JP2943224B2 - 中空糸膜素子および流体分離用中空糸膜装置 - Google Patents

中空糸膜素子および流体分離用中空糸膜装置

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JP2943224B2 JP8017490A JP8017490A JP2943224B2 JP 2943224 B2 JP2943224 B2 JP 2943224B2 JP 8017490 A JP8017490 A JP 8017490A JP 8017490 A JP8017490 A JP 8017490A JP 2943224 B2 JP2943224 B2 JP 2943224B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は選択透過性中空糸膜からなる中空糸膜素子、
およびそれを用いてなる流体分離用中空糸膜装置に関す
るものであり、さらに詳しくは、中空糸膜の外側の流体
の流れの状態が改善された中空糸膜分離素子、および中
空糸膜集束体からなる流体分離装置に該素子を適用して
分離効率を改良した流体分離用中空糸膜装置に関するも
のである。
[従来の技術] 半透膜の選択透過性を利用して物質を分離する方法と
して、逆浸透法、限外ろ過法、透析法、および気体分離
法等の技術は公知の技術として実用化されている。ま
た、浸透気化法(パーベーパレーション法)、膜蒸留
法、および、分離膜を利用した水中の微量有機物質の除
去、水中の酸素等の気体の除去、空気中の水分の除去ま
たは調湿、空気中の有機蒸気の回収等の技術も注目さ
れ、実用化の検討が進められている。
この様な分離膜として中空繊維状の分離膜は、流体分
離装置として簡単な構造体とすることができること、膜
が支持体を必要としないこと、膜面積に対して装置の大
きさが相対的に小さくできること、等の利点があり、従
来から実用化に関する多くの研究開発がなされている。
しかし、極めて多数本の中空糸膜を無欠点で集束体と
し、流体分離装置の構造体に製造する技術は、精密かつ
高度の複合技術が必要である。特に、中空糸膜の利点を
十分に引き出すためには半透膜の分離性能を100%発揮
させることが肝要であり、集束体の中の多数本の中空糸
膜の間に物体を均一に流し、高い分離効率を実現する必
要がある。
このため、中空糸膜の集束方法や中空糸膜自体に、中
空糸膜の間隙を一定に保ち、流体が均一に流れるように
する技術的改善の発明・考案が種々提案されている。す
なわち、特開昭47−27186には突起を有するスペーサー
ヤーンを中空糸もしくは中空糸束に巻き付けた構造のも
のが提案されている。特開昭50−39682には複数の中空
糸を撚るか編んだ状態にして集束する方法が提案されて
いる。この他に、中空糸膜のシート状物を、積層された
シート状の中空糸膜が交叉するように綾角度をつけて巻
いて集束した状態の、集束方法も各種提案されている。
特開昭51−64481にはチューブ状の多孔質支持体の表面
に分離膜を積層したいわゆるチューブラー型分離膜に糸
状素子をラセン状に巻き付けた工夫が提案されている。
特開昭53−35683には細い中空糸膜にいわゆる加工糸を
ラセン状に巻き付けて集束し、流体分離装置とする方法
が出願されている。特開昭52−99978および特開昭59−7
483には、フィルム状スペーサー上に並べて巻き込む方
法が、出願されている。前者は中空糸全体が、後者は端
部だけが、フィルム状スペーサーにラセン状に巻き込ま
れた構造となるものである。特開昭56−148908および特
開昭61−18404では中空糸にフィン状の突起部を設け、
中空糸同志が密着することを防ぐ方法が提案されてい
る。
[発明が解決しようとする課題] 特開昭47−27186の方法はその効果の程度に問題があ
り、特定の目的に適用されうる方法と考えられる。特開
昭50−39682の方法および類似の方法は、中空糸同志が
相互に密着するため有効膜面積が減少し、しかも中空糸
外側を流れる流体の流れにくい部分が生ずるという問題
が存在する。特開昭51−64481は剛直で比較的太いチュ
ーブ状の分離膜に適用できる方法で、中空糸膜には適用
