JP3817772B2 - アルミニウム材の陽極酸化皮膜の着色方法 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は、多孔性陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム材に電解着色皮膜と混合原子価錯体皮膜との組み合わせによって無彩色状の着色を再現性良くかつ確実に制御する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム材は、軽量で加工性が良くかつ耐食性があるためサッシや内装パネル材などの建材、あるいは車両部品などに広く用いられているが、その耐食性向上のため陽極酸化皮膜処理を行うことが一般である。この皮膜は耐食性に優れているが、そのままでは金属地金の白色系の色合いであるため、単調で趣味性に乏しく、このため用途に応じて、塗装や着色処理が施されることが多くなっている。中でも、電解着色処理は、陽極酸化処理によって形成された酸化皮膜の微細なポアー中に化学的に安定な金属塩類を吸着せしめて着色するため環境に対して極めて安定しており、長期間に渡って屋外においても変色したり褪色することがなく、広く普及を見ている。
【0003】
電解着色法は、多孔性陽極酸化皮膜に対して行われることから、陽極酸化皮膜を形成できるアルミニウム材であれば、材質はアルミニウム及びアルミニウム合金のいずれでも可能であり、その形状も板、棒、押出形材やサッシ、パネル、或いは車両の種々の部品等のような様々な形状のものにも適用可能である。
アルミニウム材に陽極酸化処理を行った後、Ni、Co、Snなどの水溶性の金属塩を電解浴に含有せしめ、アルミニウム材を陰極として電解することにより、これらの金属塩は陽極酸化皮膜中の微細なポアー中に吸着され、これらの金属塩の種類に応じて、また吸着の程度により、任意の濃度で様々の色合いを表すことができる。これらの着色処理を行って後、沸騰水浸漬等により封孔処理を行い、或いはアクリル樹脂等によるクリヤー塗装など常法により仕上げを行って出荷される。
【0004】
上記の電解着色処理はこれらの優れた特徴を有しているものの、着色処理の色合い、色調を微妙に調整、制御することは困難であった。
また、最近では、建材や車両部品などアルミニウム材の用途が広まるにつれ、着色の色合いやその濃度等にも様々な要求が寄せられるようになってきている。例えば、従来建築用途向けにはブロンズ色などの明るい色調が主流であったが、近年、灰色や、黒色などのいわゆる無彩色系統の落ち着いた色調が好まれるようになってきている。これに応えて、従来の電解着色法によってこのような色調を出そうとすることは困難であった。
従来のこのような着色法には、灰色着色法として、特開昭61−143593号公報に記載されるNi−Zn浴中で電解着色する方法、特開平3−183798号公報記載のブロンズ色皮膜に顔料を含む電着塗装を施す方法などがある。また、黒色着色法はNi、Co、Snなどの水溶液中で電解着色処理を長時間行って濃度を高くして、黒色に見えるようにする方法が一般的である。
【0005】
しかしながら、Ni−Zn浴中で電解着色して灰色の色調とする方法では、得られる灰色に黄色味が強く、より純粋な無彩色の灰色の色調を求める市場の要求を満足できなかった。
また、上記のブロンズ皮膜に電着塗装を施す方法では、特殊な顔料を含む塗料を必要としてコスト的に好ましくなく、建材製品の耐食性、耐候性を満たすための重要な封孔品の仕様に対応することができないものであった。
