JP2866151B2 - カルパスタチン異常症の検出方法及びキット - Google Patents

カルパスタチン異常症の検出方法及びキット

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、ヒト心筋梗塞症、ヒト脳血栓症、ヒト癌に
代表される様なカルパスタチン産生異常症の検出方法及
びその定量用キットに関する。
〔従来の技術〕 カルパスタチンはカルパイン(BC3.4.22.17)を特異
的に阻害する内在性インヒビタータンパク質であり、19
68年にドラモント(Drummond)G.I.ら〔ジャーナル オ
ブ バイオロジカル ケミストリー(J.Biol.Chem.)、
第241巻、第3079頁(1968)〕により、ホスホリラーゼ
bキナーゼの活性化因子の阻害因子として報告され、ニ
シムラ(Nishimura)I.ら〔ジャーナル オブ バイオ
ケミストリー(J.Biochem.)、第84巻、第1657頁(197
8)〕によってカルパインの特異的インヒビタータンパ
ク質であると報告された。現在までにそのcDNA配列も報
告されている〔アサダ(Asada)K.ら、エンザイム イ
ンヒビション(Bnzyme Inhib.)、第3巻、第49頁(198
9)。〕カルパスタチンの生理的意義についてはカルパ
インを特異的に阻害することにより、種々の酵素(プロ
テインキナーゼC、トランスグルタミナーゼ等)、細胞
骨格タンパク(MAP2、ニューロフィラメント、ケラチン
等)、レセプタータンパク(EGFレスプター、ステロイ
ドホルモンレセプター等)の活性を調節することで、細
胞の刺激応答系の一つとして理解されていた。
一方、カルパスタチンのカルパイン阻害活性を指標と
してラットの各種組織のカルパスタチン含量が検討さ
れ、単位組織重量当りでは、肝、肺、心筋、脾細胞内に
多量に存在することが報告されている〔ムラチ(Murach
i)T.ら、バイオケミストリー インターナショナル(B
io−chem.Int.)、第2巻、第661頁、(1981)〕。更に
ヒト赤血球より精製したカルパスタチンを抗原としてウ
サギ抗カルパスタチンポリクローナル抗体が作製され、
酵素免疫測定法(EIA)により、赤血球中のカルパスタ
チン量を測定する方法が報告されている〔タカノ(Taka
no)E.ら、ジャーナル オブ アプライド バイオケミ
ストリー(J.Appl.Biochem.)、第2巻、第117頁(198
4)〕。更にポントレモリ(Pontremoli)S.ら、〔バイ
オケミカル アンド バイオフィジカル リサーチ コ
ミュニケーションズ(Biochem.Biophy.Res.Comm)、第1
57巻、第867頁(1988)〕は赤血球由来のカルパスタチ
ンを抗原とし、マウス抗カルパスタチンモノクローナル
抗体を作製し、赤血球中のカルパスタチン含量をウェス
タンブロッテイング法で測定し、本態性高血圧患者の赤
血球中カルパスタチン量が健常人に比べ著しく低下して
いることが報告されている。
また、成人T細胞白血病の原因ウィルスであるHILV−
Iが感染した細胞では非感染細胞に比較して、細胞内カ
ルパスタチン含量が増加すること〔アダチ(Adachi)Y.
