JP2838467B2 - 表面疵の発生しないCr−Ni系ステンレス合金の製造方法 - Google Patents

表面疵の発生しないCr−Ni系ステンレス合金の製造方法

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JP2838467B2
JP2838467B2 JP9467993A JP9467993A JP2838467B2 JP 2838467 B2 JP2838467 B2 JP 2838467B2 JP 9467993 A JP9467993 A JP 9467993A JP 9467993 A JP9467993 A JP 9467993A JP 2838467 B2 JP2838467 B2 JP 2838467B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は表面疵の発生しないCr
−Ni系ステンレス合金(以下、単にCr−Ni系ステ
ンレス鋼という)の製造方法、特に熱間圧延時のスラブ
表面に発生する微小な割れの防止を図ることができるC
r−Ni系ステンレス鋼の製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】Cr−Ni系ステンレス鋼は高合金であ
るために熱間加工性が悪く、熱間圧延時に割れが発生
し、これを防止するためにさまざまな研究がなされてき
た。特に、耳割れといわれるスラブエッジや熱延板エッ
ジに発生する割れは製造可否に関わる場合が生じたり、
歩留りを大幅に低下させるなど製造上の大きな問題点で
あった。これらの熱延過程で発生する大きな割れについ
ては従来からさまざまな検討がなされており、今日では
成分や圧延条件の適正化によって製造不可となることは
少なくなってきている。
【0003】一方、このような製造可否に関わるような
大きな割れとは別に、熱間圧延工程ではほとんど検出さ
れず、酸洗後や冷延工程のような熱延工程の後工程にお
いてはじめて検出される疵が発生することがある。この
疵は鋼板の割れや表面凹凸に起因すると考えられ、表面
疵内部にはスケールが存在し、かつ後工程の酸洗時に十
分除去されず、冷間圧延後に重大な表面欠陥となり、製
品歩留りの低下を生じさせる。取り分け、熱間圧延時の
微小割れに起因するヘゲ疵と称される表面欠陥は、割れ
発生後に生成するスケールが圧延により内部に食い込
み、酸洗工程で除去されずに冷間圧延工程に供せられる
と、圧延方向に長い線状の欠陥となり歩留り低下度が特
に大きい。このため鋼板表面に発生するヘゲ疵は表面品
質が重要なステンレス鋼においては致命的な欠陥であ
り、再酸洗やグラインダー等による手入れなど精整再工
程を必要とし、場合によっては表面品質の点で全く製品
化できないなど厚板、薄板の製造工程でコストアップの
大きな要因となっている。
【0004】このような熱延段階で発見できず酸洗後や
冷延工程段階で発見されるヘゲ疵に対しては、従来、鋳
造工程から熱延及び焼鈍工程に到るまでさまざまな検討
がなされている。例えばスラブに存在する欠陥を除去す
ることでヘゲ疵を防止する方法として、特開平2−15
806号公報ではステンレス鋼スラブの表面欠陥(ピン
ホール)を手入れ除去してヘゲ疵発生をなくす技術が開
示されている。また、ヘゲ疵は熱延工程での微小な割れ
であるとして割れを防止する観点から、特開昭57−1
6153号公報では鋼組成のCr当量、Ni当量を規制
し、δ(cal)=3(Cr+Mo+1.5Si+0.
5Nb)−2.8(Ni+0.5Mn+0.5Cu)−
84(C+N)−19.8で決まるδ(cal)を4以
下にすることにより熱間加工性を確保する技術が開示さ
れている。またδ−フェライトの取扱いについては、従
来δ−フェライトを多量に含有する二相組織のオーステ
ナイト系ステンレス鋼の耳割れを防止するためにソーキ
ング(拡散熱処理)を十分に行うことが特開昭59−3
5620号公報等に述べられているが、耳割れを防止
し、さらにヘゲ疵の原因となる微小な割れを防止するた
めの加熱条件そのものについては開示がない。またスラ
ブ組織の観点から、特開昭57−127554号公報で
は鋳造段階でオーステナイト系ステンレス鋼のN量と鋳
造時のタンディシュ温度(ΔT)の関係を制御し、結晶
粒の粗大化を防止して熱間加工性を高める技術が開示さ
れている。表層の組織改善という観点から特公平2−9
651号公報ではオーステナイト系ステンレス鋼のSi
含有量を規制したスラブを加熱炉挿入前にショットブラ
ストを行うことにより表層に加工層を導入し、加熱時に
再結晶させ、スラブ表層の結晶粒を微細化させて割れを
防止する技術が開示されている。また、加熱時のスケー
ルに着目したものとしては、特公平4−48865号公
報ではsol.Alを規制し、スラブ加熱時の酸素濃度
を0.5〜5%に規制してゲ疵を防止する技術を開示し
ている。また、熱間圧延疵発生をスラブ形状で少なくす
る技術として、特開昭58−138502号公報及び特
開平3−207551号公報記載のものが挙げられる。
両者ともスラブ短辺中央部を窪ませてステンレス鋼のエ
ッジシーム疵を低減させる技術を開示している。しかし
ながらこれらの技術では前記の熱間圧延時の微小割れを
防ぐことはできず、微小割れ防止の点で完全とはいえな
いものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は前記したCr
−Ni系ステンレス鋼の熱間圧延時に発生する微小な割
れやヘゲ疵といわれる疵を改善するにあたり、疵防止の
ための工程負荷増なく疵を改善し、Cr−Ni系ステン
レス鋼を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨とするとこ
ろは下記の通りである。 (1)重量%でCr:16〜35%、Ni:7〜50%
を主成分とするCr−Ni系ステンレス鋼において、δ
(cal)=3(Cr+1.5×Si+Mo+0.5×
Nb+0.5×Ti)−2.8(Ni+0.5×Mn+
0.5×Cu)−84(C+N)−19.8で示される
δ(cal)が8以下である該Cr−Ni系ステンレス
鋼の溶鋼を連続鋳造によってスラブに鋳造する際、スラ
ブ表面の平均冷却速度を、1400℃から1200℃ま
でを30℃/sec以下で冷却し、1200℃から50
0℃までの平均冷却速度を10℃/sec以上とし、さ
らに熱間圧延に際し、1000℃以上かつTγ(℃)=
(105+Nieq−3.9×Creq)/(0.07−
1.95×10-3×Creq)以下の温度T(℃)で加熱
し、 [ここでCreq=Cr(%)+1.5×Si(%)+M
o(%)+0.5×Nb(%)+0.5×Ti(%) Nieq=Ni(%)+0.5×Mn(%)+0.5×C
u(%)+30×C(%)+30×N(%)] スラブ表面の均熱時間をK=10m 分以上とし、 [ここで、m=3.22log{(Creq×δs)/
T}+5.25、δs=0.6×δ(cal)+4.
