JP2943443B2 - 電子写真用感光体およびその製造方法 - Google Patents

電子写真用感光体およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、導電性基体上にSe
−As合金からなる光導電層を備えてなり、トナーの転
写性,紙などの像支持材の分離性,残留トナーのクリー
ニング性が良好で長期間使用しても表面形状が殆ど変化
せず、良質の画像が安定して得られる電子写真用感光体
およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電子写真法においては、画像形成部材と
して用いられる電子写真用感光体(以下、単に感光体と
も称する)の表面を構成する光導電層表面で、帯電,像
露光による静電潜像の形成,トナー像の形成,紙などの
像支持材へのトナー像の転写,残留トナーのクリーニン
グ,除電が行われる。画像形成特性,信頼性などの点か
らは光導電層表面は平滑であることが望ましいが、平滑
すぎるとトナー,紙などの像支持材の光導電表面への付
着力が大きくなり、トナー像の転写性,紙などの像支持
材の分離性,残留トナーのクリーニング性が損なわれる
ため、光導電層表面を適度に微細に粗面化することが行
われてきた。このような光導電層表面の粗面化に適した
方法として種々の方法が提案されているが、Se−As
合金からなる光導電層を備えた感光体では、光導電層表
面に砥石による超仕上げ加工を施すことが極めて有効で
あることか特開昭59−136737号公報により提案
されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
超仕上げ加工を施した感光体は、初期はトナー像の転写
性,紙などの像支持材の分離性,残留トナーのクリーニ
ング性が良好で良質の画像が得られるが、長期間使用し
ているとこれらの特性が低下してきて画像上線状傷など
が発生してくる。これは、超仕上げ加工により光導電層
表面は望ましい状態に粗面化されるが、超仕上げ加工は
光導電層表面を直接砥石で加工するため、図7の模式的
断面図に示すように、導電性基体1上に形成された光導
電層2の表面のあれ方が鋭く、表面凹凸の凸部山頂3は
尖っており、画像出しを繰り返した場合、紙などの像支
持材の接触,クリーニングブレードの接触が繰り返され
ることにより、図8の模式的断面図に示すように凸部山
頂3が削り落とされてくるため初期の良好な粗面状態を
長期間保つことが難しいからである。
【0004】この発明は、上述の欠点を除去して、Se
−As合金からなる光導電層を備えた感光体で、長期間
使用しても良質の画像が安定して得られる感光体および
その製造方法を提供することを解決しようとする課題と
する。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の課題は、この発明
によれば、導電性基体上にSe−As合金からなる光導
電層を有し、その表面が直接加工による微細にあれた表
面粗さを備えてなる電子写真用感光体において、前記光
導電層の表面粗さが表面深さ方向で0.1μm以上2.
0μm以下の範囲内にあり、表面平行方向で2μm以上2
0μm以下の範囲内であり、かつ、その凸部山頂が熱処
理による丸みを帯びている感光体とすることによって解
決される。
【0006】このような感光体は、導電性基体上にSe
−As合金を真空蒸着して光導電層を形成し、続いて光
導電層を表面を直接加工した後、熱処理を行うことによ
り、前記光導電層の表面粗さを表面深さ方向で0.1μ
m以上2.0μm以下の範囲内、表面平行方向で2μm以
上20μm以下の範囲内とし、かつ、その凸部山頂に丸
みを帯びさせることによって製造できる。直接加工とし
ては、研磨、超仕上加工を採用することが好ましい。ま
た、熱処理は、170℃以上230℃以下の範囲内の温
度で30分以上90分以下の時間内で行うことが好まし
い。
【0007】
【作用】図1は、この発明の感光体の模式的断面図で、
導電性基体1上に形成された光導電層2の表面は凸部山
頂3が丸みを帯びた凹凸形状を有する。これは、研磨加
工あるいは超仕上げ加工を施されたSe−As合金から
なる光導電層の表面は鋭くあれており、表面凹凸の凸部
山頂は尖っているが、続いて行われる熱処理において、
Se−As合金の流動性が増して表面凹凸の凸部山頂が
崩れるためである。このような表面形状の光導電層は、
紙などの像支持材やクリーニングブレードが接触しても
表面が削られにくく、長期間安定した表面形状を保つこ
とができ、トナーの転写性,紙などの像支持材の分離
性,残留トナーのクリーニング性が良好に維持され、長
期間安定した良質の画像が得られる感光体ガ得られる。
熱処理は、As2 Se3 のガラス転移温度(Tg )の近
傍である170℃以上230℃以下の範囲内の温度で3
0分以上90分以下の時間内で行うことが好ましい。
【0008】
【実施例】以下、この発明の実施例を図を参照しながら
説明する。図2は、感光体の光導電層表面の加工方法を
説明する斜視図で、アルミニウム合金(JIS A30
03材)からなる円筒状の導電性の基体(外径100m
m,長さ300mm〜400mm,肉厚3mm〜4m
m))1の外表面にAs2 Se3 からなる光導電層(膜
