JP2935193B2 - ロタウイルス感染症治療剤の製法 - Google Patents

ロタウイルス感染症治療剤の製法

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【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本発明は、牛乳中の生理活性蛋白質の分離精製法及び
その方法によって分離精製した牛乳中の未変生生理活性
蛋白質の精製化法並びに未変生生理活性蛋白質を用いる
ロタウイルス感染症の予防及び治療法に関するものであ
る。
「従来の技術」 ロタウイルスは小児の急性下痢症から1973年に分離さ
れたウイルスで、レオウイルス科に属する。このウイル
スはマウスからサルに至る種々の哺乳動物並びにニワト
リ等の鳥類に見いだされた二本鎖のRNAウイルスで、分
子量0.2〜2.2×103の11分節RNAからなり、構成蛋白質は
分子量15〜130×103の8〜10込のペプチドよりなる。粒
子は直径65〜75nm、32のキャプソメアーがウイルスコア
から放射状に配列するように見えるため、車輪(ラテン
語ロータ)になぞらえてロタウイルスと命名された。ヒ
トのロタウイルスは冬期(11月から翌年の3月まで)、
乳幼児に流行する急性の非細菌性胃腸炎(仮性コレラ、
白痢など)の主な原因ウイルスと考えられていて、乳児
胃腸炎ウイルスとも呼ばれ、最近は学童の集団下痢症の
原因になっていると言われている。厳しい下痢及び嘔
吐、それに続く脱水症状を特徴とするが、栄養状態が著
しく改善された我が国の乳幼児はロタウイルスの感染症
で死亡することは殆どなくなっている。しかし、栄養補
給が不充分な開発途上国では、今なお有力な乳幼児死亡
原因の一つに数えられる。また、最近では夏期、老人に
流行する下痢症もロタウイルスの感染に起因することが
明らかにされた。老人の場合には抵抗力が衰えているの
で、、乳幼児と異なり不幸な転機を迎えることも稀では
ないとされている。つまり、ロタウイルス感染に起因す
る下痢症は、固体の免疫脳と密接な関係があり、その感
染症は「免疫系が未成熟の乳幼児」並びに「免疫能が低
下した老人」の病気である。
本発明者らはロタウイルス感染症の予防及び治療法を
研究した結果、牛乳中に含まれる生理活性蛋白質を未変
生のまま経口的に与えることによって、ヒトのロウタウ
イルス感染症を治療及び予防できることを見いだし、本
発明を完成するに至った。
ヒトのロタウイルスとウシやウマに胃腸炎を起こすロ
タウイルスとは、補体結合反応で共通の抗原を持つこと
が分かっている。哺乳動物並びに鳥類のロタウイルス
は、血清型によってI〜VII型に分離される。この内で
ヒトに感染し、下痢症を起こさせるのは主としてI〜VI
型である。昔はウイルスの検出は困難であったが、免疫
学的方法の発展により糞便抽出液を用いてウイルス抗原
の迅速に検出診断することが可能になった。回復期患者
血清はウシロタウイルスを抗原として補体結合反応で陽
性を示す。つまり、ヒトとウシのロタウイルス表面抗原
には共通の部分が存在することが示唆される。
一方、哺乳動物の乳汁、特に初乳中には多量の免疫グ
ロブリンが分泌されることが知られている。
前述したようにロタウイルスが、好んで免疫系が未成
熟な幼若動物に感染する点か考えれば、乳汁中にはロタ
ウイルスの抗原を認識し、それと結合する防御抗体が含
まれていても不思議ではない。事実、最も普遍的な乳汁
である牛乳中には、同種のロタウイルスに対する抗体が
高い力価で含まれていることが分かっている。したがっ
て、牛乳中に含まれるロタウイルス抗体を、ヒトのロタ
ウイルス感染症の治療及び予防に応用する際に、遭遇す
る主要な問題は、ウシの乳汁抗体が動物種差を越えてヒ
トのロタウイルス(血清I〜IV型)を中和できるかどう
かにかかっている。ロタウイルスは細胞培養で活発に増
殖することが知られている。ロタウイルスに対する中和
抗体価に検定する最も簡便な方法は、サルの腎臓から得
