JP2935813B2 - アルミニウムまたはアルミニウム合金の複合皮膜形成方法 - Google Patents

アルミニウムまたはアルミニウム合金の複合皮膜形成方法

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JP2935813B2 JP24972694A JP24972694A JP2935813B2 JP 2935813 B2 JP2935813 B2 JP 2935813B2 JP 24972694 A JP24972694 A JP 24972694A JP 24972694 A JP24972694 A JP 24972694A JP 2935813 B2 JP2935813 B2 JP 2935813B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、陽極酸化処理工程,着
色処理工程,塗装前処理工程および塗装処理工程をこの
順に実施して陽極酸化皮膜上に塗膜を形成するアルミニ
ウムまたはアルミニウム合金の複合皮膜形成方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】陽極酸化処理工程,着色処理工程,塗装
前処理工程および塗装処理工程をこの順に実施して、ア
ルミニウムまたはアルミニウム合金(以下、併せて“ア
ルミニウム”と略称する。)に陽極酸化皮膜を形成する
とともに、さらにこの陽極酸化皮膜上に塗膜を形成する
いわゆる複合皮膜形成方法が知られている。
【0003】陽極酸化処理は、硫酸水溶液や蓚酸水溶液
中にアルミニウム素材を浸漬させつつ例えば120A/
2で電解処理して多数の微細孔を持つ陽極酸化皮膜を
形成する。着色処理は、その微細孔に例えば硫酸ニッケ
ル等を用いた着色液を含浸させて無機着色したり2次電
解により微細孔内に電解析出物を析出させて着色する。
また、塗装前処理は、陽極酸化皮膜の品質安定化や塗膜
の密着性向上化等々を図るために実施される。最後の塗
装処理は、電着塗装,静電塗装やスプレー塗装等により
陽極酸化皮膜上に塗膜を形成するものである。
【0004】ここに、塗装前処理工程としては、陽極酸
化皮膜を例えば80°C前後の熱水中に浸漬して陽極酸
化皮膜表面に付着している金属塩類や電解質のアニオン
等を除去する清浄化および水和物で微細孔の仮性封塞を
行ういわゆる封孔処理が多用されている。熱水中に浸漬
するという簡単性と慣行性の点から採択されるものと推
察される。
【0005】しかし、封孔処理は、水和物の生成に際し
陽極酸化皮膜に微妙で微細な皮膜構造を不均一化乃至変
質させる。したがって、変質等々の程度や選択される塗
装処理方法によっては、塗膜の剥離や乾燥時に皮膜割れ
を誘発する原因となる場合がある。この点に関しては、
多官能性芳香族カルボン酸(例えば、特公昭55−21
839号公報)や脂肪族ジカルボン酸(例えば、特公昭
56−4156号公報)の水溶液中に浸漬する方法等に
よる改善が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このように、アルミニ
ウムの複合皮膜形成に際し塗装前処理工程で実施される
塗装前処理方法は、その後の塗装処理に際する塗膜密着
性等の観点から種々検討されているが、当該塗装前処理
方法が着色処理において得られた色調や濃淡にいかなる
変化を及ぼすのかという問題点については認識されずか
つ未検討のままである。換言すれば、着色済の陽極酸化
皮膜上に例えばクリア塗膜を形成した場合、このクリア
塗膜形成後に識別された色調や濃淡をもって複合皮膜ア
ルミニウム製品としての最終判断をすれば良しとする考
え方であった。
【0007】しかるに、着色処理方法の多様化とともに
各着色処理の技術進歩に伴って理想的な色調や濃淡に着
