JP2883058B2 - 洗濯機 - Google Patents

洗濯機

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は洗濯機、さらに詳細
には、洗濯機構成部材にカビ、酵母、細菌等の微生物が
繁殖するのを抑制し、前記洗濯機構成部材の変色や材料
劣化、さらには前記した微生物の洗濯物への汚染を防止
するのに好適な洗濯機に関する。
【0002】
【従来の技術】洗濯機の構成部材中、洗浄液と接触する
主たる部材、例えば洗濯槽や回転翼には、ポリプロピレ
ンを主体とした熱可塑性樹脂、ほうろう、ステンレスス
チール等が使用されている。
【0003】ところで、洗濯機を長期にわたつて使用し
ていると、前記したごとき洗濯槽や回転翼等、洗浄液と
接触する部分が黒色や褐色等、いわゆるくすんだ色に変
化することが知られている。そして、その原因も、前記
したごとき洗濯機構成部材の表面には、洗濯機に特有の
微生物であるペニシリウム属、ムコール属、キユーブラ
リア属、クラドスポリウム属、アルタナリア属、ヒユー
ミコーラ属を中心とするカビ、さらには酵母、細菌等の
微生物が繁殖しているためであることが既に判つてい
る。
【0004】なお、塩化ビニルの樹脂については、日本
防菌防黴学会発行の「防菌防黴」Vol.4.No.10(19
76)T478〜T488に記載のように、抗菌性物質
の添加による材料劣化の防止効果が確認されている。す
なわち、抗菌性物質を熱可塑性樹脂に分散配合する例と
して、硬質や軟質のポリ塩化ビニル樹脂からなる配管用
部品等に抗菌性物質を分散配合する例が知られている。
これは、ポリプロピレンに比べて射出成形時の樹脂融解
温度が約140℃と比較的低いため、当該ポリ塩化ビニ
ル樹脂には、耐熱性の低い抗菌性物質を容易に配合でき
るのがその理由であつて、これにより、広い抗菌スペク
トルを得ることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、洗濯機
構成部材として多用されている既述のポリプロピレン、
すなわち耐溶剤性に優れたポリプロピレンを射出成形す
るに際しては、当該ポリプロピレンの成形樹脂温度を約
200℃以上の高温にする必要があり、反面、約200
℃以上もの高温に耐え得る抗菌性物質は少ない。
【0006】一方、特公昭63−15874 号公報には、セル
フクリーニング機能を有する全自動洗濯機が示されてい
る。すなわち、全自動洗濯機は、洗濯槽と脱水槽とを並
設した2槽式洗濯機と異なり、洗濯兼脱水槽(回転槽)
の外周に水受槽を配置したものであるが、この全自動洗
濯機を長期にわたつて使用していると、回転槽の外周面
及び水受槽の内周面に石けんかすや繊維屑等が付着し、
特に水受槽の内周面隅部には、その付着量が多くなるこ
とが知られている。
【0007】しかして、セルフクリーニング機能、すな
わち水受槽に給水・貯水した状態で回転槽を回転させる
桶洗い工程を付設した前掲特公昭63−15874 号公報に記
載の全自動洗濯機によれば、微生物の栄養源となる金属
石けんや繊維屑等、その付着物の堆積層厚さが厚い場合
には、比較的効果的に前記付着物を除去することができ
る。
【0008】しかしながら、本発明者等がおこなつた実
験によると、前記した付着物の堆積層厚さが薄い場合に
は、なかなかその付着物を除去することができず、この
ような場合、金属石けん等の付着物を栄養源として微生
物が容易に繁殖し、回転槽や水受槽、さらには主に洗浄
液を介して回転翼にまで微生物汚染が広まつて、前記各
部が黒色や褐色等、くすんだ色に変化し、かつ材料劣化
が進むことに加えて、洗濯機使用者が定期的なセルフク
リーニング操作を怠つた場合には、すすぎ洗いに際し、
前記付着物が剥れ、濃い色に着色された、微生物を含む
汚染物がすすぎ水中に分散し、洗濯物を汚す結果を招く
という不具合を生じる。なお、本発明者等が意図的にお
こなつた前記セルフクリーニング操作の懈怠後、すすぎ
水を分析した結果、多量のカビ類が検出されたが、この
カビ類は例えばアレルギー性疾患の原因ともなり得、衛
生上好ましくないことは、ここに改めて説明するまでも
ない。
【0009】本発明の目的は、洗濯機そのものに機械的
セルフクリーニング機能を殊更に付設することなく、カ
ビ、酵母、細菌等の微生物の繁殖を抑え、また洗濯兼脱
水槽の製作性に優れ、しかも高速脱水率が損なわれるこ
とのない改良された洗濯機を得ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】そして、前記目的を達成
するため、本発明は、洗濯兼脱水槽内に収容された洗濯
物を回転翼を撹拌して汚れを落とす洗濯機において、前
記洗濯兼脱水槽は金属で形成され、かつ前記洗濯兼脱水
槽の表面に微生物繁殖抑制物質を分散配置したものであ
る。
【0011】洗濯作業中、洗濯機構成部材のなかで、洗
濯液の接する部分には、洗浄液中の各種汚れ、例えば衣
類から除去された脂肪や蛋白質等(すなわち、人体から
の脂肪や蛋白質に代表される有機物汚れ)、また泥、砂
等の無機物汚れ、さらに衣類の繊維屑や合成洗剤や石け
