JP2893127B2 - イムノアッセイにおける偽陰性反応の抑制方法 - Google Patents

イムノアッセイにおける偽陰性反応の抑制方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、リポソームを用いたイムノアッセイ法にお
いて偽陰性反応を抑制して、試料中の被検物質を正確に
測定する方法に関する。
〔従来の技術〕
近年、臨床分析、生化学分析等の分野において、リポ
ソームを利用したイムノアッセイの研究が盛んに行われ
ている。
すなわち、リン脂質及びコレステロールを主要構成成
分とし、内部に親水性マーカーを封入し、表面に架橋剤
を介して抗原または抗体を固定化したリポソーム試薬を
調製し、これを抗原または抗体を含む試料中に加え、こ
れに補体、更に必要により二次抗体を加えると、抗原−
抗体反応が生起し、これに伴って補体が活性化されてリ
ポソームが破壊され、封入されているマーカーが放出さ
れ、この放出量は試料中の被検物質(抗原または抗体)
の量に比例するので、この放出されたマーカー量を定量
することによって、試料中の被検物質の量を測定するこ
とができるものである。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、ヒト血清を試料とした場合、試料中に
含まれる補体成分等の影響を除去するために試料の不活
化処理(非働化処理)が必要であった。また、試料中に
含まれる、測定対象の被検物質以外の成分がリポソーム
と反応し、試料中に被検物質が存在しないにもかかわら
ず、マーカーを放出してしまうという、いわゆる非特異
反応の問題があった。
これらの問題を解決せんと、本発明者らは種々研究を
行い、動物赤血球破砕物(ストローマ)、糖類、糖脂質
類、塩化コリン、マーカー未封入リポソーム等の非特異
反応吸収剤を反応系中に存在させることにより非特異反
応を吸収する方法を見出し、先に特許出願した(特願平
1−290029号)。
その結果、従来必要とされていた試料の不活化処理を
することなく、被検物質を測定することが可能となっ
た。しかし、本発明者は更に、不活化処理をしていない
ヒト血清を試料とする場合には、被検物質たる抗原が存
在するにもかかわらずマーカーが放出されない、偽陰性
反応を示す場合があることを知見した。従って、リポソ
ームを用いるイムノアッセイ法において正確に被検物質
を測定するにはこの偽陰性反応を抑制することが必要で
ある。
〔課題を解決するための手段〕
斯かる実情において、本発明者は鋭意研究を行った結
果、その反応液中にヒトC1インヒビターまたはフェニル
メチルスルフォニルフルオライドを添加すると、面倒な
試料の不活化処理を行う必要がなく、しかも偽陰性反応
を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、リン脂質及びコレステロールを
主要構成成分とし、内部に親水性マーカーが封入されて
おり、表面に架橋剤を介して抗原または抗体が固定され
ているリポソーム試薬、動物補体及び更に必要に応じて
二次抗体を、被検試料中の被検物質である抗体または抗
原と反応させ、該リポソーム試薬から放出されるマーカ
ーを定量することにより被検物質を測定するイムノアッ
セイ法において、反応系中にヒトC1インヒビターまたは
フェニルメチルスルフォニルフルオライドを存在せしめ
ることを特徴とする偽陰性反応の抑制方法を提供するも
のである。
本発明で使用される偽陰性反応抑制剤であるヒトC1イ
ンヒビターは公知の方法により血清から精製することも
できるが、市販の精製品を使用することができる。この
ヒトC1インヒビターは濃度が0.006IU以上になるように
反応系中に存在せしめればよいが、特に0.006〜0.06IU/
mlが好ましい。またフェニルメチルスルフォニルフルオ
ライド(以下、「PMSF」と略称する)は水に難溶性であ
るので、1%程度のアセトン溶液に調製し反応液中に添
加するのが好ましい。このPMSFは反応系中に0.125〜2.5
mMになるように存在させるのが好ましい。
本発明のイムノアッセイ法は、反応系に偽陰性反応抑
制剤を添加する以外は公知の方法と全く同様にして行わ
れる。
〔発明の効果〕
本発明の偽陰性反応抑制剤を使用することによって、
従来必要とされていた試料の不活化処理を省略できると
共に、偽陰性反応を抑制し、リポソームを利用したイム
ノアッセイ法の精度を上げることができる。
〔実施例〕
次に実施例を挙げて説明する。
実施例1 (1)抗HBsAgモノクローナル抗体感作リポソームの調
製 ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)1μモ
ル、コレステロール1μモル、ジパルンミトイルホスフ
ァチジルエタノールアミン0.1μモルをナシ型フラスコ
にとり、脂質を溶解していたクロロホルムをロータリー
エバポレーターで留去した。更に1時間真空デシケータ
ー中で乾燥後、ナシ型フラスコに0.2Mカルボキシフルオ
レセイン(CF)溶液100μlを入れ、激しく振とうし、
ナシ型フラスコのガラス壁上の脂質薄膜をはがしてCF封
入リポソームを調製した。未封入のCFは、0.01M炭酸緩
衝液(0.15M MaCl含有、pH9.2)で遠心洗浄して分離し
た。
また、あらかじめ、0.1M酢酸緩衝液、pH4.0に透析処
理した2mg/mlの抗HBsAgマウスモノクローナル抗体1ml
に、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)を終濃度が10mMと
なるように添加し、室温で1時間反応後、未反応の過ヨ
ウ素酸ナトリウムを除去するため、前述の炭酸緩衝液で
