JP2879261B2 - 畜肉加工製品の製造方法 - Google Patents

畜肉加工製品の製造方法

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JP2879261B2
JP2879261B2 JP2415451A JP41545190A JP2879261B2 JP 2879261 B2 JP2879261 B2 JP 2879261B2 JP 2415451 A JP2415451 A JP 2415451A JP 41545190 A JP41545190 A JP 41545190A JP 2879261 B2 JP2879261 B2 JP 2879261B2
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井 梅 幸 土
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は畜肉加工製品の製造方法
に関し、詳細には乳酸菌を用いた畜肉加工製品の製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】畜肉加工製品の製造において最も重要な
因子は、製品の長期の保存性と良好な味覚の確保にあ
る。
【0003】一般的に畜肉は屠殺後自己消化が進行し、
蛋白質が分解し、可溶性窒素化合物が増加する。
【0004】自己消化の初期では乳酸生成がありpHが
低下するが、可溶性窒素化合物の増加により再びpHが
上昇し、微生物の増殖に好適な条件となり、微生物によ
る汚染を受け易くなる。
【0005】従来、上記したような畜肉の微生物汚染を
防ぐ為、ハムやソーセージ等を製造する場合、相当長時
間、食塩、硝酸カリウム等を含有する液で塩漬を行なっ
ている。
【0006】塩漬期間中は、硝酸還元能を持つ菌が硝酸
塩を還元して亜硝酸塩とし、肉色の固定及び亜硝酸自身
の持つ殺菌力と塩漬剤により雑菌の進入を防ぐものであ
る。
【0007】塩漬液が充分肉中に浸透するには、肉塊の
大きさに依っても異なるが、相当長時間かかり、製品中
の塩分もかなり高いものになる。
【0008】例えば、熟成タイプのハム、ベーコンの製
造には、塩漬に5℃〜20℃で長いものは1箇月、熟成
に2週間から半年程度の時間をかけている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上記の通りハム、ベー
コンの製造において、通常の方法では塩漬、熟成には相
当長時間を要するので、生産性が低い。
【0010】また、このように塩漬、熟成を長時間行な
うためには、かなり大きな設備を必要とするので、設備
コストが増大する。
【0011】さらに、通常のハム、ベーコン製法とし
て、タンブラー、マッサージャーを使用し短時間に製造
する方法があるが、この方法では熟成期間が短く、製品
の風味が不足する。
【0012】なお、高級品を得るための伝統的製法とし
て、塩漬、熟成に長時間をかけ、発酵により、更に良好
な風味を醸し出す方法が存在するが、該方法では、大量
の製品を均一の品質にすることが困難である。
【0013】本発明の目的は、生産性が高く、設備コス
トもあまりかからず、製品の風味が不足することなく、
多量の高級品でも均一の品質にすることができる、畜肉
加工製品の製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を達成するために、鋭意検討を重ねた結果、強制的に乳
酸発酵を行なわせることによって、製品の風味を損なう
ことなく、熟成期間を短縮することができることを見い
出した。
【0015】ところで、一般的に、畜肉中の乳酸菌の増
殖温度は10℃以上とされ、これ以上の温度で長時間熟
成させることは雑菌や病原菌汚染が問題となる。
【0016】また、5℃以下で長時間置いた場合、畜肉
に生育する低温有害菌の汚染による緑変等の弊害が生じ
る。
【0017】従って、高食塩濃度下、10℃以下の低温
でも生育出来る乳酸菌を見いだす事が重要となる。
【0018】本発明者等は、上述の使用条件に適合した
乳酸菌を求め、各種畜肉より多数の肉由来の乳酸菌を分
離し、本発明の目的である高食塩濃度下、5℃以下でも
生育し、更に病原菌に対する抗菌性も備えた優秀な乳酸
菌株を取得することに成功した。
【0019】これによって、乳酸発酵の短期熟成による
畜肉加工製品の製造方法を確立することができた。
【0020】即ち、本発明の課題を解決するための手段
は、下記の通りである。
【0021】第1に、5℃以下で発酵し、耐塩性、抗菌
性を有する乳酸菌を、畜肉に添加し、乳酸発酵を行わせ
る、畜肉加工製品の製造方法である。
【0022】第2に、第1の畜肉加工製品の製造方法に
