以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る光学解析モジュール及び光学解析装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
[光学解析装置の構成]
図1は、光学解析モジュールを用いて構成された光学解析装置の一例を示す概略図である。光学解析装置1は、被測定物Sの光学パラメータを解析する装置として構成されている。被測定物Sは、例えば複屈折材料等の光学的な異方性を有する物質であり、解析対象となる光学パラメータとしては、例えば被測定物Sの光学軸の方位角、屈折率、吸光係数、誘電率等が挙げられる。
光学解析装置1は、図1に示すように、光源2と、テラヘルツ波発生モジュール10と、テラヘルツ波検出部30と、第1の光検出部34Aと、第2の光検出部34Bと、信号生成部17と、電場ベクトル計測部40と、光学パラメータ解析部50とを含んで構成されている。電場ベクトル計測部40には、差分検出部41が含まれている(図4参照)。光学解析モジュール20は、これらの構成のうち、テラヘルツ波発生モジュール10と、テラヘルツ波検出部30と、第1の光検出部34Aと、第2の光検出部34Bと、信号生成部17と、差分検出部41とによって構成されている。
光源2は、レーザ光Lを出力する装置である。本実施形態では、光源2は、フェムト秒レーザ光源であり、例えば波長800nm、パルス幅100fs、繰り返し周波数100MHz、平均出力500mWのレーザ光Lを出力する。光源2から出力されたレーザ光Lは、ビームスプリッタ3によってポンプ光Laとプローブ光Lbとに分岐される。
ビームスプリッタ3によって分岐したポンプ光Laの光路上には、遅延ステージ6と、ミラー8とが配置されている。遅延ステージ6は、ビームスプリッタ3で分岐したポンプ光Laの光軸方向に往復動可能なステージ6aと、ポンプ光Laを折り返す一対のミラー6b,6cとを有している。ポンプ光Laは、遅延ステージ6によってプローブ光Lbに対する所定の遅延を与えられ、ミラー8によってテラヘルツ波発生モジュール10に導光される。本実施形態では、テラヘルツ波発生モジュール10に入射するポンプ光Laの偏光状態は、水平方向を基準偏光方向(0°)とする直線偏光となっている。
図2は、テラヘルツ波発生モジュール10の構成の一例を示す概略図である。同図に示すように、テラヘルツ波発生モジュール10は、光チョッパ(入力切替部)11と、λ/2波長板12と、ポッケルスセル(偏光切替部)13と、λ/4波長板14と、テラヘルツ波発生部15と、テラヘルツ波長板16とによって構成されている。
光チョッパ11は、テラヘルツ波発生部15に向かうポンプ光Laのオン/オフを周期的に切り替える部材である。光チョッパ11は、光を遮蔽するリブが所定の位相角をもって中心から放射状に設けられた円板状の部材である(図15参照)。光チョッパ11の回転によってポンプ光Laのオン/オフが周期的に切り替えられることにより、テラヘルツ波発生部15におけるテラヘルツ波Tの発生の有無が周期的に切り替えられる。光チョッパ11の回転駆動は、信号生成部17で生成される第1の周波数信号F1によって制御される。
また、本実施形態では、光チョッパ11の前後に集光レンズ(光学素子)18及びコリメートレンズ19が配置されている。これにより、ポンプ光Laは、集光レンズ18によって光チョッパ11の位置に集光され、光チョッパ11を通過した後にコリメートレンズ19によって平行光化される。平行光化されたポンプ光Laは、λ/2波長板12を経てポッケルスセル13に入射する。
ポッケルスセル13は、電気光学効果によってポンプ光Laの偏光状態を制御する素子である。ポッケルスセル13には、セルドライバ(不図示)が電気的に接続されており、セルドライバからの印加電圧に応じてポンプ光Laの偏光状態が制御される。ポッケルスセル13の結晶軸の方向は、ポンプ光Laの基準偏光方向と一致している。ポッケルスセル13は、セルドライバから電圧が印加されている期間ではλ/4波長板として機能する。
一方、ポッケルスセル13は、セルドライバから電圧が印加されていない期間ではλ/4波長板として機能せず、入射したポンプ光Laの偏光状態を維持する。これにより、テラヘルツ波発生モジュール10から出力されるテラヘルツ波Tの偏光状態が第1の偏光状態と第2の偏光状態との間で周期的に切り替えられる。セルドライバの駆動は、信号生成部17で生成される第2の周波数信号F2によって制御される。
テラヘルツ波発生部15は、ポンプ光Laの入射によってテラヘルツ波Tを発生させる部分である。テラヘルツ波発生部15は、例えば光学的等方媒質であるZnTeの(111)面を切り出した非線形光学結晶によって構成されている。当該結晶から発生するテラヘルツ波Tのパルス幅は、一般的には数ps程度であり、0.1THz~3THz程度の帯域の周波数成分を含んでいる。
