JP2836342B2 - ステアリング装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、ステアリングフリク
ションをコントロールできる自動車のステアリング装置
に関する。

【０００２】

【従来の技術】自動車のステアリング装置は、ステアリ
ングコラムと、このステアリングコラムに回転自在に軸
支されたステアリングシャフトとからなり、ステアリン
グコラムは、車体のデッキクロスメンバ等に固定され、
ステアリングシャフトの上端部にはステアリングホイー
ルが設けられ、下端部はパワーステアリング装置等のス
テアリングユニットに連動している。

【０００３】パワーステアリング装置は、操舵に対し適
度な反力、つまり手応え（フィードバック感）を持たせ
ることが必要で、微小操舵角の範囲ではマニュアルステ
アリングのままとし、高速走行時の舵の軽すぎによる不
安定をなくす一方、操舵抵抗に応じて発生するシリンダ
圧力をコントロールバルブの動きに反抗するように導
き、ステアリングホイール操作反力として用いる比例反
力領域を設定したり、さらに、据切りなどの重負荷の場
合には、油圧反力を開放して操舵力を十分に軽くする制
限反力領域を設定するなどの工夫がなされている。

【０００４】さらに、車速に応じた油圧反力を発生させ
る速度感応式、車速と操舵角を検出して反力制御を行う
変位・車速感応式などの機能を備えたシステムが開発さ
れ、実用化されている。

【０００５】ところで、前述したパワーステアリング装
置であっても、またマニュアルステアリングであって
も、ステアリング系には操舵フリクションが存在する。
図６の実線は従来の操舵角−操舵力（ｏｒトルク）特性
を示すもので、操舵フリクションＨは一定である。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】前述したように、従来
のステアリング装置は、操舵フリクションが一定である
ため、ドライバーの好みによって操舵フリクションを変
化させることはできない。したがって、操舵角に対する
操舵力（ｏｒトルク）の位相および操舵感を変えること
はできない。

【０００７】この発明は、前記事情に着目してなされた
もので、その目的とするところは、ドライバーの好みに
よって操舵フリクションをコントロールすることがで
き、操舵角に対する操舵力（ｏｒトルク）の位相および
操舵感を変えることができるステアリング装置を提供す
ることにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】この発明は、前記目的を
達成するために、ステアリングホイールを備えたステア
リングシャフトとタイロッドとの間の操舵力伝達経路中
に、パワーステアリング装置の油圧制御部およびラック
ピニオン式ギャ機構を設けたステアリング装置におい
て、前記ラックピニオン式ギャ機構を包容するととも
に、ピニオンギャを有した入力軸を回転自在に軸支する
ケーシングと、このケーシングに設けられ前記入力軸の
軸端部を囲繞するスラスト力受け面と、前記ピニオンギ
ャの軸端部に固定され一体的に回転するナットと、この
ナットにスラスト方向は移動自在に設けられ前記スラス
ト力受け面にスラストワッシャを介して対向する押圧部
材と、前記ナットに螺合され前記押圧部材をスラストワ
ッシャ方向に押圧して入力軸に回転方向のフリクション
を付与するフリクション調節部材とから構成したことに
ある。

【０００９】

【作用】ナットに螺合されたフリクション調節部材を回
転すると、フリクション調節部材がナットにねじ込ま
れ、押圧部材が押圧されてスラストワッシャをケーシン
グのスラスト力受け面に押し付け、押圧部材とスラスト
ワッシャ間の摩擦力が増加し、ラックピニオン式ギャ機
構の入力軸の回転方向のフリクションが増加するため、
フリクション調節部材のねじ込み量によるスラスト方向
の移動量によって入力軸の回転方向のフリクションが変
化する。

【００１０】

【実施例】以下、この発明の各実施例を図面に基づいて
説明する。

【００１１】図１〜図４は第１の実施例を示す。図４は
ステアリング装置の概略的構成を示すもので、１はステ
アリングホイールであり、これはステアリングシャフト
２を介してパワーステアリング装置３に連動している。
パワーステアリング装置３は図２および図３に示すよう
に、油圧制御部４とラックピニオン式ギャ機構５とから
構成されている。

