JP2902206B2 - タンパク質分子の安定化法 - Google Patents

タンパク質分子の安定化法

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JP2902206B2
JP2902206B2 JP4115877A JP11587792A JP2902206B2 JP 2902206 B2 JP2902206 B2 JP 2902206B2 JP 4115877 A JP4115877 A JP 4115877A JP 11587792 A JP11587792 A JP 11587792A JP 2902206 B2 JP2902206 B2 JP 2902206B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、産業上用いられている
有用タンパク質の安定性を改良するための方法に関す
る。
【0002】
【従来技術とその問題点】酵素等のタンパク質の耐溶媒
性、耐熱性などタンパク質分子の安定性を高めることは
タンパク質を産業上利用する上で極めて有用な結果をも
たらすと期待される。タンパク質の安定性を高めるため
の方法としては、人工的にジスルフィド結合を導入する
方法(Wetzel等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85,401-405(19
88))、イオン対または水素結合の補強(Alber等,Nature,
330,41-46(1987))、α-ヘリックスの双極子モーメント
の安定化(Nicholson等,Nature,336,651-656(1988))、金
属イオン結合部位の導入(黒木等、特願平01-077526;Ku
roki等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86,6903-6907(1989))
などが報告されている。一般にこれらの方法により安定
化をはかろうとする場合にはタンパク質分子の立体構造
に基づいて改変するアミノ酸残基を決定するが、タンパ
ク質によってはこれらの方法をうまく適用できるアミノ
酸残基が存在しない場合も多く、これらの方法がすべて
のタンパク質に対して適用できるというわけではない。
したがって、さらに新しい安定化法を開発し、その適用
範囲を拡大することが望まれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記の従来技術はいず
れも、分子中に新しい相互作用を導入し、タンパク質分
子本来の立体構造を補強することによって、その安定性
の増大を図るものである。本発明者らは、タンパク質分
子が本来含有している不安定化要素、特に主鎖のひずみ
に着目し、このひずみを解消するような改変をタンパク
質分子に加えることによって、その安定性の増大を図り
得ることを見いだし本発明を完成したものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】タンパク質分子の主鎖の
二面角は制限されており、グリシン以外のアミノ酸残基
の主鎖の二面角は折りたたまれたタンパク質分子中では
「右巻きらせん型」または「伸展型」をとっている場合が多
く、「左巻きらせん型」は非常に少ない。一方、グリシン
残基の場合には、「右巻きらせん型」と「左巻きらせん型」
が同程度であることが知られている(Richardson,Advan.
Protein Chem,34,167-339(1981);Nicholson等,J.Mol.B
iol.,210,181-193(1989))。また、グリシン以外のアミ
ノ酸残基の中ではアスパラギン残基およびアスパラギン
酸残基が「左巻きらせん型」をとりやすいことも知られて
いる(Nicholson等,J.Mol,Biol,210,181-193(1989))。
【0005】このように好ましい立体配置がアミノ酸残
基の種類によって異なることは、グリシン残基およびア
スパラギン残基の「左巻きらせん型」と「右巻きらせん型」
の間の構造エネルギー差が、他のアミノ酸残基の場合に
比べて小さいためと考えられている。即ち、グリシン残
基以外のL-アミノ酸残基では、「左巻きらせん型」は
「右巻きらせん型」よりも0.5〜2.0kcal/mol程度エ
ネルギーが高く不安定であるが、グリシン残基ではこの
エネルギー差は全くなく(Brant等,J.Mol.Biol.,23,47-6
