JP2920502B2 - 偏光回転を用いた光検出方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、微弱な光を高い
精度で検出するための光検出方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来から、直線偏光をした光の偏光面を
回転させる方法として、図３に示すように、半波長板を
面の中心を回転軸として回転させ、直線偏光をした光を
前記回転軸に沿って半波長板に入射させることが行なわ
れてきた。このとき、半波長板を角速度ωで連続して回
転させた場合には、出射光の偏光方向は2ωの角速度で
同方向に回転する。偏光面が回転している光を偏光板や
偏光ビームスプリッタ等の偏光子に透過させると、透過
光の強度は回転角によって正弦波状に変化する。一方、
光の同期検波は、光の検出感度を向上させるために、光
検出器に入射する光の強度を何らかの方法で周期的に変
化させて、その周波数の信号についての同期検波を行な
い、不要な周波数帯域の雑音を除去する測定方法であ
る。その一例を図４に示す。通常、光の周期的な強度変
化には一定間隔に羽が取付けられた光チョッパー２を回
転させる装置が用いられ、同期検波は、光チョッパー２
から参照信号５と、光検出器３からの出力をロックイン
アンプ４に入力して行なわれる。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかし、従来からの光
の同期検波では、測定したい光以外の光である背景光が
存在している場合には、背景光にも光チョッパー２にお
いて同じ周期の強度変化が与えられるために、背景光強
度が被測定光強度に比して無視できない場合には、測定
の精度が低下してしまう。すなわち解決しようとする問
題点は、直線偏光をしている光の検出において、検出の
感度を向上させるとともに背景光の影響を低減させる点
にある。そこで、本発明は、背景光の存在する場合にお
いて、微弱な光波を高感度に検出する、偏光回転を用い
た光検出方法の提供を目的とするものである。

【０００４】

【課題を解決するための手段】直線偏光をしている光に
対して偏光を利用して強度変化を与え、それに対して同
期検波をすることによって、検出感度の向上と背景光の
除去を両立させて光検出をすることができる。すなわ
ち、直線偏光をしている光に対して偏光方向を回転さ
せ、その光に対して偏光ビームスプリッターによって光
強度の周期的な変化を取りだし、光検出器で電気信号に
変換した後、ロックインアンプを用いて偏光方向の回転
に同期した信号で同期検波を行なう。

【０００５】

【発明の実施の形態】次に、本発明の光検出方法に係る
偏光回転を用いた光検出装置の一実施形態を、添付図面
に基づいて説明する。本発明の偏光回転を用いた光検出
装置は、図１に示すように、偏光方向６の方向に直線偏
光をしている被測定光１に対して、半波長板７を光の伝
搬方向を回転軸として回転させる半波長板回転装置８
と、該半波長板回転装置８を透過した光を偏光ビームス
プリッター９と光検出器３で電気信号に変換し、その出
力と半波長板回転装置８から出力される参照信号５をロ
ックインアンプ４に入力することによって構成される。

【０００７】図１にはキュウブ型の偏光ビームスプリッ
タ９を示してあるが、ここでは、入射光と４５度の角度
をなしている面において、偏光によって光の反射か透過
が発生する。そして偏光ビームスプリッタ９での入射光
と反射光を面内に含む入射の面に対して、垂直な偏光方
向の光は反射し、平行な偏光方向の光は透過する。半波
長板回転装置８を透過した光は偏光面が回転しているた
め、偏光ビームスプリッタ９の透過光の強度Ptは、偏光
面の回転周期の２倍の周期で図２のような時間変化をし
ており、下記の数式１で表すことができる。

【０００８】

【数１】

【０００９】ここで、時間をt、半波長板７の回転周期
をT、被測定光１の強度をPとし、半波長板７と偏光ビー
ムスプリッタ９での透過損失は考慮していない。このよ
うに、光の強度変化の周期は、波長板の回転周期の４分
の１となり、回転速度を変化させることにより、光強度
変化の周波数を可変することができる。

