JP2900532B2 - 凹凸の大きい試料での定量測定法 - Google Patents

凹凸の大きい試料での定量測定法

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Description

【発明の詳細な説明】 【産業上の利用分野】
本発明は、凹凸の大きい試料をEPMAで分析した時の定
量測定法に関する。
【従来の技術】
凹凸の大きい試料をEPMAで定量分析する場合、試料に
電子線を照射した時に、凹部と凸部では、電子線が試料
原子に与える効果力に差が生じる。それは、凸部に照射
された電子線は、凸部の両側面から放出されて、役に立
たなくなる電子線が生じるのに対して、凹部に照射され
た電子線は、両側の表面が高いので、試料から放出され
にくいと云うことがあり、凹部では凸部と比較して、電
子線が測定部内に滞在する時間が長くなり、その分特性
X線の発生確率が高くなる。従って、凹部における測定
値は、凸部における測定値より高い値を示すこととなる
ので、測定値を補正するか、若しくは、上記のような影
響が及ばないような測定方法で行わなければならないと
云う問題であった。 従来、このような凹凸試料に対する分析は、凹凸の影
響が無くなる程の広域に電子線を照射して、平均的な定
量分析を行う方法は提案されているが、微小部において
定量分析を行う方法は、提案されていない。
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、凹凸の大きい試料の微小部をEPMAで定量分
析ができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
凹凸の大きな試料の定量測定法として、或る適当な加
速電圧で加速された電子ビームで励起された凹凸の大き
な測定試料から放射される成分元素の特性X線強度と、
上記と同じ加速電子ビームで励起された成分元素の単体
標準試料から放射される特性X線強度とのX線強度比か
ら測定試料の各成分元素濃度を仮定し、一方予め測定試
料の分析すべき箇所の形状を走査型電子顕微鏡等で実測
して、この実測された試料面形状を有し、上記仮定した
測定試料元素濃度を有する試料モデルを考えてコンピュ
ータシミュレーションを行い、計算によるX線強度比を
求め、同計算によるX線強度比が上記測定によるX線強
度比に等しくなるように、各成分元素濃度を修正し、上
記修正した各成分元素濃度を仮定濃度として上記と同じ
コンピュータシミュレーションを行い、以下同様の計算
の繰返しにより、逐次近似的に測定試料組成を決定する
ようにした。
【作用】
本発明は、本願出願人が出願した特願昭63−45287号
におけるコンピュータシミュレーションによるX線強度
計算方法を用いて、凹凸の大きい試料の定量分析補正を
行おうとするものである。上記コンピュータシミュレー
ションは、電子ビームの加速電圧E及び試料の各元素濃
度Cと凹凸の形状とから、特性X線強度を計算するもの
である。本発明は、上記設定条件において、各元素濃度
CZが不明である試料の測定データから、上記コンピュー
タシミュレーション計算により、各元素濃度CA,CB
CC,……を求めるものである。 試料の成分元素A,B,C,……の組成比が一定であって
も、試料表面に大きな凹凸があれば、特性X線強度は測
定箇所によって変化する。しかし、EPMAのSEM像で凹凸
の形状を把握することができるから、凹凸の形状によっ
て特性X線強度の変化を、コンピュータシミュレーショ
ンによって補正することが可能である。なお、コンピュ
ーターシミュレーションを行う時に、凹凸の形状周辺
で、一旦試料から出射してから再度試料に入射する電子
の軌跡において、電子の平均自由行程の長さを、電子が
試料外に出射している間の距離だけ延ばし、電子が試料
内に走行する軌跡の距離を、試料から出射しない電子の
軌跡の長さと同一にするようにして行うか、若しくは、
電子の軌跡の長さは変更しないで、電子が試料内で走行
している間だけ、特製X線が一定の確率で発生するよう
にして計算する。 まず、言葉の定義を明らかにしておく。試料の成分元
素A,B,C,……の各単体標準試料の特性X線強度に対す
る、試料の各元素の特性X線強度の比を、その成分元素
のX線強度比と云う。 試料と各成分標準試料との実測から、各成分の実測X
線強度比KA0,KB0,……を求める。この強度比から比例
的に各成分の第1近似濃度CA1,CB1,……を決める。 第1近似濃度のCA1,CB1,……を用いて、コンピュー
タシミュレーションを行うと、この第1近似濃度におけ
る各成分のX線強度比KA1,KB1,……が計算できる。こ
の強度比は、実測とは一致しないことが多い。そこで元
素A,B,C,……の濃度を、 CA2=CA1×KA0/KA1 等により修正する。但し、CA2+CB2+……=1となるよ
うに修正する。 上記第2近似濃度CA2,CB2,……のもとで、コンピュ
ータシミュレーションを行い、各元素のX線強度比を求
める。以下上述と同じ手順を繰返し、逐次近似して行
く。各成分のX線強度比における誤差が、或る一定値以
下になった時の計算による各成分元素濃度CZを試料の各
成分濃度とする。 なお、上記コンピュータシミュレーションによる計算
の詳細は、本願出願人が出願した特願昭63−45287号に
記載されている。
【実施例】
第1図に本発明の一実施例のフローチャートを示す。
第1図において、測定前に測定試料Sの構成元素を調査
しておく。EPMAのSEM像で試料表面の凹凸の形状を表示
し、測定試料Sにおける所望の測定箇所に、適当な加速
電圧E0による電子ビームを照射し、測定試料Sの各元素
A,B,Cの特性X線強度IAS,IBS,ICSを測定し(ア)、各
