JP2896717B2 - 液状食品中の香気成分の回収方法及び装置 - Google Patents

液状食品中の香気成分の回収方法及び装置

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JP2896717B2 JP3123920A JP12392091A JP2896717B2 JP 2896717 B2 JP2896717 B2 JP 2896717B2 JP 3123920 A JP3123920 A JP 3123920A JP 12392091 A JP12392091 A JP 12392091A JP 2896717 B2 JP2896717 B2 JP 2896717B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、醤油,果汁等の液状食
品に含まれる香気成分をエタノールあるいは水等の溶媒
中に回収する方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近時、米菓,スナック菓子,ジュース等
の食品に香気を付加して食品の付加価値を高めることが
行われている。
【0003】この場合、添加する香気成分自体は、他の
食品から回収する必要があるが、従来は、食品を高温の
水蒸気に接触させ、該食品の香気成分を水蒸気に回収す
る水蒸気蒸留法、食品を液状化して吸着剤に通し、該食
品の香気成分を吸着剤に吸着させて回収する吸着法、食
品を水又は食品に使用可能な有機溶媒、例えばエタノー
ルに接触させ、該食品中の香気成分を水,エタノール等
に回収する溶媒抽出法等が行われている。
【0004】しかし、前記水蒸気蒸留法では、回収した
香気成分が熱によって変質することがあり、また、前記
吸着法では、吸着剤に回収した香気成分を取り出すこと
が面倒で、香気成分を使用する際に不都合があった。
【0005】この点で、前記溶媒抽出法によれば、前記
水蒸気蒸留法に比べ、熱を用いないので香気成分を変質
させずに回収でき、また、前記吸着剤に比べ、香気成分
を含む溶媒をそのまま食品に添加して使用できるので極
めて実用的である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記溶
媒抽出法は、被抽出食品が乾燥食品の場合には利用でき
る。しかし、醤油,果汁等の液状食品に利用すると、エ
タノールによる抽出の場合は、該液状食品中に完全に溶
け込む性質があるため、エタノールを液状食品に混和し
た後、香気成分を回収するには、該混和液を蒸留しなけ
ればならない。
【0007】しかし、蒸留を行うと、該混和液中の香気
成分が加熱によって劣化するので、目的とする香気成分
が得られにくい欠点を有する。
【0008】一方、水による抽出の場合は、液状食品中
に完全に溶け込んでしまうため、蒸留しても香気成分の
回収は非常に困難で、単に香気成分が薄まるに過ぎな
い。
【0009】このように、食品中の香気成分を水,エタ
ノール等に回収する溶媒抽出法は、被抽出食品が乾燥食
品の場合には効果的であるが、液状食品には利用できな
いのが実情である。
【0010】本発明は前記に鑑み、液状食品中の香気成
分を,水,エタノール等の溶媒に回収する回収方法及び
置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成する
ため、本発明は、液状食品中の香気成分を、液体状態あ
るいは超臨界状態の二酸化炭素に回収し、次いで、該液
体状態あるいは超臨界状態の二酸化炭素を気化してエタ
ノールあるいは水等の溶媒に接触させ、前記二酸化炭素
中の香気成分をエタノールあるいは水等の溶媒に回収す
ることを特徴とする液状食品中の香気成分の回収方法を
提供するとともに、液状食品中の香気成分を、液体状態
あるいは超臨界状態の二酸化炭素に回収する手段と、前
記香気成分を含有する液体状態あるいは超臨界状態の二
酸化炭素を気化する手段と、気化させた二酸化炭素をエ
タノールあるいは水等の溶媒に接触させて該二酸化炭素
中の香気成分をエタノールあるいは水等の溶媒に回収す
る手段とからなることを特徴とする液状食品中の香気成
分の回収装置を提供するものである。
【0012】なお、前記液状食品とは、醤油,嗜好飲料
類,各種煮汁,果汁等、元々液状で使用される食品の
他、固型食品を液状化処理したものも含む。また、超臨
界状態の二酸化炭素とは、その臨界点(31℃、75.
