JP2938602B2 - ナトリウム−硫黄電池およびその製造方法 - Google Patents

ナトリウム−硫黄電池およびその製造方法

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sodium
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アルカリイオン伝導性
を有する固体電解質を利用したナトリウムー硫黄電池お
よびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、アルカリイオン伝導性を有す
る固体電解質により陽極室と陰極室とを区画形成し、陽
極室内には溶融硫黄化合物を収容し、陰極室には溶融ナ
トリウムを収容したナトリウムー硫黄電池は、種々のも
のが知られている。このナトリウムー硫黄電池の実用上
の問題として、陽極室を形成する金属容器の耐食性の向
上があり、その解決手段として、これまで実際のナトリ
ウムー硫黄電池に適用されているのは、クロムメッキ、
ステライト合金あるいはクロマイジング処理鋼など限ら
れたものであるが、これらの材料についても耐食性や信
頼性が不十分な問題があった。
【0003】この問題を解決するため、陽極室の表面処
理に関しては、特開昭61-179069 号公報において、陽極
室を構成するFe、Fe-Cr 合金表面に粘性有機化合物を被
覆した後高温処理して、この化合物を炭化または黒鉛化
し、容器内表面に炭素または黒鉛層を形成する方法が開
示されている。また、特開昭54-152125 号公報におい
て、陽極容器内面に配置した金属箔の内面にクロマイジ
ング処理によりクロムを拡散浸透させ、表面に高クロム
合金層を形成する方法とこの方法で作製した硫黄電極容
器が開示されている。さらに、ナトリウムー硫黄電池に
使用した例ではないが、特開昭63-125654 号公報では、
鉄製の機械部品などの耐摩耗性、耐焼き付け性、耐酸化
性、耐食性向上のため、機械部品の表面に炭窒化層から
なる表面層を形成する方法を開示している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た各公報記載の技術のうち、特開昭61-179069 号公報に
記載の技術では、有機物の分解ガスによる気泡等の欠陥
が生じ易く、信頼性の高い皮膜が得られない問題があっ
た。また、特開昭54-152125 号公報に記載の技術で形成
される高クロムー鉄合金層は長期間の使用に耐えるほど
耐食性を有していない問題があった。さらに、特開昭63
ー125654 号公報に記載の技術は機械部品の表面改質の手
段を提供しているものであり、陽極室を構成する金属容
器の多硫化ナトリウムに対する耐食性の向上を目的とし
たものでなく、クロムの炭窒化物が多硫化ナトリウムに
対する耐食性が良いかどうか不明な問題があった。
【0004】本発明の目的は上述した課題を解消し、多
硫化ナトリウムに対する耐食性が良好な陽極室を有する
ナトリウムー硫黄電池およびその製造方法を提供しよう
とするものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明のナトリウムー
硫黄電池は、アルカリイオン伝導性を有する固体電解質
により陽極室と陰極室とを区画形成し、陽極室には溶融
硫黄化合物を収容し、陰極室には溶融ナトリウムを収容
したナトリウムー硫黄電池において、前記陽極室を構成
する金属容器内表面の少なくとも溶融硫黄化合物に接触
する部分に第1のクロム含有層と第2の炭化クロム層と
の複数層からなる防食皮膜を設けたことを特徴とするも
のである。
【0006】本発明のナトリウムー硫黄電池の製造方法
の第1発明は、アルカリイオン伝導性を有する固体電解
質により陽極室と陰極室とを区画形成し、陽極室には溶
融硫黄化合物を収容し、陰極室には溶融ナトリウムを収
容したナトリウムー硫黄電池の製造方法において、前記
陽極室の作製工程が少なくとも、1)陽極室を構成する
金属容器内表面の少なくとも溶融硫黄化合物に接触する
部分にクロム、クロムーモリブデン合金、クロムーコバ
ルト合金よりなる群から選ばれた少なくとも一種の材料
からなる第1の防食皮膜を形成する工程。2)この第1
の防食皮膜層の上に炭素濃度が40at% 以上のクロム炭化
物層からなる第2の防食皮膜層を形成する工程。3)こ
れら第1および第2の防食皮膜を形成した金属容器に熱
処理を施し、第1の防食皮膜と第2の防食皮膜とを反応
させて、第2の防食皮膜中のクロム炭化物の炭素濃度を
40at% 以下とする工程。を含むことを特徴とするもので
ある。