5] かつ熱間圧延1パス前のスラブがその横断面において対
向する長辺の最エッジ部でのスラブ厚みを中央部のスラ
ブ厚みより厚い形状を有するスラブに対し熱間圧延する
ことを特徴とする表面疵の発生しないCr−Ni系ステ
ンレス鋼の製造方法。
【0007】(2)重量%でCr:16〜35%、N
i:7〜50%を主成分とするCr−Ni系ステンレス
鋼において、δ(cal)=3(Cr+1.5×Si+
Mo+0.5×Nb+0.5×Ti)−2.8(Ni+
0.5×Mn+0.5×Cu)−84(C+N)−1
9.8で示されるδ(cal)が8以下である該Cr−
Ni系ステンレス鋼の溶鋼を連続鋳造によってスラブに
鋳造する際、スラブ表面の平均冷却速度を、1400℃
から1200℃までを30℃/sec以下で冷却し、1
200℃から500℃までの平均冷却速度を10℃/s
ec以上とし、さらに熱間圧延に際し、1000℃以上
かつTγ(℃)=(105+Nieq−3.9×Creq
/(0.07−1.95×10-3×Creq)以下の温度
T(℃)で加熱し、 [ここでCreq=Cr(%)+1.5×Si(%)+M
o(%)+0.5×Nb(%)+0.5×Ti(%) Nieq=Ni(%)+0.5×Mn(%)+0.5×C
u(%)+30×C(%)+30×N(%)] スラブ表面の均熱時間をK=10m 分以上とし、 [ここで、m=3.22log{(Creq×δs)/
T}+5.25、δs=0.6×δ(cal)+4.
5] かつ熱間圧延1パス前のスラブがその横断面において対
向する長辺の長さwと中央部スラブ厚みhc より定義さ
れる矩形を想定し、この矩形とスラブ横断面を重ね合わ
せた時に当該矩形よりはみでる部分(以下はみ出し部と
称する)を求め、そのはみ出し部がスラブエッジ部に存
在し、なおかつ当該はみ出し部の面積ΔSと当該矩形面
積S(=w×hc )との比ks値(=ΔS/S)を0.
003以上で0.03以下の範囲にある形状を有するス
ラブに対し熱間圧延することを特徴とする表面疵の発生
しないCr−Ni系ステンレス鋼の製造方法。
【0008】(3)前項1または2において、Cr−N
i系ステンレス鋼の成分が重量%で、C:0.002〜
0.08%、Si:2.0%以下、Mn:10%以下、
P:0.040%以下、S:0.008%以下、O:
0.005%以下、Cr:16〜35%、Ni:7〜5
0%、Mo:0.01〜8%、Cu:0.01〜4%、
N:0.003〜0.3%を含み、残部がFeと不可避
的不純物からなることを特徴とする表面疵の発生しない
Cr−Ni系ステンレス鋼の製造方法。
【0009】(4)前項1または2において、Cr−N
i系ステンレス鋼の成分が重量%で、C:0.002〜
0.08%、Si:2.0%以下、Mn:10%以下、
P:0.040%以下、S:0.008%以下、O:
0.005%以下、Cr:16〜35%、Ni:7〜5
0%、Mo:0.01〜8%、Cu:0.01〜4%、
N:0.003〜0.3%、Al:0.05%以下を含
み、残部がFeと不可避的不純物からなることを特徴と
する表面疵の発生しないCr−Ni系ステンレス鋼の製
造方法。
【0010】(5)前項1または2において、Cr−N
i系ステンレス鋼の成分が重量%で、C:0.002〜
0.08%、Si:2.0%以下、Mn:10%以下、
P:0.040%以下、S:0.008%以下、O:
0.005%以下、Cr:16〜35%、Ni:7〜5
0%、Mo:0.01〜8%、Cu:0.01〜4%、
N:0.003〜0.3%を含み、さらに選択元素とし
てNb:0.01〜1.5%、Ti:0.01〜1.0
%のうち1種または2種を含有し、残部がFeと不可避
的不純物からなることを特徴とする表面疵の発生しない
Cr−Ni系ステンレス鋼の製造方法。
【0011】(6)前項1または2において、Cr−N
i系ステンレス鋼の成分が重量%で、C:0.002〜
0.08%、Si:2.0%以下、Mn:10%以下、
P:0.040%以下、S:0.008%以下、O:
0.005%以下、Cr:16〜35%、Ni:7〜5
0%、Mo:0.01〜8%、Cu:0.01〜4%、
N:0.003〜0.3%、Al:0.05%以下を含
み、さらに選択元素としてNb:0.01〜1.5%、
Ti:0.01〜1.0%のうち1種または2種を含有
し、残部がFeと不可避的不純物からなることを特徴と
する表面疵の発生しないCr−Ni系ステンレス鋼の製
造方法。
【0012】(7)前項1または2において、Cr−N
i系ステンレス鋼の成分が重量%で、C:0.002〜
0.08%、Si:2.0%以下、Mn:10%以下、
P:0.040%以下、S:0.008%以下、O:
0.005%以下、Cr:16〜35%、Ni:7〜5
0%、Mo:0.01〜8%、Cu:0.01〜4%、
N:0.003〜0.3%、Al:0.05%以下を含
み、選択元素としてCa:0.001〜0.005%、
希土類元素(REM):0.05〜0.5%のうち1種
または2種を含有し、残部がFeと不可避的不純物から
なることを特徴とする表面疵の発生しないCr−Ni系
ステンレス鋼の製造方法。
【0013】(8)前項1または2において、Cr−N
i系ステンレス鋼の成分が重量%で、C:0.002〜
0.08%、Si:2.0%以下、Mn:10%以下、
P:0.040%以下、S:0.008%以下、O:
