JP2895828B1 - 転炉による粗銅の製造方法 - Google Patents

転炉による粗銅の製造方法

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Abstract

【要約】 【課題】 転炉の造かん期に添加される固体状珪酸鉱の
溶解速度を適正に維持し、造かん期に生成される溶融ス
ラグのSiO2濃度を所定のレベルに保持して、Feの酸化を
促進し、引き続き行われる造銅期の精錬操業を円滑化す
る。 【解決手段】 Fe分が低い溶融マットに羽口から酸素富
化空気を吹き込み精錬する転炉精錬の造かん期に、炉内
に添加する固体状態の珪酸鉱の粒度を5〜20mm範囲とし
て添加・精錬する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、転炉による粗銅の
製造方法に係り、とくに粗銅の生産性向上に関する。
【0002】
【従来の技術】図1に示すように自熔炉1は、円筒状の
シャフト2、セットラ3およびアップテイク4からなっ
ており、シャフト2の頂部から乾燥した粉状の銅精鉱
(例えば、[Cu]:30%、[Fe]:22%、[S] :30%)を酸
素富化空気(酸素濃度30%) と共に装入する。銅精鉱
は、雰囲気温度で自然点火し、銅精鉱中の硫黄、鉄の酸
化反応熱によって炉内を高温に保ち、銅精鉱を瞬時に酸
化溶融する。
【0003】このとき珪酸分を主成分とする溶剤を適当
量添加し、FeS の選択反応を持続させて主組成がCu2S、
FeS からなるCuが60%、Feが15%、S が20%レベルの溶
融マット5およびFeが35〜40%、SiO2が30〜35%の溶融
スラグ6を生成させる。なお、ここで示す%は、重量パ
ーセントを意味している。セットラ3内に溜まった溶融
マット5の温度は1160℃、また溶融スラグ6の温度は12
40℃程度であり、それぞれマットホール7およびスラグ
ホール8から炉外に排出される。排ガスは、SO2 濃度が
13〜16%、温度 1260 ℃程度であり、アップテイク4を
経由してボイラ(図示せず)に導いて排ガスを冷却する
と共に、ボイラで発生した水蒸気を、タービン発電機に
使用して発電を行う。
【0004】次に、自熔炉1で溶製した組成がCu2S、Fe
S からなるCu60%、Feが15%、S が20%レベルの溶融マ
ット5は、傾転可能な円筒横型の転炉9に装入される。
そして、転炉9内に装入した溶融マット5中に炉体胴部
に配設した複数の羽口10から酸素富化空気を吹き込むと
共に、主としてSiO2からなる粒径25〜50mmの珪酸鉱を炉
内に添加して精錬する。造かん期には、FeS の酸化( 2F
eS+3O2 =2FeO+2SO2)および造かんが行われる。造か
ん期に生成した溶融スラグ11(Fe:50 %、Cu:7%、Si
O2:20 %)を炉外に除去する。
【0005】引き続き炉内に存在する主としてCu2Sから
なる溶融白かわ12に空気または酸素富化空気を吹き込ん
で精錬する造銅期(反応は大局的にはCu2S+O2=2Cu +
SO2である) を経て銅分98%程度の粗銅を製造してい
た。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前述と同じ
組成の銅精鉱([Cu]:30%、[Fe]:22%、[S] :30%)
を自熔炉1に装入して製錬する際に、酸素富化空気の酸
素濃度を前記30%から50%にする等の自熔炉1に対する
操業技術の改善により、Cu2S、FeS からなるCu63%、Fe
が12%、Sが20%レベルのCu分が高く、Fe分の低い溶融
マット5が製造できるようになった。このCu品位がアッ
プした溶融マット5を転炉9に装入し、羽口10から酸素
富化空気を吹き込んで精錬すると、溶融マットのFe分が
減少しているため、酸化発熱量が低下すると共に造かん
期も短くなる。
【0007】このため、炉内に添加する主としてSiO2
らなる粒径25〜50mmの珪酸鉱が十分に溶解することがで
きず、未溶解となって溶融スラグ11中に残留し、溶融ス
ラグ11の流動性が悪くなる。溶融スラグ11の流動性が悪
くなると、溶融スラグ11と溶融白かわ12の分離性が悪く
なり、溶融白かわ12中に溶融スラグ11が混入し易くな
る。また、溶融スラグ11は、粉砕、選鉱しCu分を回収し
ているが、その際に溶融スラグ11中に存在する未溶解の
SiO2分の脱水性が悪く、選鉱工程でトラブルを起こすと
いう問題があった。
【0008】本発明は、短い造かん期内に問題を起こす
ことなく珪酸鉱を溶解するという課題を克服するために
なされたものであり、自熔炉で製造されたFe分が低い溶
融マットであっても、転炉の造かん期に炉内に添加され
る珪酸鉱が適度の溶解速度で溶解され、造かん期に生成
される溶融スラグのSiO2濃度を20%のレベルに容易に保
持することができ、引き続き行われる造銅期の精錬操業
がスムーズに実施でき、Cu分98〜99%(このレベルを、
本発明では Cu98 %程度の粗銅という) の粗銅を確実に
製造できる転炉による粗銅の製造方法を提供することを
目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】自熔炉により製造された
Cu分が高く、Fe分が低い溶融マット(Cu2S、FeS からな
るCu63%、Feが12%、Sが20%)を転炉に装入し、造か
ん期に、転炉に酸素富化空気を吹き込んで精錬する場
合、溶融マットのFe分が通常より低いため造かん期が短
くなる。そこで、従来使用していた粒径25〜50mmの珪酸
鉱の溶解時間を短縮するため、珪酸鉱を破砕し、粒径を
小さくすることに着目し、種々実験操業を重ねた結果本
発明を達成することができた。