2Kg/cm2 )以上の温度,圧力の状態にある二酸化
炭素をいう。
【0013】
【作 用】液状食品を、液体状態あるいは超臨界状態の
二酸化炭素に接触すると、該液状食品中の香気成分は、
前記液体状態あるいは超臨界状態の二酸化炭素中に溶解
・移行する。香気成分を含む液体状態あるいは超臨界状
態の二酸化炭素を気化させてエタノール,水等の溶媒に
接触させると、二酸化炭素中の香気成分はエタノール、
水等の溶媒に溶解・移行して回収される。
【0014】
【実施例】以下、本発明を、図面に示す一実施例に基づ
いて、さらに詳細に説明する。
【0015】図1は、本発明の回収装置の構成を示すも
ので、図において、1は外周部にジャケット2を有する
中空筒体で形成された抽出カラムであり、ジャケット2
に温水を流すことにより抽出カラム1内を所望の温度に
制御できるように形成されている。
【0016】この抽出カラム1には、二酸化炭素容器3
内の液体状態の二酸化炭素をポンプ4で昇圧して抽出カ
ラム1の底部から、また、食品貯槽5内の液状食品をポ
ンプ6で昇圧して抽出カラム1の頂部から、それぞれ導
入される。液体状態の二酸化炭素と液状食品とは、抽出
カラム1内で向流接触して液状食品中の香気成分が液体
状態の二酸化炭素中へ溶解・移行する。
【0017】この場合、液体状態の二酸化炭素と液状食
品との接触温度は、0〜70℃が好ましい。このような
温度範囲ならば、香気成分は熱的悪影響を受けないの
で、変質せずに液体状態の二酸化炭素に溶解・移行す
る。なお、0℃以下では液状食品が凍結することがあ
る。また接触圧力は、上記温度範囲で二酸化炭素が液状
である範囲で、また、抽出カラム1等の装置の製造コス
トを考慮して、40〜500Kg/cm2 が好ましく、
50〜300Kg/cm2 がより好ましい。なお、抽出
カラム1内にラシヒリング等の充填物や多段の多孔板を
挿入したり、撹拌装置を設けて撹拌することにより、液
体状態の二酸化炭素と液状食品との接触効率を向上さ
せ、香気成分の回収率を向上させることができる。
【0018】また、超臨界状態の二酸化炭素は、液体状
態の二酸化炭素より香気成分の抽出能力が高いので、超
臨界状態の二酸化炭素を用いることにより抽出効率をさ
らに向上させることができる。さらに、液状食品にエタ
ノールを添加して上記抽出処理を行うと、食品の香気成
分をより短時間に二酸化炭素中に溶解・移行させること
ができる。
【0019】上記抽出カラム1内で、香気成分が抽出さ
れた液(抽出残液)は、抽出カラム1の下部に設けた弁
7を介して抽出残液溜8に回収される。
【0020】抽出カラム1内で食品中の香気成分を回収
した液体状態の二酸化炭素は、抽出カラム1の頂部から
導出し、圧力調整弁9で所定の圧力まで減圧した後、加
熱器10で加熱されて全量気化し、吸収カラム11の底
部から吸収カラム11内に導入される。上記所定の圧力
の範囲は、通常、大気圧乃至70Kg/cm2 に設定さ
れるが、前記抽出カラム1における接触圧力や二酸化炭
素の循環使用等を考慮して適宜最適な圧力にすればよ
い。
【0021】一方、吸収液タンク12内の吸収液、例え
ばエタノールは、ポンプ13で所定の圧力、即ち、上記
二酸化炭素の圧力に応じた圧力に昇圧されて吸収カラム
11の頂部から吸収カラム11内に導入される。吸収カ
ラム11内で、前記気体状態の二酸化炭素とエタノール
は向流接触し、気体状態の二酸化炭素中の香気成分がエ
タノールに吸収される。この吸収カラム11の操作温度
は、前述の二酸化炭素の減圧後の圧力等に応じて適宜設
定されるものであるが、通常は、前記同様に0〜70℃
が好ましく、10〜40℃がより好ましい。
【0022】なお、前記加熱器10の加熱量は、圧力調
整弁9での減圧状態によって適宜に定める。即ち、圧力
調整弁9で減圧すると、抽出カラム1から導出した液体
状態の二酸化炭素は、一部が気化した気液二相状態で導
出するので、加熱器10は、液相部を加熱して気化させ
る。
【0023】香気成分を吸収したエタノールは、吸収カ
ラム11の下部に設けた弁14を介して製品タンク15
に取り出される。また、吸収カラム11上部から導出さ
れる香気成分を失った気体状態の二酸化炭素は、冷却器
16で液化され、逆止弁17を経て循環使用される。
【0024】上記のようにして、気体状態の二酸化炭素
とエタノールとは、吸収カラム11内で接触するが、両
者の接触状態をを良くするため、吸収カラム11内に充
填物や多段の多孔板を挿入してもよく、また撹拌装置を
付けて撹拌してもよい。さらに、製品タンク15内の吸
収液を、前記吸収液タンク12に戻す濃縮ライン18及
びポンプ19を設け、エタノールを循環使用することに
より、香気成分の濃縮度を高めてエタノールの利用効率
を向上させることもできる。
【0025】なお、上記実施例ではエタノールを吸収液
として説明したが、水の場合にも同様にして実施するこ
とができる。