しがたく、効果も小さいと考えられる。特開昭53−3568
3の方法は細く柔軟な、しかも人口腎臓のように比較的
短時間の使用を目的にした装置に有効な方法と考えられ
る。工業的に使用される流体分離装置の場合にはスペー
サーヤーンである加工糸または捲縮糸に異物が付着し
て、性能低下や微生物的汚染源になると考えられる。特
開昭52−99978および特開昭59−7483の方法は製造工程
および経済性に問題がある。特開昭56−148908および特
開昭61−18404に提案された方法は、中空糸膜の素材と
製造方法の特徴に依存する方法で、一般的に他の中空糸
膜や直径の大きい中空糸膜にも適用し得る方法でないと
いう問題点がある。
すなわち、本発明は、中空糸膜の素材と製造方法に限
定されず、生産性に優れ、特に集束体としたときに中空
糸外側の流体の流れの状態が均一化され分離効率の改善
された中空糸膜素子、およびそれを用いてなる流体分離
用中空糸膜装置を提供することを目的とするものであ
る。
[課題を解決するための手段] 次ぎに、本発明の構成について説明する。
すなわち、本発明は、2本のスペーサーヤーンを巻き
付け方向を反対にして1本の選択透過性中空糸膜に螺旋
状に巻き付けてなり、さらに中空糸膜がその繊維軸に対
して中空糸膜の直径の0.2〜2倍の幅で蛇行もしくは同
範囲で螺旋状に湾曲していることを特徴とする中空糸巻
素子、および、その中空糸膜素子からなる集束体の1端
または両端を接着性樹脂で固定して管板を形成し、筒体
内に収納した構造を有する流体分離用中空糸膜装置、を
骨子とするものである。
選択透過性中空糸膜からなる流体分離用中空糸膜装置
(以下、単に流体分離装置と称することがある)は、通
常、中空糸膜の集束体の1端または両端を接着性樹脂で
固定して、中空糸内側と外側とを区画するための管板を
形成し、管体内に収納入した構造からなる。本発明は、
この様な構造の従来公知の流体分離装置に好ましく適用
することができる。中空糸膜の断面が形成していなけれ
ば中空糸膜の内側の流れの状態はおおむね良好である
が、外側の流れの状態は中空糸膜の集束状態に左右され
る。筒体の断面内で均等に分散し中空糸間の間隙が均等
であれば、外側の流体は均一に流れ分離効率の低下は防
止される。流体分離装置が単純な過にだけでなく、物
質交換あるいは熱移動を伴うような目的に使われる場合
には、特に外側の流体の均一な流れが重要な特性にな
る。例えば、透析法、透析濾過法、浸透気化法、膜蒸留
法および膜蒸留型分離法、サーモペーバーパレーション
法、直接接触式膜蒸留法、溶液中の気体や微量の有機物
の除去、空気またはガス中の水分その他の成分の除去ま
たは調整等に使用される流体分離装置では外側の流れの
状態がしばしば問題となるので、このような目的の流体
分離装置の中空糸膜の集束体には特に本発明を好ましく
適用することができる。
使用される状態で膨潤・伸長のほとんど認められない
剛直な高分子膜からなる中空糸膜の場合には、中空糸の
束の間に偏流の原因になる空隙ができやすい。しばしば
工業的に使用される比較的直径の大きい剛直な中空糸膜
の場合には、この様な束割れが起こりやすいので、かか
る中空糸膜を使用した流体分離装置には本発明の適用は
とくに有効である。この様な中空糸巻の場合には、特開
昭51−64481を中空糸膜に適用できるよう改良した方法
で糸状素子を巻き付けて集束しても、スペーサーヤーン
のピッチがそろった部分で中空糸同志が集合し密着し
て、やはり小規模の束割れが発生して偏流の原因にな
り、性能低下を引き起こす。
中空糸膜の種類としては、本発明の趣旨からして特に
限定されないことは明らかであるが、通常公知の素材の
中空糸膜すべてに対して適用できる。例えば、ポリプロ
ピレン、ポリエチレン、ポリ−4−メチルペンテン−1
等のポリオレフィン系中空膜、ポリ塩化ビニル、ポリフ
ッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデ
ン、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル等の
ビニル系高分子の中空糸膜、ポリテトラフルオロエチレ
ン等のフッ素系ビニル系高分子の中空糸膜、およびこれ
