JP2950050B2 - プロセス制御装置 - Google Patents

プロセス制御装置

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JP2950050B2
JP2950050B2 JP27337592A JP27337592A JP2950050B2 JP 2950050 B2 JP2950050 B2 JP 2950050B2 JP 27337592 A JP27337592 A JP 27337592A JP 27337592 A JP27337592 A JP 27337592A JP 2950050 B2 JP2950050 B2 JP 2950050B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はプロセス制御装置に係
り、例えば温度、圧力、流量等のプロセス量をプロセス
制御する制御ループ系に用いるプロセス制御装置の改良
に関する。
【0002】
【従来の技術】プロセス制御は、例えば図16に示すよ
うに、制御対象1の制御量をセンサ3で測定し、この測
定信号を入力変換器5でその制御量に比例した制御入力
信号PVに変換し、プロセス制御装置7でその制御入力
信号PVと制御目標値SVとの制御偏差が「0」になる
よう例えばPID演算して制御出力信号MVを出力し、
操作器9でその制御出力信号MVに比例した操作量を出
力するとともに外乱要素が加わった状態で上記制御対象
1に加えて制御量を変化させる構成を有するもので、制
御対象1からの制御量を制御目標値SVに一致させる閉
ループ制御であってフィードバック制御とも呼ばれる。
ところが、実際のプロセス制御では、操作器9からの操
作量に必ず飽和レベルが存在するから、この飽和レベル
以上の制御出力信号MVが出力されても操作器9からの
操作量が飽和レベルで抑えられ、制御出力信号MVにお
ける飽和レベルを越えた分が無効となって制御量に反映
されない。
【0003】また、操作器9および制御対象1の機械特
性に起因する飽和レベルに加えて、制御ループ系の安全
性や良好な生産品質を確保する観点から、制御出力信号
MVの変化範囲や変化率を制限する必要がある。そこ
で、プロセス制御装置7には、制御出力信号MVの上限
制限値(以下、上限値と略す。)および下限制限値(以
下、下限値と略す。)を決める出力リミッタや、制御出
力信号MVの許容変化率を決める出力変化率リミッタを
設けるのが一般的である。
【0004】一方、プロセス制御装置7の演算手法とし
てはPID演算が多用されるが、2自由度PIDも含め
てPID演算では制御目標値SVと制御入力信号PVの
制御偏差をなくすために積分演算を用いる。しかしなが
ら、プロセス制御において制御目標値SVを変更したり
制御ループに大きな外乱が加わった場合、PID演算結
果が大きな値となり、出力リミッタによって制御出力信
号MVが制限されるものの、上述した積分演算の続行に
よってPID演算結果がますます大きくなり、制御偏差
が減少してもPID演算結果がなかなか出力リミッタの
制限値(上限値、下限値)内に入らず、制御入力信号P
Vの行き過ぎ量が大きくなってしまう、いわゆるリセッ
トワインドアップ現象が生じ易い。
【0005】そのため、上述したプロセス制御装置7に
は、PID演算結果が出力リミッタの制限値を越えてい
るとき、積分演算を止めたり制限して積分動作による出
力上昇分や下降分を抑えてリセットワインドアップ現象
を防止するアンチリセットワインドアップ(ARW)機
能が設けられている。また、プロセス制御装置7におけ
るPID演算手法は大別して位置形と速度形に分類され
る。
【0006】位置形のPID演算は、制御偏差に対して
比例P、積分I、微分Dの各演算を行い、それらを加算
してPID演算結果として制御出力信号MVを直接得る
ものであり、リセットワインドアップ現象を防止するた
めに、制御偏差の絶対値がある値より大きいときに積分
演算を制限又は停止するよう構成するのが一般的であ
る。他方、速度形のPID演算は、制御偏差に対して比
例の変化分△P、積分の変化分△I、微分の変化分△D
の各演算を行い、これらを加算して得たPID変化分演
算結果を順次前回の制御出力信号MVに加算してその時
点の制御出力信号MVを得るものである。
【0007】この速度形のPID演算においてリセット
ワインドアップ現象を防止するには、PID変化分演算
結果と前回の制御出力信号MVの加算結果が出力リミッ
タの制限値を越えたとき、その加算結果を出力リミッタ
の制限値に置き換える加算結果修正処理を行うことによ
って実現している。ところで、位置形のPID演算にお
ける上述したアンチリセットワインドアップ機能は、制
御偏差の大きさによって積分演算を制限又は停止するか
ら、プロセス制御装置7の手動/自動のバンプレス切換
えが難しい等の難点があるので、位置形のPID制御装
置7でも速度形における加算結果修正処理と等価な積分
演算修正処理、すなわち、PID演算結果が出力リミッ
タの制限値を越えたとき、積分演算結果を修正してPI
D演算結果が出力リミッタの制限値に一致するようにし
ているプロセス制御装置が多い。
【0008】図17は、従来の位置形PID演算機能を
有するプロセス制御装置7のブロック図を示している。
なお、後述する実施例も含めて特に指摘しない限り逆動
作として説明する。図17において、偏差演算部11で
n時点の制御入力信号PVnおよび制御目標値SVnか
らn時点の制御偏差Enを得て比例演算部13、微分演
算部15および積分変化演算部17へ出力し、比例演算
部13で比例演算結果Pnを、微分演算部15で微分演
算結果Dnを、積分変化演算部17でn時点の積分変化
分演算結果ΔInを得て、加算部19でそれら比例演算
結果Pnと微分演算結果Dnを加算してn時点のPD演
算結果(PDn:比例+微分)を得て加算部21へ加え
る。
【0009】積分変化演算部17からの積分変化分演算
結果ΔInはスイッチSW1を介して加算部23へ加
え、この加算部23では記憶部(Z-1)25で記憶され
た後述するn−1時点の記憶結果と加算して加算部21
へ加え、この加算部21からn時点のPID演算結果
(PIDn:比例+積分+微分)を出力リミッタ27へ
加える。これら積分変化演算部17、スイッチSW1、
加算部23および記憶部25で積分演算部29が形成さ
れている出力リミッタ27では、PID演算結果PID
nが予め設定された出力リミッタの上限値MHおよび下
限値MLを越えるときには、それら上限値MHおよび下
限値MLをn時点の制御出力信号MVnとして減算部3
1や図17では省略した制御対象へ出力するとともに、
PID>MHおよびPID<MLとなったとき各々
「1」に変化する論理信号をORゲート33へ出力す
る。
【0010】減算部31では出力リミッタ27からのn
時点の制御出力信号MVnからn時点のPD演算結果P
Dnを減算してスイッチSW2へ加え、記憶部25はス
イッチSW2を介して減算部31からの減算結果又は加
