JP2877512B2 - 捲縮マルチフィラメントとその製造方法 - Google Patents

捲縮マルチフィラメントとその製造方法

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JP2877512B2
JP2877512B2 JP3500276A JP50027690A JP2877512B2 JP 2877512 B2 JP2877512 B2 JP 2877512B2 JP 3500276 A JP3500276 A JP 3500276A JP 50027690 A JP50027690 A JP 50027690A JP 2877512 B2 JP2877512 B2 JP 2877512B2
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multifilament
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小柳  正
裕功 濱田
友美雄 遠藤
輝彦 松尾
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【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明は、ランダムな形態の捲縮(以下ランダム捲縮
と称す)を有する捲縮マルチフィラメント及びその製造
方法に関する。
なお、本発明における捲縮マルチフィラメントには、
ステープルファイバーを製造するために用いられるトウ
を含むものとする。
更に詳しくは、仮撚加工などの機械的加工によって得
られる捲縮ではなく、高速紡糸法を基礎とした方法によ
って得られる、マルチフィラメントやステープルファイ
バーに有用に用いることができるランダム捲縮フィラメ
ント及びそれを安価に提供する製造方法に関する。
背景技術 熱可塑性重合体からなる繊維を、仮撚加工や押込み加
工などの機械的加工法によって捲縮加工した捲縮フィラ
メントは、マルチフィラメントや紡績糸の状態でカーペ
ットに広く使用されている。
しかし、これらの機械的加工による捲縮マルチフィラ
メントの製造には、その加工速度が数百m/分〜3,000m/
分と限界があることから加工費が高価になり、かつ大量
のエネルギーと人手を要する。そのために、得られる捲
縮マルチフィラメントは極めてコスト高となる。
特公昭64−6282号公報(対応U.S.P 4,542,063号)や
特公昭64−8086号公報(対応U.S.P 4,415,726号)に
は、ポリアミドやポリエステルを高速紡糸すると紡糸速
度の増加とともに分子配向と結晶化が増大し、紡糸した
ままのマルチフィラメントが従来の低速紡糸−延伸糸に
比肩し得る程に十分な機械的性質を示し、延伸すること
なく編織物に用いることが可能であることが知られてい
る。しかし、高速紡糸したマルチフィラメントは、捲縮
加工に供すれば安価ではあることが予想されるが、結晶
が過度に成長しすぎているため、捲縮加工を施してもラ
ンダムな捲縮が付与できないことが明らかになった。更
に、ポリアミドのごとく結晶化速度の極めて大なる原料
を用いてカーペットに必要な単糸デニールが10デニール
〜30デニールを有するマルチフィラメントを高速紡糸に
よって製造すると、紡糸した単繊維に球晶が生じ、フィ
ラメントは著しく失透したり、平滑性を失ない、商品価
値が損なわれることが明らかになった。この球晶の発生
は、特開昭58−36213号公報に開示される非水系で紡糸
する方法や、特開昭63−99324号公報に開示される無機
金属塩を含有させる方法を組み合せても解決できなかっ
た。
高速紡糸により捲縮マルチフィラメントを得る方法の
一つとして、特開昭55−107511号公報や繊維学会誌Vol.
37,No.4(1981)T−135〜T−142には、ポリエステル
の8,000m/分以上の高速紡糸過程で、低温の空気で偏冷
却を行なうことにより、捲縮マルチフィラメントを得る
方法が示されている。
該公報で得られたマルチフィラメントは、構成する単
繊維がその断面内で複屈折率に外層と内層で差を有し、
かつ単繊維の繊維軸の中心から偏芯した分布を有する構
造となり、紡糸したままの単繊維に弱いラセン状の捲縮
を発現している。しかし、該公報によって得られたフィ
ラメントも、広角X線回折法で求められる結晶構造から
明らかなように、結晶が過度に成長している。従って、
その後の熱処理によってもランダムな捲縮が付与でき
ず、ラセン捲縮のままであり、実用的な捲縮マルチフィ
ラメントは得られなかった。また、ポリアミドを原料と
して高速紡糸するU.S.P 4,238,439,U.S.P 4,619,803に
よる方法を用いても、得られた結果は、同様であった。
他方、U.S.P 4,038,357号公報、U.S.P 4,301,102号公
報や特開昭62−23816号公報には、紡糸過程で、固化以
前のマルチフィラメントに水性液を付与して捲縮糸を得
るSpin Texturizingの方法が示されている。
これらの捲縮発現は、実質的に偏芯した複屈折率分布
を生ぜしめ、ラセン状の捲縮マルチフィラメントを得る
ものである。
前記U.S.P 4,038,357号及びU.S.P 4,301,102号はポリ
アミドに関するものであるが、紡糸引取速度は高々2,30
0m/分までしか開示されていない。また、偏芯した複屈
折率分布は、交差空気流による非対称冷却で生じせしめ
るもので、本質的には、前記U.S.P 4,238,439号公報と
同一である。ここでの水性液の付与は、単繊維を十分に
浸漬する目的で行なわれるにすぎない。更に、該公報で
得られた捲縮マルチフィラメントは、流体噴射加工を行
なった後もまま反転するラセン捲縮である故、捲縮弾性
が弱くカーペットなどに用いても十分なバルキー性が得
られない。
また、前記特開昭62−23816号はポリエステルに関す
るもので、紡糸速度6,000m/分以上において吐出フィラ
メントの細化完了点近傍を液体により冷却する方法であ
る。該公報による方法も、高速紡糸特有の著しく結晶が
成長した構造となっている故、ラセン状の捲縮が顕在化
したものとなっている。従って、その後の熱処理を施こ
しても、ランダム捲縮が付与できないものである。
上記のごとく、紡糸速度約4,000m/分以上の高速紡糸
を基礎とした、公知の捲縮マルチフィラメントの製造は
全て、嵩高性や反発性の弱いラセン捲縮である。また、
結晶の過度な成長に阻害され、その後、流体噴射加工な
どの捲縮加工処理を施こしても実用的に十分な程度のラ
ンダムな形態を有する捲縮マルチフィラメントが得られ
ないという問題があった。即ち、ラセン状の捲縮の場合
には、捲縮マルチフィラメントをカーペットヤーンに用
いると、タフト工程で捲縮が容易に伸長してしまい、カ
ーペットのカバリング性が不足する。
また、捲縮マルチフィラメント(この場合にはトウ)
を切断してステープルファイバーを製造して、紡績糸と
する場合には、カード加工時にカード落ちが多発し、工
程性を著しく損なう等の障害を起こす。
従って、捲縮堅牢性の優れたランダム捲縮マルチフィ
ラメントと、該マルチフィラメントを高速かつ安価に製
造する方法が強く望まれていた。
発明の開示 本発明の第1の目的は、堅牢な捲縮を有するランダム
捲縮を具備した熱可塑性合成繊維捲縮マルチフィラメン
トを提供することである。
本発明の第2の目的は、堅牢な捲縮を有するランダム
捲縮を具備し、且つ表面平滑性を有するポリアミド捲縮
マルチフィランメントを提供することである。
本発明の第3の目的は、堅牢な捲縮を有するランダム
捲縮を具備したポリエステル捲縮マルチフィラメントを
提供することである。
本発明の第4の目的は、堅牢な捲縮を有するランダム
な捲縮を具備したポリエステルステープルファイバーを
提供することである。
本発明の第5の目的は、堅牢な捲縮を有するランダム
捲縮を具備し、且つ表面平滑性を有するポリアミド捲縮
マルチフィラメントの製造方法を提供することである。
本発明の第6の目的は、堅牢な捲縮を具備したポリエ
ステル捲縮フィラメントの製造方法を提供することであ
る。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を
