JP2881470B2 - 内燃機関の燃焼室 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は副燃焼室を備えた内燃機関の燃焼室に関し、
該副燃焼室の閉鎖／開放を自在に行おうとする内燃機関
の燃焼室に関する。

（従来の技術） 内燃機関の圧縮比は性能や排出されるエミッションに
大きな影響を与えるもので、内燃機関の運転状態に応じ
て圧縮比を変換できれば、エンジン性能の向上に大いに
役立つことになり、このため古くから可変圧縮比エンジ
ンとして、ピストンの寸法を変えて圧縮比を変化させよ
うとする試みがなされている。

また、一般のエンジンではエンジン負荷が大きい場
合、発生するNOxレベルが高くスモークの発生が大とな
り、またエンジンが低負荷の場合は白煙の排出や臭いな
どが大きくて不具合を生じ、これらは燃焼室の内壁温度
に左右されることは知られている。

したがって、エンジンの高負荷高回転では圧縮比を低
下させて運転しても燃焼室の壁温が高いので、何等支障
がないばかりでなく圧縮端温度が低くでき、かつ燃焼室
に副室を設けて燃焼させると当量比の制御もされるの
で、低NOx、低スモークのエンジンが得られることにな
る。

また一方、エンジンの部分負荷では燃焼室の内壁温度
が低く、多量の空気が存在するため燃料の燃焼温度が低
くなり、当量比は小さくNOxや排出されるスモークの量
も少ないことになる。

（発明が解決しようとする課題） 上述の前者のように可変圧縮比エンジンとしてピスト
ンの寸法を変化させることは、そのための機構が複雑と
なって普及するには種々の困難がある。

また、後者のように燃焼室に副室を設けて主室と連結
／切離しを制御すれば圧縮比を２段に変化できるが、燃
料の噴射ノズルがそれぞれに必要となって、燃焼室の開
閉制御とともに噴射の制御が複雑となるという問題が生
ずる。

本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであ
り、その目的は燃焼室に設けた副室の閉鎖／開放が自在
に行えるとともに、単一の噴射ノズルにて燃料が容易に
供給できる可変圧縮比の内燃機関の燃焼室を提供しよう
とするものである。

（課題を解決するための手段） 上述の目的を達成するために本発明によれば、内燃機
関のシリンダヘッドに設けられたほぼ円錐台状の空間を
有し窒化珪素により形成された主燃焼室と、該主燃焼室
の上方に設けられて連絡口により主燃焼室と連通される
とともに、チタン酸アルミニウムにより形成された副燃
焼室と、該連絡口に配置されて連絡口を開閉する開閉弁
と、該開閉弁が該連絡口を開閉する開位置と閉位置が形
成する間隔間に噴射口があって燃料を前記主燃焼室の側
壁に向かって噴射する噴射ノズルと、主燃焼室の外周壁
近傍に設けられたエアギャップと、エンジンの部分負荷
時に該開閉弁を閉位置に駆動し、エンジンの高負荷時に
該開閉弁を開位置に駆動する開閉弁駆動手段と、を具備
してなる内燃機関の燃焼室が提供される。

（作用） 本発明では、シリンダヘッドに配置した主室の上方
に、連絡口によって連通する副室を設けて該連絡口を開
閉する開閉弁を配置し、内燃機関の高負荷時には、開閉
弁を駆動して連絡口を開放して噴射ノズルから噴射され
た燃料は開閉弁と連絡口間に噴射されるので、ピストン
により圧縮された空気とともに霧状になった燃料が連絡
口を介して副室に流れ込む。シリンダ内の空気は主室と
副室で圧縮されるため、高圧縮比とはならない。

また、内燃機関が部分負荷時には、開閉弁により連絡
口が閉じられる。このため、ピストンにより圧縮された
空気は連絡口が開かれたときよりも高圧になる。そし
て、噴射ノズルから噴射される燃料は、主室のみに噴射
されることになり、主室でのみの燃焼となる。