非線形光学結晶の結晶軸と入射したポンプ光Laの偏光方向とが一致する場合には、テラヘルツ波発生部15で発生するテラヘルツ波Tの偏光方向は、入射したポンプ光Laの偏光方向と一致する。一方、非線形光学結晶の結晶軸と入射したポンプ光Laの偏光方向とがθだけずれている場合には、テラヘルツ波発生部15で発生するテラヘルツ波Tの偏光方向の角度は、入射したポンプ光Laの偏光方向に対して-2θだけ傾く。
以上のような構成を有するテラヘルツ波発生モジュール10では、0°の直線偏光であるポンプ光Laがλ/2波長板12によって45°の直線偏光に変換され、ポッケルスセル13によって左回りの円偏光又は45°の直線偏光に周期的に変換される。λ/4波長板14は、ポンプ光Laの偏光状態が左回りの円偏光である場合には、0°の直線偏光に変換し、45°の直線偏光である場合には、偏光状態を維持する。
テラヘルツ波発生部15では、0°の直線偏光のポンプ光Laが入射した場合には、0°の直線偏光のテラヘルツ波Tが発生し、45°の直線偏光のポンプ光Laが入射した場合には、-90°の直線偏光のテラヘルツ波Tが発生する。テラヘルツ波長板16は、テラヘルツ波Tに対して適用可能なλ/4波長板であり、テラヘルツ波Tの偏光状態が0°の直線偏光である場合には、右回りの円偏光(第1の偏光状態)に変換し、-90°の直線偏光である場合には、左回りの円偏光(第2の偏光状態)に変換する。
図1に戻り、テラヘルツ波発生モジュール10から出力されるテラヘルツ波Tの光路上には、被測定物Sが配置される配置部21と、テラヘルツ波検出部30とが配置されている。配置部21は、ホルダ等によって構成され、例えば被測定物Sの厚さ方向がテラヘルツ波Tの伝播方向に一致するように被測定物Sを保持する。
テラヘルツ波検出部30は、テラヘルツ波Tを検出する部分である。テラヘルツ波検出部30は、テラヘルツ波発生部15と同様に、光学的等方媒質であるZnTeの(111)面を切り出した非線形光学結晶によって構成されている。テラヘルツ波検出部30の一方面は、テラヘルツ波Tが入射する入射面となっている。当該一方面には、テラヘルツ波Tを透過し、かつプローブ光Lbを反射する反射コーティングが施されている。また、テラヘルツ波検出部30の他方面は、プローブ光Lbが入射する入射面となっている。当該他方面には、プローブ光Lbの反射を抑制する反射防止コーティングが施されている。
図3は、テラヘルツ波検出部におけるテラヘルツ波Tの電場ベクトルを示す図である。同図に示すように、テラヘルツ波Tの電場ベクトルETは、振幅|ET|と、方位θTとによって表される。方位θTは、ZnTeの(111)面における<-211>方向を0°とし、これを基準として<0-11>方向を正方向としている。<-211>方向に対するテラヘルツ波Tの電場の傾きが2θである場合、複屈折は-θ方向に誘起される。テラヘルツ波Tの強さに応じて誘起される複屈折の大きさは、方向によらず一定となる。
ビームスプリッタ3によって分岐したプローブ光Lbの光路上には、ミラー9と、偏光調整部32とが配置されている。偏光調整部32は、例えば偏光子36と、λ/4波長板37とによって構成されている。ミラー9を経て偏光調整部32に導光されたプローブ光Lbは、偏光子36によって所定方向の直線偏光となり、さらに、λ/4波長板37によって円偏光に変換される。
偏光調整部32を経たプローブ光Lbは、無偏光ビームスプリッタ38により、偏光状態を維持したまま分岐される。無偏光ビームスプリッタ38で分岐した一方のプローブ光Lbは、テラヘルツ波検出部30に入射し、テラヘルツ波Tをプローブする。テラヘルツ波Tをプローブした後、プローブ光Lbは、無偏光ビームスプリッタ38を通過し、回転検光子39に入射する。回転検光子39は、モータ等により検光子が面内で回転する素子である。回転検光子39は、例えば20Hz~100Hz程度の所定の周波数で検光子を回転させ、入射するプローブ光Lbを変調する。回転検光子39からは、プローブ光Lbの内の特定の直線偏光成分のみが出力し、第1の光検出部34Aに入射する。
なお、無偏光ビームスプリッタ38で生じる戻り光は、λ/4波長板37によって直線偏光に近い楕円偏光となり、その大部分は偏光子36でカットされる。また、無偏光ビームスプリッタ38で分岐した他方のプローブ光Lbは、テラヘルツ波検出部30を経由せずに第2の光検出部34Bに入射する。
第1の光検出部34A及び第2の光検出部34Bは、例えばフォトダイオードによって構成されている。第1の光検出部34Aは、テラヘルツ波検出部30においてテラヘルツ波Tをプローブしたプローブ光Lbを検出し、検出結果に基づく第1の解析信号D1を電場ベクトル計測部40に出力する。第1の解析信号D1には、プローブ光Lbの強度に基づく信号、第1の偏光状態のテラヘルツ波Tの強度に基づく信号、第2の偏光状態のテラヘルツ波Tの強度に基づく信号が含まれる。
第2の光検出部34Bは、プローブ光Lbのパワー変動のモニタリングに用いられる検出部であり、テラヘルツ波検出部30に向かわないプローブ光Lbを検出し、検出結果に基づく第2の解析信号D2を電場ベクトル計測部40に出力する。第2の解析信号D2には、プローブ光Lbの強度に基づく信号のみが含まれる。
