JP2862637B2 - サーマルヘッドの製造方法 - Google Patents

サーマルヘッドの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [発明の目的] (産業上の利用分野) 本発明は、金属基板上に耐熱性樹脂被覆層を形成して
なる高抵抗基板を用いたサーマルヘッドの製造方法に関
する。
(従来の技術) 近年、サーマルヘッドは少音、省保守、低ランニング
コスト等の利点を生かして、ファクシミリ、ワードプロ
セッサ用プリンター等、各種記録装置に多用されるよう
になってきている。そして、これらの機器は、小型掛、
低価格化、低電力化が要請されており、サーマルヘッド
もこれに対応して、小型で安価、かつ高収率のものが望
まれている。
このような要望を満たすものとして、たとえば特開昭
52−100245号公報に記載されているように、保温層とし
てグレーズガラスの代わりに熱伝導率の小さな樹脂、た
とえばポリイミド樹脂やエポキシ樹脂を用いることが提
案されている。
このようなサーマルヘッドにおける保温層であるポリ
イミド樹脂層2に用いる樹脂としては、耐熱性や付着力
の点でサーマルヘッドの動作に耐え得るものが得難く、
実用化が困難であった。
しかし、本発明者らは次式に示すような分子構造を有
する芳香族ポリイミド樹脂を開発するに至り、保温層と
して樹脂を用いるサーマルヘッドの実用化に目途をつけ
た。
このポリイミド樹脂は、ビフェニルテトラカルボン酸
二無水物とp−フェニレンジアミンとの等モル混合物の
開環重付加反応時にp−フェニレンジアミンの0.05〜10
mol%をビスアミノシロキサンで置換えて合成したポリ
アミック酸を塗布、焼き付けることにより得られ、サー
マルヘッドの効率のみならず画質の面でも優れた特性を
得ることができる。(SPSE's 5th International Congr
ess on Advances in Non−Impact Printing Technologi
esの概要集p−261(1989,11,12)参照。) このようなサーマルヘッドの一例を第4図を用いて説
明する。
第4図において、1はたとえばFe−Cr合金よりなる金
属基板であり、この金属基板1上にポリイミド樹脂層2
が形成され、このポリイミド樹脂層2上には、ポリイミ
ド樹脂をCDEやAshingから保護するため、また抵抗層形
成時の抵抗値制御を容易にするため、さらに保温層に樹
脂層を用いたサーマルヘッド特有の異物巻込みによるク
ラックの発生を防止するための樹脂保護層3が形成され
ている。
そして樹脂保護層3上に、Ta−SiO2、Nb−SiO2等から
なる発熱抵抗体4が形成され、次いでこの発熱抵抗体4
の一部を露出させて発熱部5となる凹部を形成するごと
く、Al、Al−Si−Cuからなる個別電極6および共通電極
7が形成されている。
さらに、少なくともこの発熱抵抗体4を被覆するよう
に、Si−O−N、Si−Al−O−N、Si−Zr−Y−N−O
等からなる保護層8が形成されている。
(発明が解決しようとする課題) 上述したサーマルヘッドは、金属基板上に樹脂層を形
成した高抵抗基板を用いており、 曲げ加工が可能で、形状に対する自由度が高まり、小
形化、縦型ヘッドの展開も期待できる。
金属基板を共通電極に使用することができ、共通電極
形成の簡略が図れ、低コスト化が期待できる。
等の利点を有し、次世代の高性能サーマルヘッドとして
大いに期待されている。
しかし、ここで重要な問題となるのは高抵抗基板のパ
ターニングである。金属基板上に樹脂層を形成した高抵
抗基板における金属基板を共通電極として使用するため
には、絶縁膜であるポリイミド樹脂層のパターニングが
不可欠であるが、この加工が容易ではなく、パターン精
度やコストの点で良好なパターニングを行うことが困難
となっているのである。
金属基板を共通電極とする方法の一つとして、ポリア
ミック酸をスクリーン印刷機を使って所定のパターンに
