JP2948884B2 - 繊維強化水硬性成形物 - Google Patents

繊維強化水硬性成形物

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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は、耐熱水性の優れたポリビニルアルコール
(以下PVAと略記する)系合成繊維を補強剤として用い
た、130℃以上でオートクレーブ養生された、寸法安定
性が優れ衝撃強度の極めて大きい水硬性成形物に関する
ものである。
<従来の技術> 従来より水硬性物質の補強にはアスベストが多く用い
られてきたが、その健康障害が明らかにされ、規制が進
む中で代替素材が強く求められている。
かかる補強剤に求められる性能としては、 (1) 強度が高いこと、 (2) マトリツクスとの接着性がよいこと、 (3) 耐アルカリ性に優れ劣化しにくいこと、 の3つが必須であり、これら全てを満足するPVA系合成
繊維は好ましく用いられてきた。
しかし、PVA系合成繊維の耐熱水性が低いために硬化
を室温で長時間行う、いわゆる自然養生に限られ水硬性
成形物の強度と衝撃強度は向上しても寸法安定性に難が
あるという性能上の欠点と養生に長時間と広いスペース
を要するという生産上の欠点があつた。
一方、寸法安定性を改良し、養生時間を大幅に短縮す
る硬化手段としてオートクレーブ養生が広く行なわれて
きた。しかしこれにも欠点がある。すなわち、一般にオ
ートクレーブ養生を行うと寸法安定性は向上するが、衝
撃強度が小さくなる。したがつてオートクレーブ養生に
供される補強繊維には、強度のみならずこの衝撃強度向
上効果が求められ、アスベスト以外では強度と適当な伸
度を有する有機繊維が好適なのである。
しかしながら、オートクレーブという過酷な処理に耐
えられる有機繊維は過去になく、一部炭素繊維が用いら
れているが、ピツチ系では殆んど補強効果が出ず、ポリ
アクリロニトリル系では効果があるものの、極めて高価
であるため経済的な理由で普及していないのが実状であ
る。
<発明が解決しようとする課題> 本発明は、寸法安定性及び衝撃強度に優れ、しかも安
価な水硬性形成物を提供せんとするものである。
<課題を解決するための手段> すなわち、本発明は、10g/d以上の強度を有し、耐熱
水温度が140℃以上という耐熱水性の優れたPVA系合成繊
維を補強剤として用い130〜170℃で1時間以上オートク
レーブ養生するものである。これによつてはじめて従
来、健康障害のあるアスベストや高価なポリアクリロニ
トリル系炭素繊維でしか得られなかつた優れた寸法安定
性並びに衝撃強度を有する水硬性成形物が実現できたも
のであり、その意義は極めて大きい。
近年、特開昭60−126312号公報や、特開平1−156517
号公報にみられる如くPVA系合成繊維については、その
紡糸技術や処理技術が進歩しているが、しかしかかる繊
維を補強材として用い、オートクレーブ養生をするとい
う提案はいまだかつてない。
その理由は、一般にオートクレーブ養生は、アスベス
ト使用時180℃という極めて高い温度で実施されていた
ため、いかにPVA繊維の性能が向上したからといつても
到底この過酷な処理には耐えられなかつたのである。
本発明者等は種々のPVA系合成繊維を補強材とした場
合のオートクレーブ条件と寸法安定性、衝撃強度との関
係を詳細に検討した。その結果強度10g/d以上、後に定
義する耐熱水性140℃以上のPVA系繊維を水硬性成形材料
中に0.2〜10重量%添加した系において130〜170℃で少
なくとも1時間という比較的ゆるやかな養生を行なうこ
とによつて、このようなゆるやかな養生においてさえも
著しく、寸法安定性が向上し、かつかかる養生条件であ
るがゆえにPVA系合成繊維が耐え得て、優れた補強効果
(衝撃強度)が発現することを見出したものである。
以下本発明をさらに具体的に説明する。
成形物の製法は何等特別な方法をとる必要はなく、一
般的なFRCの製法でよい。例えば、薄板の場合の典型的
な製法は湿式抄造法でありハチエツク法が代表例であ
る。モルタルやコンクリート等の場合振動成形、遠心力
成形、押出成形法等がある。
本発明の水硬性物質としては、セメントが典型的なも
のであり、ポルトランドセメントがその代表的なもので
あるが、高炉セメント、フライアツシユセメント、アル
ミナセメント等も用いることができる。また、これらを
混合して用いてもよい。さらにこれらのセメントと砂や
砂利を混合してモルタルやコンクリートとして用いるこ
