JP2846290B2 - インサート受け具及びコンクリート成形体並びにその生成方法 - Google Patents

インサート受け具及びコンクリート成形体並びにその生成方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コンクリート成形
体の吊り上げに用いるインサート金具をコンクリート成
形体に埋め込む際に用いるインサート受け具及びコンク
リート成形体並びにその生成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】本願出願人は、先に平成8年1月5日特
許出願(特願平8−348号)として、コンクリート成
形体を吊り上げるのに用いるために予めコンクリート成
形体に埋め込んでおく新たなインサート金具を提案し
た。このインサート金具によれば、例えばU字溝、ヒュ
ーム管、マンホール部材などのコンクリート成形体につ
いて、その吊り上げ操作を安全に行うことが可能とな
り、コンクリート成形体の取り扱い作業を大幅に簡易化
することができる。
【0003】ただこのようなインサート金具について
も、一つの問題が残されている。それは、インサート金
具をコンクリート成形体に埋め込む際の問題である。コ
ンクリート成形体の成形に際しては、製品強度などの安
全性を高めるために、型枠に流し込んだコンクリートに
高速回転のバイブレータによって激しい振動を加える。
従ってインサート金具をコンクリート成形体における所
定の埋め込み位置に位置決めさせるには、上記振動に充
分耐えることのできる固定構造でインサート金具の一端
を型枠に仮固定しておく必要がある。尚、インサート金
具の他端をコンクリート成形体中の鉄筋に係止させてお
き、インサート金具を強固に固定しておくやり方をとる
こともある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
のような事情を背景になされたものであり、インサート
金具をそのコンクリート成形体への埋め込みに際して、
確実に所定埋め込み位置に位置決めさせることができる
インサート受け具及びコンクリート成形体並びにその生
成方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、コンクリート
成形体の吊り上げに用いる吊り上げ具を接続するための
接続孔を有するインサート金具を、コンクリート成形体
における目的の埋め込み位置に位置決めさせるために、
コンクリート成形体の成形時に型枠へ仮固定するのに用
いるインサート受け具において、基端側に雄ねじ部を有
する、高剛性の棒状芯体の先端側を、上記インサート金
具における接続孔に緊密的に嵌合する太さに硬質ゴム製
の弾性被覆体で被覆してなるピン部材と、このピン部材
の上記雄ねじ部に螺合する螺合部材とからなることを特
徴とするインサート受け具を開示する。
【0006】このような本発明によるインサート受け具
を用いてインサート金具をコンクリート成形体成形用の
型枠に仮固定するには、まずインサート受け具を型枠に
固定し、それからこのインサート受け具の弾性被覆体に
インサート金具をその接続孔により嵌着させることで行
う。
【0007】インサート受け具の型枠への固定は、その
ピン部材における弾性被覆体が型枠における枠板の内側
面から空出する状態(即ち、コンクリート成形体の成形
される空間に突出する状態)にして行う。そして、イン
サート金具の埋め込み位置と対応させて枠板に設けてあ
る固定孔に棒状芯体の雄ねじ部を挿し通し、これにより
枠板の外側面に突出させた雄ねじ部の端部を螺合部材で
締め込む。
【0008】このようにして型枠に固定したインサート
受け具は、その弾性被覆体の端面を枠板の内側面に押接
させる状態となり、弾性被覆体の弾力性が効果的に機能
することにより、コンクリート打ち込み時に加えられる
激しい振動によっても緩むことがない。またこのインサ
ート受け具に嵌着させることで型枠に仮固定させたイン
サート金具は、弾性被覆体の弾力性を利用して支持され
ることになるので、コンクリートに加えられる激しい振