信号生成部17は、テラヘルツ波発生モジュール10で用いられる周波数信号、及び電場ベクトル計測部40で用いられる参照信号を生成する部分である。具体的には、信号生成部17は、光チョッパ11に出力する第1の周波数信号F1と、ポッケルスセル13のドライバに出力する第2の周波数信号F2とを生成する。また、信号生成部17は、第1のロックイン検出部45Aに出力する第1の参照信号R1と、第1のロックイン検出部45Bに出力する第2の参照信号R2とを生成する。これらの信号の詳細は後述する。
電場ベクトル計測部40は、テラヘルツ波Tの電場ベクトルを計測する部分である。電場ベクトル計測部40は、図4に示すように、差分検出部41と、前段の第1のロックイン検出部45A,45Bと、後段の第2のロックイン検出部46A,46Bと、信号処理部47とを備えている。
差分検出部41は、第1の光検出部34Aから出力される第1の解析信号D1と、第2の光検出部34Bから出力される第2の解析信号D2との差分を検出する部分である。差分検出部41は、第1の解析信号D1と第2の解析信号D2との差分に基づく差分信号Eを第1のロックイン検出部45A,45Bにそれぞれ出力する。差分検出を行うことにより、プローブ光Lbの強度変動成分が除去される。差分検出を行うにあたっては、テラヘルツ波Tが入射しない状態で差分検出部41の差分信号Eの強度がゼロとなるように、第1の光検出部34A及び第2の光検出部34Bの感度調整がなされていることが好ましい。
第1のロックイン検出部45A,45Bは、差分信号Eに対する前段のロックイン検出を行う部分である。第1のロックイン検出部45Aは、信号生成部17で生成される第1の参照信号R1を参照し、差分信号Eに含まれる信号のうち、第1の偏光状態のテラヘルツ波Tの強度に基づく信号のみをロックイン検出し、検出結果に基づく第1の検出信号K1を第2のロックイン検出部46Aに出力する。第1のロックイン検出部45Bは、信号生成部17で生成される第2の参照信号R2を参照し、差分信号Eに含まれる信号のうち、第2の偏光状態のテラヘルツ波Tの強度に基づく信号のみをロックイン検出し、検出結果に基づく第2の検出信号K2を第2のロックイン検出部46Bに出力する。
第2のロックイン検出部46A,46Bは、差分信号Eに対する後段のロックイン検出を行う部分である。第2のロックイン検出部46A,46Bは、例えば2位相ロックイン検出器であり、参照信号の周波数に同期して変化する信号の振幅と位相とを同時に検出する機能を有している。第2のロックイン検出部46Aは、回転検光子39の回転周波数の2倍の周波数を参照信号とし、第1のロックイン検出部45Aから出力される第1の検出信号K1をロックイン検出する。第2のロックイン検出部46Aは、ロックイン検出後の第1の検出信号K1を信号処理部47に出力する。また、第2のロックイン検出部46Bは、回転検光子39の回転周波数の2倍の周波数を参照信号とし、第2のロックイン検出部46Bから出力される第2の検出信号K2をロックイン検出する。第2のロックイン検出部46Bは、ロックイン検出後の第2の検出信号K2を信号処理部47に出力する。
なお、第1のロックイン検出部45A,45B、及び、第2のロックイン検出部46A,46Bは、独立したロックイン検出器によって構成されていてもよいが、例えばFPGA(field-programmable gate array)により構成されてもよく、コンピュータ上のソフトウェアとしてプログラムにより構成されてもよい。
信号処理部47は、第2のロックイン検出部46Aからの第1の検出信号K1及び第2のロックイン検出部46Bからの第2の検出信号K2に基づいて、テラヘルツ波Tの電場ベクトルを検出する部分である。信号処理部47は、物理的には、CPU、メモリ、通信インタフェイス等を備えたコンピュータシステムによって構成されている。信号処理部47における電場ベクトルの検出方法について、以下に説明する。
検出信号K1,K2に含まれる振幅A
L及び位相φ
Lと、テラヘルツ波Tの電場ベクトルの振幅|E
T|及び方位θ
Tとの間には、下記の関係が成り立つ。下記式におけるA
Cは、テラヘルツ波検出部30として用いる電気光学結晶の非線形光学定数及び厚さ、プローブ光Lbの波長などに基づいて決定される定数である。テラヘルツ波Tの電場ベクトルは、下記式を用いることにより、第2のロックイン検出部46A,46Bからの検出結果に基づいて一意に決定できる。
なお、テラヘルツ波Tの電場ベクトルの振幅が十分に小さい場合には、下記式が成立する。この場合には、検出信号に含まれる振幅A
Lがそのままテラヘルツ波Tの電場ベクトルの振幅|E
T|と見做される。
また、2位相ロックイン検出器は、参照信号の位相に従ってA
Lcosφ
LとA
Lsinφ
