JP2837425B2 - 船外機のエンジン - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は４サイクルエンジン形式の船外機において、
ケーシング内に組み付けられる船外機用エンジンの本体
と吸気、燃料供給系列の装置の適切な配設により、エン
ジンの性能向上とケーシングの外径寸法の小型化を可能
にする船外機のエンジンに関する。

（従来の技術） 船艇の船尾に着脱自在となって構成される船外機は、
小形でしかも強力な出力を備えることが望ましい。この
船外機用のエンジンは、一般にシリンダ軸を水平とし、
クランクシャフトを縦向きとするタイプが多く、又多シ
リンダ型のものとしては例えば実開昭62−124229号のよ
うなエンジンが知られる。このエンジンは上下方向に並
ぶ一対のシリンダ部を有し、上部シリンダ部の側方に設
けられた吸気、燃料供給系の装置の一部としての気化器
と夫々のシリンダ部を各吸気マニフォールドで連通せし
め混合気を分配している。

又実開昭62−184163号のようなエンジンも知られる。
このエンジンはＶ型多気筒であり、平面視方向にＶ形を
なす一対のシリンダが縦方向に複数列となり、この縦列
方向のシリンダに夫々の列で対応する縦列の気化器をＶ
字形のバンク間に配設し、各列の気化器から左右一対の
シリンダ部に吸気マニフォールドを接続して混合気を分
配供給している。

（発明が解決しようとする課題） しかし実開昭62−124229号のように、２気筒の場合は
例えシリンダを縦列に配列しても一つの気化器から分配
することについて左程の問題は生じないが、それ以上の
気筒数になると、シリンダを縦列配置にすると混合機の
分配が悪くなりエンジンの性能を低下させることにな
る。

一方実開昭62−184163号の場合は縦列のシリンダに対
し気化器を縦列に配置し、各々の気化器から各シリンダ
に混合気を供給するため、上述のようなエンジン性能低
下の問題は引き起こさないものの、基本的にかかる気化
器の縦列配置は、Ｖ型シリンダエンジンのように片バン
クの上下のシリンダ間隔の大きいエンジンには適用しや
すく、インライン型のようにシリンダ間隔の短いエンジ
ンには適用しにくかった。すなわちインライン型のエン
ジン側面に気化器を縦列に配置しようとすると、その最
上位の気化器の高さ位置はエンジンブロック上端より上
方で回転するフライホイールの回転面の制約を受け、一
方、最下位の気化器の下端位置もアンダーケース等によ
って制約を受けることから上下に限られたスペースとな
り、このため従来までも前述のような２気筒エンジンに
おいて有効な混合気分配方式が実用化されているのみで
あった。

（課題を解決するための手段） かかる課題を解決するため本発明は、請求項１では、
３以上のシリンダが上下に縦列に配置され、略垂直に延
びるクランク軸の上端部には、エンジンブロック上面よ
り上方にフライホイールと、該フライホイールとの間の
カム駆動装置としての巻掛け伝動装置とが組み付けられ
た直列型多気筒４サイクルエンジンにおいて、前記エン
ジンは、各シリンダヘッド部から該エンジン本体側方に
シリンダ軸線に沿って延出する夫々の吸気通路をなす吸
気マニフォールドと、該各吸気通路と接続し、シリンダ
軸線上を除くエンジン本体側方に位置するスロットル弁
装置とを夫々上下に備え、前記各吸気通路を前記スロッ
トル弁装置から燃焼室にかけて下り勾配とし、前記スロ
ットル弁装置の最上位のスロットル弁装置は、少なくと
もその上端が前記巻掛け伝動装置の側方であって、前記
フライホイールの回転平面よりも下方に位置する範囲に
配置し、前記スロットル弁装置の最上位のスロットル弁
装置に接続する吸気通路の勾配に対し、他の下位のスロ
ットル弁装置に接続する吸気通路の勾配を小さくしたこ
とを特徴とする。