0.005%以下、Cr:16〜35%、Ni:7〜5
0%、Mo:0.01〜8%、Cu:0.01〜4%、
N:0.003〜0.3%、Al:0.05%以下を含
み、選択元素としてNb:0.01〜1.5%、Ti:
0.01〜1.0%のうち1種または2種を含有し、さ
らにCa:0.001〜0.005%、希土類元素(R
EM):0.05〜0.5%のうち1種または2種を含
有し、残部がFeと不可避的不純物からなることを特徴
とする表面疵の発生しないCr−Ni系ステンレス鋼の
製造方法。
【0014】
【作用】本発明によれば、熱間圧延時に発生する微小な
割れ、ヘゲ疵を防止することができる。以下に本発明を
詳細に説明する。本発明者らは熱間圧延時に発生する疵
頻度と素材スラブの形状との関係について綿密に調査
し、本発明を完成したものである。
【0015】まず図1に本発明によるスラブ形状を示
す。図1はスラブの横断面を示しており、図中のwは対
向する長辺の長さ(即ちスラブ幅)を、hc はスラブ中
央部の平均厚みを、hE はスラブ最エッジ部の厚みを各
々示す。さらにスラブ中央部厚みhc とスラブ幅wで定
義される矩形を点線で示し、この矩形よりはみ出す部分
を図中に斜線で示した。本発明の請求項1にいうスラブ
とは、hE >hc である形状を有するスラブである。ま
た請求項2にいうスラブとは、当該矩形よりはみ出した
部分(図中の斜線部)がスラブエッジ部に存在し、その
はみ出し部の面積ΔSと当該矩形面積Sとの比ks値
(=ΔS/S)が0.003以上で0.03以下である
形状を有するスラブである。またスラブのエッジ部及び
中央部とは図中に示したようにスラブ幅を大略3等分し
た範囲を意味する。尚図中の斜線部面積ΔSは定義を明
確に示せるように誇張して図示しており、そのks値は
特許請求の範囲と関係ないことを付言しておく。
【0016】図2は従来のスラブ形状を示した図で、
(a)図は鋳造時にバルジングが生じなかった時に得ら
れる完全矩形スラブの横断面を示し、図中のhとwは各
々スラブ厚みとスラブ幅を意味する。(b)図は鋳造時
にバルジング等によりスラブ長辺面に凹部が形成された
時のスラブ横断面を示す。凹部の発生位置は通常スラブ
エッジから10〜300mmの範囲に形成され、図中の
Δhは最大凹部深さを、Δwはスラブエッジから最大凹
部深さ発生位置までの距離を示す。
【0017】本発明者らは熱間圧延疵発生とスラブ形状
との関係を綿密に調査したところ、図2(a)の完全矩
形スラブよりも図2(b)の凹部発生スラブで熱延疵発
生が多いことを見出した。さらにその発生位置は、完全
矩形スラブではスラブエッジに近くなるほど発生頻度が
高くなり、凹部発生スラブでは矩形スラブを上回る発生
頻度で凹部に熱延疵が発生することが判明した。また凹
部発生スラブでの熱延疵発生頻度は最大凹部深さΔhに
左右される傾向が認められ、Δhが大きいほど疵発生頻
度が高くなる。ところがエッジ部のスラブ厚みが中央部
のスラブ厚みより厚いと、完全矩形スラブ程度かそれ以
上に熱延疵の発生が少ないことを見出した。
【0018】さらに本発明者らは、疵の発生形態を明確
にするために粗熱延1パス終了後の熱延疵を調査した。
その結果、スラブエッジやスラブ凹部に発生する疵はす
べてC方向割れ(圧延方向に直角方向の割れ)であるこ
とが判った。そのサイズはC方向に0.1〜0.2mm
程度で深さ0.1mm程度の微小な割れで、その後の熱
延や冷延等の圧延工程によりL方向(圧延方向)に伸張
され、最終製品板で表面品位を致命的に劣化させるヘゲ
疵等になることを確認した。
【0019】上記事実に鑑み、本発明者らは熱延疵の発
生しないスラブ形状を開発創案したものである。即ち、
本発明においては素材スラブの形状を、その横断面にお
いて対向する長辺の最エッジ部スラブ厚みを中央部のス
ラブ厚みより厚くして熱間圧延に供する。さらに本発明
においては素材スラブの横断面において、対抗する長辺
の長さwと中央部スラブ厚みhc より定義される矩形を
想定し、この矩形とスラブ横断面を重ね合わせた時に当
該矩形よりはみでる部分を求め、そのはみ出し部がスラ
ブエッジ部に存在し、なおかつ当該はみ出し部の面積Δ
Sと当該矩形面積S(S=w×hc )との比ks値(=
ΔS/S)を0.003以上で0.03以下として熱間
圧延に供する。
【0020】素材スラブの横断面において、対向する長
辺の最エッジ部スラブ厚みを中央部スラブ厚みより厚く
する理由は、熱延疵の発生を完全矩形スラブと同等か或
いはそれ以上に減じせしめるためである。ここでスラブ
の横断面とは、そのスラブが圧延される際の圧延方向に
垂直な面を意味し、必ずしも鋳造方向に対して垂直な面
でなくてもよい。最エッジ部のスラブ厚みとは、図1に
示したようにスラブ端面でのスラブ厚みであるが、端面
より少し内側に入った箇所でのスラブ厚みでもよい。中
央部のスラブ厚みとは、スラブ幅方向(長辺方向)中心
でのスラブ厚みでよいが、実際のスラブでは微小な凹凸
があるので中央部全体の平均厚みであることが望まし
い。ここで中央部及びエッジ部とは図1に示したよう
に、スラブ幅(長辺)を大略3等分した範囲を指し示
す。スラブ最エッジでの厚みと中央部での平均厚みとの
差については特に規定しないが、少なくとも1mm以上
は必要である。この厚み差は、極端に大きくなるとスラ
ブエッジ部ではなく逆に中央部での熱間微小割れが生じ