上記の黒色着色を行うための、Ni、Co、Sn等の電解着色処理法による場合についても、得られた黒色は、赤み、黄みのある色であり、やはりこれらの色合いに対する要求に十分に応えるものとはいえなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、純粋に無彩色の灰色〜黒色の様々な濃度の着色効果が得られ、また、得られた着色皮膜が耐候性・耐光性に優れていると共に、比較的簡単にこれらの色調の制御ができ、着色均一性が良く、後工程の封孔及びクリヤー電着塗装等の従来の陽極酸化皮膜製品に要求されていた処理のいずれにも対応できる陽極酸化皮膜着色方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、その目的を達成するため、アルミニウムまたはアルミニウム合金材の着色方法であって、陽極酸化処理したアルミニウム材にブロンズ色電解着色皮膜を形成した後、当該ブロンズ色アルミニウム材を、モリブデン酸,タングステン酸,またはバナジン酸のいずれかのアンモニウム塩,ナトリウム塩,またはカリウム塩の水溶液からなる第1浴に浸漬した後、無機酸塩性還元剤を含む水溶液からなる第2浴に浸漬して部分的に還元処理してモリブデン,タングステン,またはバナジウムのいずれかの混合原子価錯体を前記電解着色皮膜上に生成・吸着させて着色層を形成し、前記電解着色皮膜とモリブデン,タングステン,またはバナジウムのいずれかの混合原子価錯体による着色層とのそれぞれの分光反射率特性を重ね合わせて無彩色の灰色〜黒色に着色することを特徴とする。
また、陽極酸化処理したアルミニウム材を、モリブデン酸,タングステン酸,またはバナジン酸のいずれかのアンモニウム塩,ナトリウム塩,またはカリウム塩の水溶液からなる第1浴に浸漬した後、無機酸塩性還元剤を含む水溶液からなる第2浴に浸漬して部分的に還元処理してモリブデン,タングステン,またはバナジウムのいずれかの混合原子価錯体を前記陽極酸化皮膜上に生成・吸着させて着色層を形成した後、当該着色層形成アルミニウム材にブロンズ色電解着色皮膜を形成し、前記モリブデン,タングステン,またはバナジウムのいずれかの混合原子価錯体による着色層と電解着色皮膜とのそれぞれの分光反射率特性を重ね合わせて無彩色の灰色〜黒色に着色してもよい。
【0008】
【作用】
本発明の着色法は、アルミニウムまたはアルミニウム合金材の陽極酸化皮膜を電解着色処理により着色した後に、混合原子価錯体を吸着させて着色皮膜を形成し、電解着色処理皮膜と混合原子価錯体による着色皮膜との分光反射特性を重ね合わせることにより、任意の色合いと濃淡の着色層を形成する。また、アルミニウムまたはアルミニウム合金材の陽極酸化皮膜を電解着色処理によりブロンズ色に着色した後に、一般にもモリブデンブルー、タングステンブルー、バナジンブルーと称されているモリブデン、タングステン、バナジウム等の混合原子価錯体を吸着させて、その分光反射特性を組み合わせることにより、灰色〜黒色の色調に着色する。
本発明をこのブロンズ電解着色皮膜とモリブデン、タングステン、バナジウム等の混合原子価錯体を吸着させた着色皮膜との分光反射率特性を重ね合わせる場合について説明する。第一工程のブロンズ電解着色は陽極酸化皮膜の微細なポアー層に、Ni、Co、Snなどの金属を析出させ、皮膜をブロンズ色といわれる茶色系統の色に着色する方法である。この方法で着色した皮膜の分光反射率を見ると、図1に示すように明確なピークは現れず、短波長から長波長になるにつれて高くなる傾向がある。すなわち、ブロンズ皮膜は電解着色によって生成した金属析出層により、短波長の光を強く吸収する性質があり、比較的長波長の光を反射することによって、そのブロンズ色を発現していることが解る。
【0009】
本発明の第2工程は、陽極酸化皮膜にモリブデン、タングステン、バナジウムなどの混合原子価錯体を吸着させ、その混合原子価色を発色させるものである。即ち、モリブデン酸、タングステン酸、バナジン酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の水溶液に浸漬した後、スズや鉄などの塩化物、硫酸塩を還元剤とする水溶液に浸漬して各々の混合原子価錯体を生成させる。例えば、モリブデン酸による場合を例にとると、モリブデン酸のアンモニウム塩などの水溶液に浸漬して、六価のモリブデン酸イオンを陽極酸化皮膜のポアー側壁に吸着させ、次いで還元剤として塩化スズ(II)、硫酸スズ(II)などの二価のスズによって還元し、Mo(V)−O−Mo(VI)の混合原子価錯体を形成させるものである。この原子価錯体は、モリブデン原子間の電子移動により青色に発色し、一般にモリブデンブルーと呼ばれている色を呈する。この方法で着色した皮膜の分光反射率を見ると、図2に示すとおり明確なピークは現れず、短波長側で高く、長波長になるほど低くなる。
