JP2928505B1 - ラジウム吸着剤とその製造方法 - Google Patents

ラジウム吸着剤とその製造方法

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Abstract

【要約】 【課題】 物理的な力に対し安定で、排水中に含まれる
ラジウムイオンを安価で、しかも、安定かつ高流速で吸
着除去できる吸着剤およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 陽イオン交換樹脂にマンガンが化学的に
結合されているラジウム吸着剤とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この出願の発明は、ラジウム
吸着剤とその製造方法に関するものである。さらに詳し
くは、この出願の発明は、科学研究所から発生する廃水
もしくはウラン鉱山開発にともなって発生する廃水等の
ラジウムを含有する水の脱ラジウム処理に有用なラジウ
ム吸着剤とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】ラジウムは主にウランが崩壊
する過程で生成し、自然界ではウラン鉱石中にウランと
共存している。このようなラジウムを含有する水として
は、たとえば、地下水や、科学研究所から発生する廃
水、ウラン鉱山開発にともなって発生する廃水等があげ
られる。
【0003】ラジウムは半減期が長く、多量に摂取する
と体内に蓄積する性質があり、骨肉腫、白血病の疾病要
因になるとも言われており、水中のラジウム濃度は原子
力規制法等により公衆に対して3.0Bq/l以下に規
制されており、さらに地元との安全協定により0.03
7Bq/l以下に厳しく規制されている事業所もある。
【0004】従来より、ラジウムを含有する水の脱ラジ
ウム処理方法としては、排水に塩化バリウム等と硫酸ま
たはその塩を添加し、発生した硫酸バリウムにより共沈
除去する方法が知られている。しかしながら、この方法
では、沈殿池、ろ過設備等に大きなスペースを必要とす
るうえ、処理の過程でラジウム含有固形廃棄物が大量に
生成する等の問題があった。
【0005】また、吸着剤を用いてラジウムを選択的に
吸着除去する方法も知られており、吸着剤として、たと
えば、無定型チタン酸を水、無機酸、無機結合体、有機
結合体の少なくとも一つ以上で結合させた吸着剤(特開
昭56−111043号公報参照)やフェノール樹脂に
鉄、チタン等の多価金属の水酸化物を分散・連繋させた
吸着剤(特公平3−56783号公報参照)等が提案さ
れている。
【0006】だが、これらの吸着剤は、吸着剤中のチタ
ン水酸化物が分散・連繋した緩やかな結合であるため、
空気攪拌等の物理的な力で脱落しやすく、脱落したチタ
ン水酸化物は通水時の圧力損失を増加させるうえ、ラジ
ウムと共に流出するため、処理水のラジウム濃度を0.
037Bq/l以下の厳しい規制値まで処理できない場
合がある。また、ラジウムの吸着速度が遅いため、高流
速で処理すると破過までの処理量が大幅に低下し、この
ため吸着したラジウムの再生を頻繁に行うことが必要と
なり、再生費用が高くなる等の問題があった。
【0007】そこでこの出願の発明は物理的な力に対し
安定で、排水中に含まれるラジウムイオンを安価で、し
かも、安定に、かつ高流速で吸着除去することのできる
新しい吸着剤とその製造方法を提供することを目的とし
ている。
【0008】
【課題を解決するための手段】この出願の発明は、上記
の課題を解決するものとして、陽イオン交換樹脂に、酸
化処理されたマンガンが結ていることを特徴とする
ラジウム吸着剤(請求項1)を提供する。この出願の発
明は、上記ラジウム吸着剤において、酸化処理されたマ
ンガンが、マンガンの水酸化物または水和酸化物である