らの組成を主成分とする共重合体、あるいは共重合体と
のブレンド物、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、
ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェ
ニレンオキサイド、などの通常公知の中空糸膜等に適用
できる。
中空糸膜の直径に関しては、原理的には制限されるこ
とは無いが、生産性および発明の効果の程度等を、本発
明の特徴とする勘案して比較すれば、比較的直径の大き
い中空糸膜に適用するのが良好な結果をあたえる。すな
わち、選択透過性中空糸膜の直径は0.4〜4mmの範囲の中
空糸膜、さらに好ましくは0.5〜3.0mmの範囲の中空糸膜
に適用するのが良い。直径の小さい中空糸膜の場合に
は、中空糸膜の強度と剛性が小さくなり、モノフィラメ
ントのスペーサーヤーンを巻き付ける操作が困難になる
こと、本発明に代わる他の方法でも問題を解決し得るこ
となどの理由で、本発明の好適な適用範囲は上記のよう
に考えられる。本発明は、直径の大きい中空糸巻に対し
て、収束状態を改善し中空糸膜の外側の流体の流れの状
態の均一化を実現することが趣旨であり、太い中空糸膜
については特に制限はない。しいて述べれば、中空糸膜
の定義として直径の上限は通常は2〜4mm位までとされ
るので、かかる範囲が上限と言うことができる。
中空糸膜の膜厚、言い換えれば、内径と外径の比は中
空の範囲にあればとくに問題ないが、膜厚が相対的に薄
いと、すななち内径/外径の値が1に近いと、中空糸は
潰れ易くモノフィラメントのスペーサーヤーンを巻き付
ける操作で変形もしくは潰れて該流体分離装置の欠点と
なる。多くの中空糸膜は製糸工程、集束工程、モジュー
ル化工程、および使用時に中空糸膜が変形しないように
比較的厚い膜厚にしており、内径/外径の値で0.9以下
の範囲にあるが、このような範囲の中空糸膜であれば特
に問題になることは少いが、0.75以下であればさらに好
ましい。
端部を固定し管板を形成する接着性樹脂については、
通常使用される公知のエポキシ系樹脂、ポリウレタン系
樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂など
が好ましく使用できる。流体分離装置の筒体に中空糸束
を固定し封止する方法は、端部を固定し管板を形成して
から、筒体に挿入し装着性樹脂で封止固定するか、機械
的方法で封止固定しても良いし、中空糸束を筒体に挿入
し筒体と端部の固定と、管板の形成を同時に行っても良
い。端部の筒体との固体は、両端部で行う形式と片端部
で行う形式と、2種類の形式の流体分離装置がある。ま
た、管板を端部で固定した中空糸膜の集束体を複数本一
つの筒体に収納した構造の流体分離装置もある。しか
し、いずれの形式の装置でも本発明の目的と効果は差異
なく発揮される。
中空糸膜に巻き付けるスペーサーヤーンの太さは、中
空糸膜の直径の0.1〜1倍の直径のモノフィラメントが
良好である。さらに好ましくは、中空糸膜の直径の0.16
〜0.3倍の直径のモノフィラメントが好適である。かか
る太さのスペーサーヤーンを中空糸膜に対して、巻き付
ける方向を反対にして螺旋状に巻き付ける。巻き付ける
際にスペーサーヤーンに一定の張力を掛けて、中空糸膜
が蛇行または螺旋状に湾曲・変形するように巻き付ける
のが本発明の特徴である。したがって、スペーサーヤー
ンが細すぎると中空糸膜を蛇行もしくは螺旋状に湾曲さ
せる張力を過大にしなければならず、中空糸膜に働く外
力がスペーサーヤーンと接触する部分に集中して、中空
糸膜を変形させることになり好ましくない。スペーサー
ヤーンが太過ぎると、中空糸膜の筒体内への充填密度が
低下して膜面積が相対的に減少して、中空糸膜型流体分
離装置の特徴の1つである有効膜面積/膜モジュール体
積比が大きいということが失われる。
スペーサーヤーンを巻き付けた中空糸膜の状態を比較
観察すると、スペーサーヤーンの太さは中空糸膜の直径
の0.1〜1の直径のモノフィラメントが良好であり、さ
らに好ましくは、中空糸膜の直径の0.16〜0.3倍の直径
のモノフィラメントが好適である。中空糸膜の直径の0.