【0010】
すなわち、上記のブロンズ色と逆の分光反射率傾向を有している。そこで、ブロンズ電解着色皮膜にこれらの青色浸漬着色法による着色層を重ねることにより、これらの二つの反射特性を重ね合わせることができる。この重ね合わせた着色層についてその反射スペクトルを見ると、図3に示すように反射スペクトルはほぼ平坦になり、個々の色の現れない無彩色、すなわち灰色〜黒色の濃淡の色調となる。
このブロンズ電解着色皮膜と青色浸漬着色法による着色層の分光反射特性を重ね合わせる手法は、上記の方法とは着色層の形成順序を逆にして、青色浸漬着色法による着色層を先に形成し、これにブロンズ電解着色皮膜を重ねても同様の結果が得られる。
【0011】
このように電解着色皮膜と混合原子価錯体による着色皮膜との分光反射率特性を重ね合わせる手法は、その原理上灰色〜黒色の色調に着色したり調節するのみでなく、個々の着色皮膜の分光反射率特性とその組み合わせを変えることにより、任意の色合いに変えたり、それと共に色調を整えたりすることができるものである。すなわち、電解着色の色は、慣用されてきたブロンズ系のみでなく、明るいゴールド系、赤色系や青色系等があり、また、混合原子価錯体の呈する色もブルー系に限られない。したがって、これらの着色皮膜の分光反射率特性を組み合わせることによって、灰色〜黒色のみでなく、多様な色合いと濃淡の色調に着色することが可能である。
【0012】
これらの着色皮膜は、これらの個々の着色条件を変えることでその濃淡すなわち明度を制御することができ、その制御も比較的容易である。
また、このようにして形成された着色皮膜は、電解着色法による着色皮膜が耐候性、耐光性に優れ、一方モリブデンなどの錯体は無機化合物であるため安定で、耐候性に優れていることから、これらの特性を受けて耐候性、耐光性に優れており、環境に対して変化しない優れた特性を発揮する。
【0013】
【実施の態様】
本発明の着色法の工程は、被処理材のアルミニウム材またはアルミニウム合金材を脱脂処理、アルカリエッチング処理、脱スマット処理等の前処理を行い、硫酸等の酸性水溶液中で陽極酸化処理を行って、所定の膜厚、例えば3〜40μmの陽極酸化皮膜を形成する。これにブロンズ電解着色処理、及び浸漬着色処理により灰〜黒の所要の無彩色に着色し、最後にクリヤー塗装を行って焼き付け処理して仕上げるか、または、沸騰水浸漬、封孔助剤入りの水に浸漬して封孔処理を行う。あるいは、上記主要工程において、電解着色処理と浸漬処理による着色処理の工程を前後入れ替えて行う。
【0014】
本発明に用いられるアルミニウム材またはアルミニウム合金材は陽極酸化皮膜が形成可能であれば何でもよいが、JIS A1100材等の純Al系、JISA6063等のAl−Mg−Fe−Si系等の材質で、板、管、押出形材等の建材に用いられるものが好ましい。陽極酸化皮膜処理は、硫酸、蓚酸、スルホン酸等の通常の陽極酸化処理浴が使用できるが、硫酸浴が好適である。硫酸浴法による場合10〜300g/l,浴温−5〜30℃で、膜厚3〜40μmの多孔性陽極酸化皮膜とする。ブロンズ電解着色は、Ni、Co、Sn等の金属塩水溶液中で交流法、直流法あるいはパルス波形を用いる電解法で行う。例えばいわゆる浅田法(特公昭38−1715号公報記載)あるいは特公昭57−32119号公報に記載される電解着色法等の公知の方法に準じて行えば良い。着色均一性向上のためにはバリヤー層均一化処理後、矩形波交番電流を用いる、いわゆるユニコール法(特公昭58−52037号公報記載)に準じた電解着色法によることが望ましい。
【0015】