こと(請求項2)を好ましい態様として提供する。この
出願の発明は、また、マンガンイオンを含む水溶液を
イオン交換樹脂に接触させ、次いでマンガンを酸化処理
して、上記ラジウム吸着剤を製造することを特徴とす
ジウム吸着剤の製造方法(請求項3)をも提供する。
【0009】この出願の発明において陽イオン交換樹脂
は、たとえば、通常の状態で固体の水不溶性の有機
ポリマーから形成されたマトリックス樹脂を母体とし、
イオン交換を司るアニオン性イオン交換基を持つもので
あって、たとえば、フェノール系、スチレン系、アクリ
ル系等のポリマーから形成された樹脂母体に、スルホン
酸基、カルボン酸基等のイオン交換基を有するイオン交
換樹脂、また、イミノ二酢酸系、アミノメチルホスホン
酸基等のキレート基を有するキレート樹脂等があげられ
る。この出願の発明ではこれら任意の陽イオン交換樹
脂を用いることが可能であるが、スチレン系ポリマーか
ら形成された樹脂母体中にスルホン酸基を有する強酸性
陽イオン交換樹脂はマンガンイオンとの結合力が強
く、安価であることから特に好ましい。また、陽イオ
ン交換樹脂は製造条件によりゲル型とポーラス型に分
けられるが、ポーラス型の樹脂を用いるとラジウムの
吸着速度が速くなることから好ましく、ポーラス型で水
分率が50〜70%のものは特に好ましい。
【0010】マンガンの量としては、乾燥した吸着剤に
対して2〜30wt%とすることが好ましく、5〜20
wt%がより好ましい。マンガンの量が2wt%未満に
なるとラジウムの吸着量が低下し、また、30wt%を
超えてもラジウム吸着量が増加しなくなり、吸着剤製造
時にマンガン化合物の使用量が増加し、経済的でないの
で好ましくない。
【0011】出願の明において、ラジウム吸着剤
、マンガンイオンを含む水溶液を陽イオン交換樹脂に
接触させ、これによってマンガンイオンを陽イオン交換
樹脂に結合させた後に結合したマンガンを酸化処理
ることにより製造される酸化処理によりマンガンは、
水酸化物または水和酸化物に変えられる。 ンガンイオ
ンを含む水溶液には、たとえば、塩化マンガン、硫酸マ
ンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン、臭化マンガン、
ヨウ化マンガン、硫酸アンモニウムマンガン等の水溶液
があげられる。これらのマンガン化合物はフレークの状
態で市販されているので、これを水に溶解して水溶液
とすればよいまた、マンガン化合物の量は、吸着剤中
のマンガンの量が前記の2〜30wt%となるようにす
るには、通常、陽イオン交換樹脂の総交換容量に対し
.2〜20倍当量すればよい。接触させる水溶液中
のマンガンイオンの濃度は特に限定されないが、低濃度
の水溶液を用いると多量の液量が必要になり製造設
備が大きくなることから1g/l以上とするのが好ま
しい。
【0012】触方法としては、陽イオン交換樹脂とマ
ンガンイオンを含む水溶液とを混合し、攪拌もしくは振
盪するバッチ法、陽イオン交換樹脂を樹脂塔に充填し、
マンガンイオンを含む水溶液を通液するカラム法のいず
れの方法を用いてもよい。バッチ法で行う場合には
時間以上攪拌もしくは振盪することが好ましく、カラム
法で行う場合にはマンガンイオンを含む水溶液を循環
通液するとマンガンイオン有効に活用できるため、
ましい。このようにしてマンガンイオンを含む水溶液
を陽イオン交換樹脂に接触させることにより、マンガン
イオンは、陽イオン交換樹脂に、スルホン酸、カルボン
酸基等のイオン交換基を有するイオン交換樹脂の場合に
イオン結合で、また、アミノメチルホスホン酸基、
イミノ二酢酸基等のキレート基を有するキレート樹脂の
場合には配位結合で安定な状態で結合する。
【0013】なお、マンガンイオンを含む水溶液が陽イ
オン交換樹脂中に残存していると、次の酸化処理におい