厚40μm〜60μm)2を真空蒸着法で形成した感光
体4を基体1の円筒軸の回りに矢印Aの方向に回転させ
ながら、光導電層2の表面に砥石(♯1000〜♯30
00)5を当て矢印Bの方向に移動させることにより、
光導電層2の表面を研磨する。図3は、この様にして粗
面化ざれた感光体の模式的断面図で、導電性基体1上に
形成された光導電層2の表面は微細な凹凸形状を有し、
その凸部山頂3は鋭く尖っている。この感光体を図4に
示すように加熱炉6に入れて適切な熱処理を行うことに
より、図5に示すように、光導電層2の表面の凸部山頂
3が丸みを帯びた感光体が得られる。
【0009】上述の熱処理において、加熱温度および加
熱時間を表1に示すように変化させて得られた各感光体
について、複写機による画像出し試験を行い、良質の画
像が安定して得られるかどうかを調べて、熱処理の効果
を評価した。その結果を表1に示す。表1において、○
印は効果があったことを示し、△印は少し効果があった
ことを示し、×印は効果がなかったことを示す。
【0010】
【表1】
【0011】表1より、加熱温度が低くかつ加熱時間が
短いと効果が少なく、また、加熱温度が高くかつ加熱時
間が長くなり過ぎても効果がなくなってくることが判
る。これは、加熱温度が低くかつ加熱時間が短いと光導
電層を形成するAs2 Se3 の流動性の増加が少なく光
導電層の凸部山頂の崩れが少なく鋭利さが残り、加熱温
度が高くかつ加熱時間が長くなり過ぎるとAs2 Se3
の流動性が大きくなり過ぎて光導電層表面の凹凸が消え
て平滑になってしまためである。加熱温度170℃,加
熱時間90分から加熱温度230℃,加熱時間30分の
間の熱処理が好適であり、このときの光導電層の表面粗
さは、深さ方向で0.1μm以上2.0μm以下の範囲
内,表面平行方向で2μm以上20μm以下の範囲内で
あった。このような適切な熱処理を施された感光体の光
導電層表面は図5に示したように凸部山頂3が丸みを帯
びており、長期間画像出しを行っても、図6に示すよう
に、光導電層表面形状に殆ど変化は認められず、長期間
安定した画像を得ることが可能となる。なお、光導電層
表面を粗面化する研磨,超仕上げ加工においては、砥石
のほか研磨布,エミリーペーパー,サンドペーパーなど
も使用可能である。
【0012】
【発明の効果】この発明によれば、導電性基体上にSe
−As合金を真空蒸着して光導電層を形成し、続いて光
導電層表面に研磨または超仕上げ加工を施して粗面化し
た後、熱処理を行って感光体とする。このようにして得
られた感光体は、光導電層表面が適切に微細にあれた凹
凸形状を有し、かつ、凸部山頂が画像出しの際の紙など
の像支持材,クリーニングブレードの接触により削られ
ることが少なく、長期間使用してもその表面形状が殆ど
変化せず、長期間にわたって安定して良質の画像を得る
ことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の感光体の一例の模式的断面図
【図2】感光体の光導電層表面を粗面化する方法の一例
を説明する斜視図
【図3】粗面化後の感光体の一例の模式的断面図
【図4】粗面化後の感光体の加熱処理の一例の説明図
【図5】加熱処理後の感光体の一例の模式的断面図
【図6】この発明による感光体の長期間使用後の一例の
模式的断面図
【図7】従来の感光体の一例の模式的断面図
【図8】従来の感光体の長期間使用後の一例の模式的断
面図
【符号の説明】
1 基体 2 光導電層 3 凸部山頂 4 感光体 5 砥石 6 加熱炉

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】導電性基体上にSe−As合金からなる光
    導電層を有し、その表面が直接加工による微細にあれた
    表面粗さを備えてなる電子写真用感光体において、前記
    光導電層の表面粗さが表面深さ方向で0.1μm以上
    2.0μm以下の範囲内にあり、表面平行方向で2μm以
    上20μm以下の範囲内であり、かつ、その凸部山頂が
    熱処理による丸みを帯びていることを特徴とする電子写
    真用感光体。
  2. 【請求項2】導電性基体上にSe−As合金を真空蒸着
    して光導電層を形成し、続いて光導電層を表面を直接加
    工した後、熱処理を行うことにより、前記光導電層の表
    面粗さを表面深さ方向で0.1μm以上2.0μm以下の
    範囲内、表面平行方向で2μm以上20μm以下の範囲内
    とし、かつ、その凸部山頂に丸みを帯びさせたことを特
    徴とする電子写真用感光体の製造方法。
  3. 【請求項3】直接加工として研磨を採用したことを特徴
    とする請求項2記載の電子写真用感光体の製造方法。
  4. 【請求項4】直接加工として超仕上加工を採用したこと
    を特徴とする請求項2記載の電子写真用感光体の製造方
    法。
  5. 【請求項5】170℃以上230℃以下の範囲内の温度
    で30分以上90分以下の時間内の熱処理を行うことに
    より、その凸部山頂に丸みを帯びさせたことを特徴とす
    る請求項2ないし4のいずれかに記載の電子写真用感光
    体の製造方法。
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