1倍以下のスペーサーヤーンでは、十分な中空糸膜の蛇
行または螺旋状湾曲が得られにくく、中空糸間の間隙も
十分でない。中空糸膜と同等の直径のスペーサーヤーン
を巻き付けた場合には巻き付けられた中空糸膜の状態は
良好であるが、中空糸直径の0.33倍以上の太さであると
中空糸の充填密度が、通常好適であると考えられる値50
%より低くなり、有効膜面積の点から不利となる。しか
し、分離装置の目的によっては勿論問題なく発明の効果
を発揮する。充填密度と巻き付けられた中空糸巻の状態
とから最も好適と考えられるスペーサーヤーンの太さ
は、中空糸膜の直径の0.16〜0.3倍の直径と結論され
る。
ここで、充填密度とは、中空糸膜集束体を収納する筒
体の断面積Dに対する、中空糸膜の外径から計算される
断面積×中空糸膜本数との比率をいう。
スペーサーヤーンの素材は、通常入手できる、ナイロ
ン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリ
ル、ビニロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、
フッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル系高分子等から選
んで使用することができる。この場合、使用時の条件に
耐性のある素材を選ぶことが必要である。また、接着性
樹脂に対して、良好な接着力を有することも必要条件で
ある。スペーサーヤーンが熱融着する素材であると、中
空糸膜の束を作製するときに巻き付けたスペーサーヤー
ンがほどけないように端部を融着させることができ、好
都合である。
スペーサーヤーンの中空糸膜への巻き付け方は、2本
のスペーサーヤーンを巻き付け方向を反対にして、1本
の中空糸膜に螺旋状に巻き付ける。この時、スペーサー
ヤーンに張力を掛けて、中空糸膜がスペーサーヤーンと
相互に巻き付いた状態とし、図1に模式的に示すように
中空糸膜がその繊維軸に対して蛇行もしくは螺旋状に湾
曲して、集束したときに中空糸膜同志が密着することが
ないようにすることが要件である。蛇行もしくは螺旋状
の湾曲の程度rは、中空糸膜の直径の1/5〜2.0倍が必須
である。ここでrは、蛇行もしくは螺旋状に湾曲した中
空糸膜を2次元平面に投影した投影図における該中空糸
膜の振幅で定義する。この値が小さすぎると、集束状態
を均一化して流れの状態を改善する効果が不十分とな
る。本発明が予想以上に優れた効果を発揮する理由は、
この間隙部分を流体が流れ、中空糸膜が細かく蛇行また
は湾曲しているために乱流化するためと考えられる。中
空糸膜の直径より著しく大きくしても、改善効果は一定
の水準に収束する傾向を示し、中空糸の充填密度の低下
を引き起こすので、好ましくない。
巻き付けられたスペーサーヤーンの螺旋ピッチpは5
〜60mmの範囲にあることが好ましい。直径0.4〜4mmの範
囲の中空糸膜に対して、小さすぎるピッチは中空糸膜の
蛇行または螺旋状変形を起こりにくくし、大きすぎるピ
ッチは中空糸間の密着を防ぐ効果と収束状態を均一化し
て流れの状態を改善する効果が不十分となる。
例えば、外径1.0mm、内径0.74mmのポリフッ化ビニリ
デンの中空糸膜に直径0.165mmのナイロンモノフィラメ
ント2本を、巻き付けピッチ15mmで3.3gの張力で反対方
向に巻き付けると、0.2mm蛇行し、11.2gの張力で巻き付
けると0.5mmの蛇行の状態となった。スペーサーヤーン