例えば、(1)硫酸ニッケル(NiSO4 ・6HO2 )25g/l、硫酸アンモニウム((NH4 )2 SO4 )12g/lの浴で商用交流を使用して電解電圧13Vの定電圧で5分間処理する着色法、(2)硼酸(H3 BO3 )25g/l、硫酸ニッケル(NiSO4 ・6H2 O)20g/l、硫酸アンモニウム((NH4 )2 SO4 )15g/lの浴で商用交流を使用して電解電圧20Vの定電圧で2分間処理する着色法、或いは、(3)硫酸ニッケル(NiSO4 ・6HO2 )50g/l、硫酸コバルト(CoSO4 7H2 O)50g/l、硼酸(H3 BO3 )40g/l、スルホサリチル酸塩10g/lの浴で商用交流を使用して電解電圧10Vの定電圧で7分間処理する着色法等が適用できる。
【0016】
本発明に好適なユニコール法により電解着色処理を行う場合を例に具体的に説明すると、硫酸ニッケル(NiSO4 ・6HO2 )50〜200g/l、硼酸(H3 BO3 )20〜40g/l、酒石酸4〜12g/l、硫酸マグネシウム(MgSO4 7H2 O)0.5g/lの浴中でアルミニウム材を陽極として電流密度0.05〜3A/dm2 にて20秒〜2分間電解してバリヤー層均一化処理を施して後、同一浴中でアルミニウム材を陰極として矩形波交番電流を印加して電解着色処理を行う。
アルミニウム材に印加される矩形波交番電流の周波数は、5〜25Hzで行い、好ましくは10〜20Hzの範囲がよい。周波数が5Hz未満では被処理材の表面にざらつきが生じ、25Hzを越えると着色速度が著しく低下していずれも不適である。
また、被処理材に印加される矩形波交番電流のアルミニウム材での正電流の通電時間ta とアルミニウム材での負電流の通電時間tc の比、電流比ta /tc は0.005〜0.30の範囲で処理が行われるが、好ましくは0.01〜0.25の範囲がよい。これらの範囲外の0.005未満では着色性が不均一となり、0.03を越えると、着色速度が遅くなって生産性が低下し、いずれも不適である。矩形波交番電流の波形は、図4のように均一なパルス状で印加しても良く、また、図5のように一定電流の流れるT1 の期間に対してパルスを繰り返すT2 の期間を設けても良い。
【0017】
組成として金属塩はニッケルに変えてCo、Sn等の硫酸塩も適用できる。また、硼酸に替えて硼酸アンモニウム、酒石酸アンモニウムを、酒石酸に替えてクエン酸をそれぞれ適用し得る。
浴の管理上、1価の陽イオン(Na,K,NH4 )はスポーリング発生を誘発させるので20PPM以下とすること、Alイオンは析出して皮膜欠陥を誘発することから500PPM以下とすることが好適である。
この電解着色処理法におけるバリヤー層均一化処理は、電解着色処理中の陽極酸化皮膜の破壊を防止してスポーリング現象の発生を防止しつつ、電解着色処理での付き廻り性を良好にするための陽極酸化処理であり、所望によって、電解着色浴とは別浴として、硼酸、硼酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム等の独立浴で行うこともできる。
【0018】
モリブデン、タングステン、バナジウム等の混合原子価錯体の陽極酸化皮膜への吸着方法は、陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム材を、モリブデン酸、タングステン酸、またはバナジン酸等のアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩の水溶液からなる第1浴に浸漬した後、無機酸塩性還元剤としてスズ、鉄等の塩化物、硫酸塩の水溶液等からなる、並びにそれらに更にスルホフタル酸やスルホサリチル酸等を安定化剤として添加してなる第2浴に浸漬して部分的に還元処理して混合原子価錯体を陽極酸化皮膜上で生成させ、吸着させて行う。
即ち、二浴を陽極酸化皮膜上で反応させることによって、モリブデン酸、タングステン酸、バナジン酸のオキソ酸イオンの生成と共にその青色化合物を陽極酸化皮膜上に析出・吸着させるものである。
浴濃度は、それぞれ飽和濃度までの任意の濃度でよいが、薄い場合は浸漬時間を長くすれば良い。例えば、第1浴と第2浴との濃度及び浸漬時間を、それぞれモリブデン酸アンモニウムが0.1〜400g/l、浴温0〜60℃で浸漬時間0.5〜15分、及び、硫酸スズ(II)0.1〜150g/l、浴温0〜60℃で浸漬時時間0.5〜15分間の範囲で、それぞれの濃度に合わせて浸漬時間を調節して着色処理を行う。
