JP2851137B2 - 耐熱絶縁線輪の製造方法 - Google Patents

耐熱絶縁線輪の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の目的〕 (産業上の利用分野) 本発明は、例えば高速増殖炉における液体ナトリウム
循環用の電磁ポンプの様に、300℃以上の高温で用いら
れる電気機器の耐熱絶縁線輪の製造方法に関するもので
ある。
(従来の技術) 300℃以上の高温で使用できる耐熱絶縁線輪は、殆ど
知られていない。MIケーブル(古河電工社の商品)の様
に、導体と金属シースの間に酸化マグネシウムの粉を充
填した耐熱絶縁電線が知られているが、これは金属シー
スがあるために、渦電流対策が必要であり、しかも導体
占積率が低くなるので、容量の大きい電気機器の線輪に
は不向きであった。
また、特公昭62−1241号公報や特公昭62−1242号公報
には、コイルの線間空隙部分およびコイルの外表面部の
少なくとも一部にシリコーン系樹脂または、そのシリコ
ーン系樹脂と高融点無機粉末を充填および/または被覆
した後焼成して無機質層を形成したことを特徴とする耐
熱絶縁コイルが記載されている。
さらに、特公昭62−57086号公報や特公昭62−57087号
公報には、導体上に無機絶縁層または使用中の異常時等
の高温時に、無機物化する耐熱絶縁電線を巻付け加工し
たコイルを固定する方法の耐熱絶縁コイル装置の製法が
記載されている。
(発明が解決しようとする課題) しかしながらこれらの耐熱絶縁線輪は、あまり厚い無
機質層を形成できないことや、絶縁層自体が粗なため絶
縁破壊電圧が低く、高電圧用の機器に使えないという欠
点があった。したがって、高電圧機器の場合、無機ポリ
マー(高温で無機質化し得るポリマー)の接着剤を用い
たガラスマイカテープを巻回して主絶縁とし、これを加
熱加圧して成形した後焼成し、完全に無機化した絶縁を
形成する方法が考えられる。
しかし、このように全体を接着剤で固めた絶縁は、機
器の起動時や停止時に、導体と絶縁層間の熱膨張率の違
いにより熱応力が発生し、このヒートサイクルが繰り返
されると疲労により絶縁にクラックが発生し、絶縁性能
が低下する。特に、大容量機用の大形巻線やより高温で
運転される機器でこのような現象が発生し易い。
したがって高速増殖炉で用いる液体ナトリウム浸漬形
無冷却電磁ポンプのような300℃以上の高温で使用され
る絶縁線輪は、高温で長期間安定して使用できる高い耐
熱性が必要である。大容量機においては、ヒートサイク
ルによって絶縁劣化の起きない高電圧の絶縁線輪が必要
となる。
本発明は、このような要望に応えるためになされたも
ので、300℃以上の高温で、長期間安定して使用でき、
ヒートサイクルによって絶縁性能が低下せず高電圧にも
用いることができる耐熱絶縁線輪の製造方法を提供する
ことを目的とする。
〔発明の構成〕
(課題を解決するための手段) 本発明は、導体上に無機質の補強材を無機質の接着剤
で貼り合せて成るマイカテープを接着剤を塗らないで巻
回する。さらに、この上から接着剤を有しない耐熱性の
ある無機質の絶縁テープを巻回し、この絶縁テープが緩
まない様に端末を処理した後、300℃以上の高温で焼成
して製造するものである。
ここで、無機質の接着剤としては、高温で焼成するこ
とにより無機化する無機化シリコーンや無機塗料があ
る。無機化シリコーンとしては、例えばアルキルシリケ
ート系のシリコーンAY49−208(東レシリコーン社の商
品名)、無機充填材入ボロシロキサン系塗料SMR−109
(昭和電線電纜社の商品名)やメチルポリシロキサンか
ら成る感圧接着剤YR3286(東芝シリコーン社の商品名)
等が含まれる。
さらに、無機塗料としてはモノリン酸アルミニウム、
リン酸珪素などのリン酸塩、コロイダルシリカやコロイ
ダルアルミナなどが含まれる。
無機化シリコーンに無機質の充填材を配合すれば一般
に熱的に安定となるし、価格も安くなる。
ここで、無機質の充填材としては、アルミナ(Al
2O3)、マグネシア(MgO)、シリカ(SiO2)、ジルコニ
ア(ZrO2)、ステアタイト(MgO・SiO2)、クレー、カ
オリン、マイカ粉、高融点ガラスフリット等が含まれ
る。
また、マイカテープの補強材および耐熱性を有し接着
剤を有しない無機質の絶縁テープとしては、アルミナ、
アルミナ・ボリア・シリカ(例えば米国スリーエムの商
品名ではネクステル)、シリカなどの耐熱性があり機械
的強度の大きい繊維を織った織布または不織布などを使
用する。
ここで、マイカと補強材を貼り合せる際には、接着剤
が補強材の繊維に浸透し過ぎない様に接着剤量を加減す