請求項２では、前記スロットル弁装置を気化器とし
た。

（作用） ３個以上の上下縦列に配置した名シリンダ部の夫々に
対応して、スロットル弁装置を、各シリンダヘッド毎に
連通する各吸気通路に個々に設け、上下に装置するの
で、各シリンダ部に供給される混合気は適正なものとな
り、エンジン性能発揮が十分となり、又吸気通路をスロ
ットル弁装置から燃焼室にかけて下り勾配とし、且つこ
の勾配を、最上位のスロットル弁装置に繋がる吸気通路
から下位のスロッル弁装置に繋がる吸気通路の勾配を小
さくしたので、最上位の燃焼室から下位の燃焼室への燃
料の供給、特にエンジン低速時における吸気通路内での
各燃焼室への燃料の移送を円滑に、夫々に適正に行わ
せ、燃料効率の良いエンジン運転が行える。又最上位の
スロットル弁装置を、その上位がフラーホイールの回転
平面よりも下方に位置する範囲に配置したので、上下に
配置した吸気通路、スロットル弁装置を、これ等エンジ
ン本体側方に配置したことと併せ、これ等を限られたス
ペース内に合理的に配置することができる。

（実施例） 本発明の船外機のエンジンについて添付した図面に基
づき説明する。

第１図は船外機の全体を示す外観側面図、第２図はエ
ンジン部の側面図、第３図は同エンジン部の縦断面図、
第４図は第３図のIV−IV線断面図である。

第１図に示すように、船外機には艇尾Ｓに取り付ける
ためのスターンブラケット１が設けられ、このスターン
ブラケット１の枢支軸２は、スイベルケース３を該軸ま
わりに揺動自在に支えている。このスイベルケース３内
にはスイベルシャフト４が組み込まれ、該スイベルケー
ス３によって回動自在に支えられるとともに該シャフト
軸の上下端部から後方に向って張り出す支持アーム5a,5
bには船外機本体側が結合されている。この船外機本体
側は、ケーシング６によって囲われており、このケーシ
ング６は、上方からエンジンカバー6a、アンダーケース
6d、エクステンションケース6b、ギアケース6c等からな
る。

このケーシング６内の上部にはエンジン７が組み込ま
れ、このエンジン７から下方に垂下するバーティカルシ
ャフト９は、下端部でプロペラシャフト10の駆動連結部
11に連結している。又このプロペラシャフト10の後端の
一部はギアケース6cから外方に突出し、この突出端部に
はプロペラ12が取り付けられている。

前記エンジン７は第３図に示すように、４サイクル直
列３気筒エンジンのシングルオーバーヘッドカム（SOH
C）式であり、夫々のシリンダ軸方向を横向きとし縦列
に３列とされたサイアミーズ型インライン３気筒のシリ
ンダ部7aは前方のクランクケース部7b及び後方のシリン
ダヘッド部7cと連接して一体となっている。このシリン
ダ部7aは夫々のピストン71を備え、このピストン71はコ
ンロッド72によってクランクシャフト73に連結される。
このためクランクケース部7bによって囲まれるクランク
シャフト73は縦向きに組み付けられ、このクランクシャ
フト73の上部にはエンジンブロック上端より上方にタイ
ミングプーリ74とフライホイール75が取り付けられてい
る。

一方このエンジン７のシリンダヘッド部7c上方にはカ
ム軸駆動装置の一部としてのカムプーリ76が設けられ、
前述のタイミングプーリ74とはベルト77で連結されて、
エンジンの駆動力をカムシャフト78に伝達する。このカ
ムシャフト78はその回転によってロッカーアームシャフ
ト79のロッカーアム80を周期的に揺動させ、第４図に示
す吸気弁81と排気弁82の開閉を行なわせる。