印刷、焼き付ける方法があるが、印刷可能なペーストを
得るためフィラー等を添加してチクソ性や粘度を調整す
ると、保温層にポリイミド樹脂層を用いたことで得られ
る望ましい特性を得ることはできない。
さらに、本来、共通電極表面となるはずの未コーティ
ング部が焼き付けの際に発生する酸化性ガスで酸化し、
絶縁膜を形成してしまう場合があった。
また、樹脂層のパターニングの他の方法として、パタ
ーニングする部分の金属基板表面にポリイミドとの付着
力が低く、かつ酸化性ガス中でも酸化しにくいPt、Pd、
Au等をメッキしておき、樹脂層を焼き付けた後、この部
分を剥離除去する方法がある。しかし、この方法は工程
が複雑でコスト的にも不利である。
このほか、第4図に示したようなサーマルヘッドで
は、いずれの場合でも樹脂保護層として絶縁膜であるセ
ラミックス性の膜を形成する必要があるため、これらの
膜のパターニングも必要である。
さらに、樹脂層(保温層)上に直接または間接的に形
成される導電膜との確実な接続を得るために、加工部の
エッジで適当な傾斜を持つスロープが形成されること、
金属基板露出部が清浄であることが要求される。
しかしながら、これまでこれらを満足する加工方法は
見つかっておらず、金属基板を共通電極として使用する
ための優れたパターニング方法を得ることが課題となっ
ている。
本発明はこのような従来の課題を解決するためになさ
れたもので、金属基板上に樹脂層を形成した高抵抗基板
を用いてサーマルヘッドを製造するに際し、金属基板を
共通電極として使用するためのパターニングを良好に行
うことができ、保温層として用いた樹脂の特性を活か
し、品質向上を図ることのできるサーマルヘッドの製造
方法を提供することを目的とする。
[発明の構成] (課題を解決するための手段) 本発明のサーマルヘッドの製造方法は、金属基板の表
面に耐熱性樹脂層を形成し、この上に直接又は樹脂保護
層を介して発熱抵抗膜を形成し、次いで個別電極と導電
膜を形成し、これらの表面を被覆するように保護層を形
成するサーマルヘッドの製造方法において、150nm〜400
nmを波長を有するエキシマレーザを使用して前記耐熱性
樹脂層またはこの耐熱性樹脂層と同時に少なくとも前記
樹脂保護層を光化学反応により部分的に除去することを
特徴としている。
本発明において150nm〜400nmの波長を持つエキシマレ
ーザとしては波長193nmのArFエキシマレーザー、波長24
8nmのKrFエキシマレーザ、波長308nmのXeClエキシマレ
ーザ、波長353nmのXeFエキシマレーザなどを用いること
ができる。
エキシマレーザの波長が150nmより短波長では耐熱性
樹脂層に対する浸透深さが極端に浅くなって加工に時間
を要し、400nmより長波長では加工部の耐熱性樹脂被表
面が荒れるため実用上好ましくない。
エキシマレーザは他の可視や赤外のレーザに比べて波
長の短い紫外線で発振するため、1光子のエネルギーが
大きいという特徴を持っている。
レーザ照射部では、エキシマレーザのレーザ光子が、
ポリイミドの化学結合を直接励起して解離させ、この分
子の解離に伴って気化しやすい形に変化していくと考え
られている。
このような変化とともに、レーザ照射部の気化もレー
ザによる加熱で進行し、熱影響の残らないシャープな加
工部を形成することができる。
(作 用) 本発明では、150nm〜400nmの波長を持つエキシマレー
ザを使って耐熱性樹脂層を光化学反応により部分的に除
去している。この波長のエキシマレーザを使うことによ
り、耐熱性樹脂層上に形成した樹脂保護層、および金属
基板と樹脂層との界面に形成される不要な酸化物層を同
時に除去することができる。
さらに、本発明によれば、耐熱性樹脂材には、何ら加
工を施す必要がないため、樹脂材料の特性を損うことが
なく、望ましい特性を有する保温層が形成される。
また、本質的に熱ではなく光化学反応により耐熱性樹
脂被覆層を除去するため、熱による変質を防ぐことがで