このように、開閉弁の開閉で圧縮比を可変でき、か
つ、噴射ノズルの噴射口が、開閉弁の開位置と閉位置が
形成する間隔間にあって燃料を前記主室の側壁に向かっ
て噴射させるように構成したので、圧縮比が高いときと
低いときにおいて１本の噴射ノズルで対応させることが
できる。

（実施例） つぎに本発明の実施例について図面を用いて詳細に説
明する。

第１図は本発明にかかる内燃機関の燃焼室の一実施例
の構成を示すブロック図であり、第２図はシリンダヘッ
ドとその関連部分の説明図である。

これらの図面において、１は内燃機関のシリンダで、
供給される燃料と吸入する空気との混合気を燃焼させ、
図示していないピストンを駆動して車両の原動力とする
もので、シリンダヘッドには吸気口11および排気口12が
設けられ、それぞれ吸気弁21および排気弁22が配置され
ている。

３はシリンダヘッドの上部の主燃焼室となる主室、４
はその上方に設けられた副燃焼室となる副室で、これら
の主室３と副室４とは連絡口34により連通されており、
該連絡口34には開閉弁５が配置され、動弁機構６により
上下に駆動されて連絡口34の開閉が自在に制御される。
なお、主室３の容積は開閉弁５の傘部51の可動範囲より
やや大きい空間で、その横断面はほぼ卵形に形成されて
いる。

また、副室４の内壁41は断熱性に富んだチタン酸アル
ミニウムなどの素材が使用されて燃焼熱を保持するよう
に構成され、外壁となるハウジング42や主室３は耐熱、
耐強度性を有する窒化珪素材により形成されている。図
示の43はエアーギャップで、主室３の外周壁近傍の所定
範囲を取巻いて、その断熱作用によって燃焼室の内壁温
度を保持するものである。

動弁機構８はＵ字状のコア部81とコイル部82およびス
プリング83とを有し、後述するコントローラからの指令
によってコイル部82に通電されると電磁力によるコア部
81の吸引力により、開閉弁５のステム部52の上端部の鉄
片53をコア部81に吸着させるもので、スプリング83の弾
性力により閉鎖されている連絡口34は、この吸着によっ
て開放される。

６は燃料を噴射する噴射ノズルであり、第２図に示す
ようにその噴射口は主室３の側壁に開口され、その位置
は該開閉弁５が該連絡口34を開閉する開位置と閉位置が
形成する間隔間にあり、さらに噴射ノズル６は主室の中
心方向に対して所定角度を有して配置され、噴射される
燃料は主室３内を旋回できるように構成されている。そ
して、圧縮による空気の渦流と十分に混合されるもので
ある。

そして、開閉弁５の下降時にはその傘部51とステム部
52との接合部分の近傍に噴霧が旋回して噴射されるの
で、圧縮行程においては圧気とともに開放された連絡口
34を介し噴霧は副室４に押し込まれ、渦流に乗じて混合
気が生成される。

７はコントロールでマイクロコンピュータからなり、
演算処理を行う中央制御装置、演算処理手順や制御手順
などを格納する各種メモリ、入／出力ポートなどを備え
ており、エンジンの回転センサ72、負荷センサ73などか
らの検出信号を受信すると、所定の演算処理が行われ、
格納された制御手順に基づいて動弁機構８や噴射ポンプ
などにそれぞれ制御指令が発令されるものである。

つぎにこのように構成された本実施例の作動について
説明する。

まず、エンジンが軽負荷のときは、コントロール７に
入力される回転センサ72、負荷センサ73などからの検出
信号により部分負荷と判断し、コントローラ７の制御手
段が動弁機構８に指令して、これら開閉弁駆動手段が開
閉弁５に通電せず、これを上昇させる。このため連絡口
は閉鎖されて噴射ノズル６からの噴霧は主室３の内部に
噴射され、ピストンにより圧縮される多量の空気により
混合し、副室４の閉鎖により圧縮比の高い圧縮行程の末
期には圧縮熱により点火されて効率よく燃焼することに
なる。