平衡化したセファデックスG−25カラムでゲル濾過し
た。ゲル濾過により得られた抗体分画1mlをリポソーム
ペレットに加え懸濁し、4〜10℃で18〜20時間ゆっくり
攪はんしながら反応させた。反応後、リポソーム懸濁液
に終濃度が0.05mg/mlになるように水素化ホウ素酸ナト
リウム(NaBH4)を添加し、室温で30分間反応した。未
反応の水素化ホウ素酸ナトリウムをゼラチン・ベロナー
ル緩衝液(GVB、pH7.5)で遠心洗浄して除去後、同緩衝
液1mlに懸濁した。
(2)HBs抗原測定におけるC1インヒビター添加の効果 あらかじめ、逆受身赤血球凝集反応(R−PHA法)でH
Bs抗原の有無を調べたヒト血清をウサギ・ストローマ50
μg/ml、マーカー不含ジチオポリジル化リポソーム2.5
μM(リン濃度)、Ca2+及びMg2+を添加したGVB(GV
B2+)で31倍希釈した。この試料を2分して、一方は56
℃で30分間加熱処理(不活化処理)した。これらの試料
をマイクロタイタープレートの各ウェルに25μlづつ入
れ、この各ウェルにGVB2+あるいはヒトC1インヒビター
(0.1 IU/ml)を添加したGVB2+で500倍希釈した(1)
で調製した抗HBsAg抗体感作リポソームを25μl加え、3
7℃で60分間反応した。この各ウェルに更にウサギ抗HBs
抗体25μl及びモルモット補体25μlを添加し、更に、
37℃で60分間反応後、10mMEDTA含有ベロナール緩衝液
(pH7.5)100μlを各ウェルに加え反応を停止した。
リポソームより放出したCF量はマイクロプレート用蛍
光光度計(コロナ電機製、MTP−32)で測定した。CF放
出率を、血清の代わりに10%Tritonx−100を加えた系で
の蛍光強度を100%、GVB2+を加えた系の蛍光強度を0%
として算出し、CF放出率5%以下をHBs抗原陰性、5〜1
0%を±、10%以上を陽性と判定した。
検体の不活化処理の有無及びヒトC1インヒビター添加
の有無によって得られた結果を表−1に示した。尚数値
はマーカー放出率を、( )内は判定を示す。
表−1の結果から、不活化処理なしでアッセイした場
合、マーカー放出率の低下が認められる検体が存在し、
結果的に判定が偽陰性化する場合があることが示され
た。また、ヒトC1インヒビターを添加することにより、
この偽陰性反応が抑制されて、マーカー放出率が不活化
処理をした場合と同等に回復し、正確な判定ができるよ
うになった。この際、ヒトC1インヒビターの添加によっ
て、抗原陰性検体の判定が陽性化することは無かった。
また、この測定系において、ヒトC1インヒビターは検体
希釈液あるいはリポソーム希釈液に添加して効果を有
し、二次抗体あるいは補体に添加してもその効果が低か
った。
(3)ヒトC1インヒビター濃度の影響 (2)と同様の方法を用いて、ヒトC1インヒビター濃
度と偽陰性反応抑制効果に関して調べた。その結果を第
1図に示した。図には、偽陰性反応を示すHBs抗原陽性
検体(●、■、▲)の他に、偽陰性反応を示さないHBs
抗原陽性検体(○)と抗原陰性検体(□)も示した。第
1図より、ヒトC1インヒビター濃度に依存して偽陰性反
応が抑制された。また、過剰のヒトC1インヒビターを添
加しても、抗原陰性検体のマーカー放出率等に影響を与
えなかった。
実施例2 HBs抗原測定におけるPMSF添加の効果 実施例1(1)項に示した方法と同様の方法で調製し
た抗HBs抗原マウスモノクローナル抗体感作リポソーム
を用いて、実施例1(2)項で示した方法と同様にPMSF
添加の効果について調べた。PMSFは100mMのアセトン溶
液を調製し、リポソーム希釈溶液に5mMになるように添
加して用いた。その測定結果を表−2に示した。尚数値
はマーカー放出率を、( )内を判定を示す。
表−2により、HBs抗原陰性検体Hは、PMSFの添加で
判定が陽性化することはなかった。また、偽陰性反応を
示さない抗原陽性検体IもPMSFの添加で影響を受けなか
った。検体J、K、Lは偽陰性化する抗原陽性検体であ
るが、PMSFの添加によって判定が陽転した。しかしなが
ら、高濃度のPMSFの添加は、却ってHBs抗原の検出感度
の低下をもたらした。このため、反応系中のPMSFは1.25
mM程度で使用することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
第1図はヒトC1インヒビターの添加濃度(反応系中の濃
度は添加濃度の1/4)とマーカー放出率との関係を示す
図面である。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】リン脂質及びコレステロールを主要構成成
    分とし、内部に親水性マーカーが封入されており、表面
    に架橋剤を介して抗原または抗体が固定されているリポ
    ソーム試薬、動物補体及び更に必要に応じて二次抗体
    を、被検試料中の被検物質である抗体または抗原と反応
    させ、該リポソーム試薬から放出されるマーカーを定量
    することにより被検物質を測定するイムノアッセイ法に
    おいて、反応系中にヒトC1インヒビターまたはフェニル
    メチルスルフォニルフルオライドを存在せしめることを
    特徴とする偽陰性反応の抑制方法。
  2. 【請求項2】反応系中におけるヒトC1インヒビターの濃
    度が0.006IU/ml以上である請求項1記載の偽陰性反応の
    抑制方法。
  3. 【請求項3】反応系中におけるフェニルメチルスルフォ
    ニルフルオライドの濃度が0.125〜2.5mMである請求項1
    記載の偽陰性反応の抑制方法。
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