JP2881931B2 - 気体分離用複合膜 - Google Patents

気体分離用複合膜

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は混合気体より、特定の成分をより多く透過さ
せる気体透過膜に関する。特に本発明は、気体透過性が
高く、分離性も高く、かつ耐有機蒸気性が高い気体透過
膜を提供するものである。
[従来の技術] 近年、省資源、省エネルギーの観点から高分子素材か
らなる気体透過膜が注目されている。かかる気体透過膜
は、気体透過性が高く分離性が高いことが必要である
が、そのためには、多孔性支持膜上に機能膜層を設けた
複合膜形態をとる必要がある。
この様な複合膜として、(a)シリコーン系素材を機
能膜層として多孔性支持膜がポリスルホン支持膜、ポリ
エーテルスルホン支持膜、酢酸セルロース支持膜である
複合膜(特開昭59-120207)が知られている。
[発明が解決しようとする課題] しかしながら、従来知られているかかる複合膜は、混
合気体より特定の成分を分離しようとした場合、混合気
体中に極性溶媒の蒸気(例えばトルエン蒸気、トリクロ
ロエチレン蒸気など)が含まれていると多孔性支持膜の
耐有機蒸気性が低いために、複合膜が破壊されるという
問題点を有していた。
本発明の目的は、気体透過性、気体分離性がともに高
く、かつ高い耐有機蒸気性を有している気体透過膜を提
供することである。
[課題を解決するための手段] 上記目的を達成するため本発明は次の構成からなる。
(1) 下記式〔II〕で表わされるフェニレンスルフィ
ド系共重合体から実質的に成る多孔性支持膜上に機能膜
を設けた気体分離用複合膜。
(−Ph−S−Ph−SO2)q [II] (ただし、Phはフェニレン基、qは80ないし400の整
数を表わす。) (2) 下記式〔II〕で表わされるフェニレンスルフ
ィド系共重合体から実質的に成る多孔性支持膜が酸化処
理され、その上に機能膜を設けた気体分離用複合膜。
(−Ph−S−Ph−SO2)q [II] (ただし、Phはフェニレン基、qは80ないし400の整
数を表わす。) スルフィド結合を安定化するため隣合う繰返し単位に
電子吸引性がより大きいスルホン結合が使用される。も
っとも50%程度の規則性があれが十分な耐久性を発揮す
る場合が多い。
式[II]中、Phはフェニレン基を示す。このフェニレ
ン基は、水酸基、ヒドロキシエチル基、スルホン酸基、
カルボン酸基、ヒドロキシメチル基等で置換されていて
もよいが、耐久性を考慮すると無置換のものが好まし
い。また、このフェニレン基は、o−、m−及びp−フ
ェニレン基のいずれであっても構わないが、耐久性の観
点からp−フェニレン基が好ましい。
繰り返し単位の数の大きさについては特に制限がある
わけではないが、分子量が大きすぎると重合体を溶媒に
溶解することが困難になり、小さすぎると成形物の機械
的強度が乏しくなるので、分子量的には数万ないし10万
程度が好ましい。従って、qは80ないし400が好まし
く、共重合体の固有粘度で言えば約0.1ないし1.0、特に
0.3ないし0.6程度が好ましい。
上記共重合体には、高分子量化や溶融安定化のために
無機塩が添加されていても多孔膜形成に大きな支障をき
たすことはない。このような無機塩の例として塩化亜
鉛、フッ化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、酢酸亜鉛、塩
化カルシウム、フッ化カルシウム、臭化カルシウム、ヨ
ウ化カルシウム、酢酸カルシウム等を挙げることができ
る。そして、上記共重合体は2種以上を混合して用いる
ことも可能である。
本発明の多孔性支持膜は、平膜状、中空糸状、チュー
ブ状等、いずれの形態にあってもよい。
本発明の多孔性支持膜は、平膜、中空糸ともに膜表面
に緻密な層を有し、内面に向けて該緻密層に空隙率が該
緻密層より高い多孔層を有してなる不均一構造をとって
いる。緻密層の厚さは特に限定されないが、0.1μmな
いし10μmが好ましい。緻密層の孔径は約1ないし50nm
であることが好ましい。
本発明の多孔性支持膜は、平膜状の場合、そのままで
も用いることができるが、ポリエステル、ポリアミド、
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフ
ィドより選ばれた少なくとも一種から成る織物又は不織
布から成る基材上に形成されることにより、機械的強度
