JP2940507B2 - 海底音響特性測定方法及び測定装置 - Google Patents

海底音響特性測定方法及び測定装置

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JP2940507B2
JP2940507B2 JP1901997A JP1901997A JP2940507B2 JP 2940507 B2 JP2940507 B2 JP 2940507B2 JP 1901997 A JP1901997 A JP 1901997A JP 1901997 A JP1901997 A JP 1901997A JP 2940507 B2 JP2940507 B2 JP 2940507B2
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学 竹井
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は海底音響特性測定方
法及び測定装置に係り、特に海中を伝搬する音波の測定
データと伝搬計算によるレプリカデータの相関に基づい
て海底音響特性を推定する海底音響特性測定方法及び測
定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の海底音響特性測定装置は、海中を
伝搬する音波の測定データとレプリカデータとの相関値
に基づいて、海底音響特性に関する多次元の未知パラメ
ータを精度良く効率的に推定することを目的としている
(アイ・イー・イー・イー・ジャーナル・オブ・オーシ
ャニック・エンジニアリング、第18巻第3号(IEEE J
OURNAL OF OCEANIC ENGINEERING,VOL.18,NO.3 )224
頁〜231頁)。
【0003】図5は、この従来の海底音響特性測定装置
の要部の一例のブロック図を示す。同図において、ま
ず、パラメータ設定部21では、海底音響特性に関する
多次元のパラメータセットを設定する。ここで、多次元
のパラメータセットは、例えば海底下音響特性を示す海
底下の音速プロファイル、密度、減衰率及び層構造等を
要素とするものである。レプリカ計算部22では、設定
した上記のパラメータセットに対応するレプリカデータ
を所定の伝搬モデルを用いて計算し、そのレプリカデー
タを相関計算部23に出力する。
【0004】相関計算部23は、各受波器により得られ
る測定データと上記のレプリカデータとの相関値を計算
する。このとき、入力測定データ及びレプリカデータ
は、任意の単一処理周波数fNに対応したものが使われ
る。また、1回目の繰り返し処理のループにおいて相関
計算部23に入力された測定データが、以降の繰り返し
処理のループにおける相関計算でも使われる。
【0005】相関変化計算部24は、相関計算部23に
より計算された相関値と前回の繰り返し処理のループに
おいて得られた相関値との差、すなわち相関値の変化量
を計算する。相関変化評価部25は、この変化量を評価
する。具体的には、相関変化評価部25は、相関値の変
化量に基づいて相関値が増加するように変化したか否か
を判定する。更に、相関値が低下したと判定された場
合、乱数計算により得られた値が、この相関値の低下を
許容する許容確率を決定する確率分布を満たすか否かを
判定する。
【0006】移動平均計算部26は、相関変化評価部2
5により、相関値が増加したと判定された場合、あるい
は相関値が低下した場合であっても前述の値が相関値の
低下を許容する許容確率を決定する確率分布を満たす場
合、相関値の変化の移動平均値を計算する。パラメータ
更新部27は、移動平均計算部26で計算された移動平
均値を受け、パラメータセットの値を今回のループで新
たに設定された値に更新する。終了判定部28は、予め
設定される終了条件を満たしているか否かを判定し、終
了条件を満たしていれば、更新されたパラメータセット
の値を、解析の対象である海底下深度ZNまでの海底音
響特性として出力する。終了条件を満たしていないとき
は、パラメータ設定部21から次のループの処理を繰り
返す。
【0007】なお、前記確率分布の大きさは、相関値の
変化の移動平均値に比例しており、移動平均計算部26
では、相関値の変化の移動平均を計算すると共に、確率
