JP2850392B2 - 繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法 - Google Patents

繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は自動車外板パネル、自動車用構造材、バッテ
リートレイ等の自動車部品、土木建築用資材等の工業材
料に供する繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法に関
する。詳しくは繊維配向等による変形が少なく、表面外
観の良好な、かつ機械的強度の優れた繊維強化熱可塑性
樹脂成形品の製造方法に関する。
<従来の技術> 従来、繊維強化熱可塑性樹脂成形品の製造方法として
は、短繊維強化樹脂ペレットを射出成形等の一般的成形
法を用いて成形するのが代表的な方法である。また樹脂
ペレット製造時のペレット切断長さとほぼ成じ長さの中
繊維長(繊維長10mm以下)の繊維で強化された熱可塑性
樹脂ペレットを用い、射出成形等で繊維強化成形品を製
造する方法もある。
<従来技術の課題> 従来の技術はそれぞれ固有の技術的問題点を有してい
る。繊維強化成形品の製造法として最も一般的な短繊維
強化樹脂ペレット法は、繊維強化の最大の目的である機
械的強度、特に耐衝撃強度についての向上効果が小さい
という欠点を有している。この理由は、繊維と樹脂の混
合、分散過程、すなわち造粒時、及び射出成形時の2回
の可塑化、混練工程で繊維は著しく短く切断されるため
である。さらに射出成形過程で、繊維は溶融樹脂ととも
に金型内の狭いキャビテイクリアランス内を著しい剪断
をうけ流動するために、さらに繊維の切断が発生する。
次に、中繊維強化ペレットの場合、ペレット中の繊維は
長くても射出成形時の可塑化工程及び金型内の流動過程
で、著しい剪断を受け繊維は短く切断され、成形品中の
繊維長は短繊維強化樹脂と同程度となり耐衝撃強度の向
上効果は小さい。
<課題を解決するための手段> この様に従来の技術は繊維を充填したにもかかわら
ず、目的とした機械的物性の向上が不十分で、工業的技
術としては十分なものとは言えない。本願発明者らはこ
れらの問題点を克服する成形加工技術を開発すべく鋭意
研究を進めてきたが、ついに以下に述べる工業的に優れ
た繊維強化熱可塑性樹脂成形品の新しい製造方法を発明
するに至った。
すなわち本発明は、平均繊維長が1mm以上で、かつ50m
m以下の繊維を強化材として分散させた溶融熱可塑性樹
脂を未閉鎖の金型内に供給し、金型を閉じ、加圧冷却し
て成形品を得ることを特徴とする繊維強化成形品の製造
方法に関する。
さらに詳しく本願発明について説明すると、本願発明
においては長さ1〜50mmの繊維が分散した溶融樹脂を開
いた状態の金型内に供給し、型締圧力により賦形を行
う。このため可塑化装置からの供給圧力は射出成形の場
合に500〜1600kg/cm2であるのと比較し、100〜300kg/cm
2と著しく低く、又賦形に要する型締圧力も30〜150kg/c
m2と極端に小さく、溶融したマトリックス樹脂中に分散
した繊維の切断は射出成形と比べて著しく少ない。
また、この成形方法により得られる成形品は耐衝撃強
度が大巾に向上し、成形品のすべての部分が長い繊維で
強化された製品を得ることができる。
次に本願発明においては可塑化工程における繊維の切
断を防ぐために、できるだけ剪断が小さいことが必要で
あり、例えば第1図に示すような可塑化装置が好ましく
使用できる。(1)は熱可塑性樹脂原料を供給するため
の供給口、(2)は繊維材料を供給するための供給口、
(3)は樹脂中に含まれるガス分を除去するためのベン
ト口を示す。
繊維強化樹脂の可塑化工程における繊維の切断は、主
に可塑化装置の前半、すなわち樹脂ペレットの供給部及
び圧縮部で発生するため、本発明で使用する可塑化装置
においては繊維材料供給口を圧縮部以降、すなわち熱可
塑性樹脂が十分溶融した後の部分にもうける。さらに供
給された繊維と共に空気が溶融樹脂中に巻き込まれるた
め、繊維供給口とシリンダーノズルの間にベント口をも
うけることにより効果的に脱気することができる。又、
供給された繊維は溶融樹脂中に均一に分散することが必
要であるため、繊維を樹脂中へ添加後できるだけ長い混
練過程をもうけることが必要で、本願発明においてはス
クリュー長さ/スクリュー径の比を少なくとも15以上と
することが必要である。本装置を用いることにより繊維
切断の極めて少なく長い繊維が均一に分散した樹脂を得