がより向上する。中空糸の場合、膜形状は先ず外径び内
径によって表わされる。外径は特に限定されないが、通
常10mmないし40μm程度である。内径は通常、外径の約
1/2程度であるが、膜厚が10μm以上であればその目的
により適切な値をとり得るため、これに限定されるもの
ではない。
本発明の機能膜は、気体の分離性を有する重合体から
成る薄膜である。これらの重合体を例示すると、架橋型
シリコーン、シリコーン/シルフェニレン共重合体など
のシリコーン系ポリマ、ポリエチレン、ポリ4(メチル
ペンテン−1)、ポリブタジエンなどのビニル系ポリ
マ、ポリスルホン、ポリイミド、酢酸セルロースなどが
あげられるが特にこれらに限定されるものではない。機
能膜の厚みは、薄い方が気体透過速度が大きくなるので
好ましいが、薄くすることによって気体分離性が小さく
なる場合があるため、所定の気体分離性を有する最小の
膜厚にする必要がある。
機能膜は、同一重合体の単一層、複合重合体のブレン
ド層、又は種類の異なる重合体の単一層が積層されてい
ることが考えられるが、特に限定されない。
本発明の多孔性支持膜を構成する、上記式[I]で示
されるフェニレンスルフィド系共重合体は、例えば特開
昭63-270736号に記載されたような公知の方法により製
造することができる。すなわち、N−メチルピロリドン
溶媒中、ビス(4−クロロフェニル)スルホンと硫化水
素ナトリウムを加熱下で重合することにより製造でき
る。 本発明の多孔性支持膜は、上記フェニレンスルフ
ィド系共重合体を溶媒に溶解し、注型した後、溶媒と任
意に混ざる、共重合体の非溶媒中に注型した溶液を投入
して凝固させることによって得ることができる。もっと
も、溶融成型後、多孔膜化する方法や重合体の分散系よ
り成形する方法もあり、下記湿式製膜法に限定されるも
のではない。 本発明における共重合体を溶解する好ま
しい溶媒としては、非プロトン性極性溶媒、酸及びフェ
ノール化合物を挙げることができるが、これらに限定さ
れるものではない。具体的には、ジメチルスルホキシド
(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチ
ル−2−イミダゾリジノン(DMI)、ヘキサメチルホス
ホリックトリアミド(HMPA)、硫酸、シクロロ酢酸、p
−クロロフェノール、m−クレゾール等が共重合体をよ
く溶解し、好ましい。
これらの溶媒の共通する性質として溶解度パラメータ
ー(δ)が11近辺であることが挙げられる。またδhは
δd、δpに比べ、重合体の溶解性に対する寄与が大き
い(ここで、δh、δd、δpはそれぞれ水素結合力、
分散力、極性力成分を意味する)。
その他にもε−カプロラクタム、γ−ブチロラクト
ン、スルホラン、ジフェニルスルフィド、ジフェニルア
ミン、δ−バレロラクタム、ジメチルホルムアミド(DM
F)、テトラメチル尿素等が挙げられるが、これらに限
定されるものではない。
溶媒は単一でなくとも混合溶媒でもよい。すなわち、
上記溶媒の2つ以上の混合溶媒又は上記溶媒と上記以外
の溶媒との混合物を用いることができる。例えば、NMP
を溶媒とした場合、非プロトン性極性溶媒はもちろん、
その他にもハロゲン化炭化水素、ケトン、有機酸、アミ
ン化合物を加えることが可能である。これらの溶媒の添
加により溶解性の向上やg値(凝固値)の変化に伴う膜
形態や分離性能の制御も可能になる。
重合体の溶解は通常その溶媒の沸点以下の温度で行な
われるが、溶解性が著しく低い場合には加圧下沸点以上
の温度をかけることにより溶解できる場合がある。
得られた共重合体溶液は異物を除去するためにろ過を
行なうことが好ましい。緻密ろ過膜を用いて異物を除去
することが好ましいが、溶液の粘度が高いときにはろ
布、ろ過綿を用いたり、高温状態でろ過を行なうのもよ
い。このようにして調整した共重合体溶液を以下キャス
ト液と呼ぶ。
キャスト液の濃度は溶媒の溶解性の範囲内で任意に選
ぶことができるが、あまり低濃度では膜構造が弱く、高
濃度すぎると気体の透過抵抗が大きくなる。キャスト液
中の共重合体の濃度は通常10重量%ないし30重量%が好
ましい。
キャスト液は、平膜の場合は、基材等の上に所定の厚
さで流延し、中空糸の場合は二重になった口金より押出
し、キャスト溶媒と任意に混和する重合体の非溶媒中へ
導く。キャスト厚みは平膜の場合、30μmないし600μ
mの範囲から選択すると良好な膜性能が得られるが、こ