られた細胞株MA−104の単層培養(monolayer culture)
にロタウイルスを感染させ、一定時間培養して生ずるプ
ラックを数えるplaque reduction法である。
この方法の原理は、MA−104細胞の単層培養上にウイ
ルスを感染させ、生細胞と死細胞を染め分けることがで
きる色素を添加した寒天培地で覆って培養することから
成り立っている。一定時間培養すると、初めは一個だっ
たウイルスは細胞に侵入して増殖し、感染した細胞を次
々と死滅させながら周囲に拡がって行く。寒天培地中に
は生細胞は染まるが、死細胞は染まらない色素が含まれ
るので、ウイルス増殖によって生じた死細胞ゾーンは、
肉眼的にも周囲と識別できるプラックとして観察され
る。この方法は原則として一個のウイルスから一個のプ
ラックを生ずるので、免疫グロブリンを含む孔ウイルス
物質のウイルス増殖抑制活性を次のような方法で測定す
ることができる。即ち、種々のロタウイルス株とウシ初
乳免疫グロブリンを中性の緩衝液中で混合し、一定の時
間放置すると、免疫グロブリン中にロタウイルスに対す
る中和抗体が充分に含まれていれば、ロタウイルスは抗
原〜抗体複合体となって沈澱して系外に除去される。し
たがって、ウイルスを沈澱させた後の液を細胞培養に感
染させても、ロタウイルスによるプラックを生じなくな
る。実際にはウイルスによるプラック形成を60%減少さ
せることができる抗ウイルス活性物質の最大希釈倍率を
中和抗体価と呼んで、in vitroにおける抗ウイルス活性
の目安にしている。本発明者らはウシ初乳から分離精製
した免疫グロブリン濃縮物について、このplaque reduc
tion法によってロタウイルスに対する中和抗体価を測定
したところ、表1に示す値が得られた。即ち、乳牛数十
頭〜数百頭から採取した初乳をプールし、免疫グロブリ
ン濃縮物を分離精製して種々のロタウイルス株に対する
抗体を測定したところ、ロット毎に多少のバラツキはあ
るが、各種血清型のウイルスに対し例外なしに高い中和
抗体価を示した。したがって、このようなプールした初
乳から採集した免疫グロブリン濃縮物は、ヒトを含む各
種のロタウイルスをin vitroで中和する抗体を多量に含
有することは当然であるが、その他に牛乳中に存在する
生理活性蛋白質、例えばラクトフェリン、ラクトパーオ
キシダーゼなども同時に含有する。しかし、本明細書で
は便宜的に「免疫グロブリン濃縮物」と呼ぶことにす
る。
このようにロタウイルスに対する高い抗体価を持った
免疫グロブリン濃縮物は、本発明の方法により従来の方
法と比べて遥かに経済的に製造することができる。
従来、初乳からの免疫グロブリン濃縮物は、主として
硫酸アンモニウム沈澱法によって製造されてきた。即
ち、初乳をpH4.5に調節し、凝乳酵素レンネットを添加
してカゼインを沈澱させて、浮上してきた乳脂肪をすく
い取って除くと同時に、沈澱したカゼインを遠心分離し
て除去する。このようにして得た初乳ホエイに硫酸アン
モニウムを45%飽和になるまで添加すると、免疫グロブ
リンの微細な沈澱を生ずる。この混合物を遠心分離する
と、免疫グロブリンを含む分画は比重が重い液の部分に
流出する。重液部分は分画分子量2万の限外濾過膜で処
理することによって、硫酸アンモニウム及び牛乳由来の
低分子物質を除去していた。
しかしこの方法は次のような大きな欠点があった。
「収量が低いこと」。免疫グロブリンは硫酸アンモニ
ウムによる沈澱法では完全には沈澱しないので、母液の
残存して損失になる部分が非常に多い。
「時間がかかること」。最終的な濃縮液に残留する硫
酸アンモニウムを限外濾過膜によって除去するために多
大の時間がかかること。
「廃液処理に時間と経費がかかること」。大量の硫酸
アンモニウムを含む工場廃液がでるため、処理に多額の
経費と時間が必要である。
「発明が解決しようとする課題」 本発明は斯かる従来方法の欠点を解決すべくなされた
ものであり、収量が増加し且つ廃液処理に時間と費用が
かからず、更に高品質の免疫グロブリンを得ることがで