ら、バイオロジカルケミストリー ホップ−セイラー
(Biol.Chem.Hoppe−Sayler)、第369巻、223頁(198
8)〕が報告されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし、これらの報告はあくまでも赤血球内及び細胞
内・組織内のカルパスタチン含量の変化について述べて
いるにすぎない。また、ヒト疾病と組織・細胞内カルパ
スタチン量の変化との関連は本態性高血圧症についての
みが報告されているにすぎず、その他の報告は、あくま
でも試験管内又は動物実験での結果である。更に、今ま
でにはヒト血清、血漿又は尿中にカルパスタチンが存在
すること、また、ヒト血清、血漿又は尿中のカルパスタ
チン量と特定の疾病との関連を報告した例はない。更
に、カルパスタチンの測定方法については活性測定法
〔ムラカミ(Murakami)T.ら、ジャーナル オブ バイ
オケミストリー、第90巻、1809頁(1981)〕、ポリクロ
ーナル抗体を用いたEIA、モノクローナル抗体を用いた
ウェスタンブロティング法、モノクローナル抗体を用い
たEIA(特開平3−76596号公報)が報告されているが、
これらの方法は細胞・組織から抽出、又は精製したカル
パスタチンの測定方法についてのみが記載されており、
血清、血漿又は尿中のカルパスタチンとの反応性、更に
は血清、血漿又は尿中にカルパスタチンが存在するこ
と、そして血清、血漿又は尿中のカルパスタチン量と疾
病との関連についてはなんら記載されていない。
本発明の目的は、カルパスタチンの産生異常を伴う疾
病を血清、血漿又は尿中のカルパスタチン量を指標とし
て検出する新規な測定方法及び定量用キットを提供する
ことにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明を概説すれば、本発明の第1の発明はカルパス
タチン産生異常を伴う疾病の検出方法に関し、血清、血
漿又は尿中のカルパスタチン量を正常値と比較測定する
ことを特徴とする。また、第2の発明は、上記第1の発
明の検出方法の実施において使用するカルパスタチン産
生異常を伴う疾病の検出キットに関し、抗カルパスタチ
ン抗体を含有することを特徴とする。
本発明者らは上記現状にかんがみて、鋭意研究を重
ね、血清、血漿又は尿中のカルパスタチン量を測定する
ことにより、カルパスタチン産生異常を伴う疾病が検出
できること、及び血清、血漿又は尿中のカルパスタチン
量が簡便に高感度で定量できるキットを作製し、本発明
を完成させた。
以下、本発明を詳細に説明する。
カルパスタチン産生異常を伴う疾病とは下記(1)、
(2)、(3)のごとき疾病である。
(1) カルパスタチン含量の比較的多い細胞、臓器自
体の破壊による疾患。
(2) カルパスタチン含量の比較的多い細胞、臓器自
体の量的異常による疾患。
(3) カルパスタチン含量の比較的多い細胞、臓器自
体の質的異常による疾患。
上記(1)、(2)、(3)を具体的に説明すると、
(1)の例としては心筋梗塞、脳梗塞等、(2)の例と
しては癌等、(3)の例としては動脈硬化症、血栓症等
が挙げられる。
本発明者らは脳血栓症、脳梗塞、心筋梗塞、癌由来の
血清、血漿又は尿中には、健常人よりも多量のカルパス
タチンが存在することを確認し、血清、血漿又は尿中カ
ルパスタチンがカルパスタチン産生異常を伴う疾病の指
標として使用できることを見出した。
本発明において、血清、血漿又は尿中のカルパスタチ
ン量を測定する方法としては特に限定はなく、例えば、
活性測定方法及び免疫学的方法が挙げられるが、感度・
簡便さにおいて免疫学的方法が好ましい。免疫学的方法
においては抗体を用いる方法があるが、この場合、1種
又は2種以上の抗体を用いた免疫学的測定法が使用でき
る。抗体としてはモノクローナル抗体及びポリクローナ
ル抗体が用いられるが、その特異性、親和性の点からモ
ノクローナル抗体を使用することが望ましい。一方、免
疫学的測定方法には酵素免疫測定法、ラジオイムノアッ
セイ法、ラテックス凝集法、免疫比濁法、蛍光・発光免
疫測定法、ウエスタンブロティング法等があり、感度、
簡便さ、非放射能という点から酵素免疫測定法が望まし
い。
カルパスタチン量の測定に用いる抗カルパスタチン抗
体をキットとしておくことで、試料中のカルパスタチン
量を簡便に測定することができる。キットに用いる試薬
は溶液状でも良いし、凍結乾燥品でも良い。
〔実施例〕
以下に本発明を実施例をもって説明するが、本発明が
以下の実施例の範囲のみに限定されるものではない。
実施例1 2種のモノクローナル抗体を用いたサンドイッチEIA
法による臓器型カルパスタチン量の測定 (1) モノクローナル抗体結合ビーズの作製 Hybridoma CSL 4−7(微工研菌寄第10914号(FERM P
−10914)〕が産生するモノクローナル抗体CSL 4−7
を、特開平3−76596号公報記載の方法に準じ調製し、
その1mgを含有する0.1Mリン酸バッファー(pH8.0)50ml
にポリスチレンボール(積水化学社製、粒径6.35mm)10
0個を加え、5℃で16時間反応させ抗体をビーズに固定
化させた。ビーズを生理食塩水で洗浄後、1%ウシ血清
アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝生理食塩水に浸
し、5℃で一晩放置し、抗カルパスタチンモノクローナ
ル抗体結合ビーズを得た。
(2) 酵素標識モノクローナル抗体の作製 Hybridoma CSL 1−3(微工研菌寄第10913号(FERM P
−10913)〕が産生するモノクローナル抗体CSL 1−3
を、特開平3−76596号公報記載の方法に準じ調製し、
該抗体にペルオキシダーゼ(ベーリンガー−マンハイム
社製)をナカネ(Nakane)らの方法〔ジャーナル オブ
ヒストケミストリー アンド シトケミストリー(J.