ん、またさらにこれらに含まれる界面活性剤成分中の金
属塩等が付着するが、前記付着物は、すすぎ動作時にお
けるすすぎ液の回転作用だけでは完全に除去されないた
め、洗濯動作を繰返しおこなうことにより、徐々に洗濯
機構成部材の表面に堆積する。なお、これらの汚れは、
カビ、酵母、細菌等、各種微生物の栄養分となり、また
洗濯機の内部環境は比較的高湿度であるため、微生物が
繁殖し易い。そして、前記微生物中、特にカビ類は、繁
殖が進んで密度が増すと、その胞子によつて濃い色を帯
びるものが多く、これがすすぎ液中に分散すると、洗濯
物を汚染する要因となる。
【0012】これに対し、本発明において、洗濯兼脱水
槽は金属で形成され、かつ前記洗濯兼脱水槽の表面に微
生物繁殖抑制物質を分散配置したものであつて、本発明
によれば、洗濯機そのものに機械的セルフクリーニング
機能を殊更に付設することなく、カビ、酵母、細菌等の
微生物の繁殖を抑え、また洗濯兼脱水槽の製作に際し、
抗菌性物質を熱可塑性樹脂中に練り込んで射出成形する
必要がないので、抗菌性物質が約200℃を越える環境
にさらされることはなく、必ずしも耐熱性の高い抗菌性
物質を使用する必要がないので洗濯兼脱水槽の製作性に
優れ、しかも洗濯兼脱水槽は堅牢な金属で形成されてい
るので高速脱水率が損なわれることはない。
【0013】なお、実願昭49−12167 号(実開昭50−10
3471号)には、洗濯兼脱水槽を金属で形成した技術が開
示されている。
【0014】しかしながら、洗濯兼脱水槽を単に金属で
形成した場合、この洗濯兼脱水槽に金属石けん等が付着
すると、金属石けん等の付着物を栄養源として微生物が
繁殖することになる。
【0015】これに対し、本発明によれば、洗濯機構成
部材である洗濯兼脱水槽の表面に微生物繁殖抑制物質を
分散配置したものであって、この構成によれば、微生物
の繁殖を抑制することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明を、全自動洗濯機に
適用した場合を例にとり、図面を参照して説明する。
【0017】図2において、1は全自動洗濯機の回転槽
を示し、この回転槽1は、洗濯兼脱水槽としての機能を
有する。回転槽1の外面底部中央には、回転翼2を軸3
に取り付けるためのフランジ4が嵌入する取付座5が形
成されており、この取付座5と同心状に環状リブ6が形
成されており、また前記取付座5の半径方向には、放射
状リブ7が互いに交差して形成されている。回転槽1の
外周側部には、水平方向に走る横リブ8と、縦方向に走
る縦リブ9とが互いに交差して形成されており、またバ
スケツト1の上部開口部周縁には、バランスウエイト1
0を内蔵する溝11が形成されている。一方、回転槽1
の外周には、前記各リブ6,7,8,9と干渉しない部
分において、多数の脱水用孔13,13…が穿設されて
いる。他方、回転槽1は、洗濯機外枠14に内装した水
受槽15内に回転自在に支持されている。水受槽15の
下底部には、モーター16からの回転を回転翼2の軸3
に伝達するクラツチ部17が設けられている。また、水
受槽15は、外枠14に吊棒18,18により、スプリ
ング19,19を介して弾性的に懸吊支持されている。
図2中、20は外枠カバー、21は操作パネルを示して
いる。
【0018】そして、図2において、図1に示す洗濯機
構成部材は、回転翼2及び水受槽15に用いられるもの
であつて、図1において、洗濯機構成部材の主材である
ポリプロピレン樹脂22には、当該洗濯機構成部材の剛
性をさらに向上させるために、タルク23が10%配合
されており、このタルク23とポリプロピレン樹脂22
との総量に対し、耐熱性に優れかつ、抗菌作用の大きな
2,3,5,6テトラクロロ4(メチルスルホニル)ピ
リジン24が、重量比で0.1 %から2.0 %の範囲で
配合されている。ここで、洗濯機構成部材の増量や剛性
向上等を目的として用いる無機材料としては、タルク2
3の他に、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ等の
粒子状無機材料、さらにはガラス繊維等の繊維状無機材
料を必要に応じて任意の量配合することができる。ま
た、抗菌性物質としては、前記の2,3,5,6テトラ
クロロ4(メチルスルホニル)ピリジン24以外に、
2,4,5,6(テトラクロロイソフタロニトリル)も
耐熱性に優れていると同時に、抗菌作用も大きく、なお
前記両抗菌性物質を併用するようにしてもよい。また、
前記材料に加えて、酸化防止剤、分散剤等の添加剤を配
合してもよく、さらに顔料の添加による着色も可能であ
る。
【0019】図3は、図2に符号1で示す回転槽に同図
(図3)に示す洗濯機構成部材を使用するようにしたも
のであつて、図3において、洗濯機構成部材は、プレス
成形による金属材料からなる。そして、前記金属材料の
表面には、合成樹脂をベースとする塗膜層25が形成さ
れており、この塗膜層25の中には、抗菌性物質とし
て、2,4,5,6(テトラクロロイソフタロニトリ
ル)26が、塗膜総重量に対して重量比で0.1から2.