【0019】
ここで生じる反応は、陽極酸化皮膜のポアー側壁に吸着されたモリブデン酸アンモニウムと浴中の硫酸スズとが反応して青色のMo(V)とMo(VI)の混合原子価錯体(モリブデンブルー)が生成するものであるが、どの程度のものが5価となっているかは現時点では確認手段がなく、明らかでない。
この混合原子価錯体は、陽極酸化皮膜中に吸着できればどのような方法でもよいが、混合原子価錯体は水溶液中では安定的に存在せず、また、沈澱し易いため、このように二浴方式での浸漬工程で混合原子価錯体を生成すると同時に吸着させる方法がよい。
【0020】
この吸着工程により、電解着色によりブロンズ色に着色された陽極酸化皮膜は、ブロンズ色から灰色となる。この方法によれば、これら電解着色と混合原子価錯体の吸着による着色との二つの工程について、それぞれ適当な条件を選ぶことにより灰〜黒色の明度の制御が容易にできる。
着色処理後は、目的に応じて封孔処理またはクリヤー着塗装等の所要の処理を行う。
【0021】
実施例1
JIS A6063アルミニウム材を硫酸浴中で電流密度1.5A/dm2 で23分間電解して、10μmの陽極酸化皮膜を生成させた後、硫酸ニッケル20g/l、硼酸25g/l、硫酸アンモニウム15g/lの水溶液中で、商用交流20Vで1分間交流電解着色を行い。ブロンズに着色した。この時点での、測色値はL* =67.4、a* =1.0、b* =5.3であった。
次いで、モリブデン酸アンモニウム20g/lの水溶液に5分間浸漬し、引き続いて、硫酸スズ(II)8g/lの水溶液に5分間浸漬して、モリブデンブルーを発色させ、封孔処理を施し、黄みの灰色材を得た。測色値はL* =64.8、a* =0.2、b* =3.0であった。
ここで、L* 、a* 、b* は、日本工業規格(JIS Z8729)によるL* a* b* 表色系で、ブロンズ色は、L* 値で25〜75、a* :0〜5、b* :0〜15、また、灰色は、L* 値で24〜73、a* は−3〜3、b* :−3〜3の範囲である。
【0022】
実施例2
JIS A6063材を硫酸浴中で電流密度1.5A/dm2 で23分間電解して、10μmの陽極酸化皮膜を生成させた後、モリブデン酸アンモニウム20g/lの水溶液に5分間浸漬し、硫酸スズ(II)8g/lの水溶液に5分間浸漬して、モリブデンブルーを発色させた。この時点での、測色値はL* =79.3、a* =−2.6、b* =−4.6であった、次いで、硫酸ニッケル20g/l、硼酸25g/l、硫酸アンモニウム15g/lの水溶液中で、商用交流20Vで1分間交流電解着色を行い、封孔処理を施し、青みの灰色皮膜を得た。測色値はL* =69.0、a* =−1.5、b* =−2.2であった。
【0023】
実施例3
JIS A6063材を硫酸浴中で電流密度1.5A/dm2 で23分間電解して、10μmの陽極酸化皮膜を生成させた後、硫酸ニッケル100g/lの水溶液中で定電流矩形波(電流比ta /tc =1/5,10Hz)により電流密度0.5A/dm2 で1分間交流電解着色を行い、ブロンズに着色した。この時点での、測色値はL* =69.5、a* =0.9、b* =5.2であった。次いで、モリブデン酸アンモニウム20g/lの水溶液に5分間浸漬し、引き続いて硫酸スズ(II)8g/lの水溶液に5分間浸漬して、モリブデンブルーを発色させ、封孔処理を施し、黄みの灰色皮膜を得た。測色値はL* =65.9、a* =−0.5、b* =2.9であった。
【0024】
実施例4
モリブデン酸アンモニウム水溶液に替えて、バナジン酸アンモニウム5g/lの水溶液を用いた以外は実施例3と同様に着色し、灰色皮膜を得た。測色値はL* =64.1、a* =0.3、b* =0.52であった。
【0025】
実施例5
