】また、請求項5記載の発明によればは、請
求項1ないし3記載の発明の効果に加え、例えば電線の
端末部の外周面に発熱部材を塗布するだけで、発熱部材
を所定部位に配置することができ、例えば従来のキャッ
プ等の熱溶融部材をそのまま使用することができる等、
熱溶融部材の熱溶着作業をより容易に行うことができ
る。
【0058】また、請求項6記載の発明によれば、熱溶
着すべき熱溶融部材が加熱コイルのコイルへの通電によ
る誘導加熱で溶融されると共に、カバーの拡がりにより
所定の圧力が付与されて状態で熱溶着されるため、強固
な熱溶着状態が得られると共に、溶融と押圧力の付与を
略同時に行うことができ、かつ溶融部材へのセットが簡
単となる等、操作性に優れた加熱コイルを得ることがで
きる。。
【0059】また、請求項7記載の発明によれば、請求
項6記載の発明の効果に加え、例えばコイルとしての銅
パイプの外側に所定の間隔を有してカバーを嵌装し、こ
れを所定回数巻回することにより、加熱コイルを形成す
ることができるため、加熱コイル自体の形状を適宜に設
定することが容易となると共に、より操作性に優れた加
熱コイルを得ることができる。
【0060】また、請求項8記載の発明によれば、請求
項6記載の発明の効果に加え、所定回数巻回されたコイ
ルに外側にカバーが配設されるため、例えば隣設するコ
イル間に大きな間隙をそれぞれ設ける必要がなくなり、
各コイルを密着状態で巻回し得て、加熱コイルによる加
熱効率が向上すると共に、カバーの取り付けを容易に行
うことができる。
【0061】また、請求項9記載の発明によれば、請求
項6ないし8記載の発明の効果に加え、規制部材により
熱溶着部材の押圧に作用しない方向の拡がりが抑制さ
れ、熱溶着部材方向への拡がりが大きくなり、カバーに
よる熱溶融部材の押圧効率が向上して、より強固な熱溶
着状態を得ることができる。
【0062】また、請求項10記載の発明によれば、請
求項6ないし9記載の発明の効果に加え、膨脹部材が収
容されたカバーにより熱溶融部材に所定の押圧力が付与
されると共に、コイルへの通電時にカバー内に膨脹部材
を一々供給する必要がなくなり、より熱溶着作業性に優
れた加熱コイルを得ることができる。
【0063】また、請求項11記載の発明によれば、請
求項6ないし9記載の発明の効果に加え、熱溶融部材が
膨脹部材の膨脹による圧力で押圧されると共に、カバー
内に供給される膨脹部材により、通電中のコイルの温度
上昇を抑えることができ、加熱コイルによる熱溶融部材
の加熱効率をより向上させることができる等の効果を奏
する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる熱溶融部材の熱溶着方法を実施
し得る熱溶着装置の一実施例を示す概略構成図
【図2】同その要部断面図
【図3】同熱溶着後の一部破断した要部側面図
【図4】同加熱コイルの他の実施例を示す断面図
【図5】同加熱コイルのさらに他の実施例を示す断面図
【図6】同発熱部材の他の実施例を示す一部破断した要
部側面図
【図7】同発熱部材のさらに他の実施例を示す斜視図
【図8】従来の電線の端末状態を示す一部破断した斜視
【符号の説明】
1 熱溶着装置 2 電線 2a 端末部 3 キャップ 3a 開口部 4、24、34 加熱コイル 5 トランジスタインバータ 6 水循環供給装置 7 制御装置 8 外皮 9 銅線 10 粉体 11 銅パイプ 13 カバー 14 間隙 15 接続ケーブル 19 熱溶着部分 25 気体 35 筒体 40 ペースト状発熱部材 41、42 筒状発熱部材 w1 冷却水 w2 圧力水
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−193933(JP,A) 特開 平6−226857(JP,A) 特開 平8−187791(JP,A) 特開 平8−77849(JP,A) 特開 平6−91760(JP,A) 特開 昭55−139015(JP,A) 特開 昭56−58711(JP,A) 特開 平7−193934(JP,A) 特開 平10−128853(JP,A) 実開 平1−135696(JP,U) 特公 昭46−30757(JP,B1) 特表 平8−509097(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H02G 1/14 H02G 15/02