不溶性のマンガン化合物が生成し、陽イオン交換樹脂
と不溶性のマンガン化合物の分離が必要となる。したが
って、マンガンイオンを結合させた陽イオン交換樹脂
洗してマンガンイオンを含む水溶液から分離しておく
ことが好ましい。水洗は、通常、樹脂体積の30倍量の
水を用いて行うとマンガンイオンを含む水溶液を分離
することができる。
【0014】次に、このようにしてマンガンイオンを結
合させた陽イオン交換樹脂を酸化処理する。酸化処理方
法としては、過酸化水素、次亜塩素酸ソーダ等の酸化剤
を用いる方法、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の
アルカリ剤でpHを7以上に調整した水溶液中で、空気
攪拌する方法があげられるが、pH7以上の水溶液中で
空気攪拌する方法は高価な酸化剤を使用しないため吸着
剤を安価に製造できることから好ましい。空気攪拌のと
きの水溶液のpHとしては7以上であることが好まし
く、pH9〜13であることがより好ましい。また、水
溶液の量としては、特に限定されるものではないが、水
溶液中で樹脂が流動するだけの量であることが好まし
い。また、空気攪拌の時間としては30分以上であるこ
とが好ましく、100〜500分であることがより好ま
しい。
【0015】この酸化処理によって、優れたラジウム吸
着性能を持つこ出願の発明のラジウム吸着剤が提供さ
る。さらに、この出願の発明においては、陽イオン交
換樹脂にマンガンイオンを結合させる際に使用するマン
ガン化合物の量を複数に分け、陽イオン交換樹脂へのマ
ンガンイオン含有水溶液の接触と、酸化処理とを複数
回行ってもよく、これによって、吸着剤中のマンガンの
量を増加させることができる。
【0016】以上のようにして得られた吸着剤は、ラジ
ウムに対して高い選択吸着能を有しているので、通常の
イオン交換樹脂と同様にラジウムを含む水溶液と接触さ
せることによりラジウムを0.037Bq/l以下まで
容易に吸着除去できる。ラジウムを含む水溶液と接触さ
せる方法としては、バッチ法、カラム法のいずれの方法
を用いてもよく、カラム法で行う場合、通液速度として
は、空間速度が5〜80hr-1であることが好ましく、
10〜50hr-1であることがより好ましい。また、接
触時の温度としては、5〜50℃であることが好まし
く、10〜30℃であることがより好ましい。
【0017】以下、実施例を示し、この例に沿って、こ
出願の発明の実施の形態についてさらに詳しく説明す
る。
【0018】
【実施例】実施例1〜2 イオン交換基の末端がナトリウム型の強酸性イオン交換
樹脂SK−104(三菱化学製)(樹脂1:実施例1)
並びにキレート樹脂TP−207(バイエル製)(樹脂
2:実施例2)の各々600mlを水とともに内径が3
0mmφのガラス製のカラムに充填し、160g/lの
MnSO4 ・5H2 O水溶液1800mlを400ml
/分で20時間循環して樹脂にマンガンイオンを結合さ
せた。この樹脂をイオン交換水18lで水洗した後、1
60g/lのNaOH水溶液300mlをカラムに投入
し、0.35Nl/分で6時間空気攪拌した。この樹脂
をイオン交換水18lで水洗し、ラジウム吸着剤を得
た。 <A>原子吸光光度法による吸着剤のマンガン量の測定 この2種の吸着剤をJIS KO102.5.4の硫酸
と硝酸とによる分解法に準じて湿式分解後、原子吸光光
度法にてマンガン濃度を測定し、マンガン含有量を求め
たところ、強酸性イオン交換樹脂SK−104(樹脂
1)を用いた吸着剤は12wt%(乾燥した吸着剤中の
マンガン量)であり、一方、キレート樹脂TP−207
(樹脂2)を用いた吸着剤は13wt%であった。 <B>エマネーション法によるラジウム濃度の測定 次に、上記吸着剤の各々300mlを内径が20mmφ
のガラス製のカラムに充填し、このカラムにpHが6.