算部23からの加算結果を1時点分遅延記憶して加算部
23へ出力する。PID演算結果PIDnが上限値MH
および下限値MLを越えるとき、ORゲート33から出
力される積分修正信号SによってスイッチSW1、SW
2が「0」側の端子から「1」側の端子へ切換え制御さ
れる。これら減算部31、ORゲート33、スイッチS
W2にて積分演算修正部35が形成されている。
【0011】このような位置形のプロセス制御装置7で
は、PID演算結果PIDnが出力リミッタ29の上限
値MHと下限値MLの間に入っていれば(ML≦PID
n≦MH)、ORゲート33からの積分修正信号Sが
「0」となって積分演算修正部35のSW1、SW2が
「0」側端子へ切換わるから、 のように演算され、PID演算結果PIDnが制御出力
信号MVnとしてそのまま出力される。
【0012】しかし、PID演算結果PIDnが上限値
MH又は下限値MLのいずれかを越えると(ML>PI
Dn又はMH<PIDn)、積分修正信号Sが「1」に
変化してSW1、SW2が「1」側端子へ切換わり、 In=(In−1)=MVn−PDn (=MH−PDn又は=ML−PDn) PIDn=PDn+In=MVn (=MH又は=ML) のように積分演算結果Inが修正され、PID演算結果
PIDnが出力リミッタ29の上限値MH又は下限値M
Lと等しくなり、制御出力信号MVnとして出力され
る。
【0013】図18は、従来の速度形PID演算機能を
有するプロセス制御装置7のブロック図である。図18
において、偏差演算部37でn時点の制御入力信号PV
nおよび制御目標値SVnからn時点の制御偏差Enを
得て比例変化演算部39、微分変化演算部41および積
分変化演算部43へ出力し、比例変化演算部39で比例
変化分演算結果ΔPnを、微分変化演算部41で微分変
化分演算結果ΔDnを、積分変化演算部43でn時点の
積分変化分演算結果ΔInを得て、加算部45でそれら
比例変化分演算結果ΔPnと微分変化分演算結果ΔDn
を加算してn時点のPD変化分演算結果(ΔPDn:比
例+微分)を得て加算部47へ加える。
【0014】加算部47ではそのPD変化分演算結果Δ
PDnと積分変化分演算結果ΔInを加算して加算部4
9へ加え、加算部49ではΔPID変化分演算結果ΔP
IDnと記憶部(Z-1)51に記憶された後述するn−
1時点の記憶結果とを加算し、得られたPID演算結果
PIDnを出力リミッタ53へ加える。これら加算部4
9および記憶部51は変化分加算部55を形成してい
る。この出力リミッタ53では、PID演算結果PID
nが上限値MH又は下限値MLを越えないとき、そのP
ID演算結果PIDnを制御出力信号MVnとして記憶
部51や図示しない制御対象へ出力し、越えるときには
それら上限値MHおよび下限値MLをn時点の制御出力
信号MVnとして出力し、記憶部51はその制御出力信
号MVnを記憶する。
【0015】このような速度形のプロセス制御装置7で
は、PID演算結果PIDnが出力リミッタ53の上限
値MHと下限値MLの間に入っていれば(ML≦PID
n≦MH)、制御出力信号MVnとしてPID演算結果
PIDnがそのまま出力される。しかし、PID演算結
果PIDnが上限値MH又は下限値MLいずれかを越え
たとき(ML>PIDn又はMH<PIDn)、 MVn=MH(又は=ML) MVn−1=MVn(=MH又は=ML) のように制御出力信号MVnとして上限値MH又は下限
値MLが出力されるとともに、1時点前の制御出力信号
MVn−1がPID演算結果PIDnではなく、出力リ
ミッタ53の上限値MH又は下限値MLに修正される。
【0016】なお、図17および図18の破線を示した
フィードフォワード部59は制御目標値SVnに対する
修正演算をする部分である。このような従来のプロセス
制御装置7では、正常な動作変更例えば制御目標値SV
nが変更されると、図19(A)および(B)の制御応
答波形図に示すように、PID演算結果PIDnが出力
リミッタの上限値MHを越えたとき、制御出力信号MV
nがその上限値MHに制限されるとともに、位置形PI
Dでは積分演算結果Inを、速度形PIDでは1時点前
の制御出力信号MVn−1を修正することにより、PI
D演算結果PIDnを上限値MHに一致させる。
【0017】そのため、制御入力信号PVnが制御目標
値SVnに近づくと、PID演算結果PIDn(制御出
力信号MVn)が実線のようにすみやかに上限値MHを
離れ、制御入力信号PVnの増加を抑えるように働くた
め、同図中の破線のように修正処理を行わない場合に比
べてリセットワインドアップ現象が抑制され、位置形お
よび速度形PIDの双方で制御目標値SVnに対する行
き過ぎ量を抑えることができる。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来のプロセス制御装置7では、例えば誤設定によっ
て通常の100倍といった異常なPID定数が設定され
て制御ループが不安定になったり、連続的なノイズが制
御入力信号PVラインに混入し、PID演算結果が振動
して周期的に出力リミッタ27、53の制限値を越える
場合には、その制限値を越える度にPID演算結果がそ
の制限値に一致するように積分結果を修正され、制御偏
差Enに対応した比例出力および積分出力(特に比例出
力分)が積分結果の修正の度に失われることになる。そ
のため、制御出力信号MVが制御目標値SVに対する本
来の適正な値へ収束することができず、制御ループへ悪
影響を与え、はなはだしい場合は制御不能状態に陥るお
それがある。
【0019】また、図20(A)および(B)に示すよ
うに、制御安定状態の制御入力信号PVラインにインパ
ルス状ノイズが混入し、ノイズの立ち下がり部でPID
演算結果が出力リミッタの上限値MHを越え、修正処理
によってPID演算結果PIDnを上限値MHに一致さ
せた場合、次の時点でそのノイズが立ち上がって消滅す
ると、先に修正処理によって修正した分だけ余分にPI
D演算結果PIDnが引き戻される引き戻し現象が発生
し、同図中の破線で示すように、修正処理をしない実線
の場合に比べて再び制御が安定するまでに時間がかかる
欠点がある。図21(A)および(B)は図20と逆方
向のインパルス状ノイズによって生じる引き戻し現象の
悪影響を示すものである。
【0020】この引き戻し現象は、上述した制御入力信
号PVラインの断線、接触不良、ショート等の異常時や
その修復時にも発生する可能性がある。これらは、位置
形のプロセス制御装置7においてPID演算結果が出力
リミッタ27、53の制限値を越えた場合の不具合であ
るが、出力変化率リミッタが付加されている場合も、1
時点前の制御出力信号MVn−1に許容信号変化率を加
減算した値をそれぞれ出力リミッタの上限値MHおよび
下限値MLとみなすと、同様な不具合が発生する。さら
に、この位置形のプロセス制御装置7における積分演算
修正処理の不具合は、速度形PIDの加算結果修正処理
においても、全く同様に発生する。