る。これは繊維全体が接着剤で固められるともろくな
り、使用中のヒートサイクルにより破断し易くなるのを
防止するためである。マイカテープの貼り合せ方法とし
ては、あらかじめ接着剤をマイカに含浸または塗布して
おき、これに補強材を貼り合せる。この場合も点接着に
なるのが望ましい。接着剤量が35重量%を越えると、繊
維への浸透量が増え焼成後もろくなる欠点がある。な
お、マイカテープと接着剤を有しない絶縁テープを交互
に巻回して絶縁層を形成すれば絶縁層の厚い、ヒートサ
イクル性の優れた高電圧絶縁が形成できる。
なお、絶縁テープ端末の緩み止めは、アルミナ、アル
ミナ・ボリア・シリカなどの無機質繊維から成る糸で押
え巻くか、または絶縁テープの端末のみ前述した無機化
シリコーンもしくは無機塗料を塗布し、高温焼成処理で
接着させる。
(作 用) ここで、マイカテープを使用するのは、マイカは耐熱
性が高く、絶縁破壊電圧や耐電圧特性に優れているため
である。また、マイカテープの補強材は高温で機械的強
度の強い無機質のテープを貼り合せてあるので、熱応力
が加わっても、マイカテープがばらばらに崩れてしまう
のを防ぐことができる。しかも、貼り合せ接着剤は少量
なので、補強材の繊維全体に浸透することはなく、もろ
くならない。
マイカテープを巻く際は接着剤を塗布しないので、マ
イカテープ間は接着してない。従って、機器の運転・停
止に伴うヒートサイクルによる熱応力を、マイカテープ
間がずれることにより吸収してしまう。
マイカテープ層の上に巻回した無機質の絶縁テープ
は、接着剤が塗布されていないため、ヒートサイクルに
よる熱応力を自身が変形することによって吸収する。ま
た、接着剤がないため絶縁テープ本来のクッション性が
生かされ、鉄心に組込まれた絶縁コイルを電磁振動から
守ることが出来る。
マイカテープと絶縁テープを交互に巻回して、絶縁層
に働く熱応力を絶縁テープが担うようにすれば、マイカ
テープの補強材はそれほど機械強度を必要とせず、安価
なものが使える利点がある。
マイカテープの補強材及び絶縁テープはポーラスにな
っているので、無機化シリコーンが高温で無機物化する
際に不可欠な空気の流通が良くなり、高電圧絶縁で絶縁
層が厚くなっても容易に焼成ができる。
接着剤を有しない絶縁テープを表面に巻回すると、絶
縁テープが緩むので前述した様な緩み止めが必要とな
る。
(実施例) 実施例1 第1図において、導体1はニッケルメッキをしたアル
ミナ分散強化銅2(グリデンメタル社の商品名Glid Cop
al−15)から成る平角線に、厚さ50μmのシリカクロス
と厚さ100μmの無焼成軟質集成マイカシートとを少量
のシリコーン(例えば、東芝シリコーン社の商品名YR32
86)を接着剤として貼り合せて成るマイカテープ3を巻
回したもので、この導体1を内径500mm、外径900mm、厚
さ40mmとなる様にパンケーキ状に巻いた後、無機質充填
材を含むアルキルシリケート系の無機化シリコーン(東
レシリコーン社の商品名AY49−208)やアルミナ等の無
機質の接着剤4等を用いて成形する。さらに、この上か
ら厚さ50μmのアルミナクロスを厚さ100μmの無焼成
集成マイカに裏打補強し、これに上記の無機質充填材を
含む無機化シリコーン(東レシリコーン社の商品名AY49
−208)とシリコーン感圧接着剤(東芝シリコーン社の
商品名YR3286)とを20重量%塗布して成るマイカテープ
5を、接着剤を全く塗らずに、1/2重ね巻で6回巻回し
た。さらに、この上から接着剤を有しない無機質の絶縁
テープとして、厚さ300μmのアルミナ繊維クロスから
なる絶縁テープ6を1/2重ね巻きで1回巻回した。つづ
いて、絶縁テープの端末が緩まない様にアルミナ繊維か
らなる糸を絶縁テープ6の巻回端末上から押え付けなが
ら巻回し、絶縁層を形成した。
一方、比較用として前記接着剤量20重量%のマイカテ
ープ5の代りに、50重量%に増量したマイカテープを1/
2重ね巻きで6回巻回した。さらに、前記接着剤を有し
ないアルミナ繊維クロスから成る絶縁テープ6の代わり
に、アルミナ繊維クロスに前記無機充填材を含む無機化
シリコーン(東レシリコーン社の商品名AY49−208)と
無機充填材入ボロシロキサン系樹脂塗料(昭和電線電纜
社の商品名SMR−109)とを塗って成る絶縁テープを、無
機充填材を含む無機化シリコーン(東レシリコーン社の
商品名AY49−208)を塗布しながら前述したマイカテー
プの上から1/2重ね巻きで1回巻回し、絶縁層を形成し
た。
このようにして形成された絶縁層の外側に離型用のポ
リテトラフルオロエチレンテープ(図示しない)を巻