色仕上げできるようになっても、各処理工程を経た後の
最終的な色調や濃淡が着色処理による色調や濃淡と異な
ってしまう場合が多々に生じる。これを放置していたの
では、優れた着色処理方法でもその実効が保障されずか
つ一段と強まる多色化,色調・濃淡等の個別化等の具体
的要請を満たすことができない。
【0008】また、熱水封孔処理による塗装前処理で
は、陽極酸化皮膜の仕様毎に熱水温度や浸漬時間、さら
には処理液組成を調整するための煩雑な作業を必要とす
るので取扱いが難しくその改善が望まれているととも
に、慎重な水質保全や膨大な熱エネルギーを必要とする
ことからコスト高の要因となっている。
【0009】本発明の目的は、着色処理で得た色調・濃
淡等と塗装処理後の色調・濃淡等とを一致させることの
できる取扱容易で低コストのアルミニウムまたはアルミ
ニウム合金の複合皮膜形成方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】図1において、アルミニ
ウム(10)を硫酸水溶液中で陽極酸化処理した陽極酸
化皮膜12に関し、塗装前処理工程を80℃前後の熱水
中に浸漬して行う封孔処理としかつ塗装前処理工程を電
着塗装処理でクリア塗膜20を形成する同一条件の下
に、着色処理工程の実施により着色仕上げした色調等
と,塗膜形成後における色調等との差異があるか否かの
分析を行った。
【0011】図1(A)に示す如く、無機顔料含有着色
液中に陽極酸化皮膜12(アルミニウム基材10),バ
リヤー型の酸化皮膜層(以下、バリヤー層11とい
う。)を浸漬して微細孔(ポアー)13内に無機顔料
(沈着物14)を含浸させる無機着色処理方法および染
料含有着色液中に浸漬して微細孔13内に染料(沈着物
14)を含浸させる染色処理方法のいずれでも、着色処
理後の色調等と塗膜形成後の色調等との間には差異が認
められなかった。
【0012】次に、図1(B)に示す如く、金属塩含有
水溶液中に陽極酸化皮膜12を浸漬させて電解処理を行
い微細孔13内に電解析出物15を析出させる二次電解
着色処理方法では、金属塩の種類によってあるいは電解
析出物15の多い濃色の場合には色調差が認められない
が、淡色の場合には色調差が認められる場合があった。
【0013】図1(C)に示す如く、陽極酸化皮膜12
を例えばリン酸水溶液中に浸漬しつつ電解処理して微細
孔13の下方部分13Dを拡大させるポアーワイドニン
グ処理を施した後に、さらに金属塩含有水溶液中で電解
処理して上記2次電解着色処理方法の場合と同様に電解
析出物15を析出させて干渉色皮膜を形成するいわゆる
3次電解着色処理方法(例えば、特開平5−33168
8号公報)では、ほとんどの場合に色調差が認められ
た。
【0014】図1(D)に示す4次電解着色処理方法
(例えば、特開平6−49688号公報)、すなわち上
記3次電解着色処理方法におけるポアーワイドニング処
理後にバリヤー層11の厚さを調整するバリヤー層厚調
整処理を施し、しかる後に上記2次電解着色処理方法の
場合と同様に電解析出物15を析出させて干渉色皮膜を
形成する方法では、誰でも認識できる程の著しい色調差
が認められた。
【0015】以上を比較検討するに、例えば3次電解着
色処理の場合における陽極酸化皮膜12は、図2(B)
に実線で示す入射光A1が電解析出物15の上面で反射
し反射光B1となりかつ入射光A2がアルミニウム基材
10の上面で反射して反射光B2となることによる光路
差に基づく光の干渉によって発色する。その色調(例え
ば、紫,青,緑,黄等)は、電解析出物15の上面とア
ルミニウム基材10の上面との間の距離h2の値により
決まる。したがって、塗膜20の形成後に色調差が認め
られるということは、上記距離h2が変化するか、入射
光A1,A2および反射光B1,B2のいずれかまたは