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】所定形状及び所定材質の熱溶融部材を加熱
    溶融させて熱溶着させる熱溶融部材の熱溶着方法におい
    て、 前記熱溶融部材の熱溶着部位に誘導加熱によって発熱し
    得る発熱部材を設けると共に、該発熱部材の周囲に、所
    定形状を保持するコイルと該コイルの周囲を密閉状態で
    覆うカバーとを有する加熱コイルを配置し、該加熱コイ
    ルのコイルへの通電により前記発熱部材を誘導加熱して
    熱溶融部材を溶融させると共に、前記カバーの外形を拡
    げ該カバーで熱溶融部材に所定の押圧力を付与して熱溶
    着部材を熱溶着させることを特徴とする熱溶融部材の熱
    溶着方法。
  2. 【請求項2】前記熱溶融部材が、内部に導線が収容され
    た電線の熱溶融し得る外皮と、該電線の端末部に被冠さ
    れて熱溶融し得るキャップとで構成され、熱溶着によっ
    て電線の端末部にキャップが固着されることを特徴とす
    る請求項1記載の熱溶融部材の熱溶着方法。
  3. 【請求項3】前記熱溶融部材が熱溶融し得る一対の樹脂
    製のパイプで構成され、該パイプが熱溶着によって接合
    されることを特徴とする請求項1記載の熱溶融部材の熱
    溶着方法。
  4. 【請求項4】前記発熱部材が熱溶融部材の熱溶着部位に
    予め混入されていることを特徴とする請求項1ないし3
    のいずれかに記載の熱溶融部材の熱溶着方法。
  5. 【請求項5】前記発熱部材が熱溶融部材の熱溶着部位の
    表面に塗布されていることを特徴とする請求項1ないし
    3のいずれかに記載の熱溶融部材の熱溶着方法。
  6. 【請求項6】所定形状及び所定材質の熱溶融部材を加熱
    溶融させて熱溶着させる熱溶着用加熱コイルにおいて、 所定の形状を保持し通電により前記熱溶融部材の熱溶着
    部位に設けられた発熱部材を誘導加熱し得るコイルと、
    該コイルの外側に所定の間隙を有して設けられてコイル
    を覆うと共に、前記間隙内の圧力によって伸縮し得るカ
    バーとを具備し、コイルへの通電によって発熱部材を発
    熱させて熱溶融部材を溶融させると共に、前記カバーを
    膨張させ該カバーにより熱溶融部材に所定方向の押圧力
    を付与して熱溶融部材を熱溶着させ得ることを特徴とす
    る熱溶着用加熱コイル。
  7. 【請求項7】前記カバーが複数回巻回されたコイルの各
    コイルを覆う如く設けられていることを特徴とする請求
    項6記載の熱溶着用加熱コイル。
  8. 【請求項8】前記カバーが複数回巻回されたコイルの全
    体を覆う如く設けられていることを特徴とする請求項6
    記載の熱溶着用加熱コイル。
  9. 【請求項9】前記カバーの熱溶融部材が配置される側と
    反対側に、カバーの外側への拡がりを規制し得る規制部
    材が設けられていることを特徴とする請求項6ないし8
    のいずれかに記載の熱溶着用加熱コイル。
  10. 【請求項10】前記カバーの内部に気体もしくは液体か
    らなる膨脹部材が収容され、該膨脹部材のコイルの発熱
    による膨脹によってカバーが外側に拡がることを特徴と
    する請求項6ないし9のいずれかに記載の熱溶着用加熱
    コイル。
  11. 【請求項11】前記カバーの内部に気体圧もしくは液体
    圧が供給されることによってカバーが外側に拡がること
    を特徴とする請求項6ないし9のいずれかに記載の熱溶
    着用加熱コイル。
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