JP2897067B2 - セラミック多層基板の製造方法 - Google Patents

セラミック多層基板の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、セラミック多層基板の製造方法に関するも
のであり、特に銅等の卑金属配線を有するセラミックグ
リーンシート積層体の焼成方法に関する。
従来の技術 エレクトロニクス回路の高密度実装のために広く採用
されているセラミック多層基板においては、近年、高性
能化のため配線導体の耐マイグレーション性の向上、高
導電化が要求されており、配線導体に銅などの卑金属ペ
ーストを用い、窒素等の非酸化性雰囲気中で、比較的低
温で同時焼成することも検討されている。
ところでセラミック多層基板を製造する場合、焼成工
程において、基板となる誘電体グリーンシート中にバイ
ンダとして含まれる樹脂、可塑剤等の有機成分を完全に
燃焼除去する必要がある。この脱バインダが不完全であ
ると、焼成体中に炭素質の残渣が残留し、結果として焼
結不足による強度劣化や絶縁不良が生ずる。
ところが、通常脱バインダ工程では、バインダの分解
ガスにより積層体近辺が局所的に還元性雰囲気になるた
め、バインダは燃焼しにくい。この傾向は積層数の多い
多層基板や低温焼結基板ではいっそう顕著で、長時間の
加熱や厳密な雰囲気調整を要する。特に銅導体等の卑金
属導体を用い、卑金属の酸化を避けるための非酸化性雰
囲気において同時焼成する場合、導体の接着性、導電
性、半田付性を損なわずに短時間でバインダーを完全燃
焼させることが非常に難しく、従来、樹脂の選択、焼成
雰囲気や焼成工程の改良等種々の工夫がなされてきた。
例えば、雰囲気に少量の酸素や水蒸気等を混合したり、
脱バインダ工程と焼結工程で雰囲気を変えたりする試み
もなされているが、導体の特性に悪影響を及ぼしたり、
最適条件の決定や調整が困難であったり、又工程も煩雑
になるなど十分満足のいくものではない。更に近年で
は、実装密度を上げるために積層数を増加したり、焼成
時間の短縮化など工程の合理化が要求されていることか
ら、バインダの効率的な除去がますます重要な課題とな
っている。
銅多層ではグリーンシート積層体近辺での局所的な雰
囲気調整も検討されており、例えば特開平2−34571号
公報には、酸化銅のような還元可能な金属酸化物を未焼
成の積層体に隣接して配置した状態で焼成し、積層体近
辺のガス成分を厳密に調整して、炭素質残渣を短時間で
効果的に除去する方法が記載されている。しかしこの方
法でも、金属酸化物の前処理など多くの工程が必要で複
雑なため、より簡便で効果的な調整方法が望まれる。
又、通常セラミック多層基板は、第5図に模式的に示
すように、未焼成の積層体3を耐火性のセッター6に載
せて焼成しており、従来、空孔率10〜50%程度の空孔を
有するセッターを使用して積層部品を焼成することも試
みられた。しかし非酸化性雰囲気中において卑金属導体
と同時焼成を行う場合は、完全な脱バインダを行うこと
ができず、特にセッターに接した面の表面導体やその付
近の有機バインダを十分に除去できないため、半田付
性、導電性等の導体特性が悪くなる欠点もあることが解
明された。又、有機バインダを完全に除去するため脱バ
インダ工程に長時間をかけると、焼成炉内に浮遊する燃
焼生成物であるカーボンミスト等のダストが、基板上に
露出している導体層の表面に付着して、半田濡れ性、導
電性を悪化させる原因となる。従って、このような導体
表面の汚染をなくすことも必要である。
発明が解決しようとする課題 本発明の目的は、非酸化性雰囲気中でも導体の特性に
悪影響を与えることなく、有機バインダ成分を効率的に
完全に除去することができ、かつ焼成中の導体表面の汚
染もない、セラミック多層基板の焼成方法を提供するこ
とにある。
課題を解決するための手段 本発明者等は、セラミックグリーンシート積層体を焼
成するに際して、脱バインダが良好に行われにくい非酸
化性雰囲気中においては、ガス交換を十分に行う必要が
あることを解明し、焼成雰囲気との関係でセッターの空
孔率について研究し、空孔率が非常に高い多孔質セッタ
ーを用いることにより、前述の問題点を解決した。
即ち本発明は、卑金属導体ペーストで配線パターンを
形成したセラミックグリーンシートの積層体を、非酸化
性雰囲気中で焼成して多層回路基板を製造する工程にお
いて、該積層体を空孔率55〜85%の多孔質セッターに載
せて焼成することを特徴とする、セラミック多層基板の
製造方法である。又本発明は、前述の方法において、該
多孔質セッターに載せたセラミックグリーンシート積層
体の上部に、保護多孔質セッター又は保護セラミックグ
リーンシートを被せて焼成するセラミック多層基板の製