重ねた結果、特殊な冷却条件下で高速紡糸したフィラメ
ントは、それ自体では結晶の成長が抑制されているが、
その後の熱処理によって通常の4,000m/分以上の高速紡
糸フィラメントと同等の高度に成長した結晶構造を発現
し得ることを見出した。
この事実によって、4,000m/分以上で高速紡糸したフ
ィラメントにランダム状の形態の捲縮を賦形することが
初めて可能となった。
しかも、得られるランダム捲縮フィラメントは、表面
平滑性を有し、かつ、高速紡糸フィラメントに特有の、
高度に成長した結晶構造と、特有の複屈折率分布を具備
していることから、優れた捲縮堅牢性を有することを見
出し、本発明を完成するに至った。
前記本発明の第1の目的は、熱可塑性重合体からな
り、構成する単繊維の中心部において測定される複屈折
率よりも、外層部の複屈折の方が大であり、しかも、最
小の複屈折率を示す位置が繊維軸の中心より偏芯して存
在する分布を有し、かつ10ケ/in以上のランダム捲縮を
有する捲縮マルチフィラメントによって達成される。
前記本発明の第2の目的は、ポリアミドからなり、構
成する単繊維の中心部において測定される複屈折率より
も、外層部の複屈折の方が大であり、しかも、最小の複
屈折率を示す位置が繊維軸の中心より偏芯して存在する
分布を有し、広角X線回折によって求められる結晶成長
度が0.2以上であり、かつ、10ケ/in以上のランダム捲縮
を有するポリアミド捲縮マルチフィラメントによって達
成される。
前記本発明の第3の目的は、ポリエステルからなり、
構成する単繊維の中心部において測定される屈折率より
も、外層部の複屈折の方が大であり、しかも、最小の複
屈折率を示す位置が繊維軸の中心より偏芯して存在する
分布を有し、広角X線回折によって求められる結晶成長
度が0.4以上であり、かつ、10ケ/in以上のランダム捲縮
を有するポリエステル捲縮マルチフィラメントによって
達成される。
前記本発明の第4の目的は、ポリエステルからなり、
構成する単繊維の中心部において測定される複屈折率よ
りも、外層部の複屈折率の方が大であり、しかも、最小
の複屈折率を示す位置が繊維軸の中心より偏芯して存在
する分布を有し、広角X線回折によって求められる結晶
成長度が0.4以上であり、かつ、10ケ/in以上のランダム
捲縮を有するポリエステルステープルファイバーによっ
て達成される。
前記本発明の第5の目的は、ポリアミドを溶融紡糸し
てランダム捲縮マルチフィラメントを製造するにあた
り、紡口より押出されたマルチフィラメントを、構成す
る単繊維の温度が100℃に冷却されるまでに片側から水
性液を付与して非対称冷却し、4000m/分以上で引取った
後、1.0〜1.5倍で延伸し、次いで、150℃以上の温度で
液体噴射加工することを特徴とする捲縮マルチフィラメ
ントの製造方法によって達成される。
前記本発明の第6の目的は、ポリエステルを溶融紡糸
してランダム捲縮マルチフィラメントを製造するにあた
り、紡口より押出されたマルチフィラメントを、構成す
る単繊維の温度が150℃に冷却されるまでに片側から水
性液を付与して非対称冷却し、5000m/分以上で引取った
後、1.0〜1.5倍で延伸し、次いで150℃以上の温度で弛
緩熱処理することを特徴とする捲縮マルチフィラメント
の製造方法によって達成される。
図面の簡単な説明 第1図Aは本発明の捲縮マルチフィラメントのランダ
ム捲縮を示す写真である。第1図Bは、ランダム捲縮を
模式的に示す図、第2図は、ラセン状の捲縮を模式的に
示す図である。
第3図A〜第3図Cは本発明の単繊維の複屈折分布の
各種態様を示す透過定量型干渉顕微鏡写真のパターン図
である。
第4図Aは染色された本発明の単繊維断面の写真であ
り、第4図Bは従来の捲縮フィラメントの染色された単
繊維断面の写真である。
第5図Aおよび第5図Bは単繊維表面の平滑性を示す
電子顕微鏡写真であり、第5図Aは本発明による捲縮フ
ィラメントの写真であり、第5図Bは従来の捲縮フィラ
メントの写真である。
第6図、及び第7図は、本発明を実施する紡糸機、加
工機の例を各々示す略示正面図である。
第8図A、第8図B、第9図Aおよび第9図Bは、本
発明の非対称冷却に使用する水付与装置の各例をそれぞ
れ示す略示正面図である。
第10図および第11図は、本発明の捲縮マルチフィラメ
ントの結晶成長測定におけるX線回折強度曲線の一例を
各々を示す図である。
第12図は、捲縮マルチフィラメントの捲縮発現率を示
す図である。
発明の実施するための最良の形態 本発明の捲縮マルチフィラメントの基本的な特徴は、
構成する単繊維がランダムな形態の捲縮を有することで
ある。
本発明でいうランダム捲縮とは、捲縮が三次元であり
かつ、非旋回性であり、クリンプが不規則に発現してい
るものを示す。仮撚加工による旋回性の捲縮や、複合紡
糸や機械的擦過法によって得られるラセン状の捲縮とは
明確に区別される。
第1図Aけに、本発明のランダム捲縮を写真によって
示す。第1図Bは、第1図Aを模式化した図である。第
2図は、本発明によらない、ラセン捲縮を第1図Bに対
比して模式的に示したものである。
ランダムな形態は、引っ張りまたは圧縮荷重に対する
十分な反発力を有するための要件である。ラセン状の捲
縮では、カーペット等に用いると圧縮性が悪く、腰の弱
いものとなり不適である。
本発明においては捲縮数は10ケ/in以上が必要であ
る。これ未満では、カーペット等の用途で圧縮性を満足
することができない。
また、捲縮マルチフィラメントをカットしてステープ
ルファイバーとした場合にも、カード工程でカード落ち
が多発し工程性能が損なわれる。
カーペット用の捲縮フィラメントでは、捲縮数ととも
に捲縮伸長率が約10%以上であることが要求されるが、
本発明の捲縮フィラメントでは、捲縮数が10ケ/in以上
であれば、捲縮伸長率が約10%以上となり、前記要件が
満足される。
好ましい捲縮数は、15ケ/in以上であり、捲縮伸長率
は、約20〜50%であることが好ましい。
本発明の捲縮マルチフィラメントは、構成する単繊維
の中心部において測定される複屈折率よりも、外層部の
複屈折率の方が大であり、しかも、最小の複屈折率を示
す位置が繊維軸の中心より偏芯して存在するという特異
な複屈折率分布を有する。
複屈折率の分布および偏芯は、単繊維の断面が円形で
ある場合は、透過型干渉顕微鏡を用い、後術する方法に
より観察される。複屈折率分布は第3図Aおよび第3図
Bで示すようなU字型またはV字型の干渉縞から測定さ
れる。複屈折率分布が繊維の中心から偏芯している場合
には、第3図Cに示すような干渉縞の最低点LP(Lower
Point)がフィラメントの中心軸(X−X)からはずれ
ている。
単繊維の断面形状が異形の場合には、円形断面の場合
のように透過型干渉顕微鏡による複屈折率の観察は不可
能である。この場合には、繊維機械学会誌Vol.33,No.11
(1980)P.551〜P.554に例示されるように、染色した単
繊維の断面を光学顕微鏡を用い、染料の単繊維表面から
の浸透距離を測定することによって、偏芯の有無が測定
される。
また、実際には、異形断面と同一の紡糸条件で円形断
面の紡糸を行ない、円形断面繊維の透過型干渉顕微鏡の
観察から、異形断面繊維の複屈折率分布を類推すること
も可能である。
第4図Aは、後述する方法で染色された本発明の単繊
維断面の写真である。染料の浸透距離が、断面の幾何学
的中心に対し大きく偏芯していることが判る。
第4図Bは、従来の捲縮フィラメントの染色された単
繊維断面写真である。
尚、本発明において、単繊維の断面形状が非対称で複
雑な場合の偏芯の定義は、断面形状の幾何学的重心を基
準とする。
本発明の捲縮マルチフィラメントがかかる特殊な複屈
折率分布を有する作用は、捲縮の堅牢性を優れたものと
することにある。
本発明でいう熱可塑性重合体は、ナイロン66、ナイロ
ン6、ナイロン12、ナインロ46などのポリアミドや、ポ
リエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレー
ト、ポリエチレンイソフタレートなどのポリエステルの
他に、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの繊維形成可