元素A,B,C,の純品標準試料Kの特性X線強度IAK,IBK
ICKを測定し(イ)、上記測定によって得られた試料S
の特性X線強度IAS,IBS,ICSと、標準試料Kの特性X
線強度IAK,IBK,ICKとの比によって、各元素A,B,CのX
線強度比KA0,KB0,KC0を計算する(ウ)。各元素A,B,C
の第1近似濃度CA1,CB1,CC2を、CA1;CB1;CC1
KA0;KB0;KC0,CA1+CB1+CC1=1となるように設定す
ると共に、予め調査した試料の組成及び電子ビーム照射
点の試料表面形状,電子ビームの加速電圧E0等を設定す
る(エ)。上記動作で設定された各元素濃度CA1,CB1
CC1の測定試料Sと、各元素の標準試料Kのコンピュー
タミュレーションを行い、第1近似濃度CA1,CB1,CC1
による各元素A,B,CのX線強度比KA1,KB1,KC1を計算す
る(オ)。誤差数値E(i)を、E(i)=Σ|(KZ0
−KZi)/KZ0|として計算し(カ)、E(i)<ε0
どうか判定する(キ)。但し、Zは元素A,B,C、iは逐
次近似計算回数とし、ε0は適宜な値とする。E(i)
<ε0であれば、補正計算が適正に行われたとして、計
算で得られた各元素濃度CZを表示装置に表示する
(ク)。E(i)<ε0でない時は、濃度CZi補正計算を
下式のように行う。各元素A,B,Cの濃度CAi,CBi,C
Ciを、 CAi’=CAi-1×KA0/KAi-1 CBi’=CBi-1×KB0/KBi-1 CCi’=CCi-1×KC0/KCi-1 CAi=CAi'/(CAi’+CBi’+CCi’) CBi=CBi'/(CAi’+CBi’+CCi’) CCi=CCi'/(CAi’+CBi’+CCi’) として補正計算を行い、第i近似濃度CZiを設定する
(ケ)。但し、iは逐次近似計算の回数で、初回(i=
1)は動作(エ)ですでに仮定されているので、上記計
算式には、i=2,3,……が用いられる。上記動作(ケ)
で設定された各元素濃度CAi,CBi,CCiと、加速電圧E0
とする試料のコンピュータミュレーションを行い、強度
比KAi,KBi,KCiを計算する(コ)。以下動作(カ)か
ら動作(コ)までの動作を、動作(キ)でYESの判定が
でるまで繰り返す。 上記実施例では、成分元素をA,B,C,の3元素に限定し
て説明しているが、成分元素数は4以上でも、同様な方
法で元素濃度を決定できるのは勿論である。 なお、上記コンピュータシミュレーションによる計算
と、本願出願人が出願した特願昭63−45287号によるコ
ンピュータシミュレーションと異なる点は、凹凸の側壁
から出射したり入射する電子があるために、そのような
場合における計算方法をどうするかと云う点である。例
えば、第2図に示すように、凹部の側壁で入出射する電
子Aがある場合、試料内の電子の平均自由行程による軌
跡が、a1からa2であり、その軌跡内に凹部内の軌跡a3−
a4が含まれた時には、電子の軌跡の終点をa5迄延長し、
a1からa5において、試料内の軌跡の長さ(a1〜a3とa4〜
a5の和)が、平均自由行程に等しくなるようにする。以
下、凹部内に電子の終点がきた場合でも、凹部内の軌跡
が、電子の平均自由行程に含まれないようして、試料内
を走行する電子の軌跡の長さが、平均自由行程となるよ
うに電子の終点を設定するようにする。また、第3図に
示すように、凸部の側壁で入出射する電子Bがある場
合、凹部における場合と同様に、試料内の電子の軌跡
が、平均自由行程による軌跡の長さと等しくなるように
する。
【効果】
本発明によれば、コンピュータシミュレーションによ
って、大きな凹凸のある試料における各元素の測定によ
る強度比と計算による強度比が等しくなる各元素濃度を
求めることが可能になり、大きな凹凸のある試料の定量
分析を行うことができるようになった。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明一実施例のフローチャート、第2図は凹
部における電子の軌跡の説明図、第3図は凸部における
電子の軌跡の説明図である。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G01N 23/22 - 23/227

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】或る適当な加速電圧E0で加速された電子ビ
    ームで励起された凹凸の大きな測定試料Sから放射され
    る成分元素A,B…の特性X線強度IAS,IBS…と、上記と
    同じ加速電子ビームで励起された成分元素の単体標準試
    料から放射される特性X線強度IAK,IBK…とのX線強度
    比KA0,KB0…から測定試料の各成分元素濃度CA1,CB2
    を仮定し、他方予め測定試料Sの分析すべき部分につい
    て実測された凹凸の形状と同じ凹凸形状を有し、上記仮
    定した測定試料元素濃度を有する試料モデルを想定して
    コンピュータシミュレーションを行い、計算によるX線
    強度比KA1,KB1…を求め、同計算によるX線強度比が上
    記測定によるX線強度比KA0,KB0…に等しくなるよう
    に、各成分元素濃度を修正し、上記修正した各成分元素
    濃度を仮定濃度として上記実測の試料面凹凸形状を用い
    て上記と同じコンピュータシミュレーションを行い、以
    下同様の計算の繰返しにより、逐次近似的に測定試料組
    成を決定することを特徴とする凹凸の大きな試料での定
    量測定法。
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