5(1967);Gordon等,J.Am.Chem.Soc.,113,5989-5997(199
1))、またアスパラギン残基では、その短い極性側鎖が
残基内で水素結合を作ったり、あるいはタンパク質中の
他の部分と相互作用することによってこのエネルギー差
を相殺している(Richardson & Richardson,“Predictio
n of Protein Structure and the Principles of Prote
in Conformation",Fasman編,Plenum,New York(1989))。
したがって、「左巻きらせん型」の二面角を持ち、それゆ
えにそのタンパク質の不安定化に寄与しているアミノ酸
残基を、「左巻きらせん型」をとりやすいアミノ酸残基、
例えばグリシン残基またはアスパラギン残基に置換する
ことによって、タンパク質を安定化することができると
期待できる。
【0006】これまでに、「左巻きらせん型」の二面角を
持つグリシン以外のアミノ酸残基をグリシン残基に置換
した例としては、バクテリオファージT4リゾチームの
例が報告されているが、安定性の向上はなされていない
(Nicholson等,J.Mol.Biol,210,181-193(1989))。しかし
この例ではアミノ酸残基の置換に伴って側鎖間の相互作
用にも変化が生じており、このために安定性が向上しな
かった可能性も否定できない。したがって本発明の目的
のためには、側鎖間の相互作用の変化による不安定化を
引き起こさないような変異部位および導入残基を適切に
選択することが重要であると考えられる。
【0007】本発明者らは、上記の観点から、「左巻き
らせん型」の二面角をとっている大腸菌リボヌクレアー
ゼHの第95番目のLys残基に着目し、このアミノ酸残
基を種々のアミノ酸残基に置換した結果、第95番目の
アミノ酸残基をグリシン残基またはアスパラギン残基の
いずれかに置換することにより耐熱性が向上することを
見い出し、さらに、グリシン残基またはアスパラギン残
基に置換してもこの残基が「左巻きらせん型」を維持し
ており、しかも主鎖の二面角にほとんど変化がないこと
を変異酵素のX線結晶解析により確認することによって
本発明の有効性を立証した。
【0008】
【詳細な説明】要するに本発明は、タンパク質分子中で
主鎖の立体配置が左巻きらせん型であるアミノ酸残基
を、主鎖の立体配置が左巻きらせん型をとる頻度の高い
他のアミノ酸残基に置換することからなる、タンパク質
分子の安定化法を提供するものである。
【0009】本発明の安定化法を適用するアミノ酸残基
としては、好ましくは「左巻きらせん型」の二面角をとる
グリシン以外のアミノ酸残基であり、より好ましくはグ
リシンおよびアスパラギン以外のそのようなアミノ酸残
基であり、さらに、そのアミノ酸残基の側鎖が他のアミ
ノ酸残基と塩結合、水素結合、疎水結合などの相互作用
をしておらず、溶媒中に突き出ている状態のアミノ酸残
基が最も好ましい。これは、このような条件を満たすア
ミノ酸残基の置換が、主鎖のひずみを解消することによ
ってタンパク質の安定化に寄与し、かつ置換によって元
のアミノ酸残基側鎖の相互作用による安定化効果を減ず
ることがないと考えられるからである。
【0010】左巻きらせん型立体配置を持つ上記のよう
なアミノ酸残基の二面角を大きく変えずにそのひずみを
解消するアミノ酸置換としては、主鎖のひずみを解消で
きるアミノ酸残基への置換であれば何でもよいが、多様
な二面角をとりやすいグリシン残基が最も好ましく、ま
たアスパラギン残基も好ましい。
【0011】本発明の方法は、タンパク質分子中の主鎖
の立体配置が左巻きらせん型である上述のようなアミノ
酸残基を含み、かつそのアミノ酸残基の側鎖がタンパク
質中の他の部分と相互作用していなければ、いかなるタ
ンパク質に対してもその安定性を改良するために適用す
ることができると考えられる。
【0012】以下、本発明の具体的な態様として、天然
型大腸菌リボヌクレアーゼHの第95番目のリジン残基
をグリシン残基またはアスパラギン残基で置換すること
を特徴とするリボヌクレアーゼHの安定化法について記
載する。
【0013】大腸菌の天然型リボヌクレアーゼH(本明
細書に於いて単にリボヌクレアーゼHまたはRNaseH
と称する場合には、天然型の大腸菌リボヌクレアーゼH
を意味するものとする)は155アミノ酸からなる分子
量約19Kdの加水分解酵素であって、DNA/RNA
