JP2870780B2 - リードフレーム用高強度銅合金 - Google Patents

リードフレーム用高強度銅合金

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、リードフレーム用として有用な高強度銅合
金に関し、とくに優れた耐半田付界面剥離性を有すると
共に加工硬化による強度向上特性を有する高強度銅合金
に関するものである。
[従来の技術] 従来、半導体機器用リードフレーム材としては、熱膨
張係数が低く、半導体素子や封止材との接着性や封着性
の良好な42合金(Fe−42%Ni)やコバール(Fe−29%Ni
−17%Co)などの高ニッケル合金が主に用いられてき
た。
しかし、最近半導体素子の集積度が益々増大し、電力
消費の高い素子が多くなり、導電性および熱伝導性の良
好なリードフレーム材への要求が一層高まってきてい
る。
上記高ニッケル合金は、引張強さにおいては、65kgf/
mm2と良好であるが、導電率は3%IACS程度と極めて低
く、通常導電率とほぼ並行した性質を示す熱伝導性にお
いても十分なものとはいえない。
そこで、上記高ニッケル合金に代えて、導電率および
熱伝導性共に優れている銅合金をリードフレーム材とし
て使用しようという傾向が顕著になってきた。
上述した半導体機器のリードフレーム材として一般に
要求される特性には、上記導電性や熱伝導性に優れてい
ることのほかに、信頼性の上から実装時や機器への組込
み等に付加される外力に十分耐え得る強度を有すること
および半田付け工程を有するために半田付け特性に優れ
ていることが、不可欠な条件とされる。
通常の銅系材料をリードフレーム材に適用しようとし
ても、強度の上で不十分であり、なんらかの強度向上策
が必要である。金属材料の強度を上げる一般的方法とし
ては、合金元素を添加する方法および冷間加工度を大き
くする方法の二つがあり、リードフレーム材においても
そのような施策がとられてきた。
[発明が解決しようとする課題] 銅合金の場合、ある種の合金元素を添加すると熱処理
により強度を増大し得る析出硬化型合金とすることがで
きる。しかし、この析出硬化に依存しても十分に大きな
強度が得られないことがあり、そのような場合には固溶
硬化型の合金元素を添加し、冷間加工による硬化をも併
用する必要がある。
また、リードフレームにおいてはアウターリードを基
板に半田付けして使用することが多い。
強度を向上させるために合金元素を添加した銅合金を
用いたリードフレーム材においては、上記半田付けを行
なった後に、半田付けの界面において経時的に脆性剥離
が発生する現象がみられることがあり、信頼性の上から
大きな問題となっている。このような脆性層の形成は、
素材としてのCuと半田の中のSn成分および添加元素が拡
散することによって生ずるものと考えられており、X線
マイクロアナライザによる所見によっても、銅合金と半
田との界面にCu−Sn系におけるε相あるはいη相といっ
た脆性の大きい金属間化合物が拡散形成されることが確
認されている。さらに、添加元素のマイグレーション層
が界面に拡散形成され(Fe、P、Siにおいてとくに顕著
である)、これらが前記脆性剥離の原因となることも明
らかになっている。
本発明の目的は、上記したような従来技術の問題点を
解消し、銅系合金の強度を大きな冷間加工を加えること
なく向上させ得ると共に半田付界面剥離性についても大
巾に改善し得る新規なリードフレーム用高強度銅合金を
提供しようとするものである。
[課題を解決するための手段] 本発明はNi1.0〜5.0%、Sn0.5〜2.5%、Zn3.3〜7.0
%、Si0.2〜1.0%、P0.003〜0.3%、を含み、残部Cuお
よび不可避なる不純物をもって構成した銅合金にある。
[作用] CuにNi、Siを上記範囲において添加した合金は、析出
硬化型合金を構成し、熱処理によって析出硬化し強度を
向上させることができる。
しかし、十分に大きな強度を求める場合には、析出硬
化にのみ依存することは適当でなく、固溶硬化型の元素
を添加し、加工硬化に基く強度の向上をも図る必要があ
る。
Snは、そのように加工硬化させ得る元素として添加し
固溶体化処理するものであるが、含有量が0.5%以下で
はその効果が不十分であり、2.5%を越えると導電率の
低下が大きくなり好ましくない。
また、Ni含有量については、1.0%以下では高強度効
果が低く、5.0%以上になると加工性が劣化し導電率を
低下させるため好ましくない。
Si含有量については、0.2%以下では同じく強度の向
上効果が小さく、1.0%以上になると後述する第1表か
らもわかるように界面剥離防止に要するZnの添加量を増
大させねばならず、結果的に導電率が低下することとな
り好ましくない。