る等の不都合が生じるので、スラブ厚みの高々20%程
度までである。また本発明では、スラブ中央部からスラ
ブ最エッジまでの形状については特に規定しないが、本
発明の趣旨より考えて、滑らかにスラブ厚みが変化する
ことが望ましい。
【0021】次に請求項2の発明について述べる。請求
項2乃至図1で定義したはみ出し部(ΔS)がスラブエ
ッジ部に存在し、かつΔS値と仮想矩形面積S値(=h
c ×w)との比ks値(=ΔS/S)を0.003以上
で0.03以下の範囲に定める理由は、熱延疵の発生を
完全矩形スラブの場合以上に減じせしめるか或いはほぼ
皆無にするためである。ks値の下限を0.003とし
た理由は、それ未満では熱延疵減少効果が認められない
からである。ks値の上限を0.03とした理由は、こ
れを超えるとはみ出し部両横部に疵が発生し易くなり、
初の目的を達成できないからである。また、はみ出し部
の形状については特に規定しないが、はみ出し部のスラ
ブ厚みが滑らかに変化することが望ましく、最エッジ部
に近づくほどスラブ厚みが厚くなることが望ましい。
【0022】スラブ最エッジ部スラブ厚みを中央部厚み
より厚くしたり、或いは上記はみ出し部をスラブエッジ
部に存在させる手段としては、下記の手段が考えられ
る。まず、鋳造時にスラブエッジ部を厚くする方法があ
る。例えば連続鋳造鋳型内面の短辺長さを長辺中央部の
短辺長さより大きくしておくもので、図3に示すごとく
長辺両端部に適当なテーパ等をつければよい。このよう
な鋳型を用いて鋳造することで所定のスラブを得ること
ができる。
【0023】他の手段としては、圧延によるスラブ形状
改善が考えられる。例えば、鋼塊を分塊圧延する際に所
定のスラブ形状が得られるようなカリバーロールを用い
る方法がある。また分塊工程が省略される場合には、水
平ロールによる粗熱延前に垂直ロール(例えばエッジャ
ー圧延等)で圧延して、いわゆるドッグボーン形状を形
成せしめ、上記所定のはみ出し部を形成することができ
る。その他、スラブ手入れ時に本発明の形状となるよう
に研削・手入れする方法もある。
【0024】ところで、スラブ最エッジ部厚みを中央部
厚みより厚くしたり、或いは上記はみ出し部が存在する
ことで、熱延疵が改善乃至解消できる理由については現
在のところ必ずしも明確ではないが、次のように考えら
れる。前記したように従来粗熱延時に生成する微小割れ
はすべてC方向に割れており、圧延時に圧延方向の張力
が作用したことがうかがわれる。この圧延方向張力は、
スラブ中央部とエッジ部の圧延方向のメタルフローの差
に起因すると考えられる。即ち、エッジ部では圧延時に
幅広がりが生じ、圧延方向へのメタルフロー量が中央部
に比較して小さくなる。その結果、エッジ部のメタルは
中央部のメタルのフローに引きずられ、エッジ部に圧延
方向の張力が発生する。これが、従来完全矩形スラブで
もエッジ部に微小割れが生じた理由と考えられる。また
図2(b)に示した凹部発生スラブでは、スラブ厚みが
薄く圧延方向へのメタルフローが少ない凹部域で圧延方
向張力が高くなり、疵発生が集中したものと考えられ
る。従って、本発明によるスラブ形状で熱延疵発生が減
じられる理由は、エッジ部の圧延方向メタルフロー量を
増やして中央部でのメタルフロー量との差を少なくし、
エッジ部での圧延方向張力を低くしたので熱延疵発生を
減じせしめたものと推定される。
【0025】さらに、本発明者らは、微小な割れやヘゲ
疵に対して熱間圧延時の割れの発生箇所と鋳片組織の対
応を検討することにより、スラブの割れ発生起点を明ら
かにし、その制御方法について検討を加えた。まず、熱
間圧延時のスラブ表層で割れる箇所を調査した結果、割
れはγ粒界で割れる場合とδ/γ界面で割れる場合の2
通りあることが判明し、特にγ粒界の割れはオッシレー
ションマークの谷部に多く、δ−フェライトによる割れ
は山部で多くみられ、またγ粒界で割れる場合は粗大γ
粒部で発生することが判った。
【0026】δ−フェライトによる割れを防止するには
δ−フェライトを加熱時に消滅させる必要がある。また
δ−フェライトは直接的に熱間加工性に関係するが、加
熱時のγ粒の成長粗大化にも影響し、γ粒の不整(ばら
つき)を作る原因にもなる。従って、δ−フェライトの
微小割れに及ぼす影響を取り除くためには、δ−フェラ
イトを表層に微細に分散させた後、加熱時に消滅させ、
かつγ粒の異常な粗大化を防止する必要がある。
【0027】表層のδ−フェライトを微細に分散させる
ために、種々検討した結果凝固後の冷却速度を変化させ
ることで表層のδ−フェライトは微細になることが判っ
た。特にδ(cal)を8以下にした場合は、1200
℃以下の温度域を10℃/sec以上で冷却すれば表層
のδ−フェライトは微細なまま分散傾向をとることが判
明した。この温度域を10℃/secよりも緩冷却され
るとδ−フェライトは凝集し、分散傾向がなくなる。こ
のような状態でδ−フェライトが熱間圧延に与える影響
とヘゲ疵の関係を詳細に検討した。
【0028】本発明者らは、スラブ表面の微小な割れを
防止すたためにスラブ表層のδ−フェライトの消滅挙動
に着目して詳細に検討した結果、スラブ表層(スラブ表
面から10mmの平均)のδ−フェライト量は δs=0.6×δ(cal)+4.5 〔ここでδ(cal)=3(Cr+1.5×Si+Mo
+0.5×Nb+0.5×Ti)−2.8(Ni+0.
