JP2839433B2 - シールド掘進機のコピーカッター - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、カッターヘッドに設け
られて曲線施工時の余掘りや変形断面の掘削に使用する
シールド掘進機のコピーカッターに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、曲線施工時の余掘りや姿勢制御な
どに使用するコピーカッターは、シールド掘進機のカッ
ターヘッドに、外周側に出退自在に設けられた切削刃付
のシャンクと、掘削部に対応して刃付シャンクを出退さ
せる油圧シリンダー等の出退装置とにより構成され、カ
ッターヘッドの掘削部より広い範囲の掘削を行なうもの
である。

【０００３】しかし、このコピーカッターは、刃付シャ
ンクを出退させるだけであるため、その掘削力が弱く、
広範囲の余掘りや大幅な姿勢制御や方向制御を積極的に
行なえるほどの能力を有していない。

【０００４】ところで、たとえば雑誌：「土木技術」土
木技術社、第４６巻１１号の第３０頁〜第３２頁には、
図８に示すように、主カッターヘッド１０１に切削部が
放射状に設けられた主カッター１０２のほかに、スイン
グアーム１０３を介して３個の回転式補助カッター１０
４を主カッター１０２の回転盤１０５に配置したものが
開示されている。このカッターヘッドでは、主カッター
１０２を回転させるとともに、所定位置でスイングアー
ム１０３を揺動して補助カッター１０４を半径方向外側
に突出させ、この補助カッター１０４により、主カッタ
ー１０２より外側の部分を掘削させて楕円形のトンネル
を掘削させるものである。

【０００５】したがって、この掘削力の大きい補助カッ
ター１０４の機構をコピーカッターとして採用すること
が考えられる。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかし上記カッターヘ
ッドは、各補助カッター１０４毎にその回転駆動装置と
スイングアーム１０３の揺動装置を備えているため、カ
ッターヘッド全体の重量が大きくなり、大きい駆動力を
要するという問題がある。またコピーカッターが１個の
場合には、カッターヘッド全体の重量バランスが極めて
悪くなり、カッターヘッドの周囲に必ず複数個をバラン
スよく配置しなければならないという問題がある。

【０００７】本発明は、上記問題点を解決してスイング
アームを介して回転式カッターを配置しても、全体の重
量の増加を抑制することができるとともに、１個のみの
配設であってもカッターヘッドの重量バランスを保持で
きるシールド掘進機のコピーカッターを提供することを
目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するた
めに本発明のシールド掘進機のコピーカッターは、シー
ルド本体の前部に回転軸体を介して回転自在に配置され
たカッターヘッドの外周部に、カッターヘッドの回転軸
体と平行な揺動軸を中心として揺動自在なスイングアー
ムを設け、このスイングアームの遊端部にカッターヘッ
ドの回転軸体と平行な回転軸を介して回転自在な回転切
削刃を設け、この回転切削刃の回転駆動機構とスイング
アームの揺動機構を、回転軸体の後部のシールド本体側
に設けられた回転駆動手段および揺動手段と、回転軸部
に前部に設けられて回転駆動手段および揺動手段より駆
動されるギヤを内蔵した回転軸部ギヤボックスと、前記
揺動軸に設けられてコピーカッター回転軸を回転するギ
ヤとスイングアームを揺動するギヤとを内蔵した揺動軸
部ギヤボックスと、前記回転軸部ギヤボックスと揺動軸
部ギヤボックスのギヤを互いに連動する伝動手段とで構
成したものである。

【０００９】

【作用】上記構成によれば、コピーカッターの出退駆動
を、回転軸体の後部に設けた揺動手段により、回転軸部
ギヤボックスのギヤから伝動手段および揺動軸部ギヤボ
ックスのギヤを介してスイングアームを揺動軸を中心に
揺動させ回転切削刃を出退させるとともに、コピーカッ
ターの駆動を、回転軸体の後部に設けた回転駆動手段に
より、回転軸部ギヤボックスのギヤから伝動手段および
揺動軸部ギヤボックスのギヤを介して回転切削刃を回転
軸を中心に回転させる。

【００１０】したがって、コピーカッターの揺動手段と
回転駆動手段は、回転軸体の後部でシールド本体側に配
置されて、スイングアームおよび回転切削刃に動力伝達
されるので、従来のように補助カッターごとに駆動装置
を設けるのに比べて、カッターヘッドの重量が大幅に増
大することもなく、またカッターヘッドの重量バランス
が局部的に偏ることもない。