ることが可能となり、さらに前述の金型を開いて成形す
る方法を用いることで型内の繊維切断もきわめて少なく
なり、得られる成形品は長い繊維で均一に強化されたも
のとなる。
本発明に用いられる強化用繊維材料としては、ガラス
繊維、カーボン繊維、ステンレス繊維等の無機繊維、又
ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維等の
有機繊維及び無機繊維、有機繊維の混合物を使用するこ
とができる。ガラス繊維の場合、アミノシラン、ビニル
シラン等の一般的な有機珪素化合物で表面処理をしたも
のを使用してもよい。又繊維の径は1μm〜50μmの一
般的に得られる繊維を使用できる。
本願発明で、可塑化装置のシリンダー中央部の繊維供
給口へ供給する繊維としては、繊維長が1mm〜50mmの単
繊維または数十本から数百本の単繊維を集束剤で集束し
た集束繊維を使用することができる。繊維長が1mmより
小さい場合は成形品の機械的強度、特に衝撃強度向上効
果が小さく、又、50mmより大きい場合は繊維材料供給口
において繊維がブリッジ現象を起こすため、繊維の供給
がスムーズに行かない。
本願発明に用いられる熱可塑性樹脂はポリエチレン、
ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ABS
樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテ
レフタレート等の一般的熱可塑性樹脂、これらの変性
物、及びこれらの混合物、ポリマーアロイ等が用いられ
る。さらにこれらの熱可塑性樹脂には熱安定剤、紫外線
防止剤、などの添加剤、また着色剤、無機充填剤などを
含んでいてもよい。
<実施例> 以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定
されるものではない。なお実施例中の成形品の試験法は
以下のとおりである。
・曲げ試験 JIS K6758に準拠し、三点支持法で行なった。テスト
ピースは第4図に示す箱型成形品の底面部分から切り出
した、形状が2mm厚×10mm巾×90mm長のものを用い、23
℃の雰囲気で試験を実施した。
・衝撃試験 JIS K6758に準拠し、アイゾット・ノッチ法のテスト
を実施した。テストピースは第4図に示す箱型成形品の
底面部分から切り出した、2mm厚×10mm巾×90mm長のも
のを用い、23℃の雰囲気で試験を実施した。
・平均繊維長 得られた成形品を鉄板上に置き、バーナーで約1時間
加熱後500℃の電気炉内に2hr放置し、熱可塑性樹脂等の
可燃成分を取り除く。冷却後任意の部分から抜き出した
サンプルのうち200本につき長さを測定。全平均繊維長
を計算し、平均繊維長とした。
・繊維充填量 成形品から20mm×20mmの大きさのサンプルを切り取り
加熱燃焼前の重量を測定した後、平均繊維長の測定の場
合と同じ方法で可燃成分を除き繊維のみを取り出す。加
熱燃焼後の重量を測定し、次式を用いて繊維充填量をパ
ーセントで算出する。
実施例1 100トンの型締力を有する竪型プレス内に、溶融樹脂
の供給口を内部にもつ金型を取り付け、この金型のマニ
ホールド部に第2図に示すアキュームレーターを接続
し、さらに第1図に示す可塑化装置をアキュームレータ
ーに接続した。ここで用いた可塑化装置は直径50mmのフ
ルフラクト・タイプのスクリューをもち、スクリュー長
さ/スクリュー直径の比は29、シリンダー後方にマトリ
ックス樹脂供給口(1)、中央部には繊維材料供給口
(2)、又、繊維材料供給口(2)とノズルの中間部に
脱気口(3)を有する構造から成っている。さらに脱気
口(3)へは真空ポンプを接続し強制脱気を行なった。
第3図に全体の接続図を示した。金型は上、下2つの部
分から成り、下型中央部に直径3mmの溶融樹脂の型内供
給口をもつ、製品肉厚2mm、製品寸法200mm長×200mm巾
×40mm高の箱型形状を有する型を用いた。(第4図) 熱可塑性樹脂としては住友化学工業(株)製ポリプロ
ピレン樹脂、住友ノーブレンAX568(メルトフローイン
デックス 65g/10分)を用い、これをマトリックス樹脂
供給口(1)より投入し、又、繊維材料として日本硝子
繊維(株)製ガラスファイバー・ロービング RER231−
SM14をロービングカッターを用いて13mm長さに切断し、
繊維材料供給口(2)より、ポリプロピレン樹脂に対し
15重量パーセントの充填量となる量を定量的に投入し
た。得られた成形品についてアキュームレーター出口部