【００１０】そして、光検出器３の出力をロックインア
ンプ４に入力し、参照信号５を半波長板回転装置８から
取り出して同期検波を行なう。ロックインアンプ４で
は、入力信号の中で参照信号５と同位相の成分で、か
つ、ロックインアンプ４の時定数で定められる周波数帯
域幅の信号が出力される。そのため、ロックインアンプ
４からは、光検出器３の出力の中で、半波長板７の回転
による4/T[Hz]の周波数の信号を検出し、他の周波数帯
の雑音を除去することができる。

【００１１】光の検出における背景光としては、照明の
光や太陽などの天体からの光などが存在し、その偏光状
態はランダムとなものと考えられる。ランダム偏光の光
を、回転している半波長板７を透過させても偏光状態は
ランダムのままで、その光を偏光ビームスプリッタ９を
通過させると、透過光と反射光は２分１ずつの等しい強
度となる。そのため、光検出器３からの出力のうちで背
景光による成分は、半波長板７の回転によって周期的な
強度変化を生ぜずに、背景光自体の強度変化だけとな
る。従って、同期検波によって、背景光の影響を低減す
ることができる。

【００１２】この偏光回転を用いた光検出装置の実際の
用途としては、例えば、空間光通信での追尾用のビーコ
ン光の検出を挙げられる。光源にはレーザーを用いるた
め、直線偏光の光の検出であり、偏光回転を用いた光検
出装置の適用が可能である。この場合、通信する相手の
装置との距離が長いため、光は微弱になり、光検出の感
度を上げるために、同期検波の適用が必要となる。しか
も、背景光となる天体や照明からの光のが存在し、本発
明の光検出方法が有効となる。

【００１３】本発明では、直線偏光の被測定光１を対象
としたが、直線偏光ではなく楕円偏光の光の測定をする
場合には、半波長板回転装置８に入射させる前に、４分
の１波長板を透過させて直線偏光に変換することによっ
て、直線偏光の場合と同様に本発明が適用できる。

【００１４】なお、本実施形態では、偏光を回転させる
方法として半波長板７の回転を用いる例を述べたが、こ
れ以外の光の偏光の状態を変化させる方法として、電気
光学効果を用いる方法が考えられる。この方法には、偏
光方向の変化の速度が早い利点があるが、入射する光の
偏光方向を電気光学効果を発生させる光学結晶の光軸に
対して正確に合せる必要性があり、また、有効な光のビ
ーム径が波長板回転の方法に比べて小さい、透過率が波
長板に比して低い等のという問題点がある。また、液晶
板のによる偏光の制御を用いた方法については大きな有
効径が取れるが、透過率が低い点と、強度変化の周波数
が低い点が問題点となっている。

【００１５】

【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る偏光
回転を用いた光検出方法によれば、背景光の存在する場
合において、同期検波を行なうことによって微弱な光波
を高感度に検出することができる。その他の効果とし
て、光チョッパー回転による同期検波においては、光チ
ョッパーの羽を通過した光だけを用いていたが、本発明
の偏光回転を用いた光検出装置においては、偏光ビーム
スプリッターで反射された光を、例えば、カメラなどで
受光し２次元の位置情報を得ることに利用することがで
きる。

【図面の簡単な説明】

【図１】偏光回転を用いた光検出装置の概略構成図であ
る。

【図２】偏光ビームスプリッターからの透過光強度の時
間変化を表した特性図である。

【図３】従来からの、半波長板の回転による偏光方向の
回転の原理図である。

【図４】従来からの、光チョッパーを用いた同期検波の
説明図である。

【符号の説明】

１ 被測定光 ２ 光チョッパー ３ 光検出器 ４ ロックインアンプ ５ 参照信号 ６ 偏光方向 ７ 半波長板 ８ 半波長板回転装置 ９ 偏光ビームスプリッター ω 半波長板の回転角速度 t 時間 T 半波長板回転装置の回転周期 P 被測定光の強度 Pt 偏光ビームスプリッターの透過光の強度

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 直線偏光をしている光に対して偏光方向
   が回転している光波を作り出し、この光波を偏光ビーム
   スプリッターに透過させて光強度を変化させた後に、光
   検出器で電気信号に変換し、ロックインアンプを用いて
   上記偏光方向の回転に基づく信号により同期検波を行な
   うことを特徴とする偏光回転を用いた光検出方法。