動を受けても嵌着状態が緩んだり外れたりすることがな
く、確実に目的の位置に埋め込ませることができる。ま
た同時にインサート金具における接続孔にコンクリート
が入り込むのも確実に防止できる。上記のような本発明
によるインサート受け具における弾性被覆体には、80
度〜90度の硬度を持つ硬質ゴムを用いるのが最も好ま
しく、このような硬質ゴムにおける堅さと弾力性のバラ
ンスにより上記のような耐振動性を最も効果的に発揮さ
せることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の一実施の形態によるイン
サート受け具は、図1及び図2に示すように、ピン部材
4と、螺合部材6とより成る。ピン部材4は、全体にわ
たって雄ねじを切ったねじ棒を用いた高剛性の棒状芯体
1(例えば鉄などの金属製)と、この棒状芯体1をその
一部が雄ねじ部2として基端側Aに露出するようにして
被覆した弾性被覆体3と、より成る。弾性被覆体3には
硬度80度〜90度の合成ゴムを用いている。この弾性
被覆体3は、棒状芯体1の半径より若干小さい程度の厚
みを有し、且つ後述するインサート金具における接続孔
に緊密的に嵌合する太さとし、雄ねじ部2との境に平坦
な端面5を持つようにする。また被覆体の先端Bは、イ
ンサート金具を嵌着させ易くするために円錐形状に尖ら
せるようにする。図2(a)は上部方向Cから螺合部材
6を見た図、図2(b)は上部方向Cからピン部材を見
た図である。
【0010】螺合部材6は、一側面が平坦で他側面が球
弧面である薄い円盤状に形成し、その中心部に雌ねじを
切った螺合孔7を貫通させて設ける。螺合部材6をこの
ような形状とする理由については後述する。
【0011】次に上記のようなインサート受け具を用い
てインサート金具をコンクリート成形体成形用の鉄製の
型枠に仮固定する仕方について説明する。それに先立っ
てまずインサート金具について説明する。インサート金
具は、図3に見られるように、雌ねじが切ってある接続
孔8を有する長ナット部材9の一端に、ボルト部材10
で平板状の引抜抵抗部材11を固定した構造を有し、そ
の引抜抵抗部材11をコンクリート成形体の鉄筋12
(図3では縦と横との交差する鉄筋を示してある)に係
止(点溶接や針金締結利用)させるようにしてコンクリ
ート成形体に埋め込まれる。そして鉄筋12への引抜抵
抗部材11の係止により大きな吊上げ耐力を発揮するこ
とができる。そのため、コンクリート成形体に埋め込む
際には引抜抵抗部材の鉄筋への係止を確実なものとでき
るように、インサート金具の埋め込み位置を正確に維持
する必要がある。
【0012】このようなインサート金具を上記のインサ
ート受け具で成形用の型枠に仮固定するには、図3に示
すように、枠板13に固定したインサート受け具の弾性
被覆体3にインサート金具をその接続孔8により嵌着さ
せる。インサート受け具を枠板13に固定するには、枠
板13に設けてある固定孔20に挿通した雄ねじ部2
の、固定孔20からの突出部を、螺合部材6で締め込
む。そうすると、ピン部材4は弾性被覆体3の端面5を
枠板13に押接させた状態で固定される。
【0013】こうした状態で、型枠の中にコンクリート
を流し込みながら、常時又は間欠的にバイブレータによ
りコンクリート流体を振動攪拌し、気密化する。一連の
成形作業が終了し、固化し、コンクリート成形体が完成
する。このコンクリートの流し込み、及び攪拌中にあっ
ては、インサート金具はこれに連結するインサート受け
具の一端が螺合部材6でねじ止めされ、金具の他端が鉄
筋12で係止されていることから、動くことはない。一
方、インサート金具の接続孔8にはインサート受け具の
弾性被覆体3が緊密嵌合状態となっていること、及び端
面5が外枠13の内面に押接していることから隙間がな
く、コンクリート流体が接続孔8に混入することはな
い。また、螺合部材6でねじ止めした際に、インサート
受け具の弾性被覆体の端面5が枠板5に押接される結
果、その端面5が弾性的性質により若干周囲にふくれが
生じ、これがインサート金具の接続孔18内での緊密嵌