きる。
そして、本発明によれば、 ポリイミドにエキシマレーザを照射した場合は、C−
Nがレーザ光の光子を吸収して励起し、開裂すること
で、ポリイミドの解離、除去が進行する。
さらに、エネルギー密度が大きい場合は、C−N、C
−C、C−O、C−Hの結合が開裂され、環状イミドと
直鎖部分が破壊されモノマーの形で解離し、ポリイミド
の除去が進行する。
と考えられ、これによりレーザ光のエネルギーが結合の
開裂に消費されるため熱影響が低減する。
(実施例) 次に、本発明の実施例について説明する。
実施例1 第1図は、本発明の方法によって得た一実施例のサー
マルヘッドを示す断面図である。
はじめに、Crを18wt%含有する厚さ0.5mm程度のFe合
金からなる金属基板11にレベリング処理を施した後、所
定の寸法に切断し、バリ取りを行う。
そして、所定寸法に加工された金属基板11をアルコー
ル洗浄後、UV/O3による光洗浄を施す。
次いで、たとえば96%H2SO4、5〜20vol%の水溶液を
40〜60℃に加熱した溶液中に1〜2分浸漬し、金属基板
11表面に生成するCr2O3を主体とする酸化物層の除去お
よび粗面化を行う(以下、活性化処理と称する)。
活性化処理の後は、先に(I)式で示したポリイミド
樹脂前駆体のポリアミック溶液をN−メチル−2−ピロ
リドン(NMP)等の有機溶剤を用いて所定の粘度に調整
し、ロールコータやスピンコータによって金属基板上に
所定の膜厚になるよう塗布し、焼成炉を用いて窒素ガス
雰囲気中、たとえば、50℃×60分+80℃×30分+120℃
×30分+250℃×60分+450℃×30分の条件で焼成して、
有機溶剤を除去するとともに、脱水環化反応を進行させ
てイミド化させつつ成膜し、耐熱性樹脂層12を形成す
る。このとき発生するH2Oガスなどの酸化性ガスで金属
基板表面の酸化が同時に進行して強固な接着が行われ
る。
次いで、得られた樹脂被覆金属基板上にスパッタリン
グ法等により、樹脂保護層13としてSi−Zr−Y−N−O
膜を所定の膜厚に形成し、その後、耐熱性樹脂層12のパ
ターニングを行う。パターニング装置の構成は第3図に
示す通りである。
すなわち、150nm〜400nmの波長を持つエキシマレーザ
光はアパーチャーによって所定の寸法に切出され、適当
な焦点距離を持つ石英レンズで集光されて、X−Yテー
ブル上に固定された樹脂被覆金属基板に照射される。
150nm〜400nmの波長を持つエキシマレーザとして、こ
の実施例では波長248nmのKrFエキシマレーザを使用し、
耐熱性樹脂層12の加工端部にはα=5゜のテーパ角
を、樹脂保護層13の加工端部にはα=30゜のテーパ角
を形成した。
この後、光化学反応で生成した炭素等の付着物を除去
するために、中性洗剤を用いたこすり洗浄、純水による
リンス、イソプロピルアルコールでの置換を施して、そ
の後乾燥する。
さらに、樹脂保護層13上にTa−SiO2からなる発熱抵抗
膜14を形成し、この発熱抵抗膜14の露出させるべき部分
(発熱部Tとなる開口部に相当する)をマスキング後、
Alからなる個別電極15および導電膜16を形成し、ウェッ
トエッチングやドライエッチングにより所定のパターン
を形成する。
導電膜16は共通電極である金属基板11と発熱抵抗膜14
とを電気的に接続するためのものである。
マスキング膜を除去後、発熱部Tを被覆するようにSi
−Zr−Y−N−Oからなる保護層17を形成してサーマル
ヘッドが得られる。
こうして得たサーマルヘッドについて、40℃、95%RH
の高温高湿中で1000時間放置後、クロスカット試験を行
った。その結果、耐熱性樹脂層12の剥離は認められず、
実用上にも何等問題は生じなかった。
実施例2 第2図は、本発明の方法によって得た他の実施例のサ
ーマルヘッドを示す断面図である。
この実施例のサーマルヘッドは、樹脂保護膜13とし
て、a−SiOx 13aおよびa−SiCx 13bからなる2層の樹