【００１１】

【実施例】以下、本発明に係る楕円形を含む異形断面掘
削用のシールド掘進機の一実施例を図１〜図５に基づい
て説明する。

【００１２】図１〜図４において、１はシールド掘進機
のシールド本体で、シールド本体１の前部中心部には円
筒支持体（隔壁）３が取り付けられており、この円筒支
持体３の中央空間部には、筒状回転体５が軸受を介して
シールド軸心Ｏを中心に回転自在に支持され、この筒状
回転体５にはシールド軸心Ｏに対して所定の偏心量ｅを
有する偏心軸心Ｅを中心に貫通孔４がシールド軸心Ｏ方
向に沿って形成されている。

【００１３】この筒状回転体５の貫通孔４内には、さら
に軸受を介して回転軸体８が回転自在に配置されてお
り、この回転軸体８の前端部に支持部材７を介してカッ
ターヘッド９が取り付けられている。このカッターヘッ
ド９は、正面視が、正三角形の各辺が対向する頂点を中
心とする劣弧で構成されたルーロの三角形となるように
形成され、１つの頂点部に本発明に係るコピーカッター
１０が配置されている。

【００１４】まず、このカッターヘッド９の駆動機構を
先に説明する。筒状回転体５の後端部には、外歯リング
ギヤ１１が形成されるとともに、シールド本体１側に
は、この外歯リング状ギヤ１１に噛合する駆動用ピニオ
ン１２と、この駆動用ピニオン１２が出力軸に取り付け
られたカッターヘッド駆動モーター１３が設けられ、カ
ッター駆動モーター１３により駆動用ピニオン１２およ
び外歯リングギヤ１１を介して筒状回転体５をシールド
軸心Ｏを中心に回転させることができる。

【００１５】一方、シールド本体１の筒状回転体５の後
方には、壁体１５を介してシールド軸心Ｏ位置に外歯固
定ギヤ１６が配置されており、回転軸体８の後端面に
は、外歯固定ギヤ１６に噛合する内歯リングギヤ１７が
設けられている。そして、外歯固定ギヤ１６の歯数と、
内歯リングギヤ１７の歯数の比が、２：３に設定されて
いる。したがって、カッター駆動モーター１３により筒
状回転体５をシールド軸心Ｏ回りに所定速度で回転させ
ると、回転軸体８が偏心量ｅを半径として公転する。回
転軸体８は内歯リングギヤ１７が外歯固定ギヤ１６に噛
合しているため、筒状回転体５が１回転すると、回転軸
体８が１／３回転自転することになり、回転軸体８の回
転速度は、筒状回転体５の１／３となる。この時のカッ
ターヘッド９の回転軌跡は、図５（ａ）〜（ｄ）に実線
で示すように、楕円形となり、したがって、楕円形のト
ンネルが掘削されることになる。

【００１６】次にコピーカッター１０の駆動機構を説明
する。カッターヘッド９の外周部に配置されたコピーカ
ッター１０は、カッターヘッド９の回転軸体８と平行な
揺動軸２１を中心として揺動自在なスイングアーム２２
がカッターヘッド９に取り付けられ、このスイングアー
ム２２の遊端部に回転軸体８と平行な回転軸２３を介し
て円形面板状の回転切削刃２４が回転自在に設けられて
いる。この回転切削刃２４の回転駆動源および揺動源
は、回転軸体８の後端部に配置されており、複数の伝達
機構を介して回転切削刃２４および揺動軸２１にそれぞ
れ伝達されている。

【００１７】コピーカッター１０の回転駆動機構および
揺動機構には、回転軸体８の中心部でシールド軸心Ｏと
平行に形成された軸孔２５内に、軸受を介してコピーカ
ッター回転筒２６が回転自在に配置されるとともに、こ
のコピーカッター回転筒２６の空間部中心に軸受を介し
てコピーカッター揺動軸２７が軸受を介して回転自在に
支持されている。また回転軸体８の前端部に設けた回転
軸部ギヤボックス２８と、揺動軸２１を支持する揺動軸
部ギヤボックス２９との間に、回転伝動軸（伝動手段）
３０と揺動伝動軸（伝動手段）３１がそれぞれ連結され
ている。