分布の更新設定を行い、次回のループではその確率分布
が使われる。一方、相関変化評価部25において、相関
値が低下し確率分布も満たさないと判定された場合、パ
ラメータセットの値の更新は行わず、パラメータ設定部
21から次のループの処理を繰り返す。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、上記の従来
の海底音響特性測定装置では、全深度範囲の解析に一つ
の処理周波数fNしか使用していないため、推定される
海底音響特性が全深度範囲に対する平均的な値になり、
広い深度範囲の解析を行う場合、深度方向の分解能が粗
くなり、このため広い深度範囲を細かい深度分解能で解
析することが困難である。
【0009】本発明は上記の点に鑑みなされたもので、
広い深度範囲の海底音響特性を、細かい深度分解能で推
定し取得し得る海底音響特性測定方法及び測定装置を提
供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明方法は、海中に送波され、海底下を含む海中
音場全体を伝搬してきた複数の処理周波数を含む音波を
複数の受波器で受波し、これら複数の受波器のそれぞれ
により得られた測定データと、複数の処理周波数のそれ
ぞれについて周波数順に得た伝搬計算によるレプリカデ
ータとの相関からそれぞれの処理周波数での深度範囲に
おける海底音響特性の推定値を計算し、これらの推定値
を順次蓄積して解析対象の全深度範囲の海底音響特性の
推定値を測定するようにしたものである。
【0011】また、上記の目的を達成するため、本発明
装置は、複数の処理周波数を含む広帯域の音波を海中に
送波する広帯域音源と、海底下を含む海中音場全体を伝
搬してきた送波された音波を、それぞれ受波する複数の
受波器からなる受波器配列と、受波器配列を構成する複
数の受波器からの測定データと、複数の処理周波数のそ
れぞれについて周波数順に得た伝搬計算によるレプリカ
データとの相関から解析対象の全深度範囲の海底音響特
性の推定値を得る解析部とを有する構成としたものであ
る。
【0012】本発明では、広帯域の音波を送受波し、こ
の測定データと複数の処理周波数のそれぞれについて周
波数順に得た伝搬計算によるレプリカデータとの相関か
らそれぞれの処理周波数での深度範囲における海底音響
特性の推定値を計算し、それらの蓄積合成した推定値に
より解析対象の全深度範囲における海底音響特性の推定
値を測定する。
【0013】ここで、図4に示すように、海面下の音源
16から送波され、海底下を伝搬して再び水中の受波点
17に戻る音波は、周波数f1、f2及びf3のうち低
い周波数の音波ほど海底下の深い深度まで透過してい
き、周波数の高い音波ほど浅い深度までの透過で止ま
る。このため、高周波の音波の測定データには浅い海底
下情報しか含まれず、この測定データを用いた解析は狭
い深度範囲に止まる。すなわち、f1>f2>f3の周
波数関係にある音波に対して、透過深度はZ1<Z2<
Z3の関係になる。
【0014】そこで、本発明では、高周波の音波の測定
データを用いた解析から開始し、それより低周波の音波
の測定データを用いた解析を繰り返すことにより、広い
深度範囲の細かい深度分解能での海底音響特性の推定が
できる。
【0015】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態につい
て図面と共に説明する。図1は本発明になる海底音響特
性測定方法及び測定装置の一実施の形態の構成図を示
す。同図において、この実施の形態は、海中に設置され
た広帯域音源1と、複数の受波器が海中に配列された受
波器配列2と、この受波器配列2を構成する複数の受波
器からの測定データに基づいて海底音響特性を得る解析
部4を有する解析装置3からなる。海中の広帯域音源1
から送波された広帯域の音波は、海底下を含む海中音場
全体を伝搬して受波器配列2を構成する複数の受波器で
受波される。解析装置3は、この受波器配列2を構成し
ている複数の受波器によりそれぞれ得られた測定データ
を、解析部4により解析処理し、海底音響特性を出力す
る。
【0016】この実施の形態では、広帯域音源1から少
なくとも周波数f1〜fNを含む周波数帯域の音波を送