【0007】本発明のナトリウムー硫黄電池の製造方法
の第2発明は、アルカリイオン伝導性を有する固体電解
質により陽極室と陰極室とを区画形成し、陽極室には溶
融硫黄化合物を収容し、陰極室には溶融ナトリウムを収
容したナトリウムー硫黄電池の製造方法において、前記
陽極室の作製工程が少なくとも、1)陽極室を構成する
金属容器内表面の少なくとも溶融硫黄化合物に接触する
部分にクロム、クロムーモリブデン合金、クロムーコバ
ルト合金よりなる群から選ばれた少なくとも一種の材料
からなる第1の防食皮膜を形成する工程。2)この第1
の防食皮膜の上に、クロムと炭素の混合物からなる第2
の防食皮膜を形成する工程。3)これら第1および第2
の防食皮膜を形成した金属容器に熱処理を施し、第2の
防食皮膜中のクロムと炭素とを反応させ、第2の防食皮
膜中に炭素濃度が40at% 以下のクロム炭化物を形成する
工程。を含むことを特徴とするものである。
【0008】
【作用】上述したナトリウムー硫黄電池の構成におい
て、陽極室を構成する金属容器の内表面に、多硫化ナト
リウムに対する耐食性に優れたクロムを主成分とする第
1の防食皮膜および第2の防食皮膜を設けているため、
陽極室の耐食性を向上させることができる。また、この
ような2層構造とした場合は、最外層の第2の防食皮膜
が腐食されても第1の防食皮膜で腐食が阻止されて陽極
室の腐食が起こらず、陽極室の寿命の向上と防食層の信
頼性の向上を達成することができる。第1層と第2層を
構成する材料のうち、クロム炭化物は多硫化ナトリウム
に対する耐食性が優れているため、使用すると好まし
い。クロム炭化物としては、Cr23C6が最も好ましい。本
発明のクロム炭化物には、クロムの一部が第1層を構成
する元素で置換された複炭化物を含めることもできる。
また、第1層を構成する材料のうち、クロム、クロムー
モリブデン合金、クロムーコバルト合金はいずれも多硫
化ナトリウムに対する耐食性が優れているため、これら
の使用は好ましい。
【0009】また、上述したナトリウムー硫黄電池の製
造方法の第1の発明において、第2の防食皮膜を形成す
るクロム炭化物としては、種々の組成のクロム炭化物が
利用できるが、安定した形状で炭化物を入手する必要が
あるため、40at% 以上と限定した。このクロム炭化物と
しては、例えばCr3C2 がある。また、この製造方法の第
1発明で、第1の防食皮膜中のクロム濃度と熱処理条件
は、目標とするクロム炭化物が得られるように、第1及
び第2の防食皮膜の厚さに応じて適宜決定することがで
きる。さらに、製造方法の第1及び第2の発明におい
て、第1及び第2の防食皮膜を反応させて、第2の防食
皮膜中の炭素濃度を40at% 以下とするのは、クロム炭化
物の中でも、炭素濃度40at% 以下のクロム炭化物が多硫
化ナトリウムに対する耐食性に優れているためである。
このクロム炭化物層としては、 Cr23C6が好ましい。さ
らにまた、製造方法の第2の発明において、所定の組成
のクロム炭化物を形成するための熱処理は、容器内表面
に形成した皮膜の酸化防止のため、非酸化雰囲気中で行
うと好ましい。
【0010】また、製造方法の第1及び第2の発明にお
いて、クロム炭化物からなる第2の防食皮膜の厚さは、
10μm 以上であるとその効果がより高まるため好まし
い。さらに、陽極室を構成する金属容器が、アルミニウ
ム、アルミニウム合金、鉄ークロム合金、鉄ークロムー
モリブデン合金、鉄ークロムーアルミニウム合金、コバ
ルト合金、ニッケル合金、ステンレス鋼及び軟鋼よりな
る群から選ばれた少なくとも一種の材料からなると好ま
しい。
【0011】
【実施例】以下、実際の例について説明する。実施例1 表2に示した容器材料からなる外径:38mm、内径:36mm
の有底円筒状の容器の内表面に、表1記載の第1の材料
と第2の材料とを表1記載の方法で形成した後熱処理し
て表2に示す第1の防食皮膜と第2の防食皮膜とを形成
した。また、比較例として、クロムメッキとクロマイジ
ング処理による単層の防食皮膜からなる容器を形成し
た。比較例の容器については、特別な熱処理は行わなか
った。なお、表1及び表2の試験No. はそれぞれ対応し
ている。得られた本発明例および比較例の容器を使用し
て電池を作製して、330 ℃で1000サイクルの充放電を行
った後の電池容量の変化を求めて、陽極容器の耐食性を
比較した。ここで、電池容量の変化から耐食性を判断で
きるのは、耐食性の劣る容器材料を使用した場合には、
陽極活物質である硫黄が容器の腐食のために消費され
て、電池反応に寄与できる硫黄量が減少するため電池容
量が低下する。従って、電池容量の変化で、容器材料の