脂保護層をp−CVD法により形成した以外は、実施例1
と同様の構成である。
ただし、この実施例においては、波長308nmのXeClエ
キシマレーザを使用し、耐熱性樹脂層12の加工端部には
α=6゜のテーパ角を、樹脂保護層13の加工端部にα
=40゜のテーパ角を形成した。
こうして得たサーマルヘッドについて、実施例1と同
一条件でクロスカット試験を行った。その結果、耐熱性
樹脂層12の剥離は認められず、実用上にも何等問題は生
じなかった。
実施例3 この実施例のサーマルヘッドは、基板として、ガラス
エポキシまたは共通電極として導電膜が形成されたセラ
ミック基板を使用し、波長308nmのXeClエキシマレーザ
を使用し、耐熱性樹脂層12の加工端部にα=10゜のテ
ーパ角を、樹脂保護層13の加工端部にα=35゜のテー
パ角を形成した以外は、実施例1と同様の構成である。
こうして得たサーマルヘッドについて、実施例1と同
一条件でクロスカット試験を行った。その結果、耐熱性
樹脂層12の剥離は認められず、実用上にも何等問題は生
じなかった。
これら実施例1、2及び3の加工条件および加工結果
の詳細を第1表に示す。
さらに、実施例2において樹脂保護膜の成分であるa
−SiOx膜は、150nm〜400nmの波長を持つエキシマレーザ
光に対して透明であるが、上下の膜をエキシマレーザ光
による光化学反応により除去できる場合、これらの間に
透明な層が挟まれて存在しても、加工可能であった。
すなわち、最上層(a−SiCx膜)が除去された後、透
明な中間層(a−SiOx膜)を通過して下の層(ポリイミ
ド樹脂層)に到達し、この下の層が光化学反応により除
去され始めるが、このとき発生するガスにより、中間層
は持ち上げられ、先に除去された最上層の加工部と非加
工部の界面が拘束点となって刃物で切断されるように除
去されたのである。
このように、本質的に熱ではなく光化学反応により耐
熱性樹脂層を除去するため、熱による変質部が無く、保
温層として耐熱性樹脂を用いた場合の望ましい特性を損
わず、優れたサーマルヘッドを得ることができた。
[発明の効果] 以上説明したように、本発明のサーマルヘッドの製造
方法では、150nm〜400nmの波長を持つエキシマレーザを
使って耐熱性樹脂層を光化学反応により部分的に除去し
ているため、熱による変質を防ぎ、樹脂層には何ら加工
を施さずに、耐熱性樹脂の特性を活かした優れたサーマ
ルヘッドを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明のサーマルヘッドの製造方法で作製した
一実施例のサーマルヘッドを示す断面図、第2図は本発
明のサーマルヘッドの製造方法で作製した他の実施例の
サーマルヘッドを示す断面図、第3図はエキシマレーザ
を使用したパターニング装置の一例を示す図、第4図は
従来のサーマルヘッドを示す断面図である。 11……基板、12……耐熱性樹脂被覆層、13……樹脂保護
層、14……発熱抵抗膜、15……個別電極、16……導電
膜、17……保護膜、T……発熱部。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B41J 2/335

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属基体の表面に耐熱性樹脂層を形成し、
    この上に直接又は樹脂保護層を介して発熱抵抗膜を形成
    し、次いで個別電極と導電膜を形成し、これらの表面を
    被覆するように保護層を形成するサーマルヘッドの製造
    方法において、 150nm〜400nmの波長を有するエキシマレーザを使用して
    前記耐熱性樹脂層またはこの耐熱性樹脂層と同時に少な
    くとも前記樹脂保護層を光化学反応により部分的に除去
    することを特徴とするサーマルヘッドの製造方法。
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