JP2903027B2 - 化学反応系の温度制御方法及び化学反応液処理装置 - Google Patents

化学反応系の温度制御方法及び化学反応液処理装置

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Description

【発明の詳細な説明】 [発明の属する技術分野] この発明は、反応液を処理する反応系の温度変化を予
測して温度制御を行なう化学反応系の温度制御方法及び
反応液を処理する化学反応液処理装置に係り、例えばジ
ャケット温度を変化させて反応器内部の温度制御を行な
う反応器における温度制御のごとく、反応器内の温度変
化を予測してジャケット温度を制御する化学反応系の温
度制御方法及び反応器内で反応液を処理する化学反応液
処理装置に関する。
[従来の技術] 従来、例えば、反応液を処理する反応器の周囲に設け
たジャケットの温水温度を調節することによって、反応
器内の反応液の温度を制御する場合のように、制御系内
に大きな時間遅れのあるプロセスの制御には、時間遅れ
を軽減して応答を改善しようとするPIDフィードバック
制御やセットポイント方式によるフィードフォワード制
御が採用されている。
[発明が解決しようとする課題] しかしながら、反応器内で反応液として例えばハロゲ
ン化銀乳剤の結晶を形成するような場合、混合中に反応
液に、添加される添加物による反応後の液量変化、添加
物による持ち込み熱や反応によって発熱することがあ
る。
従って、PIDフィードバック制御やセットポイント方
式によるフィードフォワード制御では適切な温度制御を
行なうことができず、ハロゲン化銀乳剤の品質に悪影響
を及ばす等の問題がある。
このため、例えば熱伝導の基本式を用いて、反応系の
熱モデルを作成し、この熱モデルを用いて温度制御を行
なうことが考えられるが、この場合添加物による反応液
の状態変化があるため、熱モデルを修正しないと、適切
な温度制御を行なうことができず、反応器内部温度が不
安定になりやすかったり、恒常的な設定値との偏差が生
じるといった問題があった。
この発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、反
応液、添加物の物性データ及び状態データ、添加パター
ン、温度制御パターン等のデータベースをもとにして反
応系の熱モデルを修正し、この熱モデルを用いた最適な
温度制御を行なうようにした化学反応系の温度制御方法
及び化学反応液処理装置を提供することを目的としてい
る。
[課題を解決するための手段] 前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この
発明は、以下のように構成した。
請求項1記載の発明は、『反応液を処理する反応系の
熱モデルを、添加物の添加パターンによる反応液の液量
変化予測及び/又は添加物自体の反応熱による熱量予測
とで修正し、この修正された熱モデルを用いて最適な温
度制御量を求め、この温度制御量に基づいて前記反応系
の温度制御を行なうことを特徴とする化学反応系の温度
制御方法。』である。
この請求項1記載の発明によれば、添加物の添加パタ
ーンによる反応液の液量変化予測、又は添加物自体の反
応熱によるによる熱量予測、或いはこの液量変化予測と
熱量予測とで修正された熱モデルを用いる制御で最適な
温度制御量を求め、この最適な温度制御量に基づいて反
応系の温度制御を行なうため、添加物の添加パターンに
よる反応液の状態変化を予測して処理開始から短時間
で、かつ温度変化が少ない適切な温度制御を行なうこと
ができる。したがって、人手を介して(予め予測計算し
ておくことなく、リアルタイムに液量と熱量を自動予測
し、良好な反応系の温度制御を行なうことができる。
請求項2記載の発明は、『反応液を処理する反応系
と、この反応系とで熱交換して反応液の温度制御を行な
う熱交換器と、前記反応系の熱モデルを、添加物の添加
パターンによる反応液の液量変化予測及び/又は添加物
自体の反応熱による熱量予測とで修正し、この修正され
た熱モデルを用いて前記熱交換器の最適な温度制御量を