ハイブリッドのRNA鎖のみを特異的にエンド作用で切
断するという基質特異性を有する。この酵素は、その基
質特異性に基づき、下記のような様々な用途を有し、極
めて利用価値の高い酵素として注目されている。 1) cDNAのクローニングの際の鋳型mRNAの除
去。 2) mRNAのポリA領域の除去。 3) RNAの断片化。
【0014】リボヌクレアーゼHの重要性は遺伝子工学
の発展に伴ってますます増大すると思われるが、この酵
素は大腸菌内での産生量が極めて低いことから、組換え
DNA技術による該酵素の生産が試みられており、既に
BRL、ファルマシアおよび宝酒造等から、組換えDN
A技術によって生産されたリボヌクレアーゼHが供給さ
れている。これらの市販の組換えリボヌクレアーゼH
は、大腸菌を宿主として生産されるものである(金谷等,
J.Biol.Chem.,264,11546-11549(1989))。
【0015】このように利用価値の高いリボヌクレアー
ゼHの安定性、例えば変性剤や熱に対する耐性を高める
ことができれば、従来の組換えリボヌクレアーゼHでは
利用できなかった条件下での利用が可能となる。
【0016】これまでに、本発明者らは組換えDNA技
術を用いて、天然型リボヌクレアーゼHよりも高い安定
性を有する変異型リボヌクレアーゼHを製造したが、そ
の安定化の程度は十分満足し得るものではなかった(特
願平01-284454、特願平03-197703、特願平03-158332)。
また、安定性の改良された変異型リボヌクレアーゼHの
中には酵素活性が低下したものもある(特願平03-19770
7)。また、大腸菌リボヌクレアーゼHよりも極めて高い
安定性を有する好熱菌リボヌクレアーゼHの大腸菌によ
る製造法も報告されているが(金谷等、第2回日本蛋白工
学会年会プログラム・要旨集(1990)、69頁;特願平02-11
1065)、大腸菌を用いて生産した好熱菌リボヌクレアー
ゼHの酵素活性は大腸菌リボヌクレアーゼHよりも低い
ものであった。さらに、好熱菌リボヌクレアーゼHの場
合、精製には尿素を用いて可溶化するという操作が必要
であり、大腸菌リボヌクレアーゼHの場合に較べてその
製造方法が複雑であるという欠点もあった。したがっ
て、より酵素活性が高く、安定性にすぐれた酵素であっ
て、その製造および精製も好熱菌リボヌクレアーゼHよ
りも容易である変異リボヌクレアーゼHをつくることが
できれば、産業上の利用価値がより高いと考えられる。
【0017】
【発明の効果】上記の目的を達成するために、本発明の
方法をその具体的な態様としてリボヌクレアーゼH分子
に適用した。本発明に従って改変したリボヌクレアーゼ
H分子は、その主鎖のひずみの解消によって安定性が増
大している事が確認され、これにより、本発明の方法の
有効性が立証された。即ち、本法により安定性が高めら
れた変異型リボヌクレアーゼHは、従来のリボヌクレア
ーゼHでは変性してしまう温度よりも高い温度でさえも
変性することがない(実施例3参照)ので、このような条
件下での取扱いが可能である。また変異型酵素のX線結
晶構造解析の結果(実施例5)は、本発明の方法に従っ
て選択した変異部位(Lys95)および導入残基(Gly)
が、従来技術(変異型バクテリオファージT4リゾチー
ム、上述)に見られるような問題を伴わない事を明らか
にしている。本発明の方法によって作成した変異型リボ
ヌクレアーゼHは、このような熱安定性の向上だけでな
く耐変性剤性や耐久性等も向上していると期待され(Pfe
il,W.等,“Thermodynamic Datafor Biochemistry and B
iotechnology",349-376頁,Hinz,H.-J.編,Springer-Verl
ag,Berlin,1986;田村等,第2回日本蛋白工学会年会プロ
グラム・要旨集(1990),25頁;Tamura等,Biochemistry,30
(21),5275-5286(1991))、従来のリボヌクレアーゼHよ
りも熱失活しにくく安定に保存することができるので、
取り扱いが容易になることは理解されるであろう。
【0018】また、分子内の「左巻きらせん型」構造を安
定化することによってタンパク質分子を安定化すること
を特徴とする、リボヌクレアーゼHを用いてその有効性
が実証された本発明の方法は、リボヌクレアーゼH以外
のタンパク質についても適用可能であることは明らかで
ある。例えば本発明の安定化法を適用することによって
