JP2849478B2 - 光導波路とその製造方法 - Google Patents

光導波路とその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、有機ポリマー中に超微
粒子が選択的部分に分散してなることにより、屈折率が
周囲より大なる光導波部を有することを特徴とする光導
波路およびその製造方法に関する。
【0002】光導波路は、光ファイバーの分岐・結合を
容易に行なったり、光スイッチなどの非線形光学動作を
行わせるためにきわめて有用である。
【0003】
【従来の技術】光通信や光情報処理分野において利用さ
れる光回路の研究は近年、急速な進歩を遂げ、その中で
も光導波路の開発はめざましいものがある。
【0004】光導波路には、LiNbO3にTiを拡散させた無
機結晶やイオン交換により金属を他金属と交換したガラ
スなどの他に、有機ポリマー光導波路がある。
【0005】従来の有機ポリマー導波路製造法として
は、最も簡便なものとして高屈折率の有機ポリマー材料
で導波路を形成した後、低屈折率材料に埋め込む方法が
ある(特開昭64-59302)。
【0006】また、モノマーを含む有機ポリマー薄膜を
作成したのち、パターン用マスクを用いて選択的に紫外
線重合させて、屈折率変化をもたせる方法や、レーザー
スキャンにより高屈折率の導波路を形成する方法等もあ
る(特開昭63-91604)。
【0007】有機ポリマー非線形動作光導波路として
は、ポーリング(電界配向)処理、即ち、ポリマーの軟
化点温度あるいはガラス転移点付近に於いて、電界を印
加し、含有されている極性低分子の配向を揃えるという
処理をされた有機ポリマー導波路がある。これは下部電
極をリソグラフィーによって設けバッファ層をその上に
構成し、メチルニトロアニリンなどの非線形光学性化合
物を分散した有機ポリマーをコートする。この上にパタ
ーン化された電極を施し、電極に印加することにより、
電極印加部分に存在するメチルニトロアニリンが分極配
向し、周囲の非配向部分に比較して高屈折率部分が形成
された非線形光学効果を有する導波路である(R.Lytel
ら、SPIE予稿集第 824号、152 頁,1987年)。
【0008】しかし、経時変化のために所要屈折率発現
のために不可欠な分子の配向が解消したり、配向を保持
するために電界をかけておく必要があったりする難点が
ある。また、分子の配向分極効果にもとづくために屈折
率差が大きくとりにくいなどの欠点を有する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、有機ポリマ
ー中に半導体超微粒子が選択的部分に分散してなること
により屈折率が周囲より大なる光導波部を有することを
特徴とする光導波路ならびに、半導体超微粒子の原料と
なる金属元素化合物を含有した前駆体有機ポリマーに導
波路形成用パターンマスクを施したあと、半導体超微粒
子生成に必要な反応性ガスを反応させることにより、半
導体超微粒子を選択的部分に分散させることを特徴とす
る光導波路の製造方法を提供する。
【0010】本発明によると、光導波路形成のために屈
折率の異なる物質で構成するか、あるいは分散させるの
で、経時変化による配向分極の解消を回避できるし、ま
た分極による効果ではないので充填率の向上により、よ
り大きい屈折率変化も付与しうる。
【0011】さらにまた、半導体超微粒子は空間的に 1
00オングストローム程度以下になるとその電子状態が閉
じ込め効果を受け、大きな非線形性能の発現することが
知られており、さらに有用性が高まる。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明による光導波路に
ついて第1図を用いて説明する。本発明による光導波路
は、第1図中d)に示された断面図のように、金属化合物
を含有した有機ポリマー中のパターン化された部分に半
導体超微粒子が選択的に分散している部分が光導波部と
なった構造をしている。
【0013】次に、第1図にもとづき、本発明の製造方
法について記述する。まず、半導体超微粒子の原料とな
る金属元素化合物を含有した前駆体有機ポリマーを調製
する。
【0014】金属元素化合物としては、元素周期律表第
II−VI族化合物半導体超微粒子生成のために、過塩素酸
カドミウム、酢酸亜鉛、硝酸鉛などの第II族元素化合物
を用いる。
【0015】有機ポリマーとしては、透明性などの光学
的特性に優れた有機ポリマー、たとえばポリメチルメタ
クリレート、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネー
ト、ポリスチレンなど、あるいはこれらのひとつないし
は複数を含有する混合物ないしは共重合体を用いる。
【0016】これら金属元素化合物、有機ポリマーを適
当な溶媒に溶解させる。例えば、ジメチルホルムアミ
ド、アセトニトリル、メタノール、テトラヒドロフラン
などの極性有機溶媒が金属元素ならびに有機ポリマーの
溶解性の観点から好ましく用いられる。
【0017】このようにして調製された溶液をガラスや
シリコンなどの適当な基板上にキャストあるいはスピン
コートすることにより展開する。含まれている溶媒は風
乾あるいは減圧処理することにより除去処理をおこな
い、前駆体有機ポリマーフィルムを形成する。