きるようになしたものである。
「課題を解決するための手段」 而して、本発明を要旨とするところは、次の点にあ
る。
(1) 初乳を凝乳酵素を添加して得た物から分離した
初乳ホエイを直ちに分画分子量5〜15万の限外濾過膜で
単一処理をすることにより、初乳中の免疫グロブリンを
主成分とする生理活性蛋白質を、初乳ホエイ中の総蛋白
中に占める割合を2倍以上に濃縮し分離精製することを
特徴とする牛乳中の生理活性蛋白質の分離精製法。
(2) 限外濾過膜として分画分子量10万のものを用い
る請求項(1)記載の牛乳中の生理活性蛋白質の分離精
製法。
(3) 請求項(1)記載の方法によって分離精製し粉
末にした牛乳中の生理活性蛋白分画に糖類を加え、1〜
5%の水を噴霧して軽く湿気を与えてから充分に練合し
顆粒化した後乾燥させて得られた牛乳中の生理活性蛋白
質の製剤。
(4) 前記糖類としては、グルコース、マルトース、
シュークロース、フルクトース及びソルビトールの中の
いずれかを用いる請求項(3)記載の牛乳中の生理活性
蛋白質の製剤。
(5) 請求項(1)記載の方法によって分離精製し粉
末にした牛乳中の未変成生理活性蛋白質を育児用調整粉
乳に0.5〜50%添加し、少量の水を噴霧して軽く湿気を
与えてから充分に練合し乾燥化して粉砕して得られる育
児用粉乳。
(6) 請求項(1)記載の方法によって分離精製し粉
末にした牛乳中の未変成生理活性蛋白質を粉末飲料に10
%〜50%添加し、1〜5%の水を噴霧して軽く湿気を与
えてから充分に練合し顆粒化した後乾燥させて得られる
粉末飲料。
(7) 請求項(1)記載の方法によって分離精製し粉
末にした牛乳中の未変成生理活性蛋白質を牛乳に所定量
添加し、所定量の乳酸菌を一種または混合して接種し一
定温度で所定時間培養することにより得られる乳酸発酵
食品。
(8) 前記乳酸菌としては、Lactobacillus属、Strep
tococcus属、Leuconostoc属ものを用いる請求項(7)
記載の乳酸発酵食品。
(9) 請求項(1)記載の方法により牛乳から分離精
製して粉末にし、これを親水性の物質で被覆させた未変
成生理活性蛋白質を含有することを特徴とするロタウイ
ルス感染症の予防及び治療用組成物。
(10) 請求項(1)記載の方法により牛乳から分離精
製して粉末にし、これを親水性の物質で被覆させた未変
成生理活性蛋白質をウシ、ブタ、イヌ及びネコなどの幼
獣に免疫グロブリンとして一日一頭当たり10〜500mg/kg
を連日経口投与することを特徴とするロタウイルス感染
症の予防及び治療法。
特に、本発明に係る新規な生理活性蛋白質の分離精製
法は、初乳ホエイまでの工程は従来法と同一であるが、
初乳ホエイを直ちに分画分子量5万〜15万好ましくは10
万の限外濾過膜で処理することを特徴とするものであ
る。この方法の原理は、分子量の大きさに応じて乳蛋白
を分別することにある。即ち、初乳中に最も多量に含ま
れるIgG1の分子量は、monomerとして約14万であるが電
気泳動によって検討したところ、殆どの免疫グロブリン
は2−3分子が他の初乳蛋白と結合したdimer並びにtri
merの形で存在することが明らかになった。したがっ
て、初乳ホエイを分画分子量5万〜15万の限外濾過膜で
処理すると、初乳ホエイ中の低分子はもとよりα−ラク
トアルブミン、β−ラクトグロブリン、牛血清アルブミ
ンなどの牛乳由来の蛋白質は大部分が除去されるが、免
疫グロブリンは僅か1%以下の損失で総蛋白質中に占め
る割合を2倍以上に濃縮できる。
このような工程を経て分離精製した免疫グロブリン濃
縮液は、凍結乾燥ないし噴霧乾燥法によって白色鱗片状
ないし白色〜黄白色の非常にカサ比重が軽い粉末として
得ることができる。粉末中における蛋白質の含量は使用
する初乳ホエイの免疫グロブリン含量に依存するが90%
以上、その50%〜85%が未変生の免疫グロブリンであ
る。
また、免疫グロブリン濃縮液はどのような乾燥法を採
用しても、得られる粉末は水をはじく性質があり、水に