造方法、更に積層体を載せた該セッターを複数段に段積
みして焼成するセラミック多層基板の製造方法をも含む
ものである。
セラミックグリーンシートとしては、従来より知られ
ているセラミックスやガラスセラミックス、結晶化ガラ
ス、セラミックスとガラスとの混合物などで構成されて
いるものが、いずれも使用できる。
セッターの材質は、誘電体と反応せず、高温まで安定
な耐火性のものであればよく、従来使われている金属酸
化物や複合金属酸化物、セラミックスなどを使用するこ
とができる。例えばムライト、アルミナなど比較的熱伝
導性の良いものが好ましい。
焼成は窒素雰囲気等の非酸化性雰囲気で行うが、微量
の水蒸気や酸素を含有させてもよい。
作用 本発明は、未焼成の積層体を空孔率55〜85%の多孔質
のセッターに載せて焼成することが特徴であり、これに
よりセッターの気孔を通して炉内ガスが積層体近くまで
流入し、積層体付近に発生する分解ガスの排気が極めて
良好になる。従って脱バインダ工程を含めて、焼成を非
酸化性雰囲気中で行った場合でも、グリーンシート積層
体中のバインダ成分を短時間で完全に分解除去すること
ができ、高強度で絶縁特性の優れたセラミック多層基板
が得られる。しかも、セッターに接した面の表面導体及
びその付近のグリーンシートの脱バインダも完全になる
ため、セッター側及びその反対側の表面導体の焼成を同
時に行うことができるようになる。更に、脱バインダが
効率的に行われることにより、短時間焼成が可能になる
ので、カーボンミスト等の炉内ダストの導体への付着が
回避され、導電性、半田付性の優れた表面導体が形成さ
れる。
本発明においては、多孔質セッターの空孔率は55〜85
体積%でなくてはならない。非酸化性雰囲気中で卑金属
導体と同時焼成を行う場合においては、空孔率が55%未
満であると、ガス交換が十分に行われず、脱バインダが
不完全になる。85%を越えるとセッター自身が脆く取扱
いが困難であるほか、未焼成の積層体の支持点が減少す
るために、焼成中部分的に撓みが発生し、基板表面の平
滑性が損われる。
多孔質セッター上に載せた積層体の上部に、更に同様
な多孔質セッターを被せて焼成すると、焼成中炉内に浮
遊するダストの付着を更に防止する効果がある。上に被
せるこの保護セッターは、下に敷くものと同様なガス交
換作用のあるものでなくてはならない。保護多孔質セッ
ターの代わりに別の誘電体グリーンシートを第3図のよ
うに被せても、同様の保護効果がある。この保護グリー
ンシートは脱バインダ工程で同様に多孔質になり、排気
を妨げない。保護グリーンシートは積層体と同質のも
の、あるいは焼結特性の近似しているものを用いるのが
好ましい。なお、積層体に被せる保護セッター又は保護
グリーンシートは、積層体を完全に覆わず、例えば第2
図に示されるように四隅に支柱を置いたり、グリーンシ
ートを被せる場合は積層体との間に敷粉を敷いたりする
ことにより、空隙を作るのが望ましい。筐体等、蓋を被
せるようにして積層体を完全に覆った形で焼成すると、
脱バインダが不完全になり易い。
又、積層体を載せたセッターを、例えば第4図に示さ
れるように複数段に段積みして焼成すると、本発明の効
果を減ずることなく大量に生産できるので、製造時間の
短縮化が図れる利点がある。又、断面H型匣鉢として知
られている形状の匣鉢(昭和陶園株式会社製)を用いる
と、積重ね段数を多くしても熱が均一に分布するので好
ましい。
実施例 実施例1 無機成分としてMgO−B2O3−SiO2−BaO−ZrO2−Al2O3
−CaO系ガラスセラミックス粉末を含む下記の誘電体組
成物を、ドクターブレード法で成形し、厚さ約120μm
のグリーンシートとした。
ガラスセラミックス粉末 100重量部 アクリル系樹脂 12〃 溶剤 28〃 可塑剤 3〃 上記グリーンシート上に銅ペーストで銅ペーストで内
部配線パターンと表面配線パターンを印刷した後、該シ
ート10枚を重ねて温度80℃、圧力100kg/cm2で加熱加圧
して、上下両面に表面導体パターンを有する積層体を形
成した。この積層体を空孔率70%のムライト製セッター
に載せ、湿潤窒素を流したベルト炉中、ピーク温度1010
℃にて50分間保持、全工程5時間サイクルの条件で焼成
を行った。
得られたセラミック多層基板の脱バインダ特性、絶縁
抵抗及びセッター側表面導体の半田付性を調べ、表1に
示した。但し絶縁抵抗は、銅配線を有していない積層体
について、40℃で100Vの電流電圧を印加したときの電流
値を測定して求めたものである。表面導体の外観を観察
すると、セッター側及びその反対側の両面共しみや変色
等の汚れはなかった。
実施例2 空孔率60%のムライト製セッターを用いる以外は、実
施例1と同様にしてセラミック多層基板を製造し、脱バ