安定化できると考えられるタンパク質として、マレート
デヒドロゲナーゼ(ブタ心臓)、トリプトファン合成酵素
(ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium))α-サブユ
ニットなどがある。マレートデヒドロゲナーゼではリジ
ン238((φ,ψ)=(65°,11°))およびリジン29
4(同(59°,12°))、またトリプトファン合成酵素
(ネズミチフス菌)α-サブユニットではリジン15(同
(41°,68°))が、それぞれ「左巻きらせん型」の主鎖
構造を有しており、しかもタンパク質の他の部分とこれ
らの残基との相互作用は認められない。したがって、こ
れらの残基のそれぞれまたは一部をグリシン残基あるい
はアスパラギン残基に置換することによって、その活性
に不利な影響を与えることなくこれらのタンパク質を安
定化することが可能と考えられる。またこれ以外のタン
パク質分子でも、その立体構造が明らかにされれば、本
安定化法が適用できる例は多いと考えられる。
【0019】以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細
に説明する。以下に述べる遺伝子操作の一般的手法は、
マニュアル書(Maniatis等,MolecularCloning(1982):A
Laboratoy Manual,Cold Sping Harbor Laboratoy)およ
び試薬の仕様書に従った。
【0020】
【実施例】実施例1 変異型大腸菌リボヌクレアーゼHの設計 大腸菌リボヌクレアーゼHの立体構造はX線解析により
1.48Å分解能で決定されている(Katayanagi等,Natur
e,347,306-309(1990);Katayanagi等,J.Mol.Biol.,223,
1029-1052(1992))。その解析結果によれば、ヘリックス
αIIIとαIVをつなぐループ部分にある95位のリジン
残基の主鎖の二面角(φ,ψ)は(64°,29°)であり、
「左巻きらせん型」の二面角をとっている。また、このル
ープは立体構造上比較的独立した領域を形成しており、
溶媒中に突き出ている。Lys95の側鎖は溶媒中に突き
出ており溶媒分子と水素結合を形成しているが、他のア
ミノ酸残基との相互作用はみられない(図1参照)。通常
Lys残基が「左巻きらせん型」の二面角をとることはまれ
である。一方、グリシン残基およびアスパラギン残基は
リジン残基よりも「左巻きらせん型」の二面角をとりやす
いことがすでに知られている(Nicholson等,J.Mol.Biol,
210,181-193(1989))。そこで、「左巻きらせん型」をとり
やすいアミノ酸残基に置換することによってタンパク質
分子の安定性を改良するために、本酵素の95位のLys
をGlyまたはAsnのいずれかに変換した変異型大腸菌R
NaseH(それぞれK95GおよびK95Nと命名する)
を作成することにした。またこのLys95を、側鎖がβ
−メチル基のみであり「左巻きらせん型」の二面角をとり
にくいAlaに変換した変異型大腸菌リボヌクレアーゼH
(K95A)(金谷等,J.Biol.Chem,266,11621-11627(199
1))についても比較の意味で安定性を調べた。
【0021】実施例2 変異型大腸菌リボヌクレアーゼ
H(K95G)の作成 変異型リボヌクレアーゼH,K95Gを次のようにして
作成した。変異型リボヌクレアーゼH,K95Gを発現
するプラスミドpJK95Gの作成の概略を図2に示
す。
【0022】まず、天然型リボヌクレアーゼHの大腸菌
での発現プラスミドpAK600(特開平03-065188参照)
のrnh遺伝子を鋳型とし、プライマーを用いてPCR法
によりrnh遺伝子への点突然変異の導入を行った。
【0023】プライマーとしては、図3に示す化学合成
したオリゴヌクレオチドを用いた。図2および図3に示
すように、まず、pAK600を鋳型DNAとして、Sp
hIの制限酵素部位を含む5'-プライマー(1)と3'-プラ
イマー(4)により約300bpのDNA断片を、また、変
異導入用5'-プライマー(3)とSalI部位を含む3'-プ
ライマー(2)により約250bpのDNA断片を、それぞ
れPCR反応により増幅し、2種類の遺伝子断片を得
た。PCR反応は市販のGene Amp Kit(Takara)の説明書
に従って行った。得られた約300bpの遺伝子断片を制