0%の範囲で分散配合されている。しかして、この構成
によれば、抗菌性物質を熱可塑性樹脂中に練り込んで射
出成形する必要がないので、部品加工中、抗菌性物質が
約200℃を越える環境にさらされることはなく、耐熱
性の低い各種の抗菌性物質を用いることができる。すな
わち、イミダゾール系化合物、フエノール系化合物、ピ
リジン系化合物、ハロゲン系化合物、ジチオカーバメイ
ト系化合物、ポリハロアルキルチオ系化合物、チアゾリ
ン系化合物、第4級アンモニウム塩系化合物、有機金属
系化合物等を単独あるいは複数併用することができる。
また、塗膜層25の膜形成材料として例えばエポキシ樹
脂を挙げることができるが、これ以外に、ウレタン系、
アクリル系、アルキツド系、メラミン系、ポリエステル
系、フエノール系等の樹脂を挙げることもできる。
【0020】
【発明の効果】以上本発明によれば、洗濯兼脱水槽は金
属で形成され、かつ前記洗濯兼脱水槽の表面に微生物繁
殖抑制物質を分散配置したものであつて、本発明によれ
ば、洗濯機そのものに機械的セルフクリーニング機能を
殊更に付設することなく、カビ、酵母、細菌等の微生物
の繁殖を抑え、また洗濯兼脱水槽の製作に際し、抗菌性
物質を熱可塑性樹脂中に練り込んで射出成形する必要が
ないので、抗菌性物質が約200℃を越える環境にさら
されることはなく、必ずしも耐熱性の高い抗菌性物質を
使用する必要がないので洗濯兼脱水槽の製作性に優れ、
しかも洗濯兼脱水槽は堅牢な金属で形成されているので
高速脱水率が損なわれることのない改良された洗濯機を
提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】抗菌性洗濯機構成部材の一部詳細図である。
【図2】全自動洗濯機の内部構造を示す縦断面図であ
る。
【図3】図1と異なる抗菌性洗濯機構成部材の一部詳細
図である。
【符号の説明】
1…回転槽、2…回転翼、15…水受槽、22…ポリプ
ロピレン樹脂、23…タルク、24…2,3,5,6テ
トラクロロ4(メチルスルホニル)ピリジン、25…塗
膜層、26…2,4,5,6(テトラクロロイソフタロ
ニトリル)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) D06F 37/02

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 衣類が投入される洗濯兼脱水槽と、前記
    洗濯兼脱水槽を収納する外槽と、前記外槽を外枠より防
    振支持する支持装置と、前記洗濯兼脱水槽の底部に設け
    られた回転翼と、前記洗濯兼脱水槽及び前記回転翼を駆
    動する駆動装置を有する洗濯機において、 前記洗濯兼脱水槽は金属で形成され、かつ前記洗濯兼脱
    水槽の表面に微生物繁殖抑制物質を分散配置したことを
    特徴とする洗濯機。
  2. 【請求項2】 請求項1において、前記微生物繁殖抑制
    物質はかび及び細菌の繁殖を抑制する物質であることを
    特徴とする洗濯機。
  3. 【請求項3】 請求項2において、前記微生物繁殖抑制
    物質はイミダゾール系微生物繁殖抑制物質であることを
    特徴とする洗濯機。
  4. 【請求項4】 請求項2において、前記微生物繁殖抑制
    物質はチアゾリン系微生物繁殖抑制物質であることを特
    徴とする洗濯機。
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