5、 226Ra濃度が5Bq/ml、NaCl及びCaC
2 を各々150mg/l含有する液を流量200ml
/分で下降流で125時間通液し、その間、処理水を2
5時間毎に採取してラジウム濃度をエマネーション法で
測定した。その結果を表1に示した。
【0019】
【表1】
【0020】表1の結果から、NaCl、CaCl2
共存するラジウム排水を、空間速度(SV)40hr-1
の通液条件下で処理しても、樹脂1吸着剤は100h、
樹脂2吸着剤は75hまでの処理水のラジウム濃度は
0.035Bq/l以下であり、地元との安全協定の
0.037Bq/l以下の厳しい規制値を満足できるこ
とがわかる。 <C>空気攪拌により吸着剤から分離したマンガン濃度
の測定 また、上記吸着剤の各々300mlを水とともに内径が
30mmφのガラス製のカラムに充填し、0.35Nl
/分で2時間空気逆洗した後、カラムから取り出し、6
0メッシュの篩で吸着剤を分離した液のマンガン濃度を
原子吸光光度法で測定した。その結果、両吸着剤とも分
離した液からマンガンは検出されなかった。この結果か
ら、吸着剤中のマンガンは空気逆洗等の物理的な作用に
対して安定であることが確認できた。実施例3 実施例1と同じ方法で強酸性イオン交換樹脂SK−10
4にマンガンイオンを結合させ、水洗した後、2lのビ
ーカーに移し、160g/lの苛性ソーダ液300ml
と酸化剤として300g/lの過酸化水素水60mlを
加えて2時間攪拌した。この樹脂をイオン交換水600
mlで30回水洗し、ラジウム吸着剤を得た。この吸着
剤のラジウム吸着性能を実施例1と同様にして測定し
た。その結果を表2に示した。
【0021】
【表2】
【0022】表2に示した結果から、酸化処理を過酸化
水素で行った吸着剤は、空気で酸化処理した吸着剤と同
様に、ラジウムを良好に吸着することが確認できた。比較例1 実施例1と同じ方法で強酸性イオン交換樹脂SK−10
4にマンガンイオンを結合させ、水洗した後、160g
/lのNaOH水溶液300ml/分で下降流で2時間
循環させた。この樹脂をイオン交換水18lで水洗し、
ラジウム吸着剤を得た。この吸着剤のラジウム吸着性能
を実施例1と同様にして測定した。その結果を表3に示
した。
【0023】
【表3】
【0024】表3に示した結果から、酸化処理を行って
いない吸着剤は、ラジウムの吸着性能が十分ではなく、
原子力規制法で規定されている3.0Bq/l以下は満
足したものの、通液初期から地元との安全協定の0.0
37Bq/l以上のラジウムが漏洩した。
【0025】
【発明の効果】以上詳しく説明したように、この出願の
発明のラジウム吸着剤は、ラジウムに対する選択吸着能
が高く、空気逆洗等の物理的な作用に対しても安定であ
るため、ラジウム含有水の処理に有用である。また、こ
出願の発明のラジウム吸着剤の製造方法よって、原料
に安価なマンガン化合物を使用することから、ラジウム
吸着剤を安価に製造することが可能である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 滝 富弘 岡山県苫田郡上斎原村1550 動力炉・核 燃料開発事業団人形峠事業所内 (56)参考文献 特開 昭63−100936(JP,A) 特開 昭48−78767(JP,A) 特開 昭62−184396(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B01J 20/00 - 20/34 G21F 9/12 C02F 1/28 B01D 15/04

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 陽イオン交換樹脂に、酸化処理された
    ンガンが結ていることを特徴とするラジウム吸着
    剤。
  2. 【請求項2】 酸化処理されたマンガンは、マンガンの
    水酸化物または水和酸化物である請求項1記載のラジウ
    ム吸着剤。
  3. 【請求項3】 マンガンイオンを含む水溶液を陽イオン
    交換樹脂に接触させ、次いでマンガンを酸化処理して、
    請求項1または2記載のラジウム吸着剤を製造すること
    を特徴とするラジウム吸着剤の製造方法。
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