Histochem.Cytochem.)第22巻、第1084頁(1987)〕〕
によって結合させ、標識抗体を得た。すなわち10mgのペ
ルオキシダーゼを2mlの精製水に溶かし、0.1M過ヨウ素
酸カリウムを0.2ml加える。室温で20分間反応させた後1
mM酢酸バッファー(pH9.0)に対し4℃で一晩透析す
る。一方、CSL1−3抗体2mgを1.5mlのリン酸緩衝生理食
塩水(pH7.4)に溶かし、10mM炭酸バッファー(pH9.5)
に対し一晩4℃で透析しておき、これを上記の過ヨウ素
酸処理したペルオキシダーゼと混合し、室温で2時間反
応させた後、水素化ホウ素ナトリウム(4mg/ml)を0.1m
l添加し、4℃で2時間反応後、リン酸緩衝生理食塩水
(pH7.4)で平衡化したウルトロゲルAcA 22(LKB社製)
を用いゲルろ過により分画し、ペルオキシダーゼ活性と
抗体活性の一致する画分を集め、メルチオレートナトリ
ウムを終濃度0.01%となるように添加し、4℃で保存し
た。
(3) カルパスタチンの測定 EIA法は以下のようにして行った。試料3μをチュ
ーブに入れ、固相化抗体ビーズをチューブの中に1個ず
つ入れ37℃で20分間第1インキュベーションを行う。次
に、ビーズを3mlの生理食塩水で3回洗い、標識抗体液
(300倍希釈)300μをビーズの入ったチューブに入
れ、37℃で20分間第2インキュベーションを行う。
次にビーズを3mlの生理食塩水で3回洗いビーズを別
のチューブに移し、これに発色試薬(o−フェニレンジ
アミン1mg/ml、H2O2の0.01%を含む0.1Mクエン酸バッフ
ァーpH5.0)を加え、室温で15分間反応させ、1NのH2SO4
を1ml加え、反応を停止させた。波長492nmの吸光度を測
定した。
臓器型カルパスタチン濃度の増加に伴って発色の吸光
度は増加し、本測定方法により臓器型カルパスタチンの
測定が可能であることが明らかとなった。
実施例2 2種のモノクローナル抗体を用いたサンドイッチEIA
法による臓器型及び赤血球型カルパスタチン全体量の測
定 (1) モノクローナル抗体結合ビーズの作製 Hybridoma CSL 5−12(微工研菌寄第10915号(FERM P
−10915)〕が産生するモノクローナル抗体CSL 5−12
を、特開平3−76596号公報記載の方法に準じ調製し、
該抗体を用い実施例1−(1)と同様にモノクローナル
抗体結合ビーズを作製した。
(2) 酵素標識モノクローナル抗体の作製 上記記実施例1−(2)と同様に作製した。
(3) 臓器型及び赤血球型カルパスタチン全量の測定 実施例2−(1)で作製した抗体結合ビーズと、実施
例2−(2)で作製した酵素標識抗体を用い、実施例1
−(3)と同様に測定を行った。臓器型及び赤血球型カ
ルパスタチン量の増加に伴って発色の吸光度は増加し、
本測定法によりカルパスタチン全量の測定が可能である
ことが明らかとなった。
実施例3 臓器型カルパスタチン測定EIAキットの製造と各種患
者血清中臓器型カルパスタチン量の測定 (1) EIAキットの製造 EIAキット(1回分)の組成を以下に示す。
1. 抗体固相化ビーズ 1個 (前出モノクローナル抗体CSL 4−7が固相化された
ビーズ) 2. ペルオキシダーゼ標識抗体 0.3ml (前出モノクローナル抗体CSL 1−3をペルオキシダ
ーゼにより標識した抗体) 3. 発色試薬 0.3ml (o−フェニレンジアミンHClの10mg/ml、過酸化水素
0.01%を含むクエン酸バッファーpH5.0) 4. 反応停止液(1N硫酸) 1.0ml 5. 標準品(臓器型カルパスタチンを30、90、270、810
pmol含む1% BSA/TBS) (2))患者血漿中臓器型カルパスタチンの測定 上記EIAキットを用い健常人23例、脳梗塞患者7例、
心筋梗塞患者7例、脳血栓患者5例、胃癌患者3例の血
清を用いて、実施例1に基づいて臓器型カルパスタチン
量を測定した。標準品を用いて検量線を求めた結果第1
図に示すような検量線が得られた。第1図のグラフにお
いて、横軸はカルパスタチン濃度(pmol/)を縦軸は
