JP2920439B2 - ゴム補強用スチールワイヤ - Google Patents

ゴム補強用スチールワイヤ

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JP2920439B2 JP3257227A JP25722791A JP2920439B2 JP 2920439 B2 JP2920439 B2 JP 2920439B2 JP 3257227 A JP3257227 A JP 3257227A JP 25722791 A JP25722791 A JP 25722791A JP 2920439 B2 JP2920439 B2 JP 2920439B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はゴム補強用スチールワイ
ヤとりわけ引張表面残留応力の低い特性を持つゴム補強
用スチールワイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】スチールコードはラジアルタイヤ、高圧
ホース、コンベアベルトなとのゴム製品の補強材として
汎用されており、一般に、炭素量が0.6%以上の高炭
素鋼からなる直径0.05〜0.80mmのスチールワイ
ヤを数本撚合等により組み合わせたもので、ゴムとの接
着性をよくするため、スチールワイヤ最外層には銅、黄
銅、亜鉛またはそれらの主成分とする合金のメッキが施
されている。かかるスチールワイヤは、補強効果を高め
るため、冷間加工特にダイスを用いた引き抜き法により
目的直径まで伸線加工されるが、この引き抜きにより表
面に引張り側の残留応力が残る。そして、コードとされ
ゴム製品に補強材として使用された時には引張りや曲げ
の応力を受ける。そのため、スチールワイヤの表面に
は、すでにある残留応力にこの応力が重畳することにな
り、その応力が高い場合には、疲労現象が早期に現わ
れ、亀裂の発生やその伝播が進行し、ひいてはゴム製品
全体の強度や疲労性の劣化につながる。この観点から、
スチールワイヤの表面に残留する引張り応力は低いほど
よく言われており、そうした表面の引張り残留応力を低
減する方法として、引き抜き加工後のスチールワイヤを
多数の小径ロールを用いて引張り応力下で交互に曲げ加
工を施す方法や、スチールワイヤ表面をショットブラス
トする方法が提案されている。また、他の方法として熱
処理により応力を緩和する方法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者の
小径ロール曲げ法は、伸びの増加や破断荷重の低下など
の物性の劣化や直線性の低下などを招くほか、めっき層
に傷が入れられ、ゴム補強材として重要な特性であるゴ
ムとの接着性の低下を招くという問題があった。また、
後者のショットブラスト法は、細粒子をスチールワイヤ
表面にぶつけるものであるため、細かい砂粒が喰込み残
留したり、砂粒によってめっき層に傷がつくことによっ
てゴム接着性が損なわれる問題がある。熱処理により残
留応力を緩和する方法は、表面に施されているめっきが
加熱によって酸化し、ゴム接着性が阻害されるという問
題がある。本発明は前記のような問題点を解消するため
に研究して創案されたもので、その目的とするところ
は、良好な疲労性とゴム接着性の両方の特性を備えしか
も後工程を要さずに安価に量産することができるゴム補
強用スチールワイヤを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明は、ワイヤ表面の残留応力を定量的に把握する測
定法を知見し、それに基いて、スチールワイヤの表面残
留応力を後加工によってでなく、引き抜き加工そのもの
で低減させるようにしたものである。すなわち、ゴム補
強材として使用される炭素量が0.6%以上の高炭素鋼
の母材外層にゴム接着性付与用のめっき層を有する極細
のワイヤにおいて、該ワイヤが、めっき後伸線工程の最
後にアプローチ角(2α)が8°以下の引き抜きダイス
により引抜加工され、X線回折法によるα−Feの20
0結晶面間隔より求められる表面の残留応力が、軸方向
における引張り側で45Kg/mm2以下であることを特徴
とするものである。
【0005】以下本発明を詳細に説明する。スチールワ
イヤはゴムマトリックス中に埋設されゴムと接着される
ことによって補強材として機能する。このため、スチー
ルワイヤは、通常、炭素含有量が0.6%以上の高炭素
鋼が使用され、これを直径3.0〜0.3mmの範囲に
伸線加工したものが出発材として使用される。そして、
前記出発材ワイヤには拡散めっき法などによって外面に
ゴムとの接着性のよいめっき層が施される。そのめっき
は、銅、亜鉛、黄銅または3成分系黄銅合金などであ
り、めっき層(付着量)は通常3〜78g/Kgの範囲であ
る。炭素含有量が0.6%を下回る量では強度が低く、
補強効果が小さいため不適当である。上限は炭素の均一
固溶限が1.0%以下である理由から、一般にC:0.