耐食性の評価を行うことができるためである。結果を併
せて表2に示す。
【0012】
【表1】
【0013】
【表2】
【0014】表2の結果から、本発明の第1及び第2の
防食皮膜を形成した容器を使用して陽極室を形成した試
験No.1-8の電池は、1000サイクルの充放電試験後も80%
以上の電池容量を有しており、陽極活物質が電池反応に
有効に活用されているのに対し、比較例の試験No.11-13
の比較例の電池では、1000サイクルの充放電試験後の電
池容量の低下が大きいことがわかる。これら比較例の電
池では、防食皮膜の耐食性が悪いため、陽極活物質の多
くが容器の腐食反応に消費され、活物質の量が減少した
ためと考えられる。
【0015】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によれば、多硫化ナトリウムと接する部分に、所定の材
料から第1及び第2の皮膜を形成した後加熱することに
より、第1の防食皮膜と第2の防食皮膜とからなる複層
構造の防食皮膜を設けたため、陽極室の多硫化ナトリウ
ムに対する耐食性を向上させることができる。また、こ
のような2層構造とした場合は、最外層の第2の防食皮
膜が腐食されても第1の防食皮膜で腐食が阻止されて陽
極室の腐食が起こらず、陽極室の寿命の向上と防食層の
信頼性の向上を達成することができる。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルカリイオン伝導性を有する固体電解質
    により陽極室と陰極室とを区画形成し、陽極室には溶融
    硫黄化合物を収容し、陰極室には溶融ナトリウムを収容
    したナトリウムー硫黄電池において、前記陽極室を構成
    する金属容器内表面の少なくとも溶融硫黄化合物に接触
    する部分に第1のクロム含有層と第2の炭化クロム層と
    の複数層からなる防食皮膜を設けたことを特徴とするナ
    トリウムー硫黄電池。
  2. 【請求項2】 前記第1のクロム含有層がクロム炭化
    物、クロム、クロムーモリブデン合金、クロムーコバル
    ト合金およびクロムと炭素の混合物よりなる群から選ば
    れた少なくとも一種の材料からなるとともに、前記第2
    の炭化クロム層がクロム炭化物からなる請求項1記載の
    ナトリウムー硫黄電池。
  3. 【請求項3】 アルカリイオン伝導性を有する固体電解
    質により陽極室と陰極室とを区画形成し、陽極室には溶
    融硫黄化合物を収容し、陰極室には溶融ナトリウムを収
    容したナトリウムー硫黄電池の製造方法において、前記
    陽極室を構成する金属容器の作製工程に以下の工程を少
    なくとも含むことを特徴とするナトリウムー硫黄電池の
    製造方法。 1)陽極室を構成する金属容器内表面の少なくとも溶融
    硫黄化合物に接触する部分にクロム、クロムーモリブデ
    ン合金、クロムーコバルト合金よりなる群から選ばれた
    少なくとも一種の材料からなる第1の防食皮膜を形成す
    る工程。 2)この第1の防食皮膜層の上に炭素濃度が40at% 以上
    のクロム炭化物層からなる第2の防食皮膜層を形成する
    工程。 3)これら第1および第2の防食皮膜を形成した金属容
    器に熱処理を施し、第1の防食皮膜と第2の防食皮膜と
    を反応させて、第2の防食皮膜中のクロム炭化物の炭素
    濃度を40at% 以下とする工程。
  4. 【請求項4】 アルカリイオン伝導性を有する固体電解
    質により陽極室と陰極室とを区画形成し、陽極室には溶
    融硫黄化合物を収容し、陰極室には溶融ナトリウムを収
    容したナトリウムー硫黄電池の製造方法において、前記
    陽極室の作製工程に以下の工程を少なくとも含むことを
    特徴とするナトリウムー硫黄電池の製造方法。 1)陽極室を構成する金属容器内表面の少なくとも溶融
    硫黄化合物に接触する部分にクロム、クロムーモリブデ
    ン合金、クロムーコバルト合金よりなる群から選ばれた
    少なくとも一種の材料からなる第1の防食皮膜を形成す
    る工程。 2)この第1の防食皮膜の上に、クロムと炭素の混合物
    からなる第2の防食皮膜を形成する工程。 3)これら第1および第2の防食皮膜を形成した金属容
    器に熱処理を施し、第2の防食皮膜中のクロムと炭素と
    を反応させ、第2の防食皮膜中に炭素濃度が40at% 以下
    のクロム炭化物を形成する工程。
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