求め、この温度制御量に基づいて前記熱交換器の温度制
御を行なう温度制御装置とを有することを特徴とする化
学反応液処理装置。』である。
この請求項2記載の発明によれば、前記のようにして
修正された熱モデルを用いて熱交換器の最適な温度制御
量を求め、この温度制御量に基づいて熱交換器の温度制
御を行なうから、簡単な構造で添加物の添加パターンに
よる反応液の状態変化を予測して処理開始から短時間
で、かつ温度変化が少ない適切な温度制御を行なうこと
ができ、反応液の品質が向上する。
[発明の実施の形態] 以下、この発明の化学反応系の温度制御方法及び化学
反応系の温度制御方法が適用される化学反応液処理装置
の実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。この発
明はこの実施例ではバッチ式反応系に適用したが、これ
に限定されず連続式反応系にも適用することができるこ
とは明かである。また、反応系の熱モデルの修正は、添
加物の供給と排出による反応液の液量変化予測、添加物
の供給と排出による熱量予測とがあり、この実施例では
添加物を供給する場合について説明している。
第1図はこの発明の化学反応系の温度制御方法が適用
される化学反応液処理装置の概略図である。
図において符号1は制御対象となる反応器であり、例
えば反応の原料及び触媒等の添加物を供給パイプ2から
供給して反応液の処理を行ない、必要時間後に反応液を
取り出すことができるようになっている。この反応器1
には反応液を撹拌する撹拌手段3が設けられており、例
えばハロゲン化銀乳剤の製造に用いられ、この場合混合
中に銀・ハライドなど添加液が供給パイプ2から添加さ
れ、混合中は反応器1内の反応液の液量が刻々変化す
る。
反応器1の周囲にはジャケット4が設けられ、このジ
ャケット4はパイプ5,6を介して熱交換器7と接続さ
れ、ポンプ8によって循環水が循環して反応器1との間
で熱交換することで、反応液の温度制御を行なうように
なっている。
この熱交換器7の温度制御は温度制御装置Aによって
行なわれ、この温度制御装置Aには反応器1の反応液の
温度検出する温度センサ9と、熱交換器7の出口温度を
検出する温度センサ10とから温度情報が入力されるよう
になっている。温度制御装置Aでは、反応系の熱モデル
を、反応器1内の添加物による反応液の液量変化予測
と、添加物による熱量予測とで修正し、この修正された
熱モデルを用いる制御で最適な温度制御量を求め、この
最適な温度制御量に基づいて熱交換器7の出口温度を調
節する。これにより、反応器1の周囲に設けたジャケッ
ト4と反応器1とで熱交換が行なわれ、反応器1内部の
反応液の温度が設定温度になるように温度制御される。
第2図はこの発明の化学反応系の温度制御ブロック図
である。
図において、符号20は温度制御装置Aの温度制御量設
定部であり、比較器21で予め設定されている反応器設定
温度と、検出センサ9から得られる反応器温度との比較
が行なわれ、この温度差がフィードバックゲイン22を介
して温度制御量設定部20に入力される。この温度制御量
設定部20では、反応系の熱モデルを、添加物による反応
液の液量変化予測23と、添加物による熱量予測24とで修
正し、この修正された熱モデルを用いて最適な温度制御
量を求め、反応器設定温度と反応器温度の温度差から熱
交換器7の最適温度値を出力する。
この最適温度値の出力は、比較器25で検出センサ10か
ら得られる熱交換器7の出口温度と比較され、熱交換器
7の出口温度が最適温度値となるように制御する。この
ように、熱モデルに基づく最適な温度制御量を設定し、
温度制御量に基づいて熱交換器7を制御して反応器1の
温度制御を行なう2段階の制御を行なっている。
反応器1には混合中に添加液が添加され、混合中は反
応器1内の反応液量が刻々変化する。従って、添加物に
よる反応液の液量変化予測23では、この液量を供給のむ
だ時間や遅れ時間を考慮して予測し、熱モデルに取り込
んでいる。また、液量により伝熱係数も変わるため液量
から伝熱係数を予測する。反応液量を予測するために添