複数が偏向されたり屈折していると推定できる。
【0016】後者を吟味すれば、塗装前処理が熱水によ
る封孔処理であることから、微細孔13の上方開口部に
水和物16が形成される。その成長化に際し、陽極酸化
皮膜12に変質部17が現れる。この変質部17の範囲
は、陽極酸化処理の処理液組成や処理時間つまり陽極酸
化皮膜12の種類、封孔処理における熱水温度等によっ
て変化し、かつ画一性に欠ける。また、変質部17の範
囲が同じでも、陽極酸化皮膜12の厚みが異なれば電解
析出物15に対する相対的,見掛的範囲は増減するもの
と考えられる。
【0017】かくして、例えば入射光A1が、図2
(B)に示す如く、変質部17を通過する際に1点鎖線
で示すように屈折したとすればその反射光B11は所定
の反射光B1と異なり、2点鎖線で示す場合の反射光B
12も反射光B1と異なるから、光路差による光干渉が
乱れ色調差が生ずる。
【0018】しかも、上記反射光B11,B12も反対
側の変質部17を通過する際にも屈折される。さらに、
これら現象は、入射光A2についても反射光B1,B2
についても同様に起る。したがって、入射光A1,A2
および反射光B1,B2と変質部17との関係は、複雑
で光屈折率等を定量的に把握することは実際上非常に困
難ではあるものの、入・反射光が変質部17を通過する
ようになったか否かで、塗膜20の形成後の色調等が3
次電解着色処理後の色調等と異なるか否かが決まるもの
と確信する。
【0019】この実験則からすれば、図1(D)に示す
4次電解着色処理は、バリヤー層厚調整処理を含み、ア
ルミニウム基材10の上面と電解析出物15の上面との
距離h1をさらに微妙に調整して種々の色調を得る方式
であるから、3次電解着色処理の場合よりも一段と色調
差が生ずる筈であり、実際上も当然に色調差が生じるこ
とを確認した。
【0020】ところで、図1(B)に示す2次電解着色
方法は、干渉色皮膜でないが、微細孔13内に析出され
た電解析出物15と陽極酸化皮膜12を通して色調が認
識されるところから、やはり変質部17を通して光屈折
することが微妙に影響して、特に淡い色調の場合に色調
差となって現れるものと推定される。
【0021】ここに、着色処理工程が電解着色処理でか
つ熱水による封孔処理を行った場合に色調差が現れる。
このことは、陽極酸化処理や塗装処理の方法を各種各様
に変えてみても共通して確認された。
【0022】かくして、熱水封孔処理に際し陽極酸化皮
膜12に発生する変質部17の範囲を狭小化すべく、熱
水温度やその処理時間を変化させ、また各種の薬品を添
加させて幾多の実験を繰り返したが、熱水封孔処理を採
用する限りにおいて着色処理後の色調等と塗膜形成後の
色調等との差異を解消できる程の結果は得られなかっ
た。
【0023】そこで、陽極酸化皮膜12の変質化を条件
として水和物16を成長させつつ封塞する熱水封孔処理
と原理を異とする新たな考え方を導入し研究を重ねた結
果、微細孔13の入口に陽極酸化皮膜の種類に関係なく
画一的な表面構造を得ることができる複合体を形成させ
ることを見い出した。
【0024】すなわち、カチオンがニッケルのフッ化ニ
ッケルのフッ化物つまりフッ化ニッケル(NiF2)を
含有させた水溶液中に陽極酸化皮膜12を浸漬すると、
極性の強いフッ素イオンと微細孔13中のアルミニウム
イオンが安定して結合する。すると、フッ素イオンが電
荷を失うので、ニッケルイオンが陽極酸化皮膜12に吸
着されるイオン吸着反応が促進されるとともに、微細孔
13中に残存していた陽極酸化電解浴組成アニオンイオ
ンが微細孔13外へ排出される。したがって、図2
(A)に示す如く、微細孔13の入口近傍に、結合が非
常に強固なフッ化物含有の生成物つまりこの場合はフッ
素,アルミニウムおよびニッケルからなる複合体(コン