Lとをそれぞれ出力できる。テラヘルツ波Tの電場ベクトルの振幅が十分に小さい場合、これらの出力とテラヘルツ波Tの電場ベクトルにおける互いに直交する2つの軸方向の成分との間には、下記式が成立する。したがって、第2のロックイン検出部46A,46Bからの2つの出力に基づいて、テラヘルツ波Tの電場ベクトルにおける互いに直交する2つの軸方向の成分に比例する信号E
Tx,E
Tyが得られることとなる。本実施形態では、例えばE
Txが水平方向を軸方向としており、E
Tyが垂直方向を軸方向としている。
光学パラメータ解析部50は、検出された電場ベクトルに基づいて被測定物Sの光学パラメータを解析する部分である。光学パラメータ解析部50は、物理的には、CPU、メモリ、通信インタフェイス等を備えたコンピュータシステムによって構成されている。光学パラメータ解析部50は、電場ベクトル計測部40と同一のコンピュータシステムによって構成されていてもよい。光学パラメータ解析部50は、光学パラメータの解析を電場ベクトルの検出に後続して実行してもよく、検出された電場ベクトルのデータをメモリ等に一旦保存し、任意のタイミングで実行してもよい。
光学パラメータ解析部50は、第1の偏光状態におけるテラヘルツ波Tの第1の電場ベクトルと回転行列との積をフーリエ変換して得られるスペクトルデータに基づいて第1の解析データを取得する。また、光学パラメータ解析部50は、第2の偏光状態におけるテラヘルツ波Tの第2の電場ベクトルと回転行列との積をフーリエ変換して得られるスペクトルデータに基づいて第2の解析データを取得する。そして、光学パラメータ解析部50は、第1の解析データと第2の解析データとの交点に基づいて被測定物Sの光学パラメータを決定する。
上述したとおり、電場ベクトル計測部40では、テラヘルツ波Tの電場ベクトルにおいて互いに直交する2つの軸方向の成分に比例する信号E
Tx,E
Tyが得られる。すなわち、電場ベクトルEは、以下の式によって表される。
光学パラメータ解析部50は、以下の式に示すように、電場ベクトルEに回転行列を乗ずることにより、元の基準軸から任意の解析角度θだけ傾斜した軸における電場ベクトルE’を取得する。本実施形態では、解析角度θが0°~180°の範囲で設定されており、当該範囲内において任意の角度刻みで電場ベクトルE’を取得する。電場ベクトルE’では、信号E
Txの軸から角度θだけ傾斜した軸における電場ベクトルEの成分をE
Tx’として取得し、信号E
Tyの軸から角度θだけ傾斜した軸における電場ベクトルEの成分をE
Ty’として取得する。
次に、光学パラメータ解析部50は、電場ベクトルE’が取得されたそれぞれの解析角度θにおいて、被測定物Sに対する透過計測の解析を実行し、所望の光学パラメータを導出する。透過計測では、配置部21に被測定物Sが配置されていない状態で計測された電場ベクトルをリファレンス計測結果とし、配置部21に被測定物Sが配置された状態で計測された電場ベクトルをサンプル計測結果とする。
例えば屈折率実部を求める場合、リファレンス計測結果及びサンプル計測結果で取得された電場ベクトルE’のETx’成分をフーリエ変換してスペクトルデータを求める。そして、スペクトルデータの位相成分におけるサンプル計測結果とリファレンス計測結果との差、及び被測定物Sの厚さに基づいて、それぞれの解析角度θと屈折率実部との関係を示す解析データを取得する。解析データは、第1の偏光状態におけるテラヘルツ波Tに基づく第1の解析データと、第2の偏光状態におけるテラヘルツ波Tに基づく第2の解析データとを含む。なお、被測定物Sについて、直交する二軸(遅相軸及び進相軸)の差(例えば屈折率差)のみを取得したい場合には、リファレンス計測は不要である。この場合、サンプル計測のみを実行すればよい。
図5及び図6は、光学パラメータ解析部での解析データの一例を示す図である。この例では、電場ベクトル計測部40によって計測された電場ベクトルEの軸から光学軸が20°傾いた状態で配置された被測定物Sを測定したときの解析データを示している。すなわち、この被測定物Sは、基準となる信号ETxが得られる軸を0°として、20°の位置に遅相軸を有し、110°の位置に進相軸を有している。遅相軸における屈折率実部の値はno=2.4であり、進相軸における屈折率実部の値はne=2.0となっている。
図5は、第1の偏光状態のテラヘルツ波Tを用いて計測された第1の解析データを示すグラフである。また、図6は、第2の偏光状態のテラヘルツ波Tを用いて計測された第2の解析データを示すグラフである。具体的には、図5は、右回りの円偏光のテラヘルツ波Tによる解析データであり、図6は、左回りの円偏光のテラヘルツ波Tによる解析データである。いずれのグラフにおいても横軸が解析角度θであり、縦軸が算出された屈折率実部の値である。
図7は、第1の解析データを示すグラフと第2の解析データを示すグラフとを重ね合わせたものである。図7に示されるように、2つのグラフは、解析角度θが20°の位置と110°の位置との2か所で交差している。光学パラメータ解析部50は、第1の解析データを示すグラフと第2の解析データを示すグラフとの交点を特定し、光学パラメータを導出する。すなわち、上記の例では、光学パラメータ解析部50は、遅相軸及び進相軸の位置として交点における方位角である20°及び110°をそれぞれ導出する。また、光学パラメータ解析部50は、屈折率実部の値として、一方の交点である20°における屈折率実部の値2.4と、他方の交点である110°における屈折率実部の値2.0とを導出する。