【0021】もっとも、このような不具合に対し、位置
形のプロセス制御装置7では、積分演算の修正動作を連
続的に行わずに一定の時間間隔毎に間欠的に行ったり、
瞬時に行わずに一定の時間をかけて徐々に行うことによ
って引き戻し現象を軽減したものがあるが、引き戻し現
象の不具合を完全には解決することは困難である。ま
た、速度形のプロセス制御装置7では、加算結果が出力
リミッタ53の制限値を越えた場合、制御偏差Enの符
号とPID演算結果が出力リミッタ53の制限値を越え
た方向が逆の場合以外、積分値をホールドするとともに
加算結果を修正しないで単純にリミットするようにした
ものがある(図19参照)。
【0022】しかし、このように構成すると、正常動作
時における積分値の修正もなくなるため、その分だけ制
御目標値SVの変更に対するリセットワインドアップ防
止効果が劣り、制御入力信号PVnの行き過ぎ量が若干
大きくなる欠点がある。本発明者は、PID演算結果P
IDnと上限値MHや下限値MLとの関係と、並びに制
御入力信号PVnの立上がり又は立下がり、すなわち変
化方向によって上述した引き戻しが発生したり抑えられ
る点に着目し、本発明を完成させた。本発明はそのよう
な従来の欠点を解決するためになされたもので、目標値
の変更に対するリセットワインドアップ現象を抑制する
ことが可能で、かつPID定数の設定、連続的なノイズ
やインパルス状のノイズの混入によって制御ループが不
安定になっても、制御出力信号がそれらに起因して引戻
されることを抑制し、制御に対する悪影響を最小限に止
めたプロセス制御装置の提供を目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】そのような課題を解決す
るために本発明に係る第1の構成は、制御目標値と制御
対象からの制御入力信号から求めた制御偏差をなくすよ
うに少なくとも位置形の比例演算および積分演算を行
い、それらを加算して演算結果を得る制御演算部と、設
定された上限値および下限値によってその演算結果を制
限した制御出力信号を上記制御対象に出力する出力リミ
ッタと、その演算結果が上限値又は下限値に制限された
ときにその演算結果がそれら上限値又は下限値に一致す
るようにその制御演算部の積分演算値を修正する積分演
算修正部に加え、積分演算修正判断部を有している。こ
の積分演算修正判断部は、その制御入力信号の変化方向
と演算結果が上限値および下限値を越える方向とから制
御入力信号の変化の正常又は異常を判定し、異常と判定
したときにその積分演算修正部による積分演算値の修正
を禁止し、演算結果が上限値と下限値の間に戻ったと
き、又は当該時点の制御入力信号が前記積分演算値の修
正を禁止した時点より1時点前の制御入力信号レベルに
戻ったとき、積分演算値修正の禁止を解除するものであ
る。
【0024】また、本発明に係る第2の構成は、制御目
標値と制御対象からの制御入力信号とから求めた制御偏
差をなくすように少なくとも速度形の比例変化分演算お
よび積分変化分演算を行い、それらを1時点前の演算結
果と加算して当該時点の演算結果を得る制御演算部と、
設定された上限値および下限値によってその演算結果を
制限した制御出力信号を上記制御対象へ出力する出力リ
ミッタと、その演算結果が上限値又は下限値に制限され
たときに加算される1時点前の演算結果を上限値又は下
限値に置き換えてその制御演算部の加算結果を修正する
加算結果修正部に加え、加算結果修正判断部を有してい
る。この加算結果修正判断部は、制御入力信号の変化方
向と演算結果が上限値および下限値を越える方向とから
制御入力信号の変化の正常又は異常を判定し、異常と判
定した場合にその加算結果修正部の加算結果の修正を禁
止し、上限値から下限値の間に戻ったとき、又は当該時
点の制御入力信号がその加算結果の修正を禁止した時点
より1時点前の制御入力信号レベルに戻ったとき、加算
結果修正の禁止を解除するものである。そして、上述し
た第1および第2の構成では、1時点前の上記制御出力
信号値に許容信号変化幅を加算した値と上記上限値のう
ち小さい方を実際の上限値とし、1時点前の上記制御出
力信号から許容信号変化幅を減算した値と上記下限値の
うち大きい方を実際の下限値として上記出力リミッタに
設定し、上記制御出力信号の変化率を制限する出力変化
率リミッタを設けるよう構成可能である。
【0025】
【作用】このような手段を備えた本発明の第1の構成で
は、位置形PID演算結果が出力リミッタの制限値を越
えると、積分演算修正判断部が、制御入力信号PVの正
常又は異常を出力リミッタの制限値を越えた方向と制御
入力信号PVの変化方向から判定し、積分演算修正処理
を実行又は禁止させる。例えば、適正なPID定数で制
御目標値SVを正方向に変更して、PID演算結果が出
力リミッタの上限値を越えたときの制御入力信号PVの
変化方向が非負(零又は正)であれば、その積分演算修
正判断部が正常と判定して積分演算修正処理を実行さ
せ、PID演算結果が出力リミッタの制限値に戻される
のでリセットワインドアップ現象が抑制される。
【0026】また、ノイズの混入などでPID演算結果
が出力リミッタの上限値を越えたときの制御入力信号P
Vの変化方向が負であれば、積分演算修正判断部が異常
と判定して積分演算修正処理を禁止し、異常な制御入力
信号PVの変化に対してPID演算結果の引き戻しが起
こらない。さらに、積分修正判断部は、異常と判定した
一時点前の正常な制御入力信号PVを保持しており、P
ID演算結果が自然に上限値と下限値の間に戻ったとき
はもちろん、制御入力信号PVがこの正常な保持値に復
帰したとき、積分修正処理の禁止が解除されるので、目
標値変更応答中に一時的にノイズで積分修正処理が禁止
されても、ノイズの影響がなくなれば、積分修正処理が
再実行され、リセットワインドアップ現象が防止され
る。
【0027】逆に、PID演算結果が出力リミッタの下
限値を越えるときには、積分演算修正判断部が、制御入
力信号PVの変化が零または負方向であれば正常である
と判定し、正方向であれば異常と判定して同様の積分演
算修正処理をし又はその修正処理を禁止する。また、第
2の構成では、前回の制御出力信号MVn−1とPID
変化分演算結果△PIDnの加算結果が出力リミッタの
制限値を越えたとき、加算結果修正判断部が、制御入力
信号PVの正常又は異常を出力リミッタの制限値を越え
た方向と制御入力信号PVの変化方向から判定し、正常
と判定されたときにはその加算結果修正処理を実行し、
異常と判定したときにはそれらの処理を禁止する。そし
て、第1および第2の構成において出力変化率リミッタ
を設けた構成では、当該時点より1時点前の制御出力信
号値に許容信号変化幅を加算および減算するとともに、
それら加算結果および減算結果と、上限値および下限値
から実際の上限値および下限値を出力リミッタに設定す
る。
【0028】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明