7〜0.92%、主として0.8%台である。
【0006】このめっき付きワイヤは、続いて伸線加工
が行われる。この伸線加工は、断面形状や寸法の精度の
面から、引き抜きダイスが用いられ、0.05〜0.8
0mmにおける所定の直径になるまで、冷間で複数段行わ
れる。これによってワイヤの強度を向上させ、またワイ
ヤ表面を平滑化するのである。この引き抜き加工では、
表面残留応力が不可避的に生ずる。その表面残留応力の
測定法として、ゴム補強用ワイヤ類については、マニキ
ュア法が唯一の実用的な方法として採用されていた。す
なわち、このマニキュア法とは、ワイヤの一部に疎水性
のマニキュア類を塗布してから、酸などで一部表面を溶
解除去し、それによって生ずる形状変化により、残留応
力を評価する方法である。しかし、この方法は塗布部の
バラツキや溶解量の変動が形状変化に現われてしまう。
したがって、表面残留応力を定性的に評価できるに止ま
り、定量的な評価は行えない。従来では、この定性的な
評価に基いて表面残留応力を測定したとなしており、そ
れゆえ、精度が低く、バラツキや安定性が乏しいもので
あった。
【0007】そこで本発明者はまず、表面残留応力の測
定そのものについて改善を加えた。表面残留応力の測定
については、X線回折法が有効である。しかし、ワイヤ
のように円周があり、一方向に配向を持つ素材では測定
が難しいとされていた。この点について、本発明は、微
小部すなわち100〜300μmφの領域にのみX線を
照射する。これによりワイヤの円周による影響を除去す
ることができる。さらに、回折時の一方向性の配向性の
影響を少なくするため、測定時に試料に振動を負荷し、
応力測定に最も適した結晶面としてα−Feの200を
用いた。その振動を負荷する方法としては、たとえばパ
ルスモータ付き3軸揺動システムが用いられる。そして
2θとSIN2ψ線図により、直線部の得られるSIN2
ψ値の0.1〜0.5の範囲の勾配により、応力を求め
る方法とした。この方法により細いワイヤについても、
表面からワイヤ中心に向かって10μmの残留応力を精
度よく測定することが可能となった。本発明は、このX
線回折法でα−Feの200結晶面間隔から求めた表面
残留応力を基準として、軸方向において引張り側で45
Kg/mm2以下とし、それを引き抜きダイスのアプローチ角
度を規定することによって実現するものである。
【0008】引き抜きダイスは、一般に図1に示すよう
に、鉄ケース1にタングステンカーバイドなどの焼結合
金あるいはダイヤモンドからなるニブ2を固着したもの
が使用され、導入開口部としてのベル2aとエントラン
ス2bに続いて、アプローチ2c、ベアリング2dおよ
びバックリリーフ2eを連続的に形成している。前記ベ
アリング2dはワイヤ寸法を決定する整形部分、バック
リリーフ2eは引き抜かれたワイヤに傷が付けられずに
円滑にダイスから離れるための逃げ部である。エントラ
ンス2bとバックリリーフ2eは一般に60〜70°、
ベアリング2dは一般に0〜2°とされる。そして、ア
プーローチ2cがワイヤに絞り塑性変形を与える主体部
分であり、直線状のもの(直線ダイス)と曲線状のもの
(曲面ダイス)がある。その角度すなわちアプローチ角は
別名ダイス角と称される。このアプローチ角に関し、炭
素含有量が0.6%以上の場合には、最も引き抜き抵抗
を低くし製造エネルギーが安価になるように、直線ダイ
スにおいて一般に2α=12〜13°のものが使用さ
れ、それは、最終のダイスでも同じであった。
【0009】本発明者はこのアプローチ角(2α)とそ
れによる絞り機構について検討を加えた。その結果、炭
素含有量が0.6%以上という硬鋼線材においては、最
終の引き抜きダイスについては、ゆるやかな加工方法す
なわち、ワイヤ表面域と内部域とをできるだけ同等な絞
り加工条件となるようにすることが表面残留応力を低減
する上で最も肝要であることがわかった。そこで、本発
明はアプローチ角を緩やかにし、それによってアプロー
チ2cでの接触面積を増し、ワイヤ単位面積あたりの応
力負荷を減らすようにしたものである。そのアプローチ
角を種々に調整してワイヤの引き抜きを行い、それぞれ
について前記したX線回折法により表面残留応力を測定
したところ、アプローチ角(2α)を9°未満好ましく
は8°以下としたときに、表面残留応力がすべて軸方向
において引張り側で45Kg/mm2以下になった。アプーロ
チ角が9°を超える大きなものとすると、アプローチを
通過する際の接触面積が少なくなり、単位面積当りの応
力負荷が増す。すなわち、表面層の加工圧力が内層に比
べて高くなりすぎて、残留応力が多くなる。アプローチ
角の下限は約1°であるが、あまりアプロート角が小さ
いと潤滑剤の引込みが悪くなり、ダイスの穴が摩耗によ