加される添加液の添加流量を予測しており、この添加流
量は反応液、添加液の物性データ及び状態データ、添加
パターン等のデータベースから供給遅れ・むだ時間を考
慮して予測している。
また、予測した添加流量から発熱計算を行ない、発熱
予測をしている。この発熱量は持ち込み熱と、化学反応
による発熱の2つがある。それぞれ下式のように表せ
る。
持ち込み熱 ρ・C・F・dT ρ:密度[kg/] C:比熱[kcal/℃・kg] F:流量[/min] dT:温度差[℃](添加液温度−反応器温度) 化学反応による発熱 F・q・h q:濃度[mol/] h:単位発熱量[kcal/mol] この単位発熱量の文献値の一例を示す。
Ag++Cl-=15.653[kcal/mol] Ag++Br-=20.184[kcal/mol] Ag++I- =26.821[kcal/mol] 第3図は化学反応系の温度制御のフローチャートであ
る。
まず、添加パターンにより添加流量を予測し(ステッ
プa)、物性データ及び状態データや添加パターン等の
データベースから反応制御液の添加流量を予測する(ス
テップb)。そして、反応器内の液量と、熱量とを予測
して(ステップc)、この予測した反応器内の液量から
伝熱係数を計算する等熱モデルの定数を設定する(ステ
ップd)。そして、熱モデルから最適な熱交換器7の出
口温度の計算を行ない(ステップe)、この制御で得ら
れた最適温度になるように熱交換器の制御が行なわれる
(ステップf)。
この制御では、下記の状態方程式が基本になる。
状態方程式 dX/dt=A・X+b・u X:状態変数 u:入力 A:制御パラメータ b:制御パラメータ t:時間 dX/dt:温度勾配 それを、下記の伝熱基本式をもとにして反応器の熱モ
デルを作成し、状態方程式の形のモデルを得ている。
伝熱の基本式 q=−λ・A・(dx/dT) q:単位時間あたりの移動する熱量 λ:熱伝導度 A:伝熱面積 dx/dT:温度勾配(x:状態変数 T:温度) 次に、この状態方程式と、伝熱の基本式とからこの発
明の熱モデルの作成について説明する。
まず、反応器の基本モデルの作成を示す。
反応器温度について が成立する。ここで、 Tr:反応器温度[℃] Tj:ジャケット温度[℃] Vr:反応器内液量[] U:伝熱係数[kcal/sec・℃・m2] A:伝熱面積[m2] hr:放熱伝熱係数[kcal/sec・℃] Tr0:反応器周囲温度[℃] CT:比熱[kcal/l・℃] Q:発熱量[kcal/sec] また、ジャケット温度について が成立する。ここで、 Vj :ジャケット体積[] hj :ジャケット放熱伝熱係数[kcal/sec・℃] Tj0:ジャケット周囲温度[℃] Tt :熱交換器出口温度[℃] f:熱交換器からの循環流量[l/sec] (以下、比熱G=1として計算する。) ここで、前記の状態方程式 dX/dt=A・X+b・u から、前記の式1,2を以下のようにおくことができ、こ
の反応系の熱モデルが得られる。
従って、最適な熱交換器出口設定温度の計算を行なう
制御は、例えば次のように状態フィールドバック制御で
行なうことができる。この状態フィードバックに関して
は、例えば産業図書発行の「制御工学入門」、コロナ社
発行の「基礎システム理論」等の文献があり、これらに
より公知の制御方法である。
Ttsv=−fb・Tr・k・Trsv ・・・式4 ここで、 Ttsv:熱交換器出口設定温度[℃] Trsv:反応器設定温度[℃] fd:フィードバック係数 そして、 となる。
このように、この温度制御では、熱モデルから最適な
熱交換器出口温度を演算し、これを熱交換器の設定温度
とし、熱交換器の出口温度を制御して反応器の温度制御
する2段階の温度制御を行なっている。
第4図はこの発明での温度制御を示しており、反応系
の熱モデルを、添加物による反応液の液量変化予測と、
添加物による熱量予測とで修正し、この修正された熱モ
デルを用いる制御で、最適な温度制御量を求めており、
この最適な温度制御量で熱交換器の出口温度の制御を行
なうため、反応器内の反応液の温度を一定或いは設定値