【0026】このように、上記回収装置を用いることに
より、液状食品中の香気成分は最終的にエタノール,水
等の溶媒に回収される。このようにして得られた香気成
分は、これらの溶媒に溶解するので大気圧状態で容易に
保存することができ、また、香気成分を含むエタノー
ル,水等からなる香気物質を直接に食品に添加して使う
ことができる。
【0027】[実験例]前記構成の回収装置を用いて、
実際に流通している醤油と同等のモデル醤油を作成し、
該モデル醤油に含まれる香気成分を回収する実験を行っ
た。モデル醤油は、所定量の純水に、グルコース4%,
食塩16.5%,乳酸0.3%、酢酸0.15%,アミ
ノ酸2%を加え、さらに表1に示す9種類の香気成分を
それぞれ3gずつ添加して作成した。
【0028】抽出カラム1は内径25mm,高さ500m
m,吸収カラム11は内径200mm,高さ400mmと
し、共に接触効率を上げるため、内部にステンレス製の
ラシヒリングを充填した。
【0029】上記モデル醤油を10ml/分の割合で、
また、200kg/cm2 に調圧した液体状態の二酸化
炭素を11リットル/分(大気圧、室温の気体に換算し
た場合)の割合で抽出カラム1へ導入した。この際、抽
出カラム1内は、ジャケット2内に温水を通流して40
℃にセットした。
【0030】抽出カラム1から導出した液体状態の二酸
化炭素を50Kg/cm2 に減圧し、全量気化させて吸
収カラム10内に導入するとともに、該吸収カラム10
内にエタノールを150ml/分の割合で導入して接触
させた。
【0031】以上の操作の結果を表1に示す。表1にお
いて、はモデル醤油作成時に添加した量(単位m
g)、は液体状態の二酸化炭素に溶解・移行した各香
気成分の量(単位mg)で、これは、抽出残留液溜8内
に残留した各香気成分の量から逆算して求めたものであ
る。さらに、はエタノールに溶解・移行した各香気成
分の量(単位mg)、はエタノールへの回収率(単位
%)を示す。
【0032】
【表1】
【0033】表1から明らかなように、各成分が効率よ
くエタノールに回収されていることが判る。
【0034】上記実験例は、醤油の場合であるが、果汁
等の他の液状食品についても、同様に回収することがで
きることを確認した。
【0035】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
液体状態または超臨界状態の二酸化炭素を介して食品中
の香気成分を水,エタノール等の溶媒に回収するので、
前記食品が液状食品であっても、該液状食品中の香気成
分を水,エタノール等の溶媒に効率よく回収することが
できる。また、このようにして得られた香気成分を含む
香気物質は、各種食品に前記液状食品の香気を付加する
物質として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の回収装置の一実施例を示す系統図で
ある。
【符号の説明】
1…抽出カラム 3…二酸化炭素容器 5…食品貯
槽 8…抽出残液溜 9…圧力調整弁 10…加熱器 11…吸収カラム
12…吸収液タンク 15…製品タンク 16…冷却器 18…濃縮ライ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 北倉 芳久 千葉県野田市野田339番地 キッコーマ ン株式会社内 (72)発明者 橋本 彦尭 千葉県野田市野田339番地 キッコーマ ン株式会社内 (72)発明者 浜野 光年 千葉県野田市野田339番地 キッコーマ ン株式会社内 (56)参考文献 特開 平1−117761(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A23L 1/22 - 1/237 A23L 1/24 B01D 11/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液状食品中の香気成分を液体状態あるい
    は超臨界状態の二酸化炭素に回収し、次いで、該液体状
    態あるいは超臨界状態の二酸化炭素を気化してエタノー
    ルあるいは水等の溶媒に接触させ、前記二酸化炭素中の
    香気成分をエタノールあるいは水等の溶媒に回収するこ
    とを特徴とする液状食品中の香気成分の回収方法。
  2. 【請求項2】 液状食品中の香気成分を、液体状態ある
    いは超臨界状態の二酸化炭素に回収する手段と、前記香
    気成分を含有する液体状態あるいは超臨界状態の二酸化
    炭素を気化する手段と、気化させた二酸化炭素をエタノ
    ールあるいは水等の溶媒に接触させて該二酸化炭素中の
    香気成分をエタノールあるいは水等の溶媒に回収する手
    段とからなることを特徴とする液状食品中の香気成分の
    回収装置。
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