能な重合体を言う。必要に応じて、制電剤、艶消剤、難
燃剤などの添加剤が含まれていても良い。
本発明は、汎用的には、ポリアミドやポリエステルに
適用した場合に、特に優れた効果が得られる。
ナイロン66やナイロン6に代表されるポリアミドの場
合には、単繊維の断面形状が円形の場合、複屈折率が外
層部と内層部(最小点)とで、5×10-3〜45×10-3の差
を有し、かつ、繊維軸の中心から偏芯した分布を有する
ことが望ましい。
フィラメント断面の複屈折率差δ(Δn)が5×10-3
より小さい場合には、捲縮数が不足し、本発明の目的が
十分に達成されない。
本発明において、ポリアミドの場合には、広角X線回
折によって求められる結晶成長度が0.2以上である。
又、ポリアミドがポリヘキサメチレンアジパミドの場
合、結晶完全性係数は70%以上であることが望ましい。
結晶成長度及び結晶完全性係数は広角X線回折によっ
て後述する方法によって測定される。結晶成長度は結晶
の成長の程度を表わす指標であり、1に近い程結晶が成
長していることを意味する。ポリアミドを通常の低速紡
糸−延伸したものはこの値が0.15以下であることから
も、本発明の捲縮マルチフィラメントが、極めて結晶が
成長していることが判る。好ましい結晶成長度は0.25以
上である。
結晶完全性係数は、主に構成する結晶の大きさを表わ
す指標であり、100%に近い程完全性が高いことを意味
する。通常の低速紡糸−延伸したポリアミドマルチフィ
ラメントは、この値が40〜60%であることからも、本発
明の捲縮マルチフィラメントが極めて高い結晶完全性を
有することが判る。
本発明のポリアミドからなる捲縮マルチフィラメント
は、さらに球晶が全く発生しておらず、フィラメント表
面の平滑性が良好である。
ポリアミドを高速紡糸したものでは、特に結晶化速度
が大であることから紡糸した単繊維表面に球晶が発生
し、表面の平滑性が損なわれるばかりか、フィラメント
が失透し、染色した際には鮮明な発色や高級な光沢を得
ることが出来ない。
本発明の捲縮マルチフィラメントには、このような球
晶が全く観察されず、透明感のすぐれたものである。単
糸デニールが10デニール以上において、この特長が一層
顕著に現われる。
フィラメント表面の平滑性は、通常の電子顕微鏡によ
って約500倍〜約2000倍の倍率で容易に観察できる。
第5図に、ナイロン66捲縮単繊維の電子顕微鏡写真を
示す。第5図Aは、本発明の捲縮フィラメントであり、
球晶が全く存在しない。第5図Bは、従来の捲縮フィラ
メントであり、球晶の存在を確認できる。
熱可塑性重合体としてポリエチレンテレフタレートや
ポリブチレンテレフタレートに代表されるポリエステル
に用いた場合を説明する。
単繊維の断面形状が円形の場合、複屈折率が外層部と
内層部(最小点)とで、20×10-3〜100×10-3の差を有
し、かつ、繊維軸の中心から偏芯した分布を有すること
が望ましい。
複屈折率差が30×10-3以上であれば、更に優れた捲縮
が発現する。
しかも、広角X線回折によって求められる結晶成長度
が0.4以上を有する場合に、捲縮の堅牢性が優れたもの
となる。
ポリエステルの結晶成長度は、後述する方法によって
測定されるが、この値が1に近い程結晶が成長してい
る。ポリエステルの通常の低速紡糸−延伸したものは、
この値が0.3以下であることからも、本発明の捲縮フィ
ラメントが極めて結晶が成長していることが判る。好ま
しい結晶成長度は0.5以上である。
本発明の捲縮マルチフィラメントは、上記したよう
に、(1).偏芯した複屈折率分布(2).ランダム状
の捲縮(3).高度に成長した結晶構造を同時に満足す
ることによって達成されたものである。
本発明の捲縮マルチフィラメントは、かかる構造に基
づいて、優れた嵩高性と捲縮堅牢性を発揮する。
捲縮堅牢性は、繊維に加わる伸張応力への拮抗と、負
荷下での捲縮復元力で示される。
例えば、捲縮マルチフィラメントを、嵩高連続フィラ
メント(Blucked Continuous Filaments;B.C.F)の状態
でカーペットに用いた場合に、加撚工程やタフト工程で
過度な伸長応力が加えられたとしても捲縮の低下がほと
んど起らず、優れた嵩高性が示される。
捲縮復元力についても、優れた効果を発揮する。
一般に、B.C.Fをダフトしてカーペットに用いた場
合、捲縮マルチフィラメントは、相互に密集した状態で
ある故、約0.2m/gに相当する負荷の拘束を受けている。
一方、B.C.F.はパッケージに巻付けられた形態で取扱わ
れ、タフト工程でこのパッケージから解舒しつつタフト
される。この際、B.C.F.はパッケージ中でクリープが生
じ、捲縮が大幅に減少している。従って捲縮復元力が小
さい場合には、タフト後の拘束の故、捲縮が十分に復現
せず、カーペットの性能が著しく低下する。
本発明の捲縮マルチフィラメントは、たとえクリープ
によって捲縮が大幅に減少していても、沸水処理等によ
って再び捲縮が発現する。拘束下であっても、従来のB.
C.Fをはるかに凌駕する捲縮復元力を有している。
また、本発明の捲縮マルチフィラメント(この場合に
はトウ)を切断してステープルファイバーとし、カード
工程に供した場合も、捲縮の伸長がなく良好なカード加
工性を有している。
本発明の捲縮マルチフィラメントの断面形状は円形だ
けに限定されるものでなく、トリローバル、四角形など
の異形断面糸や、中空糸も含まれる。単糸デニールも約
50デニール以下であれば、特に限定されない。
また、必要に応じて捲縮マルチフィラメントにインタ
ーレース等の交絡が付与されていても良い。
以下、本発明の捲縮マルチフィラメントの製造方法に
ついて説明する。
第6図に本発明の製造方法を実施する紡糸熱処理装置
の一例を示す。
スピンヘッド1に装着された紡口2より押出されたフ
ィラメント13は、冷却チャンバー4によって冷却され
る。フィラメントが高温を維持している区域で、水性液
付与装置5a(この場合は、構成単繊維を相互に分離した
状態で付与)によって片側から水性液を付与し、非対称
冷却される。
給油ノズル6によって集束および給油した後、高速引
取ロール7によって引取られる。次いで、フィラメント
13は、熱処理装置8(この場合は、流体噴射加工ノズ
ル)により弛緩熱処理されランダムな捲縮形態が付与さ
れた後、冷却ドラム9、交絡ノズル10で交絡を付与し、
張力調整ロール11を経てパッケージ12に巻取られる。
第6図は、第5図の装置において、延伸を行なう装置
を付加した場合の略図であり、フィラメント13は、引取
ロール7と延伸ロール7′間で延伸される。
第8図、第9図は、本発明の水付与を実施する装置の
略図であり、第8図Aは単繊維を相互に分離して水性液
を付与する分離ノズルの平面図である。第8図Bは、第
8図AのE−E′線での断面図を示す。第9図Aは単繊
維を一平面状に引きそろえた状態で片側から水性液を付
与する「ロール方式の例である。第9図Bは、単繊維を
集束した状態で片側から水性液を付与する「ノズル方
式」の図である。
本発明の製造方法に於ては、紡口より押出されたマル
チフィラメントを、構成する単繊維の温度が100℃に冷
却されるまでの区域で片側から水性液を付与して非対称
冷却し、紡糸速度4,000m/分以上で紡糸することが必要
である。
紡糸速度が4,000m/分未満では、本発明の目的とする
フィラメント断面の外層と内層との複屈折率差δ(Δ
n)が拡大せず、またその後の延伸などによって一旦生
じた複屈折率差δ(Δn)が消失する。更に、熱処理後
のフィラメントに於て、結晶の成長が不十分で、得られ
る捲縮マルチフィラメントの堅牢性が不足する。
本発明の紡糸速度は、5,000m/分〜8,000m/分に於て、
効果的に本発明の目的が達成される。紡糸速度が約8,00
0m/分以上であっても、極めて多量の水性液を付与する
などによって本発明のマルチフィラメントを得ることは
可能であるが、フィラメントの結晶成長度の調整に多量
の水性液の付与が必要となり、水性液の飛散などの支障
が生じる。
フィラメントの力学的性質と構造形成から、最も好ま
しい紡糸速度は5,500〜7,500m/分である。
ポリエステルでは、繊維学会誌Vol.37,No.4(1981)