【００１２】油圧制御部４はハウジング６によって包容
されている。油圧制御部４のハウジング６にはベアリン
グ７によって回転自在に軸支された入力軸８が設けら
れ、この入力軸８にはトーションバー９が内挿されてい
る。入力軸８の外周にはロータリバルブ１０が設けられ
ている。

【００１３】また、ハウジング６にはオイルポンプ（図
示しない）に連通する第１のポート１１とオイルリザー
バ（図示しない）に連通する第２のポート１２が設けら
れているとともに、シリンダチューブの左室１３と右室
１４にそれぞれ連通する第３のポート１５、第４のポー
ト１６が設けられている。

【００１４】ロータリバルブ１０は、ステアリングホイ
ール１の操舵に応じてシリンダチューブの左室１３と右
室１４へ供給する圧油の切り換えとともに、圧力を制御
し、ステアリングホイール１の操舵力をアシストして車
輪１７，１７を転舵するようになっている。

【００１５】前記ラックピニオン式ギャ機構５のケーシ
ング１８には前記入力軸８と連動するピニオンギャ１９
が設けられている。このピニオンギャ１９の軸端部１９
ａはベアリング２０によってケーシング１８に回転自在
に軸支されているとともに、ねじ部１９ｂにはナット２
１が締め付け固定されている。

【００１６】さらに、このピニオンギャ１９にはラック
２２が噛合され、このラック２２はヨークスプリング２
３によってピニオンギュ１９方向に付勢されている。ラ
ック２２は車体の幅方向に延びるタイロッド２４および
ナックルアーム（図示しない）を介して車輪１７，１７
に連結されている。

【００１７】さらに、ピニオンギャ１９の軸端部１９ａ
およびねじ部１９ｂはケーシング１８と一体に設けた筒
部２５によって囲繞され、この筒部２５の内周面には雌
ねじ部２６が刻設されている。そして、この雌ねじ部２
６にはフランジ２７ａを有した円筒部材２７がねじ込み
固定されている。フランジ２７ａはスラスト力受け面２
８に形成され、このスラスト力受け面２８には摩擦板か
らなるスラストワッシャ２９が接合されている。

【００１８】前記ピニオンギャ１９のねじ部１９ｂに螺
合されたナット２１には押圧部材としてのスラストプレ
ート３１が嵌合されている。このスラストプレート３１
は筒部３１ａとフランジ部３１ｂとからなり、筒部３１
ａはナット３０に対してキー３２とキー溝３３とによっ
てナット３０に対してスラスト方向は移動自在である
が、回転方向はナット３０と一体に嵌合されている。フ
ランジ部３１ｂはその片面が前記スラストワッシャ２９
と対向している。

【００１９】前記ナット３０にはフリクション調節部材
としての締付けボルト３４がねじ込まれ、この締付けボ
ルト３４と頭部とスラストプレート３１のフランジ部３
１ｂとの間には皿ばね３５が介在されている。

【００２０】このように構成されたステアリング装置に
よれば、締付けボルト３４を緩めて皿ばね３５がスラス
トプレート３１のフランジ部３１ｂのスラストワッシャ
２９に対する押圧力を０とすると、ステアリング装置が
本来持っている操舵フリクションとなる。

【００２１】工具を用いて締付けボルト３４を回すと、
締付けボルト３４はナット３０にねじ込まれ、これに伴
って皿ばね３５を介してスラストプレート３１のフラン
ジ部３１ｂをスラスト方向に押圧すると、スラストプレ
ート３１のフランジ部３１ｂがスラストワッシャ２９に
押し付けられ、スラストワッシャ２９はスラスト力受け
面２８に圧接される。

【００２２】したがって、スラストプレート３１とスラ
ストワッシャ２９間の摩擦力が増加し、入力軸８の回転
方向のフリクションが増加する。このように、フリクシ
ョン調節部材としての締付けボルト３４を締付けること
によって操舵フリクションを調節することができ、図６
の破線で示すように、操舵フリクションを加えることが
でき、操舵角に対する操舵力（ｏｒトルク）の位相およ
び操舵感を変えることができる。図５は第２の実施例を
示すもので、第１の実施例と同一構成部分は同一番号を
付して説明を省略する。