れに限定されるものではない。
中空糸は、共重合体溶液を二重構造をいた口金より気
体又は液体を注入しながら中空状に押出し、凝固液中に
導くことにより得ることができる。この時、口金温度、
凝固液温度、注入液体組成、凝固液組成、吐出から凝固
までの時間、ドラフト値等を変化させることにより、膜
の気体透過抵抗を制御することができる。
凝固液は、キャスト液の溶媒と任意に混合する液であ
り、単一組成であっても混合液であってもよい。凝固液
はキャスト液として非プロトン性極性溶媒及び酸を用い
た場合、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イ
ソプロピルアルコール及びブチルアルコール並びにこれ
らの混合物からなる群より選ばれることが好ましいが、
これに限定されるものではない。
このようにして得られた多孔性支持膜を酸化処理する
ことにより、スルフィド結合の一部をスルホン結合に変
換すると耐熱、耐有機蒸気性、耐薬品性がさらに向上す
る。酸化処理は酸化剤を用いて行なうことができ、酸化
剤としては過酸化水素、有機過酸化物(例えば過酢酸、
過ブチリック酸、過安息香酸、クロロ過安息香酸)、ア
ルカリ金属、アルカリ土類金属、四級アンモニウム次亜
塩素酸塩、塩酸、クロム酸、アルカリ金属過マンガン酸
塩、硝酸等を好ましいものとして例示することができる
がこれらに限定されるものではない。酸化は固−液の不
均一反応なので、反応を効率的に行なうために、酸化剤
の溶媒及び/又は酸化剤それ自身が膜の微細構造を大き
く変化させることなく共重合体を膨潤させるものでなく
てはならない。このような点から特に好ましいものとし
て有機過酸化物及び/又は有機溶媒に溶解した四級アン
モニウム次亜塩素酸塩を挙げることができる。具体的に
は過酢酸、クロロ過安息香酸、次亜塩素酸テトラブチル
アンモニウムの酢酸エチル溶液等が効率的に共重合体の
耐久性を向上させることができ好ましいが、これに限定
されるものではない。酸化処理は多孔性支持膜を酸化剤
の溶液中に浸漬することにより行なうことができる。処
理時間は酸化剤の濃度や反応温度により適切な時間が選
ばれるが、通常10分から5時間の間で行なわれる。
この様にして得られた多孔性支持膜上に機能膜を設け
る方法は、機能膜を構成する重合体を良溶媒に溶解し、
多孔性支持膜上にコーティングして乾燥させる方法や、
機能膜を構成する重合体を良溶媒に溶解し、該溶液を水
面上に展延さして、水面上に固体の薄膜を形成せしめ、
これを多孔性支持膜に担持する方法があるが、限定はさ
れない。
[実施例] 以下、実施例によって本発明の実施態様を説明する。
実施例1 ポリ(フェニレンスルフィドスルホン)(PPSS)を特
開昭63-270736号に記載の方法により合成した。
すなわち、温度及び圧力測定手段、攪拌機並びに外部
加熱手段を装填した約1Lのオートクレーブに、ビス(4
−クロロフェニル)スルホン154.7g、炭酸ナトリウム5
6.5g、酢酸ナトリウム43.7g、硫化水素ナトリウム(NaS
H59.0重量%水溶液として装填される)50.7g、N−メチ
ル−2−ピロリドン(NMP)21.7g及び脱イオン水14.4g
を装填した。撹拌しながら混合物を25℃から200℃まで
加熱し、200℃で3時間撹拌した。
次いでNMP160ml及び脱イオン水26.7mlの混合物を注入
した。撹拌を約150℃になるまで持続した。反応混合物
を固体の粒状物質として反応容器からとり出し、液体を
吸引した。その固体物質を脱イオン水の熱湯(約90℃、
約600ml)で洗浄し、ろ過し、ろ過器上で一度ゆすい
だ。この工程を2回繰返し、次いで冷脱イオン水で最終
手順を終え、水溶性不純物を除去した。
1Lのオートクレーブに、上記の通り精製回収済み重合
体40g、脱イオン水400g及び酢酸亜鉛[Zn(C2H3O2・2H2
O]4.0gを装填した。オートクレーブに攪拌機、加熱/
冷却機並びに温度計及び圧力計を装填した。重合体/酢
酸亜鉛水溶液混合物を撹拌しながら185℃に加熱し、引
き続き撹拌しながらその温度に1時間保持した。次にそ
の混合物を室温に冷却し、そして撹拌しながら回収済み
重合体を熱湯(約90℃、約400ml)で一度洗浄した。次
いで回収済み重合体を160℃の温度で減圧乾燥した。こ
の様にして得られた重合体の重量平均分子量は31600で
あった。また赤外吸収スペクトルより以下の構造式であ
ることがわかった。