T−135〜T−142に報告される断面不均一構造の発現
が、紡糸速度約8,000m/分以上が必須であったり、ポリ
アミドでは、特公昭64−6283号公報に示されるように、
10,000m/分で高々6×10-3程度しか発現しないことに対
比すると、大きく異なっている。
本発明の速度範囲であれば、顕著な紡糸張力の増大や
紡糸中の糸切れなどの問題なく、安定かつ工業的に実施
可能である。
本発明では紡口から押出されたマルチフィラメントを
構成する単繊維の温度が100℃に冷却される以前に、片
側から水性液を付与して非対称冷却することに大きな特
徴を有する。
単繊維の温度がかかる高温に於て水性液によって非対
称冷却することにより、本発明のフィラメントの特徴で
ある偏芯した複屈折率分布が発現する。水性液を付与す
る際のフィラメント温度が100℃未満では、付与水量な
どの条件をいかに選択しても本発明の目的が達成されな
い。
水性液を付与する際のフィラメント温度が100℃より
高温である程、複屈折率差δ(Δn)が拡大するが、約
250℃を越えると水性液の付与時に糸切れが発生するな
どの支障が生じる。従って、好ましいフィラメント温度
は250〜100℃である。
一般に、溶融紡糸では、ポリマーは紡口から260℃〜3
20℃で押出される。
本発明の方法では、水性液を付与するまでのフィラメ
ントの冷却は、溶融紡糸で一般に採用される冷却風によ
る冷却によって達成される。フィラメント温度が、本発
明を実施するのに必要な100℃以上となる紡口面からの
位置は、紡糸速度やフィラメントのデニールによって異
なるが、紡糸速度が4,000m/分以上で、衣料用として通
常使用される1〜5デニールであれば、紡口下約100cm
以内である。従って、本発明の水性液の付与はこの間で
実施される。
ポリアミドの場合、水性液を付与する際の単繊維の温
度が100℃以上であることが必要である。最も好ましく
は、130℃以上である。
ポリアミドは、カーペット用に用いられる紡糸では、
単繊維デニールは約10〜30デニールが使用される。この
場合、水性液の付与は、紡口下約300cm以内である。
尚、ポリアミドの場合には、ポリエステルと異なり、水
付与しない状態での高速紡糸では、紡糸過程で糸径の急
激な細化変形が観察されないのが一般的であるが、本発
明の水付与を行なった紡糸では、明瞭な細化変形が水付
与点に於て確認された。即ち、高温時の単繊維に水性液
を付与することは、細化変形点を強制的に発現させてい
ることが本発明によって初めて明らかになった。
このような、水性液の付与の効果によって、本発明の
目的である、複屈折率差δ(Δn)の拡大と、偏芯した
構造が初めて可能となった。
ポリエステルにあっては、単繊維温度が、150℃以上
で水性液を付与することが必要である。ポリエステルに
あっては紡糸速度が約6,000m/分を越す場合には、紡糸
過程で糸径の急激な細化変形が観察されることが知られ
ている(繊維学会誌Vol.38,No.11(1982)P.499−P.50
7)。本発明の水性液の付与位置は、この細化変形位置
(ネック点)を基準とした場合には、変形位置より上方
に約5cm以上、より好ましくは約10cm以上上方で実施さ
れる。例えば、単繊維デニールが3デニールであるマル
チフィラメントを紡糸速度6,000m/分で紡糸し、細化変
形位置が紡口面下70cm(単繊維温度約100℃)である場
合に於ては、水性液の付与は紡口面下65cm以内(単繊維
温度150℃以上)、好ましくは60cm以内(単繊維温度200
℃以上)で付与する。
ポリエステルの高速紡糸では、配向結晶化が極めて容
易に生じる故、水性液の付与位置(糸温度)の僅か1〜
2cmの違いによって、単繊維の微細構造が大きく違って
くる。従って、付与位置の決定は、厳密になされること
が必要である。単繊維温度が150℃未満で水性液を付与
した場合には、複屈折率差δ(Δn)が不十分なものと
なり、得られるマルチフィラメントは、弱い顕在捲縮を
有する捲縮マルチフィラメントとなる。しかし、この捲
縮マルチフィラメントは、その後の弛緩熱処理を施こし
ても、もはや、捲縮の増加がなく、本発明の目的が達成
されない。
本発明でフィラメントの冷却に用いる水性液は、水、
通常の紡糸用油剤エマルジョンなどが適用可能である。
簡便には、水が用いられる。また、水性液の温度は、低
温程好ましいが、特に常温以下に冷却せずとも本発明は
達成される。
水性液を付与する方法としては、単繊維が相互に分離
した状態で行なう方法や、単繊維を一面状に引きそろえ
た状態で行なう方法または、単繊維を数本〜十数本集束
しつつ行なう方法が採用される。
単繊維を相互に分離した状態で行なう方法は、ポリア
ミドで単繊維デニールが約10デニール以上の紡糸に適応
すると好ましい。この方式を、本発明では、「分離ノズ
ル方式」と称する。
「分離ノズル方式」の一例を第8図Aに示す。この方
式では単繊維は相互に分離されたノズル群5aによって各
単繊維に独立して水性液が付与される。
単繊維への水性液の付与状態を一層明らかにするた
め、第8図AのE−E′線の断面図を第8図Bに示し
た。ノズルの先端は鋭くとがった形状となっており、単
繊維との接触による抵抗が小さくなると同時に、単繊維
を非対称に冷却するのに好適な形状となっている。
単繊維を一面状に引きそろえる方法は、ポリエステル
で単繊維デニールが約10デニール以下の紡糸に適応する
と好ましい。この方式を本発明では「ロール方式」と称
する。
「ロール方式」の一例を第9図Aに示す。ロール方式
にあっても、フィラメントとの接触による抵抗は小さい
方が好ましい。この目的から、ロールの直径は10〜50mm
から選択される。
単繊維を数本〜数十本集束する方法は、単繊維デニー
ルが1〜5デニールの紡糸に適応すると好ましい。この
方式を本発明では、「ノズル方式」と称す。「ノズル方
式」の一例を第9図Bに示す。
本発明の目的を損なわない範囲であれば、他の形状の
水付与装置の採用も可能である。
フィラメントに付与する水性液の量は、フィラメント
に対する重量パーセントで示される。
本発明では、高温のフィラメントに水性液を付与する
ことによって、フィラメントを非対称冷却するととも
に、結晶の成長を抑制する。
本発明では、付与水量が大である程、同一フィラメン
ト温度にあっても結晶成長度をより低下させることが可
能である。付与水量が約10重量パーセント以上であれば
本発明の目的が達成される。水量が500重量パーセント
以上になると、余剰の水性液の飛散防止が必要である。
好ましい付与水量は20〜300重量パーセントである。
「分離ノズル方式」や「ロール方式」では、付与水量
は20〜50重量パーセントが採用される。
「ノズル方式」のように、複数本のフィラメントを集
束して付与する場合には、フィラメント温度が100℃以
上と高温であるため、相互に融着し糸切れなどのトラブ
ルが生じ易い。しかし、本発明では、付与水量を約50重
量パーセント以上とすることにより、上記の融着現象が
完全に解決され、極めて安定な紡糸が達成される。
具体的には、第9図Bに示すような「ノズル方式」で
水性液を付与する際に、フィラメント数を3〜20本とし
ても単糸密集がなく、しかも、紡糸安定性も良好に実施
可能である。
本発明では、4000m/分以上の高速紡糸と、単繊維への
片側からの水性液の付与の組合せによって初めて、本発
明の目的である非対称冷却が達成される。即ち、水性液
による非対称冷却は、片側から供給される水性液と単繊
維の接触において、単繊維が高速で走行することによ
り、水性液の液膜(表面張力)を破壊し、単繊維の片側
のみに水性液が付与されることで達成される。
この事実は、単繊維と水性液の接触部を観察すること
で容易に確認できる。
紡糸速度が4,000m/分未満では、たとえ片側から水性
液を付与しても、水性液の液膜破壊が生じず、水性液は
単繊維の全周を覆うように浸漬することとなり、非対称
冷却の達成は困難である。
本発明では、上記非対称冷却に次いで、1.0〜1.5倍の
延伸を行なった後、150℃以上で熱処理することが必要
である。
紡糸速度が約4,000m/分〜約5,000m/分の場合は、1.5
倍以下の延伸を行なうことが、機械的性質を向上させる
うえで好ましい。
紡糸速度が約5,000m/分以上では、延伸することなく