する。なお、従来例と共通する部分には同一の符号を付
す。図1は本発明に係る第1の構成であり、位置形PI
D演算機能を有するプロセス制御装置を示す概略ブロッ
ク図である。図1において、制御演算部61は、制御目
標値SVと制御対象(図1では省略)からの制御入力信
号PVとから求めた制御偏差をなくすように位置形の比
例演算、微分演算および積分演算を行い、それらを加算
してPID演算結果を得て出力リミッタ(図17参照)
27へ出力するものであり、出力リミッタ27はPID
演算結果を上限値又は下限値で制限した制御出力信号M
Vnを制御対象に出力するものである。
【0029】積分演算修正部(図17参照)35は、P
ID演算結果が上限値又は下限値に制限されたとき、制
御演算部61の積分演算値を修正してPID演算結果を
上限値又は下限値に一致させるものである。積分演算修
正判断部63は、その制御入力信号PVの変化方向とP
ID演算結果が上限値又は下限値を越える方向とから制
御入力信号PVの変化の正常又は異常を判定し、異常と
判定したときに積分演算修正部35による積分演算値の
修正を禁止し、更に、PID演算結果が上限値と下限値
の間に戻ったとき、又は当該時点の制御入力信号PVが
積分演算値の修正禁止をした時点より1時点前の制御入
力信号PVレベルに戻ったとき、その積分演算値修正禁
止を解除するものである。なお、制御演算部61は、少
なくとも比例演算および積分演算を行うよう形成可能で
あり、出力変化率リミッタ65については後述する。
【0030】本発明に係る第2の構成として、速度形の
PID演算機能を有するプロセス制御装置を構成するに
は、図1において、制御演算部61が少なくとも速度形
の比例変化分演算および積分変化分演算を行い、出力リ
ミッタ27が図18の出力リミッタ53になり、積分演
算修正部35が加算結果修正部57になり、積分演算修
正判断部63が加算結果修正判断部67に変更されるだ
けで、概略構成は変らない。この加算結果修正判断部6
7は、制御入力信号PVの変化方向と、PID演算結果
が上限値又は下限値を越える方向とから制御入力信号P
Vの変化の正常又は異常を判定し、異常と判定したとき
加算結果修正部67による加算結果修正を禁止し、その
PID演算結果が上限値と下限値の間に戻ったとき、又
は当該時点の制御入力信号PVがその加算結果修正を禁
止した時点より1時点前の制御入力信号PVレベルに戻
ったとき、その加算結果修正禁止を解除するものであ
る。
【0031】そして、これら積分演算修正判断部63や
加算結果修正判断部67における修正処理の禁止条件を
まとめると、次のようになる。 禁止条件 PIDn>MH かつ PVn<PVn−1 禁止条件 PIDn<ML かつ PVn>PVn−1 (PVn−1はn−1時点の制御入力信号) そして、禁止条件が成立した時点より1時点前の制御入
力信号PVn−1をホールド入力信号値PHとすれば、
禁止条件成立時にはPH=PVn−1となる。
【0032】当該時点の制御入力信号PVnがノイズな
どで本来の変化方向と逆方向に動いた異常値であるとす
れば、ホールド入力信号値PHは禁止条件が成立した時
点より1時点前の正常な制御入力信号値であるから、修
正処理禁止を解除するには、PID演算結果PIDnが
自然に出力リミッタ27、53の出力制限値MH、ML
の間に入ってくるか、または制御入力信号PVが正常な
値すなわちホールド入力信号値PHレベルに復帰したと
きにすればよい訳である。また、積分演算修正判断部6
3や加算結果修正判断部67における禁止解除条件をま
とめると、次のようになる。
【0033】 解除条件 ML≦PIDn≦MH(禁止条件およびとも共通) 解除条件 PVn≧PH(禁止条件のとき) PVn≦PH(禁止条件のとき) 次に、上述した第1および第2の構成のプロセス制御装
置について詳細な構成を説明する。図2は本発明に係る
第1の構成(位置形のプロセス制御装置)を示すブロッ
ク図であるが、積分演算修正判断部63およびスイッチ
SW4を除き他の構成、すなわち偏差演算部11、比例
演算部13、微分演算部15、積分変化演算部17、加
算部19、加算部21、23、記憶部25、出力リミッ
タ27、積分演算部29、減算部31、ORゲート3
3、積分演算修正部35およびスイッチSW1、SW2
は図17とほぼ同様であり、積分演算修正判断部63に
特徴がある。フィードフォワード部59の図示は省略し
た。
【0034】積分演算修正判断部63は、ORゲート3
3からの積分修正信号S、上限値MHおよび下限値ML
でリミットされたとき「1」に変化する論理信号、並び
に制御入力信号PVnから上述した禁止条件および禁止
解除条件の有無を判断して積分演算修正部35の動作を
禁止又は禁止解除するものである。なお、スイッチSW
4については後述する。図3は、図2の積分演算修正判
断部63およびその周辺を詳細に示すブロック図であ
る。図3において、制御入力信号PVnは記憶部69、
減算部71およびフラグリセット部73に接続されてお
り、記憶部69は制御入力信号を1時点分記憶して当該
時点より1時点前の制御入力信号PVn−1を記憶部7
5および減算部71へ出力するものである。
【0035】記憶部75は、後述するフラグ保持部77
からの積分修正禁止信号Tが「0」から「1」に変化し
たとき、記憶部69からの制御入力信号PVn−1をホ
ールドし、ホールド信号PHをフラグリセット部73へ
出力するものであり、減算部71は記憶部69からの制
御入力信号PVn−1から制御入力信号PVnを減算し
て得た入力信号変化量DPをフラグセット部79へ出力
するものである。このフラグセット部79は、その入力
信号変化量DP、ORゲート33へ入力される上限値M
Hおよび下限値MLでリミットされたとき「1」に変化
する論理信号、並びにフラグ保持部77のフラグ状態を
取込み、上述した禁止条件又はの判定を実行し、禁
止条件が成立したときにはフラグ保持部77のフラグ
を「1」に、禁止条件が成立したときには「2」に、
それ以外のときには「0」にセット(クリア)する機能
を有する。
【0036】フラグ保持部77は、フラグが「1」又は
「2」のとき積分修正禁止信号Tを「1」に、フラグが
「0」のとき「0」にしてANDゲート81の一方の入
力側へ負論理で加えるとともに、上述した記憶部75へ
加える機能を有している。フラグリセット部73は、記
憶部75からのホールド信号PH、制御入力信号PV
n、ORゲート33からの積分修正信号Sおよびフラグ
保持部77のフラグ状態を取込み、上述した解除条件
およびの判定を実行し、いずれかの解除条件が成立し
たときには、フラグ保持部77のフラグを「0」にして
クリアする機能を有する。
【0037】ANDゲート81は、従来構成におけるO
Rゲート33とスイッチSW2の間に挿入されており、
他方の入力側にORゲート33からの積分修正信号Sを
加え、その出力側をスイッチSW2に加えたものであ
り、フラグ保持部77からの積分修正禁止信号Tが
「1」のとき積分修正信号SのスイッチSW2への印加