(−Ph−S−Ph−SO2)q この重量をポリフェニレンスルフィドスルホン(PPSS
と略記)と称する。
上記のようにして得たPPSS15gを85gの乾燥N−メチル
ピリドン中に加え、この重合体混合物を蓄えた容器を窒
素雰囲気下にした後、180℃に加熱して重合体を溶解し
た。次いで孔径1μmのポリテトラフルオロエチレン製
メンブレンフィルターで不溶分をろ別した。この溶液を
室温(20℃)でガラス板上に150μmの平均厚みで流延
した後、直ちに水中(25℃)に浸漬して多孔性支持膜を
得た。機能膜層の重合体溶液としてアミノ変性シリコー
ン(SF8417、トーレシリコーン社製)をフレオンR113に
1重量%溶解し、トリレンジイソシアネートを0.2重量
%溶解した溶液を調製する。先ほどの多孔性支持膜の表
面に付着している水をエアーナイフで飛散させた後、該
溶液を50μ塗布して100℃の熱風で溶媒を乾燥させる。
得られた複合膜を50℃で1時間乾燥し、酸素透過速度と
窒素透過速度を測定した。得られた気体透過性及び気体
分離性を表−1に示す。該複合膜をトルエン飽和蒸気の
50℃雰囲気中で24時間保存した後の気体透過性及び気体
分離性を表−1に示す。この様に本発明が気体透過性及
び気体分離性が高くかつ耐有機蒸気性が高いことがわか
る。
実施例2 75.6mlの酢酸に22.8mlの30%過酸化水素水と1.6mlの
濃硫酸を加え、1日放置することにより過酢酸溶液を得
た。
実施例1で得られた多孔性支持膜をこの過酢酸溶液に
3時間浸漬した後、水洗した。該多孔性支持膜上に実施
例1で使用したアミノ変性シリコーン/トリレンジイソ
シアネート/フレオンR113溶液を50μ塗布して100℃の
熱風で乾燥させる。さらに50℃で1時間乾燥させた後、
ポリ4メチルペンテン−1(MX001、三井石油化学社
製)のシクロヘキサン0.5重量%溶液をシリコーン層の
上に10μ塗布して100℃の熱風で溶媒を乾燥させる。得
られた複合膜の気体透過性能を表−1に示す。該複合膜
をトリクロロエタン飽和蒸気50℃雰囲気中で24時間保存
した後の気体透過性能を表−1に示す。この様に耐有機
蒸気性が優れていることがわかる。
比較例1 ポリスルホン(UDEL P−1700 ユニオンカーバイド社
製)のジメチルホルムアミド20重量%溶液を調製し、水
凝固浴を使用してガラス板上にキャストして多孔性支持
膜を作成した。 該多孔性支持膜に実施例1で使用した
アミノ変性シリコーン塗液を50μ塗布して溶媒を乾燥さ
せ、50℃で1時間乾燥させた。得られた気体透過性能を
表−1に示す。該複合膜をトルエン飽和蒸気50℃雰囲気
に24時間保存したところトルエン蒸気によって複合膜が
破壊された。
[発明の効果] 本発明は、ポリフェニレンスルフィドスルホン多孔性
支持膜上に機能膜を設けた気体分離用複合膜であるので
気体透過性と気体分離性に優れ、かつ耐有機蒸気性に優
れた性能を有することが可能となった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−278824(JP,A) 特開 昭61−432(JP,A) 特開 平2−263844(JP,A) 特開 昭60−248202(JP,A) 特開 昭63−270736(JP,A) 特開 昭63−225636(JP,A) 国際公開90/3210(WO,A1) 国際公開90/12638(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B01D 71/66 B01D 71/68

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記式〔II〕で表わされるフェニレンスル
    フィド系共重合体から成る多孔性支持膜上に機能膜を設
    けた気体分離用複合膜。 (−Ph−S−Ph−SO2)q [II] (ただし、Phはフェニレン基、qは80ないし400の整数
    を表わす。)
  2. 【請求項2】下記式〔II〕で表わされるフェニレンスル
    フィド系共重合体から成る多孔性支持膜が酸化処理さ
    れ、その上に機能膜を設けた気体分離用複合膜。 (−Ph−S−Ph−SO2)q [II] (ただし、Phはフェニレン基、qは80ないし400の整数
    を表わす。)
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