波し、解析部4において、複数の処理周波数f1〜fN
を使用し、高い周波数による浅い深度範囲の解析から順
番に実行し、そこで推定された海底音響特性を、次の周
波数による更に深い深度範囲の解析において既知情報と
して利用し、これをすべての処理周波数で繰り返すよう
にしたものである。
【0017】次に、上記の解析部4について説明する。
図2は本発明になる海底音響特性測定装置の要部の一実
施の形態のブロック図を示す。図2のブロック図は、図
1の解析部4の構成を示すブロック図であり、パラメー
タ設定部6、レプリカ計算部7、相関計算部8、相関変
化計算部9、相関変化評価部10、移動平均計算部1
1、パラメータ更新部12及び終了判定部13からなる
従来の海底音響特性測定装置の解析部と同様の構成に加
えて、終了判定部13からの音程音響特性推定値を蓄積
する推定値蓄積部14と、その推定値が入力される透過
深度計算部5とを有し、更に、透過深度計算部5により
計算した透過深度でパラメータ設定部6、レプリカ計算
部7及び相関計算部8を制御する構成である。
【0018】この実施の形態では、まず、透過深度計算
部5において、周波数f1〜fNの透過深度Z1〜ZNが
計算される。この透過深度Z1〜Z Nは、海底下を伝搬
した後に受波器配列2で受波可能である周波数f1〜f
Nの音波が到達する最大の海底下深度である。また、周
波数f1〜fN中の1〜Nはこの実施の形態の推定処理
において使用される処理周波数の番号であり、またf1
>f2>...>fNの周波数関係である。ここで、音
波は周波数が低いほどより深くまで透過するため、透過
深度はZ1<Z2<...<ZNの関係になる。
【0019】解析部4での透過計算部5による透過深度
の計算後の処理は、初段ループと後段ループの計2段階
の処理ループによる処理に別れる。初段ループでは、処
理周波数と解析する深度範囲が逐次更新されると共に、
その深度範囲の海底音響特性推定値が蓄積され、後段ル
ープでは、初段ループで設定された処理周波数と解析の
深度範囲に対する多次元パラメータの推定処理が行われ
る。
【0020】上記の2段階の処理ループによる処理を行
わせるため、透過深度計算部5は、初段のn回目ループ
の処理周波数fnをレプリカ計算部7及び相関計算部8
に出力し、解析対象となる海底下の深度範囲Zn-1〜Zn
をパラメータ設定部6に出力し、更にそれまでに終了し
たループで蓄積されている海底下の深度0〜Zn-1の海
底音響特性推定値をレプリカ計算部7に出力する。
【0021】パラメータ設定部6は、深度範囲Zn-1〜
Znの海底音響特性に関する多次元のパラメータセット
を設定する。ここで、多次元のパラメータセットは、例
えば海底下音響特性を示す海底下の音速プロファイル、
密度、減衰率及び層構造等を要素とするものである。レ
プリカ計算部7は、設定したパラメータセットに対応す
る、周波数fNのレプリカデータを所定の伝搬モデルを
用いて計算し、そのレプリカデータを相関計算部8に出
力する。この計算において、深度範囲0〜Zn-1の海底
音響特性推定値が既知情報として計算パラメータに内挿
される。
【0022】相関計算部8は、各受波器により得られた
周波数fNの測定データとレプリカ計算部7より入力さ
れたレプリカデータとの相関値を計算する。なお、測定
データは、後段の1回目ループにおいて相関計算部8に
入力したものが以降のループにおける相関計算でも使わ
れ続ける。相関変化計算部9は、相関計算部8から供給
される相関値と、前回のループにおいて得られた相関値
の差、すなわち相関値の変化量を計算する。
【0023】相関変化評価部10は、この相関変化計算
部9により計算された相関値の変化量を評価する。具体
的には、相関変化評価部10は、相関値の変化量に基づ
いて相関値が増加するように変化したか否かを判定す
る。更に、相関変化評価部10は、相関値が低下したと
判定された場合、乱数計算により得られた値が、この相
関値の低下を許容する許容確率を決定する確率分布を満
たすか否かを判定する。移動平均計算部11は、相関変
化評価部10により、相関値が増加したと判定された場
合、あるいは相関値が低下した場合であっても、前述の
値が相関値の低下を許容する許容確率を決定する確率分