また、本実施形態では、被測定物Sに入射されるテラヘルツ波Tが少なくとも1~2THzの帯域の周波数成分を含んでいる。そこで、光学パラメータ解析部50では、異なる周波数成分に対してそれぞれ第1の解析データ及び第2の解析データを導出してもよい。この場合、光学パラメータ解析部50は、それぞれの周波数成分における光学パラメータを導出することができる。図8は、1THz~2THzの周波数帯において導出された一方の光学軸の方位をプロットしたグラフである。光学パラメータ解析部50では、各周波数成分で求められた方位の平均の値を算出して、光学軸の方位の値を決定できる。
[信号処理の第1実施形態]
続いて、上述した光学解析装置1における信号処理について更に詳細に説明する。
図9は、光学解析装置1における理想的な信号処理を示す図である。図9(a)には、第1の光検出部34Aでの第1の解析信号D1及び第2の光検出部34Bでの第2の解析信号D2を示す。第1の解析信号D1には、テラへルツ波Tのプローブ結果が含まれるため、右回りの円偏光のテラヘルツ波Tによる信号成分SAと、左回りの円偏光のテラヘルツ波Tによる信号成分SBとが交互に出現する。また、第2の解析信号D2には、テラヘルツ波Tでのプローブ結果が含まれないため、プローブ光Lbの強度に基づく信号成分S0のみが含まれる。信号成分SAから信号成分S0を差分した値A、及び信号成分SBから信号成分S0を差分した値Bが電場ベクトル計測部40で用いられるべき理想的な信号成分である。
図9(b)には、第1の解析信号D1と第2の解析信号D2との差分信号Eを示す。差分信号Eには、信号成分SAから信号成分S0を差分した信号成分と、信号成分SBから信号成分S0を差分した信号成分とが交互に出現する。図9(c)には、ロックイン検出に用いる第1の参照信号R1及び第2の参照信号R2を示す。第1の参照信号R1と第2の参照信号R2とは、1と0とが同周期で互いに反転する信号となっている。図9(d)には、ロックイン検出後の第1の検出信号K1及び第2の検出信号K2を示す。第1の参照信号R1によって差分信号Eのロックイン検出を行うことで、第1の検出信号K1には、信号成分SAから信号成分S0を差分した値Aが周期的に出現する。また、第2の参照信号R2によって差分信号Eのロックイン検出を行うことで、第2の検出信号K2には、信号成分SBから信号成分S0を差分した値Bが周期的に出現する。
一方、図10は、光学解析装置1における現実的な信号処理を示す図である。光学解析装置1においては、偏光状態の揺らぎやポインティングのずれ等に起因するプローブ光Lbの経時的な変化や、感度のドリフトに起因する第1の光検出部34A及び第2の光検出部34Bの出力の経時的な変化(以下、「プローブ光Lbの偏光状態の経時的な変化等」と称す)に起因し、図10(a)に示すように、プローブ光Lbの強度に基づく信号成分S0が経時的に信号成分Scに変動してしまうことが考えられる。信号成分S0に対する信号成分Scの変動値をCとすると、図10(b)に示す差分信号Eには、信号成分SAに信号成分S0の変動値Cを加味した信号成分SA’と、信号成分SBに信号成分S0の変動値Cを加味した信号成分SB’とが交互に出現する。この差分信号Eに対して図10(c)に示す第1の参照信号R1及び第2の参照信号R2(いずれも図9(c)と同一)を用いてロックイン検出した場合、レーザ光Lの強度の揺らぎに起因する信号成分はキャンセルされ得るが、プローブ光Lbの偏光状態の経時的な変化等に起因する信号成分はキャンセルされない。このため、図10(d)に示すように、第1の検出信号K1には、信号成分SAから信号成分S0を差分した値Aに変動値Cを加味した信号成分SA’が周期的に出現し、第2の検出信号K2には、信号成分SBから信号成分S0を差分した値Bに変動値Cを加味した信号成分SB’が周期的に出現することとなる。
これに対し、光学解析装置1では、信号生成部17において、第1の周波数信号F1、第2の周波数信号F2、第1の参照信号R1、及び第2の参照信号R2を以下のように生成する。図11は、光学解析装置1における信号処理の第1実施形態を示す図である。図11(a)には、第1の周波数信号F1によるテラヘルツ波Tの発生の有無の切替周期と、第2の周波数信号F2によるテラヘルツ波Tの偏光状態の切替周期とを示す。
第1の周波数信号F1に基づいて駆動する光チョッパ11がポンプ光Laを通過させる場合には、ポンプ光Laによってテラヘルツ波Tが発生し、光チョッパ11でポンプ光Laが遮断される場合には、テラヘルツ波Tは発生しない。第2の周波数信号F2がオンである場合には、偏光状態が右回りの円偏光であるテラヘルツ波Tが発生し、第2の周波数信号F2がオフである場合には、偏光状態が左回りの円偏光であるテラヘルツ波Tが発生する。