ともできる。その他の水硬性物質としてはセツコウ、セ
ツコウスラグ、マグネシウム等があるが、水硬性物質で
ありさえすれば何でよい。
またマイカ、セビオライト、アタバルジヤイト等を助
剤を用いることができる。
一方、オートクレーブ養生は本発明の規定する条件を
採用する以外は、常法に従つて実施すればよい。その温
度は130〜170℃、好ましくは140〜170℃である。130℃
より低い場合寸法安定性が十分得られず、逆に170℃を
越えては、PIA系合成繊維の膨潤−溶解が進行するため
好ましくない。
補強材として用いるPVA系合成繊維は、強度が10g/d以
上、後で規定する耐熱水温度が140℃以上のものであれ
ば特に制約はない。
例えば界面活性剤とホウ酸をPVA水溶液に添加して紡
糸原液となし、これを55〜95℃といつた高温度のアルカ
リ性凝固浴へ湿式紡糸したのち高延伸する方法や、特開
昭60−126312号公報で示される如く有機溶剤にPVAを溶
解して紡糸原液となし、これを乾湿式紡糸したのち高延
伸する方法で得ることができ、このような方法で得られ
る繊維中、強度が10g/d以上、耐熱水温度が140℃以上の
ものであれば用いることができる。
また、PVA系合成繊維の耐熱水性が不足する場合に
は、無機酸類或いはそのアンモニウム塩類を付着させ熱
処理することで脱水処理したり、ホルマリンやイソシア
ネートのような化合物をPVAの水酸基と架橋させたりし
て耐熱水性を向上させ本発明の繊維として用いることも
できる。ただこれら方法は、過度に処理するとその強度
が大きく損うため適当な処理を施すことが必要である。
用いるPVAの重合度は1500以上、好ましくは3000以
上、更に好ましくは6000以上で高重合度のもの程強度、
耐熱水性が得られやすい。脱水や架橋処理を施すにして
も重合度の高い法がより効率的である。
かかる、補強性に優れたPVA繊維は成形物の製法や工
法等に応じていかなる形態においても利用できる。例え
ば、シヨートカツトした単繊維やチヨツプドストランド
でもよいし、フイラメントヤーン状または集束したフイ
ラメントヤーンを長繊維状で利用したり、或いはいわゆ
るフアイバーロツドで利用してもよい。さらに不織布、
マツト状物、メツシユ状物、ニツト状物、二次元或いは
三次元織物等として用いることもできる。またかかるPV
A繊維は鉄筋を併用することもできるし、ガラス繊維、
スチール繊維、アクリル繊維等とハイブリツドで使用す
ることもできる。
また、より高い補強効果を得るためには、マトリツク
スとの接着性を高めるため、PVA繊維の単糸繊度を50デ
ニール(d)以下、好ましくは30d以下として比較的表
面積を大きくする必要がある。更に、これを短繊維とし
て用いる場合はアスペクト比を150〜1500、好ましくは3
00〜800とすることが分散性の点で、したがって補強性
の点で望ましい。
本発明の水硬性成形物における該PVA系合成繊維の添
加率は0.2〜10重量%、好ましくは0.5〜3重量%であ
る。これより低添加域では、補強性に乏しく、高添加域
では分散性が悪く、補強効果が得られない。
<本発明の効果> かくして得られた本発明の水硬性成形物は寸法安定
性、衝撃強度がそれぞれ0.15%以下、0.8kg−cm/cm2
上、好ましくは0.12%以下、1.1kg−cm/cm2以上という
優れた物性を備えているためスレート板、パイプ類、ブ
ロック、壁パネル、床パネル、屋根材、間仕切りなどの
セメント、コンクリート成形物や2次製品に用いること
ができる。
<実施例> 以下、実施例を以てさらに本発明を説明する。
尚、本発明でいう繊維の強度、耐熱水温度及び水硬性
成形物の寸法安定性、衝撃強度はそれぞれ以下の方法で
測定するものとする。
PVA系合成繊維の乾破断強伸度、初期弾性率 試 料……マルチフイラメントヤーン 乾破断強伸度、初期弾性率……温度20℃、 相対湿度65%の雰囲気下でJIS−1017に準拠し、試長2
0cm引張り速度10cm/分でインストロン試験機にて測定、
初期弾性率はその伸長〜荷重曲線より求めた。
耐熱水温度 マルチフイラメントヤーンを定長で粋に巻きオートク
レーブ容器中にて種々の温度の熱水で1時間処理。その
後直ちにとり出して12時間常温で真空乾燥したのち上記
方法で強度を測定、熱水処理後の強度が処理前の強度の
1/2となる処理温度を耐熱水温度と定義する。
水硬性成形物の寸法安定性 JIS A5418の吸水による長さ変化試験に従つて測定。
水硬性成形物の衝撃強度 JIS K7111に従う。サンプルは1号試験片にて測定。