布を満たす場合、相関値の変化の移動平均値を計算す
る。
【0024】パラメータ更新部12は、移動平均計算部
11で計算された移動平均値に基づき、パラメータセッ
トの値を今回のループで新たに設定された値に更新す
る。終了判定部13は、予め設定される終了条件を満た
しているか否か判定し、終了条件を満たしているときに
は、パラメータ更新部12で更新されたパラメータセッ
トの値を深度範囲Zn-1〜Znの海底音響特性推定値とし
て、推定値蓄積部14に出力する。終了条件を満たして
いない場合は、パラメータ設定部6から次の後段ループ
の処理を開始する。
【0025】なお、前記確率分布の大きさは、相関値の
変化の移動平均値に比例している。移動平均計算部11
では、相関値の変化の移動平均を計算すると共に、前記
確率分布の更新設定を行い、次回のループの処理ではそ
の確率分布が使われる。一方、相関変化評価部10にお
いて、相関値が低下し前記確率分布も満たさないと判定
された場合、パラメータセットの値の更新は行わず、パ
ラメータ設定部6から次の後段ループの処理を繰り返
す。
【0026】推定値蓄積部14は、終了判定部13から
出力される深度範囲Zn-1〜Znまでの海底音響特性推定
値を順次蓄積し、初段のN回ループ処理が終了した後
に、蓄積したすべての深度範囲の推定値を、海底下深度
0〜ZNの海底音響特性推定値として出力する。初段の
全ループが終了していない場合は、推定値蓄積部14
は、既に蓄積されている深度0〜Znの海底音響特性推
定値を、透過深度計算部5に出力し、次の初段ループの
処理を繰り返す。
【0027】次に、図2の実施の形態の動作について図
3の初段ループの処理の流れ及び初段ループと後段ルー
プの関係を示すフローチャートを併せ参照して説明す
る。上記の説明のように、この実施の形態の処理アルゴ
リズムは、2段階の処理ループに別れ、初段ループでは
処理周波数と解析する深度範囲が逐次更新されると共
に、その深度範囲の海底音響特性推定値が蓄積され、後
段ループでは、初段ループで設定した処理周波数と解析
の深度範囲に対するパラメータの推定処理が行われる。
【0028】まず、初段ループにおいては、最も高い処
理周波数f1のデータから順に最も低い処理周波数fN
のデータまで、N個の処理周波数のそれぞれについて順
番に全部でN回の処理ループが繰り返され、各ループの
処理が終了する度に、処理周波数fn(ただし、n=
1,2,...,N)に対応する深度範囲Zn-1〜Znの
海底音響特性推定値が順次蓄積され、最終的に解析対象
である全深度範囲0〜ZNの海底音響特性推定値が、次
のループにおける既知情報として与えられる。
【0029】具体的には、まず、透過深度計算部5によ
り周波数f1〜fNの音波の透過深度Z1〜ZNが計算さ
れる(図3のステップS1)。続いて、初段ループが始
まり(図3のステップS2)、最初に、周波数f1の測
定データ及びレプリカデータによる、深度範囲0〜Z1
の海底音響特性の推定処理が後段ループで行われ(図3
のステップS3)、その推定結果が深度範囲0〜Z1の
海底音響特性推定値として推定値蓄積部14に蓄積され
ると共に、蓄積された推定値が初段ループの2回目のル
ープ処理の既知情報として与えられる(図3のステップ
S4)。
【0030】以下、上記と同様にして、周波数f2、f
3、...、fN-1のそれぞれの測定データ及びレプリ
カデータによる深度範囲Zn-1〜Znの海底音響特性の推
定処理が後段ループで行われ、そのときの推定値が深度
範囲Zn-1〜Znの海底音響特性推定値として推定値蓄積
部14に蓄積されると共に、蓄積された推定値が次の初
段ループの処理の既知情報として与えられ、初段ループ
のN回目の処理により周波数fNの推定処理が後段ルー
プで行われ、それにより得られた推定値が深度範囲ZN-
1〜ZNの海底音響特性推定値として推定値蓄積部14に
蓄積されると(図3のステップS5)、推定値蓄積部1
4からは全解析深度0〜ZNの海底音響特性推定値が出
力され処理が終了する。
【0031】次に、後段ループの動作について図2と共
に更に詳細に説明する。後段ループは、初段ループによ
り設定された処理周波数と深度範囲に対し、多次元パラ
メータを推定するための繰り返し処理のループである。