実用に適した機械的性質を有する巻縮フィラメントとな
る。
簡便なプロセスと高い生産性を得る目的からは、紡糸
速度約5,000m/分以上で紡糸し、未延伸のまま捲縮マル
チフィラメントとすることが最も好ましい。
前記紡糸速度が約4,000m/分〜約5,000m/分の場合で、
延伸倍率が1.5倍を越えると、複屈折率の分布が消失
し、本発明の目的が達成されない。
延伸は、重合体のガラス転移温度以上で加熱延伸する
ことが好ましい。
熱処理は、約150℃以上が必要で、実質的に弛緩下で
行なわれることが必要である。
本発明では、熱処理以前のマルチフィラメントは低い
結晶成長しか有しないが、かかる熱処理によって結晶が
大きく成長するところに特徴がある。この変化は、今ま
でに予期されなかった驚くべき変化である。この理由は
明らかではないが、高速紡糸特有の高い結晶成長が、水
付与により凍結された状態で潜在化されており、それが
高温の熱処理によって顕在化したものと推察される。
第10図及び第11図に熱処理による結晶の成長を模式的
に示す。第10図は、重合体がナイロン66の例であり、第
10図中の(I)が熱処理以前のフィラメントの広角X線
回折パターンであり、第10図中の(II)は、このフィラ
メントを熱処理した後の広角X線回折パターンである。
第11図は、重合体がポリエチレンテレフタレートの例で
あり、同様に、(I)が熱処理以前、(II)が熱処理後
の捲縮マルチフィラメントである。(III)の破線は、
従来の低速紡糸−延伸糸である。
結晶構造のかかる変化は本発明によって初めて見出さ
れたものである。この発見によって、従来は高速紡糸し
たマルチフィラメントからはラセン捲縮しか得られなか
ったのに対し、ランダム捲縮マルチフィラメントを得る
ことが初めて可能となった。
熱処理温度が約150℃より低い場合には、結晶が十分
に成長し得ず、本発明の目的とする堅牢性の優れたラン
ダム捲縮マルチフィラメントが得られない。熱処理温度
が約180℃以上であると好ましい。
熱処理は、実質的に弛緩下で、好ましくは、約5%以
上の弛緩下で行なわれることが、本発明の目的を達成す
るうえで好ましい。実質的に緊張下で行なわれた場合に
は、捲縮数の低下や複屈折率分布の低下を生じる。
このような弛緩熱処理装置は、例えば特開昭59−7144
0号公報に開示された流体ノズルを用いた噴射加工装置
や、特公昭58−30423号公報のネットドラムを用いた噴
射加工装置などの方法から適宜選択される。
噴射加工に用いる加熱流体としては、高温の空気や飽
和または不飽和のスチームが一般的に採用される。
捲縮マルチフィラメントがポリアミドで、B.C.Fとし
て用いる場合には、流体ノズルを用いた噴射加工法が採
用される。この場合は、非対称冷却によって形成された
繊維構造と流体噴射加工の組合せによって、堅牢性の優
れたランダム捲縮マルチフィラメントが得られる。
捲縮マルチフィラメントがポリエステルであって、ス
テープルファイバーとして用いる場合には、必ずしも噴
射加工によることなく、例えば移動するネット上にファ
イバーを堆積し、加熱ゾーンを通過させて弛緩熱処理を
行なうことも可能である。
ポリエステルの場合には、弛緩熱処理以前では非捲縮
性であるが、噴射加工によらず上記のようなネット上で
弛緩熱処理によっても、十分なランダム状の形態の捲縮
マルチフィラメントとなる。これは、驚くべきことであ
り、特開昭62−23816号公報でラセン状の捲縮マルチフ
ィラメントしか得られなかったことと対比すると、大き
な相違である。
本発明の方法によれば、カーペット用捲縮マルチフィ
ラメントの場合、紡糸する際の孔当りの吐出量は、7〜
25g/分・孔の吐出が可能である。この分野の従来の吐出
量が高々3〜6g/分・孔であったのに対比すれば、約2
〜3倍もの高い生産性が発揮される。
本発明の製造方法を効果的に実施するには、高速紡糸
−熱処理、または、高速紡糸−延伸−熱処理を連続的に
行なうことである。最も効果的には、高速紡糸した後、
未延伸状態で熱処理を行なう、高速紡糸−捲縮加工であ
る。
捲縮フィラメントを紡糸−延伸−捲縮加工して連続的
に製造するプロセス自体は、例えば、U.S.P 3,854,177
号公報等に示されている。しかし、公知の連続化プロセ
スの最高速度は高々4,000m/分であった。これに対し、
本発明によって初めて、4,000m/分以上での連続化プロ
セスが可能となった。
以下本発明の各種実施例を比較例と共に示す。本発明
の捲縮フィラメントの特性の測定法を以下に述べる。
(A)フィラメント温度 走査赤外温度計を用い紡糸線上に沿って非接触で、単
糸温度を測定した。
(B)強伸度 東洋ボールドウィン社製TENSILON UTM−II−20型引張
試験機により、初長20cm、引張り速度20cm/分で測定し
た。
(C)複屈折率分布及び偏芯 単繊維断面形状が円形の場合には、透過定量型干渉顕
微鏡を用いて、複屈折率の分布と偏芯が測定される。単
繊維断面形状が異形の場合には、単繊維を染色し、光学
顕微鏡を用いて複屈折率の分布と偏芯を観察することが
出来る。
(単繊維断面形状が円形の場合) 透過定量型干渉顕微鏡(カールツアイスイエナ社製干
渉顕微鏡インターフアコ)を用い、干渉縞法により測定
する。波長λ=549mμの緑色光線を使用し、0.2〜2波
長の範囲の干渉縞のずれを与える屈折率(N)を有し、
かつ繊維に対し不活性な封入剤中に繊維を浸漬する。繊
維軸が干渉顕微鏡の光軸、及び干渉縞に対し垂直となる
ようにした時にできる干渉縞パターンを写真撮影し、約
1500倍に拡大して解析する。
解析の詳細は、特公昭64−8086号公報の実施例の方法
に準じた。
フィラメントが円形の場合には、第11図に示したよう
にV字形、又はU字形の干渉縞が観察される。第3図C
は本発明の捲縮フィラメントの複屈折率の偏芯した分布
を示す略図である。複屈折率のフィラメント内における
外層と内層の差は、第3図Cのフィラメントを繊維軸X
−Xを中心にして90゜回転させて得られる第3図Aから
算出された。
ここで、外層とは第3図Aのフィラメント中心から、
フィラメントの半径Rとした場合、0.8Rの位置を示し、
Δn0.8で表わされる。内層とは、複屈折率の最小点L.P
を示し、Δn0で表わされる。複屈折率差δ(Δn)は、
次式で算出される。
複屈折率差δ(Δn)=Δn0.8−Δn0である。
(単繊維断面形状が異形の場合) 単繊維が染色中に相互に重なり合うことのない状態
で、下記条件で染色を行なった。
◎ ポリアミドフィラメントの染色 サンプル重量:0.5g 染料:Kayarus Supra Grey VGN 300%owf 浴比:1:500 染色温度:98℃ 染色時間:30分間 ◎ ポリエステルフィラメントの染色 サンプル重量:0.5g 染料:Resolin Blue FBL 300%owf 浴比:1:500 染色温度:85℃ 染色時間:90分間 染色した単繊維、断面の光学顕微鏡写真を撮影した。
単繊維内に複屈折率分布とその偏芯が存在する場合に
は、染料の単繊維表面からの浸透距離が単繊維中心に対
し不均等になっている。
(D)結晶成長度IWR 広角X線回折によって求めた。
測定は理学電気社製X線発生装置(RU−200PL)、繊
維試料測定装置(FS−3)、ゴニオメーター(SG−
9)、計数管にはシンチレーションカウンター、計数部
には波高分析器を用いニッケルフィルターで単色化した
CuXα線(λ=1.5418Å)で測定する。X線発生装置は3
0kV、80mAで運転する。
このとき、スキャニング速度4゜/分、チャート速度
10mm/分、タイムコンスタント1秒、コリメーター2mm
φ、レシービングスリット縦幅1.9mm、横幅3.5mmであ
る。
(ポリアミドの場合) ポリアミドが、ポリヘキサメチレンアジパミドの場合
では一般に第10図に示すように、赤道上に2つの主要な
反射を有する。
低角度側から、結晶の(100)面、{(010)+(11
0)}面の反射である。2θ=7゜と35゜の間にある回
折強度曲線を直線で結びベースラインとする。各ピーク
とベースラインの間に垂線を引き、この垂線を回折強度
とする。
ポリアミドの結晶成長度(IWR)は次式で示される。
ここでH1とは(100)面反射と{(010)+(110)}
