JP2943004B2 - 潤滑剤組成物 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、酸化による劣化に対して安定化された潤滑
剤組成物に関する。安定化は、少なくとも２種類の特定
の添加剤の添加により行われる。

〔従来の技術、発明が解決しようとする課題〕

鉱物油または合成油をベースとする潤滑油に、それら
の使用特性を改良するために添加剤を添加することは公
知であり、慣用である。潤滑油の酸化的な劣化に対する
添加剤、いわゆる酸化防止は特に重要である。潤滑剤の
酸化的劣化は、エンジンオイルにおいて特に重要であ
り、これは、エンジンの燃焼室内においては高温に耐え
なければならないため、および酸素に加えて、酸化触媒
として作用する窒素酸化物（NO_X）が存在するためであ
る。

潤滑剤のために使用されている酸化防止剤は、特に有
機硫黄およびリン化合物そしてまた芳香族アミンおよび
フェノール、特に立体障害フェノールである〔Ullmans
Encyckopadie der technishen Chemie（ウルマンの化学
技術百科辞典）第４版、ヒェミー出版（Verlag Chemi
e）、第20巻（1981年）、第541〜43頁参照〕。

立体障害アミもまた潤滑油用の安定剤として例えば米
国特許第4069199号明細書または特開昭60−28496号公報
ですでに提案されている。

ヨーロッパ特許出願公開第356677号明細書には潤滑剤
用の酸化防止剤として芳香族アミンと立体障害アミンの
混合物が提案されており、またこれらの混合物にフェノ
ール系酸化防止剤を加えることも可能である。

〔課題を解決するための手段〕

フェノール系酸化防止剤と立体障害アミンの組み合わ
せは、芳香族アミンの添加を省いてさえも、潤滑剤の安
定剤として著しく適していることが見い出された。

本発明は、 （Ａ）鉱物油または合成油またはそのような油の混合
物、 （Ｂ）少なくとも１種の次式III、IVまたはVIII ［式中、 Ｒは水素原子を表し、 R¹¹は水素原子またはメチル基を表し、 ｎは１または２を表し、 ｎが１を表すとき、R¹²は炭素原子数１ないし18のア
ルキル基を表し、または ｎが２を表すとき、R¹²は４ないし12個のＣ原子を有
する脂肪族ジカルボン酸のジアシル基を表し、 R¹³は水素原子、炭素原子数１ないし12のアルキル基
または次式 を表し、 ｎが１を表すとき、R¹⁴は水素原子または炭素原子数
１ないし12のアルキル基を表し、または ｎが２を表すとき、R¹⁴は炭素原子数２ないし８のア
ルキレン基を表す。］で表される立体障害アミン、 （Ｃ）少なくとも１種の次式Ｉ ［式中、 ＡおよびＢは、互いに独立して、炭素原子数１ないし
４のアルキル基を表し、 Ｘは基−C_bH_2b−CO−OR³を表し、 ｂは１または２を表し、 R³は次式 で表される基の中の一つを表す。］で表されるフェノー
ルからなる潤滑剤組成物に関する。

本組成物においては、（Ｂ）と（Ｃ）の重量比は1:1
ないし1:100、特には1:3ないし1:20であるのが好まし
い。（Ｂ）および（Ｃ）の合計量は、（Ａ）の0.05ない
し５重量％、特には0.1ないし３重量％であるのが好ま
しい。

炭素原子数１ないし４のアルキル基としてのＡおよび
Ｂは、線状または枝分れ状のアルキル基、例えばメチル
基、エチル基、イソプロピル基、第三ブチル基または第
二ブチル基であってよい。

成分（Ａ）は、潤滑油の製造に通常使用される種類の
鉱物性または合成ベース油である。例えば、合成油はポ
リカルボン酸またはポリオールのエステル、脂肪族ポリ
エステルまたはポリ−α−オレフィン、シリコン、リン
酸エステルまたはポリアルキレングリコールである。潤
滑油は、油と粘着剤をベースとするグリースでもあり得
る。そのような潤滑剤は、例えばD.Klamann“Schmierst
offc und artverwandte Produkte"（“潤滑油およびそ
の関連生成物”）、Verlag Chemie、Weinheim 1982に
記載されている。