に追従させることができる。
次に、この発明による温度制御を、従来の温度制御と
比較すると、第5図及び第6図に示すようになる。
第5図はこの発明の温度制御による制御シミュレーシ
ョン結果を示し、第6図はPID制御による制御シミュレ
ーション結果を示す。
第6図に示すような単純なPID制御のみでは、反応器
内の反応液温度を一定にすることが困難である。このた
め、例えば予め人手により発熱量を予測計算し、それを
元にPID制御を行なっている。
この発明では第5図に示すように、人手を介して予め
予測計算しておくことなく、リアルタイムに発熱量を自
動予測して良好な制御を行なうことができる。
また、特にハロゲン化銀乳剤の品質に、ハロゲン化銀
乳剤の混合温度履歴が影響するため、反応器内の温度を
一定にすることが重要であり、この発明によれば第5図
に示すように、制御開始から短時間に、しかも反応器内
温度を一定にすることができる。
[発明の効果] 前記したように、この請求項1記載の発明では、添加
物の添加パターンによる反応液の液量変化予測、又は添
加物自体の反応熱によるによる熱量予測、或いはこの液
量変化予測と熱量予測とで修正された熱モデルを用いる
制御で最適な温度制御量を求め、この最適な温度制御量
に基づいて反応系の温度制御を行なうため、添加物の添
加パターンによる反応液の状態変化を予測して処理開始
から短時間で、かつ温度変化が少ない適切な温度制御を
行なうことができる。したがって、人手を介して予め予
測計算しておくことなく、リアルタイムに液量と熱量を
自動予測し、良好な反応系の温度制御を行なうことがで
きる。
請求項2記載の発明では、前記のようにして修正され
た熱モデルを用いて熱交換器の最適な温度制御量を求
め、この温度制御量に基づいて熱交換器の温度制御を行
ない、反応系の処理開始時の熱交換器の温度を設定温度
より高くし、徐々に温度を下げて設定温度に維持し、反
応系の処理温度を設定温度にするため、簡単な構造で添
加物による反応液の状態変化を予測して処理開始から短
時間で、かつ温度変化が少ない適切な温度制御を行なう
ことができ、反応液の品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の化学反応系の温度制御方法が適用さ
れる化学反応液処理装置の概略図、第2図はこの発明の
化学反応系の温度制御のブロック図、第3図は化学反応
系の温度制御のフローチャート、第4図はこの発明での
温度制御を示すグラフ、第5図はこの発明の温度制御に
よる制御シミュレーション結果を示すグラフ、第6図は
PID制御による制御シミュレーション結果を示すグラフ
である。 図中符号1は反応器、4はジャケット、7は熱交換器、
Aは温度制御装置である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B01J 19/00 G05D 23/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】反応液を処理する反応系の熱モデルを、添
    加物の添加パターンによる反応液の液量変化予測及び/
    又は添加物自体の反応熱による熱量予測とで修正し、こ
    の修正された熱モデルを用いて最適な温度制御量を求
    め、この温度制御量に基づいて前記反応系の温度制御を
    行なうことを特徴とする化学反応系の温度制御方法。
  2. 【請求項2】反応液を処理する反応系と、この反応系と
    で熱交換して反応液の温度制御を行なう熱交換器と、前
    記反応系の熱モデルを、添加物の添加パターンによる反
    応液の液量変化予測及び/又は添加物自体の反応熱によ
    る熱量予測とで修正し、この修正された熱モデルを用い
    て前記熱交換器の最適な温度制御量を求め、この温度制
    御量に基づいて前記熱交換器の温度制御を行なう温度制
    御装置とを有することを特徴とする化学反応液処理装
    置。
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