を禁止し、積分修正禁止信号Tが「0」のときそれを加
える開閉ゲートである。すなわち、積分修正禁止条件成
立中に積分演算修正処理を禁止するものである。図2お
よび図3中のスイッチSW3は積分修正禁止期間中の積
分演算を通常通りに続行するか、積分演算を停止して禁
止前の積分値でホールドするかの選択スイッチである。
通常では、制御演算部61部分で制御偏差Enの符号お
よび絶対値の大きさによって切り換えることが望ましい
が、説明は省略する。
【0038】この積分演算修正判断部63の動作タイミ
ングを簡単に説明すると、例えば図4(A)〜(B)の
ようになる。制御目標値SVnの変更によってPID演
算結果PIDnが上限値MHを越える場合には、PID
演算結果PIDn(制御出力信号MVn)が上限値MH
に抑えられるとともに積分演算が修正されるが、途中で
パルス性ノイズが発生して制御入力信号PVnが減少す
ると、フラグセット部79が禁止条件の成立を判断し
てフラグ保持部77にフラグ「1」を立て、1時点前の
制御入力信号PVn−1が記憶部75にホールドされ、
フラグの立てられた期間中でフラグ保持部77からの積
分修正禁止信号Tが「1」になってANDゲートが閉じ
られ、スイッチSW2による積分演算修正処理が禁止さ
れる。
【0039】そして、制御入力信号PVnが増加して1
時点前の制御入力信号PVn−1レベルに達すると、フ
ラグリセット部73が解除条件を判断してフラグ保持
部77のフラグをクリアし、フラグ保持部77からの積
分修正禁止信号Tが「0」に変ってANDゲートが開放
され、積分修正信号Sによって積分演算修正処理が再開
される。上述した第1の構成に係るプロセス制御装置
は、図示はしないがCPUやこのCPUの動作プログラ
ムを格納したROMやインターフェースI/Oを主体と
するマイクロコンピュータによって構成するのが一般的
であり、一定間隔(サンプリング周期)で繰り返し実行
される。
【0040】図5および図6は第1の構成に係るプロセ
ス制御装置7の動作を説明するフローチャートであり、
便宜上2図に分けて示すが、両図とも一連の処理動作を
示すものである。プログラムが開始されると、ステップ
500でn時点の比例演算結果Pn、微分演算結果D
n、PD演算結果PDn、積分変化分演算結果△In、
積分演算結果In、PID演算結果PIDnを得るPI
D演算処理を行ない、ステップ501でフラグ保持部7
7内のフラグ内容を判別してフラグが「0」のときには
ステップ506へ移り、「0」以外の場合にはステップ
502又は504へ移って制御入力信号PVnとホール
ド入力信号値PHの比較を行う。
【0041】ステップ501にてフラグが「1」と判別
されるとステップ502に移ってPVn≧PHか否か判
別し、このステップ502がNOであればステップ50
6に移り、YESの場合にはステップ503でフラグを
「0」にクリアしてステップ506に移る。ステップ5
01にてフラグが「2」と判別されるとステップ504
に移ってPVn≦PHか否か判別され、このステップ5
04がNOであればステップ506に移り、YESの場
合にはステップ505でフラグを「0」にクリアしてス
テップ506に移る。これらは制御入力信号PVnが正
常値に復帰したと判定された場合のフラグリセット処理
(修正禁止状態の解除処理)である。
【0042】続く、ステップ506では1時点前の制御
入力信号PVn−1と当該時点の制御入力信号PVnの
差から入力信号変化量DPを算出してステップ507に
移る。ステップ507ではPID演算結果PIDnと下
限値MLや上限値MHとの比較を行ない、PID演算結
果PIDnが下限値MLと上限値MHの間(リミット範
囲内)にあってML≦PIDn≦MHであれば、ステッ
プ508でMVnをPIDnにして図6のステップ51
1へ移る。
【0043】ステップ507でMH<PIDnと判別さ
れると、ステップ509でMVn=MHにして図6のス
テップ512へ移り、ステップ507でML>PIDn
と判別されると、ステップ510でMVn=MLにして
図6のステップ520へ移る。これらは出力リミッタ処
理である。次に、図5のステップ508でMVnをPI
Dnにしたときには、図6のステップ511で強制的に
フラグを「0」にクリアしてステップ517へ移り、ス
テップ517で前回積分値In−1を今回の積分値In
で更新するとともに前回制御入力信号PVn−1を今回
制御入力信号PVnで更新して終了する。
【0044】また、図5のステップ509でMVn=M
Hにしたときには、図6のステップ512へ移ってフラ
グが「1」でないか判断され、NOの場合には引続き禁
止処理とし、ステップ516を介してステップ517へ
移り、ステップ517で前回積分値In−1や前回制御
入力信号PVn−1を今回の積分値Inや制御入力信号
PVnで更新して終了する。なお、修正処理禁止中の積
分演算を停止して積分値をホールドする動作を選択して
いる場合はステップ516によって積分演算結果Inを
前回積分値In−1として積分値を更新しない。ステッ
プ512がYESの場合にはステップ513で入力信号
変化量DPが0より大きいか否か、すなわち入力信号変
化量DPの符号が判別され、入力信号変化量DPが正
(PVnの変更方向が負)でステップ513がYESの
場合には積分修正処理を禁止するためにステップ514
でフラグ内容を「1」にする。
【0045】続くステップ515では記憶部75のホー
ルド入力信号値PHを前回入力信号PVn−1で更新
し、ステップ516を介してステップ517へ移り、ス
テップ517で前回積分値In−1や前回制御入力信号
PVn−1を今回の積分値Inや制御入力信号PVnで
更新して終了する。この場合も、修正処理禁止中の積分
演算を停止して積分値をホールドする動作を選択してい
る場合は積分演算結果Inを前回積分値In−1として
積分値を更新しない。
【0046】入力信号変化量DPの符号が正でなくて
(PVnの変化方向が零又は正)ステップ513がNO
の場合には、ステップ518でフラグを「0」にクリア
してステップ519で積分演算修正処理を実行して現在
の積分演算結果Inを In=MVn−PDn=MH−PDn のように修正し、ステップ517へ進んで終了する。さ
らに、図5のステップ510でMVn=MLにしたとき
には、図6のステップ520でフラグが「2」か否か判
別され、NOの場合には引続き禁止処理とし、ステップ
524を介してステップ517へ移り、ステップ517
で前回積分値In−1や前回制御入力信号PVn−1を
今回の積分値Inや制御入力信号PVnで更新して終了
する。
【0047】この場合も修正処理禁止中の積分演算を停
止して積分値をホールドする動作を選択している場合は
積分演算結果Inを前回積分値In−1として積分値を
更新しない。ステップ520がYESの場合にはステッ
プ521で入力信号変化量DPが0より小さいか否か
(負か否か)判別され、入力信号変化量DPが負(PV
nの変化方向が正)でステップ521がYESの場合に