に直径0.52mmのモノフィラメントを用い、巻き付けピッ
チ35mm,張力3.3gで巻き付けると0.9mmの直径の螺旋状湾
曲変形を発生し、張力11.2gで巻き付けると1.4mmの直径
の螺旋状湾曲変形をした。この程度の巻き付け状態が、
良好な中空糸膜の集束体を形成する。
この様なスペーサーヤーンを巻き付けた中空糸膜素子
とその束の製造は、例えば、次のようにして能率的に実
施できる。すなわち、図3に示すような基本構成の装置
を使用する。ボビンまたは製糸工程から給糸される中空
糸膜1をガイドロール2を通してスピンドル3aの中心部
のガイドチューブ4aに通し、さらにもう一つのスピンド
ル3bの中心部のガイドチューブ4bに通す。スピンドル3a
および3bにはガイドチューブを中心に回転するスペーサ
ーヤーン給糸装置5aと5bが設けられている。スペーサー
ヤーン給糸装置にはスペーサーヤーンに適当な張力を与
えるために、張力調節装置(図示せず)を設けている。
スピンドル3aおよび3bのスーペーサーヤーン給糸装置は
それぞれ反対の方向に回転させる。スピンドル3bで2本
目のスペーサーヤーンを巻き付けられた中空糸膜はガイ
ドロール7および8を経てカセ9等に巻取り、集束す
る。中空糸膜への巻き付けピッチは中空糸膜の給糸速度
とスピンドルの回転数との割合で調節することができ
る。
この様にしてスペーサーヤーンを巻き付けた中空糸膜
素子を、スペーサーヤーンが解けないように結束するな
どして糸束に切断し、通常公知の方法で両端部を接着性
樹脂で封止固定化し管板を形成して、流体分離装置に作
製する。
[実施例] 以下実施例によって本発明の態様を具体的に説明する
が、本発明の適用の範囲が本実施例によって限定を受け
ないことは勿論のことである。
比較例1 ポリフッ化ビニリデンからなる外径1.00mm、内径0.75
mm、長さ19cmの中空糸膜19本を、中空糸間ピッチ3mmの
六方配列で中空糸膜を挿入できるよう小孔を開けたポリ
エステル製フィルムで中空糸膜の両端部を固定し、内径
14mmのアクリル製チューブからなる筒体に挿入した後、
両端部を接着性樹脂で封止し、ミニチュア型の膜モジュ
ールを作製した。中空糸膜の充填率は10%であった。こ
のミニチュア型膜モジュールを用いて、中空糸膜外側の
液流速と伝熱抵抗との関係および物質移動抵抗を測定
し、評価した。
比較例2 ポリフッ化ビニリデンからなる外径1.00mm、内径0.75
mm、長さ18cmの中空糸膜7本を両端部で、外径1.00mm、
長さ10mmのフィラメントをスペーサーとして、六方配列
で中空糸膜とスペーサーと相互に隣り合うように接着固
定化し、内径6mmのアクリル製チューブからなる筒体に
挿入して、ミニチュア型の膜モジュールを作製した。中
空糸膜の充填率は19%であった。このミニチュア型膜モ
ジュールを用いて、中空糸膜外側の液流速と流動抵抗と
の関係、伝熱抵抗の液流速依存性、物質移動抵抗を測定
し、評価した。
比較例3 ポリフッ化ビニリデンからなる外径1.00mm、内径0.75
mmの中空糸膜に特開昭53−35683に準じて、150デニール
のポリエステル加工糸3本を合糸し、合糸した加工糸2
本をピッチ10mmで反対方向からそれぞれ巻き付け、中空
糸膜10本からなる束に集束した。これを内径6mmのアク
リル製チューブからなる筒体に挿入して、ミニチュア型
の膜モジュールを作製した。中空糸膜の充填率は28%で
あった。このミニチュア型膜モジュールを用いて、中空