本実施形態では、テラヘルツ波Tの発生の有無の切替周期がテラヘルツ波Tの偏光状態の切替周期の半分となっている。このため、差分検出部41から出力される差分信号Eの1周期内には、図11(b)に示すように、長さが互いに等しいT1~T4の4つの期間が存在する。期間T1は、テラヘルツ波Tの偏光状態が第1の偏光状態である期間であり、期間T2は、テラヘルツ波Tが発生しない期間である。また、期間T3は、テラヘルツ波Tの偏光状態が第2の偏光状態である期間であり、期間T4は、テラヘルツ波Tが発生しない期間である。差分信号Eにおいては、プローブ光Lbの強度に基づく信号成分は、相殺される。したがって、期間T1には、信号成分SAに信号成分SCを加味した信号成分が出現し、期間T3には、信号成分SBに信号成分SCを加味した信号成分が出現する。また、期間T2,T4には、信号成分SCに起因する信号成分のみが出現する。
図11(c)には、第1の参照信号R1及び第2の参照信号R2を示す。第1の参照信号R1は、テラヘルツ波Tの偏光状態が第1の偏光状態である期間T1に1(正の値)となり、テラヘルツ波が発生していない期間T2に-1(負の値)となる。また、第1の参照信号R1は、テラヘルツ波Tの偏光状態が第2の偏光状態である期間T3及びテラヘルツ波Tが発生しない期間T4に0となる。一方、第2の参照信号R2は、テラヘルツ波Tの偏光状態が第1の偏光状態である期間T1及びテラヘルツ波が発生していない期間T2に0となる。また、第2の参照信号R2は、テラヘルツ波Tの偏光状態が第2の偏光状態である期間T3に1(正の値)となり、テラヘルツ波Tが発生しない期間T4に-1(負の値)となる。
図11(d)には、第1の検出信号K1及び第2の検出信号K2を示す。第1の参照信号R1を用いてロックイン検出を行った結果、第1の検出信号K1において、期間T1には、信号成分SAに信号成分SCを加味した信号成分が出現し、期間T2には、信号成分SCに-1を乗じた信号成分-SCが出現する。第1の検出信号K1の最終的な出力は一定期間の和となる。このため、信号処理部47に出力される信号では、長さが互いに等しい期間T1と期間T2において、期間T1における信号成分SCと、期間T2における信号成分-SCとが相殺される。
信号成分SC及び信号成分-SCは、いずれもプローブ光Lbの偏光状態の経時的な変化等による変動値Cに基づく信号成分であるが、一般には第1の参照信号R1及び第2の参照信号R2の周波数(ロックイン周波数)がプローブ光Lbの偏光状態の経時的な変化等に対して十分に大きいため、信号成分SC及び信号成分-SCに含まれる変動値Cは互いに等しいと見做すことができる。したがって、信号成分SCと信号成分-SCとの相殺において、プローブ光Lbの偏光状態の経時的な変化等による変動値Cを相殺することができる。
第2の検出信号K2においても同様である。第2の検出信号K2において期間T3には、信号成分SBに信号成分SCを加味した信号成分が出現し、期間T4には、信号成分SCに-1を乗じた信号成分-SCが出現する。第2の検出信号K2の最終的な出力は一定期間の和となる。このため、信号処理部47に出力される信号では、長さが互いに等しい期間T3と期間T4において、期間T3における信号成分SCと、期間T4における信号成分-SCとが相殺される。
以上説明したように、光学解析装置1では、第1の参照信号R1及び第2の参照信号R2の正負がテラヘルツ波Tの発生の有無により反転することで、プローブ光Lbの偏光状態の経時的な変化等に基づく信号成分を相殺することができる。したがって、光学解析装置1では、プローブ光Lbの偏光状態の経時的な変化等の影響を回避でき、被測定物Sの光学パラメータを簡便かつ高精度に計測することができる。
また、光学解析装置1では、テラヘルツ波検出部30においてテラヘルツ波Tで変調されたプローブ光Lbを検出して第1の解析信号D1を出力する第1の光検出部34Aと、テラヘルツ波検出部30を経由しないプローブ光Lbを検出して第2の解析信号D2を出力する第2の光検出部34Bと、第1の解析信号D1と第2の解析信号D2との差分を検出する差分検出部41とが設けられている。第1の解析信号D1と第2の解析信号D2との差分検出により、プローブ光Lbの強度の経時的な揺らぎに基づく信号成分を相殺することができる。したがって、被測定物Sの光学パラメータの計測精度を更に高めることができる。
また、光学解析装置1では、第1の参照信号R1は、テラヘルツ波Tの偏光状態が第2の偏光状態である期間に0となり、第2の参照信号R2は、テラヘルツ波Tの偏光状態が第1の偏光状態である期間に0となる。これにより、テラヘルツ波Tの偏光状態が第1の偏光状態である期間T1の出力信号と、テラヘルツ波Tの偏光状態が第2の偏光状態である期間T3の出力信号と切り分けて得ることができる。