は積分修正処理を禁止するためにステップ522でフラ
グ内容を「2」にし、ステップ523で記憶部75のホ
ールド入力信号値PHを前回入力信号PVn−1で更新
し、ステップ524を介してステップ517へ移り、前
回積分値In−1や前回制御入力信号PVn−1を同様
に更新して終了する。
【0048】この場合も、修正処理禁止中の積分演算を
停止して積分値をホールドする動作を選択している場合
は積分演算結果Inを前回積分値In−1として積分値
を更新しない。入力信号変化量DPの符号が正でステッ
プ521がNOの場合には、ステップ518でフラグを
「0」にクリアしてステップ519で積分演算修正処理
を実行し、現在の積分演算結果Inを In=MVn−PDn=ML−PDn のように修正してステップ517へ進み、同様に終了す
る。
【0049】このように本発明に係る第1の構成のプロ
セス制御装置7では、位置形のPID演算において積分
演算修正部35の動作を禁止又は禁止解除する積分演算
修正判断部63を設けたから、制御目標値SVnを変更
してPID演算結果PIDnが出力リミッタ27の上限
値MHを越えると、制御出力信号MVnが上限値MHに
制限されるとともに、積分演算結果Inを上限値MHか
らPD演算結果PDnを差引いた値に修正する修正処理
が実行されてPID演算結果PIDnを上限値MHに一
致させるので、制御入力信号PVnが制御目標値SVn
に近づくと制御出力信号MVnが速やかに上限値MHを
離れ、制御入力信号PVnの増加を抑えるように働き、
リセットワインドアップ現象が抑制されて制御目標値S
Vnに対する行き過ぎ量が改善される。
【0050】また、異常なPID定数の設定による制御
ループの不安定や、制御入力信号PVnに混入した連続
的なノイズによってPID演算結果PIDnが振動して
周期的に制限値MH又はMLを越えるような場合や、制
御入力信号PVnにインパルス状のノイズが混入してノ
イズの立ち上がりでPID演算結果PIDnが制限値M
H又はMLを越えた後にノイズが消滅しても、積分演算
修正判断部63によって、引き戻し現象が発生するよう
な条件下での修正処理が禁止され、それら異常なPID
定数、連続的なノイズおよびインパルス状のノイズに伴
う悪影響を最小限に抑えることができる。図7は本発明
に係る第2の構成(速度形のプロセス制御装置)を詳細
に示すブロック図である。
【0051】この構成において、加算結果修正部57、
加算結果修正判断部67およびスイッチSW4〜SW6
を除き、他の構成すなわち偏差演算部37、比例変化演
算部39、微分変化演算部41、積分変化演算部43、
加算部45、47、49、記憶部51、出力リミッタ5
3、変化分加算部55は、上述した従来例を示す図17
と同様であり、加算結果修正判断部67は上述した第1
の構成の積分演算修正判断部63とほぼ同様である。フ
ィードフォワード部59の図示は省略した。図7におい
て、積分変化演算部43はスイッチSW4を介して加算
部47に接続され、この加算部47は更に加算部49に
接続されており、この加算部49は記憶部(Z-1)51
で記憶されたn−1時点の記憶結果と加算してn時点の
PID演算結果(PIDn:比例+積分+微分)を出力
リミッタ53へ出力するものである。
【0052】出力リミッタ53は、PID演算結果PI
Dnが上限値MHおよび下限値MLを越えるときには、
それら上限値MHおよび下限値MLをn時点の制御出力
信号MVnとして図示しない制御対象やスイッチSW5
へ出力するとともに、上限値MH又は下限値MLでリミ
ットされているとき「1」に変化する論理信号をORゲ
ート33へ出力する。記憶部51はスイッチSW5を介
して出力リミッタ53からの制御出力信号MVn又は加
算部49からの加算結果を1時点分遅延記憶して加算部
49へ出力する。このスイッチSW5にて加算結果修正
部57が形成されている
【0053】そして、加算結果修正判断部67は、上述
した第1の構成に係る図3の記憶部69、75、減算部
71、フラグセット部79、フラグリセット部73、フ
ラグ保持部77およびORゲート33から形成されてい
るが、第1の構成のようにANDゲート81を介さずに
フラグ保持部77から加算結果修正禁止信号Tをスイッ
チSW5、6へ直接加える構成となっている。なお、図
7中のSW6は、図3のSW3と同様に修正禁止期間中
の積分演算の動作を切り換えるものである。
【0054】このような速度形のプロセス制御装置7で
は、位置形のプロセス制御装置7と異なり、1時点前の
制御出力信号MVn−1を出力リミッタ53の出力から
もってくるだけで、わざわざ加算結果修正部57を設け
なくても自然に加算結果修正処理が行われるが、この修
正処理を一定条件で禁止したり許可したりするためには
図7のように加算結果修正部57を独立させる必要があ
る。このような第2の構成に係る速度形のプロセス制御
装置7も、マイクロコンピュータによって構成するのが
一般的であり、図8および図9のようなフローチャート
で示すように動作する。便宜上2図に分けて示すのは図
5および図6と同様である。
【0055】第2の構成に係るプロセス制御装置7のフ
ローチャートは、PID演算が速度形である点、積分演
算修正処理が加算結果修正処理になる点を除けば、図5
および図6と同様であるから、相違するステップを説明
する。すなわち、プログラムが開始されると、図8およ
び図9のようにステップ500でn時点の比例変化分演
算結果ΔPn、微分変化分演算結果ΔDn、積分変化分
演算結果△In、PID変化分演算結果ΔPIDnおよ
びPID演算結果PIDnを得るPID演算処理を行な
ってステップ501へ移り、以降のステップ501〜5
15、ステップ518、ステップ520〜523の処理
は図5および図6と同様である。
【0056】図9において、ステップ511やステップ
518でフラグ保持部77のフラグを「0」にして、P
ID演算結果PIDnが出力リミット範囲内もしくはP
ID演算結果PIDnが出力リミット値MHまたはML
を越えたが修正禁止条件でない場合には、ステップ52
5やステップ529で前回の制御出力信号MVn−1を
今回の制御出力信号MVnで更新する。一方、ステップ
514やステップ522でフラグを「1」又は「2」に
して修正禁止条件が成立している場合には、ステップ5
26やステップ530で前回の制御出力信号MVn−1
を今回のPID演算結果PIDnで更新する。
【0057】そして、修正処理禁止中の積分演算を停止
して積分値をホールドする動作を選択している場合は、
ステップ527やステップ531で今回のPID演算結
果PIDnから積分変化分演算結果△Inを差し引いた
値で前回の制御出力信号MVn−1を更新する。このよ
うな第2の構成に係る速度形のプロセス制御装置7にお
いても、加算結果修正部57に対して、その加算結果修
正の動作を禁止又は禁止解除する加算結果修正判断部6
7を設けたから、制御目標値SVnを変更してPID演
算結果PIDnが出力リミッタ27の上限値MHを越え