Znは、その理由の詳細についてはなお不明であるが、
後に詳述するように、銅合金の半田付けにおける界面剥
離防止に非常に有効に作用する。しかし、この含有量が
3.3%以下では析出硬化せしめる上で有効なSi添加との
関係から半田界面剥離防止効果が不十分となり好ましく
なく、7.0%以上になると導電率の低下が大きくなり同
じく好ましくない。
Pは脱酸剤として添加するものであり、上記界面剥離
防止に有効なZnが脱酸のために消費され本来の界面剥離
防止効果が低下する結果となるのを防止するためのもの
である。しかし、Pの含有量が0.003%以下では脱酸効
果が小さくZnの消費が大きくなり、0.3%以上になると
加工性が低下する上導電率の低下が大きくなり好ましく
ないのである。
[実施例] 以下に、本発明について実施例を参照し説明する。
第1表は、各種元素を表示した量だけ添加した銅合金
にZnを表中に示した種々な量をもって添加し、Sn−40%
Pb半田にドブ付けメッキした後、150℃で表にそれぞれ
示した時間だけ加熱し、これを0.25Rで90°曲げしその
後曲げ戻した場合の界面の剥離の有無を顕微鏡で観察し
た結果を示すものである。
表において、○は界面剥離の生じないもの、×は界面
剥離を生じた場合をそれぞれ示す。
第1表よりかわるように、添加元素の違いによってそ
の効果に差異があるものの、Znを添加することにより半
田付界面剥離を適確に防止することが可能になる。この
ようにZnに界面剥離防止効果のある理由については、前
述したように未だ詳細については不明なところが多い。
しかし、SiやPの含有量が多くなると、その効果が阻害
される傾向がはっきりと現れる。従って、その有効性が
わかっていいてもSiやPを余り多く添加することは好ま
しくないことがわかる。
実施例 第2表に示す組成よりなる銅合金を水冷鋳型を用いて
半連続鋳造し、850℃で熱間圧延を施して550mmW×10mmt
の板とした。これを焼鈍、冷間圧延を繰返し、550mmW×
0.5mmtの板とし、さらに800℃×30分熱処理して急冷し
た。その後加工度66%で冷間圧延し、550mmW×0.25mmt
の板とした後500℃×1分の熱処理を施した。
つぎに、上記板材より15mmW×0.25mmt×50mmlの共試
片を切り出し、半田付界面剥離性について評価した。
各供試片を250℃に保持したSn−40%Pb半田浴中にお
いてドブ付けメッキし、これを大気中において150℃×1
000時間加熱した後、0.25Rで90°曲げしその後曲げ戻し
て界面における剥離の有無を100倍の顕微鏡で観察評価
した。
第2表に評価結果を示す。
本発明に係る合金は、析出硬化に加工硬化が加わり、
引張強さにおいていずれも69kgf/mm2以上という高い値
を示しており、前記した高ニッケル合金にまさる強度を
保持し得ることがわかる。
しかも、第2表からわかるように本発明合金は、所定
量以上のZnを含有させることにより半田付界面剥離の発
生を完全に防止することができる。
これに対し、Znを含有しない比較例では、いずれの場
合も界面剥離が生じている。また、Siの含有量が高いも
のにあっては、Znを2.5%あるいは3.0%添加しているに
も拘らず界面剥離を生じており、Si含有量を高くし強度
を大きくしようとする場合にはZn量も3.3%以上添加し
ないと効果のないことがわかる。
[発明の効果] 以上の通り、本発明に係る銅合金によれば、析出硬化
に加え加工硬化がみられる結果、高ニッケル合金にまさ
る強度を保持することができ、また、適切にZnが添加さ
れることで半田付界面剥離を完全に防止することが可能
となるものであって、これによってリードフレームの銅
合金化に適切に対応できることとなる意義は大きい。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−293130(JP,A) 欧州公開190386(EP,A1) 二塚 錬成,「銅系リードフレーム材 の開発動向と二、三の問題」,金属アグ ネ 発行,1989年,第59巻 第7号, p.77−85 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C22C 9/00 - 9/10 H01L 23/48 - 23/50

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Ni1.0〜5.0%、Sn0.5〜2.5%、Zn3.3〜7.0
    %、Si0.2〜1.0%、P0.003〜0.3%、を含み、残部Cuお
    よび不可避なる不純物よりなるリードフレーム用高強度
    銅合金。
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