プレックス19)が形成され、微細孔13を封塞でき
た。このコンプレックス19によれば、入・反射光A
1,A2、B1,B2に影響を与えない。
【0025】このコンプレックス形成反応は、コバル
ト,クロム,ナトリウム,カリウム,アンモニウムまた
は水素の1または複数を用いてもフッ化物のカチオンと
なり得るからニッケルの場合と同様に促進される。ま
た、例えばNi(FB42の如くほうフッ化物でもよ
い。さらに、この反応は、陽極酸化皮膜12の種類に影
響されることなく起りかつ陽極酸化皮膜表面を画一化で
きる。
【0026】処理液としては、一種またはそれ以上のフ
ッ化物またはほうフッ化物を0.01〜2%の濃度とし
た中性または弱酸性水溶液とする。つまり、PH4〜7
の範囲が適当である。これよりPHが低いと金属イオン
の陽極酸化皮膜微細孔への吸着が少なくなり封塞が不十
分となる。一方、PHをそれ以上に高くすると、陽極酸
化皮膜表面に金属塩等の析出や陽極酸化皮膜自体の溶解
等によるかぶれ現象が生じるので、その後の塗装処理の
際に塗膜の層間剥離や外観不良の原因となるからであ
る。
【0027】また、フッ化物またはほうフッ化物の含有
水溶液温は、常温に近い10〜35°Cの範囲内に調整
する。それ以下の温度にすると反応が遅く、それ以上の
温度にすると熱水封孔処理の場合と同様に陽極酸化皮膜
12に変質部17が発生し易くなるからである。また、
処理時間としては、上記10〜35°Cの範囲で1〜2
0分程度で十分である。なお、コンプレックス形式後
に、未結合の付着物を除去する場合は、反応後であるか
ら、例えば60°C以下の清浄な水洗水を用いてもよ
い。
【0028】また、このコンプレックス形式による塗装
前処理によれば、その後の塗装処理方法に制約はない。
つまり、従来から行われている電着塗装,静電塗装,ス
プレー塗装等々を問わずに品質,性能の優れた塗膜を含
む複合皮膜を得られる。また、塗料の種類もクリヤのみ
ならず例えば顔料含有エナメルでもよく、その光沢の有
無も問わない。塗装後の乾燥方法は、常温でも強制加熱
でもよい。
【0029】ここに、請求項1の発明に係るアルミニウ
ムまたはアルミニウム合金の複合皮膜形成方法は、陽極
酸化処理工程,着色処理工程,塗装前処理工程および塗
装処理工程をこの順に実施して陽極酸化皮膜上に塗膜を
形成するにおいて、前記着色処理工程で電解着色処理を
実施するとともに前記塗装前処理工程でフッ化物または
ほうフッ化物の濃度が0.01〜2%でかつ処理温度が
10〜35°Cの水溶液中に浸漬しつつ塗装前処理を実
施することを特徴とする。
【0030】また、請求項2の発明に係るアルミニウム
またはアルミニウム合金の複合皮膜形成方法は、前記フ
ッ化物およびほうフッ化物のカチオンがニッケル,コバ
ルト,クロム,ナトリウム,カリウム,アンモニウムま
たは水素であることを特徴とする。
【0031】
【作用】請求項1の複合皮膜形成方法によれば、まず、
陽極酸化処理工程によってアルミニウムに陽極酸化皮膜
を形成する。陽極酸化処理は、硫酸,蓚酸,リン酸,ス
ルホサリチル酸等の鉱酸または有機酸あるいはこれらの
混酸の水溶液中で電解処理して、無着色で所定厚さの陽
極酸化皮膜を形成する。次に、2次,3次あるいは4次
の電解着色処理を実施する。所定の色調や濃淡で着色す
る。
【0032】塗装前処理工程は、ニッケル等をカチオン
とするフッ化物またはほうフッ化物が0.01〜2%の
濃度範囲で10〜35°Cの水溶液中に、電解着色され
た陽極酸化皮膜を例えば15分だけ浸漬して行う。PH
は4〜7の範囲内に管理する。すると、陽極酸化皮膜に
変質部を形成させずに微細孔近傍に図2(A)に示す陽
極酸化皮膜表面を画一化できるコンプレックス19が形
成されるとともに、選択された適度の封塞が行われる。
必要とする場合は、塗装処理前に60°C以下の清浄水