糸膜外側の液流速と流動抵抗との関係、および物質移動
抵抗を測定し、評価した。
実施例1 ポリフッ化ビニリデンからなる外径1.00mm、内径0.75
mmの中空糸膜に基本的構造を図3に示した装置を用い
て、直径0.165mmのナイロンモノフィラメント2本を、
張力10g,ピッチ18mmでそれぞれ反対方向に巻き付けて集
束した。巻き付けるときに中空糸膜にかかる張力は0.5g
以下であった。巻き付けられた中空糸巻の蛇行の幅rは
約0.4mmであった。この中空糸膜14本の束を、図2に示
す様な内径6mm、全長19.0cmのアクリル製チューブから
なる筒体に挿入して、ミニチュア型の膜モジュールを作
製した。充填密度は39%であった。このミニチュア型膜
モジュールを用いて、中空糸膜外側の液流速と流動抵抗
との関係、伝熱抵抗の液流速依存性、物質移動抵抗を測
定し、評価した。液流速と流動抵抗との関係を図4に、
伝熱抵抗の液流速依存性の関係を図5に、それぞれの比
較例と共に示した。
図4に示した、液流速と流動抵抗との関係から、比較
例2は本発明とほぼ同等のすぐれた特性を持っているこ
とが分かるが、比較例3は中空糸外側の液体の線流速が
実際的な速度になると急速に増加して、実用上問題とな
ることが示されている。比較例1の液流速と流動抵抗と
の関係は比較例2とほとんど同じであった。
図5からは線流速に対して総活伝熱抵抗が、本実施例
の場合が線流速の広い範囲で最も小さく、理想的に中空
糸膜を配列したと考えられる比較例1よりも中空糸膜外
側の境膜の伝熱抵抗が優れていることが分かる。流動抵
抗で優れた特性を示した比較例2は、伝熱抵抗では線流
速依存性が大きく、中空糸外側の流れの状態に鋭敏に影
響され、装置的に好ましくないことが分かる。
エタノールを使用して透析実験を行い測定した、中空
糸膜外側境膜の物質移動抵抗、比較例1で34.5min/cm、
比較例2で17.1min/cm、比較例3で8.5min/cm、実施例
1では8.6min/cmであった。
以上の結果を総合的にみると、本発明に従う実施例1
が膜分離装置として重要な3つの特性すべてに最も優れ
ていることは明らかである。比較例1および2と実施例
1に関して、液流速と流動抵抗との関係、伝熱抵抗の液
流速依存性、および物質移動抵抗に観測された相異を考
察すると、中空糸膜に適度な蛇行もしくは螺旋状湾曲を
与えていることが予想以上の効果を発揮しているもと推
量される。
実施例2 ポリアクリロニトリル系ポリマからなる外径0.60mm、
内径0.50mmの中空糸膜に基本的構成を図3に示した装置
を用いて、直径0.205mmのポリアクリロニトリルモノフ
ィラメント2本を、張力6g,ピッチ10mmでそれぞれ反対
方向に巻き付けて集束した。巻き付けるときに中空糸膜
にかかる張力は0.5g以下であった。巻き付けられた中空
糸膜の蛇行の幅は約0.8mmであった。この中空糸膜33本
の束を、図2に示す様な内径6mm、全長19.0cmのアクリ
ル製チューブからなる筒体に挿入して、ミニチュア型の
膜モジュールを作製した。充填密度は33%であった。こ
のミニチュア型膜モジュールを用いて、流動抵抗、伝熱
抵抗、物質移動抵抗を測定し、評価した。線流速1.6km/
hでの流動抵抗は35mmHg、伝熱抵抗は1.03×10-3m2 h ℃
kcal-1、物質移動抵抗は8.0min/cmであった。これらの
結果は実施例1と同様に、非常に良好な性能であること
を示している。