限酵素SphIおよびPstIで、また約250bpのDNA
断片を制限酵素PstIおよびSalIで消化した後、消化
物を1.5%アガロースゲル電気泳動にかけ、それぞれ
約300bpおよび約250bpのDNA断片を得た。この
うち、約250bp断片には変異導入部位が含まれてい
る。
【0024】次に、このようにして得られた変異遺伝子
断片を、大腸菌での発現ベクターにサブクローニングす
ることによって発現ベクターを作製した。プラスミドp
JLA504(ドイツMedac社より購入)をSphIおよび
SalIで消化し、約4.9kbの断片を0.7%アガロース
電気泳動により精製した後、上記の約300bpおよび約
250bp断片からなる変異rnh遺伝子SphI−SalI断
片とライゲーションすることにより環化した。ライゲー
ションは市販のライゲーションキット(Takara)を用い、
添付の説明書に正確に従って行った。このようにして得
られたプラスミドで大腸菌HB101株を形質転換し、
形質転換体から変異型リボヌクレアーゼH発現用プラス
ミドベクターpJK95Gを得た。
【0025】上記のようにして得られた形質転換菌エシ
エリシア・コリ(E.coli)HB101/pJK95Gは工
業技術院微生物工業技術研究所に寄託されている(微工
研菌寄第12495号、受託日:平成3年9月10日)。
【0026】次に、変異型リボヌクレアーゼH(K95
G)の生産と精製を以下のようにして行った。大腸菌形
質転換体HB101/pJK95Gを100μg/lのア
ンピシリンを含むLB培地500ml中、30℃で振盪培
養した。培養液の濁度がクレット値で約100まで生育
した時点で、培養温度を42℃に上げ、更に3.5時間
振盪を続け、次いで遠心して集菌した。この時のクレット
値は約250であった。
【0027】得られた菌体を1mM EDTAを含む10
mMトリス塩酸緩衝液(TE)(pH7.5)15mlに懸濁し
た後、氷中で超音波処理により菌体を破砕した。15,
000rpmで30分間、4℃で遠心して得た遠心上清(粗
抽出液)を、TE(pH7.5)51に対して4℃で一夜透
析した。透析後の粗抽出液を同緩衝液で平衡化したDE
-52カラム(5ml)およびP-11カラム(2ml)にこの順
序で通した。この条件下で、変異型リボヌクレアーゼH
(K95G)はDE-52カラムを素通りし、P-11カラ
ムに吸着した。TE(pH7.5)を4ml流した後、NaCl
濃度を0.5Mまで直線的に上昇させることによりP-1
1カラムから変異型リボヌクレアーゼH(K95G)を溶
出させた。変異型リボヌクレアーゼH(K95G)を含む
P-11溶出画分をまとめ、精製標品とした。精製標品
は15%SDS-PAGEで単一バンドを与え、逆相H
PLCでも単一ピークを示した。精製収量は54.2mg
/l培養液であった。精製標品の同定は、アクロモバク
タープロテアーゼIで消化して得られるペプチドフラグ
メントを、逆相HPLCでマッピングして各フラグメン
トピークの溶出位置を確認するとともに、95位のアミ
ノ酸残基を含むペプチドを分取後アミノ酸配列分析する
ことによって行った。
【0028】実施例3 変異型大腸菌リボヌクレアーゼ
H(K95N)の作成 変異型大腸菌リボヌクレアーゼH(K95N)の作成を
以下のようにして行った。変異型大腸菌リボヌクレアー
ゼH(K95N)を発現するプラスミドpJK95Nの作
成の概略を図4に示す。pJK95Nの作成は、実施例
2で述べたpJK95Gの作成と同様な方法で行った。
ただし、pJK95Nの作成では、pJK95Gの作成に
用いたオリゴヌクレオチドプライマー(3)のかわりにオ
リゴヌクレオチドプライマー(5)を用いた(図3参照)。
【0029】得られたプラスミドpJK95Nで大腸菌
HB101株を形質転換して、変異型大腸菌リボヌクレ
アーゼH(K95N)発現用プラスミドを持つ大腸菌株H
B101/pJK95Nを得た。この形質転換菌は工業
技術院微生物工業技術研究所に寄託されている(微工研
菌寄第12706号、受託日:平成4年1月10日)。
大腸菌株HB101/pJK95Nを用いて、実施例2
に記載した変異型リボヌクレアーゼH(K95G)の場合
と同じ方法により目的の変異型大腸菌リボヌクレアーゼ
H(K95G)を生産し、精製した。精製標品は15%S
DS-PAGEで単一バンドを与え、逆相HPLCでも
単一ピークを示した。精製収量は51.9mg/l培養液
であった。精製標品の同定は、アクロモバクタープロテ