成分（Ｂ）は立体障害アミンであって、式III、IVま
たはVIIIで表される下記のポリアルキルピペリジンであ
る。

ａ）次式III: で表される化合物。

炭素原子数１ないし18のアルキル基としてのR¹²は、
例えばメチル基、エチル基、ｎ−プロピル基、ｎ−ブチ
ル基、第二ブチル基、第三ブチル基、ｎ−ヘキシル基、
ｎ−オクチル基、２−エチルヘキシル基、ｎ−ノニル
基、ｎ−デシル基、ｎ−ウンデシル基、ｎ−ドデシル
基、ｎ−トリデシル基、ｎ−テトラデシル基、ｎ−ヘキ
サデシル基またはｎ−オクタデシル基であり得る。

４ないし12個のＣ原子を有する脂肪族ジカルボン酸の
二価基としてのR¹²は、例えばコハク酸、グルタール
酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、マレイン
酸、イタコン酸またはジブチルマロン酸の基である。

この種のポリアルキルピペリジン化合物の例は下記の
化合物である： １）ジ（2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−４−イ
ル）スクシネート、 ２）ジ（2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−４−イ
ル）グルタレート、 ３）ジ（2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−４−イ
ル）アジペート、 ４）ジ（2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−４−イ
ル）セバケート、 ５）ジ（1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−４−イ
ル）セバケート。

ｂ）次式IV: で表される化合物。

全ての炭素原子数１ないし12のアルキル置換基は既に
ａ）で定義した意味を有する。

炭素原子数２ないし８のアルキレン基としてのR
¹⁴は、例えばエチレン基、プロピレン基、2,2−ジメチ
ルプロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基
またはオクタメチレン基である。

この群のポリアルキルピペリジン化合物の例は下記の
化合物である： ６）N,N′−ビス（2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−
４−イル）ヘキサメチレン−1,6−ジアミン、 ７）ビス（2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−４−イ
ル）アミン。

ｃ）次式VIII: で表される化合物。

化合物の例を下記に示す。

８）1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−４−オン。

ポリアルキルピペリジンは公知化合物であり、有機材
料用の光安定剤として使用されている。それらの幾つか
は市販されている。

成分（Ｃ）はフェノール系酸化防止剤である。

成分（Ｃ）として特に適する一群は、式Ｉ中、Ａおよ
びＢが互に独立して炭素原子数１ないし４のアルキル基
を表し、Ｘが基−C_bH_2b−CO−OR³を表し、ｂが１または
２を表し、R³が基 の中の一つを表す式Ｉの化合物、特にはＸが基−（C
H₂）_２−CO−OR³を表し、そしてR³は基 を表す式Ｉの化合物からなる。

特に好ましい潤滑剤組成物は、（Ｂ）が次式IXまたは
Ｘ ［各式中、 ｎは１または２を表し、 R¹¹は水素原子またはメチル基を表し、 Ｙは、ｎが１を表す場合、−Ｏ−（炭素原子数８ない
し15のアルキル）基を表し、ｎが２を表す場合、基−NH
−（CH₂）_６−NH−または基−Ｏ−CO−（CH₂）_ｍ−CO−
Ｏ−（式中、ｍは２ないし８を表す。）を表す。］で表
される化合物であり、そして（Ｃ）が式Ｉ［式中、Ａは
炭素原子数１ないし４のアルキル基を表し、Ｂは炭素原
子数１ないし４のアルキル基を表し、Ｘは−CH₂CH₂COOR
³を表し、R³は を表す。］で表される化合物である。

成分（Ｂ）および（Ｃ）はベース油に直接添加され得
るか、または（Ｂ）および（Ｃ）は必要に応じて加熱さ
れつつ最初に少量のベース油に溶解され、そして該溶液
は残りの油に混合される。他の可能性として、溶媒中の
（Ｂ）と（Ｃ）の濃厚溶液がベース油に混合される。

（Ｂ）および（Ｃ）のベース油への添加は、酸化的劣
化に対して油を安定化させ、またエンジンオイル中のス
ラッジの生成を低減させる。

潤滑剤組成物はさらに他の添加剤、例えばリン（II
I）エステル、金属不動態化剤、防錆剤、粘度指数改良
剤、流動点降下剤、分散剤、界面活性剤および／または
耐摩耗添加剤を含むことができる。