合状態を助ける。
【0014】尚、バイブレータの振動数は、機種によっ
て異なるが、5000〜15000回転(v、p、m)
と高い値を持つ。こうした高い振動数のもとでは、接続
孔8内の弾性被覆体3もこうした振動の影響を受けて、
接続孔8の内部と激しいこすれ合いが生ずることがあ
る。もし、弾性被覆体3の代わりに金属等の硬度大の材
料を用いると、接続孔8の内部を損傷することがある。
逆に余りにやわらかい素材であれば、変形が激しく、端
部5からコンクリート流体が混入する恐れもある。こう
したことを前提に、出願人が実験を行った所、硬度80
度〜90度の、硬質天然ゴム又は硬質合成ゴムを素材と
することが特に好ましいことがわかった。JIS規格に
よる硬質合成ゴムの例には、例えば、CR系CMB(B
3−510、B3−610、B3−710、B3−81
0、B3−714)、EPDM系CMB(AEP−40
0、AEP−450、AEP−500、AEP−60
0、AEP−700、AEP−800)、NBR系CM
B(B2−510、B2−610、B2−710、B2
−810、B2−714)、SBR系CMB(SBR−
40、SBR−50、SBR−60、SBR−65、S
BR−70、SBR−75、SBR−80、SBR−9
0)がある。尚、数字510や710等があるが、数字
510のものに比べて数字710のものが硬度は高い性
質を持っている。また、硬質天然ゴムの例では、天然ゴ
ム50%/wt、硬化剤10%/wt、カーボン20%
/wt、CaCo320%/wtの配合例がある
【0015】図3には二段の枠板について示している
が、工場生産のコンクリート成形体は、多段にした枠板
を用いて多段一括生産するのが一般で、その場合には重
なり合う段同志が枠板13の表裏を共用することにな
る。このため、隣の段にとっては枠板としての内側面と
なる面に螺合部材6が突出することになり、これに応じ
てコンクリート成形体に螺合部材6の円盤状の外形が写
されることになる。その例を図4に示す。コンクリート
成形体15の表面の一部に螺合部材6の円盤形状の凹部
16が写し出された例を示す。しかし、螺合部材6は上
記のような円盤形状であるため、かかる写しが生じても
若干の凹みを持った球弧面をコンクリート成形体の表面
に生じさせる程度にとどめることができ、実用上に障害
を生じさせないで済む。つまり、本実施の形態のインサ
ート受け具は、多段重ねの型枠でコンクリート成形体の
成形を行う場合にも使い勝手に優れる。
【0016】図5に鉄製の棒状芯体を多数個同時に生産
する例を示す。金属体(又はゴム溶融温度よりも高い溶
融品質の材質のもの)30に、弾性被覆体3の外形の大
きさに相当する内径の形状を有する開口部31を多数作
っておく。一方、把持体32に、鉄製の棒状芯体33を
その開口部31対応に把持させておく。この時、把持体
32の下側に突出している棒状芯体の長さLは、図1の
棒状芯体が弾性被覆体の中に入っている長さLに相当す
る。そして、製造時には、硬化剤等を添加したゴム流体
34を開口部31に流し込み、次いで把持体32を矢印
の如く下げて、開口部31に、図1の点線に示すような
中央位置になるようにして挿入する。その後でゴムは固
化し、棒状芯体33の囲りに硬質ゴムが形成される。こ
の固化した後で把持部32を上げて開口部31から取り
だし、更に、把持部32から周囲を硬質ゴムで被覆した
状態の棒状芯体33を抜き出す(取り出す)。把持部3
2と棒状芯体33との下側底部に硬質ゴムの一部がゴミ
として付着することがあり、これが棒状芯体33の平面
部5のゴミとなることがあるが、これはナイフ等で除去
する。
【0017】各種の変形例を以下述べる。 (1)、硬度80度〜90度としたが、それ以外の硬度
でも適用できる例がある。例えば、振動数が低い例や、
接続孔8への緊密嵌合性が極めて気密性に高い場合等が
ある。 (2)、螺合部材6の外形を円盤状としたが、それ以外
の例、例えば六角ボルトのヘッド形状等でもよい。コン
クリート成形体が大きければ、こうした形状の写しも相
対的に小さいものとなるためである。螺合部材6の孔7