で水洗して未反応付着物を除去する。
【0033】しかる後に、電着塗装,静電塗装あるいは
スプレー塗装により塗装処理して所定厚の例えばクリア
塗装を形成する。コンプレックスにより陽極酸化皮膜表
面が画一化かつ安定されているので十二分な密着性が得
られかつ陽極酸化皮膜の皮膜割れ等のない品質・性能の
優れた複合皮膜を形成することができる。その後に常温
または強制加熱で乾燥する。
【0034】ここに、塗装前処理がコンプレックス形成
方法であるから、つまり陽極酸化皮膜に光屈折等を誘発
する変質部が発生しないので、複合皮膜形成後の色調や
濃淡は、電解着色処理に確立された色調や濃淡と同じで
ある。したがって、電解着色処理で得た色調・濃淡をそ
の後の処理に影響されることなく保証することができ
る。また、塗装前処理工程が従来熱水封孔処理に比べて
低温で浴管理が容易なために、省力および省エネルギー
が図れ取扱容易であり、かつ低コストの複合皮膜アルミ
ニウム製品を提供することが可能となる。
【0035】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。 (第1実施例)通常の前処理をしたアルミニウム試験片
を150g/l硫酸水溶液中に浸漬し120A/m2
30分間の陽極酸化処理を実施して10μmの陽極酸化
皮膜を形成した後に、100g/lリン酸水溶液中で1
2V−5分間の交流電解によるポアーワイドニング処理
を行い、しかる後に硫酸ニッケルと硫酸第1スズを含む
水溶液中で3次電解着色処理を実施しグレイに着色した
干渉色皮膜を得た。この時点の測色値は、〔表1〕の通
りであった。次に、1%フッ化コバルトと0.01%フ
ッ化アンモニウムを含有する30°Cの水溶液中に当該
試験片を7分間浸漬して塗装前処理を実施した。引続
き、透明なウレタン塗料を用いた静電塗装により塗装処
理を行いクリア塗膜を形成しかつ100°Cで強制乾燥
して複合皮膜を得た。この測色値を〔表1〕に示す。
【0036】また、上記本発明に対するものとして、上
記アルミニウム試験片を一方とした場合に、この一方と
同一の他方アルミニウム試験片を上記場合と同じでかつ
一方アルミニウム試験片と同時に陽極酸化処理工程およ
びポアーワイドニング処理後に3次電解着色処理工程を
実施し、しかる後に従来例と同じ塗装前処理つまり90
°Cのイオン交換水中で3分間の熱水封孔処理を実施し
た。なお、塗装処理工程およびその後の乾燥は上記一方
アルミニウム試験片の場合と同じでかつ一方アルミニウ
ム試験片と同時に実施した。着色後および塗装後の各測
色値を〔表1〕に示す。
【0037】
【表1】
【0038】この〔表1〕からも明らかの通り、測色計
(ミノルタ製,CR200型)を用いた電解着色処理後
の測色値(色調)は、一方試験片の場合がCIE−(L
***)色空間による表色モードデータで(L*=5
8.8、a*=1.0、b*=0.6)であり、他方試験
片の場合が(L*=58.6、a*=1.1、b*=0.
5)であるから、ともに同一のグレイ色と認識できる。
【0039】しかし、塗装処理後における測色値は、一
方試験片の場合が(L*=58.7、a*=1.0、b*
=0.4)でかつ着色後の(L*=58.8、a*=1.
0、b*=0.6)に対する色差指数△E*abが“0.
2”であるのに比較して、熱水封孔処理を施した他方試
験片の場合は(L*=56.5、a*=2.4、b*=−
2.8)でかつその着色後の(L*=58.6、a*
1.1、b*=0.5)に対す る色差指数△E*abが
“4.1”と大きい。
【0040】したがって、本発明法による着色処理後の
色調と塗装処理後の色調との間には、差異がなく実用上
同一色調として一致する。これに対し、従来法による場
合は、着色処理後の測色値が明度指数L*が“58.