尚、本実施例の場合この吸気弁81と排気弁82の配置は
クロスフロータイプとし、各弁によって開閉される吸気
マニフォールド83と排気マニフォールド84をエンジン７
の側方に導き、各吸気マニフォールド83は夫々の縦列に
対応してシリンダ部7a側方に設けられた夫々の気化器16
に接続している。この気化器16は第４図のＶ−Ｖ方向か
ら見た説明図である第５図に示すように、縦３列のシリ
ンダ軸に対応して３列の縦列配置とされ、前記吸気マニ
フォルド83は夫々の気化器16から下り傾斜角をもってシ
リンダヘッド部に連結され、その傾斜角は上方の気化器
から下方の気化器をかけて順に緩やかとなっている。又
最上位の気化器16の上端はフライホイール75の回転面の
下面より下方となるよう構成され、又この位置はシリン
ダブロックの上端より上方に位置している。更にこの気
化器16の組み付けは、ベルト77との干渉を避けるため上
位の気化器16ほどクランク軸線Ｐから離隔する方向に偏
位して取り付けられ、この偏位角αは1.5度としてい
る。尚第５図に示すベルト77の位置は、第６図の平面図
に示すベルト77の駆動時の最大外方振れ位置（破線で示
す）を示すものである。このように配設した気化器16は
吸気、燃料供給系列の装置の一部として設けられ、すな
わちこの吸気、燃料供給系列の装置は第２図に示すよう
に気化器16の空気吸入側に設けられた吸気サイレンサー
17及び気化器に燃料を供給するための燃料ポンプ18、燃
料油ストレーナ19等の装置、配管類等からなり、これら
はいずれもエンジンの側方で縦方向に組み付けられてい
る。

前記の気化器16側面には各気化器の側面上を上下に延
びるスロットルロッド20とチョークロッド21が設けら
れ、スロットルロッド20は揺動自在なスロットルアーム
22と連結して各気化器内のスロットルバルブの開閉を行
なわしめるよう構成している。このスロットルアーム22
の揺動は、スロットル系リモコン或はステアリングハン
ドル15のスロットルで操作できるようにリンク機構を形
成している。

前記チョークロッド22はリンク部を介してソレノイド
部23及び予備用チョークノブ24に連結され、チョーク系
リモコンによってソレノイド部23を作動あせるか或は予
備用チョークノブ24を作動させるかによって操作され
る。

尚、気化器への燃料の供給は、艇内に搭載した船外機
外部の燃料タンクから供給される燃料を前記燃料油スト
レーナ19に導き、燃料ポンプ18によって夫々の燃料ホー
ス25から送り込む。このため各シリンダ部に供給される
混合気は夫々の気化器によって適切なものとなり、エン
ジンの性能を十分発揮させることが出来る。

このように組み付けられた吸気、燃料供給系列の装置
の反対側のエンジン側方には、第４図に示すように夫々
の排気マニフォールド84が延出し、この排気マニフォー
ルド84の延出端は第４図のＶ−Ｖ線断面図である第５図
に示すように、上下に連通する連通部84aに接続され
る。又この連通部84aの下方にはエキゾーストパイプ86
（第３図に示す）が接続される。尚、図中85は燃料ポン
プを示す。

又この排気マニフォールド84側のエンジン側方には電
装ボックス27が取り付けられ、この電装ボックス内に収
納されるコンデンサー放電点火装置28は縦３列のシリン
ダ部の放電部である夫々の点火プラグに高電圧を供給す
る。

更に本実施例の場合、第３図に示すようにクランクシ
ャフト73とバーティカルシャフト９の軸芯をずらして組
み付け、第４図に示すように船外機のセンターラインCL
に対して、エンジンのシリンダ軸線ECLを横にオフセッ
トさせて、吸気、燃料供給系列の装置の取付け側を広い
空間としているため、ケーシング内の空間を縦方向のみ
ならず横方向にも有効に活用した組み付けとなってい
る。