5×Mn+0.5×Cu)−84(C+N)−19.
8〕 にあり、スラブ表層のδ−フェライトの消滅時間K(m
in)はCreqとの関係でK分以上が必要なことが判明
した。
【0029】K=10m (分)〔ここでm=3.22l
og{(Creq×δs)/T}+5.25 T:加熱温
度(℃)、Creq=Cr(%)+1.5×Si(%)+
Mo(%)+0.5×Nb(%)+0.5×Ti
(%)〕 従って鋳片成分のCreq、Nieq からスラブ表層のδ
−フェライトによる微小れ防止のためのδ−フェライト
消滅条件を求めることができるようになった。
【0030】またδ−フェライトを微小割れの起点とな
らないようにするためには加熱温度をγ単相となる温度
で加熱することが重要であるが、ステンレス鋼は多元系
のため成分系毎に加熱温度の上限を明確に決定すること
ができなかった。本発明者らは詳細な検討を行い、加熱
温度の不適、特に過熱によるδ−フェライトの再析出を
防止するという観点から、δフェライトが再析出しない
温度を実験的に求め、Creq、Nieqから次式で示され
るγ単相の上限温度を明確にした。
【0031】Tγ(℃)=(105+Nieq−3.9×
Creq)/(0.07−1.95×10-3×Creq) 従って、前記のγ単相となるTγ以下の温度でK分以上
加熱することで表層のδ−フェライトを完全に消滅させ
ることができ、δ−フェライトによる微小割れを防止
し、ヘゲ疵発生を大幅に低減することができるようにな
った。
【0032】しかし、上述のようにδ−フェライトの影
響を取り除いてもヘゲ疵の発生が見られることがある。
この原因について検討し、δ−フェライト以外の要因を
明らかにした。その結果、割れはオーステナイト粒界に
沿って割れること、割れは粗大な結晶粒で発生し、微細
な結晶粒の存在する箇所では発生しないことが明らかと
なった。また割れる箇所はスラブのオッシレーションマ
ークの谷部が多いことが判明した。
【0033】この点について割れと組織の関係を調査し
た。その結果、オッシレーション谷部にNiが濃縮した
部分が存在する場合があることが判明した。加熱後はこ
のような部分が粗大なγ粒になることも判明した。この
粗大なγ粒の粒界に沿って熱間圧延時に割れが発生し、
ヘゲ疵や微小な割れ疵となることが明らかとなった。ま
たこのオッシレーションマークの谷部でもNi偏析の程
度に差があり、これが疵発生要因の特定を困難にしてい
たことも判明した。
【0034】CC鋳片のオッシレーションマークの谷部
のNi偏析部の生成については凝固時のシェルの再溶解
やオッシレーション時のオーバーフローなどの機構が提
案されているが、これとは別に凝固時のシェルの延性不
足によりシェルが部分的に割れ、濃化溶鋼が流れ出たも
のと考えることができる。その結果、その部分ではNi
濃度が高いためδ−フェライトが少なくなり、加熱時に
粗大なγ粒になる。
【0035】図4はSUS304鋼(18.2Cr−
8.5Ni−0.03P−0.005S−0.05C−
0.05N)における融点直下50℃での延性に対する
凝固後の冷却速度の影響を調査したものであるが、冷却
速度が早いほど延性は低下し、割れが発生し易いことが
判る。この融点直下の延性と冷却速度の関係を詳細に検
討したところ、融点直下の高温ではオーステナイトより
S、P等の不純物の固溶度が大きいδ−フェライトが存
在することにより不純物の無害化は促進されるが、冷却
速度が小さいほどδ−フェライトに不純物が拡散する時
間があるため、冷却速度が小さいほど不純物の悪影響を
抑制し、延性が向上することが判明した。特に連続鋳造
時のシェルの延性との関係では融点直下50℃で20%
以上の断面収縮率(絞り)があればシェルが割れること
なく良好に保たれることから、連続鋳造によって冷却す
る場合にモールド内の冷却を緩冷化し、δ−フェライト
が安定に存在する1200℃までの温度域を30℃/s
ec以下の冷却速度で冷却することによりCC鋳片の鋳
造時の割れを防止することが可能になり、オッシレーシ
ョンマーク谷部のNi偏析の程度を軽減することができ
る。このことにより鋳片表層のNi偏析によるδ−フェ
ライトのばらつきを防止することが可能になり、粗大な
γ粒の生成防止が可能となる。
【0036】また、Ni偏析部は凝固過程で濃化溶鋼が
流れ出た部分であり不純物も濃化していることが判り、
鋳片段階でNi偏析部は粗大なMnSが多く存在し、割
れそのものを助長する。この点でも表層のNi偏析部を
生成させないことが必要である。従って、鋳造時の冷却
速度を制御することにより、オッシレーションマーク部
のNi偏析、δ−フェライトの分布のばらつき及び凝集
粗大化を防止することにより加熱時のγ粒の粗大化及び
粒径のばらつきを防止し、粗大γ粒での割れ防止が可能
となった。
【0037】これらのヘゲ疵防止対策は、次の成分系の
Cr−Ni系ステンレス鋼で成り立つ。本発明が適用さ
れる具体的な合金は、重量%で、C:0.002〜0.
08%、Si:2.0%以下、Mn:10%以下、P:
0.040%以下、S:0.008%以下、O:0.0
05%以下、Cr:16〜35%、Ni:7〜50%、
Mo:0.01〜8%、Cu:0.01〜4%、N:
0.003〜0.3%を含み、必要に応じてAl:0.