リン（III）エステルの例は、トリフェニルホスファ
イト、デシルジフェニルホスファイト、フェニルジデシ
ルホスファイト、トリス（ノニルフェニル）ホスファイ
ト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホス
ファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスフ
ァイト、トリス（2,4−ジ−第三ブチルフェニル）ホス
ファイト、ジイソデシルペンタエリトリトールジホスフ
ァイト、ビス（2,4−ジ−第三ブチルフェニル）ペンタ
エリトリトールジホスファイト、トリステアリルソルビ
トールトリホスファイト、テトラキス（2,4−ジ−第三
ブチルフェニル）−4,4′−ビフェニレンジホスファイ
トおよびビス（2,6−ジ−第三ブチル−４−メチルフェ
ニル）ペンタエリトリトールジホスファイトである。

金属、例えば銅のための不動態化剤の例は、トリアゾ
ール、ベンゾトリアゾールおよびそれらの誘導体、トル
トリアゾールおよびそれらの誘導体、２−メルカプトベ
ンゾチアゾール、２−メルカプトベンゾトリアゾール、
2,5−ジ−メルカプトベンゾトリアゾール、2,5−ジメル
カプトチアジアゾール、5,5′−メチレンビスベンゾト
リアゾール、4,5,6,7−テトラヒドロベンゾトリアゾー
ル、サリチリデンプロピレンジアミン、サリチルアミノ
グアニジンおよびその塩である。

防錆剤の例は次の通りである： ａ）有機酸、並びにそのエステル、金属塩および無水
物、例えば： Ｎ−オレオイルサルコシン、ソルビタンモノオレエー
ト、ナフタレン酸鉛、アルケニルコハク酸無水物例えば
無水ドデセニルコハク酸、アルケニルコハク酸部分エス
テルおよび部分アミド、４−ノニルフェノキシ−酢酸。

ｂ）含窒素化合物、例えば： I.第一、第二または第三脂肪族もしくは環状脂肪族アミ
ン、および有機酸もしくは無機酸のアミン塩、例えば油
溶性アルキルアンモニムカルボキシレート。

II.複素環化合物、例えば置換イミダゾリンおよび置換
オキサゾリン。

ｃ）含リン化合付、例えば： リン酸部分エステルもしくはホスホン酸の部分エステ
ルのアミン塩、亜鉛ジアルキルジチオホスフェート。

ｄ）含硫黄化合物、例えば： バリウム、ジノニルナフタレンスルホネート、カルシ
ウムペトロリウムスルホネート。

粘度指数向上剤の例は、ポリアクリレート、ポリメタ
クリレート、ビニルピロリドン／メタクリレートコポリ
マー、ポリビニルピロリドン、ポリブテン、オレフィン
コポリマー、スチレン／アクリレートコポリマー、ポリ
エーテル類である。

流動点降下剤の例は、ポリメタクリレートおよびアル
キル化ナフタレン誘導体である。

分散剤／界面活性剤の例は、ポリブテニルコハク酸ア
ミドもしくはポリブテニルコハク酸イミド、ポリブテニ
ルホスホン酸誘導体、塩基性マグネシウム、カルシウム
およびバリウムスルホネートおよびフェノレートであ
る。

耐摩耗添加剤の例は、硫黄および／またはリンおよび
／またはハロゲン含有化合物、例えば硫黄化された植物
油、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、トリトリルホスフェ
ート、塩素化パラフィン、アルキおよびアリールジスル
フィドおよびトリスリフィド、トリフェニルホスホロチ
オネート、ジエタノールアミノメチルトリルトリアゾー
ル、ジ−（２−エチルヘキシル）アミノメチルトリルト
リアゾールである。

潤滑剤はまた、グラファイトまたは硫化モリブデンの
ような固体潤滑剤も含むことができる。

〔実施例・発明の効果〕

以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。％
は重量による。

実施例１ 本発明により安定化された潤滑油の酸化挙動を、ASTM
D−943によるTOST（turbine oxidation stability tes
t）法により試験する。

これは、60mlの水を、腐食抑制剤（Reocor^R12）が0.0
5％含まれている鉱物油（Mobil STOCK 305）300mlに添
加し、その混合物を鉄および銅ワイヤーの存在下、酸素
を通しながら95℃で1000時間加熱することにより行う。
酸の生成は、中和値TAN（mgKOH/mg油）の測定により調
べ、生成したスラッジの量（＝SLUGE）もまた測定す
る。