アーゼIで消化して得られるペプチドフラグメントを、
逆相HPLCでマッピングして各フラグメントピークの
溶出位置を確認すると共に、95位のアミノ酸残基を含
むペプチドを分取後アミノ酸配列分析することによって
行った。
【0030】実施例4 変異型大腸菌リボヌクレアーゼ
Hの酵素活性と安定性 実施例2および3で作成した変異型大腸菌リボヌクレア
ーゼH(K95GおよびK95N)の酵素活性と安定性
を、変異型大腸菌リボヌクレアーゼH(K95A)と共に
以下のように測定し、天然型酵素と比較した。尚、変異
型大腸菌リボヌクレアーゼH(K95A)は金谷らの方法
(J.Boil.Chem,266,11621-11627(1991))に従って調製し
たものを用いた。
【0031】変異型酵素の酵素活性は、[3H]-M13D
NA/RNAを基質として用い、37℃で1分間に1μ
molの酸可溶性物質を遊離する酵素活性を1ユニット
(U)と定義した。タンパク質量は変異型リボヌクレアー
ゼHが天然型リボヌクレアーゼHと同じ吸光係数を持つ
という仮定のもとにε280=1576M-1・cm-1を用い
て280nmにおける吸光度を測定することにより求め
た。得られた結果を表1に示す。
【表1】 天然型および変異型リボヌクレアーゼHの酵素活性の比較 酵素名 比活性(U/mg) 天然型リボヌクレアーゼH 20 変異型リボヌクレアーゼH(K95G) 23 〃 (K95N) 19 〃 (K95A) 19 いずれの変異型リボヌクレアーゼHも天然型酵素とほぼ
同等の酵素活性を保持していた。
【0032】次に、天然型リボヌクレアーゼHと変異型
リボヌクレアーゼHの熱安定性について測定し、比較し
た。測定はpH5.5での変性の割合を220nmにおける
CD値で熱変性曲線を測定することにより行った。熱変
性実験は光路長2mmセルを用い、1M塩酸グアニジンお
よび1mMジチオトレイトール(DTT)を含む20mM酢
酸ナトリウム(pH5.5)中で行った。熱安定性は全体の
50%が変性するときの温度(Tm)で比較した。Tmの
測定誤差は67%の有意水準で±0.3℃であった。得
られた結果を次の表2に示す。
【表2】 天然型および変異型リボヌクレアーゼHの熱安定性の比較 酵素名 50%変性するときの温度(Tm(℃)) 天然型リボヌクレアーゼH 51.9 変異型リボヌクレアーゼH(K95G) 58.7 〃 (K95N) 55.1 〃 (K95A) 52.3
【0033】天然型酵素に対し、変異型リボヌクレアー
ゼK95GおよびK95Nではそれぞれ6.8℃および
3.2℃の熱安定性の上昇がみられた。これらの変異体
はいずれも本発明の方法に従って、95位の主鎖のひず
みを解消する目的で作成した変異体である。左巻きらせ
ん型の二面角をもつ95位のリジン残基を、本発明の方
法に従って、リジン残基よりも左巻きらせん型の二面角
をとりやすいグリシンまたはアスパラギン残基に置換す
ることによって、予測されたように(実施例1参照)、タ
ンパク質の熱安定性の向上がもたらされた。また本発明
の基礎をなす理論から予測され得るように、アスパラギ
ン残基よりも左巻きらせん型をとりやすいグリシン残基
に置換した変異体K95Gの方が、K95Nよりも安定
化の効果が大きかった。
【0034】これに対し、左巻きらせん型の二面角をと
りにくいアラニン残基に置換した変異体K95Aでは熱
安定性が天然型よりも0.4℃上昇したに過ぎず、Tm
値の測定誤差を考慮すると有意な安定性の増加は認めら
れなかった。
【0035】実施例5 変異型リボヌクレアーゼH(K
95GおよびK95N)のX線結晶構造解析 変異型リボヌクレアーゼH(K95GおよびK95N)の
立体構造を天然型酵素の立体構造と比較することによっ
て変異による立体構造の変化を明らかにするために、変
異型リボヌクレアーゼH(K95GおよびK95N)X線
結晶解析を以下のように行った。
【0036】K95GおよびK95Nの結晶を天然型酵
素結晶化条件(金谷等,J.Biol.Chem.264,11546-11549(19
90))に従って行い、天然型酵素と同型の結晶を得た(表
3)。
【表3】 天然型リボヌクレアーゼHと変異型リボヌクレアーゼHの結晶の比較 天然型RNaseHの結晶 変異型RNaseHの結晶 K95G K95N 空間群 P2111 P2111 P2111 a(Å) 44.06 44.04 44.14 b(Å) 86.85 86.63 87.01 c(Å) 35.47 35.48 35.45