ついて、5℃以下で発酵し、耐塩性、抗菌性を有する乳
酸菌として、ラクトバチルス・サケ(Lactobacillus sa
ke)D-1001(微工研菌寄第11708号)を用いる方法であ
る。
【0023】本発明に係るラクトバチルス・サケ(Lacto
bacillus sake) D-1001(微工研菌 寄第11708号)は、
次の菌学的性質を有する。 (a)グラム陽性、無芽胞子形成、通性嫌気性桿菌 (b)グルコースより、DLー乳酸を生成し、ガスの産生はし
ない。 (c)0℃での生育は認められず1,5,10,20,37℃
で生育し、運動性は陰性 である。
【0024】グルコース、マルトース、マンノース、フ
ラクトース、ガラクトース、シュークロース、セロビオ
ース、ラクトース、エクスリン、グルコネイト、サリシ
ン、トレハロース、メリビオース、及びリボースより酸
を生成し、キシロース、ソルビトール、ソルボース、マ
ンニトール、メレチトール、ラフィノース、ラムノース
よりの酸の産生は認められない。
【0025】
【実施例】次に、実施例について説明する。
【0026】(1) 実施例1 4575gの豚挽肉と、下記に示す組成の塩漬剤とを充
分混合した約5kgのソーセージ原料に、ラクトバチルス
・サケD-1001を、菌数が107個/gになるよう に添加
し、500gずつケーシング詰めした。
【0027】塩漬剤 塩化ナトリウム 125 g 亜硝酸ナトリウム 0.4g アスコルビン酸ナトリウム 2.8g グルコース 50 g 冷水(ラクトハ゛チルス・サケD-1001混合用) 250g
【0028】ケーシング詰め後、10℃、80RHで2時
間中央設備エンジニアリング(株)製薫煙装置スモークシ
ェフTSM−1型で薫煙処理し、5℃及び10℃で7日
間発酵させ、熟成ソーセージを製造した。
【0029】結果は、表1に示す通りであった。
【0030】
【表1】
【0031】表1より、5℃及び10℃のいずれの場合
も、乳酸菌が肉中で生育していることが認められた。
【0032】また、いずれの場合も旨味のあるソーセー
ジが出来、pHが低いにも拘らず、マイルドな酸味を有
し、独特な風味を醸しだすソーセージが得られた。
【0033】(2) 実施例2(豚ブロック肉にインジェク
ションした場合) 下記の組成からなる塩漬液1kgに、豚ロース肉塊1kgを
加えて2℃で2日間静置塩漬した。
【0034】
【0035】塩漬後、肉中の菌数が107個/gになるよ
うに、100mlのラクトバチルス・ サケ D-1001(108
個/ml)を50mlのガラスシリンジ(針径0.5mm)を用
いて、肉塊に対して、約1cm間隔、深さ約4cm、1箇所
当り約1mlづつインジェクションをした。
【0036】その後、1〜5℃で3日間タンブリングし
発酵させた。
【0037】結果は、表2に示す通りであった。
【0038】
【表2】
【0039】表2より、1〜5℃、5日間で乳酸菌の充
分な生育が認められた。
【0040】また、インジェクションした場合でも使用
が可能であり、充分熟成した風味のある通常の方法で長
時間熟成して作られたハムと同様な品質のロースハムが
得られた。
【0041】(3) 実施例3(豚バラ肉にインジェクショ
ンした場合) 実施例2と同じ組成の塩漬液1kgに、豚バラ肉塊1kgを
加えて2℃で2日間静置塩漬した。
【0042】2日間の塩漬後、実施例2と同様の方法で
肉中にラクトバチルス・サケD-1001(108個/ml)をイ
ンジェクションした後、1〜5℃で3日間静置発酵させ
た。
【0043】結果は実施例2と同様、109個/gの充分
な乳酸菌の生育が認められ、マイルドな酸味を有する充
分熟成した旨味のあるベーコンが得られた。
【0044】(4) 実施例4 豚ロース30kgに、ピックル液6kg(氷水 75.8%、
MIX-S 6%、アスコルビン酸ナトリウム 0.6%、ハム
アロマ 0.4%、食塩 10%、ラクトバチル ス・サケ
D-1001 3.5×108個/ml)をインジェクション後、
2〜3℃で一晩 タンブリングした。
【0045】その後、静置塩漬を48〜120時間行
い、整形充填後、スモーク処理した。
【0046】肉中の乳酸菌数は、0時間で1.0×107
個/g,48時間で2.4×107個/g,120時間では
1.1×108個/gであった。
【0047】pHはそれぞれ 6.10,5.90,5.7
2,そしてスモーク処理後のpHは6.18であった。
【0048】スモーク処理後のロースハムは旨味が増
し、肉質も柔らかく、嗜好性の良いものが出来た。
【0049】(5) 実施例5 実施例4で発酵させたものを、恒温恒湿器内の温度を5
℃に保ちつつ、湿度を徐々に、RH95→90→85→8
0→75と各々2日間づつ、合計10日間かけて下げな
がら乾燥させた。