実施例3 ポリスルフォンからなる外径2.00mm、内径1.50mmの中
空糸膜に基本的構成を図3に示した装置を用いて、直径
0.405mmのナイロンモノフィラメントを2本を、張力2g,
ピッチ50mmでそれぞれ反対方向に巻き付けて集束した。
巻き付けるときに中空糸膜にかかる張力は0.5g以下であ
った。巻き付けられた中空糸膜の蛇行の幅は約2.0mmで
あった。この中空糸膜18本の束を、図2に示す様な内径
14mm、全長19.0cmのアクリル製チューブからなる筒体に
挿入して、ミニチュア型の膜モジュールを作製した。充
填密度は37%であった。このミニチュア型膜モジュール
を用いて、流動抵抗、伝熱抵抗、物質移動抵抗を測定
し、評価した。線流速1.6km/hでの流動抵抗は31mmHg、
伝熱抵抗は3.7×10-3m2 h ℃ kcal-1、物質移動抵抗は
8.0min/cmであった。これらの結果は実施例1および2
と同様に、非常に良好な性能であることを示している。
実施例4 ポリフッ化ビニリデンからなる外径1.00mm、内径0.75
mmの中空糸膜に基本的構成を図3に示した装置を用い
て、直径0.165mmのナイロンモノフィラメントを2本
を、張力11.3g,ピッチ18mmでそれぞれ反対方向に巻き付
けて集束した。巻き付けるときに中空糸膜にかかる張力
は0.5g以下であった。巻き付けられた中空糸膜の蛇行の
幅は約0.6mmであった。この中空糸膜105本の束を、内径
20mm、全長220mmのアクリル製チューブからなる筒体に
挿入して、小型の膜モジュールを作製した。中空糸膜の
充填密度は40%であった。この膜モジュールを用いて、
中空糸膜の内側に5.0%のエタノール水溶液を50℃に加
温して800ml/minの速度で循環し、中空糸巻の外側に5.0
%のエタノール水溶液を15℃に冷却して1015ml/minの速
度で循環した。その結果高温側から低温側に52%の濃度
の溶液が1時間当たり13.3gの速度で透過してきた。比
較例としてスペーサーヤーンを巻き付けずに集束して本
実施例と同様の膜モジュールを作製し、同様の実験を行
って比較評価した。本比較例では22.7%の溶液が1時間
当たり8.7gの速度で高温側から低温側に透過してきた。
すなわち本実施例によって、本発明の方法に従えば濃度
分極の影響と温度分極による影響とを最小限に抑えるこ
とができることが示されている。
[発明の効果] 以上に説明したように、本発明に従うと直接的には次
のような効果が得られる。すなわち、 (1)選択透過性中空糸膜の集束体の1端または両端を
接着性樹脂で固定して管板を形成し、筒体に収納した構
造からなる流体分離装置に於いて、スペーサヤーンによ
って中空糸膜が蛇行または螺旋状湾曲をしていることに
よって、中空糸巻の充填密度を高く保ちながら、中空糸
膜外側の流体の流動抵抗を十分に低くかつ流速の変化に
対してに安定な構造の流体分離装置を提供することがで
きる。
(2)適切な径のスペーサヤーンを選定して、好適な範
囲の条件で中空糸膜に巻き付けて集束することにより、
中空糸膜外側の流体の伝熱抵抗を著しく低減することが
できる。
(3)さらに、適切な径のスペーサヤーンを選定して、
好適な範囲の条件で中空糸膜に巻き付けて集束し、スペ
ーサヤーンによって中空糸膜に蛇行または螺旋状湾曲を
付与することによって、中空糸膜外側の流体の流動抵抗
と伝熱抵抗とを低減し、物質移動抵抗を著しく小さくで
き、その結果分離膜の性能を十分に発揮させることがで