を貫通させるとしたが、途中までの孔の例もある。 (3)、コンクリート成形体の中には、鉄筋がない例
(いわゆる無筋)もある。こうした無筋のコンクリート
成形体の外枠取り付け用として使用可能である。 (4)、バイブレータによる振動の例で説明したが、圧
搾空気を送ってコンクリート流体内の気密化をはかる例
にも適用できる。勿論、バイブレータや圧搾空気を使わ
ない例でのコンクリート成形体の形成にも使用できる。 (5)、コンクリート受け具は、1回の使用に限らず、
何回でも繰り返して使う。この際、弾性被覆体の端面が
使用回数によって磨耗することがあり、その場合にも、
次のねじ山が現れることから、その新しいねじ山までの
螺合部材の端面が、新しい端面となる。かくしてねじ山
を更新しての再使用可能である。
【0018】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によると、
インサート金具のコンクリート成形体への埋め込みを、
所定の埋め込み位置に確実に行うことが可能となり、イ
ンサート金具を用いるコンクリート成形体の品質向上に
寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施の形態によるインサート受け具の一部破
断面を含む分解側面図である。
【図2】図1中の矢印C方向から見た螺合部材とピン部
材の平面図である。
【図3】図1のインサート受け具で多段の型枠にインサ
ート金具を固定した状態を示す型枠構造の断面図であ
る。
【図4】螺合部材の円盤形状がコンクリート成形体に移
し出された様子を示す図である。
【図5】インサート受け具の生産例を示す図である。
【符号の説明】
1 棒状芯体 2 雄ねじ部 3 弾性被覆体 4 ピン部材 6 螺合部材 13 枠板

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コンクリート成形体の吊り上げに用いる
    吊り上げ具を接続するための接続孔を有するインサート
    金具を、コンクリート成形体における目的の埋め込み位
    置に位置決めさせるために、コンクリート成形体の成形
    時に型枠へ仮固定するのに用いるインサート受け具にお
    いて、基端側に雄ねじ部を有する、高剛性の棒状芯体の
    先端側を、上記インサート金具における接続孔に緊密的
    に嵌合する太さに硬質ゴム製の弾性被覆体で被覆してな
    るピン部材と、このピン部材の上記雄ねじ部に螺合する
    螺合部材とからなることを特徴とするインサート受け
    具。
  2. 【請求項2】 硬質ゴムとして、硬度80度〜90度の
    ゴムを用いた請求項1に記載のインサート受け具。
  3. 【請求項3】 基端側に雄ねじ部を有する高剛性の棒状
    芯体及びこの先端側を被覆した硬質ゴム製の弾性被覆体
    を持つピン部材と、このピン部材の上記雄ねじ部に螺合
    する螺合部材と、より成るインサート受け具を、 コンクリート型枠の開孔部に、上記雄ねじ部を挿通して
    突出させて上記螺合部材で螺合固定し、上記弾性被覆体
    をインサート金具の接続孔に緊密嵌合し、然る後にコン
    クリートを型枠内に流し込み、適宜振動を加えるように
    して形成したコンクリート成形体。
  4. 【請求項4】 基端側に雄ねじ部を有する高剛性の棒状
    芯体及びこの先端側を被覆した硬質ゴム製の弾性被覆体
    を持つピン部材と、このピン部材の上記雄ねじ部に螺合
    する螺合部材と、より成るインサート受け具を、 コンクリート型枠の開孔部に、上記雄ねじ部を挿通して
    突出させて上記螺合部材で螺合固定し、上記弾性被覆体
    をインサート金具の接続孔に緊密嵌合し、然る後にコン
    クリートを型枠内に流し込み、適宜バイブレータにより
    振動を加えるようにしてコンクリート成形体を生成する
    ものとしたコンクリート成形体の生成方法。
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