ると、制御出力信号MVnが上限値MHに制限されると
ともに、1時点前の制御出力信号MVn−1の修正処理
が実行されてPID演算結果PIDnが上限値MHに一
致するので、制御入力信号PVnが制御目標値SVnに
近づくと制御出力信号MVnが速やかに上限値MHを離
れ、制御入力信号PVnの増加を抑えるように働き、リ
セットワインドアップ現象が抑制されて制御目標値SV
nに対する行き過ぎ量が抑えられる。
【0058】また、異常なPID定数の設定、連続的な
ノイズ、インパルス状のノイズの混入があっても、加算
結果修正判断部67によって引き戻し現象が発生するよ
うな条件下での修正処理が禁止され、それら異常なPI
D定数、連続的なノイズおよびインパルス状のノイズに
伴う悪影響を最小限に抑えることができる。上述した各
第1および第2の構成は出力リミッタ27、53を有す
る構成であったが、本発明では出力リミッタ27、53
に加えて出力変化率リミッタ65を付加する構成も可能
である。
【0059】図10は、上述した出力リミッタ27、5
3に出力変化率リミッタ65を付加させた構成を示すブ
ロック図である。図において出力リミッタ27、53か
らの制御出力信号MVnを記憶部83で記憶して1時点
前の制御出力信号MVn−1を加算部85および減算部
87へ出力し、加算部85ではその制御出力信号MVn
−1と許容信号変化幅MΔを加算してローセレクタ89
へ加え、減算部87ではその制御出力信号MVn−1か
ら許容信号変化幅MΔを減算してハイセレクタ91へ加
え、ローセレクタ89では加算結果と上限値MHのうち
小さい方を実際の上限値M1として出力リミッタ27、
53へ加え、ハイセレクタ91では減算結果と下限値M
Lのうち大きい方を実際の下限値M2として出力リミッ
タ27、53へ加える構成となって出力変化率リミッタ
65が形成されている。
【0060】すなわち、出力リミッタ27、53に設定
する上限値MHおよび下限値MLについて、実際の上限
値M1および下限値M2は、次のようになる。 M1=MIN[MH、(MVn−1)+M△] M2=MAX[ML、(MVn−1)−M△] ここで、符号MHは外部から設定する出力リミッタの上
限値、符号MLは出力リミッタの下限値、符号M△は出
力変化率制限幅であり、符号MIN(a、b)はaとb
のいずれか小さい方、符号MAX(a、b)はaとbの
いずれか大きい方とすれば良い。このように出力変化率
リミッタ65の接続された出力リミッタ65は、上述し
た第1および第2の構成と同様な効果が得られる。
【0061】ところで、このような出力変化率リミッタ
65は、位置形および速度形いずれの出力リミッタ2
7、53でも実施可能であることは言うまでもない。次
に、上述した本発明および従来のプロセス制御装置7に
ついて、図11〜図15にそれらの動作シミュレーショ
ンを図示する。各シミュレーションは一例として位置形
の測定値微分PID演算(微分演算の入力が制御偏差で
なく制御入力信号であるPID演算)について実行し
た。
【0062】図11〜図15において、 In+0.6 :積分演算結果(バイアス0.6) FLAG :フラグ(「0」=0.5、「1」=0.6、 「2」=0.4) * 出力リミッタ:上限値=1.0、下限値=0.0 として図示されている。図11には、制御目標値SVの
通常変更について従来型と本発明による制御応答の両方
が描かれており、制御出力信号MVnが制御目標値SV
nの変更直後から出力リミッタの上限値MHにかかって
リミットされているが、このとき修正処理は禁止さずに
実行されるので、制御入力信号PVnの行き過ぎ量が小
さく抑えられ、従来型と本発明での差はみられない。
【0063】図12は、従来のプロセス制御装置7を用
いた制御ループ系において、発振によって引き戻し現象
が発生し、制御に悪影響を与えている例を示している。
なお、フラグの図示は省略されている。この図12では
比例定数P、積分時間I、微分時間Dの3定数のうち、
積分時間Iと微分時間Dを各々適正値の100倍以上に
設定して故意に制御ループ系を不安定化したため、制御
出力信号MVnが振動して出力リミッタの制限値を越え
る度に修正処理によって引き戻しが発生した結果、制御
入力信号PVnが制御目標値SVnから離れた点に向か
って動いている。
【0064】図13は本発明によるもので図12と同一
条件であるが、制御出力信号MVn出力リミッタの下限
値MLを越えたときの制御入力信号PVnの変化方向が
正なので、修正処理が禁止されて引き戻しが発生せず、
制御入力信号PVnは制御目標値SVnに向かって収束
している。図14は、従来例における制御入力信号PV
nに混入した持続インパルスノイズによる制御に対する
悪影響を示しており、制御入力信号PVnに正負の持続
インパルスノイズを混入させた例である。
【0065】この図14では、正のノイズの立ち下がり
および負のノイズの立ち上がり部分で引き戻しが繰り返
し発生するため制御出力信号MVnが振動し、制御入力
信号PVnが制御目標値SVnから離れた点に向かって
動いている。図15は本発明によるもので図14と同一
条件であるが、制御出力信号MVnが出力リミッタの制
限値を越えたときの制御入力信号PVnの変化方向によ
って修正処理の実行又は禁止を判定するので、引き戻し
が発生せず制御入力信号PVnが制御目標値SVnに向
かって収束している。
【0066】
【発明の効果】以上説明したように本発明の第1の構成
では、位置形のプロセス制御装置において、積分演算修
正部の動作を禁止又は禁止解除する積分演算修正判断部
を設けたから、制御目標値SVnの変更に対してリセッ
トワインドアップ現象が抑制されて行き過ぎ量を抑える
ことができる。しかも、異常なPID定数の設定、連続
的なノイズ又はインパルス状のノイズ等によって制御ル
ープが大きく変動しても、それら異常なPID定数、連
続的なノイズおよびインパルス状のノイズに伴う悪影響
を最小限に抑えることができる。また、本発明に係る第
2の構成では、速度形のプロセス制御装置において、加
算結果修正部による加算結果修正の動作を禁止又は禁止
解除する加算結果修正判断部を設けたから、制御目標値
SVnの変更に対してリセットワインドアップ現象が抑
制されて行き過ぎ量が抑えられるし、それら異常なPI
D定数、連続的なノイズおよびインパルス状のノイズに
伴う悪影響を同様に最小限に抑えることができる。そし
て、第1および第2の構成について、1時点前の制御出
力信号値に許容信号変化幅を加減算した値と出力リミッ
タの上限値又は下限値のうち小さい方や大きい方を実際
の上限値や下限値として出力リミッタに設定する出力変
化率リミッタを備える構成では、同様に、リセットワイ
ンドアップ現象の良好な抑制効果や、異常なPID定
数、連続的なノイズおよびインパルス状のノイズに伴う
悪影響を良好に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプロセス制御装置に係る第1および第