つぎにエンジンが高負荷のときは、回転センサ72、負
荷センサ73などからの信号によりエンジン負荷が大きい
と判断すると、コントローラ７の制御手段が動弁機構８
に対し指令して、これら開閉弁駆動手段が開閉弁５に通
電しこれを下降させて連絡口34を開放する。

このため、噴射ノズル６からの燃料の噴霧は開閉弁５
の傘部51と連絡口34との間に噴射され、ピストンによる
圧気とともに開放された連絡口34を介して噴霧が副室４
の内部に吹込まれ、渦流となって攪拌されて混合気とな
り、副室４が開放のため圧縮比は低いが高負荷による高
温の副室内にて最適な燃焼状態が得られることになる。

以上、本発明を上述の実施例によって説明したが、本
発明の主旨の範囲内で種々の変形が可能であり、これら
を本発明の範囲から排除するものではない。

（発明の効果） 上述のように本発明によれば、燃焼室の主室と副室と
の間の連絡口に開閉弁を配置し、電磁力により作動する
動弁機構を設けて開閉弁を駆動して副室の閉鎖／開放の
制御を行い、主室に設けた噴射ノズルにより副室の開放
時には連絡口と開閉弁との間に燃料を噴射するので、副
室に流入する圧気とともに燃料の噴霧が押し込まれ、間
接噴射（IDI）方式のエンジンとして燃焼が行われる。
ディーゼルエンジンの高負荷時では、NOxの排出、スモ
ークの排出が多量となるが、本システムでは圧縮比が低
く、副室燃焼となるので両成分の生成が抑制され低公害
エンジンが実施される。

また、開閉弁が連絡口を閉鎖した時は主室内に燃料が
噴射され、直接噴射（DI）方式のエンジンとして作動す
ることになり、車両用エンジンでは負荷範囲はほぼ70％
が軽負荷でありこの部分の燃費の向上と始動性の改良が
実施でき、したがって、ピストンの寸法などの変化なし
に、開閉弁により副室の閉鎖／開放を行い容易に可変圧
縮比エンジンが実現できるとともに、この可変圧縮比エ
ンジンに対し単一の噴射ノズルにて十分に燃料供給が行
えるという効果が得られる。

また本発明によれば、燃焼室に断熱用の素材の使用や
エアーギャップを設けて保温し、エンジンの負荷の状態
に応じてDI,IDIの両方式を選択するので、エンジン出力
の向上が図れ、排気公害を減少させ得る利点がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例の構成を示すブロック図、第
２図はそのシリンダヘッドと関連部分の説明図である。 １……シリンダ、３……主室、４……副室、５……開閉
弁、６……噴射ノズル、７……コントローラ、８……動
弁機構、34……連絡口、72……回転センサ、73……負荷
センサ。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】内燃機関のシリンダヘッドに設けられたほ
   ぼ円錐台状の空間を有し窒化珪素により形成された主燃
   焼室と、該主燃焼室の上方に設けられて連絡口により主
   燃焼室と連通されるとともに、チタン酸アルミニウムに
   より形成された副燃焼室と、該連絡口に配置されて連絡
   口を開閉する開閉弁と、該開閉弁が該連絡口を開閉する
   開位置と閉位置が形成する間隔間に噴射口があって燃料
   を前記主燃焼室の側壁に向かって噴射する噴射ノズル
   と、主燃焼室の外周壁近傍に設けられたエアギャップ
   と、エンジンの部分負荷時に該開閉弁を閉位置に駆動
   し、エンジンの高負荷時に該開閉弁を開位置に駆動する
   開閉弁駆動手段と、を具備してなる内燃機関の燃焼室。