6”→“56.5”に変化し、(+)赤〜(−)緑指数
*が“1.1”→“2.4”と赤色指数が増大する。
一方において(+)黄〜(−)青指数b*が“0.5”
→“−2.8”と黄指数 から青指数に反転し、これに
より色差指数が“4.1”となっている。つまり明らか
に色調・濃度(明度)が変化してしまう。
【0041】(第2実施例)通常の前処理を施した一方
および他方のアルミニウム試験片を150g/l硫酸,
10g/l蓚酸の混合液中に浸漬させ120A/m2
30分間の陽極酸化処理を同時に実施し、10μmの陽
極酸化皮膜を得た。しかる後に、硫酸ニッケル含有水溶
液中で2次電解着色処理を実施してライトブロンズに着
色した。引続き、塗装前処理工程は、一方試験片につい
ては本発明法による2%フッ化ニッケル水溶液中で20
°C,5分間だけ浸漬し、他方試験片については従来例
法による85°Cのイオン交換水中で5分間熱水封孔処
理した。しかる後に、両試験片を同時にフッ素電着液中
で電着塗装しクリア塗膜を形成し、さらに180°Cで
加温した乾燥炉で30分間乾燥した。
【0042】そして、両試験片をアイスーパーUVテス
ター(大日本プラスチック製)で照射強度100mW/
cm2,照射24時間+結露24時間,ブラックパネル
温度65°Cの条件として20サイクル耐候性試験を行
った。その結果、熱水封孔した他方試験片の塗膜は剥離
したが、2%フッ化ニッケル水溶液中でのコンプレック
ス形成による一方試験片の塗膜は密着性が良く何の変化
も発生しなかった。
【0043】なお、第1実施例の場合についての20サ
イクル耐候性試験でも、この第2実施例の場合と同様の
結果を確認した。また、この第2実施例における着色後
と塗装後の色調差は、3次電解着色処理による第1実施
例の場合の如く顕著ではないものの熱水封孔による他方
試験片では、実用上に支障があると思われる程の色調差
が認められた。
【0044】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、着色処理工程
で電解着色処理を実施するとともに前記塗装前処理工程
でフッ化物またはほうフッ化物の濃度が0.01〜2%
でかつ処理温度が10〜35°Cの水溶液中に浸漬して
塗装前処理を実施する複合皮膜形成方法であるから、次
のような優れた効果を奏する。
【0045】 従来陽極酸化皮膜変質部による光屈折
等を排除できるので、電解着色処理後の色調・濃淡等と
塗装処理後の複合皮膜の色調・濃淡等とを一致させるこ
とができる。 電解着色処理後の色調・濃淡が複合皮膜の色調・濃
淡として保証できるから、電解着色処理工程によって色
調等の調整作業をすればそれ以降の処理で何等の調整を
必要としない。したがって、取扱いが簡単でかつ歩留向
上による複合皮膜アルミニウム製品のコスト低減が図れ
る。 常温に近い10〜35℃のフッ化物またはほうフッ
化物含有水溶液中に浸漬するだけでコンプレックスの形
成および微細孔の封塞ができるから、従来熱水封孔によ
る塗装前処理の場合に比較して、省エネルギーが図れか
つ煩わしい水質保全作業を一掃でき取扱いが容易であ
る。 コンプレックスを形成する塗装前処理が陽極酸化皮
膜の種類を問わずかつその表面を画一化および安定化で
きるので、従来から行われている電着塗装,静電塗装お
よびスプレー塗装等のいずれを用いて塗装処理をして
も、密着性等の良い高品質で安定した優れた塗膜および
複合皮膜を形成できる。
【0046】また、請求項2の発明によれば、フッ化物
およびほうフッ化物のカチオンがニッケル,コバルト,
クロム,ナトリウム,カリウム,アンモニウムまたは水
素である複合皮膜形成方法であるから、請求項1の場合
と同様の効果を奏することができる他、さらにカチオン
性材料の選択範囲が広く簡単に入手できるとともに適用
性が広い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の創成根拠を説明するための図である。
【図2】本発明の塗装前処理方法とその作用・効果を従
来例との比較において説明するための図である。
【符号の説明】
10 アルミニウム基材 11 バリヤー層 12 陽極酸化皮膜 13 微細孔 14 沈着物 15 電解析出物 16 水和物 17 変質部 19 コンプレックス 20 塗膜
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C25D 11/18 307 C25D 11/18 301

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 陽極酸化処理工程,着色処理工程,塗装
    前処理工程および塗装処理工程をこの順に実施して陽極
    酸化皮膜上に塗膜を形成するアルミニウムまたはアルミ
    ニウム合金の複合皮膜形成方法において、 前記着色処理工程で電解着色処理を実施するとともに前
    記塗装前処理工程でフッ化物またはほうフッ化物の濃度
    が0.01〜2%でかつ処理温度が10〜35°Cの水
    溶液中に浸漬して塗装前処理を実施する、ことを特徴と
    したアルミニウムまたはアルミニウム合金の複合皮膜形
    成方法。
  2. 【請求項2】 前記フッ化物およびほうフッ化物のカチ
    オンがニッケル,コバルト,クロム,ナトリウム,カリ
    ウム,アンモニウムまたは水素である請求項1のアルミ
    ニウムまたはアルミニウム合金の複合皮膜形成方法。
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