処理ループが繰り返される度に、パラメータ設定部6に
より乱数計算により海底音響特性に関するN次元のパラ
メータセット{X(1)〜X(N)}が、透過深度計算
部5より入力された解析深度範囲Zn-1〜Znに応じて設
定される。設定されたパラメータセットに対し、レプリ
カ計算部7は、各受波器のレプリカデータを所定の伝搬
モデルにより計算する。このとき、レプリカ計算部7
は、透過深度計算部5より入力された深度0〜Z n-1の
音響特性推定値を既知情報として計算パラメータに内挿
する。
【0032】このレプリカデータと各受波器より入力さ
れた測定データとの相関値Rが、相関計算部8により計
算される。各受波器からの測定データは、後段ループの
1回目のループ処理で入力され、以後の後段ループのル
ープ処理でその測定データが使用され続ける。なお、レ
プリカデータは、透過深度計算部5より入力された処理
周波数fnに対応したものがレプリカ計算部7により計
算され、測定データは、透過深度計算部5より入力され
た処理周波数fnに対応したものが相関計算部8により
選択され相関計算に使用される。
【0033】相関値Rの計算方法としては、例えばバー
トレット(BARTLETT)相関式を用いることがで
きる。各受波器の測定データベクトルをベクトルM=
{M(1),...,M(N)}とし、各受波器のレプ
リカデータベクトルをベクトルX={X
(1),...,X(N)}とすると、相関値Rは次式
により計算される。
【0034】 R=MT[XXT]M (1) ここで、Tは複素共役転置の演算子であり、[]は測定
値の時間平均である。計算される相関値Rは規格化さ
れ、ベクトルMとベクトルXが完全に一致すると最大相
関値1となる。なお、相関値Rの計算は、この方法に限
定されるものではなく、例えばMV相関式を用いた方法
等、他の計算方法を適用しても構わない。
【0035】次に、相関計算部8により得られる相関値
R(i)と前回のループ処理時に計算された相関値R
(i−1)の差が相関値変化ΔRとして、相関変化計算
部9により次式に基づいて計算される。
【0036】 ΔR=R(i)−R(i−1) (2) 相関変化評価部10は、この相関値変化ΔRに基づい
て、相関値Rが増加したかどうかを判定し、ΔR≧0、
すなわち相関値Rが増加したと判定したときには、移動
平均計算部11で相関値変化の移動平均を計算させた
後、パラメータ更新部12で前回のループ処理時に設定
されたパラメータセットの値を新たに設定されたパラメ
ータセットの値に更新させる。
【0037】一方、ΔR<0、すなわち相関値Rが低下
した場合は、更に相関変化評価部10により、乱数計算
により得られた値φが確率分布P(ΔR)を満たすか否
かが判定される。ここで、確率分布P(ΔR)は、ΔR
<0の場合に計算され、0<P(ΔR)<1/2の値で
あり、値φは範囲[0、1]の間で等確率で選択される
任意の数である。また、P(ΔR)≧φ、すなわち乱数
計算により得られた値φが確率分布P(ΔR)を満たす
場合には、移動平均計算部11で相関値変化の移動平均
が計算された後、パラメータ更新部12で前回のループ
処理時に設定されたパラメータセットの値が新たに設定
されたパラメータセットの値に置き換えられる。
【0038】前記確率分布P(ΔR)は、相関値変化Δ
Rの移動平均値に比例し、次式により得られる。
【0039】 P(ΔR)=1/[1+exp{−ΔR/(<T>/ln(K))}] (3) ここで、<T>はΔRの移動平均値であり、Kは1より
大きい定数である。ΔRの移動平均値<T>は、パラメ
ータセットの値が更新される毎に計算される。次回のル
ープ処理では、新たに計算された移動平均値が確率分布
P(ΔR)の計算式における<T>の値として用いられ
る。こうすることにより、相関値Rが低下、すなわち状
況が悪化する場合を確率的に許容してやりながら、徐々
にパラメータ値を収束に向かわせることができる。
【0040】パラメータセットが置き換えられると(更
新されると)、各パラメータの収束性、すなわち繰り返
し回数に対するパラメータ値の変動幅が終了判定部13
で評価され、すべてのパラメータの変動が予め定められ
た値以下に安定すると、後段ループの繰り返し処理が終