インダ特性、絶縁抵抗及びセッター側表面導体の半田付
性を調べて表1に示した。
比較例1〜3 セッターの空孔率を表1の通りとする以外は、実施例
1と同様にしてセラミック多層基板を製造し、特性を表
1に併せて示した。なお、比較例1のみアルミナ製セッ
ターを使用した。
実施例1、2及び比較例1〜3の結果より、本発明の
セッターを用いて焼成すると、短時間でバインダの完全
除去ができ、又表面導体の脱バインダ不足による半田付
性の劣化もなくなることがわかる。
実施例3〜5、比較例4〜5 実施例1において、表2に示す空孔率のセッターを用
い、更に該セッターに載せたグリーンシート積層体の上
に、第2図に示されるようにセッター1と同一の材質か
らなる支柱4を用いて、同一材質の保護セッター1aを載
せて焼成する以外は、同様にしてセラミック多層基板を
製造した。特性を表2に示す。尚各実施例において、表
面電極はセッター側もその反対側も汚れの付着は全くな
く、脱バインダも良好に行えており、優れた半田付性を
示した。
実施例6〜7 表2に示す空孔率のムライト製セッターに、実施例1
で作成したものと同一の積層体を載せ、該積層体の上に
アルミナ粉末を敷粉として敷き、更に第3図に示すよう
に積層体と同一組成の保護をセラミックグリーンシート
5を被せて、実施例1と同様に焼成してセラミック多層
基板を製造した。得られたセラミック多層基板の特性
を、表2に併せて示す。
実施例8〜10 第4図に示すように、実施例1で作成したものと同一
のグリーンシート積層体を載せた空孔率70%のムライト
製セッターを、セッターと同一の材質の支柱を用いて3
段積み重ね、更にセッター1段を被せて、実施例1と同
様に焼成してセラミック多層基板を製造した。得られた
3個のセラミック多層基板は、いずれも脱バインダ性が
優れ、又表面導体の汚れや半田付性の阻害もなかった。
発明の効果 本発明のセッターを用いた焼成方法によれば、非酸化
性雰囲気中でも、短時間でグリーンシート中の有機バイ
ンダ成分が安全に分解除去されるので、高強度で絶縁特
性の優れたセラミック多層基板を、簡単に効率良く製造
することができる。又、表面導体への炉内ダストの付着
やセッター側導体の脱バインダ不足がなく、優れた導電
性、半田付性を有する表面導体が得られる。従って表面
導体との同時焼成が両面とも可能になる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明に用いる多孔質セッターに積層体を載
せた例を示す模式図である。第2図〜第4図は本発明の
他の例であり、第2図(a)(b)は本発明の多孔質セ
ッターに載せたグリーンシート積層体の上に、更に別の
保護多孔質セッターを被せたもの、第3図は多孔質セッ
ターに載せた積層体の上に、更に保護セラミックグリー
ンシートを被せたもの、第4図(a)(b)は積層体を
載せたセッターを複数段に段積みしたものを示す図であ
る。 第5図は従来の無孔性のアルミナ製セッターを用いた例
である。 1:多孔質セッター 1a:保護多孔質セッター 2:気孔、3:積層体 4:支柱、5:保護グリーンシート 6:無孔性セッター
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 遠藤 隆 東京都青梅市末広町2丁目9番地3 昭 栄化学工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平1−258495(JP,A) 特開 昭62−272589(JP,A) 特開 昭59−147486(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H05K 3/46 B32B 15/04

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】卑金属導体ペーストで配線パターンを形成
    したセラミックグリーンシートの積層体を、非酸化性雰
    囲気中で焼成して多層回路基板を製造する工程におい
    て、該積層体を空孔率55〜85%の多孔質セッターに載せ
    て焼成することを特徴とする、セラミック多層基板の製
    造方法。
  2. 【請求項2】多孔質セッターに載せたセラミックグリー
    ンシート積層体の上部に、保護多孔質セッター又は保護
    セラミックグリーンシートを被せて焼成する、請求項1
    に記載されたセラミック多層基板の製造方法。
  3. 【請求項3】積層体を載せたセッターを複数段に段積み
    して焼成する、請求項1又は2に記載されたセラミック
    多層基板の製造方法。
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