吸光度(A492nm)を示す。試料を測定して得られた吸光
度からこの検量線を用いて臓器型カルパスタチン量を求
めた。
血清中臓器型カルパスタチンの測定結果を第2図に示
す。すなわち、第2図は本発明により測定した血清中カ
ルパスタチン量を症例別にプロットしたグラフである。
第2図に示すように、健常人と脳梗塞患者、心筋梗塞
患者、脳血栓患者、胃癌患者の血清中の臓器型カルパス
タチン量の分布に違いが見られた。すなわち上記疾患患
者において血清中臓器型カルパスタチン量が健常人より
も多いということが見出された。
実施例4 臓器型及び赤血球型カルパスタチン全量測定EIAキッ
トの製造と各種患者血清中カルパスタチン全量の測定 (1) EIAキットの製造 EIAキット(1回分)の組成を以下に示す。
1. 抗体固相化ビーズ 1個 (前出モノクローナル抗体CSL 5−12が固相化された
ビーズ) 2. ペルオキシダーゼ標識抗体 0.3ml (前出モノクローナル抗体CSL 1−3をペルオキシダ
ーゼにより標識した抗体) 3. 発色試薬 0.3ml (o−フェニレンジアミンHClの10mg/ml、過酸化水素
0.01%を含むクエン酸バッファーpH5.0) 4. 反応停止液(1N硫酸) 1.0ml 5. 標準品(赤血球型カルパスタチンを30、90、270、8
10pmolを含む1% BSA/TBS) (2))患者血清中カルパスタチン全量の測定 上記EIAキットを用いて実施例3−(2)と同一の試
料を用いて、実施例2に基づいてカルパスタチン全量を
測定した。その結果第2図とほぼ一致した測定結果が得
られた。
実施例5 心筋梗塞発症後の血清中カルパスタチン全量の経時変
化 実施例4のキットを用いて心筋梗塞患者3例の発症後
の血清中カルパスタチン全量の経時変化を調べた。その
結果を第3図に示す。すなわち第3図は発作後日数
(日、横軸)とカルパスタチン濃度(p mol/、縦軸)
との関係を示すグラフである。第3図に示すごとく発作
後1日後には血清中カルパスタチン全量は著しく増加し
ており、かつ2〜13日間高値を持続していた。この結
果、従来、心筋梗塞の生化学的診断法として用いられて
きたクレアチニンキナーゼは心筋壊死は数週間にわたっ
て持続しているにもかかわらず、梗塞後3〜4日で正常
化してしまい、診断法として不十分であったことを考え
ると、発作後数日が経過して入院した症例でも、心筋梗
塞と診断できる新規な検出方法及びキットが提供された
ことを示すものである。
〔発明の効果〕
以上詳細に述べたように、本発明により、血清、血漿
又は尿中のカルパスタチン量が心筋梗塞症、脳梗塞症、
脳血栓症、癌等に代表される様なカルパスタチン産生異
常を伴う疾病のマーカーとなることが見出され、上記疾
病の新たな検出方法及び定量用キットが開発された。
【図面の簡単な説明】
第1図はカルパスタチン量測定で使用する検量線を示す
グラフ、第2図は血清中のカルパスタチンの測定結果を
示すグラフ、第3図は心筋梗塞発症後の血清中カルパス
タチン全量の経時変化を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 Biol.Chem.Hoppe−S eyler,Vol.369,(1988), p.223〜227 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G01N 33/50,33/53

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】血清、血漿又は尿中のカルパスタチン量を
    正常値と比較測定することを特徴とするカルパスタチン
    産生異常を伴う疾病の検出方法。
  2. 【請求項2】血清、血漿又は尿中のカルパスタチン量を
    正常値と比較測定する請求項1に記載の発明の実施に使
    用する検出用キットであって、抗カルパスタチン抗体を
    含有することを特徴とするカルパスタチン産生異常を伴
    う疾病の検出用キット。
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