溶けにくい。したがって、この粉末をそのままカプセル
に封入するか、錠剤化しても、人工胃液中ではゴム状の
塊になって全く分散しない。この実験結果から牛乳由来
の精製免疫グロブリンは、血液中から精製した免疫グロ
ブリンと比べると水に溶かした際の粘度が著しく高く、
単純な製剤では消化管内でゴム状の塊として粘膜に付着
するだけで、消化液中に分散することは期待できないと
推定された。したがって、ヒト或いは動物に免疫グロブ
リンを経口投与し、消化管内で抗ウイルス活性を発揮さ
せるには、消化管内で分散溶解させる必要がある。この
目的に沿って製剤化法としては、微細に粉砕した免疫グ
ロブリン濃縮物粉末1部を、1部以上の親水性化合物、
例えば糖類或いは糖アルコールと混合し、少量の水分を
噴霧してから充分に練り合わせて顆粒化することが望ま
しい。このような顆粒は水をはじく性質を持つ免疫グロ
ブリン粒子の表面を親水性の糖類で被覆するために、分
散性及び溶解性が著しく改善される。したがって、ウシ
免疫グロブリン濃縮物は、牛乳から分離されるものであ
り、牛乳中には容易に溶解する。また、微細な免疫グロ
ブリン粉末を0.5〜50%の割合で粉乳に混合するだけ
で、免疫グロブリンは温水に非常に溶けやすくなる。更
にpHが中性の電解質粉末、例えばphosphate buffer sar
ineの粉末と免疫グロブリン濃縮物の微細な粉末を混合
しても、水への溶解性が大きく向上する。
そしてまた、このような免疫グロブリン濃縮物を用い
てヒト乳児、子ウシ、子ウマにいおけるロタウイルス性
下痢症の治療及び予防効果を検討した。まずヒトについ
ては免疫グロブリンを65%含有する粉末を免疫グロブリ
ンに換算して100〜1200mg、一日一回育児用調整粉乳或
いは飲料と混合して与え、ロタウイルス感染症に対する
治療及び予防効果を検討した。詳細については実施例に
譲るが、治療効果の場合には、 下痢症の期間の短縮。
糞便中へのロタウイルス排泄期間の短縮。
の点で統計的に有意な効果が認められた。また、予防効
果の検討では、ウシ初乳免疫グロブリン濃縮物を予防的
に一日一人当たり0.5〜1.5g(免疫グロブリンの純度60
%)連続的に与えた群では有意にロタウイルス感染症の
発生が抑制された。この実験からウシ初乳免疫グロブリ
ンのヒト・ロタウイルス感染症に対する治療及び予防効
果は明らかである。
ウシの場合にも子ウシ100頭以上を使い、ウシ初乳免
疫グロブリン(純度65%)25gを電解質溶液に溶解して
与え、ロタウイルス感染症に対する治療及び予防効果を
検討した。この場合もウシ初乳免疫グロブリンは治療及
び予防の両面にわたって有意な効果を示した。
更にロタウイルスに感染した子ウマについても、免疫
グロブリン(純度65%)を25g連日経口投与し、ロタウ
イルス下痢症に対する治療効果を検討した。この場合に
も対照群と比べ「下痢の期間」及び「糞便中へのロタウ
イルス排泄期間」の両面にわたって期間の短縮が認めら
れた。したがって、ウシ初乳免疫グロブリンはヒトヲ含
む哺乳動物のロタウイルス感染症に対して普遍的な治療
及び予防効果を示すことが明らかになった。
「発明の効果」 従来の方法と比較した本発明の利点は下記の通りであ
る。
「収量」。初乳ホエイ以降の工程では全く損失がない
ので、従来法と比べて免疫グロブリンの収量が約2倍に
向上する。
「廃液処理」。従来法と比べて廃液が非常に少ないの
で、処理に時間と費用がかからない。
「品質」。長時間処理する必要がないので、従来法よ
り品質的に優れた免疫グロブリンを得ることができる。
また、免疫グロブリン粒子の表面を親水性の糖類で被
覆すると、分散性及び溶解性が著しく改善される。ま
た、免疫グロブリン粉末を0.5〜50%の割合で育児用調
整粉乳に混合する場合並びにpHが中性の電解質粉末に混
合する場合には、水への溶解性を向上させることができ
る。更にまた、免疫グロブリンを経口投与すると、下痢
症の期間が短縮され且つまた糞便中へのロタウイルス排
泄期間を短縮させることができる。