05%以下を含有し、選択元素としてNb:0.01〜
1.5%、Ti:0.01〜1.0%のいずれか1種ま
たは2種または/およびCa:0.001〜0.005
%、希土類元素(REM):0.05〜0.5%のいず
れか1種または2種を含有し、残部がFeと不可避的不
純物からなる合金である。
【0038】以下に成分の限定理由を述べる。 C:Cはステンレス鋼の耐食性に有害であるが、強度の
点からはある程度の含有量は必要である。0.002%
未満の極低炭素量では製造コストが高くなり、また0.
08%を超えると耐食性を大幅に劣化させるため、含有
量の範囲を0.002〜0.08%とした。
【0039】Si:Siはステンレス鋼の脱酸元素とし
て使用されるが、2.0%を超えて添加しても脱酸効果
は飽和し、また熱間加工性を劣化させヘゲ疵発生の頻度
を増加させるので添加量を2.0%以下とした。 Mn:Mnはγ安定化元素であり、Niの代替として添
加することが可能であり、脱酸効果もある有効な元素で
あるが、10%を超えて添加してもその効果は飽和し、
耐食性も劣化するため添加量を10%以下とする。
【0040】Cr:Crはステンレス鋼の基本成分であ
り、耐食性の点から16%以上の添加が必要である。し
かし35%を超えて添加しても耐食性は飽和し、さらに
金属間化合物の析出を促進させるので、熱間加工性を劣
化させ、ヘゲ疵の原因となるためCrの添加量を16〜
35%とした。 Ni:NiはCrとともにステンレス鋼の基本成分であ
り、本発明ではCr量との関係から添加量は7〜50%
の範囲とする。7%未満では本発明の合金ではδ−フェ
ライト量が多量に存在するようになるため本発明の方法
によってもδ−フェライトを制御できず、熱間加工性不
良によるヘゲ疵が発生する。またCr量との関係から本
発明においてはNi量は50%以下で十分であり、これ
を超えて添加してもヘゲ疵防止の点で効果は飽和し、コ
ストも高くなるため上限を50%とした。
【0041】Mo:Moは耐食性を確保するための重要
な元素であり、0.01%以上の含有量で効果がみられ
る。また8%を超えて添加しても耐食性は飽和し、さら
に金属間化合物の析出を促進させるため、熱間加工性を
劣化させ、本発明の方法によってもヘゲ疵を防止できな
くなるので上限を8%とした。 N:Nはγ相安定化のために高価なNiの代替として使
用可能で耐食性、強度の観点からも望ましい元素であ
る。しかし0.003%未満にすることは溶製コストが
大きく増加し、また0.3%を超えて添加してもその効
果は飽和し、さらに固溶度を超えピンホール等をスラブ
に形成し、疵を発生させるため上限を0.3%とした。
【0042】P:Pは耐食性及び熱間加工性の観点から
有害な元素であり、特に鋳造直後の延性を劣化させるた
めスラブ表層の割れ防止の観点から極力低減することが
望ましく、その含有量を0.040%以下とした。 S:Sは耐食性及び熱間加工性に対して有害な元素であ
り、鋳造直後のスラブ表層の延性及び熱間圧延時の熱間
加工性に大きく影響し、その量により熱間加工性不良に
よるヘゲ疵を発生させるため、含有量は低いほどが望ま
しい。本発明の方法によっても0.008%を超えると
S起因による疵が発生しやすくなるので上限を0.00
8%とした。
【0043】Cu:Cuはステンレス鋼の耐食性を向上
させる元素で、0.01%以上を添加する。しかし4%
を超えて添加してもその効果は飽和し、さらに熱間加工
性を劣化させ疵を発生させるので、添加量の範囲を0.
01〜4%とする。 Nb:NbはCを固定し耐食性を向上させる効果がある
ため、必要に応じて0.01%以上添加することができ
る。しかし、1.5%を超えて添加してもその改善効果
は飽和し、また熱間加工性を劣化させ、熱間加工性不良
による疵を発生させるので0.01〜1.5%の範囲で
選択添加する。
【0044】Ti:TiはNbと同様にCを固定し、耐
食性を向上させる。またCaと共存してOを固定し、S
i、Mnの酸化物の生成を抑制する効果があるため、
0.01%以上を添加することができる。しかし、1.