【００２３】図中、３６はケーシング１８の筒部２５に
突設された取付けアームであり、この取付けアーム３６
は略コ字状に折曲され、この先端部には正逆回転可能な
モータ３７が設けられている。このモータ３７の回転軸
３８には締付けボルト３４の頭部と係合する係合部材３
９が設けられている。また、モータ３７はコントローラ
４０を介してスイッチ４１に接続されている。

【００２４】この実施例によれば、操舵フリクションを
高める場合に、スイッチ４１を操作してモータ３７を正
転させると、係合部材３９が回転して締付けボルト３４
はナット３０にねじ込まれ、これに伴って皿ばね３５を
介してスラストプレート３１のフランジ部３１ｂをスラ
スト方向に押圧すると、スラストプレート３１のフラン
ジ部３１ｂがスラストワッシャ２９に押し付けられ、ス
ラストワッシャ２９はスラスト力受け面２８に圧接され
る。

【００２５】したがって、スラストプレート３１とスラ
ストワッシャ２９間の摩擦力が増加し、入力軸８の回転
方向のフリクションが増加する。そして、操舵フリクシ
ョンを好みの大きさにした後、モータ３７を停止する
と、ナット３０に対してスラストワッシャ２９が固定さ
れる。このようにモータ３７によって締付けボルト３４
を回すことにより、操舵フリクションを自動的に調節す
ることができ、操舵角に対する操舵力（ｏｒトルク）の
位相および操舵感を変えることができる。

【００２６】

【発明の効果】以上説明したように、この発明によれ
ば、パワーステアリング装置のラックピニオン式ギャ機
構のピニオンギャの回転方向のフリクションを与えるこ
とにより、ドライバーの好みによってステアリング装置
の操舵フリクションをコントロールすることができ、操
舵角に対する操舵力（ｏｒトルク）の位相および操舵感
を変えることができるという効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の第１の実施例に係わるパワーステア
リング装置の要部の縦断側面図。

【図２】同実施例に係わるパワーステアリング装置のリ
ンケージの側面図。

【図３】図２のＡ−Ａ線に沿うパワーステアリング装置
の縦断側面図。

【図４】同実施例に係わるパワーステアリング装置の概
略的構成図。

【図５】この発明の第２の実施例に係わるパワーステア
リング装置の要部の縦断側面図。

【図６】操舵角−操舵力（ｏｒトルク）の特性図。

【符号の説明】

１…ステアリングホイール、２…ステアリングシャフ
ト、３…パワーステアリング装置、４…油圧制御部、５
…ラックピニオン機構、８…入力軸、１８…ケーシン
グ、１９…ピニオンギャ、２１…ナット、２２…ラッ
ク、２８…スラスト力受け面、２９…スラストワッシ
ャ、３１…スラストプレート（押圧部材）、３４…締付
けボルト（フリクション調節部材）。

フロントページの続き (72)発明者 増田 広之 愛知県岡崎市橋目町字中新切１番地 三 菱自動車エンジニアリング株式会社岡崎 事業所内 (72)発明者 杉浦 正 愛知県岡崎市橋目町字中新切１番地 三 菱自動車エンジニアリング株式会社岡崎 事業所内 (56)参考文献 実開 昭61−166263（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭63−112977（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭60−9768（ＪＰ，Ｕ) 実開 平２−43764（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) B62D 1/16 B62D 3/12 B62D 5/22

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ステアリングホイールを備えたステアリ
   ングシャフトとタイロッドとの間の操舵力伝達経路中
   に、パワーステアリング装置の油圧制御部およびラック
   ピニオン式ギャ機構を設けたステアリング装置におい
   て、前記ラックピニオン式ギャ機構を包容するととも
   に、ピニオンギャを有した入力軸を回転自在に軸支する
   ケーシングと、このケーシングに設けられ前記入力軸の
   軸端部を囲繞するスラスト力受け面と、前記ピニオンギ
   ャの軸端部に固定され一体的に回転するナットと、この
   ナットにスラスト方向は移動自在に設けられ前記スラス
   ト力受け面にスラストワッシャを介して対向する押圧部
   材と、前記ナットに螺合され前記押圧部材をスラストワ
   ッシャ方向に押圧して入力軸に回転方向のフリクション
   を付与するフリクション調節部材とを具備したことを特
   徴とするステアリング装置。