以下、本発明の実施例を示す。
〔実施例1〕 限外濾過膜による分離精製法。
分娩48時間後までのウシ初乳500kgを40℃に加温し、
酢酸を添加してpH4.6に調節した後、チーズ製造に準じ
て凝乳酵素レンネット0.01%、CaCl20.02%を加えて1
時間、撹拌しながら保持してガゼインを完全に微細なカ
ード化した。このカゼイン・カードを含む液を遠心分離
し、凝集したカードの部分約150kgとホエイ部分350kgを
得た。ホエイに再度NaOHを加えpH6〜7に修正してか
ら、フイルター・プレスを通して濾過して濾液を得た。
この濾液を分画分子量10万の限外濾過膜を通過させて3
倍濃縮を5回繰り返し、濃縮液80kgを得た。この液を無
菌濾過した後、凍結乾燥し約8kgの免疫グロブリン濃縮
粉末(純度65%)を得た。
このようにして初乳から分離精製した免疫グロブリン
濃縮粉末についてロタウイルに対する中和抗体価を下記
のようにして測定した。MA−104細胞で増殖させたウシ
・ロタウイルス(NCVD株)を200 PFU/mlになるように希
釈する。このウイルス希釈液と免疫グロブリン濃縮物の
5倍段階希釈溶液と夫々等量混和し、37℃で1時間中和
後のウイルス量を、3.5cmのシャーレで37℃2日間培養
したMA−104細胞単層培養上でのプラック形成で測定
し、対照プラック数に比較して約60%のプラック減少を
認めたサンプル希釈倍数を中和抗体価とした。
〔実施例2〕 糖類による製剤化法。
12kgのブドウ糖に蒸溜水420mlをスプレイして湿らせ
た後、粉砕機にかけて微細な粉末としたウシ免疫グロブ
リン濃縮物(免疫グロブリンとして純度63%、ウシ・ロ
タウイルスNCVD株に対する中和抗体価、1:6250)4kgを
加えて充分に練り合わせた。練合した後、2m/m(16〜18
mesh)のネットを備えた押し出し造粒機にかけて顆粒化
し、次いで流動乾燥機にかけて温度70℃、25分間乾燥し
た。このようにして調整した顆粒の水分含量は7.5%で
あった。
〔実施例3〕 育児用調整粉乳による製造化法。
市販育児用調整粉乳90gにウシ免疫グロブリン濃縮物1
0g(免疫グロブリン含有率65%、ウシ・ロタウイルスNC
DV株に対する中和抗体価(1:6250)を混合し、3mlの蒸
溜水を噴霧して軽く湿り気を与えつつ充分に練り合わせ
る。次に50℃以下の温度で乾燥し、適当に粉砕してから
1回量10〜20gの防湿の袋に充填して製品化する。
〔実施例4〕 市販オレンジジュースとの混合による製
剤化法。
市販の粉末オレンジジューユ400gに微粉化したウシ初
乳免疫グロブリン濃縮物100g(免疫グロブリン含有率62
%、ロタウイルスNCDV株に対する中和抗体価1:31250)
を混合し、以下実施例2と同様に操作してウシ初乳免疫
グロブリン含有の粉末オレンジジュースを得た。
〔実施例5〕 乳酸醗酵による製剤化法。
市販牛乳1000リットルにウシ初乳免疫グロブリン濃縮
物(純度62%、ロタウイルスNCDV株に対する中和抗体価
1:31250)10gを添加し、適当量のLactobecillus bulgar
icus並びにStreptococcus thermophilusuからなる混合
培養(スターター)を添加し、40℃で8〜10時間培養し
た。乳酸菌の増殖によってpHが低下し、液全体が固化し
た頃を見計らって出荷し食用に供する。ウシ免疫グロブ
リンはこれらの乳酸菌の増殖に対し何等の阻害作用も示
さない。また、このような短時間の培養では、これらの
乳酸菌は蛋白分解酵素を分泌してウシ免疫グロブリンを
加水分解し、失活させることはない。したがって、初め
に添加した免疫グロブリンは、本発明法で調整したヨー
グルト製品中にそのままの形で残存する。また、上記の
混合培養の代わりに中温性の乳酸菌Streptococcus lact
is、Strept.cremorisなどをスターターとして用い、20
℃前後の温度で培養することによっても、免疫グロブリ
ン含有のヨーグルトを製造することができる。