面反射の間の強度の最小値であり、H2とは(100)面反
射の最大強度、H3とは{(010)+(110)}面反射の最
大強度である。
IWRの値が1に近いほど結晶成長が高い。
ポリアミドがポリカプロアミドでは、γ型結晶の成長
をもって結晶成長度とした。
ポリカプロアミドでは、一般にα型とγ型の2つの結
晶形態をとる。赤道上に3つの主要な反射を有する。低
角度側から、α型結晶の(200)面、γ型結晶の(020)
面、α型結晶の{(202)+(002)}面の反射である。
ここでは、R.F.STEPANIAK(Journal of Applied poly
mer Science.Vol.23 1747−1757,1979)らの手法に基づ
いてγ型結晶のFractionをもってIWRとした。尚、X線
回折ピークの分離は、理学電気社製「RAD−C System Mu
ltiple peak separation program」を用いコンピュータ
によって行なった。
(ポリエステルの場合) ポリエステルでは、一般に第11図に示すように赤道上
に3つの主要な反射を有する。
2θ=17゜〜26゜の範囲に描かれた3つの主要な反射
を低角度側から(100),(010),(110)とする。2
θ=7゜と35゜の間にある回折強度曲線を直線で結びベ
ースラインとする。各ピークとベースラインの間に垂線
を引きこの垂線を回折強度とする。(010)と(110)間
の谷にあたる点での回折強度をH1とし、(110)のピー
クの回折強度をH2とした時、結晶成長度(IWR)は次式
で示される。
IWRの値が1に近い程結晶成長が高い。
面反射の最大強度、H3とは{(010)+(110)}面反
射の最大強度である。
IWRの値が1に近いほど結晶成長が高い。
(E)結晶完全性係数CPI(Cristal Perfection Inde
x) (ポリアミドの場合) 結晶完全度(CPI)の測定には、ACSの測定法から得ら
れるX線回折強度曲線を用いる。
ASCを求めるために用いる方法は、例えばLEアレキサ
ンダー著「高分子のX線回折」化学同人出版、第7章Sc
herrerの式を用いる。
2θ=7゜と35゜の間にある回折強度曲線間を有線で
結び基線とする。回折ピークの頂点から基線に垂直を下
し、ピークと基線間の中点を記入する。中点を通る水平
線を回折強度曲線の間に引く。この線は、2つの主要な
反射がよく分離している場合には、曲線のピークの2つ
の肩と交差するが、分離が悪い場合には1つの肩のみと
交差するだけである。このピークの幅を測定する。一方
の肩のみと交差する場合は交差点から中点までの距離を
測定して2倍する。2つの肩と交差する場合は両肩間の
距離を測定する。これらの値をラジアン表示に換算して
ライン幅とする。さらにこのライン幅を次の方法で補正
する。
Bは測定したライン幅、bはブロードニング定数でSi
単結晶の(111)面反射のピークのラジアン表示したラ
イン幅(半値幅)である。見掛けの微結晶の大きさは次
式 ACS(Å)=Kλ/B.cosθ 結晶完全度(CPI)を求めるには、DismoreとStatton
の方法を用いる。
CPIは次式によって与えられる。
ここでAは0.189であり、CPIの値が100に近いほど、
結晶の完全度は高い。
(F)捲縮数 捲縮数の測定は、第1図Aに示すような写真を用いて
JIS L 1015に準じて測定した。
捲縮フィラメントは、パッケージ等に巻かれた状態で
高張力下で長期間放置された場合、見掛上、捲縮数及び
捲縮伸長率が低下することがあり、真実の値を示さな
い。従って、本発明では、これら捲縮の測定には、捲縮
フィラメントを98℃×5分間の条件で熱水処理した後、
恒温恒湿(温度20℃±2℃、相対湿度65%±2%)の室
内に一昼夜放置する。
調湿された捲縮フィラメントに2mg/dの荷重をかけた
状態で1インチ当りの捲縮数を測定した。
測定は、試料のバラツキを考慮して、各試料につき10
点の測定を行ない平均値を示した。
(G)捲縮伸長率 フィラメントを枠周1.125mの検尺機を用い、巻数20回
の小かせをつくる。得られた小かせを無荷重下で98℃×
5分間沸とう水で熱処理した後、一昼夜恒温恒湿(温度
20±2℃、相対温度65±2%)の室内に放置する。
調湿された繊維に2mg/dの荷重をかけ1分後にかせ長l
1を測定する。次に小かせに0.1g/dの荷重をかけ1分後
にかせ長l2を測定した。捲縮伸長率は次式で表される。
尚、測定は試料のバラツキを考慮した、各試料につき
10点の測定を行い平均値を示した。
(H)捲縮堅牢度 捲縮伸長率を測定した試料に、250mg/dの荷重を1分
間かけ、荷重を除去した。次いで、再度捲縮伸長率を測
定した。最初の捲縮伸長率の値をCE1とし、後者の捲縮
伸長率をCE2としたとき、捲縮堅牢度は次式で表され
る。
この値が、約60%以上であれば、実用上トラブルが発
生しない。70%以上であれば、好ましい。
(I)負荷荷重に対する捲縮発現率 負荷下での捲縮発現力を測定する手法である。フィラ
メントを枠周1.0mのラップリールに8回巻き取り、折り
まげて長さ50cmの綛とする。鉛製の負荷荷重を0.1mg/d
および0.2mg/dから1.6mg/dまで0.2mg/dごとに増し、各
荷重下の状態で60℃±1℃に調整された温水中に浸漬す
る。浸漬開始後、1分後の綛長lcmを測定し、次式によ
って捲縮発現率を求めた。
(J)繊維表面の凹凸 走査型電子顕微鏡により、常法で、倍率2,000倍で繊
維の表面写真を撮り測定した。
(K)異形度 単繊維断面がトリローバルのものの異形度は、次式で
求めた。
単繊維断面の凹部に内接する円の直径をa、凸部に外
接する円の直径をbとした。
(L)カーペット性能評価 カーペットの性能評価は、熟練者による目視、手触り
による評価と、敷物検査協会(財団法人)に於てJIS L
1021に基づいて測定された。
実施例1 第6図に示す紡糸−捲縮加工装置を用い、相対粘度η
rel=2.9(95%H2SO4、1%溶液にて測定)の実質的に
ポリヘキサメチレンジアジパミドからなるナイロン66を
紡糸した。紡口は一辺の長さが0.70mm、スリット幅0.15
mmが等分してトリローバルに穿孔された、孔数68ホール
の矩形紡口を用いた。
紡糸温度300℃で、孔当り吐出量9.8g/分・孔で押出
し、1000デニールとして6,000m/分の速度で紡糸・引取
りを行なった。
紡口下部には、紡口面とシールされた、長さ20cmの非
加熱の保温筒を設けた。冷風チャンバーから20℃、0.3m
/秒の冷風で冷却した。
次に、第6図に示す方式で、チャンバー冷却風の吹出
し方向に対面する方向から「分離ノズル」を用いて、水
をフィラメントの片側から付与して非対称冷却を行なっ
た。この時の付与水量は、フィラメントに対し、約30重
量パーセントである。次いで、給油ノズルで給油した
後、延伸することなく、周速6,000m/分、温度200℃の引
取ロールを経て、連続してジェットスタッファーノズル
に供給し捲縮加工を行なった。この時のジェットスタッ
ファーノズルの加工には、温度250℃、圧力5kg/cm2の加
熱圧縮ガスを用いた。
捲縮加工したフィラメントは冷却後5,100m/分でチー
ズ状のパッケージに巻取った。この時の弛緩率は約15%
であった。
この加工に於て、水付与ロールの紡口面からの位置を
種々変化させて得られたランダムな形態を有する捲縮マ
ルチフィラメントの性質を第1表に示す。
尚、第1表に於て、捲縮加工前のマルチフィラメント
の性質は、引取ロールから直接にチーズ状パッケージに
巻取ったマルチフィラメントを測定したものである。
次にカーペットにした場合の捲縮マルチフィラメント
の性能比較を行う。No.1〜No.6の1150d/68fの捲縮マル
チフィラメントについて、各々40T/MのS撚をかけた後
3本を合糸後、更に40T/Mの撚を加えてタフト糸を用意
した。このアフト糸を用いてパイル長6mm、ステッチ数
7.4ステッチ/inでタフトとし、目付750g/m2のループカ
ーペットを作った。このカーペットを、チバガイギー社
製染料、Tectilon Yellow 4R,Red 2B,Blue 4Gの3元色
配合で染色した。
No.6の捲縮マルチフィラメントからなるカーペットは