【0010】前記目的を達成するための本発明は、転炉
内に装入した主としてCu2S、FeS からなるFe分の低い溶
融マットに、羽口から酸素富化空気を吹き込むと共に炉
内に主としてSiO2からなる固体状態の珪酸鉱を添加して
精錬し、生成した溶融スラグを炉内から除去し、引き続
き炉内に存在する主としてCu2Sからなる溶融白かわに空
気または酸素富化空気を吹き込んで精錬する造銅期を経
て銅分98%程度の粗銅を製造するに際し、前記固体状態
の珪酸鉱の粒度を5〜20mm範囲として添加・精錬するこ
とを特徴とする転炉による粗銅の製造方法であり、Fe分
の低い溶融マットのFe分は20%以下、好適には12%以下
である。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。図1に示す自熔炉1において製造
されたCu品位のアップした溶融マット5(Cu 2S、FeS か
らなるCu63%、Feが12%、Sが20%)をマットホール7
から排出し、これを円筒横型の転炉9に装入する。造か
ん期では、転炉9の側面下方に配設した複数の羽口10か
ら酸素富化空気を吹き込んで精錬が行われる。転炉9内
に装入した溶融マット5のFe分が従来より低いため造か
ん期が短くなるが、これに備えて粒径5〜20mm範囲に調
整した主としてSiO2からなる所定量の珪酸鉱を添加す
る。
【0012】なお、珪酸鉱の粒径を5〜20mm範囲にした
のは、5mm未満の粒度にすれば珪酸鉱の表面積増加によ
り溶解性は向上するはずであるが、一部分が溶融スラグ
11に添加されることなく雰囲気ガス流に吹き飛ばされて
炉口を覆うフード( 図示せず) から排ガスと共に系外に
逃げるからである。また、珪酸鉱の粒径が20mmを超える
と、溶融マットのFe分が20%以下と低いことからくる酸
化発熱量の減少のため珪酸鉱の溶解性が低下して未溶解
分が生じ、これが溶融スラグ11中に未溶解珪酸鉱として
残留する危険性があるからである。
【0013】本発明によれば、珪酸鉱の粒径を5〜20mm
範囲に調整して添加するので、溶融マット5のFe分が従
来より低いことに起因して、造かん期が比較的短くても
溶融マット5のFe分が酸化するときの酸化反応熱により
珪酸鉱が未溶解分を残さずに完全に溶解される。生成す
る溶融スラグ11は所定の1250℃レベルの温度であるので
良好な流動性を有すると共に、SiO2の濃度が目標とする
20%レベルに保持される。したがって、溶融マット5の
Fe分が反応性よく酸化されて溶融スラグ11に捕捉され
る。
【0014】造かん期に生成した溶融スラグ11を炉外に
除去した後、炉内に存在する主としてCu2Sからなる溶融
白かわ12は、造銅期に転炉9の羽口10から空気または酸
素富化空気を吹き込んで精錬すれば、溶融白かわ12に残
っている20%レベルのS分が酸化されSO2 となって除去
され、銅分98%程度の粗銅を製造することができる。前
記実施の態様では自熔炉で製造した溶融マットがCu63
%、Feが12%、Sが20%からなる比較的Cu分が高く、Fe
分が12%と低い溶融マットを、転炉で酸素富化空気を用
いて精錬する場合について説明したが、本発明は、Cu分
が60〜70%、Fe分が20%以下の溶融マットを転炉に装入
し、造かん期および造銅期をへて精錬する場合にも適用
できるのは言うまでもない。この場合にも、造かん期に
添加した珪酸鉱の溶解性向上により、溶融スラグがSiO2
20%レベルの濃度に容易に保持され、溶融マットのFe分
の酸化反応が促進されることになり、同様の作用および
効果が得られる。
【0015】
【発明の効果】本発明によれば、転炉精錬の造かん期に
炉内に添加する固体状態の珪酸鉱の粒度を、5〜20mm範
囲として添加・精錬するので、珪酸鉱が排ガス中に飛散
することなく適度の溶解速度で未溶解分を残すことなく
完全に溶解され、造かん期に生成される溶融スラグを目
標のSiO2濃度レベルに確実に調整できる。その結果、造
かん期における溶融マットのFe分の酸化反応が促進さ
れ、引き続き行われる造銅期における精錬が好調に維持
され、銅分98%程度の粗銅を生産性よく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明および従来に係る自熔炉と転炉とを組み
合わせた銅精錬工程を示す説明図である。
【符号の説明】
1 自熔炉 2 シャフト 3 セットラ 4 アップテーク 5 溶融マット 6、11 溶融スラグ 7 マットホール 8 スラグホール 9 転炉 10 羽口 12 溶融白かわ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C22B 15/06

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 転炉内に装入した主としてCu2S、FeS か
    らなるFe分が低い溶融マットに、羽口から酸素富化空気
    を吹き込むと共に炉内に主としてSiO2からなる固体状態
    の珪酸鉱を添加して精錬し、生成した溶融スラグを炉内
    から除去し、引き続き炉内に存在する主としてCu2Sから
    なる溶融白かわに空気または酸素富化空気を吹き込んで
    精錬する造銅期を経て銅分98%程度の粗銅を製造するに
    際し、前記固体状態の珪酸鉱の粒度を5〜20mm範囲とし
    て添加・精錬することを特徴とする転炉による粗銅の製
    造方法。
  2. 【請求項2】 前記Fe分が低い溶融マットのFeは20%以
    下であることを特徴とする請求項1記載の転炉による粗
    銅の製造方法。
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