了し、新たに置き換えられたパラメータセットの値が深
度範囲Zn-1〜Znの海底音響特性の推定値として、推定
値蓄積部14へ出力される。なお、すべてのパラメータ
の変動が予め定められた値以下にならなければ、パラメ
ータ設定部6により新たにパラメータセットの設定が行
われ、次の後段ループの処理が開始される。
【0041】一方、相関変化評価部10において、ΔR
<0すなわち相関値Rが低下し、かつ、乱数計算により
得られた値φが確率分布P(ΔR)を満たさないと判定
された場合には、設定されたパラメータセットの値は排
除され、前回のループ処理時に設定されたパラメータセ
ットの値がそのまま残る。そして、パラメータ設定部6
により、新たにパラメータセットの設定が行われ、次の
後段ループの処理が繰り返される。
【0042】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
広帯域の音波を送受波し、この測定データと複数の処理
周波数のそれぞれについて周波数順に得た伝搬計算によ
るレプリカデータとの相関からそれぞれの処理周波数で
の深度範囲における海底音響特性の推定値を計算し、そ
れらを蓄積合成した推定値により解析対象の全深度範囲
における海底音響特性の推定値を測定するようにしたた
め、広い深度範囲の解析対象の全深度範囲における海底
音響特性の推定値を、細かい深度分解能で得ることがで
き、海底音響特性測定装置の測定精度の向上及び信頼性
を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態の概略全体構成図であ
る。
【図2】本発明の要部の一実施の形態のブロック図であ
る。
【図3】図2の動作説明用フローチャートである。
【図4】周波数による海底下の透過深度の違いを示した
図である。
【図5】従来装置の要部の一例のブロック図である。
【符号の説明】
1 広帯域音源 2 受波器配列 3 解析装置 4 解析部 5 透過深度計算部 6 パラメータ設定部 7 レプリカ計算部 8 相関計算部 9 相関変化計算部 10 相関変化評価部 11 移動平均計算部 12 パラメータ更新部 13 終了判定部 14 推定値蓄積部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G01S 3/80 - 3/86 G01S 5/18 - 5/30 G01S 7/52 - 7/64 G01S 15/00 - 15/96

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 海中に送波され、海底下を含む海中音場
    全体を伝搬してきた複数の処理周波数を含む音波を複数
    の受波器で受波し、これら複数の受波器のそれぞれによ
    り得られた測定データと、前記複数の処理周波数のそれ
    ぞれについて周波数順に得た伝搬計算によるレプリカデ
    ータとの相関からそれぞれの処理周波数での深度範囲に
    おける海底音響特性の推定値を計算し、これらの推定値
    を順次蓄積して解析対象の全深度範囲の海底音響特性の
    推定値を測定することを特徴とする海底音響特性測定方
    法。
  2. 【請求項2】 複数の処理周波数を含む広帯域の音波を
    海中に送波する広帯域音源と、 海底下を含む海中音場全体を伝搬してきた前記送波され
    た音波を、それぞれ受波する複数の受波器からなる受波
    器配列と、 前記受波器配列を構成する複数の受波器からの測定デー
    タと、前記複数の処理周波数のそれぞれについて周波数
    順に得た伝搬計算によるレプリカデータとの相関から解
    析対象の全深度範囲の海底音響特性の推定値を得る解析
    部とを有することを特徴とする海底音響特性測定装置。
  3. 【請求項3】 前記解析部は、前記解析対象の全深度範
    囲を前記複数の処理周波数に対応させた複数の透過深度
    に分割し、分割した各透過深度範囲毎に伝搬計算による
    レプリカデータを求めると共に前記受波器の測定データ
    との相関から海底音響伝搬特性推定値を分割した各透過
    深度範囲毎に求めて蓄積し、蓄積した推定値により解析
    対象の全深度範囲の海底音響特性の推定値を得ることを