また、光学解析装置1では、テラヘルツ波Tの発生の有無の切替周期がテラヘルツ波Tの偏光状態の切替周期の半分となっている。これにより、テラヘルツ波Tの偏光状態が第1の偏光状態である期間T1、テラヘルツ波Tの偏光状態が第2の偏光状態である期間T3、及びテラヘルツ波が発生していない期間T2,T4を簡便に形成できる。
また、光学解析装置1では、光チョッパ11に対してポンプ光Laを集光する集光レンズ18が設けられている。これにより、第1の解析信号D1及び第2の解析信号D2の波形を急峻化することが可能となり、被測定物Sの光学パラメータの測定精度を高めることができる。さらに、光学解析装置1では、入力切替部が光チョッパ11で構成されることにより、簡単な構成で入力切替部を実現でき、偏光切替部がポッケルスセル13で構成されることにより、簡単な構成で偏光切替部を実現できる。
[信号処理の第2実施形態]
図12は、光学解析装置1における信号処理の第2実施形態を示す図である。この実施形態は、図12(a)に示すように、テラヘルツ波Tの発生の有無の切替周期がテラヘルツ波Tの偏光状態の切替周期となっている点で、上記第1実施形態と相違している。
差分信号Eは、図12(b)に示すように、テラヘルツ波Tの偏光状態が第1の偏光状態である期間T1、テラヘルツ波Tの偏光状態が第2の偏光状態である期間T2、テラヘルツ波Tが発生しない期間T3、同じくテラヘルツ波Tが発生しない期間T4を有している。第1の参照信号R1は、図12(c)に示すように、期間T1に1(正の値)となり、期間T2に0となる。また、第1の参照信号R1は、期間T3に-1(負の値)となり、期間T4に0となる。第2の参照信号R2は、期間T1に0となり、期間T2に1(正の値)となる。また、第2の参照信号は、期間T3に0となり、期間T4に-1(負の値)となる。
第1の検出信号K1では、図12(d)に示すように、期間T1において信号成分SAに信号成分SCを加味した信号成分が出現し、期間T3において信号成分SCに-1を乗じた信号成分-SCが出現する。また、第2の検出信号K2では、期間T2において信号成分SBに信号成分SCを加味した信号成分が出現し、期間T4において信号成分SCに-1を乗じた信号成分-SCが出現する。
このような形態においても、第1実施形態と同様、第1の参照信号R1及び第2の参照信号R2の正負がテラヘルツ波Tの発生の有無により反転することで、プローブ光Lbの偏光状態の経時的な変化等に基づく信号成分を相殺することができる。したがって、プローブ光Lbの偏光状態の経時的な変化等の影響を回避でき、被測定物Sの光学パラメータを簡便かつ高精度に計測することができる。
[信号処理の第3実施形態]
図13は、光学解析装置1における信号処理の第3実施形態を示す図である。この実施形態は、図13(a)に示すように、テラヘルツ波Tの発生の有無の切替周期及びテラヘルツ波Tの偏光状態の切替周期が互いに等しく且つ位相が1/4周期分ずれている点で、上記第1実施形態と相違している。
差分信号Eは、図13(b)に示すように、テラヘルツ波Tの偏光状態が第1の偏光状態である期間T1、テラヘルツ波Tが発生しない期間T2、同じくテラヘルツ波Tが発生しない期間T3、テラヘルツ波Tの偏光状態が第2の偏光状態である期間T4を有している。第1の参照信号R1は、図13(c)に示すように、期間T1に1(正の値)となり、期間T2に-1(負の値)となる。また、第1の参照信号R1は、期間T3及び期間T4に0となる。第2の参照信号R2は、期間T1,T2に0となる。また、第2の参照信号R2は、期間T3に-1(負の値)となり、期間T4に1(正の値)となる。
第1の検出信号K1では、図13(d)に示すように、期間T1において信号成分SAに信号成分SCを加味した信号成分が出現し、期間T2において信号成分SCに-1を乗じた信号成分-SCが出現する。また、第2の検出信号K2では、期間T3において信号成分SCに-1を乗じた信号成分-SCが出現し、期間T4において信号成分SBに信号成分SCを加味した信号成分が出現する。
このような形態においても、第1実施形態と同様、第1の参照信号R1及び第2の参照信号R2の正負がテラヘルツ波Tの発生の有無により反転することで、プローブ光Lbの偏光状態の経時的な変化等に基づく信号成分を相殺することができる。したがって、プローブ光Lbの偏光状態の経時的な変化等の影響を回避でき、被測定物Sの光学パラメータを簡便かつ高精度に計測することができる。
[信号処理の第4実施形態]
図14は、光学解析装置1における信号処理の第4実施形態を示す図である。この実施形態は、図14(a)に示すように、テラヘルツ波Tの発生の有無の切替周期のデューティ比がテラヘルツ波Tの偏光状態の切替周期のデューティ比の倍となっている点で、上記第1実施形態と相違している。同図の例では、テラヘルツ波Tの発生の有無の切替周期のデューティ比は約0.66であり、テラヘルツ波Tの偏光状態の切替周期のデューティ比は約0.33である。テラヘルツ波Tの発生の有無の切替周期のデューティ比とは、全期間におけるオンの期間の割合であり、テラヘルツ波Tの偏光状態の切替周期のデューティ比とは、全期間における第1の偏光状態の期間の割合である。