パイル列の乱れや、バルキー性が低く、商品性に欠けて
いた。
No.1〜No.5の捲縮マルチフィラメントからなるカーペ
ットは、いずれもパイルが整列し、バルキー性も良好で
あった。
圧縮率はNo.1〜No.5いずれも41〜42%、圧縮弾性率は
90〜91%、また、動的荷重(10000回)による厚さ減少
率も14〜15%とカーペットとして、十分な性能を有して
いた。
本実施例中No.2の捲縮マルチフィラメントと、比較と
して特公昭58−30423号公報の噴射加工装置により、捲
縮伸長率が同一になる条件で得たナイロン66捲縮フィラ
メントについて、捲縮発現率を測定した。
両者の負荷荷重に対する捲縮発現率を第12図に示す。
図中、曲線Iは本実施例中No.2の値、曲線IIは、比較例
である。
第12図で明らかなように、本発明の捲縮マルチフィラ
メントは、従来の捲縮マルチフィラメントに比較し、極
めて高い捲縮発現率を有している。
実施例2 本実施例は、実施例1の捲縮マルチフィラメントの単
繊維内複屈折率分布を測定する目的で行なった。
相対粘度ηrel=2.6のナイロン66を、孔径0.35mmφの
孔とし、295℃で紡糸する以外は実施例1と同様にして
捲縮マルチフィラメントを得た。
得られた、捲縮マルチフィラメントの性質を第2表に
示す。
実施例3 実施例1と同様の方法で単繊維デニール20dのナイロ
ン66を高速紡糸した。
各紡糸速度における孔当り吐出量は、3000m/分のとき
12.0g/分・孔、4,000m/分のとき12.4g/分、5,000m/分、
孔のとき11.1g/分・孔、6000m/分のとき13.3g/分・孔、
7000m/分のとき15.6g/分・孔とした。
紡糸にあたっては、紡口下200cm下方で「分離ノズル
方式」により水付与を行なった。
紡糸にあたっては、紡口下200cm下方に水付与ロール
を設置し、紡糸速度を3,000m/分〜7,000m/分まで異なら
せた。この紡糸速度範囲では、水付与時のフィラメント
温度は約170℃〜約180℃であった。次いで、給油ノズル
で給油した後、一日巻取ることなく、第6図に示すジェ
ットスタッファー装置に供給し、弛緩率12%で実施例1
と同様に捲縮加工を行なった。尚、本実施例に於て、紡
糸速度3,000m/分と4,000m/分の際には、第6図中のロー
ル7を150℃として、各々、1.8倍、1.4倍の延伸を行な
った。5,000m/分、6,000m/分、7,000m/分については延
伸しなかった。
得られた捲縮マルチフィラメントの性質を第3表に示
す。第3表中の比較例No.6,7,8は、水性液による非対称
冷却を行なわずにして得られた捲縮マルチフィラメント
を示す。表中、No.2〜No.5はいずれも、偏芯した複屈折
率分布を有していた。
各単繊維断面の異形度は、いずれも1.7〜1.8でありト
リローバルとなっていた。
第3表から明らかなように、紡糸引取速度4,000m/分
以上で水付与して得られた本発明の捲縮マルチフィラメ
ントは、良好な捲縮発現と堅牢性を有していた。また、
単繊維表面の凹凸もなく、透明性も優れていた。
実施例4 本実施例は、実施例3の捲縮マルチフィラメントの単
繊維内複屈折率分布を測定する目的で行なわれた。
相対粘度ηrel=2.6のナイロン66を、孔径0.35mmφの
孔を用い、295℃で紡糸する以外は実施例3と同様にし
て捲縮マルチフィラメントを得た。
得られた捲縮マルチフィラメントの性質を第4表に示
す。
第4表から明らかなように、紡連4,000m/分以上で水
付与して得られた捲縮マルチフィラメントは、良好な捲
縮と、堅牢性を有する。また、フィラメント表面の凹凸
も皆無であった。
実施例5 実施例1中のNo.3、及び比較例のNo.6について、ジェ
ットスタッファーの加工温度を第5表に示すように種々
異ならせて捲縮加工を行なった。尚、加熱圧縮ガスの圧
力は5kg/cm2で一定とした。
得られた捲縮マルチフィラメントの性質を、第5表に
示す。第5表から明らかなように、加工温度が150℃以
上の場合、良好な捲縮マルチフィラメントが得られた。
実施例6 第6図に示す紡糸−捲縮加工装置を用い、相対粘度η
rel=3.2(95%H2SO4、1%溶液にて測定)の実質的に
ポリカプロアミドからなるナイロン6を、紡糸温度290
℃で、孔径0.35mmφ、孔数68ホールの紡口より押出し、
捲縮マルチフィラメントを1,000デニールとして6,000m/
分の速度で紡糸、引取りを行なった。一方、同様に、一
辺のスリット幅0.15mm、スリット長0.70mmからなる三辺
等長のトリローバル形状で、孔数68ホールの紡口より紡
糸・引取りを行なった。孔当りの吐出量は9.8g/分・孔
であった。
紡口下部には、長さ20cm、内温200℃の加熱筒を設
け、冷風チャンバーから20℃、0.3m/秒の冷風で冷却し
た。
次に、第6図に示す方式で、「分離ノズル」により、
紡口下250cmの位置(フィラメント温度155℃)で水をフ
ィラメントの片側から付与して非対称冷却を行なった。
この時の付与水量は、フィラメントに対し、約20重量パ
ーセントとした。次いで、給油ノズルで給油した後、周
速6,000m/分、温度180℃の引取ロールを経て、延伸する
ことなく連続してジェットスタッファーノズルに供給
し、捲縮加工を行なった。この時の加工条件は、温度23
0℃、圧力5kg/cm2で、弛緩率9%であった。得られた捲
縮マルチフィラメントは、ランダムな形態の捲縮を有し
ていた。
得られた捲縮マルチフィラメントの性質を第6表に示
す。
実施例7 固有粘度〔η〕=0.62のポリエチレンテレフタレート
を孔径0.35mmφ、孔数24を有する紡糸口金を用いて第6
図と同様の紡糸機で紡糸した。紡糸温度300℃とし、紡
口下には内径12cm、長さ25cmのアルミ鋳込ヒーター加熱
方式の加熱筒を紡口面と筒との間に間隙がない状態で設
置し、ヒーター温度を250℃に調整した。
加熱筒を出たマルチフィラメントは、横吹き型冷却風
チャンバーにより、冷風温度20℃、風速0.30m/秒の冷却
風により冷却し、次いで第9図Aに示す方式で、糸重量
当り40重量パーセントの室温の水を付与して非対称冷却
を行なった。水付与による非対称冷却の位置は、紡口下
50cmとした。この位置での糸温度は第7表に示すよう
に、この紡糸速度範囲では約180℃〜190℃であった。
非対称冷却を行なったマルチフィラメントは、油剤付
与後、延伸することなく50d/24fとし、紡糸速度を第7
表に示すように異ならせて巻取った。
尚、第7表に示す紡糸中のネック点の紡口下の位置
は、水付与を行なわない場合に測定した値である。測定
はZIMMER社製線径測定器460Ω/2型及び肉眼観察により
測定し、両者はよく一致した。
水付与を行なった場合には、全て紡口下50cmでネック
が発生していることが確認された。水付与を行なったマ
ルチフィラメントは、いずれも偏芯した複屈折率分布を
有していることが確認されたが、熱処理以前は、非捲縮
性のマルチフィラメントであった。
次いで、これらのマルチフィラメントを、第7図に示
す装置を用い、延伸することなく捲縮加工を行なった。
この時の加工条件は、ロール7及び7′はいずれも非加
熱で、周速3,000m/分で一定とした。ジェットスタッフ
ァーノズルは、温度240℃、圧力2kg/cm2の加熱圧縮空気
を供給した。ロール7′とロール11間は、捲縮マルチフ
ィラメントの沸水収縮率が約1%以下となるように調整
した。
捲縮加工前のマルチフィラメントのIWR及び捲縮マル
チフィラメントの性質を第7表に示す。
尚、本実施例の捲縮マルチフィラメントの表面は、い
ずれも凹凸は見られず、平滑であった。
第7表から明らかなように、本発明のポリエステル捲
縮マルチフィラメントは、複屈折率の偏芯にもとづい
て、良好な捲縮と堅牢性を有していた。
実施例8 本実施例は、ポリエステル捲縮マルチフィラメントを
カットしてステープルとし、紡績糸にする例である。
実施例7において、孔間ピッチ6mmで一列に50孔が直
列に配置され、しかも列間が6mm間隔で5列が穿孔され
た250ホールの矩形紡口を用いた。紡口下には、タテ35c
m、ヨコ15cm、長さ25cmの加熱筒を設けた。
実施例7、第7表中のNo.2(紡速6,000m/分)と、No.