    特徴とする請求項2記載の海底音響特性測定装置。
  4. 【請求項4】 前記解析部は、前記解析対象の全深度範
    囲を前記複数の処理周波数に対応させた複数の透過深度
    に分割する透過深度計算部と、該透過深度計算部により
    得られた複数の透過深度のそれぞれについて海底音響特
    性に関する多次元のパラメータを乱数計算により設定す
    るパラメータ設定部と、設定したパラメータに対応する
    処理周波数のレプリカデータを伝搬計算するレプリカ計
    算部と、前記複数の受波器からの当該処理周波数の測定
    データと前記レプリカデータとの相関値を計算する相関
    計算部と、前記相関値計算部から今回入力された透過深
    度における相関値と前回入力された別の透過深度におけ
    る相関値との変化を計算する相関変化計算部と、前記相
    関変化計算部により得られた相関変化を評価し、パラメ
    ータセットの更新か排除かを選択する相関変化評価部
    と、前記更新が選択されたときは前記相関値の変化の移
    動平均を計算する移動平均計算部と、前記更新が選択さ
    れたときにパラメータセットの値を前記パラメータ設定
    部で設定した値に更新するパラメータ更新部と、前記パ
    ラメータの更新が行われた後に前記相関変化計算部、相
    関変化評価部、移動平均計算部及びパラメータ更新部に
    よる繰り返し処理の終了条件が満たされているかを判断
    し、満たされている場合には該繰り返し処理を終了し、
    更新された前記パラメータセットの値を前記深度範囲に
    関する海底音響特性推定値として出力する終了判定部
    と、前記終了判定部から出力された推定値を蓄積する推
    定値蓄積部とからなり、前記排除の場合及び前記終了条
    件が満たされていない場合は前記パラメータ設定部から
    の処理を繰り返し、前記複数の透過深度のすべてについ
    て前記海底音響特性推定値が前記推定値蓄積部に蓄積さ
    れたときに該推定値蓄積部から前記解析対象の全深度範
    囲の海底音響特性推定値を出力することを特徴とする請
    求項2記載の海底音響特性測定装置。
  5. 【請求項5】 前記相関変化評価部は、前記相関値が増
    加した場合又は前記相関値が低下し、かつ、乱数計算に
    より得られた値が前記相関値の低下を許容する確率分布
    を満たした場合に、前記更新を選択することを特徴とす
    る請求項4記載の海底音響特性測定装置。
  6. 【請求項6】 前記移動平均計算部は、前記相関値の変
    化の移動平均を計算すると共に、該移動平均の大きさに
    比例する確率分布の更新を行い、次回の処理時に前記相
    関変化評価部によりその確率分布を使用することを特徴
    とする請求項4記載の海底音響特性測定装置。
  7. 【請求項7】 前記終了判定部は、繰り返し回数に対す
    る各パラメータ値の変動幅を評価し、すべてのパラメー
    タの変動が設定された値以下に安定したときに、前記相
    関変化計算部、相関変化評価部、移動平均計算部及びパ
    ラメータ更新部による処理を終了させることを特徴とす
    る請求項4記載の海底音響特性測定装置。
  8. 【請求項8】 前記レプリカ計算部は、他の処理周波数
    に対応した既に推定されている深度範囲の海底音響特性
    の推定値を、既知情報として伝搬計算パラメータに内挿
    することを特徴とする請求項4記載の海底音響特性測定
    装置。
  9. 【請求項9】 前記解析部は、前記複数の処理周波数の
    うち最も高い処理周波数から最も低い処理周波数まで周
    波数の高い方から低い方へ順番にそれぞれについての透
    過深度範囲の海底音響特性推定値を得ると共に、次の処
    理周波数による深度範囲の海底音響特性推定値の計算に
    前回の深度範囲の海底音響特性推定値を既知情報として
    利用することを特徴とする請求項2乃至8のうちいずれ
    か一項記載の海底音響特性測定装置。
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