〔実施例6〕 ヒトのロタウイルス感染症治療法。
冬期下痢症を発症して24時間以内に小児科医のもとに
通院を始めた患者を対象としてウシ初乳免疫グロブリン
の治療効果を検討した。
現状ではヒトロタウイルス感染症に対して有効な治療
剤は存在せず、使われるのは全てが対症療法である。し
たがって、治療に際しては原則としては重篤な細菌感染
症を合併する場合を例外として、抗生物質を除く全ての
対症療法剤の使用は自由とした。抗生物質は免疫グロブ
リンの治療効果を修飾する可能性があるので、使用を禁
止した。患児には実施例2のように製剤化した顆粒(ウ
シ初乳免疫グロブリンの純度67%、ロタウイルスに対す
る中和抗体価1:6250)を一日一回微温湯、育児用調整粉
乳、牛乳、果汁などの何れかに溶解して与え、排便する
毎にその一部を採取して、その性状、ロタウイルス抗原
の有無などを検討した。一方、対照群としては免疫グロ
ブリン非投与群を設定し、両群における下痢の期間及び
ウイルスが検出できなくなるまでの期間を比較した。そ
の結果は表2に示す通りである。即ち、下痢症の期間及
びウイルス排泄期間の何れをとっても、免疫グロブリン
投与群は対照群と比べ、有意に罹病期間を短縮させる効
果を示した。したがって、ウシ初乳免疫グロブリンがヒ
ト・ロタウイルス感染症に対し治療効果を持っているこ
とは明らかである。
〔実施例7〕 ヒトのロタウイルス感染症予防法。
昭和61年2月1日から同28日までの4週間、2歳未満
の乳幼児53名をランダムに2群に分け、一方の群(30
名)を対照群としてブドウ糖を連日4gを投与し、他方の
群(23名)には実施例2の方法によって調製したウシ初
乳免疫グロブリン製剤4g(ウシ初乳免疫グロブリン濃縮
物として1g、ロタウイルスNCDV株に対する中和抗体価1:
31250)を連日経口投与した。4週間後にロタウイルス
感染による下痢症発生の頻度を両群で比較した結果は表
3に示す通りである。
冬期下痢症発生に歳しては、患児から採便してロタウ
イルス排泄の有無を調べて、診断を確定した。表3に示
すようにウシ初乳免疫グロブリン製剤を連日経口投与し
た群では、対照群と比べロタウイルス感染症の発生が有
意に抑制される。したがって、本発明のウシ初乳免疫グ
ロブリン製剤のロタウイルスによる下痢症予防効果は明
らかである。
〔実施例8〕 ウシのロタウイルス感染症予防法。
生後1ケ月以内のホルスタイン系子ウシ141頭をラン
ダムに2群に分け、1群にウシ初乳免疫グロブリン(純
度63%)を一日一回25gづつ電解質溶液或いはブドウ糖
溶液に溶解して与えた。対照群には夫々電解質或いはブ
ドウ糖類のみを与えた。その結果有は表4に示す通りで
ある。
〔実施例9〕 ウシのロタウイルス感染症治療法。
生後1ケ月以内のホルスタイン系子ウシにロタウイル
ス感染症を疑われる下痢が始まってから24時間以内に、
ウシ初乳から分離した免疫グロブリン(純度64%)25g
を一日一回連続1週間、水ないし電解質液に溶かして経
口的に与え、下痢が止まるまでの期間を免疫グロブリン
を与えなかった対照群の下痢が収まる期間と比較した。
なお、ロタウイルス感染症の証明は、採取した糞便から
ウシ・ロタウイルス抗原が検出された場合のみを陽性と
して集計した。表5から明らかなように、ウシ初乳免疫
グロブリンは子ウシのロタウイルス感染に基づく下痢症
の罹病期間を有意に短縮する効果を示した。
〔実施例10〕 ウマのロタウイルス感染症予防法。
北海道日高地方で出生したサラブレッド系子ウマ19頭
をランダムに2群に分け、一方の群には出生後1週間目
から一日一回連続10日間にたってウシ初乳免疫グロブリ
ンを25gづつ経口的に与えた。他方の群は対照として、
ロタウイルス感染による下痢発生の有無を比較した。
結果は統計的に有意ではないが、ウシ免疫グロブリン
がウマのロタウイルス感染症を予防する効果があること