及び成形品端部における繊維の平均繊維長及び繊維充填
量を測定した。第1表に示す通り、繊維切断が少なく繊
維が均一に分布した成形品を得た。又、得られた成形品
の曲げ試験、衝撃試験を実施し、繊維強化による機械的
物性の向上を確認した。
実施例2 マトリックス樹脂としてポリプロピレン樹脂(住友ノ
ーブレン AX568)にマレイン酸変性ポリプロピレン樹
脂を10重量%混合したものを使用、又、ガラス繊維とし
て表面にビニルシラン処理をほどこしたものを使用した
以外は実施例1と同じ条件で成形テストを実施した。第
1表に示す通り得られた成形品の機械的性質は優れたも
のであった。
実施例3 ガラス繊維の供給時の切断長さを25mmとした以外は実
施例2に同じ条件で成形テストを実施した。第1表に示
す通り得られた成形品の機械的性質は優れたものであっ
た。
比較例1 マトリックス樹脂として、住友化学工業(株)製ガラ
ス繊維30重量%充填ポリプロピレン樹脂(住友ノーブレ
ン GHH43:ガラス繊維の平均繊維長0.7mm)と住友化学
工業(株)製ガラス繊維未充填ポリプロピレン樹脂(住
友ノーブレンY101)を1:1でブレンドしたものを用い、
繊維材料供給口からのガラス繊維の供給をしない以外は
実施例1と同じ条件で成形テストを実施した。第1表に
示す通り得られた成形品の衝撃強度は不十分なものであ
った。
比較例2 ガラス繊維をマトリックス樹脂供給口(1)より投入
した以外は、実施例1と同じ条件で成形テストを行なっ
た。第1表に示す通り得られた成形品の衝撃強度は不十
分なものであった。
比較例3 直径50mmのフルフラクト・タイプのスクリュウをも
ち、スクリュウ長さ/スクリュウ直径の比が10の可塑化
装置を用いた以外は実施例1と同じ条件で成形テストを
行なった。成形品には気泡が含まれ、ガラス繊維の解繊
も不十分で偏在したものであった。
<発明の効果> 上述の如く、本発明による繊維強化成形技術を用いる
と成形と同時に長い繊維による強化が可能で、かつ製品
の端部まで均一に強化された製品を低コストで得ること
ができ、さらに外観等も従来法の長繊維強化法と比較し
格段に改善されるため自動車部品、家電部品、建築用材
料等の広範囲な用途分野への繊維強化製品を提供するこ
とが可能となった。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明におけるマトリックス樹脂と繊維の混練
用可塑化装置の縦の断面図を示す。 (1)マトリックス樹脂供給口 (2)繊維材料供給口 (3)脱気口 (4)スクリュー (5)シリンダー (6)ノズル 第2図は本発明の実施例で用いたアキュームレーターの
縦の断面図である。 (7)油圧シリンダー (8)溶融樹脂シリンダー (9)油圧用ピストン (10)溶融樹脂用ピストン (11)シリンダー固定具 (12)オイル出入口 (13)オイル出入口 (14)溶融樹脂供給口 (15)溶融樹脂シリンダーノズル 第3図は本発明の実施例に用いられた可塑化装置−アキ
ュームレーター−金型の縦の断面図である。 (16)可塑化混練装置 (17)アキュームレーター (18)上金型 (19)下金型 (20)マニホールド部 第4図は本発明の実施例の方法でつくった成形品の斜視
図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松原 重義 大阪府高槻市塚原2丁目10番1号 住友 化学工業株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−4920(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B29C 43/02,43/34 - 43/36 B29C 45/00,45/17 - 45/18,45/60

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】上流より樹脂供給口、強化繊維供給口およ
    びベント口が順次設けられ、かつスクリュー長さ/スク
    リュー径の比が15以上であるシリンダーとスクリューか
    らなる可塑化装置により可塑化混練された、繊維長が1
    〜50mmの強化繊維が分散した溶融熱可塑性樹脂を、未閉
    鎖の金型内に供給し、金型を閉じて加圧冷却して成形品
    を得ることを特徴とする繊維強化熱可塑性樹脂成形品の
    製造方法。
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