きる。
また、間接的効果として、 (4)中空糸膜を集束し筒体に挿入するハンドリング
で、中空糸膜の集束性が改善され中空糸膜に損傷を与え
る機会を減らすことができる。
(5)接着性樹脂で中空糸膜の端部を固定して管板を形
成する場合に、中空糸間の間隙を完全に封止する必要が
あるが、しばしば不完全な封止状態になり製品の収率を
低下させることになる。このような問題点についても、
本発明は原理的に蛇行または湾曲変形して密接すること
のない中空糸間の隙間に接着性樹脂が容易に浸透するこ
とにより、顕著な改善効果を有するものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の中空糸膜素子の一実施態様例を模式的に
示した部分外観図を表したものである。図2は本発明の
流体分離用中空糸膜装置の一実施態様例を示す模式的断
面図である。図3は中空糸膜のスペーサーヤーンを巻き
付けて本発明の中空糸膜素子を得るための装置の実施態
様例の基本的構成を示す概略図である。図4は実施例1
と比較例の中空糸膜外側の流動抵抗と流体の線速度との
測定結果を比較して示した図である。図5は実施例1と
比較例の中空糸膜外側の総括伝熱抵抗と流体の線速度と
の測定結果を比較して示した図である。 図中、 1:中空糸膜 2:ガイドロール 3a,3b:スピンドル 4a,4b:ガイドチューブ 5a,5b:スペーサーヤーン給糸装置 6a,6b:スペーサーヤーン 7:ガイドロール 8:ガイドロール 9:カセ 10:流体分離装置筒体 11a,11b:中空糸外側流体入口・出口ノズル 12a,12b:中空糸内側流体入口・出口ノズル 13a,13b:管板 p:スペーサーヤーンの螺旋ピッチ r:中空糸膜の蛇行もしくは螺旋状湾曲の幅 L:流体分離用中空糸膜装置の全長 D:筒体の内径断面積

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】2本のスペーサーヤーンを巻き付け方向を
    反対にして1本の選択透過性中空糸膜に螺旋状に巻き付
    けてなり、さらに中空糸膜がその繊維軸に対して中空糸
    膜の直径の0.2〜2倍の幅で蛇行もしくは同範囲で螺旋
    状に湾曲していることを特徴とする中空糸膜素子。
  2. 【請求項2】スペーサーヤーンが、中空糸膜の直径の0.
    1〜1倍の直径のモノフィラメントであることを特徴と
    する請求項(1)記載の中空糸膜素子。
  3. 【請求項3】スペーサーヤーンが、ナイロン、ポリエチ
    レンテレフタレート、ポリアクリロニトリル系高分子か
    ら選ばれた少なくとも一種からなることを特徴とする請
    求項(1)記載の中空糸膜素子。
  4. 【請求項4】巻き付けられたスペーサーヤーンの螺旋ピ
    ッチが5〜60mmの範囲にあることを特徴とする請求項
    (1)記載の中空糸膜素子。
  5. 【請求項5】選択透過性中空糸膜が、直径0.4〜4mmの範
    囲の中空糸膜であることを特徴とする請求項(1)記載
    の中空糸膜素子。
  6. 【請求項6】請求項(1)〜(5)のいずれか1項に記
    載の中空糸膜素子からなる集束体の1端または両端を接
    着性樹脂で固定して管板を形成し、筒体内に収納した構
    造を有する流体分離用中空糸膜装置。
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