6の条件で同様に紡糸し、500d/250fの非捲縮性マルチフ
ィラメントを得た。
尚、水付与にあたっては、第9図Aの「ロール方式」
で、直径3cm、長さ35cmのロールを使用した。次いで、
得られた非捲縮性マルチフィラメントを実施例7と同様
に熱処理して捲縮マルチフィラメントを得た。
両者の捲縮マルチフィラメントを、各々80mm〜110mm
にバイアスカットし、ステープルファイバーとした。こ
れらを、60インチローラーカード機に供給し、カードテ
ストを行なった。
実施例7のNo.2については、何ら問題なくカード加工
が出来、スライバーが得られた。スライバーにはネップ
の発生もなく、続いて紡績し、1/40Nnの紡績糸が得られ
た。
これに対し実施例7のNo.6はカード加工中、ブレスト
シリンダ出口で落綿が多発し、カードでの紡出不能であ
った。
実施例9 本実施例は、実施例7に対応し、単繊維断面が異形の
場合を示す。
一辺の長さが0.28mm、スリット幅が0.06mmの3辺等長
のトリローバルに穿孔された孔を24ホールを有する紡糸
口金を用いた。
紡糸条件は、実施例7と同一とした。紡糸中のネック
点の測定は、肉眼観察によった。
得られたポリエステル捲縮マルチフィラメントの性質
を第8表に示す。単繊維の異形度は、いずれも1.8〜1.9
であった。
実施例10 実施例7と同様の紡糸を行ない、非対称冷却を行な
い、油剤付与後延伸することなく6,500m/分で紡糸し
た。水付与にあたっては、第9図Bに示す「ノズル方
式」で、糸重量当り100重量パーセントの室温の水を付
与して、非対称冷却の位置を第9表に示すように異なら
せて行なった。
水付与を行なった場合には、全ての場合、付与位置で
糸径の変化が見られ、ネックが発生していることが確認
された。
また、水付与を行なったマルチフィラメントは、いず
れも偏芯した複屈折率分布を有しており、しかも、非捲
縮性であった。
水付与に続いて、第6図に示す加工装置を用い一旦巻
取ることなく連続して捲縮加工を行い50d/24fの捲縮マ
ルチフィラメントを得た。加工条件は、いずれもジェッ
トスタッファーノズルを用い、温度250℃、圧力4kg/cm2
一定とし、弛緩率は、捲縮マルチフィラメントの沸水収
縮率が約1%以下となるように調整した。
捲縮加工前のマルチフィラメントのIWR及び捲縮マル
チフィラメントの性質を第9表に示す。尚、本実施例の
捲縮マルチフィラメントの表面はいずれも凹凸は見られ
ず、平滑であった。
第9表から明らかなように、本発明のポリエステル捲
縮マルチフィラメントは良好な捲縮と堅牢性を有してい
た。また、このポリエステル捲縮マルチフィラメント
は、初期モジュラスが小さい特長を有していた。この性
質は、編地とした場合、柔軟で嵩高な風合を発揮した。
実施例11 実施例10の第9表中のNo.2(糸温度200℃で水付与)
について、水付与量を第10表に示すように異ならせる以
外は、実施例10と同様にして捲縮マルチフィラメントを
得た。
得られた捲縮マルチフィラメントの性質を第10表に示
す。
産業上の利用分野 本発明の捲縮マルチフィラメントは、連続フィラメン
トとして透明性と嵩高性をそなえ、カーペットや起毛布
帛などの分野に用いて、堅牢性、高級感のあるものとな
り、性能が発揮される。また、カットファイバーとして
用いると、カード通過性、紡績性について問題なく、ウ
ール、綿などの他素材と混用することも可能である。
また、本発明の製造方法は、上記捲縮マルチフィラメ
ントを紡糸、捲縮加工中のトラブルなく、高速かつ簡便
に製造し得ることから、高い生産性を有し、工業的に極
めて高い価値を有するものである。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭55−107511(JP,A) 特開 昭56−15413(JP,A) 特開 昭63−112719(JP,A) 特開 昭59−106508(JP,A) 特開 昭59−216918(JP,A)

Claims (23)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】熱可塑性重合体からなり、構成する単繊維
    の中心部において測定される複屈折率よりも、外層部の
    複屈折率の方が大であり、しかも、最小の複屈折率を示
    す位置が繊維軸の中心より偏芯して存在する分布を有す
    る高結晶成長フィラメントからなりかつ10ケ/in以上の
    ランダム捲縮を有する捲縮マルチフィラメント。
  2. 【請求項2】ポリアミドからなり、構成する単繊維の中
    心部において測定される複屈折率よりも、外層部の複屈
    折率の方が大であり、しかも、最小の複屈折率を示す位
    置が繊維軸の中心より偏芯して存在する分布を有し、広
    角X線回折によって求められる結晶成長度が0.2以上で
    あり、かつ、10ケ/in以上のランダム捲縮を有するポリ
    アミド捲縮マルチフィラメント。
  3. 【請求項3】前記ポリアミド捲縮マルチフィラメントに
    おいて、構成する単繊維の断面が円形の場合に、単繊維
    の外層部と内層部との複屈折率差が5×10-3〜45×10-3
    であることを特徴とする請求の範囲第2項記載のポリア
    ミド捲縮マルチフィラメント。
  4. 【請求項4】前記ポリアミド捲縮マルチフィラメントに
    おいて、広角X線回折によって求められる結晶成長度が
    0.25以上であることを特徴とする請求の範囲第2項記載
    のポリアミド捲縮マルチフィラメント。
  5. 【請求項5】前記ポリアミド捲縮マルチフィラメントに
    おいて、捲縮数が12ケ/in以上を有すること特徴とする
    請求の範囲第2項記載のポリアミド捲縮マルチフィラメ
    ント。
  6. 【請求項6】前記ポリアミド捲縮マルチフィラメントに
    おいて、構成する単繊維の表面が平滑であることを特徴
    とする請求の範囲第2項記載のポリアミド捲縮マルチフ
    ィラメント。
  7. 【請求項7】前記ポリアミド捲縮マルチフィラメントに
    おいて、ポリアミドがポリヘキサメチレンアジパミドの
    場合に、広角X線回折によって求められる結晶完全性係
    数が70%以上であることを特徴とする請求の範囲第2項
    記載のポリアミド捲縮マルチフィラメント。
  8. 【請求項8】ポリエステルからなり、構成する単繊維の
    中心部において測定される複屈折率よりも、外層部の複
    屈折率の方が大であり、しかも、最小の複屈折率を示す
    位置が繊維軸の中心より偏芯して存在する分布を有し、
    広角X線回折によって求められる結晶成長度が0.4以上
    であり、かつ、10ケ/in以上のランダム捲縮を有するポ
    リエステル捲縮マルチフィラメント。
  9. 【請求項9】前記ポリエステル捲縮マルチフィラメント
    において、構成する単繊維の断面が円形の場合に、単繊
    維の外層部と内層部との複屈折率差が20×10-3〜100×1
    0-3であることを特徴とする請求の範囲第8項記載のポ
    リエステル捲縮マルチフィラメント。
  10. 【請求項10】前記ポリエステル捲縮マルチフィラメン
    トにおいて、広角X線回折によって求められる結晶成長
    度が0.5以上であることを特徴とする請求の範囲第8項
    記載のポリエステル捲縮マルチフィラメント。
  11. 【請求項11】ポリエステルからなり、構成する単繊維
    の中心部において測定される複屈折率よりも、外層部の
    複屈折率の方が大であり、しかも、最小の複屈折率を示
    す位置が繊維軸の中心より偏芯して存在する分布を有
    し、広角X線回折によって求められる結晶成長度が0.4
    以上であり、かつ、10ケ/in以上のランダム捲縮を有す
    るポリエステルステープルファイバー。
  12. 【請求項12】ポリアミドを溶融紡糸してランダム捲縮
    マルチフィラメントを製造するにあたり、紡口より押出
    されたマルチフィラメントを、構成する単繊維の温度が
    100℃に冷却されるまでに片側から水性液をフィラメン
    トに接触付与して非対称冷却し、4000m/分以上で引取っ
    た後、1.0〜1.5倍で延伸し、次いで150℃以上の温度で
    流体噴射加工することを特徴とする捲縮マルチフィラメ
    ントの製造方法。
  13. 【請求項13】前記単繊維の温度が130℃に冷却される
    までに片側から水性液を付与することを特徴とする請求
    の範囲第12項記載の製造方法。
  14. 【請求項14】前記構成単繊維が相互に分離した状態で
    片側から水性液を付与することを特徴とする請求の範囲
    第12項記載の製造方法。
  15. 【請求項15】5,000m/分以上の引取速度で引取った
    後、未延伸状態で流体噴射加工することを特徴とする請
    求の範囲第12項記載の製造方法。
  16. 【請求項16】180℃以上の温度で流体噴射加工するこ
    とを特徴とする請求の範囲第12項に記載の製造方法。
  17. 【請求項17】前記引取りと前記噴射加工を連続して行
    なうことを特徴とする請求の範囲第12項記載の製造方
    法。
  18. 【請求項18】ポリエステルを溶融紡糸してランダム捲
    縮マルチフィラメントを製造するにあたり、紡口より押
    出されたマルチフィラメントを、構成する単繊維の温度
    が150℃に冷却されるまでに片側から水性液を付与して
    非対称冷却し、5000m/分以上で引取った後、1.0〜1.5倍
    で延伸し、次いで150℃以上の温度で弛緩熱処理するこ
    とを特徴とする捲縮マルチフィラメントの製造方法。
  19. 【請求項19】構成する単繊維の温度が200℃に冷却さ
    れるまでに片側から水性液を付与して非対称冷却するこ
    とを特徴とする請求の範囲第18項記載の製造方法。
  20. 【請求項20】複数の単繊維を一面状に引きそろえた状
    態で片側から水性液を付与して非対称冷却することを特
    徴とする請求の範囲第18項記載の製造方法。
  21. 【請求項21】5,000m/分以上で引取った後、未延伸状
    態で弛緩熱処理することを特徴とする請求の範囲第18項
    記載の製造方法。
  22. 【請求項22】前記弛緩熱処理が流体噴射加工であるこ
    とを特徴とする請求の範囲第18項記載の製造方法。
  23. 【請求項23】前記弛緩熱処理を、引取りと連続して行
    なうことを特徴とする請求の範囲第18項記載の製造方
    法。
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