実施例1 重合度3500、ケン化度98%のPVAを濃度12%で水に溶
解し、これにホウ酸をPVAに対して2重量%添加した。
該溶液の脱泡後ノニルフエノールエチレンオキサイド20
モル付加物(ノニオンHLB値=16)をPVAに対して5重量
%添加攪拌し紡糸原液とした。130℃に加温した該紡糸
原液を直ちにノズルから水酸化ナトリウム20g/、芒硝
320g/からなる70℃の水系凝固浴中へ湿式紡糸し、6m/
分の速度で離浴せしめた。次いで常法に従つてローラー
延伸、中和、温熱延伸、水洗、乾燥した。ひき続き240
℃で乾熱延伸を実施してボビンに巻取つた。ただし、資
料を採取する延伸率は、破断する延伸率の0.8掛けとし
た。
ひき続いて15g/のリン酸アンモニウム(リン安)浴
に浸漬しPVAに対して2重量%リン安を付着させ乾燥し
たのち230℃で30秒定長熱処理し、脱水処理を施した。
得られたPVA系合成繊維の単糸繊度は2dで強度は20g/
d、耐熱水温度は150℃であつた。
該繊維を5mmにカツトし、ハチエツクマシンにて該繊
維2部、パルプ4部、ボルトランドセメント94部の配合
にて湿式抄造し、140℃で2時間オートクレーブ養生を
行い、厚さ4mmのスレート板を得た。
該スレート板の寸法安定性は0.10%であり、また衝撃
強度は1.6kg−cm/cm2と優れたものであつた。
比較例1 実施例1の繊維で、延伸後のリン安脱水処理を省略し
た強度25.1g/、耐熱水温度130℃の繊維(比較例1)
及び実施例1のリン安脱水処理を安長熱処理を240℃で1
20秒に変更して得た強度8g/d、耐熱水温度180℃の繊維
(比較例2)を用いて実施例1と全く同様の方法でスレ
ート板を作成した。
かくして得たスレート板の物性は第1表の如く劣悪で
あつた。
実施例2 重合度10000のPVAをジメチルスルホキシド(DMSO)に
7重量%の濃度で溶解したものを紡糸原液とし、100ホ
ールのノズルからメタノール凝固浴中へ2mmのエアーギ
ヤツプを通じて乾湿式紡糸した。DMSOを抽出し、乾燥し
たのち全延伸倍率が20倍となるように240℃で乾熱延伸
し、単板繊度1d、強度20g/d、耐熱水温度160℃の繊維を
得た。
これを6mmにカツトし、添加率を0.1重量%(比較例
3)、5.0重量%(実施例2)、11重量%(比較例4)
添加し、実施例1と同様にスレート板を作成した。繊維
の分散性、スレート板の物性を第2表に示す。
比較列3は、添加率が低すぎるため繊維の補強硬化を
発現させ得ず、又比較例4は添加率が高すぎるために分
散不良で満足なスレート板物性が得られなかつた。
実施例3、4および比較例5、6、7 実施例1の繊維を以下に示す如く養生条件を変更する
以外は実施例1と全く同様にスレート板を作成した。そ
の条件および得られたスレート板の物性を第3表に示
す。
比較例5は養生温度が低過ぎ、寸法安定性がよくな
い。比較例6は養生温度を高くした例であるが処理時間
が短かく寸法安定性がよくない。比較例7は養生条件が
過度になり衝撃強度が低下する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−96354(JP,A) 特開 平1−156517(JP,A) 特開 平2−192442(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C04B 16/06,28/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】強度が10g/d以上で耐熱水温度が140℃以上
    のポリビニルアルコール系合成繊維を補強材として0.2
    〜10重量%含有し、寸法安定性及び衝撃強度がそれぞれ
    0.15%以下、0.8kg−cm/cm2以上であることを特徴とす
    るオートクレーブ養生した繊維強化水硬性成形物
  2. 【請求項2】寸法安定性及び衝撃強度がそれぞれ0.12%
    以下、1.1kg−cm/cm2以上である請求項第1項に記載の
    繊維強化水硬性成形物
  3. 【請求項3】強度が10g/d以上で耐熱水温度が140℃以上
    のポリビニルアルコール系合成繊維を補強材として0.2
    〜10重量%水硬性成形材料中に配合し、成形物を製造す
    る方法において、130℃〜170℃で少なくとも1時間オー
    トクレーブ養生することを特徴とする繊維強化水硬性成
    形物の製造方法
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