0%を超えて添加するとTiの酸化物による表面疵が多
発するので、その範囲を0.01〜1.0%とした。 Al:Alは強力な脱酸剤として脱酸を強化する場合に
添加する。しかし0.05%を超えて添加をしてもその
効果は飽和し、さらにAlの酸化物による表面疵が発生
しやすくなるため、添加量を0.05%以下とした。
【0045】Ca:Caは強力な脱酸、脱硫剤であり、
また熱間加工性を改善するのに有効な元素であるので、
必要に応じて0.001〜0.005%の範囲で選択添
加される。0.001%未満ではその効果は顕著でな
く、0.005%を超えて添加しても効果は飽和する。 O:Oは熱間加工性に著しく有害な元素であり、その含
有量は極力低減することが望ましいため含有量を0.0
05%以下とした。
【0046】REM:REMは強力な脱酸、脱硫剤であ
り、また熱間加工性を改善するのに有効な元素であるの
で、必要に応じて0.05〜0.5%の範囲で選択添加
される。0.05%未満ではその効果は顕著でなく、
0.5%を超えて添加しても熱間加工性改善効果は飽和
する。
【0047】
【実施例】表1に示した成分のステンレス鋼を通常の溶
製法に従って溶製し、スラブ中央部厚みが165mmで
スラブ幅が1250mm及び1000mmのスラブを鋳
造した。鋳造に際して用いた鋳型は3種類で、1000
mm幅スラブの鋳造には鋳型内面が完全矩形のA鋳型
を、1250mm幅スラブの鋳造には鋳型内面が完全矩
形のB鋳型と図3に示す形状のC鋳型を用いた。C鋳型
のエッジ部の短辺長さLE は中央部の短辺長さLc より
10mm長くした。また連続鋳造時の引き抜き速度は
1.0m/minの高速鋳造と0.5m/minの低速
鋳造の2水準とした。得られたスラブの一部はそのまま
の形状で熱延に供し、一部はスラブ手入れをしてその形
状を変えて熱延に供した。熱延コイルは全て通常の酸洗
・冷延工程を経て1.5mm厚みの冷延コイルとした。
この冷延コイルを捲戻して圧延方向1m当たりの疵発生
個数を求め、疵発生頻度とした。上記プロセス条件とス
ラブ形状及び疵発生頻度をまとめて表2に示す。表2よ
り本発明のスラブ形状材は疵発生頻度が少なくなること
が判る。
【0048】さらに、合金成分の異なるA〜Tの合金に
ついて表3、表4(表3のつづき)に示すプロセス条件
でCC鋳片を製造し、さらに表中の加熱条件で加熱後、
通常条件で熱間圧延し、捲取り〜酸洗〜冷延による薄板
を製造する方法を実施し、または厚板圧延を行い、次い
で酸洗を通常の方法で実施し、ヘゲ疵の発生状況を評価
した。本発明法によるA〜N鋼はヘゲ疵の発生がなく良
好な成品が得られた。
【0049】これに対し、O鋼はδ(cal)、加熱温
度及び加熱時の均熱時間が本発明の条件からはずれ、δ
−フェライト起因のヘゲ疵が生じた。P鋼はδ(ca
l)が本発明の条件からはずれ、δ−フェライトのヘゲ
疵が生じた。Q鋼は1400〜1200℃でのスラブ表
面の冷却速度が大きく、Ni偏析部に起因するヘゲ疵が
生じた。R鋼は1200〜500℃の冷却速度が小さ
く、ヘゲ疵が発生した。S鋼は加熱温度がδ−フェライ
トが析出する温度となり、δ−フェライト起因のヘゲ疵
が生じた。T鋼は加熱時間が短くδ−フェライトが消滅
せず、ヘゲ疵が発生した。このO〜T鋼はヘゲ疵が発生
し、成品歩留りの低下ならびにグラインダー等の救済工
程が必要になるなど本発明との効果上の差が顕著であ
り、本発明の効果が明らかとなった。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
【発明の効果】本発明によれば、従来熱延工程では発見
されにくく、歩留り低下の大きな原因であった微小割れ
によるヘゲ疵の発生を防止することが可能であるから、
本発明の産業上に及ぼす効果は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるスラブの横断面形状を示す図であ
る。ここで横断面とは当該スラブが圧延される時の圧延
方向に垂直な面を意味する。図中のwは対向する長辺の
長さ(即ちスラブ幅)を、hc はスラブ中央部の平均厚
みを、hE はスラブ最エッジ部の厚みを各々示す。さら
にスラブ中央部厚みhc とスラブ幅wで定義される矩形
を点線で示し、この矩形よりはみ出す部分を図中に斜線
で示した。尚、図中の斜線部面積ΔSは定義を明確に示
すように誇張して図示しており、そのks値は本発明の
範囲と関係ない。
【図2】従来のスラブ形状を示した図である。(a)は
鋳造時にバルジングが生じなかった時に得られる完全矩
形スラブの横断面を示し、図中のhとwは各々スラブ厚
みとスラブ幅を意味する。(b)は鋳造時にバルジング
等によりスラブ長辺面に凹部が形成された時のスラブ横
断面を示す。図中のΔhは最大凹部深さ(スラブ中央部
水平面からの深さ)を、Δwはスラブエッジ(端面)か
ら最大凹部深さ発生位置までの距離を示す。
【図3】本発明のスラブ形状を得るための連続鋳造鋳型
の横断面を示す図である。ここでの横断面とは鋳造方向
に垂直な面を意味する。図中のLE とLc は各々鋳型エ
ッジ部及び中央部の鋳型短辺長さを示す。
【図4】融点直下における延性に対する凝固後の冷却速
度の影響を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鈴木 茂 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株 式会社 技術開発本部内 (56)参考文献 特開 平2−55604(JP,A) 特開 平3−39420(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B21B 3/02 B21B 1/22 - 1/28 B21B 1/02 - 1/06 C21D 8/00 C21D 9/00 101 C21D 9/46

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%でCr:16〜35%、Ni:7
    〜50%を主成分とするCr−Ni系ステンレス鋼にお
    いて、δ(cal)=3(Cr+1.5×Si+Mo+
    0.5×Nb+0.5×Ti)−2.8(Ni+0.5
    ×Mn+0.5×Cu)−84(C+N)−19.8で
    示されるδ(cal)が8以下である該Cr−Ni系ス
    テンレス鋼の溶鋼を連続鋳造によってスラブに鋳造する
    際、スラブ表面の平均冷却速度を、1400℃から12
    00℃までを30℃/sec以下で冷却し、1200℃
    から500℃までの平均冷却速度を10℃/sec以上
    とし、さらに熱間圧延に際し、1000℃以上かつTγ
    (℃)=(105+Ni eq−3.9×Creq)/(0.
    07−1.95×10-3×Creq)以下の温度T(℃)
    で加熱し、 [ここでCreq=Cr(%)+1.5×Si(%)+M
    o(%)+0.5×Nb(%)+0.5×Ti(%) Nieq=Ni(%)+0.5×Mn(%)+0.5×C
    u(%)+30×C(%)+30×N(%)] スラブ表面の均熱時間をK=10m 分以上とし、 [ここで、m=3.22log{(Creq×δs)/
    T}+5.25、δs=0.6×δ(cal)+4.