【0018】このようにして得られた前駆体有機ポリマ
ーフィルムに導波路形成用パターンマスクを施すが、そ
の方法の一つの例示としては、第1図b)に示すようなス
テンレス製パターンマスクに前駆体有機ポリマーフィル
ムを装填する。
【0019】半導体超微粒子生成に必要な反応性ガスと
しては目的に応じ、硫化水素ガス、セレン化水素ガスな
どの第VI族元素化合物ガスあるいは窒素、ヘリウムなど
の不活性ガスで希釈した混合ガス、さらには、これらを
任意な比率で混合したガスを用いる。
【0020】反応性ガスはマスクの空隙部分において前
駆体有機ポリマーフィルムに接触し、吸収・拡散過程を
経て、前駆体有機ポリマー中において金属元素化合物と
の反応により半導体超微粒子を生成する。拡散過程で、
マスクされた部分において、反応性ガスはわずかな回り
込みがあるのみで、半導体超微粒子生成はおもに空隙部
分において進行する。
【0021】必要に応じ、金属元素化合物濃度、前駆体
有機ポリマー中の溶媒残存量を調節することにより生成
する半導体超微粒子の粒子径あるいは密度を調節するこ
とも可能である。
【0022】半導体超微粒子分散体の非線形光学効果
は、光吸収により発生する電子−正孔の空間的閉じ込め
効果を利用するため、粒子径は10から1000オングストロ
ーム程度に制御されるのが好ましい。
【0023】本発明方法によると平面導波路、チャンネ
ル導波路、導波路複合構造のものを得ることが可能であ
る。
【0024】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説
明する。 実施例1 過塩素酸カドミウム Cd(ClO4)2・6H2Oを1.0x10-4モル、
アクリロニトリル/スチレン共重合樹脂 0.5gを均一に
溶解させたジメチルホルムアミド溶液 3.5mlを直径70mm
のガラスシャーレに展開する。これを真空デシケーター
にいれ、1Torrの減圧下、室温で一日放置することによ
り、溶媒を大半除去し、前駆体有機ポリマーフィルムを
得る。このフィルムの膜厚は90μmであった。この前駆
体有機ポリマーフィルムをパターン形成用マスクに装填
し、これを硫化水素雰囲気中で2時間放置し、チャンネ
ル形導波路を得た。生成した硫化カドミウム半導体超微
粒子による可視・紫外吸収スペクトルならびに電子顕微
鏡観察写真により、マスクによる半導体超微粒子の選択
的部分への分散化が達成されていることを確認した。導
波路による進行光の閉じ込め効果は、ヘリウム−ネオン
レーザーを用い、フィルム面内で導波路直線方向に対し
て約10度の傾斜を持たせた入射光線が導波路内に閉じ込
められ、伝播されることで確かめられ、これにより光導
波路の形成を確認した。
【0025】比較例1 パターン形成用マスクを施さない以外は、実施例1と同
様に実施したところ、半導体超微粒子の生成は可視・紫
外吸収スペクトルならびに電子顕微鏡写真で確認された
が、入射レーザー光が特定方向に導波するという効果は
観察されなかった。
【0026】
【発明の効果】有機ポリマー光導波路は、加工性がよい
ことや取扱易さの点から汎用性が高いことが期待されて
いるが、本発明は新規な方法でありながら、きわめて簡
便かつ有効な導波路形成方法ならびに光導波路を提供す
るものである。また単に導波路としての役割だけではな
く、非線形光学性能を有する場合は、光スイッチなどに
その有用性はさらに高いものになる。また、ポーリング
ポリマー導波路のように経時変化に伴う分極の解消によ
る導波路の消失という難点も克服されるという効果があ
る。本発明は光回路の特性改善等に大きく貢献するもで
あり、産業上重大な意義を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1図は本発明による光導波路の製造方法を示
す図である。 a)は前駆体有機ポリマー b)はマスクした前駆体有機ポリマー c)はマスクした前駆体有機ポリマーと反応性ガス d)は製造された光導波路 を示す断面図である。
【符号の説明】
1‥‥前駆体有機ポリマー、2‥‥マスク、3‥‥反応
性ガス、4‥‥半導体超微粒子分散部分:光導並部(高
屈折率部分)、5‥‥低屈折率部分、6‥‥マスクの空
隙部分。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機ポリマー中に半導体超微粒子が選択
    的部分に分散してなることにより、屈折率が周囲より大
    なる光導波部を有することを特徴とする光導波路。
  2. 【請求項2】 半導体超微粒子が元素周期律表の第II−
    VI族化合物半導体である請求項1記載の光導波路。
  3. 【請求項3】 半導体超微粒子の原料となる金属元素化
    合物を含有した前駆体有機ポリマーに導波路形成用パタ
    ーンマスクを施したあと、半導体超微粒子生成に必要な
    反応性ガスを反応させることにより、半導体超微粒子を
    選択的部分に分散させることを特徴とする請求項1記載
    の光導波路の製造方法。
  4. 【請求項4】 金属元素化合物が元素周期律表の第II族
    元素化合物、反応性ガスが第VI族元素化合物ガスである
    請求項3記載の光導波路の製造方法。
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