【0037】X線強度の測定はEnraf-Nonius社のCA
D4を用いて行い、1.8Åまでのデータを得た。天然
型酵素の結晶構造(片柳等,Nature 347,306-309(1990))
の結晶構造を初期構造とし、束縛条件下での最小2乗法
による精密化プログラムPROLSQ、及びモデル−電
子密度適合プログラムFRODOを用いて精密化を行っ
た。最終的に、5.0〜1.8A(F>1.0σ(F))のデ
ータを用いたR値は0.185、結合距離の理想値から
のずれの平均2乗の平方根(r.m.s.)はどちらの変異型リ
ボヌクレアーゼHに対しても0.015Åとなった。
【0038】1.8Å分解能で決定した変異型リボヌク
レアーゼH(K95GおよびK95N)の結晶構造は、い
ずれも変異部位近傍のわずかな構造変化を除いてほとん
ど天然型酵素と同一であった。変異型酵素の天然型酵素
に対する(95位のアミノ酸残基側鎖を除く)全原子の相
対的変位のr.m.s.は、K95GおよびK95Nに対し
てそれぞれ0.284Åおよび0.286Åであった。変
異型酵素K95GおよびK95Nの変異部位近傍の結晶
構造を第5図に示す。K95GのGly95並びにK95
NのAsn95の主鎖の二面角(φ,ψ)はそれぞれ(85
°,9°)および(71°,40°)であり、「左巻きらせん
型」を維持していた。観測されたこのグリシン残基の二
面角は、一般にグリシン残基が取り易い二面角でありエ
ネルギー的にも安定であると報告されている値(φ,ψ)
=(90°,0°)(Nicholson等,J.Mol.Biol.,210,181-19
3(1989))に近い値となっている。またK95NのAsn9
5の側鎖アミノ基のNδ原子は、主鎖のカルボキシル基
の酸素原子と水素結合を形成しており(Nδ-O間の距離
は2.7Åであった)、K95Nの安定化に寄与している
と考えられる。
【0039】これらのX線結晶構造解析結果は、グリシ
ン残基またはアスパラギン残基への置換によって95位
の「左巻きらせん型」構造が安定化され、しかもこの置換
がタンパク質の立体構造を大きく変化させなかったこと
を示しており、実施例4で立証された変異型酵素K95
GおよびK95Nの安定化が、この「左巻きらせん型」構
造の安定化によることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 天然型大腸菌リボヌクレアーゼHの立体構造
を示す図である。Aは主鎖のみを示した図であり、Lys
95の位置を矢印で示した。BはLys95近傍のループ
部分のステレオ図である。破線は水素結合を、黒丸は水分
子を表わす。
【図2】 プラスミドpJK95Gの構築を示す模式図
である。
【図3】 部位特異的突然変異を導入するための合成オ
リゴヌクレオチドを示す模式図であり、図中の下線は制
限酵素部位を、・印は変異アミノ酸に対応する塩基をそ
れぞれ示すものである。
【図4】 プラスミドpJK95Nの構築を示す模式図
である。
【図5】 変異型リボヌクレアーゼH(K95Gおよび
K95N)の立体構造を示す図である。Aは変異型酵素
K95Gの95位近傍のループ部分のステレオ図であ
り、Bは変異型酵素K95Nのの95位近傍のループ部
分のステレオ図である。破線は水素結合を表す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C12N 9/00 - 9/99 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 タンパク質分子中のアミノ酸残基のう
    ち、主鎖の立体配置が左巻きらせん型であって、そのア
    ミノ酸残基側鎖が関わる分子内および分子間相互作用が
    該タンパク質の機能の発現および安定化に重要でないこ
    とが知られているグリシン残基およびアスパラギン残基
    以外のアミノ酸残基を、主鎖の立体配置が左巻きらせん
    型をとる頻度の高いグリシン残基またはアスパラギン残
    基に置換することを特徴とする安定化したタンパク質分
    子の製造方法。
  2. 【請求項2】 天然型大腸菌リボヌクレアーゼHのアミ
    ノ酸配列中第95番目のリジン残基をアスパラギン残基
    に置換することを特徴とする請求項1に記載の方法。
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