【００１８】コピーカッター１０の回転駆動機構は、そ
の駆動源をたとえばカッターヘッド９を回転させるカッ
ター駆動モーター１３により得ており、詳細には外歯固
定ギヤ１６に噛合する入力ギヤ（回転駆動手段）３３に
より駆動されている。すなわち、回転軸体８の後端部に
回転軸体８と平行に回転自在に設けられた駆動力取出軸
３２に、外歯固定ギヤ１６に噛合する入力ギヤ３３と伝
動ギヤ３４が取り付けられている。そして、コピーカッ
ター回転筒２６の後端部には伝動ギヤ３４に噛合する回
転受動ギヤ３５が取り付けられ、回転軸部ギヤボックス
２８内でコピーカッター回転筒２６の先端部と回転伝動
軸３０の基端部とがベベルギヤ３６，３７を介して連動
連結されている。さらに揺動軸部ギヤボックス２９内で
は、揺動軸２１の中空状軸心部に中間軸３８が回転自在
に支持されており、この中間軸３８と回転伝動軸３０の
先端部とがベベルギヤ３９，４０を介して連動連結され
ている。さらに、中間軸３８に取り付けられた駆動スプ
ロケット４１と回転軸２３に取り付けられた受動スプロ
ケット４２とが、スイングアーム２２の中空部に挿通さ
れたチェーン４３を介して連動連結されている。

【００１９】したがって、カッター駆動モーター１３に
より回転軸体８が回転されると、その動力が外歯固定ギ
ヤ１６から入力ギヤ３３，駆動力取出軸３２，伝動ギヤ
３４、回転受動ギヤ３５を介してコピーカッター回転筒
２６に伝達され、ついでベベルギヤ３６，３７から回転
伝動軸３０、ベベルギヤ３９，４０を介して中間軸３８
に伝達され、さらに、駆動スプロケット４１、チェーン
４３、受動スプロケット４２を介して回転軸２３に伝達
されて回転切削刃２４が回転駆動される。

【００２０】またコピーカッター１０の揺動機構は、回
転軸体８の後端部に取付部材を介してコピーカッター揺
動モーター（揺動手段）５１が設けられており、その出
力軸に取り付けられた揺動駆動ギヤ５２と、コピーカッ
ター揺動軸２７の後端部に取り付けられた揺動受動ギヤ
５３とが噛合されている。そして、回転軸部ギヤボック
ス２８内では、コピーカッター揺動軸２７の前端部と揺
動伝動軸３１の基端部とがベベルギヤ５４，５５を介し
て連動連結され、また揺動軸部ギヤボックス２９内で
は、揺動伝動軸３１の先端部と揺動軸２１とがベベルギ
ヤ５６，５７を介して連動連結されている。

【００２１】したがって、プログラム制御信号により正
逆回転されるコピーカッター駆動モーター５１の回転
は、揺動駆動ギヤ５２から回転受動ギヤ５３を介してコ
ピーカッター揺動軸２７に伝達され、次いでベベルギヤ
５４，５５を介して揺動伝動軸３１を回転させる。さら
に、ベベルギヤ５６，５７を介して揺動軸２１を回転さ
せてスイングアーム２２を揺動させ、回転切削刃２４を
カッターヘッド９から出退させることができる。

【００２２】５９はカッターヘッド９により掘削されて
回転支持体３の前部の圧力室５８に取り込まれた土砂を
排出するスクリュー式排土装置である。上記実施例にお
いて、地山の掘削は、カッターヘッド駆動モーター１３
により、筒状回転体５をシールド軸心Ｏを中心に回転さ
せて、回転軸体８をシールド軸心Ｏを中心に回転させる
とともに、外歯固定ギヤ１６に噛合する内歯リングギヤ
１７の作用により、回転軸体８を偏心軸心Ｅ回りに回転
させてカッターヘッド９を回転駆動する。これにより、
縦長の楕円形断面のトンネルを掘削できる。さらに、予
め設定されたトンネル形状に対応してスイングアーム２
２を揺動することにより、回転切削刃２４を所定位置で
外側に突出して余掘りを行い、たとえば図５に仮想線で
示すように、楕円形断面をより角張らせた矩形に近い形
状にしたり、コーナー部がアールの正方形や長方形断面
に掘削することができる。

【００２３】図６，図７は円形断面掘削用のシールド掘
進機に設けた他の実施例を示す。この実施例では、前部
壁体６１に軸受６２を介してカッターヘッド６３の回転
軸体６４が回転自在に支持されており、回転軸体６４の
後部に、回転掘削刃２４の回転駆動手段として、コピー
カッター駆動モーター６５とコピーカッター揺動モータ
ー５１とが配置されており、他はほぼ同一構成である。