差分信号Eは、図14(b)に示すように、テラヘルツ波Tの偏光状態が第1の偏光状態である期間T1、テラヘルツ波Tの偏光状態が第2の偏光状態である期間T2、テラヘルツ波Tが発生しない期間T3を有している。第1の参照信号R1は、図14(c)に示すように、期間T1に1(正の値)となり、期間T2に0となり、期間T3に-1(負の値)となる。第2の参照信号R2は、期間T1に0となり、期間T2に1(正の値)となり、期間T3に-1(負の値)となる。
第1の検出信号K1では、図14(d)に示すように、期間T1において信号成分SAに信号成分SCを加味した信号成分が出現し、期間T3において信号成分SCに-1を乗じた信号成分-SCが出現する。また、第2の検出信号K2では、期間T2において信号成分SBに信号成分SCを加味した信号成分が出現し、期間T3において信号成分SCに-1を乗じた信号成分-SCが出現する。
このような形態においても、第1実施形態と同様、第1の参照信号R1及び第2の参照信号R2の正負がテラヘルツ波Tの発生の有無により反転することで、プローブ光Lbの偏光状態の経時的な変化等に基づく信号成分を相殺することができる。したがって、プローブ光Lbの偏光状態の経時的な変化等の影響を回避でき、被測定物Sの光学パラメータを簡便かつ高精度に計測することができる。
なお、第1実施形態~第3実施形態のように、テラヘルツ波Tの発生の有無の切替周期のデューティ比が0.5である場合には、例えば図15(a)に示すように、光チョッパ11において、光を遮蔽するリブ51の幅W1と、リブ51,51間の間隔W2とを等しくしておけばよい。一方、第4実施形態のように、テラヘルツ波Tの発生の有無の切替周期が0.66である場合には、例えば図15(b)に示すように、光を遮蔽するリブ51の幅W1に対し、リブ51,51間の間隔W2を2倍にすればよい。
[他の変形例]
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。例えば光学解析装置1において、配置部21が被測定物Sの位置をテラヘルツ波Tの進行方向に垂直な平面内に走査可能に構成されていてもよい。この場合、配置部21の走査は、例えばXYステージなどによって構成され得る。例えばXYステージにおける被測定物Sの位置情報を光学パラメータ解析部50に出力することにより、位置情報に基づいて被測定物Sの各位置における光学パラメータのマッピングが可能となる。
また、光学解析装置1において、例えばロックイン検出のダイナミックレンジが十分に大きい場合には、差分検出部41による差分信号Eの検出は必ずしも実行しなくてもよい。この場合、例えば第2の光検出部34B及び差分検出部41の配置を省略し、第1の光検出部34Aからの解析信号を第1のロックイン検出部45A,45Bに直接入力すればよい。
図16は、当該構成における信号処理の変形例を示す図である。図16(a)に示すテラヘルツ波Tの発生の有無の切替周期及びテラヘルツ波Tの偏光状態の切替周期は、図11に示した第1実施形態と同じである。また、図16(b)に示す第1の参照信号R1及び第2の参照信号も、図11に示した第1実施形態と同じである。第1の検出信号K1では、図16(c)に示すように、期間T1において信号成分SAに信号成分S0’を加味した信号成分が出現し、期間T3において信号成分S0’に-1を乗じた信号成分-S0’が出現する。また、第2の検出信号K2では、期間T2において信号成分SBに信号成分S0’を加味した信号成分が出現し、期間T4において信号成分S0’に-1を乗じた信号成分-S0’が出現する。該構成では差分検出を行わないため、信号成分S0’には、プローブ光Lbの強度に基づく信号成分S0と、プローブ光Lbの偏光状態の経時的な変化等に起因する信号成分Scとが含まれ得る。
このような形態においても、第1実施形態と同様、第1の参照信号R1及び第2の参照信号R2の正負がテラヘルツ波Tの発生の有無により反転することで、プローブ光Lbの偏光状態の経時的な変化等に基づく信号成分をプローブ光Lbの強度に基づく信号成分と共に相殺することができる。したがって、プローブ光Lbの偏光状態の経時的な変化等の影響を回避でき、被測定物Sの光学パラメータを簡便かつ高精度に計測することができる。なお、差分検出部41による差分信号Eの検出を行わない形態は、上記第2実施形態~第4実施形態に対して適用することも可能である。
上記実施形態においては、テラヘルツ波Tの偏光状態が第1の偏光状態或いは第2の偏光状態である期間に参照信号を1(正の値)とし、テラヘルツ波が発生していない期間に-1(負の値)としたが、これに限られるものではない。例えばテラヘルツ波Tの偏光状態が第1の偏光状態或いは第2の偏光状態である期間に参照信号を-1(負の値)とし、テラヘルツ波Tが発生していない期間に1(正の値)としてもよい。また、参照信号の正負の値は、互いに等しい絶対値であれば1に限られず任意の値を用いることができる。