【0050】乾燥後の水分活性は0.93、乳酸菌数は
2.6×107個/g、pHは5.84で あった。
【0051】仕上がり製品は、旨味があり、生ハムとし
て使用することが出来た。
【0052】次に、本発明に使用するラクトバチルス・
サケD-1001の特性を調べた試験例について説明する。
【0053】上記実施例で使用したラクトバチルス・サ
ケ D-1001 について、温度特性を調べる試験(試験例
1)、耐塩性を調べる試験(試験例2)、大腸菌に対す
る抗菌性を調べる試験(試験例3)を、各々、次のよう
な条件下で行なった。
【0054】(a)試験例1 低温での増殖性を調べる温度特性試験を、MRS培地(0
X01D)で、30℃、1 6時間前培養を行い、これを本試
験に使用した。
【0055】そして、ラクトバチルス・サケ D-1001 を
1,5,10,20,30,37℃で培養した場合のそ
れぞれの菌数変化を表3に示す。
【0056】
【表3】
【0057】表3より、1〜5℃でも良好な生育が認め
られた。
【0058】(b) 試験例2 MRS培地に食塩を0,6,15%になるように添加
し、20℃で培養した場合のそれぞれの菌数変化を表4
に示す。
【0059】
【表4】
【0060】表4より、食塩濃度が6%でも48時間培
養で生育が認められたので、ピックル液へのラクトバチ
ルス・サケ D-1001 の混合使用が可能であった。
【0061】(c) 試験例3 ラクトバチルス・サケ D-1001 を1%摂取したMRS培
地を、5℃,3日間、10℃,4日間、30℃,18時
間の三条件で培養し、遠心分離にて菌体を除去した後、
このサンプル原液、2,4,8,16倍希釈液を調製し
た。
【0062】そして、外1の文献に示された、ウルリッ
ヒ シルリンガー及びフリードリッヒ カール リュッ
ケのウェル ディフュージョン アッセイ(well difus
ionassay)法により抗菌活性を測定した。
【0063】
【外1】
【0064】その結果を表5に、培養液のpH及び酸度
を表6に、それぞれ示す。
【0065】
【表5】
【0066】
【表6】
【0067】表5,表6より、10℃,4日間の培養液
においても抗菌活性が見られ、pHも低下していた。
【0068】そして、当該乳酸菌ラクトバチルス・サケ
D-1001 は、他の乳酸菌に比し、特に低温に於いても抗
菌活性が認められ、pHの低下及び有機酸の産生が見ら
れる事が明らかとなった。
【0069】以上のことから、本願発明にかかる乳酸菌
であるラクトバチルス・サケ D-1001は、低温での増殖
性、耐塩性、及び抗菌性に優れていることが確認でき
た。
【0070】該ラクトバチルス・サケD-1001が低温及び
高食塩下で生育が可能な特性を活かし、畜肉材料の低温
熟成を行い畜肉加工製品を製造することで、次の効果及
び利点が得られる。
【0071】(1) 低温と乳酸菌の抗菌力により雑菌の生
育を抑制し、より安全に製造出来る。(2) 熟成時間の短
縮が可能となり、短時間に風味を付与することが出来
る。(3) 本乳酸菌を使用することにより、高品質の製品
がコンスタントに出来る。(4) 低温熟成であることによ
り発酵設備(恒温室)等の特別な設備が不要であり、従
来設備のみで良い。
【0072】従って、熟成時間の短縮、品質管理の容易
性、製品の高級品化が可能であり、生産性の向上により
コストダウンが可能となる。
【0073】
【発明の効果】本発明によれば、乳酸菌によって畜肉の
熟成を短時間で行なうので、生産性が高く、設備コスト
もあまりかからず、製品の風味が不足することなく、多
量の高級品でも均一の品質にすることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C12N 1/00 A23B 4/02 Z //(C12N 1/00 C12R 1:225) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A23L 1/31 - 1/322

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 5℃以下で発酵し、耐塩性、抗菌性を有
    する乳酸菌であるラクトバチルス・サケ(Lactobacillu
    s sake)D-1001(微工研菌寄第11708号)を、畜肉に添
    加し、乳酸発酵を行わせることを特徴とする、畜肉加工
    製品の製造方法。
  2. 【請求項2】 5℃以下で発酵し、耐塩性、抗菌性を有
    する、微工研菌寄第11708号のラクトバチルス・サケ(L
    actobacillus sake)D-1001。
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