【００２４】この実施例によれば、従来の刃付シャンク
を出退するのに比べて、掘削力も格段に向上するため、
硬い地山の掘削が可能になるとともに、その掘削量を大
幅に増大することができ、掘削するトンネル断面形状の
自由度やシールド本体の姿勢制御の範囲を拡大すること
ができる。

【００２５】

【発明の効果】以上に述べたごとく本発明によれば、コ
ピーカッターのスイングアームの揺動手段と回転切削刃
の回転駆動手段を、回転軸体の後部でシールド本体側に
配置し、その動力を回転軸部ギヤボックス、伝動手段お
よび揺動軸部ギヤボックスを介してスイングアームおよ
び回転切削刃の回転軸に伝達するので、従来のように補
助カッターごとに駆動装置を設けるのに比べて、コピー
カッターの重量を大幅に減少させてカッターヘッドの重
量バランスを局部的に偏らせることもなく、切削量も増
強することができて、掘削トンネルの断面形状の自由度
を増大させることができる。そして、カッターヘッド全
体の重量の増加を軽減することができるとともに、１個
のみの配設であってもカッターヘッドの重量バランスを
容易に保持することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るシールド掘進機の一実施例を示す
部分拡大縦断面図である。

【図２】同シールド掘進機の縦断面図である。

【図３】同シールド掘進機の正面図である。

【図４】同コピーカッターの動きを示す正面図である。

【図５】（ａ）〜（ｄ）はそれぞれカッターヘッドおよ
びコピーカッターの掘削動作を説明する正面図である。

【図６】他の実施例を示すシールド掘進機の縦断面図で
ある。

【図７】同シールド掘進機の正面図である。

【図８】従来のシールド掘進機に設けられた補助カッタ
ーを示す正面図である。

【符号の説明】Ｏ シールド軸心Ｅ 偏心軸心 １ シールド本体 ３ 前部隔壁 ４ 貫通孔 ５ 筒状回転体 ８ 回転軸体 ９ カッターヘッド １０ コピーカッター １１ 外歯リングギヤ １２ 駆動用ピニオン １３ カッターヘッド駆動モーター １５ 後部壁体 １６ 外歯固定ギヤ １７ 内歯リングギヤ ２１ 揺動軸 ２２ スイングアーム ２３ 回転軸 ２４ 回転切削刃 ２５ 軸孔 ２６ コピーカッター回転筒 ２７ コピーカッター揺動軸 ２８ 回転軸部ギヤボックス ２９ 揺動軸部ギヤボックス ３０ 回転伝動軸 ３１ 揺動伝動軸 ３２ 駆動力取出軸 ３３ 入力ギヤ ３４ 伝動ギヤ ３５ 揺動受動ギヤ ３６ ベベルギヤ ３７ ベベルギヤ ３８ 中間軸 ３９ ベベルギヤ ４０ ベベルギヤ ４１ 駆動スプロケット ４２ 受動スプロケット ４３ チェーン ５１ コピーカッター揺動モーター ５２ 揺動駆動ギヤ ５３ 揺動受動ギヤ ５４ ベベルギヤ ５５ ベベルギヤ ５６ ベベルギヤ

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シールド本体の前部に回転軸体を介して
   回転自在に配置されたカッターヘッドの外周部に、カッ
   ターヘッドの回転軸体と平行な揺動軸を中心として揺動
   自在なスイングアームを設け、このスイングアームの遊
   端部にカッターヘッドの回転軸体と平行な回転軸を介し
   て回転自在な回転切削刃を設け、 この回転切削刃の回転駆動機構とスイングアームの揺動
   機構を、回転軸体の後部のシールド本体側に設けられた
   回転駆動手段および揺動手段と、回転軸部に前部に設け
   られて回転駆動手段および揺動手段より駆動されるギヤ
   を内蔵した回転軸部ギヤボックスと、前記揺動軸に設け
   られてコピーカッター回転軸を回転するギヤとスイング
   アームを揺動するギヤとを内蔵した揺動軸部ギヤボック
   スと、前記回転軸部ギヤボックスと揺動軸部ギヤボック
   スのギヤを互いに連動する伝動手段とで構成したことを
   特徴とするシールド掘進機のコピーカッター。