    5] かつ熱間圧延1パス前のスラブがその横断面において対
    向する長辺の最エッジ部でのスラブ厚みを中央部のスラ
    ブ厚みより厚い形状を有するスラブに対し熱間圧延する
    ことを特徴とする表面疵の発生しないCr−Ni系ステ
    ンレス鋼の製造方法。
  2. 【請求項2】 重量%でCr:16〜35%、Ni:7
    〜50%を主成分とするCr−Ni系ステンレス鋼にお
    いて、δ(cal)=3(Cr+1.5×Si+Mo+
    0.5×Nb+0.5×Ti)−2.8(Ni+0.5
    ×Mn+0.5×Cu)−84(C+N)−19.8で
    示されるδ(cal)が8以下である該Cr−Ni系ス
    テンレス鋼の溶鋼を連続鋳造によってスラブに鋳造する
    際、スラブ表面の平均冷却速度を、1400℃から12
    00℃までを30℃/sec以下で冷却し、1200℃
    から500℃までの平均冷却速度を10℃/sec以上
    とし、さらに熱間圧延に際し、1000℃以上かつTγ
    (℃)=(105+Ni eq−3.9×Creq)/(0.
    07−1.95×10-3×Creq)以下の温度T(℃)
    で加熱し、 [ここでCreq=Cr(%)+1.5×Si(%)+M
    o(%)+0.5×Nb(%)+0.5×Ti(%) Nieq=Ni(%)+0.5×Mn(%)+0.5×C
    u(%)+30×C(%)+30×N(%)] スラブ表面の均熱時間をK=10m 分以上とし、 [ここで、m=3.22log{(Creq×δs)/
    T}+5.25、δs=0.6×δ(cal)+4.
    5] かつ熱間圧延1パス前のスラブがその横断面において対
    向する長辺の長さwと中央部スラブ厚みhc より定義さ
    れる矩形を想定し、この矩形とスラブ横断面を重ね合わ
    せた時に当該矩形よりはみでる部分(以下はみ出し部と
    称する)を求め、そのはみ出し部がスラブエッジ部に存
    在し、なおかつ当該はみ出し部の面積ΔSと当該矩形面
    積S(=w×hc )との比ks値(=ΔS/S)を0.
    003以上で0.03以下の範囲にある形状を有するス
    ラブに対し熱間圧延することを特徴とする表面疵の発生
    しないCr−Ni系ステンレス鋼の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2において、Cr−Ni
    系ステンレス鋼の成分が重量%で、C:0.002〜
    0.08%、Si:2.0%以下、Mn:10%以下、
    P:0.040%以下、S:0.008%以下、O:
    0.005%以下、Cr:16〜35%、Ni:7〜5
    0%、Mo:0.01〜8%、Cu:0.01〜4%、
    N:0.003〜0.3%を含み、残部がFeと不可避
    的不純物からなることを特徴とする表面疵の発生しない
    Cr−Ni系ステンレス鋼の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1または2において、Cr−Ni
    系ステンレス鋼の成分が重量%で、C:0.002〜
    0.08%、Si:2.0%以下、Mn:10%以下、
    P:0.040%以下、S:0.008%以下、O:
    0.005%以下、Cr:16〜35%、Ni:7〜5
    0%、Mo:0.01〜8%、Cu:0.01〜4%、
    N:0.003〜0.3%、Al:0.05%以下を含
    み、残部がFeと不可避的不純物からなることを特徴と
    する表面疵の発生しないCr−Ni系ステンレス鋼の製
    造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1または2において、Cr−Ni
    系ステンレス鋼の成分が重量%で、C:0.002〜
    0.08%、Si:2.0%以下、Mn:10%以下、
    P:0.040%以下、S:0.008%以下、O:
    0.005%以下、Cr:16〜35%、Ni:7〜5
    0%、Mo:0.01〜8%、Cu:0.01〜4%、
    N:0.003〜0.3%を含み、さらに選択元素とし
    てNb:0.01〜1.5%、Ti:0.01〜1.0
    %のうち1種または2種を含有し、残部がFeと不可避
    的不純物からなることを特徴とする表面疵の発生しない
    Cr−Ni系ステンレス鋼の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1または2において、Cr−Ni
    系ステンレス鋼の成分が重量%で、C:0.002〜
    0.08%、Si:2.0%以下、Mn:10%以下、
    P:0.040%以下、S:0.008%以下、O:
    0.005%以下、Cr:16〜35%、Ni:7〜5
    0%、Mo:0.01〜8%、Cu:0.01〜4%、
    N:0.003〜0.3%、Al:0.05%以下を含
    み、さらに選択元素としてNb:0.01〜1.5%、
    Ti:0.01〜1.0%のうち1種または2種を含有
    し、残部がFeと不可避的不純物からなることを特徴と
    する表面疵の発生しないCr−Ni系ステンレス鋼の製
    造方法。
  7. 【請求項7】 請求項1または2において、Cr−Ni
    系ステンレス鋼の成分が重量%で、C:0.002〜
    0.08%、Si:2.0%以下、Mn:10%以下、
    P:0.040%以下、S:0.008%以下、O:
    0.005%以下、Cr:16〜35%、Ni:7〜5
    0%、Mo:0.01〜8%、Cu:0.01〜4%、
    N:0.003〜0.3%、Al:0.05%以下を含
    み、選択元素としてCa:0.001〜0.005%、
    希土類元素(REM):0.05〜0.5%のうち1種
    または2種を含有し、残部がFeと不可避的不純物から
    なることを特徴とする表面疵の発生しないCr−Ni系
    ステンレス鋼の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項1または2において、Cr−Ni
    系ステンレス鋼の成分が重量%で、C:0.002〜
    0.08%、Si:2.0%以下、Mn:10%以下、
    P:0.040%以下、S:0.008%以下、O:
    0.005%以下、Cr:16〜35%、Ni:7〜5
    0%、Mo:0.01〜8%、Cu:0.01〜4%、
    N:0.003〜0.3%、Al:0.05%以下を含
    み、選択元素としてNb:0.01〜1.5%、Ti:
    0.01〜1.0%のうち1種または2種を含有し、さ
    らにCa:0.001〜0.005%、希土類元素(R
    EM):0.05〜0.5%のうち1種または2種を含
    有し、残部がFeと不可避的不純物からなることを特徴
    とする表面疵の発生しないCr−Ni系ステンレス鋼の
    製造方法。
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