り径が大きくなり、ダイス交換が頻繁になって生産性が
低下する。これを避ける意味からは2°を超える角度が
好ましい。上記のようなアプローチ角を採用した場合に
表面残留応力が低下するメカニズムは必ずしも明確では
ないが、アプローチ2cからベアリング2dを通過する
際の加工圧力がワイヤ表面層で軽くなるが、接触面積の
増加によって加工時間が長くなる。このため、塑性変形
が生じやすくなり、緩やかに無理なく加工され、疎の結
果応力残が少なくなり、表面残留応力が低減されると考
えられる。なお、最終ダイスより前段の引き抜きダイス
のアプローチ角については、従来どおり10°を超える
ものを使用することができる。
【0010】
【実施例】以下に本発明の実施例を示す。 実施例1 化学成分が、C:0.82%、Si:0.2%、Mn:
0.45%、P:0.01%、S:0.005%残部鉄
および不可避的不純物の高炭素鋼線材1.70mmφに
拡散めっき法により銅と亜鉛のめっきを施し、その後熱
処理によりめっき層を合金化して、Cu63.5%、付
着量4.0g/Kgのめっき層を得た。このワイヤをア
プローチ角(2α):12°の直線状引き抜きダイスを
21段用いて伸線加工を行い、0.30mmφのワイヤ
を得た。このとき、最終引き抜きダイスにおけるアプロ
ーチ角(2α)を2〜16°の範囲にとり、それぞれ引
き抜き後のワイヤの表面残留応力を、X線回折法により
α−Feの200結晶面間隔より測定して求めた。ま
た、各ワイヤについて回転曲げ疲労試験により同一応力
での破断までの回数を行い、アプローチ角12°のもの
を基準とする相対的疲労水準を求めた。その結果を表1
に示す。
【0011】
【表1】
【0012】この結果から、最終引き抜きダイスのアプ
ローチ角(2α)を8°以下にすると、表面残留応力を
45Kg/mm2以下にすることができ、疲労性も改善するこ
とができることがわかる。上記のように得られたワイヤ
のうちアプローチ角8°の本発明品と、アプローチ角1
2°の従来品およびその従来品を慣用の表面残留応力改
善法で後加工した場合の、引張り強度、伸び、表面残留
応力、ゴム接着性を検討した。その結果を表2に示す。
なお、小ロール法は13mm径のロールを7ロール上
下、左右に使用した。加熱法は250℃、1時間の加熱
条件とした。また、ブラスト法はジルコン砂を1時間落
下させた後、砂を洗浄除去する方法とした。ゴム接着性
は、ワイヤを10cmに切断し補強布付きゴムに接着用
ゴムを重ね、この上にワシヤを密に並べその上に接着用
ゴム、補強布付きゴムを重ね、ワイヤとの界面の層間に
剥離用スペーサを入れ、圧着後150℃、30minの
加硫を行って試料を作り、この試料からワイヤを引き剥
がし、このときのワイヤ側の引き剥ぎ面がゴムで覆われ
ている比率を求め評点とした。
【0013】
【表2】
【0014】この表2から、本発明のワイヤは引張り強
度、伸び、ゴム接着性をバランスよく備えていることが
わかる。
【0015】
【発明の効果】以上説明した本発明によるときには、ゴ
ム補強材として使用される炭素量が0.6%以上の高炭
素鋼の母材外層にゴム接着性付与用のめっき層を有する
極細のワイヤを、めっき後伸線工程の最後にアプローチ
角(2α)が8°以下の引き抜きダイスにより引抜加工
され、X線回折法によるα−Feの200結晶面間隔に
より求められた表面の残留応力が、軸方向における引張
り側で45Kg/mm2以下としたので、ゴム補強用材に好
適な良好なゴム接着性と低表面残留応力(疲労性)のめっ
きつきスチールワイヤを提供することができ、しかも、
煩雑な後加工を要さずに安価に安定して製造することが
できるというすぐれた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用する引き抜きダイスの形状とアプ
ローチ角度の定義を示す説明図である。 2c アプローチ 2α アプローチ角

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ゴム補強材として使用される炭素量が0.
    6%以上の高炭素鋼の母材外層にゴム接着性付与用のめ
    っき層を有する極細のワイヤにおいて、該ワイヤが、め
    っき後伸線工程の最後にアプローチ角(2α)が8°以
    下の引き抜きダイスにより引抜加工され、X線回折法に
    よるα−Feの200結晶面間隔より求められる表面の
    残留応力が、軸方向における引張り側で45Kg/mm2
    下であることを特徴とするゴム補強用スチールワイヤ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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