（発明の効果） 以上のように本発明によれば、 請求項１では、３以上のシリンダが上下に縦列に配置
され、略垂直に延びるクランク軸の上端部には、エンジ
ンブロック上面より上方にフライホイールと、該フライ
ホイールとの間のカム駆動装置としての巻掛け伝動装置
とが組み付けられた直列型多気筒４サイクルエンジンに
おいて、前記エンジンは、各シリンダヘッド部から該エ
ンジン本体側方にシリンダ軸線に沿って延出する夫々の
吸気通路をなす吸気マニフォールドと、該各吸気通路と
接続し、シリンダ軸線上を除くエンジン本体側方に位置
するスロットル弁装置とを夫々上下に備え、前記各吸気
通路を前記スロットル弁装置から燃焼室にかけて下り勾
配とし、前記スロットル弁装置の最上位のスロットル弁
装置は、少なくともその上端が前記巻掛け伝動装置の側
方であって、前記フライホイールの回転平面よりも下方
に位置する範囲に配置し、前記スロットル弁装置の最上
位のスロットル弁装置に接続する吸気通路の勾配に対
し、他の下位のスロットル弁装置に接送する吸気通路の
勾配を小さくしたので、先ず、各シリンダ部の夫々に対
応して、スロットル弁装置を、各シリンダヘッドの個々
に連通するように設けた吸気通路毎に個々に設け、上下
に配置することにより、各シリンダ部に供給される混合
気は適正なものとなり、エンジン性能発揮が充分とな
り、高出力化した船外機のエンジンを得ることができ
る。

又吸気通路をスロットル弁装置から燃焼室にかけて下
り勾配とし、且つこの勾配を、最上位のスロットル弁装
置に繋がる吸気通路から下位のスロットル弁装置に繋が
る吸気通路の勾配を小さくしたので、最上位の燃焼室か
ら下位の燃焼室への燃料の供給、特にエンジン低速時に
おける吸気通路内での各燃焼室への燃料の移送を円滑
に、夫々に適正に行わせ、燃料効率の良いエンジン運転
が行える。

更に、最上位のスロットル弁装置を、少なくともその
上端が巻掛け伝動装置の側方であって、フラーホイール
の回転平面よりも下方に位置する範囲に配置したので、
上下に配置した吸気通路、スロットル弁装置を、これ等
エンジン本体側方に配置したことと併せ、これ等を限ら
れたスペース内に合理的に配置することができ、４サイ
クル式の船外機のエンジンにおいて、各気筒毎に固有の
吸気通路とスロットル弁装置を付帯せしめつつ、船外機
全体の高さを抑え、船外機全体をコンパクトに纏めるこ
とができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は船外機の全体を示す外観側面図、第２図はエン
ジン部の側面図、第３図は同エンジン部の縦断面図、第
４図は第２図のIV−IV線断面図、第５図は第４図のＶ−
Ｖ方向から見た説明図、第６図はエンジン部の平面図で
ある。 尚、図面中、１はスターンブラケット、３はスイベルケ
ース、６はケーシング、７はエンジン、９はバーティカ
ルシャフト、16は気化器、17は吸気サイレンサー、27は
電装ボックス、28はコンデンサ放電点火装置、83は吸気
マニフォールド、84は排気マニフォールド、Ｓは艇尾、
Ｐはクランク軸線を示す。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭56−9644（ＪＰ，Ａ) 特開 昭60−47847（ＪＰ，Ａ) 実開 昭61−59199（ＪＰ，Ｕ)

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】３以上のシリンダが上下に縦列に配置さ
   れ、略垂直に延びるクランク軸の上端部には、エンジン
   ブロック上面より上方にフライホイールと、該フライホ
   イールとの間のカム駆動装置としての巻掛け伝動装置と
   が組み付けられた直列型多気筒４サイクルエンジンにお
   いて、 前記エンジンは、各シリンダヘッド部から該エンジン本
   体側方にシリンダ軸線に沿って延出する夫々の吸気通路
   をなす吸気マニフォールドと、該各吸気通路と接続し、
   シリンダ軸線上を除くエンジン本体側方に位置するスロ
   ットル弁装置とを夫々上下に備え、 前記各吸気通路を前記スロットル弁装置から燃焼室にか
   けて下り勾配とし、 前記スロットル弁装置の最上位のスロットル弁装置は、
   少なくともその上端が前記巻掛け伝動装置の側方であっ
   て、前記フライホイールの回転平面よりも下方に位置す
   る範囲に配置し、 前記スロットル弁装置の最上位のスロットル弁装置に接
   続する吸気通路の勾配に対し、他の下位のスロットル弁
   装置に接送する吸気通路の勾配を小さくした、 ことを特徴とする船外機のエンジン。
2. 【請求項２】前記スロットル弁装置は、気化器であるこ
   とを特徴とする請求項１記載の船外機のエンジン。