は中和抗体価並びにヒト、ウシの例からみて明らかであ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI A61K 31/00 631 A61K 31/00 631H 39/42 39/42 C07K 1/34 C07K 1/34 (72)発明者 後藤 雅光 東京都中央区京橋2丁目1番9号 中外 製薬株式会社内 (72)発明者 岡本 利之 東京都中央区京橋2丁目1番9号 中外 製薬株式会社内 (72)発明者 坂内 岩雄 東京都東村山市恩多町3丁目8番1号 (72)発明者 安藤 剛 千葉県松戸市五香六実155―296 (72)発明者 桐原 修 東京都武蔵野市櫻堤2丁目7目17号 平 和荘A号 (56)参考文献 国際公開87/40150(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07K 14/47,1/34 CA(STN) CAOLD(STN) REGISTRY(STN)

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】初乳を凝乳酵素を添加して得た物から分離
    した初乳ホエイを直ちに分画分子量5〜15万の限外濾過
    膜で単一処理をすることにより、初乳中の免疫グロブリ
    ンを主成分とする生理活性蛋白質を、初乳ホエイ中の総
    蛋白中に占める割合を2倍以上に濃縮し分離精製するこ
    とを特徴とする牛乳中の生理活性蛋白質の分離精製法。
  2. 【請求項2】限外濾過膜として分画分子量10万のものを
    用いる請求項(1)記載の牛乳中の生理活性蛋白質の分
    離精製法。
  3. 【請求項3】請求項(1)記載の方法によって分離精製
    し粉末にした牛乳中の生理活性蛋白分画に糖類を加え、
    1〜5%の水を噴霧して軽く湿気を与えてから充分に練
    合し顆粒化した後乾燥させて得られた牛乳中の生理活性
    蛋白質の製剤。
  4. 【請求項4】前記糖類としては、グルコース、マルトー
    ス、シュークロース、フルクトース及びソルビトールの
    中のいずれかを用いる請求項(3)記載の牛乳中の生理
    活性蛋白質の製剤。
  5. 【請求項5】請求項(1)記載の方法によって分離精製
    し粉末にした牛乳中の未変成生理活性蛋白質を育児用調
    整粉乳に0.5〜50%添加し、少量の水を噴霧して軽く湿
    気を与えてから充分に練合し乾燥化して粉砕して得られ
    る育児用粉乳。
  6. 【請求項6】請求項(1)記載の方法によって分離精製
    し粉末にした牛乳中の未変成生理活性蛋白質を粉末飲料
    に10%〜50%添加し、1〜5%の水を噴霧して軽く湿気
    を与えてから充分に練合し顆粒化した後乾燥させて得ら
    れる粉末飲料。
  7. 【請求項7】請求項(1)記載の方法によって分離精製
    し粉末にした牛乳中の未変成生理活性蛋白質を牛乳に所
    定量添加し、所定量の乳酸菌を一種または混合して接種
    し一定温度で所定時間培養することにより得られる乳酸
    発酵食品。
  8. 【請求項8】前記乳酸菌としては、Lactobacillus属、S
    treptococcus属、Leuconostoc属ものを用いる請求項
    (7)記載の乳酸発酵食品。
  9. 【請求項9】請求項(1)記載の方法により牛乳から分
    離精製して粉末にし、これを親水性の物質で被覆させた
    未変成生理活性蛋白質を含有することを特徴とするロタ
    ウイルス感染症の予防及び治療用組成物。
  10. 【請求項10】請求項(1)記載の方法により牛乳から
    分離精製して粉末にし、これを親水性の物質で被覆させ
    た未変成生理活性蛋白質をウシ、ブタ、イヌ及びネコな
    どの幼獣に免疫グロブリンとして一日一頭当たり10〜50
    0mg/kgを連日経口投与することを特徴とするロタウイル
    ス感染症の予防及び治療法。
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