き、鉄板を当てた後、熱収縮性ポリエステルテープ(フ
ィルム状,チューブ状、または織布状のものでもよい)
を巻き、これを80℃で1時間、130℃で2時間、150℃で
2時間、さらに180℃で15時間加熱して硬化させた。こ
の後、前記熱収縮性のポリエステルテープ、鉄板、離型
用のポリテトラフルオロエチレンテープを除去し、この
線輪を空気中で300℃で8時間、600℃で8時間焼成し、
耐熱絶縁線輪を得た。
上記の製造過程において、加熱硬化時の加圧は、熱収
縮性ポリエステルテープの加熱収縮によって行われ、さ
らに、高温での加熱焼成により絶縁層中に含まれる有機
質成分は飛散焼失して無機化(セラミック化)し、完全
に無機質の絶縁層が形成された。
実施例2 実施例1の導体の上に第2図に示すように、厚さ50μ
mのガラスクロスを厚さ100μmの無焼成集成マイカに
裏打補強し、これに無機充填材を含む無機化シリコーン
(東レシリコーン社の商品名AY49−208)とシリコーン
感圧接着剤(東芝シリコーン社の商品名YR3286)とを20
重量%塗布して成るマイカテープ5を接着剤を全く塗ら
ずに1/2重ね巻きで1回巻回した。さらに、この上から
接着剤を有しない厚さ100μmのアルミナ繊維クロスか
らなる絶縁テープ6を突き合せ巻きで1回巻回した。こ
の様にマイカテープと絶縁テープを交互に6回づつ巻い
て絶縁層を形成した。コイル表面の絶縁テープの巻回端
末は前記無機化シリコーン(東レシリコーン社の商品名
AY49−208)を塗布して止めた。
以下、実施例1と同様にして耐熱絶縁線輪を製造し
た。
実施例1および2により得られた耐熱絶縁線輪をタン
クに入れて窒素ガスを封入した。室温と600℃の間で500
回ヒートサイクルを行ったところ、比較例の場合は、絶
縁内層と表面のアルミナクロス層が各所でクラックが入
ったり、破断しており、絶縁破壊電圧も初期値の65%に
低下していたのに対し、実施例1および2により得られ
たものは、このようなアルミナクロスの破断は全くな
く、絶縁破壊電圧も初期値の95%を保持しており、絶縁
劣化が殆どなかった。
また、ヒートサイクル試験終了後、絶縁層を分解した
結果、比較例の絶縁線輪は最内層の接着剤の一部が無機
化しないままだった。これは、絶縁層が接着剤で密着し
ていたため焼成工程で空気が十分に供給されなかったた
めである。本発明の実施例1および2の耐熱絶縁線輪は
絶縁層のすみずみまで無機化していた。
〔発明の効果〕 以上説明した様に本発明によれば、電気特性、耐熱性
に優れているマイカテープを接着剤を塗らずに巻回し、
その上から機械強度が大きく耐熱性に優れ、かつ接着剤
を有しない無機質の絶縁テープを巻回しているので、電
気的・機械的に優れた耐熱絶縁線輪が得られる。
また、この耐熱絶縁線輪は、機器の運転・停止に伴っ
て起きるヒートサイクルが繰返されても、絶縁層にクラ
ックが入ることもなく、絶縁性能の低下が殆ど起きな
い。したがって、高速増殖炉における液体ナトリウム循
環用の電磁ポンプの様に、300℃以上の高温で用いられ
る絶縁線輪の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の第1の実施例に係る耐熱絶縁線輪の横
断面図、第2図は本発明の第2の実施例に係る耐熱絶縁
線輪の横断面図である。 1……導体 2……ニッケルメッキしたアルミナ分散強化銅 3、5……マイカテープ 4……無機化シリコーンや無機質の接着剤 6……接着剤を有しない無機質の絶縁テープ

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】導体に、無機質の補強材を無機質の充填材
    を含む無機質の接着剤で貼り合せて成るマイカテープを
    接着剤を塗布しないで巻回し、この上から機械的強度が
    大きく耐熱性に優れかつ接着剤を有しない無機質の絶縁
    テープを巻回した後、300℃以上の温度で焼成すること
    を特徴とする耐熱絶縁線輪の製造方法。
  2. 【請求項2】導体に、無機質の補強材を無機質の充填材
    を含む無機質の接着剤で貼り合せて成るマイカテープを
    接着剤を塗布しないで巻回し、この上から機械的強度が
    大きく耐熱性に優れかつ接着剤を有しない無機質の絶縁
    テープを巻回し、さらにその上に前記マイカテープと接
    着剤を有しない無機質の絶縁テープを前記と同様の方法
    にて交互に巻回した後、300℃以上の温度で焼成するこ
    とを特徴とする耐熱絶縁線輪の製造方法。
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