着色材として、JIS A6063材に替えてJIS A1100材を用いたほかは、実施例3と同様に着色処理し、灰色着色材を得た。測色値はL* =65.1、a* =0.0、b* =1.2であった。
【0026】
実施例6
電解着色処理時間を5分間とした以外は、実施例3と同様に着色処理した。電解着色処理が終了した時点での測色値はL* =25.6、a* =0.15、b* =0.28で、赤み、黄みが感じられる黒色であったが、モリブデン酸アンモニウム水溶液浸漬着色を行うことにより、赤み、黄みがない黒色が得られた。測色値はL* =24.8、a* =0.0、b* =−0.6であった。
【0027】
実施例7
JIS A1100材を硫酸浴中で1.5A/dm2 の電流密度で46分間電解して、20μmの陽極酸化皮膜を生成させた以外は、実施例3と同様に着色し、灰色着色材を得た。測色値はL* =43.6、a* =−1.0、b* =−0.8であった。
【0028】
実施例8
モリブデン酸アンモニウム水溶液に替えて、タングステン酸ナトリウム20g/lの水溶液を用いたほかは実施例3と同様に着色処理を行い、灰色皮膜を得た。測色値はL* =63.2、a* =0.2、b* =−0.46であった。
【0029】
実施例3で作成した試料を、サンシャインウエザーメーター(JIS H8602記載の条件)で3000時間試験した。試験の前後の色差△E=0.5で褪色は認められなかった。
比較例として、実施例3の第2工程のモリブデン酸アンモニウムによる着色処理の替わりに青色有機染料を使用して、同色とした試料を同様の条件で試験したところ、褪色してブロンズ色となった。
【0030】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、無彩色系で種々の濃淡の明度で均一な灰色〜黒色の着色皮膜を容易に得ることができ、その着色皮膜は、耐候性、耐光性に優れ、様々な使用環境における要求に応えることができる。また、その着色品は、無機物に基づく着色であるため、封孔品、クリヤー電着塗装品のいずれの仕様にも対応できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ブロンズ電解着色皮膜の分光反射率
【図2】 モリブデン酸アンモニウム浸漬着色法により着色した皮膜の分光反射率
【図3】 本発明による着色皮膜の分光反射率
【図4】 矩形波電解着色法でのアルミニウム材に印加される電流波形
【図5】 矩形波電解着色法でのアルミニウム材に印加される他の電流波形
Claims (2)
- 陽極酸化処理したアルミニウム材にブロンズ色電解着色皮膜を形成した後、当該ブロンズ色アルミニウム材を、モリブデン酸,タングステン酸,またはバナジン酸のいずれかのアンモニウム塩,ナトリウム塩,またはカリウム塩の水溶液からなる第1浴に浸漬した後、無機酸塩性還元剤を含む水溶液からなる第2浴に浸漬して部分的に還元処理してモリブデン,タングステン,またはバナジウムのいずれかの混合原子価錯体を前記電解着色皮膜上に生成・吸着させて着色層を形成し、前記電解着色皮膜とモリブデン,タングステン,またはバナジウムのいずれかの混合原子価錯体による着色層とのそれぞれの分光反射率特性を重ね合わせて無彩色の灰色〜黒色に着色することを特徴とする着色方法。
- 陽極酸化処理したアルミニウム材を、モリブデン酸,タングステン酸,またはバナジン酸のいずれかのアンモニウム塩,ナトリウム塩,またはカリウム塩の水溶液からなる第1浴に浸漬した後、無機酸塩性還元剤を含む水溶液からなる第2浴に浸漬して部分的に還元処理してモリブデン,タングステン,またはバナジウムのいずれかの混合原子価錯体を前記陽極酸化皮膜上に生成・吸着させて着色層を形成した後、当該着色層形成アルミニウム材にブロンズ色電解着色皮膜を形成し、前記モリブデン,タングステン,またはバナジウムのいずれかの混合原子価錯体による着色層と電解着色皮膜とのそれぞれの分光反射率特性を重ね合わせて無彩色の灰色〜黒色に着色することを特徴とする着色方法。
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