2の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】本発明のプロセス制御装置に係る第1の構成の
詳細を示すブロック図である。
【図3】図2中の積分演算修正判断部を具体的に示すブ
ロック図である。
【図4】図2のプロセス制御装置の動作タイミングを説
明する概略波形図である。
【図5】図2のプロセス制御装置の動作を説明するフロ
ーチャートである。
【図6】図2のプロセス制御装置の動作を説明するフロ
ーチャートである。
【図7】本発明のプロセス制御装置に係る第2の構成の
詳細を示すブロック図である。
【図8】図7のプロセス制御装置の動作を説明するフロ
ーチャートである。
【図9】図7のプロセス制御装置の動作を説明するフロ
ーチャートである。
【図10】本発明のプロセス制御装置について出力変化
率リミッタの実施例を示すブロック図である。
【図11】本発明および従来のプロセス制御装置の動作
をシミュレーションしたときの応答波形図である。
【図12】従来のプロセス制御装置の動作をシミュレー
ションしたときの応答波形図である。
【図13】本発明のプロセス制御装置の動作をシミュレ
ーションしたときの応答波形図である。
【図14】従来のプロセス制御装置の動作をシミュレー
ションしたときの応答波形図である。
【図15】本発明のプロセス制御装置の動作をシミュレ
ーションしたときの応答波形図である。
【図16】一般的なプロセス制御ループを示すブロック
図である。
【図17】従来の位置形のPIDプロセス制御装置を示
すブロック図である。
【図18】従来の速度形のPIDプロセス制御装置を示
すブロック図である。
【図19】図17および図18のプロセス制御装置にお
ける好ましい制御応答波形図である。
【図20】図17および図18のプロセス制御装置にお
ける好ましくない制御応答波形図である。
【図21】図17および図18のプロセス制御装置にお
ける別の好ましくない制御応答波形図である。
【符号の説明】
1 制御対象 3 センサ 5 入力変換器 7 プロセス制御装置 9 操作器 11 偏差演算部 13 比例演算部 15 微分演算部 17 積分変化演算部 19、21、23、45、47、49、85 加算部 25、51、69、75、83 記憶部 27、53 出力リミッタ 29 積分演算部 31、71、87 減算部 33 ORゲート 35 積分演算修正部 37 偏差演算部 39 比例変化演算部 41 微分変化演算部 43 積分変化演算部 55 変化分加算部 57 加算結果修正部 59 フィードフォワード部 61 制御演算部 63 積分演算修正判断部 65 出力変化率リミッタ 67 加算結果修正判断部 73 フラグリセット部 77 フラグ保持部 79 フラグセット部 81 ANDゲート 89 ローセレクタ 91 ハイセレクタ SW1〜SW6 スイッチ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G05B 11/00 - 13/04

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 制御目標値と制御対象からの制御入力信
    号とから求めた制御偏差をなくすように少なくとも位置
    形の比例演算および積分演算を行い、それらを加算して
    演算結果を得る制御演算部と、 設定された上限制限値および下限制限値によって前記演
    算結果を制限した制御出力信号を前記制御対象に出力す
    る出力リミッタと、 前記演算結果が前記上限制限値又は下限制限値に制限さ
    れたとき、前記演算結果が該当する前記上限制限値又は
    下限制限値に一致するよう前記制御演算部の前記積分演
    算値を修正する積分演算修正部と、 を有するプロセス制御装置において、 前記制御入力信号の変化方向と前記演算結果が前記上限
    制限値および下限制限値を越える方向とから前記制御入
    力信号の変化の正常又は異常を判定し、異常と判定した
    ときに前記積分演算修正部による前記積分演算値の修正
    を禁止し、前記演算結果が前記上限制限値と下限制限値
    の間に戻ったとき、又は当該時点の制御入力信号が前記
    積分演算値の修正を禁止した時点より1時点前の制御入
    力信号レベルに達したとき、前記積分演算値修正の禁止
    を解除する積分演算修正判断部を有することを特徴とす
    るプロセス制御装置。
  2. 【請求項2】 前記制御出力信号の変化率を制限する出
    力変化率リミッタであって、1時点前の前記制御出力信
    号値に許容信号変化幅を加算した値と前記上限制限値の
    うち小さい方を実際の上限制限値とし、1時点前の制御
    出力信号から許容信号変化幅を減算した値と前記下限制
    限値のうち大きい方を実際の下限制限値として前記出力
    リミッタに設定する出力変化率リミッタを有する請求項
    1記載のプロセス制御装置。
  3. 【請求項3】 制御目標値と制御対象からの制御入力信
    号とから求めた制御偏差をなくすように少なくとも速度
    形の比例変化分演算および積分変化分演算を行い、それ
    らを1時点前の演算結果と加算して当該時点の演算結果
    を得る制御演算部と、 設定された上限制限値および下限制限値によって前記演
    算結果を制限した制御出力信号を前記制御対象へ出力す
    る出力リミッタと、 前記演算結果が前記上限制限値又は下限制限値に制限さ
    れたときに加算される前記1時点前の演算結果を該当す
    る前記上限制限値又は下限制限値に置き換えて前記制御
    演算部の加算結果を修正する加算結果修正部と、 を有するプロセス制御装置において、 前記制御入力信号の変化方向と前記演算結果が前記上限
    制限値および下限制限値を越える方向とから前記制御入
    力信号の変化の正常又は異常を判定し、異常と判定した
    ときに前記加算結果修正部による前記加算結果の修正を
    禁止し、前記演算結果が前記上限制限値と下限制限値の
    間に戻ったとき、又は当該時点の制御入力信号が前記加
    算結果の修正を禁止した時点より1時点前の制御入力信
    号レベルに戻ったとき、前記加算結果修正の禁止を解除
    する加算結果修正判断部を有することを特徴とするプロ
    セス制御装置。
  4. 【請求項4】 前記制御出力信号の変化率を制限する出
    力変化率リミッタであって、1時点前の前記制御出力信
    号値に許容信号変化幅を加算した値と前記上限制限値の
    うち小さい方を実際の上限制限値とし、1時点前の制御
    出力信号から許容信号変化幅を減算した値と前記下限制
    限値のうち大きい方を実際の下限制限値として前記出力
    リミッタに設定する出力変化率リミッタを有する請求項
    3記載のプロセス制御装置。
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