安定剤は下記のものを使用する： 合計濃度は油を基にして0.25％である。

実施例２ 下記安定剤を用いて実施例１と同調に試験を行う。

合計濃度は0.25％である。結果を第２表に示す。

実施例３ 下記安定剤を用いて実施例１と同様に試験を行う。

合計濃度は0.25％である。結果を第３表に示す。

実施例４ 下記安定剤を用いて実施例１と同様に試験を行う。

合計濃度は0.25％である。結果を第４表に示す。

実施例５ 本発明により安定化された油の耐酸化性を示差走査熱
量計で測定した。これを行うためにベース油を小アルミ
ニウム皿内で鉄（III）アセチルアセトン（酸化触媒と
して）0.025％および安定剤0.55％と混合し、その混合
物を熱量計中10バールの酸素下、160℃の恒温に加熱す
る。発熱反応が開始する時間T_B（誘導時間）および発熱
反応が終了する時間T_Eを測定する：誘導時間が長いほど
耐酸化性は高い。使用される安定剤はフェノール系酸化
防止剤Ｐ−１である。

下記の立体障害アミンを使用する。

結果を第５表に示す。

この表から、成分C0.10％と成分B0.45％の安定剤混合
物を用いた場合、油の耐酸化性は、個々の成分について
のデータから期待される以上に高まることが判る。

実施例６ 酸素下でなく380ppmの（NO）_Ｘが混合された８バール
の空気下で測定を行い、また恒温温度が170℃であるこ
と以外は実施例６と同様にして示差走査熱量計で耐酸化
性を測定する。発熱の開始のみを測定する。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 ＦＩ // Ｃ１０Ｎ 30:10 40:25 (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) C10M 141/06 - 141/08 C10M 133/00 - 133/58 C10M 135/20 - 135/26 C10M 129/68 - 129/82

Claims (6)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】（Ａ）鉱物油または合成油またはそのよう
   な油の混合物、（Ｂ）少なくとも１種の次式III、IVま
   たはVIII ［式中、 Ｒは水素原子で表し、 R¹¹は水素原子またはメチル基を表し、 ｎは１または２を表し、 ｎが１を表すとき、R¹²は炭素原子数１ないし18のアル
   キル基を表し、または ｎが２を表すとき、R¹²は４ないし12個のＣ原子を有す
   る脂肪族ジカルボン酸のジアシル基を表し、 R¹³は水素原子、炭素原子数１ないし12のアルキル基ま
   たは次式 を表し、 ｎが１を表すとき、R¹⁴は水素原子または炭素原子数１
   ないし12のアルキル基を表し、または ｎが２を表すとき、R¹⁴は炭素原子数２ないし８のアル
   キレン基を表す。］で表される立体障害アミン、 （Ｃ）少なくとも１種の次式Ｉ ［式中、 ＡおよびＢは、互いに独立して、炭素原子数１ないし４
   のアルキル基を表し、 Ｘは基−C_bH_2b−CO−OR³を表し、 ｂは１または２を表し、 R³は次式 で表される基の中の一つを表す。］で表されるフェノー
   ルからなる潤滑剤組成物。
2. 【請求項２】（Ｂ）と（Ｃ）の重量比が1:1ないし1:100
   である請求項１記載の組成物。
3. 【請求項３】（Ｂ）および（Ｃ）の合計量が（Ａ）の重
   量の0.05ないし５％である請求項１記載の組成物。
4. 【請求項４】（Ｃ）は式Ｉ［式中、ＡおよびＢは、互い
   に独立して、炭素原子数１ないし４のアルキル基を表
   し、Ｘは基−（CH₂）_２−CO−OR³を表し、そしてR³は次
   式 で表される基を表す。］で表される化合物である請求項
   １記載の組成物。
5. 【請求項５】（Ｂ）は次式IXまたはＸ ［式中、 R¹¹は水素原子またはメチル基を表し、 ｎは１または２を表し、 ｎが１を表すとき、Ｙは−Ｏ−（炭素原子数８ないし15
   のアルキル基を）表し、または ｎが２を表すとき、Ｙは基−NH−（CH₂）_６−NH−また
   は−Ｏ−CO−（CH₂）_ｍ−CO−Ｏ−（式中、ｍは２ない
   し８を表す。）を表す。］で表される化合物であり、ま
   た （Ｃ）は請求項１で定義されるとおりものである請求項
   １記載の組成物。
6. 【請求項６】（Ｂ）は式IX［式中、ｎは２を表し、そし
   てＹは基−NH−（CH₂）_６−NH−または基−Ｏ−CO−（C
   H₂）_８−CO−Ｏ−を表す。］で表される化合物であり、
   そして（Ｃ）は次式 で表される化合物である請求項５記載の組成物。